説明

光学素子の製造方法、及び、光学素子の製造装置

【課題】加熱ガスにより浮遊状態で加熱された光学素子材料を精度良く加圧位置へ供給することができる光学素子の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】加熱部210の内部において加熱ガスにより光学素子材料100を浮遊させて加熱する工程と、加熱された光学素子材料100を第1の成形型221と第2の成形型231との間に供給する工程と、供給された光学素子材料100が第1の成形型221及び第2の成形型231のいずれか一方の成形型に接触し、それ以降にこの光学素子材料が他方の成形型に接触する工程と、接触工程後の光学素子材料を第1の成形型及び第2の成形型により前記光学素子材料を加圧する工程と、加圧された光学素子材料を冷却する工程と、を含み、加熱された光学素子材料が接触工程において一方の成形型に接触する前に、位置決め部材280を光学素子材料に当接させて該光学素子材料を位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を製造する光学素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱軟化させた光学素子材料を加圧し、加圧した光学素子材料を冷却して硬化させることにより光学素子を製造する製造方法が知られている。
このような光学素子の製造方法において、光学素子材料を加熱ガスで浮遊させて加熱し、下型の上面に落下させて供給する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の光学素子の製造方法における工程の順番は、浮遊加熱、下型上への加熱部からの落下(供給)、加熱部退避、上型下降である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−133758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の光学素子の製造方法では、光学素子材料の浮遊状態を高精度に制御することは難しく、落下直前の浮遊位置によって供給位置がばらつく。
さらに、浮遊状態が仮に安定していたとしても、浮遊状態を解除する際には、加熱ガスの浮遊作用を均等に解除することは難しく、落下動作により供給位置がばらつく。
【0006】
本発明の目的は、加熱ガスにより浮遊状態で加熱された光学素子材料を精度良く加圧位置へ供給することができる光学素子の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子の製造方法は、加熱部の内部において加熱ガスにより光学素子材料を浮遊させて加熱する加熱工程と、加熱された上記光学素子材料を第1の成形型と第2の成形型との間に供給する供給工程と、供給された上記光学素子材料が上記第1の成形型及び上記第2の成形型のいずれか一方の成形型に接触し、それ以降にこの光学素子材料が他方の成形型に接触する接触工程と、上記接触工程後の上記光学素子材料を上記第1の成形型及び上記第2の成形型により上記光学素子材料を加圧する加圧工程と、加圧された上記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含み、加熱された上記光学素子材料が上記接触工程において上記一方の成形型に接触する前に、位置決め部材を上記光学素子材料に当接させてこの光学素子材料を位置決めする位置決め工程を更に含む。
【0008】
また、上記光学素子の製造方法において、上記光学素子材料が上記一方の成形型に接触したとき以降に、上記光学素子材料に当接した上記位置決め部材を分離させる分離工程を更に含むようにしてもよい。
【0009】
また、上記光学素子の製造方法において、上記光学素子材料が上記一方の成形型に接触する前までに、上記光学素子材料に当接した上記位置決め部材を分離させる分離工程を更に含むようにしてもよい。
【0010】
また、上記光学素子の製造方法において、上記位置決め工程は、上記光学素子材料が上記加熱部の内部に位置した状態で行われるようにしてもよい。
また、上記光学素子の製造方法において、上記位置決め工程では、上記位置決め部材は、上記光学素子材料のうち上記第1の成形型及び上記第2の成形型により成形される部分以外の部分に当接するようにしてもよい。
【0011】
本発明の光学素子の製造装置は、光学素子材料を内部において加熱ガスにより浮遊させて加熱する加熱部と、上記光学素子材料を加圧する第1の成形型及び第2の成形型と、上記光学素子材料を上記第1の成形型と上記第2の成形型との間に供給する供給部と、上記光学素子材料に当接してこの光学素子材料を位置決めする位置決め部材と、を備え、上記供給部により供給された上記光学素子材料は、上記第1の成形型及び上記第2の成形型のいずれか一方の成形型に接触し、それ以降にこの光学素子材料が他方の成形型に接触し、上記位置決め部材は、上記光学素子材料が上記一方の成形型に接触する前に位置決めを行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱ガスにより浮遊状態で加熱された光学素子材料を精度良く加圧位置へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置を示す正面図である。
【図1B】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施の形態における加熱部の内部構造及び加熱部移動機構を示す右側面図である。
【図3A】本発明の第1実施形態における加熱部の動きを説明するための要部正面図(その1)である。
【図3B】本発明の第1実施形態における加熱部の動きを説明するための要部正面図(その2)である。
【図4】本発明の第2実施形態における加熱部の内部構造を示す正面図である。
【図5A】本発明の第2実施形態における加熱部の動きを説明するための要部正面図(その1)である。
【図5B】本発明の第2実施形態における加熱部の動きを説明するための要部正面図(その2)である。
【図6A】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その1)である。
【図6B】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その2)である。
【図6C】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その3)である。
【図6D】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その4)である。
【図7A】本発明の第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その1)である。
【図7B】本発明の第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その2)である。
【図7C】本発明の第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その3)である。
【図8A】本発明の第4実施形態の第1変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その1)である。
【図8B】本発明の第4実施形態の第1変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その2)である。
【図8C】本発明の第4実施形態の第1変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その3)である。
【図9A】本発明の第4実施形態の第2変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その1)である。
【図9B】本発明の第4実施形態の第2変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その2)である。
【図9C】本発明の第4実施形態の第2変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その3)である。
【図9D】本発明の第4実施形態の第2変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その4)である。
【図10A】本発明の第4実施形態の第3変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その1)である。
【図10B】本発明の第4実施形態の第3変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その2)である。
【図10C】本発明の第4実施形態の第3変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その3)である。
【図10D】本発明の第4実施形態の第3変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法及び製造装置について、図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
【0015】
図1A及び図1Bは、第1実施形態に係る光学素子の製造装置1を示す正面図及び平面図である。
図1A及び図1Bに示すように、光学素子の製造装置1は、加熱部10と、第1の成形型及び第2の成形型の一例である可動型21,31を有する可動型ユニット20,30と、制御部40と、加熱部移動機構50と、加熱部側ベース部60と、型側ベース部70と、位置決め部材80と、を備える。
【0016】
なお、加熱部10は、対向する2つの可動型21,31の間に光学素子材料100を供給する供給部としても機能する。
図1A、図1B、及び図2に示すように、加熱部10は、本体部11と、電気コイル12と、気体供給管13と、熱電対14と、を有する。
【0017】
本体部11は、略円筒形状を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、上端に開口する。本体部11の内径は7mmで、光学素子材料100の直径は5mmであるが、これらの大きさは一例にすぎない。また、光学素子材料100は、球状でガラス転移点Tgが506℃のガラス材料であるが、プラスチック等のその他の材料であってもよく、また、その他の形状としてもよい。
【0018】
電気コイル12は、本体部11の内部に配置され、気体供給管13から供給されるガスを加熱する。本体部11内において電気コイル12が加熱したガスは、図2に示す加熱ガスGとして光学素子材料100に吹き付けられる。これにより、光学素子材料100は、加熱ガスGにより浮遊した状態で加熱される。
【0019】
気体供給管13は、図示しない気体供給源から本体部11にガスを供給する。気体供給管13の気体供給経路の途中には、図示しないバルブが設けられ、このバルブによって流量が調整されている。
【0020】
気体供給管13のガス供給量は、光学素子材料100の大きさや本体部11の大きさなどによって適宜決定されればよく、本実施の形態では10L/minである。
熱電対14は、本体部11の上端の温度を測定する。この測定温度に基づき、図1Bに示す制御部40は、電気コイル12への供給電圧を制御する。
【0021】
なお、加熱部10の構造は、光学素子材料100を加熱ガスGにより浮遊させて加熱しうるものであれば、本実施の形態のものに限定されない。
可動型ユニット20,30は、可動型21,31と、加熱ブロック22,32と、断熱ブロック23,33と、シリンダ24,34と、熱電対25,35と、を有する。
【0022】
可動型21,31は、略円柱形状を呈し、水平なX軸方向に対向して配置されて光学素子材料100を加圧する。可動型21,31には、例えば凹型の成形面21a,31aが中央に形成されている。また、可動型21及び固定型31には、加熱ブロック22,32側である固定端にフランジ部21b,31bが形成されている。なお、対向して配置される第1の成形型及び第2の成形型の一方が固定型であってもよい。
【0023】
加熱ブロック22,32には、例えば3本の円柱形状のヒータ22a,32aが挿入されている。
断熱ブロック23,33は、加熱ブロック22,32の熱を断熱する。
【0024】
シリンダ24,34は、可動型21,31、加熱ブロック22,32、及び断熱ブロック23,33を水平移動させる。
熱電対25,35は、加熱ブロック22,32の温度を測定する。制御部40は、加熱ブロック22,32の測定温度に基づき、ヒータ22a,32aの温度を制御して可動型21,31の温度(例えば540℃)を一定に維持する。
【0025】
制御部40は、加熱部10の電気コイル12、可動型ユニット20,30のヒータ22a,32a、加熱部移動機構50、位置決め部材80の位置などを制御してもよい。
制御部40としては、CPU、記憶部、入出力部、I/F部等を有するごく標準的なコンピュータ(情報処理端末)を用いることができる。光学素子の製造装置1に複数の制御部が配置されるようにしてもよい。
【0026】
加熱部移動機構50は、加熱部支持部51と、Z軸スライダ52と、ガイドプレート53とを有する。
加熱部支持部51は、加熱部10を本体部11の外周面において支持する。
【0027】
Z軸スライダ52は、加熱部支持部51及び加熱部10をガイドプレート53に対して、Z軸方向に移動させる。
ガイドプレート53は、加熱部側ベース部60に対して固定されている。
【0028】
型側ベース部70は、可動型ユニット取付部71,72と、側壁73とを有する。
可動型ユニット取付部71,72には、可動型ユニット20,30がシリンダ24,34において取付けられている。可動型ユニット取付部71,72は、側壁73に固定されている。
【0029】
位置決め部材80は、Z軸方向に延びる長手方向を有する円筒形状を呈する。位置決め部材80の中央の貫通孔81の下部には、下端に近づくほど径が拡がる拡径部81aが形成されている。
【0030】
位置決め部材80の拡径部81aは、後述するように投げ上げられる光学素子材料100に当接して光学素子材料100を位置決めし、光学素子材料100の位置及び姿勢を決定する。
【0031】
なお、位置決め部材80は、吸引機構を有し、投げ上げられた光学素子材料100を一定時間保持するようにしてもよい。また、位置決め部材は、気体吐出機構を有し、投げ上げられた光学素子材料100が融着するのを防止するとともに光学素子材料100の落下を補助するようにしてもよい。
【0032】
また、位置決め部材80は、光学素子材料100との接触面において光学素子材料100の温度を低下させないように、加熱されているとよい。また、位置決め部材80は、離型剤をコーティングされることで、光学素子材料100と融着するのを防止するとよい。
【0033】
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
加熱部10では、図1A或いは図2に示すように、気体供給管13によって供給される加熱ガスGが電気コイル12により加熱され、本体部11において光学素子材料100が加熱ガスGにより浮遊した状態で例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。なお、「加熱」とは、室温状態に対して熱を加えていることをいう。従って、例えば、本体部11内よりも低い温度状態(例えば室温状態)の光学素子材料100を本体部11に投入して、加熱工程において本体部11内で光学素子材料100の温度を室温よりも高い温度まで上昇させることができる。また、例えば、本体部11内よりも高い温度状態の光学素子材料100を本体部11に投入して、加熱工程において本体部11内で光学素子材料100の温度を室温よりも高い温度まで低下させることもできる。また、例えば、本体部11内と等温状態の光学素子材料100を本体部11に投入して、加熱工程において本体部11内で光学素子材料100の温度を室温よりも高い温度で保つこともできる。
【0034】
例えばガラス転移点以上になるまで加熱された光学素子材料100は、加熱部10から投げ上げられる。光学素子材料100を加熱部110から投げ上げるには、例えば、加熱ガスGの吹き付け量を増加させるか、或いは、Z軸上方に移動させた加熱部10を停止又は減速させて慣性を利用するとよい。
【0035】
投げ上げられた光学素子材料100は、図3Aに示すように位置決め部材80の下端に当接して、例えば、貫通孔81の拡径部81aにおいて、X軸方向及びY軸方向及びZ軸方向に位置決めされる(位置決め工程)。ここで、位置決め部材80は、光学素子材料100のうち可動型21,31(成形面21a,31a)に成形される部分以外の部分に当接するとよい。位置決め工程は、接触工程の開始前に行われる。
【0036】
なお光学素子材料100は、加熱部10から露出した後、投げ上げ及び落下によりZ軸方向に移動する。そのため、可動型21,31に接触するときの光学素子材料100のZ軸方向の位置については、位置決め部材80からの落下後に、可動型21,31をシリンダ24,34により移動させて光学素子材料100に接触するタイミングで調整することができる。したがって、位置決め部材80のZ軸方向の位置は、可動型ユニット20,30との干渉や、位置決め部材80の耐熱性、配置スペース等を考慮して適宜決定されればよい。
【0037】
位置決めされた光学素子材料100は、位置決め部材80が吸引機構や気体吐出機構を有さない場合には、その後、自由落下して、位置決め部材80から分離する(分離工程)。
また、自由落下した光学素子材料100は、2つの可動型21,31の間に供給される(供給工程)。
【0038】
その後、光学素子材料100は、可動型ユニット21,31のシリンダ24,34が可動型21,31を互いに接近させることで、例えば、可動型21に最初に接触することができる(接触工程開始)。その後、さらに可動型21,31を互いに接近させることで、光学素子材料100は、例えば、可動型31に接触することができる(接触工程終了)。なお、光学素子材料100は、可動型21と可動型31とに同時に接触することもできる。従って、接触工程では、光学素子材料100は、第1の成形型及び第2の成形型のいずれか一方の成形型(上述した例では可動型21)に接触し、それ以降に(即ちその後または同時に)、他方の成形型(上述した例では可動型31)に接触することができる。
【0039】
そして、図3Bに示すように、さらに可動型ユニット20,30のシリンダ24,34が可動型21,31を互いに接近させることで、可動型21,31により光学素子材料100が加圧される(加圧工程)。
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット20,30のヒータ22a,32aの温度を降下させることにより、或いはヒータ22a,32aを停止させること(自然冷却)により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。なお、冷却工程は、加圧工程の際のヒータ22a,32aの設定温度がガラス転移点以下(例えば490℃)の場合には、当該設定温度を変えないまま行われても良い。このことは、以下の実施形態でも同様である。冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置1から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0040】
以上説明した本実施形態では、光学素子の製造方法は、加熱、供給された光学素子材料100が接触工程において可動型21に最初に接触する前に、位置決め部材80を光学素子材料100に当接させて光学素子材料100を位置決めする位置決め工程を含む。
【0041】
そのため、加熱された光学素子材料100の位置ずれを抑えることができる。よって、本実施の形態によれば、加熱ガスGにより浮遊状態で加熱された光学素子材料100を精度良く加圧位置へ供給することができる。
【0042】
ところで、光学素子材料100が加熱ガスGにより浮遊して均等に加熱されるには、浮遊中の光学素子材料100が回転する必要があるが、このような回転状態のまま光学素子材料100が可動型21,31に接触すると、光学素子材料100が硬い場合は回転力により移動して位置ずれが生じ、高精度な光学素子を製造することができない。また、光学素子材料100が軟らかい場合は、急激な回転の停止により局所的な応力ひいては光学素子の表面欠陥が発生し、高精度な光学素子を製造することができない。
【0043】
しかしながら、本実施形態のように光学素子材料100の位置決めを行うことで、光学素子材料100が可動型21に最初に接触する前に光学素子材料100の回転を抑えることもできる。したがって、本実施形態では、光学素子を高精度に製造することもできる。
【0044】
また、本実施形態の分離工程では、光学素子材料100が可動型21に接触する前までに、光学素子材料100に当接した位置決め部材80が分離する。そのため、位置決め部材80と可動型ユニット20,30との干渉を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態では、位置決め部材80が、光学素子材料100のうち可動型21,31に成形される部分以外の部分に当接する。そのため、光学素子の精度に悪影響を与えるのを防ぐことができる。
【0046】
<第2実施形態>
上述の第1実施形態では、加熱部10から露出した後に位置決め部材80により位置決めされる光学素子材料100が、第1の成形型及び第2の成形型(可動型21,31)のうちの最初に接触する方に接触する前に位置決め部材80から分離する例について説明したが、本実施形態では、第1の成形型及び第2の成形型のうちの最初に接触する方に接触したとき以降に光学素子材料100が位置決め部材80から分離する例について説明する。
【0047】
図4は、第2実施形態における加熱部110の内部構造を示す正面図である。
本実施形態では、上述の第1実施形態と相違する事項を中心に説明し、共通する事項については説明を適宜省略する。
【0048】
図4に示すように、加熱部110は、電気コイル111と、熱風発生器112と、材料加熱部113と、気体供給管114と、バルブ115と、熱電対116と、シャッタ117と、シャッタ駆動部118と、シャッタ支持部119と、を有する。
【0049】
電気コイル111は、略円筒形状を呈する熱風発生器112の内部に配置され、気体供給管114から供給されるガスを加熱する。
熱風発生器112は、円筒形状を呈し、水平なX軸方向に延びる長手方向を有する。熱風発生器112内において電気コイル111が加熱したガスは、加熱ガスGとして材料加熱部113に供給される。
【0050】
材料加熱部113は、円筒形状を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、上端及び下端に開口する。材料加熱部113は、長手方向の中央部分において、熱風発生器112の先端と連通するように形成されている。
【0051】
材料加熱部113では、光学素子材料100は、加熱ガスGにより浮遊した状態で加熱される。
気体供給管114は、図示しない気体供給源から熱風発生器112にガスを供給する。気体供給管114の気体供給経路の途中には、バルブ115が設けられ、このバルブ115によって流量が調整されている。
【0052】
気体供給管114のガス供給量は、光学素子材料100の大きさや材料加熱部113の大きさなどによって適宜決定されればよく、本実施形態では10L/minである。
熱電対116は、熱風発生器112の先端部分の温度(例えば約700度)を測定する。この測定温度に基づき、第1実施形態において上述した図1Bに示す制御部40は、電気コイル111への供給電圧を制御する。
【0053】
シャッタ117は、例えばシリンダであるシャッタ駆動部118によって、材料加熱部113の下端を閉鎖する位置と光学素子材料100を供給する供給工程において材料加熱部113の下端を開放する位置とに移動する。
【0054】
シャッタ117及びシャッタ駆動部118は、熱風発生器112の外周面に固定されたシャッタ支持部119によって上方から支持されている。
なお、加熱部110の構造は、光学素子材料100を加熱ガスGにより浮遊させて加熱しうるものであれば、本実施の形態のものに限定されない。
【0055】
位置決め部材180については後述する。
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
【0056】
加熱部110では、気体供給管114によって供給される加熱ガスGが熱風発生器112において電気コイル111により加熱され、図5Aに示すように、材料加熱部113において光学素子材料100が加熱ガスGにより浮遊した状態で加熱される(加熱工程)。
【0057】
その後、図5Bに示すように、加熱部110のシャッタ駆動部118がシャッタ117を材料加熱部113の下端が開放する位置に移動させる。これにより、加熱された光学素子材料100は、材料加熱部113から落下して位置決め部材180に載置される。
【0058】
位置決め部材180は、円筒形状(リング形状)を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、上端及び下端に開口する。位置決め部材180の中央に形成された貫通孔181は、上半分の大径部181aと、下半分の小径部181bとを含む。位置決め部材180の上端には、フランジ部182が形成されている。
【0059】
材料加熱部113から落下した光学素子材料100は、小径部181bの上端に当接して位置決めされ、X軸方向及びY軸方向及びZ軸方向に位置決めされる(位置決め工程)。ここで、位置決め部材180は、光学素子材料100のうち可動型21,31(成形面21a,31a)に成形される部分以外の部分に当接するとよい。
【0060】
位置決めされた光学素子材料100は、加熱部110が退避した後に位置決め部材180上で例えば第1の成形型及び第2の成形型の一例である図示しない上型及び下型と接触し(接触工程)、加圧されるか、或いは、位置決め部材180により上型と下型との間に搬送されてから位置決め部材180上で加圧される(加圧工程)。
【0061】
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、ヒータ22a,32aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで第1の成形型及び第2の成形型により加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。
【0062】
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、位置決め部材180から分離され(分離工程)、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0063】
以上説明した本実施形態では、位置決め部材180は、冷却工程後(光学素子材料100が第1の成形型及び第2の成形型のうちの最初に接触する方に接触したとき以降の一例)に、光学素子材料100から分離する。そのため、光学素子材料100の位置決めを確実に行うことができる。
【0064】
<第3実施形態>
上述の第1実施形態では、第1の成形型及び第2の成形型(可動型21,31)のうちの最初に接触する方に接触する前に位置決め部材80から分離する光学素子材料100は、加熱部10から露出した後に位置決め部材80により位置決めされる例について説明したが、本実施形態では、光学素子材料100は、加熱部210の内部において位置決め部材280により位置決めされる。
【0065】
図6A〜図6Dは、第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置201の正面図である。
本実施形態では、上述の第1実施形態と相違する事項を中心に説明し、共通する事項については説明を適宜省略する。
【0066】
図6A〜図6Dに示すように、光学素子の製造装置201は、加熱部210と、第1の成形型の一例である可動型221を有する可動型ユニット220と、第2の成形型の一例である固定型231を有する固定型ユニット230と、加熱部移動機構250と、加熱部側ベース部260と、型側ベース部270と、位置決め部材280と、を備える。
【0067】
加熱部210は、上述の第1実施形態の加熱部10と同様であり、本体部211と、気体供給管213と、本実施形態では図示しない電気コイル及び熱電対と、を有する。
可動型ユニット220は、上述の第1実施形態の可動型ユニット20と同一であり、凹型の成形面221a及びフランジ部221bが形成された可動型221と、ヒータ222aを有する加熱ブロック222と、断熱ブロック223と、シリンダ224と、図示しない熱電対と、を有する。
【0068】
固定型ユニット230は、凹型の成形面231a及びフランジ部231bが形成され固定型231と、ヒータ232aを有する加熱ブロック232と、断熱ブロック233と、図示しない熱電対と、を有する。
【0069】
加熱部移動機構250は、上述の第1実施形態の加熱部移動機構50と同一であり、加熱部支持部251と、Z軸スライダ252と、ガイドプレート253とを有する。
加熱部側ベース部260も、上述の第1実施形態の加熱部側ベース部60と同一である。
【0070】
型側ベース部270は、上述の第1実施形態の、側壁73に固定された2つの可動型ユニット取付部71,72が、それぞれ1つずつ側壁73に固定された可動型ユニット取付部271及び固定型ユニット取付部272に変更されている点以外は、上述の第1実施形態と同一である。
【0071】
位置決め部材280は、例えば、Z軸方向に延びる長手方向を有する円筒形状を呈するが、上述の第1実施形態のように、拡径部81aを有する貫通孔81が形成された位置決め部材80、或いは上述のように吸引機構や気体吐出機構を有する位置決め部材を用いてもよい。
【0072】
位置決め部材280の下端は、後述するように加熱部210の内部において光学素子材料100に当接して光学素子材料100を位置決めし、光学素子材料100の位置及び姿勢を決定する。
【0073】
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
光学素子材料100は、加熱部210内で加熱ガスGにより浮遊した状態で例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。
【0074】
例えばガラス転移点以上になるまで光学素子材料100が加熱されると、図6Aに示すように、加熱部210の本体部211が可動型221と固定型231との間に上昇する。また、位置決め部材280が下降して光学素子材料100に当接する。これにより、光学素子材料100は、位置決め部材280によって位置決めされる(位置決め工程)。
【0075】
位置決め工程の後、図6Bに示すように、加熱部移動機構250によって加熱部210が急降下し、光学素子材料100が加熱部210の外部に露出して落下し、図6Cに示すように可動型221と固定型231との間に供給される(供給工程)。その後、光学素子材料100は、可動型ユニット220のシリンダ224が可動型221を固定型231に接近させることで、例えば、可動型21に最初に接触することができる(接触工程開始)。その後、光学素子材料100は、例えば、可動型221に接触することができる(接触工程終了)。なお、接触工程では、本実施の形態のように第1の成形型及び第2の成形型の一方が可動型(可動型221)で他方が固定型(固定型231)である場合であっても、成形型の形状(例えば、両方の成形型の成形面が凸型の場合など)、光学素子材料100の供給方法(例えば供給開始位置など)によっては、光学素子材料100を第1の成形型と第2の成形型とに同時に接触させることも可能である。
【0076】
その後、可動型ユニット220のシリンダ224が可動型221を固定型231に接近させることで、可動型221及び固定型231により光学素子材料100が加圧される(加圧工程)。
【0077】
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット220及び固定型ユニット230のヒータ222a,232aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置1から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0078】
以上説明した本実施形態の位置決め工程では、光学素子材料100が加熱部210の内部に位置した状態で行われる。そのため、光学素子材料100が加熱部210の外部に露出した後、光学素子材料100が安定して、光学素子材料100の位置決めを確実に行うことができる。
【0079】
<第4実施形態>
上述の第3実施形態では、加熱部210の内部において位置決め部材280により位置決めされる光学素子材料100が、第1の成形型及び第2の成形型(可動型21,31)のうちの最初に接触する方に接触する前に位置決め部材280から分離する例について説明したが、本実施形態では、第1の成形型及び第2の成形型のうちの最初に接触する方に接触したとき以降に光学素子材料100が位置決め部材380から分離する例について説明する。
【0080】
図7A〜図7Cは、第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置301の正面図である。
本実施形態では、分離工程のタイミングと、2つの可動型ユニット320,330が凸型の成形面331aを有する可動型321,331を有する点とにおいて上述の第3実施形態と相違し、その他の点は概ね同様であるため、相違する事項を中心に説明し、共通する事項については第3実施形態と同一の符号を図面に付して説明を適宜省略する。
【0081】
2つの可動型ユニット320,330は、可動型321,331と、加熱ブロック322,332と、断熱ブロック323,333と、シリンダ324,334と、図示しない熱電対と、を有する。
【0082】
可動型321,331には、凸型の成形面321a,331aが中央に形成されている。
位置決め部材380は、例えば、Z軸方向に延びる長手方向を有する円筒形状を呈し、光学素子材料100を位置決め部材380の下端において吸引する吸引機構を有する。
【0083】
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
光学素子材料100は、加熱部210内で加熱ガスGにより浮遊した状態で例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。
【0084】
例えばガラス転移点以上になるまで光学素子材料100が加熱されると、図7Aに示すように、加熱部210の本体部211が2つの可動型321,331の間に上昇する。また、位置決め部材380が下降して当接する。これにより、光学素子材料100は、位置決め部材380によって位置決めされる(位置決め工程)。
【0085】
位置決め部材380は、吸引機構を有するため、図7Bに示すように、加熱部移動機構250によって加熱部210が急降下し、光学素子材料100が加熱部210の外部に露出して2つの可動型321,331の間に供給されても(供給工程)、光学素子材料100は、位置決め部材380の下端に保持される。その後、光学素子材料100は、可動型ユニット320,330のシリンダ324,334が可動型321,331を互いに接近させることで、例えば、可動型321に最初に接触することができる(接触工程開始)。それ以降、さらに可動型321,331を互いに接近させることで、光学素子材料100は、例えば、可動型331に接触することができる(接触工程終了)。
【0086】
その後、さらに可動型ユニット320,330のシリンダ324,334が可動型321,331を互いに接近させることで、2つの可動型321,331により光学素子材料100が加圧される(加圧工程)。
【0087】
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット320,330のヒータ322a,332aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。
【0088】
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、位置決め部材380から分離され(分離工程)、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0089】
以上説明した本実施形態の位置決め工程は、光学素子材料100が加熱部210の内部に位置した状態で行われ、位置決め部材380は、冷却工程後(光学素子材料100が第1の成形型及び第2の成形型のうちの最初に接触する方に接触したとき以降の一例)に、光学素子材料100から分離する。そのため、光学素子材料100の位置決めを確実に行うことができる。
【0090】
以下、第4実施形態の第1〜第3変形例について相違する事項を中心に説明する。
図8A〜図8Cは、本発明の第4実施形態の第1変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置401の正面図である。
【0091】
本変形例の光学素子の製造装置401は、加熱部410については、上下に分離可能な2つの本体部411a,411bからなる点、これら本体部411a,411bに対して、水平なX軸方向に延びる長手方向を有し円筒形状を有する熱風発生器412が固定されている点において図7A〜図7Dの光学素子の製造装置301の加熱部210と相違する。
【0092】
また、本変形例の光学素子の製造装置401は、光学素子材料100の上方に設けられた上側位置決め部材380に加え、光学素子材料100の下方に設けられた下側位置決め部材480が設けられている。
【0093】
下側位置決め部材480は、加熱部310を貫通して設けられている。なお、位置決め部材は、左右(Y軸方向)から光学素子材料100に当接するようにしてもよく、本数も特に限定されない。
【0094】
光学素子材料100は、加熱部410内で加熱ガスGにより浮遊した状態で例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。
例えばガラス転移点以上になるまで光学素子材料100が加熱されると、図8Aに示すように、加熱部410の本体部411が2つの可動型321,331の間に上昇する。
【0095】
例えばガラス転移点以上になるまで加熱された光学素子材料100には、図8Bに示すように上側位置決め部材380が下降して当接し、下側位置決め部材480が上昇して当接する。これにより、光学素子材料100は、上側位置決め部材380及び下側位置決め部材480によって位置決めされる(位置決め工程)。
【0096】
その後、図8Cに示すように、図示しない移動機構によって上側本体部411bが上方に退避し、光学素子材料100が加熱部410の外部に露出して、2つの可動型321,331の間に供給される(供給工程)。その後、光学素子材料100は、可動型ユニット320,330のシリンダ324,334が可動型321,331を互いに接近させることで、例えば、可動型321に最初に接触することができる(接触工程開始)。それ以降、さらに可動型321,331を互いに接近させることで、光学素子材料100は、例えば、可動型331に接触することができる(接触工程終了)。また、さらに可動型ユニット320,330のシリンダ324,334が可動型321,331を互いに接近させることで、可動型321,331により光学素子材料100が加圧される(加圧工程)。
【0097】
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット320,330のヒータ322a,332aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、位置決め部材380から分離され(分離工程)、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0098】
図9A〜図9Dは、第4実施形態の第2変形例に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置501の正面図である。
本変形例の光学素子の製造装置501は、加熱部510と、Z軸に対向するように配置された2つの可動型ユニット520,530と、型側ベース部570と、を有する。
【0099】
加熱部510は、上下に分離可能な2つの本体部511a,511bと、気体供給管512とを有する。また、加熱部510の下側の本体部511aは、下側加熱部支持部551及び下側Z軸スライダ552によりZ軸方向に移動可能となっている。加熱部510の上側の本体部511bは、上側加熱部支持部553及び上側Z軸スライダ554によりZ軸方向に移動可能となっている。
【0100】
上型である可動型521は、凸型の成形面521a及び上端に位置するフランジ部521bを有し、5下型である固定型31は、凸型の成形面531a及びこの成形面531aが先端に形成された小径部531bと、を有する。
【0101】
型側ベース部570は、可動型ユニット取付部571,572と、側壁573とを有する。
可動型ユニット取付部571,572には、可動型ユニット520,530がシリンダ524,534において取付けられている。可動型ユニット取付部571,572は、側壁573に固定されている。
【0102】
位置決め部材580は、円筒形状(リング形状)を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、上端及び下端に開口する。位置決め部材580の中央に形成された貫通孔581は、上半分の大径部581aと、下半分の小径部581bとを含む。位置決め部材580の上端には、フランジ部582が形成されている。
【0103】
図9Aに示すように、位置決め部材580は、光学素子材料100を上下に分割された加熱部510の本体部511a,511bの間に搬送する。そして、図9Bに示すように、上側の本体部511bが上側加熱部支持部553及び上側Z軸スライダ554により下降し、光学素子材料100は、加熱部510内で加熱ガスGにより浮遊した状態で例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。
【0104】
例えばガラス転移点以上になるまで光学素子材料100が加熱されると、図9Cに示すように、光学素子材料100は、再び、位置決め部材580上に落下して載置され、例えば小径部581bの上端に当接して位置決めされ、X軸方向及びY軸方向に位置決めされる(位置決め工程)。また、上側の本体部511bが上側加熱部支持部553及び上側Z軸スライダ554により上昇する。ここで、位置決め部材580は、光学素子材料100のうち可動型521,531(成形面521a,531a)に成形される部分以外の部分に当接するとよい。
【0105】
そして、図9Dに示すように、位置決め部材580に保持されたまま、光学素子材料100は、2つの可動型521,531の間に供給される(供給工程)。
接触工程において、2つの可動型521、531が接触し、加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット520,530のヒータ522a,532aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。
【0106】
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、位置決め部材580から分離され(分離工程)、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0107】
図10A〜図10Dは、第4実施形態の第3変形例に係る光学素子の製造方法を説明するためのである。
図10A及び図10Bは平面図及び正面図であり、図10Cは平面図であり、図10Dは正面図である。
【0108】
図10Aに示すように、本変形例の加熱部の本体部611は、下部が円筒形状を呈し、上部には互いに対向する平面視円弧状の対向片611a,611bが形成されている。
対向片611a,611bの内径d2は、本体部611の下部の内径d1よりも大きい(d2>d1)。対向片611a,611bの内周面611dの下部には、対向片611a,611bの内周面611dと本体部611の下部の内周面とに連続し、下端に近づくほど内径が徐々に小さくなる縮径部611a−1,611b−1が形成されている。
【0109】
図10Aに示すように、光学素子材料100は、本体部611内で加熱ガスGにより浮遊した状態で例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。
その後、加熱ガスGの流量が少なくなるか加熱ガスGが止まることにより、図10Bに示すように、光学素子材料100は、縮径部611a−1,611b−1に当接するまで下降し、例えば水平2軸方向(図示しないX軸方向及びY軸方向)に位置決めされる(位置決め工程)。このように、加熱部の本体部611は、位置決め部材としても機能する。
【0110】
位置決め工程においては、縮径部611a−1,611b−1は、光学素子材料100のうち第1の成形型621及び第2の成形型621の成形面621a,631aに成形される部分以外の部分に当接するとよい。
【0111】
そして、図10Cに示すように、本体部611に保持されたまま、光学素子材料100は、第1の成形型621と第2の成形型631との間に供給され(供給工程)、対向片611a,611bの隙間から、第1の成形型621及び第2の成形型631に接触され(接触工程)、加圧される(加圧工程)。
【0112】
光学素子材料100の接触が開始したとき以降(光学素子材料100が第1の成形型621及び第2の成形型622のうちの最初に接触する方に接触したとき以降)に、図10Dに示すように、本体部611が下降し、光学素子材料100が本体部611(位置決め部材)から分離される(分離工程)。
【0113】
その後、光学素子材料100は冷却され(冷却工程)、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【符号の説明】
【0114】
1 光学素子の製造装置
10 加熱部
11 本体部
12 電気コイル
13 気体供給管
14 熱電対
20,30 可動型ユニット
21,31 可動型
21a,31a 成形面
21b,31b フランジ部
22,32 加熱ブロック
22a,32a ヒータ
23,33 断熱ブロック
24,34 シリンダ
25,35 熱電対
40 制御部
50 加熱部移動機構
51 加熱部支持部
52 Z軸スライダ
53 ガイドプレート
60 加熱部側ベース部
71,72 可動型ユニット取付部
73 側壁
80 位置決め部材
81 貫通孔
81a 拡径部
110 加熱部
111 電気コイル
112 熱風発生器
113 材料加熱部
114 気体供給管
115 バルブ
116 熱電対
117 シャッタ
118 シャッタ駆動部
119 シャッタ支持部
180 位置決め部材
181 貫通孔
181a 大径部
181b 小径部
201 光学素子の製造装置
210 加熱部
211 本体部
213 気体供給管
220 可動型ユニット
221 可動型
221a 成形面
221b フランジ部
222 加熱ブロック
222a ヒータ
223 断熱ブロック
224 シリンダ
230 固定型ユニット
231 固定型
231a 成形面
231b フランジ部
232 加熱ブロック
232a ヒータ
233 断熱ブロック
250 加熱部移動機構
251 加熱部支持部
252 Z軸スライダ
253 ガイドプレート
260 加熱部側ベース部
270 型側ベース部
271,72 可動型ユニット取付部
273 側壁
280 位置決め部材
301 光学素子の製造装置
320,330 可動型ユニット
321,331 可動型
321a,331a 成形面
321b,331b フランジ部
322,332 加熱ブロック
322a,332a ヒータ
323,333 断熱ブロック
324,334 シリンダ
380 位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部の内部において加熱ガスにより光学素子材料を浮遊させて加熱する加熱工程と、
加熱された前記光学素子材料を第1の成形型と第2の成形型との間に供給する供給工程と、
供給された前記光学素子材料が前記第1の成形型及び前記第2の成形型のいずれか一方の成形型に接触し、それ以降に該光学素子材料が他方の成形型に接触する接触工程と、
前記接触工程後の前記光学素子材料を前記第1の成形型及び前記第2の成形型により前記光学素子材料を加圧する加圧工程と、
加圧された前記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含み、
加熱された前記光学素子材料が前記接触工程において前記一方の成形型に接触する前に、位置決め部材を前記光学素子材料に当接させて該光学素子材料を位置決めする位置決め工程を更に含む、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記光学素子材料が前記一方の成形型に接触したとき以降に、前記光学素子材料に当接した前記位置決め部材を分離させる分離工程を更に含む、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記光学素子材料が前記一方の成形型に接触する前までに、前記光学素子材料に当接した前記位置決め部材を分離させる分離工程を更に含む、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記位置決め工程は、前記光学素子材料が前記加熱部の内部に位置した状態で行われる、請求項1から請求項3のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記位置決め工程では、前記位置決め部材は、前記光学素子材料のうち前記第1の成形型及び前記第2の成形型により成形される部分以外の部分に当接する、請求項1から請求項4のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
光学素子材料を内部において加熱ガスにより浮遊させて加熱する加熱部と、
前記光学素子材料を加圧する第1の成形型及び第2の成形型と、
前記光学素子材料を前記第1の成形型と前記第2の成形型との間に供給する供給部と、
前記光学素子材料に当接して該光学素子材料を位置決めする位置決め部材と、を備え、
前記供給部により供給された前記光学素子材料は、前記第1の成形型及び前記第2の成形型のいずれか一方の成形型に接触し、それ以降に該光学素子材料が他方の成形型に接触し、
前記位置決め部材は、前記光学素子材料が前記一方の成形型に接触する前に位置決めを行う、光学素子の製造装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公開番号】特開2013−107796(P2013−107796A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254096(P2011−254096)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)