説明

光ディスク装置の光学ヘッド

【課題】 回動アームの軽量化が可能な光学ヘッドを提供すること。
【解決手段】 光学ヘッドを、(1)録媒体の記録面に光ビームを集光させる対物光学系を具備し、記録媒体の記録面に沿って回動する回動アームと、(2)光ビームを発する光源ユニットを具備し、光ディスク装置の本体に対し固定された固定光学ユニットと、(3)固定光学ユニットからの光ビームが回動アームの対物光学系を経て記録面に達するよう、固定光学ユニットからの光ビームを前記回動アームの回動に応じて偏向させる偏向手段と、により構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光ディスク装置に関するものであり、特に、光ディスクの記録面に情報を記録するあるいは記録面の情報を再生するための光学ヘッドに関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】近年、面記録密度が10Gビット/(インチ)2を越える光ディスク装置の開発が進んでいる。このような光ディスク装置において、光ディスクの記録面に情報を記録する(あるいは記録面の情報を再生する)ための光学ヘッドは、光ディスクのトラックと交差する方向に回動する回動用アームとして構成されている。しかしながら、このような光学ヘッドでは、光ビームを発する光源ユニットなど全ての光学系が回動アームに搭載されるため、回動アームの軽量化が難しく、形状も複雑になるという問題点があった。
【0003】本発明は、上述した事情に鑑み、回動アームの軽量化が可能な光学ヘッドを提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明の光ディスク装置の光学ヘッドは、(1)録媒体の記録面に光ビームを集光させる対物レンズを具備し、光ディスクの記録面に沿って回動する回動アームと、(2)光ビームを発する光源ユニットを具備し、光ディスク装置の本体に対し固定された固定光学ユニットと、(3)固定光学ユニットからの光ビームが回動アームの対物レンズを経て記録面に達するよう、固定光学ユニットからの光ビームを前記回動アームの回動に応じて偏向させる偏向手段と、を備えて構成されている。
【0005】このように、光源ユニットなどの光学系を回動アームとは別体の固定光学ユニットとすることによって、可動部分である回動アームを軽量化することが可能になる。回動アームの軽量化により、情報アクセス速度を高速化すると共に、光ディスク装置の信頼性を向上することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施形態の光ディスク装置の基本構成を示す斜視図である。この光ディスク装置は、ニア・フィールド記録(NFR:near field recording) 技術と呼ばれる記録再生方式を用いたものである。
【0007】光ディスク装置は、図示しないスピンドルモータの回転軸22で光ディスク2を回転可能に保持している。なお、以下の説明に於いては、光ディスク2の面に直交する方向を「鉛直方向」とする。この実施形態では、光ディスク2の下面が記録面となっている。情報の記録及び再生を行う光学ヘッド100は、光ディスク2の記録面に沿って回動する回動アーム3と、光ディスク装置1の本体(図示せず)に固定された固定光学ユニット4とにより構成されている。
【0008】回動アーム3は光ディスク2の記録面に平行に延びており、光ディスク2の記録面に直交する回転軸5を中心として記録面に沿って回動するよう構成されている。回動アーム3の先端には、光ディスク2の記録面にレーザー光束を収束させる対物レンズ10を具備した浮上型光学ユニット6が搭載されている。
【0009】まず、浮上型光学ユニット6について説明する。図2は回動アーム3の先端部を示す側面図であり、図3は浮上型光学ユニット6を拡大して示す側面図である。浮上型光学ユニット6はフレクシャービーム8に取り付けられており、光ディスク2に対向して配置されている。また、フレクシャービーム8は他端で回動アーム3に固着されており、フレクシャービーム8の弾性力により先端部の浮上型光学ユニット6を光ディスク2に接触させる方向に加圧している。
【0010】浮上型光学ユニット6は浮上スライダー9,対物レンズ10,ソリッドイマージョンレンズ(SIL)11,磁気コイル12から構成されており、固定光学ユニットから出射された平行なレーザー光束13を光ディスク2上に収束させるはたらきをする。また、回動アーム3の先端部には前記レーザー光束13を浮上型光学ユニット6に導くために立ち上げミラー31が固着されている。 立ち上げミラー31により対物レンズ10に入射したレーザー光束13は、対物レンズ10の屈折作用により収束される。この集光点近傍にはソリッドイマージョンレンズ(SIL)11が配置されており、前記収束光を更に微細なエバネッセント光15として光ディスク2に照射させる。
【0011】また、光ディスク2に面したソリッドイマージョンレンズ(SIL)11の周囲には、光磁気記録方式で記録するための磁気コイル12が形成されており、記録時には必要な磁界を光ディスク2の記録面上に印加出来るようになっている。このエバネッセント光15と磁気コイル12により、光ディスク2への高密度な記録および再生が可能となる。なお、浮上型光学ユニット6は光ディスク2の回転による空気流により微小量浮上するものであり、光ディスク2の面振れ等に追従する。このため従来の光ディスク装置では必要であった対物レンズの焦点制御(フォーカスサーボ)が不要となっている。
【0012】次に、回動アーム3及び固定光学ユニット4について説明する。図4は光学ヘッド100の上面図であり、図5は図4の線分A−A’における光学ヘッド100の側断面図である。図5に示すように、回動アーム3を回転可能に支持するため、回動アーム3の回転軸5に対応する位置には中空シャフト36が設けられている。中空シャフト36は固定光学ユニット4のハウジング42に軸受44を介して回動自在に保持されている。
【0013】回動アーム3の一端には扁平状のコイルである駆動コイル16が固着されており、駆動コイル16は磁気回路16a内に空隙をおいて挿入配置されている。これにより、駆動コイル16に電流を印加すると磁気回路16aとの電磁作用により回動アーム3を回転軸5を中心として回動させることができる。
【0014】図1に示すように、固定光学ユニット4には、半導体レーザー18,コリメートレンズ20,複合プリズムアッセイ21,反射プリズム23,データ検出/トラッキング検出センサー24,およびAPCセンサー25が配置されている。
【0015】半導体レーザー18から放出された発散光束状態のレーザー光束は、コリメートレンズ20によって平行光束に変換される。この平行光束の断面形状は半導体レーザー18の特性から長円状であり、レーザー光束を光ディスク2上に微小に絞り込むには都合が悪いため略円形断面に変換する必要がある。このため、複合プリズムアッセイ21の入射面21aは入射光軸に対して所定の傾斜を有しており、入射光を屈折させることにより平行光束の断面形状を長円形状から略円形形状に整形する。
【0016】複合プリズムアッセイ21から出射されたレーザー光束13を回動アーム3の回動に追従させるため、固定光学ユニット4には第1偏向ミラー26が設けられている。第1偏向ミラー26は、複合プリズムアッセイ21から出射されたレーザー光束13を鉛直上方に偏向するもので、第1偏向ミラー26により偏向された光軸は回動アーム3の回動軸5と一致している。第1偏向ミラー26により偏向されたレーザー光束13は中空シャフト36(図5)の中空部分を経て回動アーム3内に入射する。
【0017】回動アーム3の回動軸5に相当する位置には、第1偏向ミラー26からのレーザー光束13を水平に(光ディスク2の記録面と平行な方向に)偏向する第2偏向ミラー35が設けられている。第2偏向ミラー35により反射されたレーザー光束13は、第1リレーレンズ29および第2リレーレンズ(イメージングレンズ)30を経て、第3偏向ミラー31で反射された後、浮上型光学ユニット6に至る。
【0018】図6は光学ヘッド100全体の光学系を示す概略図である。図6に示すように、回動アーム3(図1R>1)の回転に伴い、第2偏向ミラー35,第1リレーレンズ29,第2リレーレンズ30,第3偏向ミラー31が図中A,B,Cで示すように回動する。前述のように第1偏向プリズム26(図1)から第2偏向ミラー35に入射する光軸が回動アーム3の回動軸5に一致しているため、第2偏向ミラー35により水平に偏向されたレーザー光束13は、(回動アーム3の回動位置に関わらず)回動アーム3を長手方向に進み浮動光学ユニット6に達する。
【0019】光ディスク2から反射されて戻ってきた復路のレーザー光束13は、往路と逆に進み第1偏向ミラー26に反射されて複合プリズムアッセイ21に入射する。複合プリズムアッセイ21のハーフミラー面21bは、透過光と、データ検出/トラッキング検出センサー24へ向かう反射光を生成し、復路のレーザー光束を分離する。データ検出/トラッキング検出センサー24は、光ディスク2に記録されているデータ情報を読みとりデータ信号を出力し且つトラッキング誤差信号を出力する複合型のセンサーである。なお、正確にはトラッキング誤差信号およびデータ信号は図示せぬヘッドアンプ回路によって生成され、制御回路または情報処理回路に送られる。
【0020】次に、微小トラッキング制御について説明する。第1偏向ミラー26は、偏向面上の軸Rを中心として揺動することにより、対物レンズ10に対するレーザー光束13の入射角を微調整して微小なトラッキング制御を行う所謂ガルバノミラーである。即ち、光学ヘッド100は、光ディスク2の内周/外周に渡るアクセス動作を回動アーム3の回動によって行い、極微小なトラッキング制御のみ第1偏向ミラー26を回動させて行う。なお、第1偏向ミラー26の揺動は図示しないコイルとマグネットの組み合わせによって行われるが、詳細な説明は省略する。また、第1偏向ミラー26の回転角度は、第1偏向ミラー26の近傍に設けられた図示しない角度検出センサにより検出される。
【0021】第1リレーレンズ29および第2リレーレンズ30は、第1偏向ミラー26の反射面と浮上型光学ユニット6に配置されている対物レンズ10の瞳面(主平面)との関係を共役関係になるようにするもので、リレーレンズ光学系を形成するものである。即ち、上述のように第1偏向ミラー26を僅かに揺動させて微小なトラッキング制御を行う方式では、第1偏向ミラー26と対物レンズ10の光学的距離が長い場合は、対物レンズ10へ入射するレーザー光束13の移動量が大きくなり、対物レンズ10に入射出来なくなる場合がある。
【0022】そこで、第1及び第2リレーレンズ29,30によって、第1偏向ミラー26の反射面と対物レンズ10の瞳面との関係を共役関係になるように設定し、第1偏向ミラー26が回動しても対物レンズ10に入射するレーザー光束は移動せず、正確なトラッキング制御が可能となるようにしている。また、第1偏向ミラー26の偏向面と対物レンズ10の入射瞳面に入射するレーザー光束がいずれも平行光になるよう構成されている。
【0023】以上説明したように、この第1の実施形態の光ディスク装置によると、主要な光学部品(半導体レーザー18、コリメートレンズ20、複合プリズムアッセイ21、データ検出/トラッキング検出センサー24及びAPCセンサー25)が固定光学ユニット4に設けられているため、可動部である回動アーム3を軽量化することができる。
【0024】次に、第2の実施形態について説明する。図7は第2の実施形態による光ディスク装置を示す斜視図である。第2の実施形態の光学ヘッド200は光ディスク2の上面の情報を再生又は記録するよう構成されている。そのため、光学ヘッド200は、回動アーム300の下側にフレクシャービーム8と浮上型光学ユニット6を備えている。フレクシャービーム8と浮上型光学ユニット6の配置を除くと、第2の実施形態の回動アーム300の構成は第1の実施形態の回動アーム3と同様に構成されている。また、第2の実施形態の固定光学ユニット4は第1実施形態と全く同様に構成されている。
【0025】図8は、第2の実施形態の光学ヘッド200の断面図である。図8に示すように、第2偏向ミラー35で反射されたレーザー光束13は、第1及び第2リレーレンズ20,30を経て、第3偏向ミラー31で下方に反射され、浮上型光学ユニット6に入射し、光ディスク2の上面に集光される。この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、光学ヘッドの可動部が軽量化できる。また、回動アーム3に対して固定光学ユニット4と光ディスク2が同じ側に位置するため、鉛直方向の装置寸法を小さくすることができる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光ディスク装置における光学ヘッドによると、光源ユニットなどの光学系を、回動アームとは別体の固定光学ユニットとすることによって、可動部分である回動アームを軽量化することが可能になる。この回動アームの軽量化により、情報アクセス速度を高速化すると共に、光ディスク装置の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の光ディスク装置を示す斜視図である。
【図2】回動アームの先端部を示す側面図である。
【図3】浮上型光学ユニットを示す側面図である。
【図4】光学ヘッドを示す平面図である。
【図5】光学ヘッドを示す側断面図である。
【図6】光学ヘッドの光学系を示す図である。
【図7】第2の実施形態の光ディスク装置を示す斜視図である。
【図8】図7の光学ヘッドの側断面図である。
【符号の説明】
2 光ディスク
3 回動アーム
4 固定光学ユニット
26 第1偏向ミラー
35 第2偏向ミラー
31 第3偏向ミラー
100 光学ヘッド
200 光学ヘッド
300 回動アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】光ディスク装置において、光ディスクの記録面に光ビームを集光させる対物レンズを具備し、前記光ディスクの記録面に沿って回動する回動アームと、光ビームを発する光源ユニットを具備し、前記光ディスク装置の本体に対し固定された固定光学ユニットと、前記固定光学ユニットからの光ビームが前記回動アームの対物レンズを経て前記記録面に達するよう、前記固定光学ユニットからの光ビームを前記回動アームの回動に応じて偏向させる偏向手段と、を備えた光ディスク装置の光学ヘッド。
【請求項2】前記固定光学ユニットは、前記記録面から反射された光ビームを受光する受光ユニットをさらに備えること、を特徴とする光ディスクの光学ヘッド。
【請求項3】前記偏向手段は、前記固定光学ユニットにおいて光ビームを前記回転アームの回転軸の方向に偏向する第1の偏向ミラーを含み、前記第1の偏向ミラーにより偏向された光軸が前記回動アームの回動軸と一致していること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスク装置の光学ヘッド。
【請求項4】前記第1の偏向ミラーは、その偏向面上の所定の軸を中心として揺動することにより前記対物レンズに対する光ビームの入射角を微調整して微動トラッキングを行うガルバノミラーであること、を特徴とする請求項3に記載の光ディスク装置の光学ヘッド。
【請求項5】前記回動アームは、前記第1の偏向ミラーと前記対物レンズの間に少なくとも2つのレンズを有し、前記2つのレンズの配置は、前記偏向ミラーの揺動軸と前記対物レンズの入射瞳が共役関係となり、前記第1の偏向ミラーの偏向面と前記対物レンズの入射瞳面に入射する光ビームがいずれも平行光になるよう決められていること、を特徴とする、請求項3又は4に記載の光ディスク装置の光学ヘッド。
【請求項6】前記偏向手段は、前記回動アームの回動軸に設けられた第2の偏向ミラーを含むこと、を特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の光ディスク装置の光学ヘッド。
【請求項7】前記固定光学ユニットは、前記回動アームの回転軸の方向において、前記回動アームを挟んで前記光ディスクと反対の側にあること、を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光ディスク装置の光学ヘッド。
【請求項8】前記固定光学ユニットは、前記回動アームの回転軸の方向において、前記回動アームを挟んで前記光ディスクと同じ側にあること、を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光ディスク装置の光学ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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