説明

光ピックアップ光学系

【課題】光ピックアップ光学系そのものの製造費用を抑えられるようにすること。
【解決手段】光ピックアップ光学系10を構成するプリズム11を、半導体レーザーLDから放射されるレーザーを平行光に変換する凸レンズ面としての回転対称非球面状の入射面11aと、入射面11aにより平行光に変換されたレーザーを内面反射する反射面11bと、反射面11bにより内面反射されたレーザーを光ディスクODに垂直な方向に向けて屈折させる射出面11cとを有する光学素子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクにスポット光を照射するための光ピックアップに内蔵される光学系に、関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、光ピックアップ光学系の一般的な基本構成は、レーザー光源から放射されたレーザーを平行光に変換するためのコリメーター,レーザーの進行方向を光ディスクと略平行な方向から垂直な方向に変換するための立ち上がりミラー,及び、コリメーターによって平行光に変換されたレーザーを光ディスク上に収斂させる対物レンズからなる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−322343号公報(図1,図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ピックアップの製造に関しては、他の一般的な工業製品と同様に、製造費用の削減が求められている。そして、従来品に比べて光ピックアップの製造費用を抑えることに対し、光ピックアップ光学系も貢献できないかと、検討されている。
【0005】
本発明は、前述した従来の事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、光ピックアップ光学系そのものの製造費用を抑えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために案出された光ピックアップ光学系は、光ディスクにスポット光を照射するための光ピックアップに内蔵される光学系であって、レーザー光源から放射されたレーザーを平行光に変換する凸状入射面と、その凸状入射面により平行光に変換されたレーザーを内面反射する反射面と、前記光ディスクに垂直な方向に向けてレーザーを射出する射出面とを、有するプリズム,及び、前記プリズムから射出されたレーザーを前記光ディスク上に収斂させる対物レンズからなることを、特徴としている。
【0007】
このように、コリメート機能と屈折機能とを一つの光学素子に持たせることにより、従来のようにコリメート機能と屈折機能とを別々の光学素子(コリメーター及び立ち上がりミラー)に持たせることに比べて、部品数を削減することができる。然も、コリメート機能部分と屈折機能部分とを一体成形しても、プリズムの歩留りが悪化することもない。この結果、光ピックアップ光学系そのものの製造費用が、従来品に比して抑えられることとなる。
【0008】
なお、本発明の光ピックアップ光学系では、プリズムの反射面が、レーザーを、光ディスクに垂直な方向へ、内面反射するものであっても良いし、射出面においてレーザーの断面形状を一方向にのみ縮小する機能を発揮させるため、その反射面が、光ディスクに垂直な方向に対して凸状入射面がある側とは反対側に傾いた斜めの方向に向けて、レーザーを内面反射するものであっても良い。
【0009】
後者の場合、プリズムの射出面は、反射面が内面反射したレーザーを、その進行方向が光ディスクに垂直な方向となるよう屈折させつつ、そのレーザーの進行方向に直交する断面内における反射面と射出面との接線方向に直交する方向の長さを、縮小させるものとなる。このようにしてレーザーの断面形状を一方向にのみ縮小できるようにすることにより、凸状入射面の焦点距離を伸ばすことができるようになり、その結果、レーザー光源とプリズムとの間に他の光学素子が配置しやすくなる。
【0010】
また、レーザーの断面形状を一方向にのみ縮小するために射出面においてレーザーに屈折を作用させるようにすると、レーザー光源が半導体レーザーである場合に、レーザー光源の波長変動によって色収差が発生してしまう。このため、プリズムがレーザー断面形状の一方向の長さを縮小する機能を有する場合においては、凸状入射面に、色収差を補正するための回折格子が形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明の光ピックアップ光学系では、プリズムから対物レンズへ射出されるレーザーが平行光であれば良く、プリズムの凸状入射面は、必ずしもレーザー光源から放射されたレーザーを平行光にするものでなくても良い。この場合、プリズムの反射面及び/又は射出面を、湾曲面として形成することによってパワーを持たせることにより、凸状入射面を透過したレーザーを平行光に変換させる必要がある。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、光ピックアップ光学系そのものの製造費用を抑えることができるようになり、延いては、光ピックアップの製造費用を抑えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明を実施するための最良の形態について、説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の光ピックアップ光学系の基本構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の光ピックアップ光学系10は、プリズム11及び対物レンズ12を、含んでいる。
【0015】
このうち、プリズム11は、半導体レーザーLDから光ディスクODと略平行な方向(図1では右方)に向けて放射されるレーザーに対し、後述するように、拡散光から平行光への変換(平行化),及び、光ディスクODと略平行な方向から垂直な方向への進行方向の変換(反射)の各作用を施すための光学素子である。また、このプリズム11は、後述するように、半導体レーザーLDから断面楕円形の状態で放射されるレーザーに対し、断面形状の整形(真円化)の作用を施すための光学素子ともなっている。以下、プリズム11について具体的に説明する。
【0016】
図2は、プリズム11の斜視図である。図2に示すように、プリズム11は、略六面体形状に形成されている。六面のうち、一面は、半導体レーザーLDから放射されたレーザーが入射する入射面11aとして利用される。ここで、半導体レーザーLDから放射されたレーザーの断面形状(楕円形状)の中心を通る線を、主光線と定義すると、プリズム11は、光ピックアップ内において、この主光線が入射面11aの中心へ垂直に入射するように、設置される。なお、図1及び図2では、主光線は、一点鎖線にて示されている。この入射面11aは、平面形状ではなく、半導体レーザーLDに向かって若干突出するように、凸状に形成されている。より詳しく説明すると、入射面11aの面形状は、その中心軸を対称軸とする回転対称な非球面形状となっており、このような面形状により、入射面11aは、凸レンズ面として機能する。この入射面11aの非球面形状は、半導体レーザーLDから放射されたレーザーがこの入射面11aを通過する際、そのレーザーに対し、拡散光から平行光に変換する作用(平行化作用)を及ぼすよう、調整されている。なお、レーザーは、入射面11aにおいて平行化されるだけであり、平行化されたレーザーの断面形状は、平行化される前の状態と同様に、光ディスクODと平行な方向(図1では紙面に直交する方向)に短軸を向けた楕円形となる。
【0017】
また、プリズム11の六面のうち、入射面11aに対して光ディスクODがある側とは反対側において隣接する一面は、入射面11aから内部に入射したレーザーを内面反射する反射面11bとして利用される。この反射面11bは、平面状に形成されている。そして、この反射面11bは、入射面11aにより平行化されたレーザー(及び主光線)を、光ディスクODと略平行な方向から、光ディスクODに垂直な方向に対して入射面11aがある側とは反対側に傾いた斜めの方向(図1では右上方)に向けて、反射するよう、入射面11aに対して傾けられている。なお、レーザーは、反射面11bにおいて反射されるだけであり、その断面形状は、光ディスクODと平行な方向に短軸を向けた楕円形のままとなる。
【0018】
また、プリズム11の六面のうち、反射面11bに対して入射面11aが有る側とは反対側において隣接する一面は、反射面11bにおいて内面反射されたレーザーをプリズム11の外部へ射出する射出面11cとして利用される。この射出面11cも、平面状に形成されている。そして、この射出面11cの反射面11bに対する傾き角度は、反射面11bにより内面反射されたレーザー(及び主光線)を屈折させながら光ディスクODに垂直な方向に向かって進行させるよう、調整されている。また、射出面11cでレーザーが屈折する際、そのレーザーの断面形状である楕円形状の長軸長が短軸長と一致するまで短縮されるよう、入射面11aの中心軸に対する反射面11b及び射出面11cの各々の法線の傾き角度が、調整されている。なお、このようなレーザーの断面形状の整形(真円化)を射出面11cにおいて行わせることにより、プリズム11内での長軸長を大きくすることができ、その結果、プリズム11と半導体レーザーLDとの間隔を広くとることができるようになる。
【0019】
ところで、半導体レーザーLDは、熱等に起因して波長変動を生ずることが知られているが、この波長変動があると、射出面11cにおいて色収差が生ずる。このため、本実施形態では、入射面11aに、微視的に径の異なる複数の輪帯状の回折溝(微細であるため図示せず)が、互いの中心が入射面11aの中心軸に一致するように、形成されており、これら複数の回折溝により構成される回折格子にて、色収差が補正されるようになっている。勿論、それら複数の回折溝の深さと径方向の幅と互いの間隔は、その色収差が適宜補正できるよう調整されている。
【0020】
また、プリズム11の六面のうち、前述した反射面11b及び射出面11cの何れにも垂直に接する一対の面(図1の紙面と平行な平面)は、図1及び図2に示すように略台形状に形成されている。
【0021】
対物レンズ12は、以上に説明した面構成のプリズム11から光ディスクODに直交する方向へ射出される断面円形のレーザーを、光ディスクOD上に収斂させるための光学素子である。この対物レンズ12は、プリズム11の射出面11cに対して光軸が直交するように、光ピックアップ内に設置される。また、この対物レンズ12は、図示していないが、光ピックアップ内では、周知の二軸アクチュエータに取り付けられ、スポット光が光ディスクOD上の適正位置に適正な大きさで形成されるよう、光ディスクODに垂直な方向(フォーカシング方向)と光ディスクODの径方向(トラッキング方向)とに駆動されるようになっている。
【0022】
本実施形態の光ピックアップ光学系10が、以上に説明したように構成されているため、半導体レーザーLDから放射されるレーザーは、プリズム11の内部に進入するときに、その入射面11aにより平行化され、その後、反射面11bと射出面11cとにより二度向きが変えられ、光ディスクODに垂直に向かう平行光として、プリズム11の外部に射出される。プリズム11から射出されたレーザーは、対物レンズ12により光ディスクOD上に収斂され、光スポットを形成する。
【0023】
そして、この本実施形態のようにコリメート機能と屈折機能とを一つの光学素子(プリズム11)に持たせることにより、従来のようにコリメート機能と屈折機能とを別々の光学素子(コリメーター,立ち上がりミラー)に持たせることに比べて、部品数を削減することができる。然も、コリメート機能部分と屈折機能部分とを一体成形しても、プリズム11の歩留りが悪化することもない。この結果、光ピックアップ光学系10の製造費用が、従来品に比して抑えられることとなる。
【0024】
なお、本実施形態では、反射面11bと射出面11cとにおいてレーザーを二度屈折させることにより、レーザーの断面形状である楕円形の長軸長を縮小するようにしていたが、この機能はなくてもよい。この場合、反射面11bを、入射面11aで平行化されたレーザーを光ディスクODに垂直な方向に向けて反射するものとし、尚且つ、射出面11cを、光ディスクODと平行なものとすれば良い。このようにプリズム11を構成すれば、レーザーが射出面11cにおいて屈折されなくなるので、半導体レーザーLDの波長変動があっても色収差が生じなくなる。この場合、回折格子は、入射面11aに形成されてもよいし、形成されなくてもよい。但し、プリズム11から射出されるレーザーの断面形状が楕円形となってしまうので、真円化する必要がある場合、レーザーの断面形状を整形するための光学素子を、プリズム11の前後に配置する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態の光ピックアップ光学系の基本構成を示す図
【図2】プリズムの斜視図
【符号の説明】
【0026】
10 光ピックアップ光学系
11 プリズム
11a 入射面
11b 反射面
11c 射出面
12 対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにスポット光を照射するための光ピックアップに内蔵される光学系であって、
レーザー光源から放射されたレーザーを平行光に変換する凸状入射面と、その凸状入射面により平行光に変換されたレーザーを内面反射する反射面と、前記光ディスクに垂直な方向に向けてレーザーを射出する射出面とを、有するプリズム,及び、
前記プリズムから射出されたレーザーを前記光ディスク上に収斂させる対物レンズ
を含むことを特徴とする光ピックアップ光学系。
【請求項2】
前記凸状入射面が、回転対称な非球面形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ光学系。
【請求項3】
前記プリズムの前記反射面が、前記レーザーを、前記光ディスクに垂直な方向に対して前記凸状入射面がある側とは反対側に傾いた斜めの方向に向けて、内面反射するとともに、
前記プリズムの前記射出面が、前記反射面で反射されたレーザーを、その進行方向が前記光ディスクに垂直な方向となるよう屈折させつつ、そのレーザーの進行方向に直交する断面内における前記反射面と前記射出面との接線方向に直交する方向の長さを、縮小させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の光ピックアップ光学系。
【請求項4】
前記凸状入射面に、色収差を補正するための回折格子が、形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の光ピックアップ光学系。
【請求項5】
前記プリズムの前記反射面が、前記レーザーを、前記光ディスクに垂直な方向へ、内面反射する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の光ピックアップ光学系。
【請求項6】
前記プリズムが、前記レーザー光源から放射されたレーザーを、前記光ディスクと略平行な方向から、前記光ディスクに垂直な方向に屈折する
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の光ピックアップ光学系。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−130116(P2008−130116A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310968(P2006−310968)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】