説明

光ファイバコネクタの研磨方法

【課題】簡便で、精度の高いMT型フェルールを提供する。
【解決手段】フェルール保持治具にラッピングフィルム57の研磨面及び穴60,61を有する研磨機62で、突き合せ面及び位置合わせピン53,54を有するフェルール51を含む光ファイバコネクタを研磨する方法であって、前記研磨機62に前記フェルール51を載置すること、位置合わせピン53,54を適正な位置合わせのための基準として用い、前記位置合わせピン53,54を前記フェルール保持治具の穴60,61に押し込むこと、前記フェルール51を前記フェルール保持治具に締結固定すること、制御された力により前記研磨面に前記フェルール51を押し当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年9月27日に出願された米国非仮特許出願第10/951、105号を基礎として優先権を主張する。
本発明は、多心光ファイバコネクタの分野に関し、より詳細には、ジェンダーニュートラル(neutral gender)なMT型フェルール及びアダプタ構成(design)並びに対応する研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ分野では、多くの場合、或る1本のファイバから別のファイバに光を伝送する必要性が生じる。この問題に対する一解決策は光コネクタの使用である。光コネクタは、単心又は多心ファイバ構造(configuration)を有することができる。単心ファイバコネクタは、ただ1本のファイバから別の単心ファイバへの接続を行う。多心ファイバコネクタでは、複数のファイバが別の組の同様の複数のファイバと同時に結合する。本明細書に開示される本発明は、多心ファイバ用途に適用される。
【0003】
多心ファイバコネクタは、実装密度が高いため、光ファイバ用途において非常に普及している。フェルール内にあるチャネルの内部にファイバを固定することによって接続が行われる。ファイバを位置合わせするとともに相互の接続を保つ機能を有するアダプタの内部で、2つのフェルールが結合される。一対のコネクタは、突き合せしたとき、端どうしが適正に位置合わせさられた光ファイバを各自が含有するようになっていなければならず、それにより、突き合せされた一対のコネクタにおける他のコネクタのファイバと効率的な光伝送が行われるようになっている。かかるタイプのコネクタの1つは、MT(すなわち「機械的伝送」)型コネクタであり、これは、72本までのファイバに対して様々な数に(すなわち「線形アレイ」で)製造される。
【0004】
72個のチャネルを有するコネクタであれば、それぞれ12本のファイバから成る6つのアレイの配列となる。チャネルの数が12以上の任意の数であれば、12、24、36、48、60、及び72等、12の倍数となる。
【0005】
従来技術のMTコネクタは、前面の突き合せ面と平行な後面とを有するほぼ直線の本体を有する。保護緩衝物がファイバの端から取り外され、ファイバがファイバリボンケーブルの一部として後面からコネクタに挿入される。個々のファイバを前面の突き合せ面にて露出する穴が、非常に厳密な公差で形成される。ファイバは、エポキシ又は他の適した接着剤によって穴の所定位置に設置される。露出したファイバの端及び前面の突き合せ面が研磨される。多くの場合、コネクタばねを用いて、突き合せされた一対のコネクタを合わせて保持し、嵌合ファイバの端が標準的な突き合せ力下で接触状態に確実に保たれるようにする。
【0006】
必要とされる位置合わせは通常、MT型コネクタでは、フェルールのうち一方のフェルールの穴に2つのピンを取り付けることによって達成され、そのフェルールにおいて各ピンはピンホルダにより所定位置に保持される。この組立作業後、このフェルールはオスフェルールとなる。他方のフェルールの対応する穴の背後にスペーサ(図示せず)を設けることで、第2のフェルールはメスフェルールとなる。オスフェルールとメスフェルールとが突き合わされると、オスフェルールからのピンがメスフェルールの穴に挿通されることで、所望の位置合わせが達成される。この構成は、従来技術である図1に示す。ピンを導入するため、穴は通常、直径がピンよりも若干大きくなっており、そのため、位置合わせの精度が下がり、結果として、光学的接続性能の精度が下がる。従来のMT型コネクタ構造の別の不利点は、光ファイバを成端するのに必要な研磨プロセスの際に、フェルール本体を基準として用いなければならないという点である。これにより、フェルール本体(通常、プラスチック材料から成形される)の製造の際により高い精度が必要となる。本発明の新規の構造により、この必要性はなくなる。さらに、従来のMT型コネクタでは、穴の周りの領域を含めた、フェルールの表面全体が研磨されねばならない。この場合、穴は、研磨後に清掃される必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、より簡便であるとともにより精度の高いMT型フェルールを提供することである。これは、ジェンダーニュートラルな構成により達成される。ガイドピンは、フェルール本体の凹状領域に位置し、フェルール本体にオーバーモールドされるか又は他の方法で動かないように固定される。
【発明の効果】
【0008】
ガイドピンは、ファイバチャネルと同じ金型でオーバーモールドされ、そのため、ファイバチャネルに対するこれらのピンの位置決めが非常に正確となる。ピンの長さは、ピンが接触面を越えて突出しないようなものとなっており、その結果、フェルールは取り付けられたピンで成端することができる。こうして、ピンは、研磨機内にフェルールを配置するための基準として用いることができるため、フェルール本体に対して厳密な公差を必要としない。伝達精度のための従来技術方法が用いられる場合は、さらなる精度を達成することができる。当該方法では、治具を用いてファイバ通路内でファイバを互いに整列させ、次いで、接着剤を塗布してファイバの位置を保持する。
【0009】
ケーブルを保持するコネクタの両端が同一であることにより、取付者は使用しやすくなる。ジェンダーニュートラルなMT型の一タイプのコネクタしか在庫に保持しておく必要がない。また、部品(ピンホルダはない)の数が少ないほど、在庫削減に有利である。
【0010】
本発明では、位置合わせピン及びV溝アダプタ本体間のゼロギャップ構成により位置合わせが達成される。ピンは、ばね又はばねクリップにより圧力下に保たれることで、ゼロギャップ位置決めが得られる。さらに、高精度なスリーブ又は穴にピンを配置することによってギャップを小さくすることができ、また望ましくはV構内にピンを配置することによって、ギャップをなくすようにすることができる。その結果、従来のガイドピンと従来のMT型コネクタのガイド穴との間のギャップの問題がなくなり、そのため、より精度の高いコネクタが提供される。
【0011】
本発明では、従来のMT型コネクタにおけるよりも挿抜力が一定であるが、その理由は、挿抜力がアダプタの内側のばねによって決まるのであって、ガイドピン及びガイド穴間の常に異なるギャップによって決まるのではないからである。かかる対ごとのガイドピン及びガイド穴の不可避的公差のため、従来のMT型コネクタのガイドピン及びガイド穴がないことが有意な利点となる。本発明の構造では、フェルールのメス面のうちファイバとともに研磨される領域は小さくなっている。かかる穴がないため、ガイド穴の周りには研磨すべきプラスチック材料はない。したがって、研磨処理がより高速、より一定、より高精度となり、必要であれば、より簡便に自動化することもできる。
【0012】
研磨後の清浄作業がより簡便且つ高速となる。特に、従来のオスフェルールを清浄する際に回避すべきピンもなく、また、従来のようにメスフェルールの深いガイド穴を清浄する困難性もない。
【0013】
新規のフェルール用の金型は、研磨の際にフェルールの外部本体を基準として用いないため、フェルールの外部本体がもはや厳密な公差を必要としないことから廉価である。したがって、本発明のフェルールの外部本体は、従来のMT型コネクタと同レベルの精度を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記に挙げた目的は、本発明のジェンダーニュートラルなMT型フェルール、アダプタ、及び研磨方法により達成又は克服される。光ファイバコネクタ−アダプタシステムは、少なくとも1本の光ファイバを受け入れる第1の面と、少なくとも1本の光ファイバの端が露出する第2のほぼ平行な突き合せ面とを有する本体を有することで、突き合せする第2のフェルールにより光伝送するようにする、第1のフェルールを備える。第1のフェルール本体は、実質的にジェンダーニュートラルであるように突き合せ面に近接して動作可能に位置するとともに第2のフェルールと突き合せ接続することが可能な、固定取付けされた2つの位置合わせピンをさらに備える。
【0015】
第1のフェルールは、突き合せ面を越えて突出しないように本体の凹状領域に位置する位置合わせピンをさらに備える。アダプタは、フェルールの位置合わせピンの2つとの間がゼロギャップとなる位置合わせで係合するピンホルダを備える。ピンホルダは、2つの異なるフェルールの2つの位置合わせピンをピンホルダとの間がゼロギャップの位置合わせで係合可能にすることで、フェルールを接合して突き合せ接続状態にするように構成される。
【0016】
ピンホルダは、位置合わせピンのそれぞれをしっかりと受け入れるように少なくとも1つのV溝を含む。アダプタは、位置合わせピンの少なくとも1つを付勢するとともにアダプタ内に保持し、アダプタに対するフェルールの特定の挿抜力を維持する、少なくとも1つの付勢部材をさらに有する。位置合わせピンは、フェルールを適正に研磨するための基準としての役割を果たす。
【0017】
光ファイバコネクタを研磨する方法は、研磨機に、突き合せ面及び位置合わせピンを有するフェルールを配置することを含む。研磨機は、フェルール保持治具に研磨面及び穴を有する。研磨方法は、フェルールを研磨機に載置すること、位置合わせピンを適正な位置合わせのための基準として用いるために位置合わせピンをフェルール保持治具の穴に押し込むこと、フェルールをフェルール保持治具に締結固定すること、及び制御された力により研磨面にフェルールを押し当てることを含む。
【0018】
光ファイバコネクタ−アダプタシステムの別の実施形態は、少なくとも1つのマイクロレンズを受け入れる第1の表面と、少なくとも1つのマイクロレンズの端が露出するほぼ平行な第2の突き合せ面とを有する本体を有することで、突き合せする第2のフェルールにより光伝送するようにする、第1のフェルールを備える。第1のフェルール本体は、実質的にジェンダーニュートラルであるように突き合せ面に近接して動作可能に位置するとともに第2のフェルールとの突き合せ接続が可能な、固定取付けされる2つの位置合わせピンをさらに備える。
【0019】
したがって、他の光ファイバコネクタ−アダプタシステムに比して、本発明、特にかかるMT型フェルール、アダプタ、及び研磨方法により有意な利点が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
添付の図面は、従来技術及び本発明の好適な実施形態を詳細に示す。
【0021】
図1は、従来技術を示し、同図では、2つの標準MTフェルール10(1つはオス12であり、もう1つはメス11である)が突き合せ位置にある。オスフェルール12からのガイドまたは位置合わせピン13、14がメスフェルール11の穴15に挿通されている。位置合わせピン13、14の作用は、光伝播を可能にするよう、2つのフェルール11、12の一方からのファイバ(図示せず)が他方のフェルールの対応するファイバと位置合わせするように、これら2つのフェルール11、12を位置決めすることである。この位置合わせ、及びこの位置合わせによる接続の効率は、双方のピン13、14、穴15、及びフェルール11、12に対するピン各自の位置決めによって制限される。
【0022】
図2は、本発明の主題であるジェンダーニュートラルなフェルール21の斜視図を示す。図2では、ピン22、23が位置する領域25、26は、突き合せ面24に対し窪んで凹状となっていることが示されている。位置合わせピン22、23は、フェルール21の本体に固定されており、突き合せ面24を越えては突出していない。明確にするため、本図及び以下の図では、突き合せ面24には一列のみのファイバ穴27しか示されていない。フェルール21は、複数列のファイバ27を有し得る。この実施形態は、研磨されたファイバを有する従来構造のフェルールにも、また、マイクロレンズを有するフェルールにも適用される。
【0023】
図2aは、ジェンダーニュートラルなフェルール21の突き合せ面24の端面を示す。また、位置合わせピン22及び23、並びに凹状領域25、26も示されている。図2aのセクションAは、穴又はV溝27(V溝しか図示せず)内に含まれるファイバ28及び29の上方及び下方の硬質材料インサート30、31(上方の硬質材料インサート31及び下方の硬質材料インサート30)も含む本発明の代替的な実施形態の拡大図を示す。
【0024】
図3は、突き合せ位置30にある2つのジェンダーニュートラルなフェルールを示す。フェルール31のガイドピンすなわち位置合わせピン33、34、及びフェルール32のピン35、36が、V溝下部ホルダ37にあるV溝38、39によって位置合わせされる。
【0025】
図3の線A−Aに沿った断面図が図4に示されている。ここでは、ピン33、34は、上部ホルダ41及びV溝下部ホルダ37間で下部ホルダ37のV溝38、39に位置して示されており、且つ、それらのピンは、特定の力FによってV溝38、39内に押圧されている。上部ホルダは、下部ホルダのV溝38、39と合致する平坦面又は別のV溝(図示せず)を有することができる。力Fは、任意のタイプの板ばね、ゴムスリーブ、又は波形ばね(図示せず)により与えられることができる。本発明のこの形態では、V溝38、39は、傾斜側面42、43及びほぼ平坦な底面44を有する。V溝の他の構成も、本発明の範囲内にあるものと解釈されるべきである。
【0026】
図5は、研磨治具58、及び研磨機62の対応プロセス50の、考えられ得る一実施形態を示す。位置合わせピン53、54は、治具58の対応する穴60、61の基準として用いられ、移動台55が必要速度でサイクロイド状(cycloidal)(すなわち極線(polar))の「8の字」運動で回転する際、移動台55の研磨面56に対して垂直にフェルール51を維持するようにする。ラッピングフィルム57が、研磨作業を行うために移動台55に取り付けられる。フェルール51は、制御された力Pによりラッピングフィルム56の研磨面に押し当てられる。研磨作業50の開始前に、位置合わせピン53、54は、穴60、61に入るまで押し込まれ、治具58に締結固定されて、フェルール51が不所望に動かないようにする。
【0027】
本発明は、本発明の精神又は主旨から逸脱しない限り、他の特定の形態に具現されることができることを理解されたい。したがって、本発明の例及び実施形態は、すべての点において、例示と見なされるべきであって、限定されるものと見なされるべきではなく、本発明は、本明細書に示した詳細に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】突き合せされた一対の従来技術MT型フェルールの頭上の一部を切り欠いた図である。
【図2】本発明のジェンダーニュートラルなフェルールの斜視図である。
【図2a】硬質材料インサート(すなわち、金属、シリコン、又はセラミック)内のファイバの詳細図を含む、本発明の一形態のジェンダーニュートラルなフェルールの端面図である。
【図3】突き合せ状態の2つのジェンダーニュートラルなフェルールを示す、頭上の一部を切り欠いた図である。
【図4】図3の線A−Aに沿った、図3の突き合せされた一対のコネクタの矢印の方向の断面図である。
【図5】ジェンダーニュートラルなフェルールを研磨するための考えられ得る治具の1つを部分的に切り欠いた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルール保持治具に研磨面及び穴を有する研磨機で、突き合せ面及び位置合わせピンを有するフェルールを含む光ファイバコネクタを研磨する方法であって、
前記研磨機に前記フェルールを載置すること、
位置合わせピンを適正な位置合わせのための基準として用いるために前記位置合わせピンを前記フェルール保持治具の穴に押し込むこと、
前記フェルールを前記フェルール保持治具に締結固定すること、
制御された力により前記研磨面に前記フェルールを押し当てること
を含む、光ファイバコネクタの研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−104770(P2011−104770A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8725(P2011−8725)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【分割の表示】特願2007−533600(P2007−533600)の分割
【原出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【出願人】(000101385)アダマンド工業株式会社 (26)
【出願人】(507097936)イルム テクノロジーズ インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】