説明

光学フィルム

【課題】高湿度下においても吸湿性を抑制することにより、位相差などの光学特性の変動を抑えることができる光学フィルムを提供しようとするものである。
【解決手段】エステル置換度が2.0〜4.8のグルコース安息香酸エステルおよびグルコーストルイル酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.5のガラクトース安息香酸エステルおよびガラクトーストルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8のショ糖トルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8のラクトース安息香酸エステルおよびラクトーストルイル酸エステル、並びにエステル置換度が3.2〜7.6のマルチトール安息香酸エステルおよびマルチトールトルイル酸エステルから選ばれる1種または2種以上の糖エステルと、セルロース誘導体とを含んでなる光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿性に優れた光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビやパソコン等への液晶ディスプレイの用途拡大により、液晶表示装置の需要が拡大している。液晶表示装置は、通常、透明電極、液晶層、カラーフィルター等をガラス板で挟んだ液晶セルと、その両側に設けられた2枚の偏光板、位相差フィルムなどで構成されており、該偏光板は、それぞれ、2枚の偏光子保護フィルムで挟み込まれた構成となっている。このような偏光子保護フィルムや位相差フィルムには、通常、セルロース誘導体(例えば、セルローストリアセテート(TAC))からなるフィルムが用いられている(特許文献1)。
【0003】
一方、近年の技術進歩により、液晶表示装置の用途が多様化し、例えば、液晶表示装置からなる大型ディスプレイやデジタルサイネージが、街頭や店頭に設置されている。このような屋外を含む場所での利用においては、液晶表示装置に含まれる偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムが、吸湿により劣化することが問題となっており、より高い耐湿性を有する光学フィルムが求められている。
【0004】
特許文献1には、単糖、二糖またはオリゴ糖中の水酸基をすべてもしくは一部エステル化したエステル化化合物と、セルロース誘導体とを含む位相差フィルムが開示されているが、かかるフィルムは、その耐湿性や樹脂との相溶性において未だ十分なものではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/125764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高湿度下においても吸湿性を抑制することにより、位相差などの光学特性の変動を抑えることができる光学フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意研究を進めた結果、エステル置換度が所定の範囲の特定の糖エステルを、セルロース誘導体とともに使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]エステル置換度が2.0〜4.8のグルコース安息香酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.8のグルコーストルイル酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.5のガラクトース安息香酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.5のガラクトーストルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8のショ糖トルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8のラクトース安息香酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8のラクトーストルイル酸エステル、エステル置換度が3.2〜7.6のマルチトール安息香酸エステルおよびエステル置換度が3.2〜7.6のマルチトールトルイル酸エステルから選ばれる1種または2種以上の糖エステルと、セルロース誘導体とを含んでなる光学フィルム、
[2]前記糖エステルの含有量が、セルロース誘導体に対して、1〜30重量%である、上記[1]の光学フィルム、
[3]前記セルロース誘導体が、トリアセチルセルロースである、上記[1]または[2]の光学フィルム、
[4]上記[1]〜[3]のいずれか一つの光学フィルムからなる偏光板保護フィルム、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学フィルムは、高湿度下においても吸湿性が抑制されたもの(すなわち、耐湿性の高いもの)であり、このため、位相差などの光学特性の変動が少なく、光学フィルム(位相差フィルム、偏光板保護フィルムなど)として優れた特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の構成要素について説明する。
<セルロース誘導体>
本発明に用いられるセルロース誘導体としては、通常、液晶表示装置の光学フィルムの原料として使用できるものである限り特に限定はなく、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロースなどのセルロースエーテル類と、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられる。
【0011】
このうち、セルロースエーテルまたはセルロースエステルにおける水酸基の平均置換度(グルコース単位をもとに算出したもの)としては、例えば、2.0以上のものが好ましく、平均置換度が2.8より大きいもの、さらには2.9以上のものがより好ましい。一方、平均置換度の上限値は理論上約3.0であるところ、好ましい上限値について特に制限はない。平均置換度が2.0より小さい場合、光学フィルムとしての基本性能、すなわち、引張強さなどの機械的性質、吸水率などの化学的性質、融点などの熱的性質等の耐久性が低下する傾向がある。
【0012】
また、セルロース誘導体の好ましい具体例としては、例えば、セルロースエステル類が挙げられ、中でも、トリアセチルセルロースまたはトリプピオニルセルロースなどが好ましい。
【0013】
本発明に用いられるセルロース誘導体の原料として用いるセルロースとしては、特に限定はないが、例えば、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。
【0014】
セルロースエステルについては、その分子量が大きいと、これにより構成されるセルロースエステルフィルムの弾性率が大きくなるが、一方で、分子量を上げすぎると、セルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎるため生産性が低下する。従って、セルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で30000〜200000のものが好ましく、400000〜200000のものが更に好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルは、Mw/Mn比が1〜5であることが好ましく、更に好ましくは1〜3であり、特に好ましくは1.4〜2.3である。
【0015】
なお、セルロースエステルの平均分子量および分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて、数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を算出することができる。
【0016】
本発明に係るセルロース誘導体としては、例えば、商業的にも入手可能であり、例えば、ダイセル化学工業株式会社製LT−35等が挙げられる。
【0017】
<糖エステル>
本発明に用いられる糖エステルは、特定の糖と特定の芳香族モノカルボン酸とのエステルであって、かつ、そのエステル置換度(糖1分子あたり、エステル化されている水酸基の数)が所定の範囲にあるものである。具体的には、エステル置換度が2.0〜4.8(好ましくは、3.0〜4.8、更に好ましくは約4.4)のグルコース安息香酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.8(好ましくは、3.0〜4.8、更に好ましくは約3.1)のグルコーストルイル酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.5(好ましくは、3.0〜4.2)のガラクトース安息香酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.5(好ましくは、3.0〜4.2)のガラクトーストルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8(好ましくは、4.7〜6.5、更に好ましくは約4.7)のショ糖トルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8(好ましくは、4.5〜6.5)のラクトース安息香酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8(好ましくは、4.5〜6.5)のラクトーストルイル酸エステル、エステル置換度が3.2〜7.6(好ましくは、4.0〜6.5、更に好ましくは約6.5)のマルチトール安息香酸エステルおよびエステル置換度が3.2〜7.6(好ましくは、4.0〜6.5、更に好ましくは約5.8)のマルチトールトルイル酸エステルであり、これらから選ばれる1種または2種以上の糖エステルを使用することができる。ここに、エステル置換度に関して「約」とは、その±0.1の範囲を含む意味である。
【0018】
これらのうち、糖エステルの種類としては、グルコース安息香酸エステル、グルコーストルイル酸エステル、ショ糖トルイル酸エステル、マルチトール安息香酸エステルおよびマルチトールトルイル酸エステルが好ましい。
【0019】
糖エステルは、セルロース誘導体に対して、1〜30重量%用いることが好ましく、より好ましくは、5〜30重量%である。糖エステルの量が5重量%未満の場合には、目的とする性能が得られない傾向があり、30重量%を超える場合にはブリードアウトの可能性が高くなる。
【0020】
本発明に係る糖エステルは、常法により製造することができ、例えば、特開昭61−4839号記載の蔗糖ベンゾエートの製造方法に準じて、製造することができる。
【0021】
すなわち、原料である糖と芳香族モノカルボン酸の塩化物とを、親水性溶媒と水との混液中、アルカリ性化合物の存在下、エステル化反応に付すことにより製造することができる。親水性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジオキサン、テトラハイドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸メチル等のエステル系溶媒、三級ブタノール等のアルコール系溶媒をいずれも好適に用いることができる。
【0022】
アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0023】
親水性溶媒と水との混合比率は、両者からなる均一液層の含水率が7〜80%となるようにすることが好ましい。なぜなら、これら親水性溶媒は、原料の一方である芳香族モノカルボン酸の塩化物や生成物であるエステルは溶解するものの、原料の他方である糖は、単独では全く溶かさないかまたは反応効率の観点から実用に供さない程度にしか溶かさないものであるところ、糖の良溶媒である水を混合させることにより、該混液が実用に供する程度の糖を溶解することができるようになるからである。
【0024】
したがって、親水性溶媒のこのような性質を利用することにより、糖と芳香族モノカルボン酸塩化物の反応速度を律することができ、その結果、糖/芳香族モノカルボン酸の塩化物の仕込み量(モル比)に応じて、所望のエステル置換度の、本発明の糖エステルを製造することができる。
【0025】
反応の方法としては、親水性溶媒と水からなる混液に、糖および芳香族モノカルボン酸塩化物を溶解または懸濁させ、芳香族モノカルボン酸塩化物と等量ないしは若干過剰のアルカリ性化合物を滴下するか、または混液に糖とアルカリ性化合物を溶解または懸濁させ、芳香族モノカルボン酸塩化物を滴下するか、または混合溶媒に糖を溶解または懸濁させ、芳香族モノカルボン酸塩化物とアルカリ性化合物とを同時または交互に滴下することができる。
【0026】
反応温度は、−15℃〜100℃まで採用することができるが、より好ましくは、−10℃〜30℃である。ただし、全反応原料を滴下し終えた後は、反応の完結を促進させるため、高温域で過熱してもよい。
【0027】
反応中のpHは弱アルカリ性に保つことが望ましい。一方、強アルカリ性下(例えば、反応温度等にもよるが、pH13以上など)では、芳香族モノカルボン酸の加水分解の副反応が著しいため、たとえば、pH8〜13程度で行うことが好ましい。
【0028】
反応時間としては、原料同士の反応が十分反応を完結できる限り特に限定はない。具体的な時間は、原料化合物の量や種々の条件に依存するが、通常、1時間程度行えば十分である。
【0029】
<添加剤>
本発明における光学フィルムには、フィルムに加工性・柔軟性等を付与するための可塑剤、紫外線吸収機能を付与するための紫外線吸収剤、フィルムの劣化を防止するための酸化防止剤、フィルムに滑り性を付与するための微粒子(マット剤)等を含有させても良い。
【0030】
<可塑剤>
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤などを用いることができるがこれらに限定されるものではない。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等があり、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等があり、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。これら可塑剤は、その1種または2種以上を使用することができる。
【0031】
これらの可塑剤の含有量は、セルロース誘導体に対して、1〜30重量%であり、好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは2〜15重量%である。
【0032】
<紫外線吸収剤>
本発明の光学フィルムには、液晶の劣化防止の観点から、紫外線吸収機能を付与することが好ましく、このような紫外線吸収機能は、例えば、紫外線を吸収する材料をセルロース誘導体中に含ませたり、セルロース誘導体からなるフィルム上に紫外線吸収機能のある層を設けたりすることにより、付与することができる。
【0033】
このような紫外線吸収機能のある紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく、具体例としては、例えばトリアジン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、特開平6−148430号公報、特開2000−187825号、特開2002−47357号記載に記載されている紫外線吸収剤をいずれも好適に用いることができる。これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して、0.1〜5.0重量%であることが好ましく、0.5〜1.5重量%が更に好ましい。
【0034】
<酸化防止剤>
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれ、光学フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により、殊に、高温高湿の状態下で、位相差フィルムが分解するのを遅らせたり防いだりする目的で、光学フィルム中に含有させるものである。
【0035】
酸化防止剤としては、特に限定なく、通常使用されるものをいずれも好適に使用することができ、例えば、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などを挙げることができる。
【0036】
酸化防止剤の添加量は、セルロース誘導体に対して、重量割合で、1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0037】
<マット剤(微粒子)>
本発明の光学フィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。微粒子の添加量は、位相差フィルム1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.5gがより好ましく、0.08〜0.3gが更に好ましい。これにより、位相差フィルム表面に0.1〜1μmの凸部が形成されることが好ましく、フィルムに滑り性が付与される。無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることが出来る。中でもケイ素を含むものは、濁度が低くなり、また、フィルムのヘイズを小さく出来るので好ましく、特に二酸化珪素が好ましく、中でも、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなど有機物で表面処理された二酸化珪素が、フィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させて得ることが出来る。
【0038】
二酸化珪素の微粒子は、一次平均粒子径が20nm以下、見掛比重が70g/L以上であるものが好ましい。一次粒子の平均径が5〜16nmであるのがより好ましく、5〜12nmであるのが更に好ましい。これらの微粒子はフィルム中で二次凝集体を形成してフィルム表面に凹凸を形成することによって滑り性を付与している。一次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。見掛比重は90〜200g/L以上がより好ましく、さらに100〜200g/L以上がより好ましい。見掛比重が大きい程、高濃度の微粒子分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、大きな凝集物の発生が少なく好ましい。なお、本発明において、リットルをLで表すこととする。
【0039】
好ましい二酸化珪素の微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600の商品名で市販されているものを挙げることが出来、アエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812を好ましく用いることが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、何れも使用することが出来る。これらの中で、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルTT600が本発明の位相差フィルムの濁度を低くし、且つ摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0040】
有機化合物の微粒子の例としては、シリコーン樹脂、弗素樹脂およびアクリル樹脂を挙げることが出来る。これらのうちシリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120および同240(以上、東芝シリコーン(株)製)を挙げることが出来る。
【0041】
微粒子の一次平均粒子径の測定においては、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、一次平均粒子径とすることができる。
【0042】
また、上記記載の見掛比重は、二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出することができる。
見掛比重(g/L)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(L)
【0043】
また、本発明に係るセルロース誘導体と糖エステルを溶媒に投入した混合物(ドープ)中に微粒子を含有させずに、本発明の光学フィルムの表面に微粒子を含有する層を塗布によって形成することも好ましい。微粒子の種類は特に限定されず、前述のドープに添加できる微粒子を用いることができ、特に酸化珪素が好ましく用いられる。
【0044】
微粒子を含有する層は、平均粒子径が0.01〜0.3μmの微粒子を0.1〜50質量%程度含有する0.05〜5μmの膜厚の層であり、バインダーとしてセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂などが好ましく用いられる。塗布溶媒も特に限定されず、ドープに用いられる溶媒が好ましく用いられる。微粒子を含有する層は製膜中もしくは製膜の後で巻き取り前に行うことが好ましく、一旦巻き取った後に設けることもできる。
【0045】
<光学フィルムの製造>
本発明に係る光学フィルムは、セルロース誘導体と糖エステルとを溶媒に溶解してドープを形成し、以後、流延・乾燥工程、剥離工程、剥離後乾燥工程、さらに、必要に応じて、延伸工程を経て、製造することができる。以下、本発明の光学フィルムの好ましい製造方法について説明する。なお、上記セルロース誘導体に対して良好な溶解性を示す有機溶媒を良溶媒といい、良好でない溶解性しか示さない溶媒を貧溶媒という。また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主溶媒という。
【0046】
1)溶解工程
セルロース誘導体に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、セルロース誘導体と、糖エステルおよび必要に応じその他添加剤とを攪拌しながら溶解し、または、セルロース誘導体の溶液に、糖エステルおよび必要に応じその他添加剤の溶液を混合して、ドープを形成する。セルロース誘導体の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0047】
ドープ中のセルロース誘導体を含む固形添加成分の濃度は、10〜35重量%が好ましい。該濃度は15重量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35重量%のものが好ましく用いられる。ドープ中の固形添加成分の濃度が35重量%以上であると、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合がある。一方、該濃度が10重量%未満であると十分な密度のフィルムが得られない場合がある。また、ドープ粘度は、10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
【0048】
溶解には、常圧で行う方法、良溶媒の沸点以下で行う方法、良溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力をかけて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することが出来る。
【0049】
ドープを調製する際に使用する溶媒としては、セルロース誘導体を溶解出来る溶媒であれば特に限定されず、また単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより溶解出来るものであれば、いずれも使用することが出来る。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜35質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0050】
このような良溶媒としては、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい良溶媒として挙げられる。
【0051】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0052】
溶媒としては、揮発性のものを用いるのが好ましい。
【0053】
溶解後、ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましい。セルロース誘導体の溶解の際に、糖エステルやその他添加剤を一切あるいは十分加えていない場合には、この段階で、必要な糖エステルおよびその他添加剤を添加することができる。
【0054】
2)流延・乾燥工程
上記で得られたドープを、バーコーター、T−ダイ、バー付きT−ダイ、ダイ・コートなどを用いて、ガラス板、耐熱フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、スチールベルト、金属箔などの基板上に流延する。
【0055】
続く乾燥は、基板からフィルムが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させればよく、常法により実施することができる。例えば、恒温機などを使用してもよいし、熱風を吹き付けたり、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱してもよい。但し、あまり急激な乾燥は、仕上がったフィルムの平面性を損ね易いので留意する必要がある。高温による乾燥は、残留溶媒が8重量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥温度は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。ここで、残留溶媒の量は、下式により表されるものである。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
(ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の重量である。)
【0056】
3)剥離工程
乾燥後、基板からフィルムを剥離する。剥離する時点において、残留溶媒が多すぎるとフィルムが柔らかすぎて剥離時にフィルムの平面性を損なったりして剥離しにくくなる傾向があり、逆に残留溶媒が少なすぎると剥離の途中でフィルムが剥がれる場合がある。剥離時における好ましい残留溶媒の量は、10〜150重量%とすることが好ましく、さらに好ましくは10〜120重量%である。
【0057】
4)剥離後乾燥工程
基板から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは巾方向に収縮しようとするので、高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。したがって、この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この観点から、例えば、乾燥全工程或いは一部の工程において、フィルムの巾両端をクリップまたはピンで保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる、特開昭62−46625号に示されている如き方法)が好ましい。尚、この様に巾方向両端を把持しながら乾燥することで、得られるフィルムの面内リターデーションを小さくすることができる。このとき幅手方向の延伸倍率は×1.00〜×1.15であることが好ましく、×1.01〜×1.1であることが更に好ましい。
【0058】
テンター方式での乾燥を行う場合のフィルムの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜70重量%であるのが好ましく、且つ、フィルムの残留溶媒量が10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行うことが好ましい。
【0059】
本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして用いる場合は、残留溶媒を含む状態で幅手方向および/または製膜方向に×1.01〜×2.5に延伸することもできる。この場合のより好ましい延伸倍率は×1.15〜×1.6であり、Roが20〜1000nmのフィルムを得ることができる。
【0060】
また、本発明の光学フィルムは、更に乾燥し、残留溶媒量を0.5%重量以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1重量%以下であり、更に好ましくは0〜0.01重量%以下である。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点から、特に熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性も良くするために好ましい。溶液流延製膜法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0061】
本発明の光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常5〜500μmの範囲にあり、更に10〜250μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては10〜120μmの範囲が用いられる。本発明の光学フィルムは特に、10〜60μmの膜厚の薄いフィルムでありながら、吸湿性が抑制され耐湿性に優れている。
【0062】
本発明の光学フィルムは、液晶表示用装置の部材、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルムとして用いることができ、特にその良好な耐湿性から、偏光板保護フィルムとして用いるのが好ましい。あるいは、本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして用いた場合にも、その良好な耐湿性から、長期間に亘って、安定した表示性能を維持することができる。
【0063】
本発明の光学フィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布或いは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
【0064】
本明細書において、単に「部」または「%」というときは、「重量部」または「重量%」を意味する。
「エステル置換度」は、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)によって求めた値である。
【実施例】
【0065】
実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0066】
実施例1
1)マルチトール安息香酸エステル(エステル置換度6.5)の合成
撹拌棒、温度計、冷却コンデンサー、滴下漏斗、およびpHメーターに接続したpH電極を備えた5つ口フラスコに、マルチトール30.0部と水70.0部を仕込み溶解した後、水浴で10℃以下に冷却しながら、塩化ベンゾイル79.0部を含むシクロヘキサノン100部を徐々に加え、均一に溶かした。20℃以下の温度を保ちながら、48%苛性ソーダ水溶液50.1部を、滴下漏斗よりpHが10〜11に保たれるような速度で加えた。滴下は1時間以内で終了した。その後、水浴を取り去り、20〜30℃の室温で、1時間撹拌を続け熟成して反応を完結させた。その後、若干量の炭酸ソーダを加え加熱して、微量に残っている塩化ベンゾイルを安息香酸ソーダに変換した。そして溶媒をロータリーエバポレーターにより除去することにより、マルチトール安息香酸エステル(エステル置換度6.5)を得た。
【0067】
2)セルロースアセテートフィルムの作成
TAC樹脂(製品名:LT−35、Mn:40,000、平均置換度:2.9、ダイセル化学工業株式会社製)9重量%、上記で得たマルチトール安息香酸エステル1重量%、ジクロロメタン81重量%およびメタノール9重量%をビーカーに入れ、撹拌して各成分を溶解した。この溶液を、ガラス板上へ流延し、バーコーターで、膜厚1mmとなるよう引き伸ばした。これを50℃の恒温機で10分間乾燥させた。フィルムをガラス板から剥ぎ取り、4mm×4mmの大きさにカットして、厚さ約100μmの偏光板保護フィルムを得た。
【0068】
実施例2
1)グルコース安息香酸エステル(エステル置換度4.4)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、グルコース30.0部および塩化ベンゾイル102.9部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、グルコース安息香酸エステル(エステル置換度4.4)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たグルコース安息香酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0069】
実施例3
1)ショ糖トルイル酸エステル(エステル置換度6.3)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、ショ糖30.0部およびトルイル酸クロライド85.3部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、ショ糖トルイル酸エステル(エステル置換度6.3)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たショ糖トルイル酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0070】
実施例4
1)ショ糖トルイル酸エステル(エステル置換度4.7)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、ショ糖30.0部およびトルイル酸クロライド63.6部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、ショ糖トルイル酸エステル(エステル置換度4.7)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たショ糖トルイル酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0071】
実施例5
1)グルコーストルイル酸エステル(エステル置換度3.1)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、グルコース30.0部およびトルイル酸クロライド79.8部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、グルコーストルイル酸エステル(エステル置換度3.1)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たグルコーストルイル酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0072】
実施例6
1)マルチトールトルイル酸エステル(エステル置換度5.8)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、マルチトール30.0部およびトルイル酸クロライド86.8部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、マルチトールトルイル酸エステル(エステル置換度5.8)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たマルチトールトルイル酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0073】
実施例7
1)ガラクトース安息香酸エステル(エステル置換度4.0)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、ガラクトース30.0部および塩化ベンゾイル93.6部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、ガラクトース安息香酸エステル(エステル置換度4.0)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たガラクトース安息香酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0074】
実施例8
1)ラクトース安息香酸エステル(エステル置換度6.3)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、ラクトース30.0部および塩化ベンゾイル77.6部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、ラクトース安息香酸エステル(エステル置換度6.3)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たラクトース安息香酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0075】
比較例1
セルロースアセテートフィルムの作成
TAC樹脂9重量%およびマルチトール安息香酸エステル(エステル置換度:6.5)1重量%に代えて、TAC樹脂10重量%を用いた以外は、実施例1−2)と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0076】
比較例2
1)ショ糖安息香酸エステル(エステル置換度7.3)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、ショ糖30.0部および塩化ベンゾイル89.9部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、ショ糖安息香酸エステル(エステル置換度7.3)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たショ糖安息香酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0077】
比較例3
1)ショ糖安息香酸エステル(エステル置換度3.8)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、ショ糖30.0部および塩化ベンゾイル46.8部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、ショ糖安息香酸エステル(エステル置換度3.8)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たショ糖安息香酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0078】
比較例4
1)ラフィノーストルイル酸エステル(エステル置換度7.7)の合成>
糖および芳香族モノカルボン酸として、ラフィノース30.0部およびトルイル酸クロライド70.8部を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、ラフィノーストルイル酸エステル(エステル置換度7.7)を得た。
2)セルロースアセテートフィルムの作成
糖エステルとして、上記で得たラフィノーストルイル酸エステルを用いた以外、実施例1と同様に処理して、偏光板保護フィルム(4mm×4mm、厚さ約100μm)を得た。
【0079】
<評価>
1)耐湿性
実施例1〜9および比較例1〜6で得た偏光板保護フィルムについて、以下の方法に従い、吸水率を測定した。
各偏光板保護フィルムを、130℃で2時間予備乾燥させ、それらの重量を測定した(処理前重量)。その後、各フィルムを、25℃、80%RHで、24時間静置し、再び重量を測定した(処理後重量)。以下の式により、吸水率を計算した。吸水率が低いほど吸湿性が低く、従って外界の水分子との相互作用が低く、耐湿性が高い。
吸水率(%)={(処理後重量)−(処理前重量)/(処理前重量)}×100
【0080】
結果を、表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
本発明の光学フィルムは、比較例のものに比べて、優れた耐湿性を示した。
【0083】
なお、理論に拘束されることは意図しないが、本発明においては、糖エステル中に残存する水酸基が、セルロース誘導体(TAC)の水酸基と相互作用して擬似架橋点を形成し、このことにより、セルロース誘導体分子や糖エステル分子と、外界の水分子との相互作用が阻害され、本発明の光学フィルムの吸水率が低下するものと考えられる。このため、糖エステル中に残存する水酸基が多すぎても少なすぎても好ましくなく、それ故、セルロース誘導体と糖エステルの種類、組合せに応じて、糖エステルのエステル置換度を所定の範囲内とすることにより、本発明の効果が得られているものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の光学フィルムは、優れた耐湿性を示し、液晶表示装置において、偏光板保護フィルム、位相差フィルムなどの各種光学フィルムとして、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル置換度が2.0〜4.8のグルコース安息香酸エステルおよびグルコーストルイル酸エステル、エステル置換度が2.0〜4.5のガラクトース安息香酸エステルおよびガラクトーストルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8のショ糖トルイル酸エステル、エステル置換度が4.0〜7.8のラクトース安息香酸エステルおよびラクトーストルイル酸エステル、並びにエステル置換度が3.2〜7.6のマルチトール安息香酸エステルおよびマルチトールトルイル酸エステルから選ばれる1種または2種以上の糖エステルと、セルロース誘導体とを含んでなる光学フィルム。
【請求項2】
前記糖エステルの含有量が、セルロース誘導体に対して、1〜30重量%である、請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記セルロース誘導体が、トリアセチルセルロースである、請求項1または2記載の光学フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムからなる偏光板保護フィルム。

【公開番号】特開2013−101225(P2013−101225A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244845(P2011−244845)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】