説明

光学フィルタ

【課題】紫外光領域(250〜400nm)の光を吸収する光学フィルタ、色変換フィルタの提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される色素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾール環を少なくとも二つ有するベンゾアゾール色素(以下、単にベンゾアゾール色素とも呼ぶ)を含む光学フィルタに関する。該光学フィルタは、高精細で且つ高輝度、高効率な多色表示を可能にする光学フィルタであり、生産性にも優れたものである。また、本発明は、上記ベンゾアゾール色素を含み、波長変換能を有する色変換フィルタである光学フィルタに関する。本発明の色変換フィルタは、太陽電池等の光電変換素子用に好適に用いられるほか、液晶、PDP、イメージセンサ、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、オーディオ、ビデオ、カーナビゲーション、電話機、携帯端末機及び産業用計測器等の表示用、蛍光灯、LED、EL照明等の照明用、色素レーザー用、コピー防止用等にも有用である。
【背景技術】
【0002】
紫外光領域に吸収を持つ化合物は、太陽電池等の光電変換素子、液晶、PDP、OLED、LED等の表示、照明用途等に用いられる光学フィルタにおいて光吸収剤として用いられている。
【0003】
一方、従来より、エネルギーを吸収して励起した電子が、基底状態へ戻る際に余分なエネルギーとして電磁波を放射するような材料は、吸収と放出のエネルギーの違いから波長変換能を有しており、色変換色素(波長変換色素)として、染料、顔料、光学フィルタ、農業用フィルム等に用いられており、有機化合物においては吸収及び放出の波長が無機化合物に比較して制御しやすいため盛んに研究されてきた。特に吸収したエネルギーを蛍光として放射する化合物は蛍光色素と呼ばれ、可視光の蛍光を放射するものは実用性が高く、例えば、ディスプレイ等の表示装置、蛍光灯等の照明装置、太陽電池等の光電変換素子、生物学及び医学におけるマーカーとしての用途に用いることができる。
【0004】
色変換色素を含む光学フィルタ(色変換フィルタ)は、その用途上、高い耐光性が求められている。また、太陽電池用の用途として使用される場合は、太陽電池の発電効率が極端に低い波長域(具体的には250〜340nm)を吸収し、発電効率の高い波長域へ変換できることが望ましい。また、ストークシフトの大きい色変換フィルタは、より発電効率の高い可視領域に変換可能であり、例えば特許文献1において検討されている。特許文献1には、特定の一般式で表されるナフトラクタム誘導体を含む光学フィルタ(色変換フィルタ)が記載されている。該光学フィルタを太陽電池に用いた場合には、太陽電池全体としては発電効率が向上するが、吸収する波長域が400nm付近であるため、400nm付近の発電効率を低下させてしまう問題があった。
【0005】
特許文献2〜4には、アゾール環を二つ有するベンゾアゾール化合物が示されている。また、特許文献5には、色変換材料を用いた光電変換デバイス(太陽電池モジュール)が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/010537号
【特許文献2】特開2003−342266号公報
【特許文献3】特開2008−130599号公報
【特許文献4】特開2010−505894号公報
【特許文献5】特開2006−303033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、紫外光領域(250〜400nm)の光を吸収する光学フィルタ、とりわけ、波長変換能を有し、紫外光領域の中でも特に不要な波長域の光を吸収し、有用なより長波長の光へ変換する色変換フィルタを提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、該色変換フィルタを用いた色変換発光デバイス及び光電変換デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、アゾール環を少なくとも二つ有するベンゾアゾール化合物を含有し、蛍光を発する色変換能を有する色変換フィルタが、短波長域を吸収し、有用な波長域に変換でき、耐光性にも優れることを知見し、該光学フィルタを使用することにより、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0009】
本発明(請求項1記載の発明)は、上記知見に基づいてなされたもので、アゾール環を少なくとも二つ有するベンゾアゾール色素を少なくとも一種含む光学フィルタを提供するものである。
【0010】
また、本発明(請求項2記載の発明)は、上記アゾール環を少なくとも二つ有するベンゾアゾール色素が下記一般式(1)で表される化合物である請求項1記載の光学フィルタを提供するものである。
【0011】
【化1】

【0012】
また、本発明(請求項3記載の発明)は、上記一般式(1)におけるZが、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルカンジイル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数3〜20の2価の環式炭化水素基、−O−、−S−、−SO2−、−SS−、−SO−、−CO−又は−OCO−であり、nが0である請求項2に記載の光学フィルタを提供するものである。
【0013】
また、本発明(請求項4記載の発明)は、波長変換能を有する色変換フィルタである請求項1〜3の何れか一項に記載の光学フィルタを提供するものである。
【0014】
また、本発明(請求項5記載の発明)は、発光部と、請求項4記載の光学フィルタとを含む色変換発光デバイスを提供するものである。
【0015】
また、本発明(請求項6記載の発明)は、光電変換素子と、請求項4記載の光学フィルタとを含む光電変換デバイスを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、紫外光領域(250〜400nm)の光を吸収する光学フィルタを提供することができる。本発明の光学フィルタの中でも波長変換能を有するものは、不要な波長領域の光を吸収し、好ましい波長領域に蛍光を放射し、輝度を低下させないため、色変換発光デバイス、光電変換デバイス等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1(a)】図1(a)は、本発明の光学フィルタの好ましい一実施形態を示す断面図である。
【図1(b)】図1(b)は、本発明の光学フィルタの好ましい別の一実施形態を示す断面図である。
【図1(c)】図1(c)は、本発明の光学フィルタの好ましい更に別の一実施形態を示す断面図である。
【図2(a)】図2(a)は、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの一例である弾道型LEDデバイスの好ましい一実施形態を示す概略断面図である。
【図2(b)】図2(b)は、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの一例である弾道型LEDデバイスの好ましい別の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2(c)】図2(c)は、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの一例である弾道型LEDデバイスの好ましい更に別の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2(d)】図2(d)は、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの一例であるLEDチップを羅列した色変換発光デバイスの好ましい一実施形態を示す断面図である。
【図2(e)】図2(e)は、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの一例であるLEDチップを羅列した色変換発光デバイスの好ましい別の一実施形態を示す断面図である。
【図2(f)】図2(f)は、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの一例であるLEDチップを羅列した色変換発光デバイスの好ましい更に別の一実施形態を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの好ましい一例であるカラーディスプレイ用の色変換発光デバイスの一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の色変換フィルタを用いた光電変換デバイスの好ましい一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の光学フィルタ、色変換発光デバイス、光電変換デバイスについて、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の光学フィルタに用いられるベンゾアゾール色素について説明する。
上記ベンゾアゾール色素は、分子内に少なくとも二つのアゾール環を有していればよい。アゾール環が一つであると、製膜時に昇華したり、吸収蛍光特性が適合しない場合がある。分子内のアゾール環は多くても四つであることが好ましい。アゾール環が五つ以上であると、溶解性が低下する可能性がある。また、上記ベンゾアゾール色素は、分子量が300〜3000であることが好ましく、分子量が500〜1500であることがさらに好ましい。また、アゾール環はオキサゾール環であることが好ましく、該オキサゾール環がベンゾオキサゾール環であることが更に好ましい。
【0020】
上記ベンゾアゾール色素としては、上記一般式(1)で表される化合物が好ましく挙げられるほか、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物等も挙げられる。上記一般式(1)で表される化合物は、樹脂や溶媒に対する溶解性に優れる点で好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
上記一般式(1)〜(3)において、R1〜R12で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0023】
上記一般式(1)〜(3)において、R1〜R12、R、R’及びR”で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基の炭化水素基としては、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素で置換された芳香族炭化水素基等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、ターフェニル、フルオレイル、チオフェニルフェニル、フラニルフェニル、2’−フェニル−プロピルフェニル、ベンジル、ナフチルメチル等が挙げられ、
上記脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、ノニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素基は、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR13−、−C=C−、−C≡C−で中断されていてもよく、R13は上記炭化水素基と同様の基であり、
上記脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素基としては、上記脂肪族炭化水素基で置換されたフェニル、ナフチル、ベンジル等が挙げられる。
これらの炭化水素基を置換してもよい基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、−NR1415基等が挙げられ、R14及びR15が表す基は上記炭化水素基と同様の基である。尚、上記炭化水素基を中断及び/又は置換する基に炭素原子を含む場合、中断及び又は置換する基を含めた炭素原子数が1〜20である。
【0024】
上記一般式(1)〜(3)において、R1〜R12、R、R’及びR”で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜20のヘテロ環基としては、芳香族ヘテロ環基、脂肪族ヘテロ環基、脂肪族炭化水素基で置換された芳香族ヘテロ環基、脂肪族炭化水素基で置換された脂肪族ヘテロ環基等が挙げられる。
上記芳香族ヘテロ環基としては、フラニル、チオフェニル、クロメニル、チオクロメニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル等が挙げられ、
上記脂肪族ヘテロ環基としては、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル等が挙げられ、
上記脂肪族炭化水素基で置換された芳香族ヘテロ環基としては、上記脂肪族炭化水素基で置換された上記芳香族ヘテロ環基が挙げられ、
上記脂肪族炭化水素基で置換された脂肪族ヘテロ環基としては、上記脂肪族炭化水素基で置換された上記脂肪族ヘテロ環基が挙げられる。
これらのヘテロ環基を置換してもよい基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、−NR1415基等が挙げられ、R14及びR15が表す基は上記炭化水素基と同様の基である。尚、上記炭化水素基を中断及び/又は置換する基に炭素原子を含む場合、中断及び又は置換する基を含めた炭素原子数が1〜20である。
【0025】
上記一般式(1)においてZで表される2価の連結基としては、特に限定されないが、炭素原子数1〜4のアルカンジイル基、炭素原子数3〜20である2価の環式炭化水素基、−O−、−S−、−SO2−、−SS−、−SO−、−CO−、−OCO−が好ましく挙げられ、上記アルカンジイル基及び上記2価の環式炭化水素基はハロゲン原子で置換されていてもよい。Zがこれらの2価の連結基であると、製造が容易であるため好ましい。
炭素原子数1〜4のアルカンジイル基としては、メタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル等が挙げられる。
2価の環式炭化水素基としては、以下の基が挙げられる(尚、以下の基において、*は、これらの基が*部分で、隣接するベンゼン環と結合することを意味する)。
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
上記一般式(1)においてZ’で表される2価の連結基としては、特に限定されないが、上記で説明したZが表す好ましい2価の連結基として挙げたもの、2価のアリール基等が挙げられる。2価のアリール基としては、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−フェニレン、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル等が好ましい例として挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、
1及びR2が芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素基、芳香族ヘテロ環基又は脂肪族炭化水素基で置換された芳香族ヘテロ環基であるものは、蛍光特性に優れるので好ましく、
1及びX2が酸素原子であるものは、製造が容易なため好ましく、
Zがハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜4のアルカンジイル基であるものは、蛍光特性に優れる点で好ましく、
nが0であるものは、樹脂や溶剤に対する溶解性に優れる点で好ましい。
【0032】
上記一般式(2)又は(3)で表される化合物の中でも、
9及びR10が芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素基、芳香族ヘテロ環基又は脂肪族炭化水素基で置換された芳香族ヘテロ環基であるものは、蛍光特性に優れる点で好ましく、
3及びX4が酸素原子であるものは、製造が容易なため好ましい。
【0033】
また、上記一般式(1)におけるR3〜R8並びに上記一般式(2)及び(3)におけるR11及びR12は、水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアリール基又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0034】
本発明に係る上記一般式(1)〜(3)で表されるベンゾアゾール化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜27が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0035】
【化7】

【0036】
【化8−1】

【0037】
【化8−2】

【0038】
上記一般式(1)で表される化合物は、その製造方法は特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができるが、製造方法としては、例えば一般式(1)のnが0の場合、特開2008−130599号公報に記載されているルートの如く、下記反応式に示すように合成できる。即ち、下記一般式(4)で表されるカルボン体、酸ハロゲン体又はアルデヒド体と、下記一般式(5)で表される化合物との縮合反応によって合成することができる。
【0039】
【化9−1】

【0040】
また、上記一般式(1)のnが1又は2である場合、上記一般式(1)で表される化合物は、下記の反応式に示すように合成できる。
【0041】
【化9−2】

【0042】
本発明の光学フィルタは、250〜400nm、特に250〜340nmの範囲の光を吸収する光学フィルタとしての使用に好適である。
本発明の光学フィルタの中でも、上記ベンゾアゾール色素として波長変換能を有する化合物を用いたものは、波長変換能を有する色変換フィルタとして用いることができる。波長変換能を有する色変換フィルタである本発明の光学フィルタ(以下、本発明の色変換フィルタともいう)は、上記吸収した波長の光をより長波長の光に変換する色変換フィルタとして用いることができる。本発明の色変換フィルタは、250〜400nmの範囲の光を、300〜700nmの範囲の長波長光に変換する色変換フィルタとしての使用に好適である。
本発明の光学フィルタの中でも波長変換能を有しないものは、250〜340nmの範囲の光を吸収する光吸収フィルタとして使用することができる。
【0043】
本発明の色変換フィルタは、高い蛍光量子効率を有する。本発明の色変換フィルタは、特定の紫外光を吸収し、より長波長の光に変換するため、例えば光電変換デバイスの発電効率を高めることが可能である。
【0044】
本発明の色変換フィルタは、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置;LED照明、エレクトロルミネッセンス照明等の発光デバイス;太陽電池等の光電変換デバイスに用いられる色変換フィルタとして用いることができる。
本発明の光学フィルタのうち、波長変換能を有しないものは、光吸収フィルタとして、上記同様の用途に用いることができるが、光電変換デバイスの発電効率を高めることや、表示及び照明の輝度を向上させる等の効果を有する点で、色変換能を有する方が好ましい。
【0045】
本発明の光学フィルタは、上記ベンゾアゾール色素を含んでいればよく、光学フィルタの構成に制限はないが、例えば、従来のものと同様、少なくとも支持体を有し、必要に応じて、光学機能層、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各種機能層を有することができる。本発明の光学フィルタにおいて、上記ベンゾアゾール色素は、支持体及び各種機能層のいずれかに含まれていればよく、通常、支持体又は光学機能層に含有されていることが好ましい。また、本発明の光学フィルタの大きさ及び形状は、特に制限されず、用途に応じて適宜決定される。
【0046】
本発明の光学フィルタの好ましい実施形態の構成例を図1(a)〜(c)に示す。例えば、光学フィルタは、支持体100と、上記ベンゾアゾール色素を含有する光学機能層120とを含み、必要に応じて、下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140、潤滑層150等を設けることができる。図1(a)に示すように、支持体100の一方の表面上に、下塗り層110、光学機能層120、反射防止層130、ハードコート層140及び潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、図1(b)に示すように、支持体100の一方の表面上に下塗り層110、光学機能層120、ハードコート層140及び潤滑層150を積層し、他方の表面上に下塗り層110、反射防止層130及び潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、本発明の光学フィルタは、図1(c)に示すように、上記ベンゾアゾール色素を含有する光学機能支持体105の表面上に下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140及び潤滑層150を積層した構造であってもよい。
上記ベンゾアゾール色素を含有する光学機能層120又は光学機能支持体105は、ベンゾアゾール色素が波長変換能を有しない場合は光吸収層として機能し、ベンゾアゾール色素が波長変換能を有する場合は色変換層(光吸収層を兼ねる)として機能する。
【0047】
支持体100の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ポリフルオレン樹脂、シリコン樹脂等の合成高分子材料を用いることができる。支持体100は透明支持体であることが好ましく、可視光に対して80%以上の透過率を有することが好ましく、86%以上の透過率を有することがさらに好ましい。支持体100のヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。支持体100の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。支持体100の厚みは、用途等に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、通常10〜10000μmの範囲から選択されることが好ましい。
【0048】
図1中の各層には、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、無機微粒子、光拡散剤等を添加してもよい。また、支持体100に各種の表面処理を施してもよい。該表面処理は、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等を含む。
【0049】
また、光学機能層120又は光学機能支持体105中には、他の波長域の光を吸収する色素をさらに添加することも可能である。他の波長域の光を吸収する色素としては、特に限定されないが、例えば、シアニン系色素、ピリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、クマリン色素系染料、ナフタルイミド系色素、ピロメテン系色素、ペリレン系色素、ピレン系色素、アントラセン系色素、スチリル系色素、ローダミン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、ジケトピロロピロール系色素、イリジウム錯体系色素、ユーロピウム系色素、ナフトラクタム系色素等が挙げられる。
【0050】
他の波長域の光を吸収する色素の中でも、350〜400nmの波長域に最大吸収波長を有し、400〜700nmの波長域に最大蛍光波長を有する色素(以下、併用色素という)を、上記ベンゾアゾール色素と共に本発明の光学フィルタに含有させた場合、本発明の光学フィルタは、250〜350nmの光を400〜700nmへ変換する光学フィルタ(色変換フィルタ)となり、大きなストークシフトを有するため好ましい。他の波長域の光を吸収する色素として以上に列挙した各種色素及び染料は、いずれも上記併用色素として有用である。上記ベンゾアゾール色素と上記併用色素との使用比率(前者:後者、質量基準)は、1:0.001〜5の範囲が好ましく、1:0.01〜2の範囲がさらに好ましい。
【0051】
光学機能層120又は光学機能支持体105の構成物としては、必要に応じて、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のバインダー樹脂や、光拡散剤、光安定剤、硬化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、界面活性剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、重金属不活性剤、ハイドロタルサイト、有機カルボン酸、着色剤、加工助剤、無機添加剤、充填剤、透明化剤、造核剤、結晶化剤等の各種添加剤を使用することができる。
【0052】
光学機能層120又は光学機能支持体105は、上記ベンゾアゾール色素を少なくとも1種類含有していれば特に形態を問わないが、例えば、上記ベンゾアゾール色素をバインダー樹脂中に溶解又は分散した樹脂液から得られるフィルムからなってもよいし、上記アゾール色素のみからなる単独膜又は積層体からなってもよい。光学機能層120及び光学機能支持体105の厚みは用途等に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、光学機能層120の厚みは0.1〜100μmの範囲から、光学機能支持体105の厚みは10〜10000μmの範囲から、それぞれ選択されることが好ましい。また、上記アゾール色素は充填剤、封止剤、接着剤等の形態にして光学フィルタに含有させても良い。
【0053】
光学機能層120又は光学機能支持体105の製造方法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法や、溶媒中に上記ベンゾアゾール色素及びバインダー樹脂等を溶解又は分散した後、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法あるいはエクストルージョンコート法によって恒久支持体又は一時支持体上に塗膜形成する方法が挙げられる。
【0054】
上記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アルコール系、ジオール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、脂肪族又は脂環族炭化水素系、芳香族炭化水素系、シアノ基を有する炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素系等が挙げられる。
【0055】
あるいはまた、光学機能層120又は光学機能支持体105の製造方法として、上記アゾール色素と高分子材料とを含む混合物を押出成形、キャスト成形又はロール成形して、直接的に自立層を形成してもよい。用いることのできる高分子材料は、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル; ポリアミド; ポリカーボネート; ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン;ノルボルネン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリビニルブチラール(PVB)等を含む。
【0056】
あるいはまた、上記ベンゾアゾール色素と、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂並びに光重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを混合した後、光照射及び/又は加熱処理により硬化膜とすることも出来る。
【0057】
あるいはまた、ウェットエッチングを伴うパターニングの必要がある用途に本発明の光学フィルタを使用する場合には、上記アゾール色素と光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)からなる組成物から製造することが出来る。この場合には、光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)の硬化物が、パターニング後の光学フィルタのバインダーとして機能する。また、パターニングを円滑に行うために、該光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂は、未露光の状態において有機溶媒又はアルカリ溶液に可溶性であることが望ましい。用いることができる光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)は、具体的には、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマー及びオリゴマーと、光又は熱重合開始剤とからなる組成物、(2)ポリビニル桂皮酸エステルと増感剤とからなる組成物、(3)鎖状又は環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物(ナイトレンが発生して、オレフィンを架橋させる)、及び(4)エポキシ基を有するモノマーと酸発生剤とからなる組成物等を含む。特に、(1)のアクリル系多官能モノマー及びオリゴマーと光又は熱重合開始剤とからなる組成物を用いることが好ましい。なぜなら、該組成物は高精細なパターニングが可能であり、且つ重合して硬化した後は、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性が高いからである。
【0058】
本発明の光学フィルタ、特に色変換フィルタにおいては、上記ベンゾアゾール色素の使用量を、通常フィルタの単位面積当たり1〜10000mg/m2の範囲内、好ましくは10〜3000mg/m2の範囲内とすることが望ましい。このような範囲の使用量とすることにより、充分な色変換効果を発揮するとともに、本発明の色変換発光デバイス及び光電変換デバイスで適切な色変換効率及び光電変換効果を発揮する。上記の単位面積当たりの好ましい使用量を満たすためには、使用するバインダー樹脂の種類等によっても異なるが、例えばバインダー樹脂100質量部に上記ベンゾアゾール色素0.001〜10質量部の割合で配合した樹脂液を用いて、前述の好ましい範囲の厚みを持つ光学機能層120又は光学機能支持体105を形成することが望ましい。また、上記ベンゾアゾール色素の使用量は、吸光度としては、光学フィルタのλmaxにおける吸光度が0.01〜1.0となるようにすることが好ましい。
【0059】
反射防止層130は、光学フィルタにおける反射を防止して光透過率を向上させるための層である。反射防止層130は、支持体100よりも低い屈折率を有する材料から形成される低屈折率層であってもよい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層、ゾルゲル法により得られる層、あるいは微粒子を含む層として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層中に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0060】
反射防止層130を1つ又は複数の低屈折率層と1つ又は複数の中・高屈折率層との積層体から形成することによって、より広い波長領域の光反射を防止することができる。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、後述のアンチグレア機能を付与する場合を除いて、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0061】
中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーの例には、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及び環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが含まれる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応によりポリマーを形成してもよい。
【0062】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。分散させる無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び硫化亜鉛のような金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSが含まれる。あるいはまた、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0063】
反射防止層130は、その表面にアンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、反射防止層130が形成される表面(たとえば、粗面化された下塗り層110等)に微細な凹凸を形成するか、あるいはエンボスロール等により反射防止層130表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を付与することができる。アンチグレア機能を有する反射防止層130は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0064】
ハードコート層140は、その下に形成される層(光学機能層120及び/又は反射防止層130)を保護するための層であり、支持体100よりも高い硬度を有する材料から形成される。ハードコート層140は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成することもできる。
【0065】
光学フィルタの表面に潤滑層150を形成してもよい。潤滑層150は、光学フィルタ表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層150は、ポリオルガノシロキサン(例、シリコーンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層150の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0066】
上記の下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140、及び潤滑層150は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法及びエクストルージョンコート法のような当該技術分野において知られている任意の塗布方法により形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成する際には、蒸着、スパッタ、CVD、レーザーアブレーション等の当該技術分野において知られている任意の成膜技術を用いてハードコート層140を形成してもよい。
【0067】
光学フィルタの各構成層は、その積層順序に従って1層ずつ順次形成してもよいし、2つ以上の層を同時塗布法により形成してもよい。
【0068】
次に、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスについて説明する。
本発明の色変換発光デバイスは、発光部(光源)と、色変換部として、本発明の色変換フィルタとを有していれば特に限定はされず、従来の色変換発光デバイスに準じた構成とすることができる。上記発光部としては、近紫外から可視域、好ましくは近紫外から青緑色の光を発する任意の光源を用いることができる。そのような光源の例は、有機EL発光素子、プラズマ発光素子、冷陰極管、放電灯(高圧・超高圧水銀灯及びキセノンランプ等)、発光ダイオード等を含む。
【0069】
図2(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの一例である弾道型LEDデバイスの好ましい実施形態を示す概略断面図である。図2(a)〜(c)に示した色変換発光デバイスの一例は、LEDを光源とした照明装置等に用いられる。リード2及び3は、熱伝導性及び導電性に優れる銅又は銅合金等により形成されている。ワイヤ4は、リード2及び3とLED素子6とを接続し、金が用いられる。LED素子6としては、公知であるものを用いることができる。例えば、青色光を放射する素子としてGaN系、InGaN系、AlP系、AlInGaN系等が挙げられる。
【0070】
封止樹脂1及び/又は封止樹脂5には、エポキシ樹脂及び/又はシリコン樹脂等が用いられる。封止樹脂5には、蛍光体が混合されており、該蛍光体としては、黄色、黄色+赤色、緑色+赤色等の蛍光を発する無機化合物が用いられる。
【0071】
図2(a)の弾道型LEDデバイスにおいては、ベンゾアゾール色素が封止樹脂1及び/又は封止樹脂5に混合されている。即ち、図2(a)の弾道型LEDデバイスにおいては、封止樹脂1及び/又は封止樹脂5部分が本発明の色変換フィルタである。
また、弾道型LEDデバイスにおいては、色変換層を設けてもよい。図2(b)及び(c)が、色変換層を設けた弾道型LEDデバイスの例であり、図2(b)においては色変換層7が設けられており、図2(c)においては色変換層8が設けられている。図2(b)及び(c)の弾道型LEDデバイスにおいては、これらの色変換層が本発明の色変換フィルタであり、例えば、図1で説明した色変換フィルタと同様の製造方法、材料からなり、必要に応じて各種機能層を有していてもよい。
本発明の色変換発光デバイスは、上述の封止樹脂1、封止樹脂5、色変換層7、色変換層8の少なくとも一つに、本発明に係るベンゾアゾール色素を用いていればよい。
【0072】
また、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスの別の例として、図2(d)〜(f)に、LEDチップを羅列した色変換発光デバイス(照明デバイス)の例を示す。
例えば、図2(d)の色変換発光デバイスでは、基板300上にLEDチップ330を設置し(但し、直線状だけでなく平面に任意に設置してよい)、対向基板320との間を封止樹脂310で封止している。図2(d)の色変換発光デバイスにおいては、本発明に係るベンゾアゾール色素は封止樹脂310に混合されている。即ち、図2(d)の色変換発光デバイスにおいては、封止樹脂310部分が本発明の色変換フィルタである。
図2(e)及び図2(f)の色変換発光デバイスにおいては、対向基板の上又は下に、本発明に係るベンゾアゾール色素を含む色変換層340を設けて機能させている。即ち、図2(e)及び図2(f)の色変換発光デバイスにおいては、色変換層340部分が本発明の色変換フィルタである。図2(e)及び図2(f)の色変換発光デバイスにおいては、更に封止樹脂310にも該ベンゾアゾール色素を用いていてもよい。
【0073】
また、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスのさらに別の例として、図3に、カラーディスプレイ用の色変換発光デバイスを示す。図3に示した色変換発光デバイスは、支持体50の上に発光層40が設けられている。該発光層40を発光させる手法は限定されないが、例えばEL(エレクトロルミネッセンス)素子であれば発光層を電極で挟み電流を流すことで発光させることが出来る。
【0074】
また、発光層40上に赤、緑、青の色変換層20R、20G及び20Bを設けることで、発光層40から放出された光を色変換することが出来る。これらの色変換層の少なくとも1つが本発明の色変換フィルタである。該色変換フィルタは、変換後の波長に応じて、適宜赤、緑、青の色変換層20R、20G、20Bとすることができる。上記色変換層として、例えば、ベンゾアゾール色素をバインダー樹脂中に溶解又は分散した樹脂液から得られたフィルムからなる色変換フィルタを採用することができる。
【0075】
更に適宜、赤、緑、青のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bを設けることができる。これらのカラーフィルタ層は、赤、緑、青の色変換層20R、20G及び20Bにより変換された光の色座標又は色純度を最適化するために、必要に応じて設けられるものである。
【0076】
支持体50の材料として、例えば、本発明の光学フィルムにおける支持体100の材料として挙げたガラス等の無機材料、合成高分子材料を用いることができる。発光層40を発光させる電極を適宜作製するため、電極を形成しやすい支持体としてガラスが好ましい。
【0077】
各色のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bは、所望される波長域の光のみを透過させる機能を持つ。各色のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bは、色変換層20R、20G及び20Bによって波長分布変換されなかった光源からの光を遮断し、また色変換層20R、20G及び20Bによって波長分布変換された光の色純度を向上させることに対して有効である。これらのカラーフィルタ層は、例えば液晶ディスプレイ用カラーフィルタ材料等を用いて形成してもよい。
【0078】
図3に示したRGBの色変換発光デバイスを一組の画素として、複数の画素を支持体上にマトリックス状に配置することによって、カラーディスプレイ用の色変換発光デバイスを形成することができる。色変換層の所望されるパターンは、使用される用途に依存する。赤、緑、及び青の矩形又は円形もしくはその中間の形状の区域を一組として、それをマトリックス状に透明支持体全面に作成してもよい。あるいはまた、微小の区域に分割された適当な面積比で配設される二種の色変換層を用いて、単独の色変換層では達成できない単一色を示すようにしてもよい。
【0079】
図3の例ではRGB各色の色変換層を設けた場合を示したが、青色の光を放出する発光素子を光源として用いる場合には、青色に関して色変換層を用いずに、カラーフィルタ層のみを用いてもよい。
【0080】
本発明の色変換発光デバイスにおいて、図3に示されるようにカラーフィルタ層を設ける場合、発光部は色変換層の側に配置される。
また、本発明の色変換発光デバイスにおいて、カラーフィルタ層を設けずに、例えば色変換部として図1に示される色変換フィルタ(カラーフィルタ層を持たない)を用いる場合、発光部は色変換フィルタのいずれの側に配置されてもよく、また該色変換フィルタは光源の表面に直接積層してもよい。
【0081】
次に、本発明の色変換フィルタを用いた色変換発光デバイスについて説明する。
本発明の光電変換デバイスは、光電変換素子と、本発明の色変換フィルタとを有していれば特に限定はされず、従来の光電変換デバイスに準じた構成とすることができる。図4に、本発明の光電変換デバイスの一例としての太陽電池を示す。図4の太陽電池においては、光電変換素子240が高効率で発電できるように、素子周辺の表面シート層200、透明基板210、充填剤層220、集光フィルム230及びバックシート層250から選択される一以上の部材を色変換フィルタ化することが出来る。すなわち、光電変換素子の周辺部材にベンゾアゾール色素を含ませることで、該周辺部材を本発明の色変換フィルタとすることが出来る。また、図4に示される上述の各層等のほかに、別途、本発明の色変換フィルタとしての色変換フィルタ層を形成してもよく、例えば各層間にベンゾアゾール色素を含有する接着剤を使用して色変換フィルタ層として機能する接着剤層を形成することでも、同様の効果を得ることが可能である。
【0082】
本発明の光電変換デバイスとしては、特に限定されないが、例えば単結晶型、多結晶型、アモルファスシリコン型等のシリコン型太陽電池;GaAs系、CIS系、Cu2ZnSnS4系、CdTe−CdS系等の化合物系太陽電池;色素増感型、有機薄膜型等の有機系太陽電池等の太陽電池が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例、比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0084】
[合成例1]化合物No.1の合成
安息香酸1.2g、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5g、ポリリン酸13gを180℃にて5時間反応させた。90℃まで冷却後、水300ml中に反応液をあけて、室温で10時間攪拌した。析出した固体をろ過、水洗し、更に水酸化ナトリウム水溶液で分散洗浄した。固体をトルエン溶媒にてシリカゲルカラムクロマト精製し、メタノール晶析、アセトン洗浄後、真空乾燥して白色固体1.0g(収率46%)として目的物を得た。
得られた化合物の同定は、1H−NMR及び質量分析(MARDI−TOF−MS)により行った。これらの結果を下記[表1]及び[表2]に示す。
【0085】
[合成例2]化合物No.2の合成
<ステップ1>中間体1の合成
4−ブロモ安息香酸22.1g、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.3g、ポリリン酸208gを130℃で4時間、180℃で10時間反応させた。80℃まで冷却後、水1L中に反応液をあけて、室温で3時間攪拌した。析出した固体をろ過、水洗し、更に水酸化ナトリウム水溶液で分散洗浄した。固体をメタノールで分散洗浄後、真空乾燥して、白色固体として中間体1(下記参照)の34.3g(収率98.5%)を得た。
<ステップ2>化合物No.2の合成
ステップ1で得られた中間体1を0.7gと、フェニルボロン酸0.3g、酢酸パラジウム(II)11mg、トリフェニルフォスフィン40mg、炭酸ナトリウム0.3g、トルエン5.0g、水3.5gを仕込み、アルゴン雰囲気下、100℃にて7時間反応させた。室温付近まで冷却後、油水分離した後、油相をトルエン溶媒でシリカゲルカラムクロマト精製し、メタノール晶析後、真空乾燥により白色固体0.3g(収率37%)を得た。得られた化合物の同定は、合成例1と同様に行った。結果を下記[表1]及び[表2]に示す。
【0086】
【化10】

【0087】
[合成例3]化合物No.3の合成
合成例2のステップ2におけるフェニルボロン酸を4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸0.4gに、トルエンの量を5.8gに、水の量を4.2gにそれぞれ変更した以外は、合成例2と同様の操作で、白色固体0.8g(収率96%)を得た。得られた化合物の同定は合成例1と同様に行った。結果を下記[表1]及び[表2]に示す。
【0088】
[合成例4]化合物No.4の合成
合成例2のステップ2におけるフェニルボロン酸を4−メトキシフェニルボロン酸0.4gに、トルエンの量を4.2gに、水の量を3.0gにそれぞれ変更した以外は、合成例2と同様の操作で、白色固体0.4g(収率67%)を得た。得られた化合物の同定は合成例1と同様に行った。結果を下記[表1]及び[表2]に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
[実施例1〜5及び比較例1]
あらかじめ調製した25wt%ポリメチルメタクリレートのトルエン溶液に、λmaxにおける吸光度が0.5となるように、表1に記載の試験化合物を溶解し、ワイヤーバー(RDS30 R.D.S. Webster,N.Y.)にて100μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基板へ塗工後、100℃の条件下10分間オーブンで加熱して本発明の色変換フィルタを得た。尚、表1において、実施例5における化合物No.2と比較化合物No.1との比率は質量基準である。
得られた色変換フィルタについて、吸収スペクトルを日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U−3010を用いて、蛍光スペクトルを日立ハイテクノロジーズ社製分光蛍光光度計F4500を用いて各フィルムのλmaxを励起光として測定した。量子効率は浜松フォトニクス社製絶対PL量子収率測定装置C9920−02Gを用いて各フィルムのλmax付近を励起光として測定し、面積比率から算出した。結果を下記[表3]に示す。
【0092】
【化11】

【0093】
【表3】

【0094】
[実施例6、7及び比較例2、3]
太陽電池の受光面に、表2に記載の色変換フィルタを載せて固定し、光電変換デバイスとした。得られた光電変換デバイスについて分光感度測定(IPCE測定)を行い、分光感度曲線より320nm及び400nmにおける値を読み取った。結果を[表4]に示す。尚、比較例3においては、ブランクとして色素を含まないポリメチルメタクリレートのみからなるフィルタを用いた。
【0095】
【表4】

【0096】
比較例3では、フィルタが波長変換する色素を含んでいないため、320nmにおける光電変換効率が非常に低いのに対し、実施例6では、色変換フィルタが光を長波長へ変換している(表3参照)ため、320nmにおける光電変換効率が高い値を示す。尚、実施例6では、400nmにおける光電変換効率は、比較例3と同じレベルを維持している。
また、比較例2においても、比較例3に比べて320nmにおける光電変換効率は向上しているが、色変換フィルタに含まれる比較化合物No.1の有する400nm付近の吸収(表3参照)により、400nmにおける光電変換効率が比較例3に比べて大きく低下している。
実施例7では、色変換フィルタが大きなストークシフトを有する(表3参照)ため、320nmの光をより光電変換効率の高い波長へ変換しており、320nmにおける光電変換効率が実施例6よりも高い値を示し、且つ400nmにおける光電変換効率はやや低下するものの、その低下幅は小さく、良好なレベルを保っている。
【0097】
以上より、本発明の色変換フィルタは、色変換能を有しているため、光電変換デバイス及び色変換発光デバイスに好適であることが明らかである。本発明の色変換フィルタは、太陽電池の起電力が極端に小さい短波長域の光を有効に使えるため、光電変換デバイスに特に好ましいことが明らかである。
【符号の説明】
【0098】
1 封止樹脂
2 リード
3 リード
4 ワイヤ
5 封止樹脂
6 LED素子
7 色変換層
8 色変換層
10R 赤色フィルタ層
10G 緑色フィルタ層
10B 青色フィルタ層
20R 赤色変換層
20G 緑色変換層
20B 青色変換層
30 ブラックマスク
40 発光層
50 支持体
100 支持体
105 光学機能支持体
110 下塗り層
120 光学機能層
130 反射防止層
140 ハードコート層
150 潤滑層
200 表面シート層
210 透明基板
220 充填剤層
230 集光フィルム
240 光電変換素子
250 バックシート層
300 基板
310 封止樹脂
320 対向基板
330 LEDチップ
340 色変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾール環を少なくとも二つ有するベンゾアゾール色素を少なくとも一種含む光学フィルタ。
【請求項2】
上記アゾール環を少なくとも二つ有するベンゾアゾール色素が下記一般式(1)で表される化合物である請求項1に記載の光学フィルタ。
【化1】

【請求項3】
上記一般式(1)におけるZが、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルカンジイル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数3〜20の2価の環式炭化水素基、−O−、−S−、−SO2−、−SS−、−SO−、−CO−又は−OCO−であり、nが0である請求項2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
波長変換能を有する色変換フィルタである請求項1〜3の何れか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
発光部と、請求項4に記載の光学フィルタとを含む色変換発光デバイス。
【請求項6】
光電変換素子と、請求項4に記載の光学フィルタとを含む光電変換デバイス。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−30590(P2013−30590A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165138(P2011−165138)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】