説明

光学活性なテトラヒドロナフタレン誘導体

【課題】ラセミ体と比較し、C5a受容体拮抗活性のみならず、生物学的利用率においても高活性を示す化合物の提供。
【解決手段】下記式(I)で示される化合物若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なN−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの光学活性体、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物(以下、本発明化合物ということがある。)、その医薬用途及びその製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
補体系が活性化されると、補体系タンパク質が酵素分解され、種々の生理活性を有する断片が産生される。その1つである補体成分C5aは74個のアミノ酸から構成される分子量約11,000の糖タンパクであり、強力な炎症惹起作用を有している。C5aは平滑筋収縮、血管透過性亢進、白血球遊走、白血球の脱顆粒、活性酸素種産生、抗体産生の増強及びサイトカインやTNF(tumor necrosis factor)、ロイコトリエンの産生誘導等、多岐にわたる作用を有しており、リウマチや全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患、敗血症、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、喘息等のアレルギー性疾患、粥状動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、乾癬、アルツハイマー病及び虚血再灌流や外傷、火傷、外科侵襲等に起因する白血球活性化による重要臓器損傷症(例えば肺炎、腎炎、肝炎、膵炎等)等の疾患の原因物質と言われている[Annu.Rev.Immunol.,第12巻,775−808頁(1994年)(非特許文献1)、Immunopharmacology,第38巻,3−15頁(1997年)(非特許文献2)、Curr.Pharm.Des.,第5巻,737−755頁(1999年)(非特許文献3)及びIDrugs,第2巻,686−693頁(1999年)(非特許文献4)]。
【0003】
従って、C5a受容体拮抗作用を有する化合物は、非ステロイド型の新規な抗炎症薬として期待できる。また、C5a受容体を介して侵入する細菌やウイルスによる感染症の予防及び治療薬としても期待できる。
【0004】
C5a拮抗剤について、種々の特許出願が公開されている。その内、WO02/22556号パンフレットにはN−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドのラセミ体が開示されている(特許文献1、実施例89)が、光学活性体に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO02/22556号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Annu.Rev.Immunol.,第12巻,775−808頁(1994年)
【非特許文献2】Immunopharmacology,第38巻,3−15頁(1997年)
【非特許文献3】Curr.Pharm.Des.,第5巻,737−755頁(1999年)
【非特許文献4】IDrugs,第2巻,686−693頁(1999年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これまで知られているN−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド(特許文献1、実施例89)と比較してC5a受容体拮抗活性に優れ、さらに生物学的利用率に優れた新規な化合物、及びその製造中間体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドがそのラセミ体と比較しC5a受容体拮抗活性に優れ、さらに生物学的利用率に優れた化合物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明とは以下の通りである。
(1) 下記式(I)で示される
【0010】
【化1】

【0011】
(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
(2) (1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の結晶。
(3) (1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの結晶である、(2)に記載の結晶。
(4) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として14.6゜(±0.2゜)付近にピークを示す(2)又は(3)に記載の結晶。
(5) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として10.0゜(±0.2゜)付近にピークを示す(2)〜(4)のいずれか1項に記載の結晶。
(6) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として8.5゜(±0.2゜)付近にピークを示す(2)〜(5)のいずれか1項に記載の結晶。
(7) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として20.1及び23.2゜(それぞれ±0.2゜)付近にピークを示す(2)〜(6)のいずれか1項に記載の結晶。
(8) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として8.5、10.0、14.6、20.1及び23.2゜(それぞれ±0.2゜)付近に特有のピークを示す(2)〜(7)のいずれか1項に記載の結晶。
(9) 融点(補外開始温度)が約171〜約176℃である(2)〜(8)のいずれか1項に記載の結晶。
(10) 融点(補外開始温度)が約176℃である(2)〜(9)のいずれか1項に記載の結晶。
(11) 下記のA及び/又はBで示される物理化学的性質を有することを特徴とする(2)〜(10)のいずれか1項に記載の結晶。
A:図1に示される粉末X線回折パターンを有する。
B:図2に示される示差走査熱分析曲線を有する。
(12) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として5.9゜(±0.2゜)付近にピークを示す(2)又は(3)に記載の結晶。
(13) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として15.6゜(±0.2゜)付近にピークを示す(2)、(3)又は(12)のいずれか1項に記載の結晶。
(14) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として11.9゜(±0.2゜)付近にピークを示す(2)、(3)、(12)又は(13)のいずれか1項に記載の結晶。
(15) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として21.3゜(±0.2゜)付近にピークを示す(2)、(3)、(12)、(13)又は(14)のいずれか1項に記載の結晶。
(16) 粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として5.9、11.9、15.6及び21.3(それぞれ±0.2゜)付近に特有のピークを示す(2)、(3)、(12)、(13)、(14)又は(15)のいずれか1項に記載の結晶。
(17) 融点(補外開始温度)が約96℃である(2)、(3)、(12)、(13)、(14)、(15)又は(16)のいずれか1項に記載の結晶。
(18) 下記のC及び/又はDで示される物理化学的性質を有することを特徴とする(2)、(3)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)のいずれか1項に記載の結晶。
C:図3に示される粉末X線回折パターンを有する。
D:図4に示される示差走査熱分析曲線を有する。
(19) (1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の非晶質体。
(20) (1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの非晶質体である、(19)に記載の非晶質体。
(21) 下記のEで示される物理化学的性質を有することを特徴とする(19)又は(20)に記載の非晶質体。
E:図5に示される粉末X線回折パターンを有する
(22) 薬理学的に許容される塩が塩酸塩である(1)に記載の(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
(23) 薬理学的に許容される塩が1塩酸塩である(1)又は(22)に記載の(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
(24) 薬理学的に許容される塩が臭化水素酸塩である(1)に記載の(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
(25) 薬理学的に許容される塩が1臭化水素酸塩である(1)又は(24)に記載の(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
(26) (1)〜(25)のいずれかに記載の化合物を含む医薬。
(27) (1)〜(25)のいずれかに記載の化合物と製薬上許容される添加剤とを含有する医薬組成物。
(28) (1)〜(25)のいずれかに記載の化合物を有効成分として含む、C5aがC5a受容体に結合することに起因する疾患の予防及び/又は治療薬。
(29) C5aがC5a受容体に結合することに起因する疾患が、自己免疫疾患、敗血症、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性疾患、粥状動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、乾癬、アルツハイマー病又は虚血再灌流、外傷、火傷若しくは外科侵襲に起因する白血球活性化による臓器損傷症である(28)に記載の予防及び/又は治療薬。
(30) (1)〜(25)のいずれかに記載の化合物を有効成分として含む抗炎症薬。
(31) (1)〜(25)のいずれかに記載の化合物を有効成分として含むC5a受容体拮抗剤。
(32) C5a受容体を介して侵入する細菌やウイルスによる感染症の予防薬及び/又は治療薬である(31)に記載のC5a受容体拮抗剤。
(33) (1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、関節リウマチの予防及び/又は治療薬。
(34) 有効成分が(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドであることを特徴とする、(33)に記載の関節リウマチの予防及び/又は治療薬。
(35) 有効成分が(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの結晶であることを特徴とする、(33)又は(34)に記載の関節リウマチの予防及び/又は治療薬。
(36) 有効成分が粉末X線回折スペクトルにおいて、2θで表される回折角度として8.5、10.0、14.6、20.1及び23.2゜(それぞれ±0.2゜)付近に特有のピークを示すことを特徴とする、(33)〜(35)のいずれか1項に記載の関節リウマチの予防及び/又は治療薬。
(37) 有効成分が融点(補外開始温度)約176℃であることを特徴とする、(33)〜(36)のいずれか1項に記載の関節リウマチの予防及び/又は治療薬。
(38) 下記式(II)で示される
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rはエチル又はビニルを示す。)
1−エチル−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド又はN−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド。
(39) 下記式(III)で示される
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Rはエチル又はビニルを示す。)
[(1−エチル−1H−ピラゾール4−イル)メチル](6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン又は(6−イソプロピルピリジン−3−イル)[(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミン。
(40) 下記式(IV)で示される
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Raはヒドロキシメチル又はホルミルを示す。)
1−エチル−1H−ピラゾール化合物。
(41) 下記式(V)で示される
【0018】
【化5】

【0019】
1−(2−クロロエチル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル。
(42) 下記式(VI)で示される
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Rbはエトキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ヒドロキシメチル又はホルミルを示す。)
1−ビニル−1H−ピラゾール化合物。
(43) 溶媒和物がメタノール和物である(1)に記載の(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
(44) 溶媒和物が1メタノール和物である(1)又は(43)に記載の(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
【発明の効果】
【0022】
本発明化合物である(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物はそのラセミ体と比較し、C5a受容体拮抗活性のみならず、生物学的利用率においても高活性を示す化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】フリー体・I形結晶のXRDパターンを示す図である。
【図2】フリー体・I形結晶のDSC曲線を示す図である。
【図3】実施例22で得られた化合物のXRDパターンを示す図である。
【図4】実施例22で得られた化合物のDSC曲線を示す図である。
【図5】実施例23で得られた化合物のXRDパターンを示す図である。
【図6】実施例23で得られた化合物のDSC曲線を示す図である。
【図7】実施例24で得られた化合物のDSC曲線を示す図である。
【図8】実施例25で得られた化合物のDSC曲線を示す図である。
【図9】実施例26で得られた化合物のXRDパターンを示す図である。
【図10】実施例26で得られた化合物を40℃で35分間減圧乾燥した後のXRDパターンを示す図である。
【図11】溶出試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の要旨は上記式(I)で示されるN−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの(S)異性体、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物、及びそれらを有効成分として含む医薬、並びにN−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの(S)異性体、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の製造中間体に存する。
【0025】
本発明化合物の上記式(I)で示される化合物は例えば、以下に示す方法や、後述の実施例に示すような方法などに従い製造することができるが、これらの製造方法は一例であり、これらに限定されるものではない。以下に例示する製造方法は単独でも組み合わせてもよく、さらに従来法を組み合わせてもよい。また、必要に応じて、各化合物は常法により保護や脱保護を行う。以下の各工程で得られた生成物は、常法により単離及び生成することができる。
【0026】
方法1:化合物(III’)の製法1
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R1は置換基を有してもよいエチル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいエチニル基又は窒素原子の保護基を表す。)
化合物(VII)またはその塩と化合物(IIX)またはその反応性誘導体を無溶媒あるいは適切な溶媒中で反応させることにより、化合物(II’)とし、続いて適切な溶媒中で還元剤と反応させることにより、化合物(III’)を製造することができる(工程1、2)。
【0029】
工程1は公知のアミド化法あるいはペプチド合成法などが準用でき、例えば、縮合剤(カルボジイミド類(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなど)、ジフェニルホスホリルアジド、カルボニルジイミダゾール、1−ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(Bop試薬)、2−クロロ−N−メチルピリジニウムヨーダイド−トリブチルアミン系(向山法)、N−シクロヘキシルカルボジイミド−N´−メチルポリスチレンなど)の存在下、不活性溶媒中または無溶媒で、好ましくは−78℃から80℃にて行うことができる。また、工程1は塩基{例えば、有機塩基(トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン、4―ジメチルアミノピリジンなど)、無機塩基(炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム)、n−ブチルリチウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなど)}などが存在してもよい。通常、工程1の反応は24時間以内に終了する。
【0030】
また、化合物(IIX)を別の反応性誘導体に変換することによっても製造することができる。化合物(IIX)の反応性誘導体が酸ハライド(例えば、酸クロリド、酸ブロミドなど)または酸無水物(例えば、対称酸無水物、低級アルキル炭酸混合酸無水物、アルキルリン酸混合酸無水物など)の場合、化合物(VII)との反応は、通常、不活性溶媒中または無溶媒で、−78℃から溶媒の還流温度にて行うことができる。
【0031】
さらに、化合物(IIX)の反応性誘導体として、いわゆる活性エステル(4−ニトロフェニルエステル、4−クロロベンジルエステル、4−クロロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、コハク酸イミドエステル、ベンゾトリアゾールエステル、4−ジメチルスルホニウムフェニルエステルなど)を用いる場合、反応は通常、不活性溶媒中または無溶媒で、−78℃から溶媒の還流温度にて行うことができる。
【0032】
以上に述べたアミド化反応に用いられる不活性溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミドなどのアミド類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0033】
工程2での還元反応に用いられる還元剤は、例えば、水素化リチウムアルミニウム、ボラン、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。また、添加剤として、ヨウ素、ルイス酸(例えば、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体など)、硫酸などを使用してもよい。還元反応に用いられる溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエンなどが挙げられ、これらの混合溶媒でも良い。反応温度は溶媒によって異なるが、通常−78℃から溶媒の還流温度である。反応時間は反応温度によって異なるが、通常1時間から24時間である。
【0034】
方法2:化合物(III’)の製法2
【0035】
【化8】

【0036】
(式中、R1は前記と同義である。)
化合物(VII)と化合物(IV’)を無溶媒あるいは適切な溶媒中、脱水縮合させ化合物(VIII)とし、続いて適切な溶媒中で還元剤と反応させることにより、化合物(III’)を製造することができる(工程3、4)。
【0037】
工程3の化合物(VII)と化合物(IV’)の脱水縮合反応は、脱水剤存在下または生成する水をDean−Stark装置で反応系から除去することによって行うことができる。
【0038】
本反応に使用する脱水剤は通常の脱水剤を用いることができる。脱水剤としては、例えば、無水硫酸マグネシウム、モレキュラーシーブスなどが挙げられる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。反応温度は溶媒によって異なるが、通常、0℃から溶媒の還流温度である。反応時間は反応温度によって異なるが、通常1時間から24時間である。
【0039】
工程3で用いる化合物(IV’)のR1が置換基を有してもよいビニルである化合物は、例えば、実施例6〜10の方法に準じて化合物(V)及び(VI)を経て合成することができる。
【0040】
工程4に用いられる還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、ギ酸、ギ酸ナトリウムなどが挙げられる。また、還元剤としてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合、工程3の脱水剤またはDean−Stark装置による水の除去は省くことができる。反応に用いられる溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、酢酸、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、またはこれらの混合溶媒でもよい。反応温度は溶媒によって異なるが、通常、0℃から150℃である。反応時間は反応温度によって異なるが、通常1時間から24時間である。
【0041】
方法3:化合物(I)の製法
【0042】
【化9】

【0043】
(式中、Rは水酸基の保護基、Rは置換基を有してもよいエチル基、置換基を有してもよいビニル基又は置換基を有してもよいエチニル基を表す。)
上記の方法1又は2により得られた化合物(III’’)と化合物(IX)を適切な条件で反応させ化合物(X)とし、続いて保護基を除去、および必要に応じて還元することにより、化合物(I)を製造することができる(工程5、6)。
【0044】
工程5における化合物(IX)またはその反応性誘導体と化合物(III’’)またはその塩との反応は、工程1と同様にして行うことができる。
【0045】
工程6の保護基Rの除去は、保護基の種類に応じて、加水分解、酸処理、金属触媒(パラジウム炭素、ラネーニッケルなど)を用いた接触水素添加などの通常の方法で行うことができる。
【0046】
また、Rのエチル基への返還はRの種類に応じて、加水分解、酸処理、テトラブチルアンモニウム フルオライド(TBAF)、水素化リチウムアルミニウム、リチウム/液体アンモニア、金属触媒(パラジウム炭素、ラネーニッケルなど)を用いた接触水素添加などの通常の方法で行うことができる。この反応は、水酸基の脱保護反応(Rの除去)と同時でもよく、あるいは脱保護反応前、あるいは反応後に行ってもよい。
【0047】
方法4:化合物(X)の製法
【0048】
【化10】

【0049】
(式中、R、Rは前記と同義であり、Rは窒素原子の保護基を表し、Lはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ又はパラトルエンスルホニルオキシなどの脱離基を表す。)
【0050】
上記の方法1又は2により得られた化合物(III’’’)より工程7−9を経て、化合物(X)を製造することもできる。得られた化合物(X)は上記方法3の工程6により、化合物(I)へと変換することができる。
【0051】
工程7における化合物(IX)またはその反応性誘導体と化合物(III’’’)またはその塩との反応は、工程1と同様にして行うことができる。
【0052】
工程8の保護基Rの除去は、保護基の種類に応じ、加水分解、酸処理、金属触媒(パラジウム炭素、ラネーニッケルなど)を用いた接触水素添加などの通常の方法で行うことができる。
【0053】
工程9の反応は、反応を阻害しない溶媒中、あるいは無溶媒で、必要に応じて塩基{例えば、有機塩基(トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジンなど)、無機塩基(水素化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム)、n−ブチルリチウム、ナトリウム tert−ブトキシド、カリウム tert−ブトキシドなど}や金属触媒(パラジウム、銅、ヨウ化銅、シアン化銅など)などの存在下、行うことができる。工程9に用いられる溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エステルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、DMF、DMAなどのアミド類、アセトニトリル、DMSOまたはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0054】
方法5:化合物(XV)の製法1
【0055】
【化11】

【0056】
(式中、R、R、Lは前記と同義である。)
化合物(IX)と化合物(VII)を反応させ化合物(XIII)とし、続いて化合物(XIV)と適切な条件で反応させることにより、化合物(XV)を製造することができる(工程10、11)。
【0057】
工程10における化合物(IX)またはその反応性誘導体と化合物(VII)またはその塩との反応は、工程1と同様にして行うことができる。
【0058】
工程11は、反応を阻害しない溶媒中、塩基{例えば、有機塩基(トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジンなど)、無機塩基(水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム)、n−ブチルリチウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リチウム ジイソプロピルアミドなど}などの存在下、−78℃から溶媒の還流温度にて行われる。工程11に用いられる溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エステルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、DMF、DMAなどのアミド類、アセトニトリル、DMSOまたはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0059】
方法6:化合物(XV)の製法2
【0060】
【化12】

【0061】
(式中、R、Rは前記と同義であり、Yはハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシなどを表す。)
化合物(IX)と化合物(XVI)を反応させ化合物(XVII)とし、続いて化合物(XVIII)と適切な条件で反応させることにより、化合物(XV)を製造することができる(工程10、11)。
【0062】
工程12での化合物(IX)またはその反応性誘導体と化合物(XVI)またはその塩との反応は、工程1と同様にして行うことができる。
工程13は、反応を阻害しない溶媒中、塩基、例えば、有機塩基(トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジンなど)、無機塩基(水素化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウムなど)、また必要に応じて銅、シアン化銅、ヨウ化銅などの触媒や1,2−ジアミン配位子(エチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキセンなど)の存在下、−20℃から溶媒の還流温度にて行われる。工程13に用いられる溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エステルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、DMF、DMAなどのアミド類、ニトロベンゼン、アセトニトリル、DMSO、水またはこれらの混合溶媒等があげられる。また、工程13は文献(J.AM.CHEM.SOC.2002,124,7421−7428)に記載の方法に準じても行うことができる。
【0063】
方法5や6により得られた化合物(XV)は方法3、4に従うことにより、化合物(I)へと変換することができる。
【0064】
また、既に述べた式(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で示される化合物は新規な化合物であり、例えば、後述する実施例に記載の方法により製造することができる。また、これら化合物は後述する実施例や調整例記載の方法に従い、化合物(I)へと導くことができるので、化合物(I)の製造中間体として有用な化合物である。さらに(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドのメタノール和物は新規な化合物であり、乾燥させると(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドとなるので、化合物(I)の製造中間体としても有用な化合物である。
【0065】
本発明において、「置換基を有してもよい」における置換基としては、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、保護基を有してもよい水酸基などが挙げられる。窒素原子の保護基としては、例えば、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニルなどが挙げられる。水酸基の保護基としては、例えば、メチル、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子などが挙げられる。
【0066】
本発明において、薬理学的に許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸との塩、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸又はアスコルビン酸等の有機酸との塩、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)との塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)との塩、アルミニウムなどの金属との塩、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン等の有機塩基との塩が挙げられる。これらは必要に応じて適切な溶媒(メタノール、エタノール等)中、上述した酸、アルカリ金属、アルカリ土類金属、金属又は有機塩基と処理することによって得ることができる。また、得られた化合物が水和物又は溶媒和物でない場合、水、含水溶媒又はその他の溶媒と処理することにより、水和物又は溶媒和物とすることができる。
【0067】
本発明化合物の好ましい態様として(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の結晶を挙げることができ、より好ましい態様としては(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの結晶を挙げることができる。この結晶は図1に示される粉末X線回折パターン及び/又は図2に示される示差走査熱分析(DSC)曲線を有することが好ましい。ここで、粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークは2θで表される回折角度として8.5、10.0、14.6、20.1及び/又は23.2°(それぞれ±0.2°)を挙げることができる。また、DSCによる融点(補外開始温度)は約171℃〜約176℃、好ましくは約176℃を挙げることができる。別の好ましい結晶としては、図3に示される粉末X線回折パターン及び/又は図4に示されるDSC曲線を有するものを挙げることができる。ここで、粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークは2θで表される回折角度として5.9、11.9、15.6及び/又は21.3°(それぞれ±0.2°)を挙げることができる。またDSCによる融点(補外開始温度)は約96℃を挙げることができる。
【0068】
本発明化合物の別の好ましい態様として(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の非晶質体を挙げることができ、より好ましくは(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの非晶質体である。
【0069】
本発明化合物のさらに別の好ましい態様として(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの塩酸塩又は臭化水素酸塩を挙げることができ、より好ましい態様として1塩酸塩又は1臭化水素酸塩を挙げることができる。ここで、DSCによる融解及び/又は分解ピークの補外開始温度は、1塩酸塩が約172℃、1臭化水素酸塩が約189℃である。
【0070】
本発明において、本発明化合物には生体内において代謝されて前記一般式(I)の化合物に変換されるプロドラッグ、又は一般式(I)の化合物の活性代謝物も含むものである。
【0071】
本明細書において使用するいくつかの用語について次のように定義する。
【0072】
「予防薬」とは疾患を発症していない健常人に対して投与される薬であり、例えば、疾患の発症を防止する目的で投与される薬のことである。
【0073】
「治療薬」とは医師により疾患を発症している診断された人(患者)に対して投与される薬であり、例えば、疾患や症状の軽減、又は健康を回復することを目的として投与される薬である。また、投与の目的が疾患や症状の悪化防止、又は発作の防止であっても、投与されるのが患者であれば治療薬である。
【0074】
「C5a受容体と結合する物質」とはC5a及びC5aの分解物(例えばC5aのカルボキシ末端のアルギニンが欠損したC5a desArg)であり、さらにはC5a以外の既知もしくは未知のC5a受容体に親和性を有する物質である。
【0075】
「C5a受容体拮抗剤」とはC5a受容体と「C5a受容体と結合する物質」との結合を阻害する物質である。
【0076】
「C5a受容体拮抗作用」とは「C5a受容体と結合する物質」がC5a受容体を発現した細胞にC5a受容体を介して結合し、何らかの生理的変化(例えば細胞内Ca2+の増加等)を生じさせる反応を阻害する作用である。
【0077】
本発明化合物は、C5a受容体拮抗作用を示し、C5aがC5a受容体に結合することに起因する疾患、例えば、関節リウマチや全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患;敗血症;成人呼吸窮迫症候群;慢性閉塞性肺疾患;喘息等のアレルギー性疾患;粥状動脈硬化症;心筋梗塞;脳梗塞;乾癬;アルツハイマー病;虚血再灌流、外傷、火傷又は外科侵襲等に起因する白血球活性化による重要臓器損傷症(例えば、肺炎、腎炎、肝炎、膵炎など)などの予防及び/又は治療薬として有用である。ここで、自己免疫疾患の好まし例としては関節リウマチを挙げることができる。また、C5aは強力な炎症惹起作用を有していることから、本発明化合物は抗炎症薬として、さらに、C5a受容体を介して侵入する細菌やウイルスによる感染症の予防及び/又は治療薬として有用である。
【0078】
本発明化合物を前記の予防及び/又は治療薬として使用する場合、通常、全身的又は局所的に、経口又は非経口の形で投与される。患者への投与量は、年令、体重、性別、一般的健康状態、治療効果、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、治療を行なっている病気の程度等により異なる。通常、成人一人あたり、一回につき0.1mgから500mgの範囲で、一日一回から数回経口投与するか、又は成人一人あたり、一回につき0.01mgから200mgの範囲で、一日一回から数回非経口投与(好ましくは静脈内投与)することが望ましいが、患者の状態に合わせて適宜増減を行うことがより望ましい。
【0079】
本発明化合物は、経口的又は非経口的に(例えば吸入法、直腸投入あるいは局所投与など)使用することができ、医薬組成物あるいは製剤(例えば、粉末、顆粒剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、溶液剤等)として使用することができ、それらは少なくとも一つの本発明化合物を単独で、あるいは医薬として許容される担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、矯臭剤、乳化剤、希釈剤及び/又は溶解補助剤など)と混合して用いることができる。
【0080】
医薬組成物は通常の方法にしたがって製剤化することができる。本明細書において非経口とは、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、あるいは点滴法などを含むものである。注射用組成物、例えば無菌注射用懸濁物あるいは油性懸濁物は、適当な分散化剤、湿化剤又は懸濁化剤を用いて、当該分野で知られた方法で調製することができる。
【0081】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。上記固体組成物において、1又はそれ以上の活性化合物は、少なくとも1の添加物混合することができる。
【0082】
また、上記の組成物は、さらなる添加物を含むことができ、例えば潤滑剤、保存剤、抗酸化剤、崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤、結合剤、増粘剤、甘味付加剤、フレーバー付加剤、パーヒューム剤等を含有していてもよい。
【0083】
錠剤又は丸剤は必要により胃溶性あるいは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよいし、また2以上の層で被膜してもよい。
【0084】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される溶液剤、乳濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤を含んでいてもよい。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。その他の経口投与組成物としては、1又はそれ以上の活性物質を含み、それ自体公知の方法により処方されるスプレー剤が挙げられる。
【0085】
非経口投与のための注射用組成物は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含んでいてもよい。上記組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤のような補助剤を含んでいてもよい。これらは、例えばバクテリア保留フィルターを通すろ過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。
【0086】
また注射用組成物は、無菌の固体組成物を製造し、例えば凍結乾燥品を使用前に無菌化水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0087】
その他の非経口投与組成物としては、1又はそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用溶液、軟膏剤、塗布剤、坐剤等が含まれる。
【0088】
直腸投与用の坐剤は、その薬物と適切な非刺激性の補形剤、例えば、常温では固体であるが腸管の温度では液体の物性を示し、直腸内で溶解することで薬物を放出する性質の物質と混合して製造することができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例等で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0090】
なお、H−NMRのケミカルシフト値は、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用い、相対的なデルタ(δ)値をパーツパーミリオン(ppm)で表した。カップリング定数は自明な多重度をヘルツ(Hz)で示し、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、sept(セプテット)、m(マルチプレット)、dd(ダブルダブレット)、brs(ブロードシングレット)等と表記した。
【0091】
薄層クロマトグラフィーはメルク社製、カラムクロマトグラフィーは富士シリシア化学社製のシリカゲルを用いて行った。
【0092】
調製例1
【0093】
【化13】

【0094】
5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸178gと(3S)−(−)−3−アミノピロリジン54.3gをメタノール700mLに溶解後、溶媒を減圧留去し、粗結晶229.6gを得た。これをTHFと水の混合溶媒で再結晶し、白色結晶86gを得た。この結晶48gを1mol/L−塩酸に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去することにより、(1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸36.8gを得た。
[α] −51.8゜(24℃,c=1.0,メタノール)
実施例1
【0095】
【化14】

【0096】
1−エチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸9.80gの1,2−ジクロロエタン(50mL)溶液に塩化チオニル7.66mLを加え、60℃にて3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にトルエンを加え、再び減圧濃縮した。この残渣の1,2−ジクロロエタン(25mL)溶液を、3−アミノ−6−イソプロピルピリジン9.52gの1,2−ジクロロエタン(100mL)溶液に氷冷下にて加えた。室温まで昇温し、同温度にて2時間攪拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、クロロホルムで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣の固形物をイソプロピルエーテルで懸濁させた後、濾取することにより、1−エチル−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド11.4gを褐色粉末結晶として得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.27(6H,d,J=6.9Hz),1.46(3H,t,J=7.2Hz),3.02(1H,sept,J=6.9Hz),4.14(2H,q,J=7.2Hz),7.13(1H,d,J=8.6Hz),7.93(1H,s),7.98(1H,s),8.12(1H,dd,J=2.6,8.6Hz),8.53−8.57(2H,m)
実施例2
【0097】
【化15】

【0098】
1−エチル−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド11.4gをボラン・THFコンプレックス/1mol/L−THF溶液(BH3・THF錯体/1M THF溶液)100mLに溶解し、4時間加熱還流した。反応液を冷却後、1mol/L−塩酸に加え、この混合溶液を数分間加熱還流した。反応液を冷却後、飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル](6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン9.86gを淡黄色オイルとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.27(6H,d,J=6.9Hz),1.46(3H,t,J=7.2Hz),2.96(1H,sept,J=6.9Hz),3.77−3.90(1H,brs),4.08−4.20(4H,m),6.89(1H,dd,J=2.6,8.6Hz),6.98(1H,d,J=8.6Hz),7.37(1H,s),7.47(1H,s),8.01(1H,d,J=2.6Hz)
実施例3
【0099】
【化16】

【0100】
(1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸1.98gの塩化メチレン(15mL)溶液に塩化チオニル0.77mL及び触媒量のジメチルホルムアミドを加え、攪拌下1.5時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、残渣にトルエンを加え、再び減圧濃縮した。この残渣の1,2−ジクロロエタン(15mL)溶液を、[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル](6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン1.71g、ピリジン1.13mL、及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)8.6mgの1,2−ジクロロエタン(15mL)溶液に氷冷下にて加え、室温まで昇温し、同温度にて16時間攪拌した。反応液を、4%炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、クロロホルムで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1S)−5−ベンジルオキシ−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド2.86gを白色無定形晶として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.31(6H,d,J=6.9Hz),1.45(3H,t,J=7.3Hz),1.40−1.57(1H,m),1.75−2.07(3H,m),2.65−2.77(2H,m),2.72(1H,sept,J=6.9Hz),3.64(1H,t,J=6.2Hz),4.14(2H,q,J=7.3Hz),4.61(1H,d,J=13.9Hz),4.85(1H,d,J=13.9Hz),5.03(2H,s),6.53(1H,d,J=7.7Hz),6.72(1H,d,J=7.7Hz),7.03(1H,t,J=7.7Hz),7.24−7.43(9H,m),8.39(1H,d,J=1.5Hz)
上記操作で得られたアミド体2.86gのメタノール溶液(30mL)に、窒素雰囲気下10%パラジウム炭素300mg、ぎ酸アンモニウム1.78gを加え、室温で3日間攪拌した。反応液を濾過後、溶媒を留去し、残渣に水を加え酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒で再結晶することにより、(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド1.27gを白色粉末結晶として得た(以下、この結晶と同一の物理化学的性質を有する(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの結晶をフリー体・I形結晶と称することがある。)。
【0101】
光学純度 99.9%e.e.
分析条件
カラム:キラルセルOD(0.46φ×25cm、ダイセル化学工業)
展開溶媒:ヘキサン/イソプロパノール=85/15
流速:1.0mL/分
カラムオーブン温度:40℃
UV検出:254nm
保持時間:18.5分。
【0102】
フリー体・I形結晶の比旋光度
[α] −93.0°(21℃,c=1.0,メタノール)。
【0103】
フリー体・I形結晶の粉末X線回折(XRD)分析
以下の条件でXRDパターンを測定した。
装置:RINT2200/Ultima+(リガク社)
条件:
X線管球:Cu Kα1
管電流:40 mA
管電圧:40 kV
操作速度:1〜4゜/min
操作範囲:2θ=2〜40゜
粉末X線回折パターンを図1に示した。
結晶の特徴的なピークは2θで表される回折角度として8.5、10.0、14.6、20.1及び23.2゜(それぞれ±0.2゜)であった。
【0104】
フリー体・I形結晶の示差走査熱分析(DSC)
得られた化合物3mgを示差走査熱測定装置DSC821e(メトラー・トレド社)にのせ、昇温速度10℃/min(25〜200℃,窒素40 mL/min)で測定した。その結果、融点(補外開始温度)は176℃に認められた。DSC曲線を図2に示した。
【0105】
実施例4
【0106】
【化17】

【0107】
1−エチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸9.44gのテトラヒドロフラン(10mL)溶液にボラン・テトラヒドロフランコンプレックス/1mol/L−テトラヒドロフラン溶液(BH3・THF錯体/1M THF溶液)100mLを加え、室温で終夜攪拌した。1mol/Lの塩酸150mLを加え、30分間加熱還流した。反応液を冷却後、飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより、(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メタノール2.84gを淡黄色オイルとして得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.48(3H,t,J=7.5Hz),4.16(2H,q,J=7.5Hz),4.59(2H,s),7.42(1H,s),7.49(1H,s)。
【0108】
実施例5
【0109】
【化18】

【0110】
(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メタノール2.84gに、塩化メチレン124mL、二酸化マンガン13.5g、無水硫酸マグネシウム3.7gを加え、室温で攪拌した。反応終了確認後、反応溶液を濾過し、その溶媒を留去することにより、(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)カルバルデヒド2.61gを淡黄色オイルとして得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.54(3H,t,J=7.4Hz),4.23(2H,q,J=7.4Hz),7.95(1H,s),7.97(1H,s),9.85(1H,s)。
【0111】
実施例6
【0112】
【化19】

【0113】
1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル0.46gのジクロロエタン(50mL)溶液に、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム0.24g、50%(W/W)水酸化ナトリウム水溶液15mLを加え、室温で攪拌した。反応終了確認後、反応液を水とクロロホルムに分配し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより、1−(2−クロロエチル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル0.72gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.35(3H,t,J=7.2Hz),3.91(2H,t,J=5.7Hz),4.30(2H,q,J=7.2Hz),4.44(2H,t,J=5.7Hz),7.96(1H,s),7.99(1H,s)
MS(ESI)m/z:203[MH]
【0114】
実施例7
【0115】
【化20】

【0116】
1−(2−クロロエチル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル0.72gに、ジメチルスルホキシド40mL、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン2gを加え、80℃で加熱攪拌した。反応終了確認後、反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル0.344gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.36(3H,t,J=7.2Hz),4.31(2H,q,J=7.2Hz),5.00(1H,dd,J=1.2,9.0Hz),5.66(1H,dd,J=1.2,15.9Hz),7.03(1H,dd,J=9.0,15.9Hz),7.99(1H,s),8.08(1H,s)。
【0117】
実施例8
【0118】
【化21】

【0119】
1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル0.344gに、エタノール5mL、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液2.5mLを加え、50℃で加熱攪拌した。反応終了確認後、反応液を1mol/Lの塩酸で酸性にした後、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することにより、1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸0.253gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:5.00(1H,d,J=8.7Hz),5.74(1H,d,J=15.6Hz),7.27(1H,dd,J=8.7,15.6Hz),7.96(1H,s),8.57(1H,s),12.59(1H,brs)。
【0120】
実施例9
【0121】
【化22】

【0122】
1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル2.0gをジエチルエーテル51mLに溶解し、窒素気流中、−78℃で撹拌下、1mol/L ジイソブチルアルミニウムヒドリド/トルエン溶液(DIBAL)26mLを滴下した。反応温度を室温まで昇温し、同温度で3時間撹拌した後、氷冷下、メタノール1.9mL、ジエチルエーテル3.2mL、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)飽和水溶液12.8mLを順次加えた。室温で1時間撹拌後、反応液を濾過し、濾液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メタノールを1.04g得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.64(1H,t,J=5.4Hz),4.62(2H,d,J=5.4Hz),4.84(1H,d,J=9.0Hz),5.48(1H,d,J=16.2Hz),7.02(1H,dd,J=9.0,16.2Hz),7.61(1H,s),7.63(1H,s)。
【0123】
実施例10
【0124】
【化23】

【0125】
(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メタノール1.04gに、塩化メチレン47mL、二酸化マンガン5.03g、無水硫酸マグネシウム1.39gを加え、室温で攪拌した。反応終了確認後、反応溶液を濾過し、その溶媒を留去することにより、1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド0.83gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:5.08(1H,dd,J=1.5,8.7Hz),5.75(1H,dd,J=1.5,15.6Hz),7.06(1H,dd,J=8.7,15.6Hz),8.07(1H,s),8.10(1H,s),9.91(1H,s)。
【0126】
調製例2
【0127】
【化24】

【0128】
1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル14.3g、4−ジメチルアミノピリジン40mgをテトラヒドロフラン80mLに溶解し、室温でジ炭酸 ジ−tert−ブチル23.0gのテトラヒドロフラン(20mL)溶液を加え、同温度にて7時間攪拌した。反応液を減圧留去し、その残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、1−tert−ブチル 4−エチル 1H−ピラゾール−1,4−ジカルボキシラート28.9gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.37(3H,t,J=7.2Hz),1.67(9H,s),4.33(2H,q,J=7.2Hz),8.06(1H,s),8.55(1H,s)。
【0129】
調製例3
【0130】
【化25】

【0131】
1−tert−ブチル 4−エチル 1H−ピラゾール−1,4−ジカルボキシラート11.3gをジエチルエーテル200mLに溶解し、窒素気流中、−78℃で撹拌下、1mol/L ジイソブチルアルミニウムヒドリド/トルエン溶液(DIBAL)100mLを滴下した。反応温度を室温まで昇温し、同温度で2時間撹拌した後、氷冷下、メタノール7.5mL、ジエチルエーテル12.5mL、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)飽和水溶液50mLを順次加えた。室温で1時間撹拌後、反応液を濾過し、濾液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、tert−ブチル 4−(ヒドロキシメチル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート3.55gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.65(9H,s),1.89(1H,brs),4.63(2H,s),7.72(1H,s),8.06(1H,s)。
【0132】
調製例4
【0133】
【化26】

【0134】
tert−ブチル 4−(ヒドロキシメチル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート3.55gに、塩化メチレン100mL、二酸化マンガン10.76g、無水硫酸マグネシウム2.97gを加え、室温で攪拌した。反応終了確認後、反応溶液を濾過し、その溶媒を留去することにより、tert−ブチル 4−ホルミル−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート3.6gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.68(9H,s),8.13(1H,s),8.62(1H,s),9.97(1H,s)。
【0135】
実施例11
【0136】
【化27】

【0137】
(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)カルバルデヒド0.091g、(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン0.1gを1,2−ジクロロエタン4mLに溶解した後、酢酸0.04mL、ナトリウム トリアセトキシボロヒドリド0.311gを加え、室温で終夜攪拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル](6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン0.174gを淡黄色オイルとして得た。
MS(ESI)m/z:245[MH]
【0138】
実施例12
【0139】
【化28】

【0140】
1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸0.767g、(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン0.756gをジメチルホルムアミド30mLに溶解した後、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.748g、1−エチル−3−(3´−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩1.07gを加え、室温で終夜攪拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド1.28gを得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.29(6H,d,J=6.9Hz),3.06(1H,sept,J=6.9Hz),5.02(1H,dd,J=1.3,8.8Hz),5.67(1H,dd,J=1.3,15.7Hz),7.04(1H,dd,J=8.8,15.7Hz),7.20(1H,d,J=8.6Hz),7.86(1H,brs),8.00(1H,s),8.15(1H,d,J=2.5Hz),8.18(1H,s),8.54(1H,d,J=2.3Hz),
MS(ESI)m/z:257[MH]
【0141】
実施例13
【0142】
【化29】

【0143】
N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド1.54gをトルエン15mLに縣濁し、65℃で加熱攪拌下、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム・トルエン溶液(65+wt.%)(Red−Al)6.0mLをゆっくり加え、同温度で40分間加熱攪拌した。反応液を氷冷後、酢酸エチル100mLを加え、10分間攪拌した。氷冷下反応液に4N−水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で二回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(6−イソプロピルピリジン−3−イル)[(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミン1.11gを白色結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.25(6H,d,J=6.9Hz),2.96(1H,sept,J=6.9Hz),3.85(1H,brs),4.22(2H,d,J=3.6Hz),4.82(1H,d,J=9.3Hz),5.46(1H,d,J=15.9Hz),6.89(1H,dd,J=3.0,8.4Hz),6.96−7.04(2H,m),7.58(2H,s),8.02(1H,d,J=2.7Hz)
MS(ESI)m/z:243[MH]
【0144】
実施例14
【0145】
【化30】

【0146】
1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド0.3g、(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン0.335gを1,2−ジクロロエタン12mLに溶解した後、酢酸0.14mL、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム1.04gを加え、室温で終夜攪拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(6−イソプロピルピリジン−3−イル)[(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミン0.574gを得た。
MS(ESI)m/z:243[MH]
【0147】
実施例15
【0148】
【化31】

【0149】
tert−ブチル 4−ホルミル−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート1.0g、(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミン0.694gを1,2−ジクロロエタン25mLに溶解した後、酢酸0.29mL、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム2.16gを加え、室温で終夜攪拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、tert−ブチル 4−{[(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミノ]メチル}−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート1.46gを得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.26(6H,d,J=6.9Hz),1.65(9H,s),2.96(1H,sept,J=6.9Hz),3.80−3.90(1H,m),4.23(2H,d,J=6.0Hz),6.88(1H,dd,J=3.0,8.4Hz),6.99(1H,d,J=8.4Hz),7.70(1H,s),8.01(1H,d,J=3.0Hz),8.04(1H,s)。
【0150】
実施例16
【0151】
【化32】

【0152】
(1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸1.14gの塩化メチレン(10mL)溶液に塩化チオニル0.59mL及び触媒量のジメチルホルムアミドを加え、攪拌下2時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、残渣にトルエンを加え、再び減圧濃縮した。この残渣の1,2−ジクロロエタン(5mL)溶液を、(6−イソプロピルピリジン−3−イル)[(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミン0.98g、ピリジン0.64gの1,2−ジクロロエタン(10mL)溶液に氷冷下にて加え、室温まで昇温し、同温度にて5時間攪拌した。反応液を、4%炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、クロロホルムで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1S)−5−ベンジルオキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−N−[(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド1.57gを褐色無定形晶として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.31(6H,d,J=6.9Hz),1.41−1.60(1H,m),1.75−2.08(3H,m),2.63−2.83(2H,m),3.09(1H,sept,J=6.9Hz),3.66(1H,t,J=6.2Hz),4.65(1H,d,J=14.4Hz),4.81−4.93(2H,m),5.03(2H,s),5.43(1H,d,J=15.6Hz),6.54(1H,d,J=7.8Hz),6.72(1H,d,J=8.1Hz),6.92−7.10(2H,m)7.20(1H,d,J=8.1Hz),7.26−7.42(6H,m),7.48(1H,s),7.60(1H,s),8.42(1H,d,J=2.4Hz)
MS(ESI)m/z:507[MH]
光学純度 91%e.e.
分析条件
カラム:キラルセルOD(0.46φ×25cm、ダイセル化学工業)
展開溶媒:ヘキサン/イソプロパノール=85/15
流速:1.0mL/分
温度:40℃
UV検出:254nm
保持時間:15.9分。
【0153】
実施例17
【0154】
【化33】

【0155】
実施例16で得られた(1S)−5−ベンジルオキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−N−[(1−ビニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド1.55gのエタノール溶液(30mL)に10%パラジウム炭素0.4gを加え、水素雰囲気下40℃で4時間攪拌した。反応液を濾過後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド1.27gを白色粉末結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.31(6H,d,J=6.9Hz),1.35−1.55(1H,m),1.46(3H,t,J=6.9Hz),1.75−2.10(3H,m),2.52−2.75(2H,m),3.10(1H,sept,J=6.9Hz),3.63(1H,t,J=7.2Hz),4.14(2H,q,J=6.9Hz),4.68(1H,d,J=14.4Hz),4.83(1H,d,J=14.4Hz),6.32(1H,d,J=7.8Hz),6.39(1H,d,J=7.5Hz),6.76(1H,t,J=7.7Hz),6.86(1H,s),7.21(1H,d,J=8.4Hz),7.26−7.41(3H,m),8.40(1H,d,J=2.4Hz)
MS(ESI)m/z:419[MH]
光学純度 93%e.e.(分析条件:実施例3と同様)。
【0156】
実施例18
【0157】
【化34】

【0158】
(1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸0.427gの塩化メチレン(5mL)溶液に塩化チオニル0.12mLを加え、攪拌下2時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣の塩化メチレン(2mL)溶液を、tert−ブチル 4−{[(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミノ]メチル}−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート0.5g、ピリジン0.18mL、及び4−ジメチルアミノピリジン4.4mgの塩化メチレン(2mL)溶液に氷冷下にて加え、室温まで昇温し、同温度にて終夜攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、tert−ブチル 4−{[{[(1S)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]カルボニル}(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミノ]メチル}−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート0.673gを得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.31(6H,d,J=6.9Hz),1.40−1.70(1H,m),1.65(9H,s),1.75−2.10(3H,m),2.60−2.80(2H,m),3.10(1H,sept,J=6.9Hz),3.60−3.70(1H,m),4.69(1H,d,J=15.0Hz),4.84(1H,d,J=15.0Hz),5.03(2H,s),6.56(1H,d,J=7.8Hz),6.73(1H,d,J=7.8Hz),7.06(1H,t,J=7.8Hz),7.21(1H,d,J=8.4Hz),7.25−7.45(6H,m),7.67(1H,s),7.96(1H,s),8.41(1H,d,J=2.4Hz)。
【0159】
上記操作で得られたtert−ブチル 4−{[{[(1S)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]カルボニル}(6−イソプロピルピリジン−3−イル)アミノ]メチル}−1H−ピラゾール−1−カルボキシラート0.673gのジオキサン(2mL)溶液に、4mol/L HCl/ジオキサン5.6mLを加え、室温で撹拌した。反応終了確認後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1S)−5−ベンジルオキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−N−[(1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド0.52gを得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.31(6H,d,J=6.9Hz),1.40−1.60(1H,m),1.75−2.10(3H,m),2.60−2.80(2H,m),3.09(1H,sept,J=6.9Hz),3.60−3.70(1H,m),4.71(1H,d,J=14.4Hz),4.88(1H,d,J=14.4Hz),5.03(2H,s),6.55(1H,d,J=7.8Hz),6.72(1H,d,J=8.4Hz),7.04(1H,t,J=7.8Hz),7.20(1H,d,J=8.4Hz),7.25−7.45(6H,m),7.51(2H,s),8.38(1H,d,J=2.1Hz)
MS(ESI)m/z:481[MH]
光学純度 84%e.e.
分析条件
カラム:キラルセルOD(0.46φ×25cm、ダイセル化学工業)
展開溶媒:ヘキサン/イソプロパノール=85/15
流速:1.0mL/分
カラムオーブン温度:40℃
UV検出:254nm
保持時間:16.6分。
【0160】
実施例19
【0161】
【化35】

【0162】
実施例18で得られた(1S)−5−ベンジルオキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−N−[(1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド0.52gに、ジメチルホルムアミド2mL、トルエン2mL、ヨウ化エチル0.1mL、炭酸カリウム0.297gを加え、50℃で8時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1S)−5−ベンジルオキシ−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド0.287gを得た。
MS(ESI)m/z:509[MH]
光学純度 81%e.e.(分析条件:実施例3と同様)。
【0163】
実施例20
【0164】
【化36】

【0165】
実施例19で得られた(1S)−5−ベンジルオキシ−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド0.287gに、トリフルオロ酢酸1.2mL、チオアニソール0.2mLを加え、室温で6時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド0.213gを得た。
MS(ESI)m/z:419[MH]
光学純度 83%e.e.(分析条件:実施例3と同様)。
【0166】
実施例21
【0167】
【化37】

【0168】
(1S)−5−ベンジルオキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−N−[(1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド(82% e.e.)0.152gに、塩化メチレン1.3mL、1mol/L 水酸化ナトリウム水溶液0.63mL、ヨウ化エチル0.05mL、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム0.107gを加え、室温で終夜撹拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトで精製することにより、(1S)−5−ベンジルオキシ−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド0.157gを得た。
MS(ESI)m/z:509[MH]
光学純度 81%e.e.(分析条件:実施例3と同様)。
【0169】
実施例22
フリー体・I形結晶2.0gにメタノール6.5mlを加えて加熱還流して完全に溶解させた。この溶液を室温まで放冷し、種晶を少量加えると結晶性の白沈が生じた。更に冷蔵庫で一晩放置した後に沈殿物を濾取し、25℃で4.5時間減圧乾燥して1.67gの白色固体を得た。
【0170】
フリー体・I形結晶と同条件でXRD分析を行った。XRDパターンを図3に示した。結晶の特徴的なピークは2θで表される回折角度として5.9、11.9、15.6及び21.3゜(それぞれ±0.2゜)であった。
【0171】
フリー体・I形結晶と同条件でDSC測定を行った。その結果、融点(補外開始温度)は96℃に認められた。DSC曲線を図4に示した。(フリー体・I形結晶への結晶化による発熱ピークが補外開始温度127℃及びフリー体・I形結晶の融解ピークが補外開始温度173℃に認められた。)
【0172】
実施例23
フリー体・I形結晶300mgにアセトニトリル2mlを加えて約20分間加熱還流して完全に溶解させた。この溶液を室温まで放冷した後、40℃でエバポレーションして溶媒を除去すると、透明なあめ状物質となりナスフラスコの壁に付着した。更に室温で30分減圧乾燥すると、白い泡状の固体が得られた。この固体部分を集めて178mgの白色固体((1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの非晶質体)を得た。
【0173】
フリー体・I形結晶と同条件でXRD分析を行った。XRDパターンを図5に示した。
【0174】
フリー体・I形結晶と同条件でDSC測定を行った。その結果、フリー体・I形結晶への結晶化による発熱ピークが補外開始温度102℃に認められ、フリー体・I形結晶の融解による吸熱ピークが補外開始温度171℃に認められた。DSC曲線を図6に示した。
【0175】
実施例24
フリー体・I形結晶4.0gにn−プロパノール20mlを加え、オイルバスで加熱還流して完全に溶解させた。この溶液を室温まで放冷し、攪拌しながら2mol/Lの塩酸/エタノール溶液5.7mlを滴下した。種晶を少量加えて氷冷したところ、結晶性の白沈が生じた。更に冷蔵庫で一晩放置した後に沈殿物を濾取し、40℃で4時間減圧乾燥して3.80gの白色固体((1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド1塩酸塩)を得た。
【0176】
この固体についての元素分析結果は、C:65.76,H:6.86,N:12.14,Cl:7.57%(理論値;C:65.99,H:6.87,N:12.31,Cl:7.79%)であった。
【0177】
フリー体・I形結晶と同条件でDSC測定を行った。その結果、融解及び/又は分解ピークが(補外開始温度172℃に認められた。DSC曲線を図7に示した。
【0178】
実施例25
フリー体・I形結晶2.01gにアセトン7mlを加え、オイルバスで加熱還流して完全に溶解させた。この溶液を室温まで放冷し、攪拌しながら2mol/L臭化水素酸塩/エタノール溶液2.4ml(1.2当量)を滴下した。種晶を少量加えて氷冷したところ、結晶性の白沈が生じた。更に冷蔵庫で一晩放置した後に沈殿物を濾取し、40℃で2時間減圧乾燥して1.59gの白色固体((1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド1臭化水素酸塩)を得た。ここで得られた化合物のXRDの結果は実施例27で得られたものと一致した。
1H−NMR(DMSO−d)δ:1.15−1.50(10H,m),1.70−2.00(3H,m),2.35−2.60(2H,m),3.15(1H,brs),3.51(1H,brs),4.06(2H,q,J=7.3Hz),4.60−4.85(2H,m),6.45(1H,d,J=7.7Hz),6.61(1H,d,J=7.9Hz),6.88(1H,t,J=7.8Hz),7.24(1H,brs),7.45−7.70(2H,m),7.91(1H,brs),8.58(1H,brs)
フリー体・I形結晶と同条件でDSC測定を行った。その結果、融解及び/又は分解ピークが補外開始温度189℃に認められた。DSC曲線を図8に示した。
【0179】
実施例26
フリー体・I形結晶2.00gにメタノール6.5mlを加えて加熱還流して完全に溶解させた。この溶液を室温まで放冷し、種晶を少量加えたところ、結晶性の白沈が生じた。更に冷蔵庫で一晩放置した後に沈殿物((1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド 1メタノール和物)を濾取した。少量の固体を採取し、ろ紙で液分を軽く吸い取り、まだ湿り気の残った状態で、フリー体・I形結晶と同条件でXRD分析を実施した。その結果、実施例22で得られた化合物のXRDパターンと近似したパターンが得られた。図9にXRDパターンを示した。結晶の特徴的なピークは2θで表される回折角度として6.0、12.0、18.0及び21.9゜(それぞれ±0.2゜)であった。実施例22で得られた化合物のXRDパターンとの違いとしては1メタノール和物は21.9゜にピークが存在することが挙げられる。この他の違いとしては、1メタノール和物は20.7〜20.9゜(それぞれ±0.2゜)付近のピークがブロードであるのに対し、実施例22の化合物は21.3゜(±0.2゜)にピークを有することを挙げることができる。
【0180】
[NMR測定用サンプルの調整]
実施例22で得られた化合物をさらに40℃で35分間減圧乾燥し、約30mgを蓋のない秤量瓶に平らに入れ、メタノールデシケーター(褐色)中で室温保存した。保存8日後に取り出し、NMR測定を実施した。メタノールに由来すると思われるピークが3.17及び4.10ppmに確認された。また、40℃で35分間減圧乾燥後のサンプルについてフリー体・I形結晶と同条件でXRD分析を実施したところ、実施例22の化合物のXRDパターンと一致した。結果を図10に示した。
1H−NMR(DMSO−d)δ:1.22(6H,d,J=6.9Hz),1.25−1.45(1H,m),1.30(3H,t,J=7.3Hz),1.70−2.00(3H,m),2.35−2.55(2H,m),3.03(1H,sept,J=6.9Hz),3.17(3H,d,J=5.3Hz),3.46(1H,t,J=6.8Hz),4.06(2H,q,J=7.3Hz),4.10(1H,q,J=5.3Hz),4.66(1H,d,J=14.8Hz),4.71(1H,d,J=14.8Hz),6.42(1H,d,J=7.6Hz),6.60(1H,d,J=7.9Hz),6.88(1H,t,J=7.8Hz),7.21(1H,s),7.36(1H,d,J=8.2Hz),7.51(1H,s),7.63(1H,dd,J=2.2Hz,8.2Hz),8.38(1H,d,J=2.2Hz),9.22(1H,s)。
【0181】
実施例27
フリー体・I形結晶100mgに2mol/l臭化水素酸/エタノール溶液143μl(1.2当量)を滴下した。超音波で分散後60℃に加熱し、アセトン1mlを滴下した。これに種晶を少量加えて室温で放置すると、白い固体が析出した。室温で約4.5時間放置し、更に冷蔵庫で一晩保管した後に沈殿物を濾取して40℃で約3時間減圧乾燥すると、62mgの白色固体((1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド1臭化水素酸塩)が得られた。この固体について元素分析を実施したところ、C:59.99,H:6.14,N:10.96,Br:15.74(理論値;C:60.12,H:6.26,N:11.22,Br:16.00%)であった。
【0182】
調整例5
5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸230.0gと(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン98.7gをTHF575mLに溶解後、10℃以下まで冷却後、粗結晶138.9gを得た。これをTHFで再結晶し、(R)−(+)−1−フェニルエチルアンモニウム (1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸塩105.0gを白色結晶として得た。この結晶100gをエタノール200mL、水50.0mLにて溶解し、濃塩酸56.8gと水350mLより調整した塩酸水を加え、結晶を濾取する事によって(1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸60.4gを淡黄褐色結晶として得た。
【0183】
調整例6
1−エチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸12.68gにトルエン56.0mL、ジメチルホルムアミド112μLを加え、62℃まで昇温し、塩化チオニル9.90mLを滴下した。66℃下、1.5時間撹拌を行った後に濃縮を行い、蒸留精製によって1−エチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸クロリド12.57gを無色透明オイルとして得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.55(3H,t,J=7.3Hz),4.22(2H,q,J=7.4Hz),7.99(1H,s),8.02(1H,s)
【0184】
調整例7
(1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸1.00gにトルエン5.0mL、ジメチルホルムアミド0.01mLを加え、塩化チオニル0.31mLを滴下した。45℃下1時間撹拌を行った後に濃縮を行い、(1S)−(−)−5−ベンジルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボン酸クロリド1.10gを淡褐色オイルとして得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.81−1.95(2H,m),2.09−2.18(1H,m),2.31−2.39(1H,m),2.78(2H,dtd,J=5.9,12.2,44.6Hz),4.25(1H,t,J=6.0Hz),5.07(2H,s),6.82(2H,dd,J=7.9,21.8Hz),7.13−7.44(6H,m)。
【0185】
調製例8
2−ヒドロキシ−6−イソプロピルニコチノニトリル264gとオキシ塩化りん500gの懸濁溶液を攪拌下加熱溶解し、2時間還流した。反応溶液を冷却後氷水3lに注ぎ、しばらく攪拌した後、トルエンで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、2−クロロ−6−イソプロピルニコチノニトリル313.6gを褐色オイルとして得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.32(6H,d,J=6.9Hz),3.12(1H,sept,J=6.9Hz),7.28(1H,d,J=8.1Hz),7.94(1H,d,J=8.1Hz)。
【0186】
調製例9
2−クロロ−6−イソプロピルニコチノニトリル313.6gと75%硫酸800mLを内温110℃にて2.5時間攪拌した。反応溶液を冷却後、氷水4Lに注ぎ、しばらく攪拌した後、トルエンで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、接種後析出した固形物をヘキサンと少量のIPEで懸濁後濾取することにより2−クロロ−6−イソプロピルニコチン酸285gを褐色粉末結晶として得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.31(6H,d,J=6.9Hz),3.13(1H,sept,J=6.9Hz),7.20(1H,d,J=8.1Hz),8.29(1H,d,J=8.1Hz),12.40(1H,brs)。
【0187】
調製例10
2−クロロ−6−イソプロピルニコチン酸312g、パラジウム炭素(10%)16.0g、エタノール−水(6:1)2000mLを水素雰囲気下、室温にて3日間攪拌した。反応溶液を濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣に酢酸エチルと少量のエタノールを加え、析出した固形物を濾取した。この固形物を、冷却した1N−水酸化ナトリウム水溶液1130mLに加え、溶解後析出した固形物を濾取し、これをクロロホルムに溶解後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣の固形物をヘキサンにて懸濁後濾取し、6−イソプロピルニコチン酸152gを白色粉末結晶として得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.37(6H,d,J=6.9Hz),3.29(1H,sept,J=6.9Hz),7.38(1H,d,J=8.1Hz),8.40(1H,dd,J=2.1,8.1Hz),9.33(1H,d,J=2.1Hz)。
【0188】
調製例11
6−イソプロピルニコチン酸148g及びトリエチルアミン250mLのtert−ブタノール(1800mL)溶液に、アジ化ジフェニルホスホリル212mLを室温にて滴下し、攪拌下2時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮後、残渣に水を加え、酢酸エチルで分液抽出した。有機層を減圧濃縮し、残渣の固形物に水を加え、懸濁後濾取することにより、tert−ブチル(6−イソプロピルピリジン−3−イル)カーバメート137gを淡黄色粉末結晶として得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.27(6H,d,J=6.9Hz),1.51(9H,s),3.03(1H,sept,J=6.9Hz),6.90−7.03(1H,m),7.12(1H,d,J=8.4Hz),7.85−8.01(1H,brs),8.35(1H,d,J=2.4Hz)。
【0189】
調製例12
tert−ブチル(6−イソプロピルピリジン−3−イル)カーバメート50.0gに4mol/L−塩酸/ジオキサン432mLを加え、室温にて一日攪拌した。固形物が析出した反応液に、ジエチルエーテル500mLを加え濾取した。この固形物を炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、ジエチルエーテルで分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去することにより、6−イソプロピルピリジン−3−アミン26.4gを褐色オイルとして得た。
H−NMR(CDCl3)δ:1.26(6H,d,J=6.9Hz),2.96(1H,sept,J=6.9Hz),3.35−3.68(2H,brs),6.95(2H,m),8.03(1H,m)
以下の試験例1〜3及び5における「実施例3の化合物のラセミ体」及び試験例4における「ラセミ体」はWO02/22556号パンフレットの実施例89に準じた方法により得られたものを使用した。
【0190】
試験例1:C5a受容体結合試験
C5aと試験化合物のC5a受容体結合阻害作用はC5a受容体を発現しているヒト末梢血好中球と[125I]−ヒトC5a(アマシャム ファルマシア バイオテク)をマルチスクリーン(MILLIPORE)中で反応させる受容体結合試験により評価した。まず、ヒト末梢静脈血からLympholyte−poly(Cedarlane)を用いて好中球画分を分取し、Binding buffer[50mM HEPES,1mM CaCl,5mM MgCl,0.5% bovine albumin(BSA、シグマ)、0.02% NaN(pH7.2)]に懸濁した。結合試験は、1×10個/50μLの好中球懸濁液、25μLの試験化合物溶液(試験化合物をN,N−Dimethylformamideに終濃度10mmol/Lに溶解し、Binding Bufferで希釈した。)及び25μLの[125I]−C5a溶液(終濃度200pM)をマルチスクリーンの各ウェルに添加して開始した。特異的結合算出のために、試験化合物溶液に換えて非標識C5a(終濃度20nM)もしくはBinding Bufferを添加したウェルを用意した。4℃において2時間、インキュベートした後、吸引ろ過及び300μLのBinding bufferの添加を4回繰り返すことにより、非結合分を除去した。マルチスクリーンを乾燥させた後、フィルター上の放射活性をガンマカウンターで測定した。
試験化合物のC5a結合阻害率(%阻害)の算出は、試験化合物未添加時におけるカウント値をTotal、非標識C5aを添加した時のカウント値をNon、試験化合物添加時のカウント値をTestとして以下の式によりおこなった。
%阻害=100−[(Test−Non)/(Total−Non)]×100
さらに、[125I]−ヒトC5aの結合を50%阻害する試験化合物の濃度(IC50値)を2点補間法により算出した。この評価系において、実施例3の化合物のIC50値は10nmol/L、実施例3の化合物のラセミ体のIC50値は23nmol/Lであった。
【0191】
試験例2:C5a刺激好中球の活性酸素種産生に対する作用
ヒト末梢静脈血からLympholyte−poly(Cedarlane)を用いて好中球画分を分取し、1%のFetal bovine serum(FBS)及び1mmol/Lのルミノール(和光純薬工業)を添加したHank’s Balanced Salt Solution(HBSS,GIBCO BRL)に懸濁した。活性酸素種の測定は96ウェルプレート対応のルミノメータ(MicroLumat、ベルトールド)を使用した。すなわち、1×10個/150μLの好中球懸濁液及び25μLの試験化合物溶液(試験化合物をN,N−Dimethylformamideに終濃度10mmol/Lに溶解後、1%FBSを添加したHBSSで希釈した。)をウェルに添加し、37℃に設定したMicroLumatにセットし、約5分間放置した。続いて、25μLのC5a(終濃度3nmol/L)を添加した後、ルミノールと活性酸素種の反応により生じる発光を15分間、経時的に測定した。試験化合物によるC5a刺激好中球における活性酸素種産生の阻害率(%阻害)の算出は、試験化合物未添加時においてC5aにより誘導される活性酸素種産生のピーク値をMax、試験化合物未添加、かつ、C5a未刺激時における活性酸素種産生のピーク値をMin、試験化合物添加時においてC5aにより誘導される活性酸素種産生のピーク値をTestとして以下の式によりおこなった。
%阻害=100−[(Test−Min)/(Max−Min)]×100
さらに、C5a刺激好中球における活性酸素種産生を50%阻害する試験化合物の濃度(IC50値)を2点補間法により算出した。
実施例3の化合物のIC50値は2.8nmol/L、実施例3の化合物のラセミ体のIC50値は5.9nmol/Lであった。
【0192】
試験例3:サル・コラーゲン関節炎に対する作用
カニクイザルの背部にウシ由来タイプIIコラーゲン(コラーゲン技術研修会より購入)とコンプリートフロイントアジュバントH37Rv(ベクトンディッキンソンより購入)のエマルジョンを試験初日(0日目)と21日目の2回、皮内接種した。関節炎を発症したサルを選別した後、10匹ずつの群に群分けし、36日目から50日目まで試験化合物もしくはコントロール用媒体を経口投与した。関節炎は関節腫脹スコアによって評価した。すなわち,指関節(56指関節/サル)、肘、膝、手首および足首の各関節(全64関節/サル)について腫脹の程度をスコア化(0〜3)し、サル毎にスコアの合計を計算して各サルの関節腫脹スコアとした。なお、スコアは以下のように定義した。
スコア0:正常。
スコア1:触診によって腫脹が確認できる。
スコア2:肉眼的な観察で腫脹が疑われ、触診して腫脹が確認できる。
スコア3:肉眼的な観察のみで腫脹が確認できる。
関節腫脹スコアの投与前値はコントロール群:平均49、実施例3の化合物群:平均49であり、2群間に差はなかった。しかし、投与14日目における関節腫脹スコアはコントロール群:平均82、実施例3の化合物群:平均61であり、実施例3の化合物は有意に関節炎の増悪を抑制した。
【0193】
試験例4:ラットにおける生物学的利用率(バイオアベイラビリティー)の評価
試験前日から絶食させた雌のSDラットにフリー体・I形結晶を投与して血漿中濃度を以下の条件で測定した。その結果、静脈内投与及び経口投与時の薬物血中濃度−時間曲線下面積(AUC)は表1に示すとおりであった。生物学的利用率(%)をAUC(経口)/AUC(静脈内)×投与量(経口)×投与量(静脈内)×100に基づき算出したところ62%であった。
【0194】
【表1】

【0195】
I.薬物投与
1)静脈内投与
投与液:0.5mg/mlの生理食塩水溶液。
投与量:1mg/2ml/kg
投与方法:尾静脈より急速投与
血液試料の採取:投与後3分、10分、30分、1時間、2時間、4時間および6時間に頚静脈より血液を約0.1〜0.2 mL採取した。血液を遠心し、血漿を分取した。
2)経口投与
投与液:メノウ製乳鉢で良くすりつぶした本発明化合物にヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液を徐々に加えて調整した2mg/mlの懸濁液。
投与量:10mg/5ml/kg
投与方法:胃内に強制的に投与
血液試料の採取:血液試料の採取:投与後30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間および24時間に頚静脈より血液を約0.1〜0.2 mL採取した。血液を遠心し、血漿を分取した。
II.濃度測定
血漿中の投与した化合物濃度をLC−MS/MSにより測定した。
【0196】
LC条件
カラム:Capcellpak C18 UG-120 (2.0φmm×50mm,S-5μm,資生堂)
移動相:アセトニトリル
流速:0.25 mL/min
カラム温度:室温
オートサンプラ温度設定:25℃
グラジェント設定:
0 min→0.6 min:25%→25%
0.6 min→3.6 min:25%→75%
3.6 min→6 min:75%→75%
6 min→6.1 min:75%→25%
6.1 min→9.5 min:25%→25%
MS/MS条件
イオン化方法:ESI
キャピラリー温度:350℃
シースガス圧:80psi
スプレー電圧:4.5 kV。
【0197】
同様の方法でラセミ体についての血漿中濃度を測定し、生物学的利用率を算出したところ20%であった。ラセミ体のAUCを表2に示す。
【0198】
【表2】

【0199】
試験例5:溶出試験
実施例22、24及び25で得られた化合物、フリー体・I形結晶、並びに実施例3の化合物のラセミ体について溶出試験を行い、溶出速度を比較した。この試験法では、試験液への各化合物の投入量に対する溶解量を溶出率(%)で表し、これを経時的に測定した。
【0200】
各化合物の投入方法は、精密に量った各化合物(フリー体換算で約10mg)をベッセルに直接投入した。試験液として日局第2液900mlを用い、溶出試験法第2法(パドル法)に準じて毎分50回転で試験を行った。試験温度は37℃とした。試験開始後、適時溶解液10mlを採取し、直ちに37℃に加温した試験液10mlを注意して補った。採取した溶解液はフィルター(DISMIC 13HP PTFE(0.45μm);Toyo Roshi Kaisha)でろ過した。始めのろ液5mlを除き、次のろ液500μlを正確に量り、希釈液(水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液=500:500:1)500μlを正確に加えて試料溶液とした。
【0201】
別に、フリー体・I形結晶 約10mgを精密に量り、希釈液(水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液=500:500:1)を加えて正確に50mlとした。この液2.5mlを正確に量り、希釈液(水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液=500:500:1)を加えて正確に50mlとし、これをフリー体・I形結晶の標準溶液とした(10μg/ml)。試料溶液及び標準溶液について以下に示したHPLC条件で測定を行い、それぞれの液のフリー体・I形結晶のピーク面積A及びAを測定し、溶出率を以下の式に従い求めた。結果を図11に示した。
【0202】
溶出速度はラセミ体が最も遅く、次にフリー体・I形結晶、実施例25、実施例24、実施例22の化合物の順であった。この結果から実施例22、24及び25の化合物はフリー体・I形結晶よりも溶出速度が速く、生体内において速やかに溶解及び吸収されると考えられるため、実施例22、24及び25の化合物の生物学的利用率はフリー体・I形結晶よりも高い値を示すと考えられる。
【0203】
[溶出率の算出方法]
フリー体・I形結晶のn回目の溶出率(%)=W/W100%×100
:フリー体・I形結晶の1回目の溶解量(mg)
=(900×AT1)×W/A/1000
:フリー体・I形結晶のn回目(n>1)の溶解量(mg)
={900×ATn+10×(AT1+AT2…+ATn−1)}×W/A/1000
100%:原薬の投入量(mg)
:フリー体・I形結晶標準品の採取量(mg)
:標準溶液のフリー体・I形結晶のピーク面積
T1:1回目のサンプリングの試料溶液のフリー体・I形結晶のピーク面積
Tn:n回目のサンプリングの試料溶液のフリー体・I形結晶のピーク面積。
ラセミ体についてはS体とR体の合計値に基づき算出した。
【0204】
[HPLC条件]
検出波長:221nm
カラム:Inertsil ODS−3V(4.6mmφ×150mm)
カラム温度:40℃
移動相:A;0.1% トリフルオロ酢酸溶液
B;0.1% トリフルオロ酢酸/アセトニトリル溶液
A:B=72:27(定組成溶離)
流速:1.0ml/分。
【0205】
試験例6:溶解度試験
試料を適当量採取し、それぞれに試験液(日局第2液)を約1mg/mlの濃度になるように加えた。超音波を2分かけて試料を分散させた後、37℃で30分間振とうし、これらの液をDISMIC13HP(0.45mm)を用いてフィルターろ過した。始めのろ液3mlを除き、次のろ液500μlを正確に量り、希釈液(水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液=500:500:1)500μlを正確に加えて試料溶液とした。試料溶液及び試験例5で調整した標準溶液について試験例5と同様のHPLC条件で測定を行った。
【0206】
30分後の溶解度は実施例23で得られた化合物165μg/ml、フリー体・I形結晶66μg/ml、及び実施例3の化合物のラセミ体31μg/mlであった。
【0207】
実施例23で得られた化合物(非晶質体)の溶解度はフリー体・I形結晶の2.5倍、ラセミ体の約5倍であり医薬品原薬として優れていると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明化合物である(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物はそのラセミ体と比較し、C5a受容体拮抗活性のみならず、生物学的利用率においても高活性を示す化合物である。
【0209】
なお、本出願は、日本特許出願 特願2005−29907号を優先権主張して出願されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示される
【化1】

(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
【請求項2】
(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミド、若しくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の結晶。
【請求項3】
(1S)−(−)−N−[(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]−5−ヒドロキシ−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボキサミドの結晶である、請求項2に記載の結晶。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物を含む医薬。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物を有効成分として含む、C5aがC5a受容体に結合することに起因する疾患の予防及び/又は治療薬。
【請求項6】
C5aがC5a受容体に結合することに起因する疾患が、自己免疫疾患、敗血症、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性疾患、粥状動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、乾癬、アルツハイマー病又は虚血再灌流、外傷、火傷若しくは外科侵襲に起因する白血球活性化による臓器損傷症である請求項5に記載の予防及び/又は治療薬。
【請求項7】
下記式(II)で示される
【化2】

(式中、Rはエチル又はビニルを示す。)
1−エチル−N−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド又はN−(6−イソプロピルピリジン−3−イル)−1−ビニル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド。
【請求項8】
下記式(IV)で示される
【化3】

(式中、Raはヒドロキシメチルを示す。)
1−エチル−1H−ピラゾール化合物。
【請求項9】
下記式(V)で示される
【化4】

1−(2−クロロエチル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル。
【請求項10】
下記式(VI)で示される
【化5】

(式中、Rbはエトキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル又はヒドロキシメチルを示す。)
1−ビニル−1H−ピラゾール化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−6879(P2013−6879A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225015(P2012−225015)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2007−501671(P2007−501671)の分割
【原出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】