説明

光学用成形体

【課題】本発明の目的は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、吸湿による変形が少なく、かつ複屈折の小さい光学用成形体を提供するものである。
【解決手段】ブタジエン系ゴムの存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を塊状連続重合して得られた共重合樹脂であって、かつ共重合樹脂を構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位10〜38質量%、ブタジエン系単量体単位5〜18質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位85〜44質量%である共重合樹脂を主体とし、耐熱安定剤を含有する樹脂組成物を用いた光学用成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学用成形体にはメタクリル樹脂が広く使用されている。しかしながら、メタクリル樹脂は、透明性や低複屈折等の光学特性が良好な反面、耐衝撃性が低く、また吸湿性が高いことから、光学用成形体とした場合に吸湿による変形が課題となっていた。一方ポリスチレンは透明で成形加工性が良好で、吸湿性が低く変形が少ないが、耐衝撃性が低く、また複屈折(率)が高いため、この分野での使用には制限があった。
このような光学用成形体に関する刊行物としては以下のようなものが知られているが、複屈折や耐光性の問題は十分解決されているとは言いがたい。
【特許文献1】特開2002−242679号公報
【特許文献2】特開2002−243917号公報
【特許文献3】特開2002−284946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、吸湿による変形が少なく、かつ複屈折の小さい光学用成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち本発明は、次の組成の共重合樹脂と、耐熱安定剤を含有する樹脂組成物を用いた光学用成形体である。この共重合樹脂は、ブタジエン系ゴムの存在下でスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を塊状連続重合して得られた共重合樹脂であって、かつ共重合樹脂を構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位10〜38質量%、ブタジエン系単量体単位5〜18質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位85〜44質量%であることを特徴とし、耐熱性安定剤はヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物およびイオウ系化合物の中から選ばれた1種以上であって、その合計量が共重合樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部である。
また、本発明は、光学用成形体が、光ディスク基板あるいは導光板、レンズ、前面板、光学シート用ベースシート、光学フィルム用ベースフィルムであることを特徴とする光学用成形体である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の光学用成形体は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、吸湿による変形が少なく、かつ複屈折の小さいことから、例えば、光ディスク基板、導光板、レンズ、前面板、位相差フィルムや反射防止フィルム等の光学フィルムのベースフィルムや、レンチキュラーレンズやフレネルレンズ等の光学シートのベースシートに適しており有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に使用する共重合樹脂は、ブタジエン系ゴムの存在下でスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を塊状連続重合して得られた共重合樹脂である。このような3元系の樹脂の製造方法にはいくつかの方法が知られているが、本発明に使用する共重合樹脂にあっては、ブタジエン系ゴムをスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体に溶解した状態で連続的に塊状重合することによって得られることを特徴とする。この塊状連続重合以外にも乳化重合で得られたグラフトゴム粒子とスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂を配合する方法やブタジエン系ゴムの存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を塊状重合後に懸濁重合で得る方法などあるが、これらの場合では十分な透明性が得られず、これを光路の長い導光板等に使用すると光の減衰が大きく問題となる場合がある。
【0007】
この連続塊状重合時に、エチルベンゼン、トルエン等の溶剤をスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計100質量部に対して好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは5〜20質量部使用することができる。溶剤の使用により重合時の粘度が下がり重合が制御し易くなり、また得られる共重合樹脂の物性が安定する傾向がある。重合温度は、好ましくは80〜170℃、さらに好ましくは100〜160℃である。また重合時、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の公知の重合開始剤を添加することが好ましく、特に半減期温度の異なる重合開始剤を2種以上用いると耐衝撃性が向上する場合があり好ましい。
【0008】
重合開始剤の添加量は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との合計100質量部に対し、好ましくは0.005〜5質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部である。この範囲を外れると透明性と耐衝撃性のバランスが劣る場合がある。
また、重合時、4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の公知の分子量調整剤を添加しても差し支えない。
【0009】
共重合樹脂のマトリックスの重量平均分子量(Mw)は、5万〜15万が好ましく、より好ましくは7万〜13万である。なお、本発明の重量平均分子量(Mw)はGPCにて測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)であり、下記記載の測定条件で測定したものである。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラハイドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
【0010】
共重合樹脂中のゴム粒子径は、特に限定するものではないが0.1〜1.0μmの範囲が好ましく、より好ましいのは0.1〜0.5μmである。なお、ゴム粒子径とは、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中のゴム粒子約3000個の粒子径Di(円相当径)を測定し、次式[数1]により得られる平均粒子径である。
【数1】

【0011】
共重合樹脂のトルエン不溶分は、特に限定するものではないが8〜30質量%の範囲が好ましく、より好ましくは12〜25質量%である。なお、トルエン不溶分は以下の様に測定するものである。
試料0.35gを精秤(a)しトルエン35mlに温度25℃で24時間かけて溶解させた後、溶解液を事前に質量(b)を測定した容量50mlの遠心管に移し、最大遠心半径10.7cmのアングルローターを用いて、温度10℃以下、14000rpmで40分間遠心分離し、非沈殿物をデカンテーションにより取り除き、温度70℃の真空乾燥器で24時間乾燥させ、乾燥後の遠心管の質量(d)を測定し、下式[数2]によりトルエン不溶分を算出する。
【数2】

【0012】
共重合樹脂の膨潤指数は8〜20が好ましく、より好ましくは9〜17である。なお、膨潤指数は以下の様に測定したものである。試料0.35gを精秤(a)しトルエン35mlに温度25℃で24時間かけて溶解させた後、溶解液を事前に質量(b)を測定した容量50mlの遠心管に移し、最大遠心半径10.7cmのアングルローターを用いて、温度10℃以下、14000rpmで40分間遠心分離し、非沈殿物をデカンテーションにより取り除いた後、乾燥前の遠心管の質量(c)を測定する。温度70℃の真空乾燥器で24時間乾燥させ、乾燥後の遠心管の質量(d)を測定し、下式[数3]により膨潤指数を算出する。
【数3】

【0013】
本発明で用いられるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等を挙げることができるが、好ましくはスチレンである。これらのスチレン系単量体は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート等のアクリル酸エステルが挙げられるが、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、またはn−ブチルアクリレートであって、特に好ましくはメチル(メタ)アクリレートである。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は単独で用いてもよいが二種以上を併用してもよい。
【0015】
さらに、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体を共重合してもよく、そのような単量体として例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いられるブタジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、およびスチレン−ブタジエンランダム共重合体等が挙げられる。この中では、温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度が100mPa・s以下でブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合が20モル%以下のポリブタジエンが好ましく、5質量%スチレン溶液粘度が60mPa・s以下でブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合が14モル%以下のポリブタジエンであるとより好ましい。
【0017】
共重合樹脂は、共重合樹脂を構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位10〜38質量%、ブタジエン系単量体単位5〜18質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位85〜44質量%であることを特徴とする。単量体の比率がスチレン系単量体単位15〜33質量%、ブタジエン系単量体単位5〜17質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位80〜50質量%であると好ましく、スチレン系単量体単位15〜30質量%、ブタジエン系単量体単位7〜15質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位78〜55質量%であるとより好ましい。共重合樹脂の組成がこのより好ましい範囲のある場合、得られる樹脂組成物は硬質の光学成形体用として特に優れている。
スチレン系単量体単位が10%未満では、得られる光学成形体の吸湿による変形が問題となる場合があり、38質量%を超えると、複屈折が大きくなるので好ましくない。ブタジエン系単量体が5%未満では、衝撃強度が劣り、18%を超えると塊状連続重合時の粘度が高くなり過ぎて重合が安定しない。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位が44質量%未満では複屈折が大きくなり、85質量%を超えると、得られた共重合樹脂の金型転写性が劣る傾向があり好ましくない。
【0018】
樹脂組成物は、前述の共重合樹脂と、耐熱安定剤を含有することを特徴とする。
耐熱安定剤は、その効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物などの耐熱安定剤が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。その配合量は、共重合樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜1質量部である。耐熱安定剤を含むと、高温で加工できることから複屈折の低減に繋がり、さらには光があたった場合の外観変化が少なくなり、好ましい。
【0019】
樹脂組成物にはこれ以外に耐光安定剤や滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油等の添加剤を含んでも差し支えないが、透明性を阻害する可能性もあり、その添加量は少ないかあるいは添加しないのが好ましい。具体的には、耐熱安定剤を含め添加剤の総配合量は20質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
耐光安定剤としては、その効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物やベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。耐光安定剤を含むと、光があたった場合の外観変化が少なくなり、さらには保管時の外観変化も少なくなり、好ましい。
【0020】
樹脂組成物の配合方法や造粒方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、共重合樹脂、耐熱安定剤、耐光安定剤および必要に応じて使用する添加剤をあらかじめタンブラーやヘンシェルミキサー等で均一に混合して、単軸押出機または二軸押出機等に供給して溶融混練する方法や、塊状連続重合の単量体を供給する段階で添加する方法、重合の最終段階で系内に添加・混合し、その後に造粒する方法がある。
【実施例】
【0021】
以下、詳細な内容について実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
[実施例1]
撹拌機を付した容積約5リットルの第1完全混合型反応器、撹拌機を付した容積約15リットルの第2完全混合型反応器、容積約40リットルの塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を直列に接続して構成した。ブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ社製ジエン35AS:温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度が85mPa・s、ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合が13モル%)12質量部を、スチレン20質量部、メタクリル酸メチル(以下、MMAと称す。)68質量部、エチルベンゼン12質量部で構成される混合溶液に溶解し、さらに1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン(日本油脂社製パーヘキサC)0.05質量部、耐熱安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製IRGANOX1076)0.2質量部を混合し、原料溶液とした。この原料溶液を毎時7kgで温度108℃に制御した第1完全混合型反応器に導入した。第1完全混合型反応器より反応液を連続的に抜き出し、この反応液にn−ドデシルメルカプタン(花王社製チオカルコール20)を毎時2.0g加えた後、温度130℃に制御した第2完全混合型反応器に導入した。なお、第2完全混合型反応器の撹拌数は180rpmで実施した。次いで第2完全混合型反応器より反応液を連続的に抜き出し、この反応液にn−ドデシルメルカプタンを毎時2.0gとジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂社製パーブチルD)を毎時0.5g加えた後、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この反応液を予熱器で加温しながら、温度240℃で圧力1.0kPaに制御した脱揮槽に導入し、未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示した。
得られた樹脂組成物を名機社製射出成形機MDM−Iにて成形温度250℃、金型温度60℃で射出成形することにより、直径180mm、センターホール15mm、厚み1.2mmの光ディスク基板を得た。次に得られた光ディスク基板の特性評価を行った。その評価結果は表1に示した。
【0023】
[実施例2]
ブタジエンゴムを8.5質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0024】
[実施例3]
ブタジエンゴムを宇部興産社製ウベポールBR13HB(温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度が41mPa・s、ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合が2モル%)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0025】
[実施例4]
ブタジエンゴムを5質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0026】
[実施例5]
ブタジエンゴムを17質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0027】
[実施例6]
ブタジエンゴムの代わりにスチレンブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ社製タフデン2000A:温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度が50mPa・s、ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合が13モル%)10質量部を用い、さらにスチレン40質量部、MMA60質量部、エチルベンゼン12質量部で構成される混合溶液とした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0028】
[実施例7]
実施例6に記載したスチレンブタジエンゴム17質量部を用いた以外は、実施例3と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0029】
[実施例8]
実施例1の樹脂組成物100質量部に、更に耐光安定剤としてヒンダードアミン系化合物としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ベンゾトリアゾール系化合物として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノールを各0.1質量部ヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(東芝機械(株)社製 TEM−35B)を用いシリンダー温度220℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示す。
【0030】
[比較例1]
ブタジエンゴムを添加しなかった以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0031】
[比較例2]
ブタジエンゴムを23質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0032】
[比較例3]
実施例6に記載したスチレンブタジエンゴム5質量部を用いた以外は、実施例3と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0033】
[比較例4]
スチレンを0質量部、MMAを100質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0034】
[比較例5]
容積200リットルのオートクレーブに純水56kg、オレイン酸カリウム400g、ロジン酸カリウム1200g、炭酸ナトリウム1.2kg、過硫酸カリウム400gを加えて攪拌下で均一に溶解した。次いでブタジエン80kg、t−ドデシルメルカプタン400gを加え、攪拌しながら温度60℃で30時間重合し、さらに70℃に昇温して30時間放置して重合を完結し、ブタジエンゴムラテックスを得た。
このブタジエンゴムラテックスを固形分換算で30kg計量して容積200Lのオートクレーブに移し、純水80kgを加え、撹拌しながら窒素気流下で温度50℃に昇温した。ここに硫酸第一鉄1.25g、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム2.5g、ロンガリット100gを溶解した純水2kgを加え、スチレン6.9kg、MMA23.1kg、t−ドデシルメルカプタン60gからなる混合物と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド120gをオレイン酸カリウム450gを含む純水8kgに分散した溶液とを、別々に6時間かけて連続添加した。添加終了後、温度を70℃に昇温して、さらにジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド30g添加した後2時間放置して重合を終了した。得られた乳化液に酸化防止剤を加え、純水で固形分を15質量%に希釈した後に温度60℃に昇温し、激しく攪拌しながら希硫酸を加えて塩析を行い、その後温度を90℃に昇温して凝固させ、次に脱水、水洗、乾燥して粉末状の乳化グラフトを得た。
この乳化グラフト24質量部と、比較例1で得られたMMA−スチレン樹脂76質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(東芝機械(株)社製 TEM−35B)を用いシリンダー温度220℃で溶融混練してペレット形状の共重合樹脂を得た。評価結果を表1に示す。
【0035】
[比較例6]
耐熱安定剤のオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加しなかった以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上記の試料のうち、実施例1、実施例8および比較例6の光ディスク基盤について光安定性およびその後の保管後の外観変化を調べ、評価結果を表2に示した。
なお、光安定性は、東洋精機製作所社製キセノンウエザオメーター、アトラスCI65Aを用いて24Hr照射後の外観(黄味や透明性)を目視にて下記基準で判断し、保管後の外観変化はこの試験片を60℃で相対湿度80%の環境下に24時間放置したときの変化を下記基準で評価した。評価結果を表2に示した。
○:変化なし
△:やや外観変化有り
×:顕著な外観変化有り
【0038】
【表2】

【0039】
実施例1、実施例8の樹脂組成物および比較例6の共重合樹脂を用い、成形温度のみを270℃に上げて光ディスク基盤を成形し、b値とReを測定した。評価結果を表3に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
なお、評価は下記の方法によった。
(1)透明性
ASTM D1003に基づき、ヘーズメーター(日本電色工業社製NDH−1001DP型)を用いてヘーズを測定し、成形品内のヘーズ(単位:%)の最大値で示した。1%以下を合格とした。
(2)色相
色差計(日本電色工業社製Σ―80)を用いてb値を測定し、成形品内のb値の最大値で示した。1以下を合格とした。
(3)耐衝撃性
JIS K7211に準拠して、錘先端5R、錘径14mmφ、質量200gfの錘を用い、成形品のセンターホールと外側の中間部に錘を落とすことで、50%破壊高さ(単位:cm)を測定した。20cm以上を合格とした。
(4)吸湿変形性
成形品を温度70℃で湿度90%の環境下に5日間放置したときの直径の寸法変化率(単位:%)を測定した。変化率0.3%以下を合格とした。
(5)複屈折
位相差測定装置(王子計測社製KOBRA−WR)を用いてリタデーション(Re)を測定し、成形品内のRe(単位:nm)の最大値で示した。50nm以下を合格とした。
(6)メルトマスフローレイト(MFR)
JIS K7210に基づき、温度200℃、荷重49Nで樹脂ペレットを用いて測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製メルトインデックサ(F−F01)を使用した。
【0042】
このように、塊状連続重合で得られた共重合樹脂を用いると乳化重合法で得られた場合に比べてヘーズの値が小さくなる。また、スチレン系単量体とブタジエン単量体の比率は常に前者が後者より高いとReの値が小さく、特に前者が後者の1.7倍から2.3倍であると好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の組成の共重合樹脂と、耐熱安定剤を含有する樹脂組成物を用いた光学用成形体。
共重合樹脂:ブタジエン系ゴムの存在下でスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを塊状連続重合して得られた共重合樹脂であって、かつ共重合樹脂を構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位10〜38質量%、ブタジエン系単量体単位5〜18質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位85〜44質量%である共重合樹脂。
【請求項2】
耐熱性安定剤が、ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物およびイオウ系化合物の中から選ばれた1種以上であって、その合計量が共重合樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部である共重合樹脂を用いた請求項1記載の光学用成形体。
【請求項3】
光学用成形体が、光ディスク基板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学用成形体。
【請求項4】
光学用成形体が、導光板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学用成形体。
【請求項5】
光学用成形体が、レンズであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学用成形体。
【請求項6】
光学用成形体が、前面板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学用成形体。
【請求項7】
光学用成形体が、光学シート用ベースシートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学用成形体。
【請求項8】
光学用成形体が、光学フィルム用ベースフィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学用成形体。


【公開番号】特開2007−224130(P2007−224130A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46081(P2006−46081)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】