説明

光学的立体造形用樹脂組成物および光学的立体造形法

【課題】 光造形物の衝撃に対する強度が改善され、また体積収縮が小さく、硬化時に反り、歪みの発生がない光学的立体造形用樹脂組成物を提供する。また、高精度の造形物が得られる光学的立体造形法を提供する。
【解決手段】 必須の構成成分として、(1)カチオン重合性有機化合物を100重量部と、(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.05〜10重量部と、(3)熱可塑性高分子化合物3〜100重量部と、(6)分子量1000未満の、1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物を(1)に対して1〜50重量%と、を含有する光学的立体造形用樹脂組成物及びこれを用いた光学的立体造形法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的立体造形用樹脂組成物及びこれを用いた光学的立体造形法に関し、詳しくは得られた造形物の機械強度が良好で、また高精度の造形物が得られる光学的立体造形用樹脂組成物及びこれを用いた光学的立体造形法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的立体造形法とは、特許文献1に記載されているように、まず光硬化性を有する各種樹脂を容器に入れ、上方からアルゴンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、半導体レーザ等のビームを該樹脂の任意の部位に照射し、照射を連続的に行うことによって、樹脂の上記ビーム照射部位を硬化させ、これにより目的とする平面を創生して硬化層を形成する。続いて、該硬化層上に前述の光硬化性を有する樹脂を更に1層分供給して、これを上記と同様にして硬化させ、前述の硬化層と連続した硬化層を得る積層操作を行い、この操作を繰り返すことによって目的とする三次元の立体物を得る方法である。
【0003】
従来、上記光学的立体造形法に用いられていた樹脂としては、まずラジカル重合性樹脂組成物があり、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどを主成分とした感光性樹脂が知られている。例えば特許文献2には、変形の低減を目的として、液状樹脂と見かけ上比重差が0.2未満である微小粒子を含む光学的立体造形用樹脂が開示され、特許文献3には反応性オリゴマーに対して特定の二官能性アクリレートを多量に配合した樹脂組成物が開示されている。また造形物の精度向上のために特許文献4には、エチレン系不飽和モノマー、光開始剤及び不溶性潜在性放射線潜在性偏光物質からなる組成物の報告が、また特許文献5には、エチレン系不飽和モノマー、光開始剤及び可溶性潜在放射線偏光物質からなる組成物の報告が夫々なされている。さらに、特許文献6には、シリコーンウレタンアクリレート、多官能エチレン性不飽和結合を有する化合物及び重合開始剤を含む樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また他の光学的立体造形法用樹脂としては、カチオン重合性樹脂が知られている。例えば特許文献7には、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機化合物とエネルギー感受性カチオン重合性開始剤とを含有することを特徴とする発明が記載されている。特許文献8には、エネルギー線硬化型カチオン重合性有機化合物に一部エネルギー線硬化型ラジカル重合性有機化合物を配合した低収縮率、高解像度の樹脂が開示されている。さらに、特許文献9には、エポキシ樹脂にビニルエーテル樹脂と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤と、ラジカル硬化性樹脂と、エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤とを配合した樹脂組成物が開示されている。更にまた、特許文献10には、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機化合物、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機化合物、エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤及び水酸基含有ポリエステルを含有することを特徴とする光学的造形用樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特開昭60−247515号公報
【特許文献2】特開平2−145616号公報
【特許文献3】特開平2−208305号公報
【特許文献4】特開平3−15520号公報
【特許文献5】特開平3−41126号公報
【特許文献6】特開平4−85314号公報
【特許文献7】特開平1−213304号公報
【特許文献8】特開平2−28261号公報
【特許文献9】特開平2−80423号公報
【特許文献10】特開平2−75618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光学的立体造形用樹脂では、造形物の衝撃に対する機械強度が十分でなく、得られた造形物を機構部品等に応用しようとすると小さな衝撃で割れてしまうなど問題が多かった。さらに、単に光硬化性樹脂を光学的立体造形用樹脂に転用しただけでは硬化時の体積収縮率が大きく、硬化物の反り、歪みの大きな原因となっていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、前述の造形物の衝撃に対する強度を改善した光学的立体造形用樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた光学的立体造形法を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の目的は、体積収縮率が小さく、硬化時に反り、歪みの発生しない光学的立体造形用樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた光学的立体造形法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、造形物の衝撃強度に優れる等、本発明の目的を達成し得る光学的立体造形用樹脂組成物及びこれを用いた光学的立体造形法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、必須の構成成分として、
(1)カチオン重合性有機化合物を100重量部と、
(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.05〜10重量部と、
(3)樹脂組成物に均一に溶解する熱可塑性高分子化合物3〜100重量部と、
を含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物である。
【0009】
また、本発明は、必須の構成成分として、
(1)カチオン重合性有機化合物を100重量部と、
(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.05〜10重量部と、
(3)熱可塑性高分子化合物を、(1)と(4)の総量に対して3〜100重量%と、
(4)ラジカル重合性有機化合物を1〜100重量部と、
(5)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を(4)に対して0.05〜10重量%と、
を含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物である。
【0010】
前記樹脂組成物において、(1)カチオン重合性有機化合物100重量部のうち、50重量%以上が、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物であることが好ましい。
【0011】
また、前記樹脂組成物において、(4)ラジカル重合性有機化合物1〜100重量部のうち、50重量%以上が、1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0012】
さらに前記樹脂組成物において、(3)熱可塑性高分子化合物の数平均分子量が1000〜500000であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、エネルギー線硬化性樹脂組成物の任意の表面に、エネルギー線を照射し、該樹脂組成物のエネルギー線照射表面を硬化させて所望の厚さの硬化層を形成し、該硬化層上に前述のエネルギー線硬化性樹脂組成物をさらに供給して、これを同様に硬化させて前述の硬化層と連続した硬化物を得る積層操作を行い、この操作を繰り返すことによって三次元の立体物を得る光学的立体造形法において、上記エネルギー線硬化性樹脂組成物として上記本発明の樹脂組成物のいずれかを用いることを特徴とする光学的立体造形法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光学的立体造形物の衝撃に対する強度が改善され、また体積収縮が小さく、硬化時に反り、歪みの発生がない。従って、該樹脂組成物を用いた本発明の光学的立体造形方法によると、高精度の造形物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物の必須の成分である(1)カチオン重合性有機化合物とは、エネルギー線照射により活性化したエネルギー線感受性カチオン重合開始剤により高分子化または架橋反応を起こす化合物をいう。
【0016】
例えば、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル化合物などであり、これらの1種または2種以上を使用することができる。中でも、入手するのが容易であり取扱いに便利なエポキシ化合物が適している。該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが適している。
【0017】
芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノールまたは、そのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、またこれらに更にアルキレンオキサイドを付加させた化合物のグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂等が挙げられる。
【0018】
また、脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたはシクロヘキセン、シクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド構造含有化合物または、シクロペンテンオキサイド構造含有化合物が挙げられる。例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0019】
脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物として、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル。また、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0020】
また、上記のエポキシ化合物のなかでは1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するものを、(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機化合物100重量部のうち、50重量%以上用いるのが特に好ましい。残りの50重量%以下の成分は、1分子中に1個のエポキシ基を有するものや、以下に例示するエポキシ化合物以外のカチオン重合性有機化合物を用いることができる。なお、エポキシ化合物以外のカチオン重合性化合物と上記シクロヘキセンオキシド化合物の混合物も好ましい。
【0021】
本発明で用いることができる(1)カチオン重合性有機化合物のエポキシ化合物以外の具体例としては、トリメチレンオキサイド、3,3−ジメチルオキタセン、3,3−ジクロロメチルオキタセン等のオキタセン化合物、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフラン等のオキソフラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタン等の環状アセタール化合物、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン化合物、エチレンスルフィド、チオエピクロロヒドリン等のチイラン化合物、1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタン等のチエタン化合物、テトラヒドロチオフェン誘導体等の環状チオエーテル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のビニル化合物、エポキシ化合物とラクトンの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物、ビニルシクロヘキセン、イソブチレン、ポリブタジエン等のエチレン性不飽和化合物及び上記化合物の誘導体等が挙げられる。
【0022】
なお、本発明においては、(1)カチオン重合性有機化合物として、上述したカチオン重合性物質のうち1種または2種類以上の化合物を配合して使用することができる。
【0023】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、上述のカチオン重合性有機化合物を主成分とするので、活性エネルギー線による硬化反応において空気中の酸素の影響を受けることがなく、また活性エネルギー線に対する感度が非常に高い。また、硬化時の体積収縮が小さいため、反り、歪みの問題が無く、精度に優れた造形物が得られるので、光学的立体造形用樹脂組成物として非常に優れている。また、硬化前の樹脂組成物は低粘度であるため、造形時間の短縮が可能である。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物の必須の成分である(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては一般式、
[A]m+[B]m-
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
ここで、陽イオンAm+はオニウムであるのが好ましく、その構造は例えば、
[(R1aZ]m+
で表すことができる。
【0024】
更にここで、R1は炭素数が1〜60であり、炭素以外の原子をいくつ含んでもよい有機の基である。aは1〜5なる整数である。a個のR1は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。ZはS、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F、N=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオンAm+中のZの原子価をzとしたとき、m=a−zなる関係が成り立つことが必要である。
【0025】
また、陰イオンBm-は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、その構造は例えば、
[LXbm-
で表すことができる。
更にここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲンである。bは3〜7なる整数である。また、陰イオンBm-中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pなる関係が成り立つことが必要である。
上記一般式の陰イオン[LXbm-の具体例としてはテトラフルオロボレート(BF4-、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6-、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6-等が挙げられる。
【0026】
また、陰イオンBm-は、
[LXb-1(OH)]m-
で表される構造のものも好ましく用いることができる。L、X、bは上記と同様である。また、その他用いることができる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4-、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-、フルオロスルホン酸イオン(FSO3-、トルエンスルホン陰酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン等が挙げられる。
【0027】
本発明では、この様なオニウム塩のなかでも、特に芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。中でも、特開昭50−151997号、特開昭50−158680号公報に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号、特開昭52−30899号、特開昭56−55420号、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号、特開昭56−149402号、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4139655号明細書記載のチオビリリウム塩等が好ましい。また、その他好ましいものとしては、鉄/アレン錯体やアルミニウム錯体/光分解珪素化合物系開始剤等も挙げられる。
【0028】
これらの芳香族オニウム塩のなかでも下記一般式、

(式中、Rは夫々同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から5のアルキル基、もしくは水酸基、ハロゲン原子または炭素数1から5のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルコキシ基、X-はSbF6-、PF6-、SbF5(OH)-およびPF5(OH)-からなる群から選ばれる陰イオンである。)で表される化合物からなるものは光硬化速度の点でより好ましい。
【0029】
さらに、式中のX-がSbF6-またはSbF5(OH)-のものであると光照射後の反応性がよく、結果的により光硬化速度の点で好ましいものとなる。
【0030】
また、本発明における(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の配合は、(1)カチオン重合性有機化合物100重量部に対して0.05〜10重量部であり、好ましくは0.5〜10重量部である。0.1重量部に満たなければ該樹脂組成物が十分硬化せず、10重量部より多ければ、十分な強度を有する樹脂が得られない。
【0031】
本発明で使用する(3)熱可塑性高分子化合物とは、室温において液体または固体であり、室温において樹脂組成物と均一に混和する高分子化合物である。
【0032】
かかる樹脂組成物に均一に溶解する熱可塑性高分子化合物の代表的なものとしては、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブテン、スチレンブタジエンブロックコポリマー水添物などが挙げられる。また、これらの熱可塑性高分子化合物に水酸基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基などの官能基を導入したものを用いることもできる。かかる熱可塑性高分子化合物について本発明に対して望ましい数平均分子量は1000〜500000であり、更に好ましい数平均分子量は5000〜100000である。この範囲外であっても使用できないわけではないが、あまり低分子量であると強度を改善するという効果が十分得られず、あまり高分子量であっては樹脂組成物の粘度が高くなり、光学的立体造形用樹脂組成物として好ましいものとは言えなくなる。
【0033】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における(3)熱可塑性高分子化合物の配合量は、組成物中の樹脂成分、すなわち(1)カチオン重合性有機化合物あるいは(1)+(4)ラジカル重合性有機化合物の総量に対して3〜100重量%であり、好ましくは10〜30重量%である。配合量が3重量%以下では、上記のような特性が十分に得られず、100重量%を超えると硬化性が悪くなり好ましくない。本発明の樹脂組成物からなる造形物は、(3)熱可塑性高分子化合物が配合されているので、衝撃に対する強度が改善されている。一般に、樹脂には曲げ強度と衝撃強度の相反する2つの物性が要求される。本発明は、曲げ強度を損なうことなく衝撃強度を改善するものである。また、造形物の設計寸法に対する精度が向上している。
【0034】
本発明の光学的立体造形樹脂組成物の成分である(4)ラジカル重合性有機化合物とは、エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤の存在下、エネルギー線照射により高分子化または架橋反応するラジカル重合性化合物で、好ましくは1分子中に少なとも1個以上の不飽和二重結合を有する化合物である。
【0035】
かかる化合物としては、例えばアクリレート化合物、メタクリレート化合物、アリルウレタン化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリチオール化合物等が挙げられる。
【0036】
かかるラジカル重合性有機化合物の中でも1分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物は、合成、入手が容易であり、取扱いが容易であるので好ましいものであり、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0037】
ここで、エポキシ(メタ)アクリレートとは、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などと、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるアクリレートである。これらのエポキシ(メタ)アクリレートのうち、特に好ましいものは、芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートであり、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレートである。例えば、ビスフェノールA、またはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
ウレタン(メタ)アクリレートとして好ましいものは、1種または2種以上の水酸基含有ポリエステルや水酸基含有ポリエーテルに水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレートや、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレート等である。
【0039】
ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種または2種以上の脂肪酸多価アルコールと、1種または2種以上の多塩基酸との反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0040】
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸が挙げられる。
【0041】
水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0042】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。
【0043】
かかる水酸基含有(メタ)アクリル酸のうち、脂肪族二価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは特に好ましく、例えば、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
イソシアネート類としては、分子中に少なくとも1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が望ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0045】
ポリエステル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種又は2種以上の脂肪族多価アルコールと、1種又は2種以上の1塩基酸、多塩基酸、及びフェノール類とのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。1塩基酸としては、例えばギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。多塩基酸としては、例えばアジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸が挙げられる。フェノール類としては、例えばフェノール、p−ノニルフェノール、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0046】
ポリエーテル(メタ)アクリレートして好ましいものは、水酸基含有ポリエーテルと、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエーテル(メタ)アクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0047】
アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは分子中に少なくとも一個の水酸基を持つ芳香族又は脂肪族アルコール、及びそのアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートであり、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
これらの(メタ)アクリレートのうち、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0049】
これらのラジカル重合性有機化合物は1種あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて、配合して使用することができる。
【0050】
以上のような(4)ラジカル重合性有機化合物は、(1)カチオン重合性有機化合物100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは10〜50重量部配合される。この範囲を上回ると、酸素による硬化阻害のため硬化時の硬化率が低くなり、後硬化処理が必要となってしまう。また、硬化収縮を起こし、反り発生の原因となる。
【0051】
また、ラジカル重合性有機化合物の1〜100重量部のうち50重量%以上が1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有するラジカル重合性有機化合物であることが望ましい。
【0052】
ラジカル重合系樹脂を配合した本発明の樹脂組成物は、これらを配合しない場合に比べて、光学的立体造形を行った際の硬化速度が更に向上し、光学的立体造形用樹脂組成物として好ましいものとなる。
【0053】
本発明の光学的立体造形樹脂組成物の成分である(5)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤とは、エネルギー線照射によってラジカル重合を開始させることが可能な化合物であり、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、チオキサントン系化合物などのケトン類化合物が好ましい。アセトフェノン系化合物としては例えばジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert.−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert.−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。
【0054】
ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0055】
ベンジル系化合物としては、ベンジル、アニシル、ベンジルメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等が挙げられる。
【0056】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0057】
その他のエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフェインオキサイド、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)]チタニウムなどが挙げられる。
【0058】
これらのエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は1種あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
【0059】
以上のような(5)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は、(4)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機化合物に対して、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜10重量%配合される。この範囲を上回ると十分な強度を有する樹脂が得られず、下回ると樹脂が十分硬化しない。
【0060】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物の成分である(6)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物としては多価アルコール、水酸基含有ポリエーテル、水酸基含有ポリエステル、多価フェノールなどが好ましい。
【0061】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0062】
水酸基含有ポリエーテルとは、1種または2種以上の多価アルコールまたは多価フェノールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物である。これに用いられる多価アルコールまたは多価フェノールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。またアルキレンオキサイドの例としてはプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等が挙げられる。
【0063】
水酸基含有ポリエステルとは、1種または2種以上の多価アルコール及び/又は多価フェノ−ルに1種または2種以上の1塩基酸、多塩基酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステル、及び1種または2種以上のラクトン類と、1種または2種以上の多価アルコールとのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコール、多価フェノ−ルの例としては、前述のものと同様のものが挙げられる。1塩基酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸などが挙げられる。多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。フェノール類としては、例えば、フェノール、p−ノニルフェノール、が挙げられる。ラクトン類としてはβ−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンが挙げられる。多価フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0064】
多価フェノールとは、芳香環に直接結合した水酸基を1分子中に2個以上含有する化合物である。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0065】
これらの(6)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物は、単独あるいは2種以上の物を所望の性能に応じて使用することができる。
【0066】
この1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物の好ましい配合量は樹脂組成物中の(1)カチオン重合性有機化合物100重量部に対して1〜50重量部である。(6)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物を配合した場合は、造形物の曲げ強度を保ちつつ衝撃強度を向上させている。また、樹脂の反応性が向上し、硬化速度が向上する。
【0067】
これら1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物のなかでも分子量1000未満且つ水酸基価300以下のものは、(6)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物を添加する上記効果が特に優れているので好ましい。
【0068】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、必須ではないが必要に応じて光増感剤等を配合することができる。例えば、アンスラセン誘導体、ピレン誘導体等の光増感剤と併用することにより、これらを配合しない場合に比べて、光学的立体造形を行った際の硬化速度が更に向上し、樹脂組成物として好ましいものとなる。
【0069】
また、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて熱感応性カチオン重合開始剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料等の着色剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等の各種樹脂添加物を添加することもできる。上記熱感応性カチオン重合開始剤としては、例えば特開昭57−49613号、特開昭58−37004号公報記載の脂肪族オニウム塩類が挙げられる。
【0070】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で所望により、上記のような光増感剤、熱感応性カチオン重合開始剤や、顔料、染料等の着色剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、安定剤等の各種樹脂添加物等を通常の使用の範囲で併用することができるが、造形物の歪みの点で、本発明の光学的立体造形樹脂組成物の総量に対して150重量%以下とするのが好ましい。
【0071】
本発明の樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等があり、紫外線が経済的にもっとも好ましい。紫外線の光源としては、紫外線レーザー、水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、アルカリ金属ランプ等があるが、集光性が良好なことからレーザー光線が特に好ましい。レーザーのなかでも発振波長が300nmから450nmのものが更に好ましい。
【0072】
次に、本発明の光学的立体造形法について詳述する。
本発明の光学的立体造形法を行うには、まず、(1)カチオン重合性有機化合物、(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤、(3)熱可塑性高分子化合物、さらに必要に応じて(4)ラジカル重合性有機化合物、(5)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤、(6)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物、その他の成分から光学的立体造形用樹脂組成物を得る。
【0073】
この工程は、周知の工程によるのがよく、例えば(1)〜(6)を十分混合する。具体的な混合方法としては、例えばプロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌法やロール練り込み法などが挙げられる。上記(1)〜(6)の好ましい配合比、また必要に応じて配合される添加剤の種類とその配合比は、前述の光学的立体造形用樹脂組成物に用いている(1)〜(6)の好ましい配合比、また必要に応じて配合される添加剤の種類及びその配合比と同じ範囲又は種類を使用することができる。このようにして得られた光学的立体造形用樹脂組成物は、概ね常温で液体状である。
【0074】
次に、上記樹脂組成物の任意の表面に、エネルギー線を照射し、該樹脂組成物のエネルギー線照射表面を硬化させて所望の厚さの硬化層を形成し、該硬化層上に前述のエネルギー線硬化性樹脂組成物をさらに供給して、これを同様に硬化させて前述の硬化層と連続した硬化層を得る積層操作を行い、この操作を繰り返すことによって三次元の立体物を得る。具体例を示せば、上記樹脂組成物を、例えば特開昭60−247515号公報に記載されているような容器に収納し、当該樹脂組成物表面に導光体を挿入し、前記容器と当該導光体とを相対的に移動しつつ、該導光体を介して当該樹脂組成物表面に硬化に必要な活性エネルギー線を選択的に供給することによって所望形状の固体を形成する、といった方法である。
【0075】
本発明の光学的立体造形法に使用する活性エネルギー線の種類は、本発明の樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線と同じである。すなわち、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等があり、紫外線が経済的にもっとも好ましい。紫外線の光源としては、紫外線レーザー、水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、アルカリ金属ランプ等があるが、集光性が良好なことからレーザー光線が特に好ましい。レーザーのなかでも発振波長が300nmから450nmのものが更に好ましい。
【実施例】
【0076】
以下に本発明の各種実施例を記載する。尚、本実施例では部は重量部を意味する。
実施例1
(1)カチオン重合性有機物質として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート75部および1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル25部と、
(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として、ビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドフェニルビスジヘキサフルオロアンチモネート3部と、
(3)熱可塑性高分子化合物として、エチレングリコールとテレフタル酸、アジピン酸をモル比で1:0.7:0.3使用することによって得られた数平均分子量5万の、末端に水酸基とカルボキシル基を有するポリエステルを20部と、を用い、これらを十分混合して光学的造形用樹脂を得た。得られた樹脂組成物は、淡黄色透明の液体であった。
【0077】
次に、得られた樹脂組成物を入れる容器を載せた3次元NC(数値制御)テーブル、Arレーザー(波長333、351、364nm)と光学系及び制御用コピュータを中心とした制御部からなる立体造形実験システムを用いて、この樹脂組成物からCADデータを元に0.1mmピッチで積層して曲げ試験および衝撃試験用サンプル片を得た。得られたサンプル片を用い、JIS K−6911の試験法に従って曲げ強さおよびアイゾット衝撃強さ(ノッチ付き)を測定した。
【0078】
この試験片の曲げ強さは 510kg/cm2、アイゾット衝撃強さ(ノッチ付き)は32kg/cm・cm2であった。更に、この樹脂を用いて縦100mm、横100mm、高さ10mmの造形物を作製したときの、設計寸法に対する精度は0.012%であった。
【0079】
以下、表1に示す本発明の樹脂の組成にて、実施例1と同じ試験を行った。樹脂の組成および試験値を表1および表2に示す。また、表2に示す樹脂の組成にて比較試験を実施例1と同様に行った。なお、試験に用いた化合物は以下のとおりである。
【0080】
カチオン重合性有機化合物(「カチオン樹脂」と略記する)としては下記のカチオン樹脂1〜3を用いた。
カチオン樹脂1:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
カチオン樹脂2:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル
カチオン樹脂3:ビス(3,4−エポキシシクオヘキシルメチル)アジペート
【0081】
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(「カチオン開始剤」と略記する)ととしては下記のカチオン開始剤1、2を用いた。
カチオン開始剤1:ビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドフェニルビスヘキサフルオロアンチモネート
カチオン開始剤2:ビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドフェニルビスヘキサフルオロホスフェート
【0082】
熱可塑性高分子化合物(「熱可塑」と略記する)としては下記の熱可塑1〜7を用いた。
熱可塑1:エチレングリコールとテレフタル酸、アジピン酸をモル比で1:0.7:0.3使用することによって得られた数平均分子量5万の、末端に水酸基とカルボキシル基を有するポリエステル
熱可塑2:数平均分子量2万のポリ酢酸ビニル
熱可塑3:数平均分子量20万のポリ酢酸ビニル
熱可塑4:スチレン含有率20%で数平均分子量が50万のスチレンとブタジエンの共重合物の水添物
熱可塑5:数平均分子量5万のポリ塩化ビニル
熱可塑6:数平均分子量5万のポリ酢酸ビニル
熱可塑7:数平均分子量1万のポリ塩化ビニル
【0083】
ラジカル重合性有機化合物(「ラジカル樹脂」と略記する)としては、下記のラジカル樹脂1〜3を用いた。
ラジカル樹脂1:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート
ラジカル樹脂2:トリメチロールプロパントリアクリレート
ラジカル樹脂3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0084】
エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(「ラジカル開始剤」と略記する)ととしては下記のラジカル開始剤1、2を用いた。
ラジカル開始剤1:ベンゾフェノン
ラジカル開始剤2:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
【0085】
1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物(「OH化合物」と略記する)としては、下記のOH化合物1〜3を用いた。
OH化合物1:平均分子量500のトリメチロールプロパンε−カプロラクトン付加物
OH化合物2:平均分子量500のグリセリンエチレンオキサイド付加物
OH化合物3:ビスフェノールA
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
比較例4、5においては樹脂が硬化しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須の構成成分として、
(1)カチオン重合性有機化合物を100重量部と、
(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.05〜10重量部と、
(3)熱可塑性高分子化合物3〜100重量部と、
(6)分子量1000未満の、1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物を(1)に対して1〜50重量%と、
を含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項2】
必須の構成成分として、
(1)カチオン重合性有機化合物を100重量部と、
(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.05〜10重量部と、
(3)熱可塑性高分子化合物を、(1)と(4)の総量に対して3〜100重量%と、
(4)ラジカル重合性有機化合物を1〜100重量部と、
(5)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を(4)に対して0.05〜10重量%と、
(6)分子量1000未満の、1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物を(1)に対して1〜50重量%と、
を含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂組成物において、(1)カチオン重合性有機化合物100重量部のうち、50重量%以上が、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物である光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の樹脂組成物において、(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤が下記一般式、

(式中、Rは夫々同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から5のアルキル基、もしくは水酸基、ハロゲン原子または炭素数1から5のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルコキシ基、X-はSbF6-、PF6-、SbF5(OH)-およびPF5(OH)-からなる群から選ばれる陰イオンである。)で表される化合物からなる光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載の樹脂組成物において、(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤が前記一般式中のX-がSbF6-またはSbF5(OH)-である化合物からなる光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2の樹脂組成物において、(3)熱可塑性高分子化合物が、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブテン、スチレンブタジエンブロックコポリマー水添物あるいはこれらに水酸基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基を導入したものからなる群から選ばれる1または2以上の化合物である光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2記載の樹脂組成物において、(3)熱可塑性高分子化合物の数平均分子量が1000〜500000である光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項2記載の樹脂組成物において、(4)ラジカル重合性有機化合物1〜100重量部のうち、50重量%以上が、1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有するラジカル重合性化合物である光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1または2記載の樹脂組成物において、(6)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物が、多価アルコール、水酸基含有ポリエーテル、水酸基含有ポリエステル、多価フェノールからなる群から選ばれる1または2以上の化合物である光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項10】
エネルギー線硬化性樹脂組成物の任意の表面に、エネルギー線を照射し、該樹脂組成物のエネルギー線照射表面を硬化させて所望の厚さの硬化層を形成し、該硬化層上に前述のエネルギー線硬化性樹脂組成物をさらに供給して、これを同様に硬化させ前述の硬化層と連続した硬化物を得る積層操作を行い、この操作を繰り返すことによって三次元の立体物を得る光学的立体造形法において、上記エネルギー線硬化性樹脂組成物が、請求項1または2記載の光学的立体造形用樹脂組成物である光学的立体造形法。

【公開番号】特開2006−28522(P2006−28522A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240001(P2005−240001)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【分割の表示】特願平8−533952の分割
【原出願日】平成8年5月10日(1996.5.10)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】