説明

光学素子の製造方法、及び、光学素子の製造装置

【課題】光学素子の製造方法及び製造装置において、加熱ガスにより加熱された光学素子材料を精度良く加圧位置へ供給する。
【解決手段】光学素子の製造方法は、加熱部10の内部において加熱ガスにより光学素子材料100を加熱する加熱工程と、加熱された光学素子材料100を第1の成形型(可動型21)と第2の成形型(可動型31)との間に供給する供給工程と、供給された光学素子材料100を第1の成形型(21)及び第2の成形型(31)により加圧する加圧工程と、加圧された光学素子材料100を冷却する冷却工程と、を含み、位置決め部材80を光学素子材料100に当接させて光学素子材料100を位置決めする位置決め工程を更に含み、加熱工程では、位置決め部材80により位置決めされた状態の光学素子材料100を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を製造する光学素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱軟化させた光学素子材料を加圧し、加圧した光学素子材料を冷却して硬化させることにより光学素子を製造する製造方法が知られている。
このような光学素子の製造方法において、光学素子材料を加熱ガスで浮遊させて加熱し、下型の上面に落下させて供給する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の光学素子の製造方法における工程の順番は、浮遊加熱、下型上への加熱部からの落下(供給)、加熱部退避、上型下降である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−133758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の光学素子の製造方法では、光学素子材料の浮遊状態を高精度に制御することは難しく、落下直前の浮遊位置によって供給位置がばらつく。
さらに、浮遊状態が仮に安定していたとしても、浮遊状態を解除する際には、加熱ガスの浮遊作用を均等に解除することは難しく、落下動作により供給位置がばらつく。
【0006】
本発明の目的は、加熱ガスにより加熱された光学素子材料を精度良く加圧位置へ供給することができる光学素子の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子の製造方法は、加熱部の内部において加熱ガスにより光学素子材料を加熱する加熱工程と、加熱された上記光学素子材料を第1の成形型と第2の成形型との間に供給する供給工程と、供給された上記光学素子材料を上記第1の成形型及び上記第2の成形型により加圧する加圧工程と、加圧された上記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含み、位置決め部材を上記光学素子材料に当接させてこの光学素子材料を位置決めする位置決め工程を更に含み、上記加熱工程では、上記位置決め部材により位置決めされた状態の上記光学素子材料を加熱する。
【0008】
また、上記光学素子の製造方法において、上記位置決め工程では、上記加熱工程が開始する前から上記光学素子材料を位置決めするようにしてもよい。
また、上記光学素子の製造方法において、上記供給工程後、上記加圧工程前に、上記光学素子材料が上記第1の成形型及び上記第2の成形型のいずれか一方の成形型に接触し、それ以降にこの光学素子材料が他方の成形型に接触する接触工程を更に含み、上記光学素子材料が上記一方の成形型に接触したとき以降に、上記光学素子材料に当接した上記位置決め部材を分離させる分離工程を更に含むようにしてもよい。
【0009】
また、上記光学素子の製造方法において、上記加熱工程では、上記位置決め部材により上記光学素子材料を回転させて加熱するようにしてもよい。
また、上記光学素子の製造方法において、上記加熱工程では、上記光学素子材料を挟んで対向する2つの上記加熱部から上記加熱ガスを上記光学素子材料に吹き付け、上記加圧工程では、上記第1の成形型と上記第2の成形型との中心同士を結ぶ中心軸に対して上記光学素子材料の温度分布が軸対称となるように回転した後の上記光学素子材料を加圧するようにしてもよい。
【0010】
また、上記光学素子の製造方法において、上記加熱工程では、上記位置決め部材により上記加熱部の内部に搬送された上記光学素子材料を加熱し、上記供給工程では、加熱された上記光学素子材料を、上記位置決め部材を移動させて上記第1の成形型と上記第2の成形型との間に供給するようにしてもよい。
【0011】
本発明の光学素子の製造装置は、光学素子材料を内部において加熱ガスにより加熱する加熱部と、上記光学素子材料を加圧する第1の成形型及び第2の成形型と、上記光学素子材料を上記第1の成形型と上記第2の成形型との間に供給する供給部と、上記加熱部の内部に位置する上記光学素子材料に当接してこの光学素子材料を位置決めする位置決め部材と、を備える、光学素子の製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱ガスにより加熱された光学素子材料を精度良く加圧位置へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置を示す正面図である。
【図1B】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における加熱部の内部構造及び加熱部移動機構を示す右側面図である。
【図3A】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その1)である。
【図3B】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その2)である。
【図3C】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その3)である。
【図4A】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その1)である。
【図4B】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その2)である。
【図4C】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その3)である。
【図4D】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置の正面図(その4)である。
【図5A】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図(その1)である。
【図5B】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図(その2)である。
【図5C】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図(その3)である。
【図6A】本発明の第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図(その1)である。
【図6B】本発明の第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図(その2)である。
【図6C】本発明の第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法及び製造装置について、図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
【0015】
図1A及び図1Bは、第1実施形態に係る光学素子の製造装置1を示す正面図及び平面図である。
図1A及び図1Bに示すように、光学素子の製造装置1は、加熱部10と、第1の成形型及び第2の成形型の一例である可動型21,31を有する可動型ユニット20,30と、制御部40と、加熱部移動機構50と、加熱部側ベース部60と、型側ベース部70と、位置決め部材80と、を備える。
【0016】
なお、加熱部10は、対向する2つの可動型21,31の間に光学素子材料100を供給する供給部としても機能する。
図1A、図1B、及び図2に示すように、加熱部10は、本体部11と、電気コイル12と、気体供給管13と、熱電対14と、を有する。
【0017】
本体部11は、略円筒形状を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、上端に開口する。本体部11の内径は7mmで、図3A〜図3Cに示す光学素子材料100の直径は5mmであるが、これらの大きさは一例にすぎない。また、光学素子材料100は、球状でガラス転移点Tgが506℃のガラス材料であるが、プラスチック等のその他の材料であってもよく、また、その他の形状としてもよい。
【0018】
電気コイル12は、本体部11の内部に配置され、気体供給管13から供給されるガスを加熱する。本体部11内において電気コイル12が加熱したガスは、図2に示す加熱ガスGとして図3A〜図3Cに示す光学素子材料100に吹き付けられる。これにより、光学素子材料100は、加熱ガスGにより加熱される。
【0019】
気体供給管13は、図示しない気体供給源から本体部11にガスを供給する。気体供給管13の気体供給経路の途中には、図示しないバルブが設けられ、このバルブによって流量が調整されている。
【0020】
気体供給管13のガス供給量は、光学素子材料100の大きさや本体部11の大きさなどによって適宜決定されればよく、本実施の形態では10L/minである。
熱電対14は、本体部11の上端の温度を測定する。この測定温度に基づき、図1Bに示す制御部40は、電気コイル12への供給電圧を制御する。
【0021】
なお、加熱部10の構造は、光学素子材料100を加熱ガスGにより加熱しうるものであれば、本実施の形態のものに限定されない。
可動型ユニット20,30は、可動型21,31と、加熱ブロック22,32と、断熱ブロック23,33と、シリンダ24,34と、熱電対25,35と、を有する。
【0022】
可動型21,31は、略円柱形状を呈し、水平なX軸方向に対向して配置されて光学素子材料100を加圧する。可動型21,31には、例えば凸型の成形面21a,31aが中央に形成されている。また、可動型21,31には、加熱ブロック22,32側である固定端にフランジ部21b,31bが形成されている。なお、対向して配置される第1の成形型及び第2の成形型の一方が固定型であってもよい。
【0023】
加熱ブロック22,32には、例えば3本の円柱形状のヒータ22a,32aが挿入されている。
断熱ブロック23,33は、加熱ブロック22,32の熱を断熱する。
【0024】
シリンダ24,34は、可動型21,31、加熱ブロック22,32、及び断熱ブロック23,33をX軸方向に水平移動させる。
熱電対25,35は、加熱ブロック22,32の温度を測定する。制御部40は、加熱ブロック22,32の測定温度に基づき、ヒータ22a,32aの温度を制御して可動型21,31の温度(例えば540℃)を一定に維持する。
【0025】
制御部40は、加熱部10の電気コイル12、可動型ユニット20,30のヒータ22a,32a、加熱部移動機構50、位置決め部材80の位置などを制御してもよい。
制御部40としては、CPU、記憶部、入出力部、I/F部等を有するごく標準的なコンピュータ(情報処理端末)を用いることができる。光学素子の製造装置1に複数の制御部が配置されるようにしてもよい。
【0026】
加熱部移動機構50は、加熱部支持部51と、Z軸スライダ52と、ガイドプレート53とを有する。
加熱部支持部51は、加熱部10を本体部11の外周面において支持する。
【0027】
Z軸スライダ52は、加熱部支持部51及び加熱部10をガイドプレート53に対して、Z軸方向に移動させる。
ガイドプレート53は、加熱部側ベース部60に対して固定されている。
【0028】
型側ベース部70は、可動型ユニット取付部71,72と、側壁73とを有する。
可動型ユニット取付部71,72には、可動型ユニット20,30がシリンダ24,34において取付けられている。可動型ユニット取付部71,72は、側壁73に固定されている。
【0029】
位置決め部材80は、Z軸方向に延びる長手方向を有する円筒形状を呈する。位置決め部材80の中央の貫通孔81の下部には、下端に近づくほど径が拡がる拡径部81aが形成されている。
【0030】
位置決め部材80は、吸引機構を有し、拡径部81aにおいて光学素子材料100に当接して光学素子材料100を位置決めし、光学素子材料100の位置及び姿勢を決定する。
また、位置決め部材80は、光学素子材料100との接触面において光学素子材料100の温度を低下させないように、加熱されているとよい。また、位置決め部材80は、離型剤をコーティングされることで、光学素子材料100と融着するのを防止するとよい。
【0031】
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
まず、位置決め部材80の下端に吸引されて位置決めされた状態(位置決め工程)の光学素子材料100が、加熱部10の内部に搬送される。このとき、加熱部10は、2つの可動型21,31の間に位置する。
【0032】
加熱部10では、図3A或いは図2に示すように、気体供給管13によって供給される加熱ガスGが電気コイル12により加熱され、位置決めされた光学素子材料100が本体部11において加熱ガスGにより例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。なお、「加熱」とは、室温状態に対して熱を加えていることをいう。従って、例えば、加熱部10内よりも低い温度状態(例えば室温状態)の光学素子材料100を加熱部10内に搬送して、加熱工程において加熱部10内で光学素子材料100の温度を室温よりも高い温度まで上昇させることができる。また、例えば、加熱部10内よりも高い温度状態の光学素子材料100を加熱部10内に搬送して、加熱工程において加熱部10内で光学素子材料100の温度を室温よりも高い温度まで低下させることもできる。また、例えば、加熱部10内と等温状態の光学素子材料100を加熱部10内に搬送して、加熱工程において加熱部10内で光学素子材料100の温度を室温よりも高い温度で保つこともできる。
【0033】
例えばガラス転移点以上になるまで加熱された光学素子材料100は、図3Bに示すように、位置決め部材80により吸引(位置決め)された状態のまま、加熱部10が下降することで、加熱部10の外部に露出する。これにより、光学素子材料100は、2つの可動型21,31の間に供給される(供給工程)。
【0034】
その後、図3Cに示すように、位置決め部材80により吸引(位置決め)された状態のまま、光学素子材料100は、可動型ユニット20,30のシリンダ24,34が可動型21,31を互いに接近させることで、例えば、可動型21に最初に接触することができる(接触工程開始)。その後、さらに可動型21,31を互いに接近させることで、光学素子材料100は、例えば、可動型31に接触することができる(接触工程終了)。なお、光学素子材料100は、可動型21と可動型31とに同時に接触することもできる。従って、接触工程では、光学素子材料100は、第1の成形型及び第2の成形型のいずれか一方の成形型(上述した例では可動型21)に接触し、それ以降に(即ちその後または同時に)、他方の成形型(上述した例では可動型31)に接触することができる。
そして、光学素子材料100は、可動型21,31により加圧される(加圧工程)。
【0035】
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット20,30のヒータ22a,32aの温度を降下させることにより、或いはヒータ22a,32aを停止させること(自然冷却)により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。なお、冷却工程は、加圧工程の際のヒータ22a,32aの設定温度がガラス転移点以下(例えば490℃)の場合には、当該設定温度を変えないまま行われても良い。このことは、以下の実施形態でも同様である。
【0036】
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、位置決め部材180から分離され(分離工程)、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0037】
以上説明した本実施形態では、光学素子の製造方法は、位置決め部材80を光学素子材料100に当接させて光学素子材料100を位置決めする位置決め工程を含み、加熱工程では、位置決め部材80により位置決めされた状態の光学素子材料100が加熱される。
【0038】
そのため、加熱工程において加熱ガスGにより光学素子100の位置がずれるのを抑えることができる。よって、本実施の形態によれば、加熱ガスGにより加熱された光学素子材料100を精度良く加圧位置へ供給することができる。
【0039】
また、本実施形態の位置決め工程では、加熱工程が開始する前から光学素子材料100が位置決めされる。そのため、加熱工程において加熱ガスGにより光学素子100の位置がずれるのを確実に抑えることができる。但し、光学素子材料100が挿入されて加熱工程が開始した後に、加熱部10に対して位置決め部材80を挿入して、位置決め部材80により位置決めされた状態の光学素子材料100を加熱するようにしてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、位置決め部材80は、冷却工程後(光学素子材料100が第1の成形型及び第2の成形型のうちの最初に接触する方に接触したとき以降の一例)に、光学素子材料100から分離する。そのため、光学素子材料100の位置決めを確実に行うことができる。なお、位置決め部材80は、第1の成形型及び第2の成形型のうちの最初に接触する方に接触する前に光学素子材料100から分離するようにしてもよいが、位置ずれを抑える観点では、第1の成形型及び第2の成形型のうちの最初に接触する方に接触したとき以降に、光学素子材料100から分離するとよい。
【0041】
<第2実施形態>
図4A〜図4Dは、第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための光学素子の製造装置101の正面図である。
【0042】
本実施形態では、上述の第1実施形態と相違する事項を中心に説明し、共通する事項については説明を適宜省略する。
図4A〜図4Dに示すように、光学素子の製造装置101は、加熱部110と、鉛直なZ軸方向に対向するように配置された2つの可動型ユニット120,130と、下側加熱部支持部151と、下側Z軸スライダ152と、上側加熱部支持部153と、上側Z軸スライダ154と、型側ベース部170と、位置決め部材180と、を有する。
【0043】
加熱部110は、上下に分離可能な下側本体部111a及び上側本体部111bと、下側本体部111aに連結された気体供給管112と、を有する。下側本体部111aは、下側加熱部支持部151及び下側Z軸スライダ152によりZ軸方向に移動可能となっており、上側本体部111bは、上側加熱部支持部153及び上側Z軸スライダ154によりZ軸方向に移動可能となっている。
【0044】
可動型ユニット120,130は、可動型121,131と、例えば3本のヒータ122a,132aが挿入された加熱ブロック122,132と、断熱ブロック123,133と、シリンダ124,134と、図示しない熱電対と、を有する。
【0045】
上型である可動型121は、凸型の成形面121a及び上端に位置するフランジ部121bを有し、下型である可動型131は、凸型の成形面131a及びこの成形面131aが先端に形成された小径部131bと、を有する。
【0046】
型側ベース部170は、可動型ユニット取付部171,172と、側壁173とを有する。
可動型ユニット取付部171,172には、可動型ユニット120,130がシリンダ124,134において取付けられている。可動型ユニット取付部171,172は、側壁173に固定されている。
【0047】
位置決め部材(又は保持部材若しくはホルダ)180は、円筒形状(リング形状)を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、上端及び下端に開口する。位置決め部材180の中央に形成された貫通孔181は、上半分の大径部181aと、下半分の小径部181bとを含む。位置決め部材180の上端には、フランジ部182が形成されている。
【0048】
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
図4Aに示すように、位置決め部材180は、光学素子材料100を加熱部110の上下に分割された本体部111a,111bの間に搬送する。そして、図4Bに示すように、上側本体部111bが下降し、光学素子材料100は、位置決め部材180により連結された下側本体部111a及び上側本体部111b内で加熱ガスGにより例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。この加熱工程では、光学素子材料100は、位置決め部材180により位置決めされた状態で加熱される。
【0049】
例えばガラス転移点以上になるまで光学素子材料100が加熱されると、図4Cに示すように、上側本体部111bが上昇する。
【0050】
そして、図4Dに示すように、光学素子材料100は、位置決め部材180が移動することにより搬送され、2つの可動型121,131の間に供給される(供給工程)。その後、可動型121,131が互いに接近することにより、位置決め部材180により保持(位置決め)された状態のまま、光学素子材料100は、例えば、可動型21に最初に接触することができる(接触工程開始)。それ以降、例えば、可動型31に接触することができる(接触工程終了)。
【0051】
そして、光学素子材料100は、可動型121,131により加圧される(加圧工程)。
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット120,130のヒータ122a,132aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。
【0052】
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出されることで、位置決め部材180から分離される(分離工程)。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0053】
以上説明した本実施形態の加熱工程では、光学素子材料100は、位置決め部材180により加熱部110の内部に搬送されて加熱され、供給工程では、加熱された光学素子材料100は、位置決め部材180が移動することにより2つの可動型121,131の間に供給される。そのため、位置決め部材180によって、光学素子材料100の位置決めのみならず、光学素子材料100の搬送をも行うことができる。
【0054】
<第3実施形態>
図5A〜図5Cは、第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図である。
【0055】
本実施形態の光学素子の製造装置201は、加熱部210及び位置決め部材280において上述の第1実施形態の光学素子の製造装置1と相違し、その他の点は概ね同様であるため、相違する事項を中心に説明し、共通する事項については第1実施形態と同一の符号を図面に付して説明を適宜省略する。
【0056】
加熱部210は、本体部211と、気体供給管213と、図示しない電気コイル及び熱電対と、を有する。
本体部211は、略円筒形状を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、上端に開口する。本体部211には、正面側と背面側とで対向する2つのスリット211a,211aが上端からZ軸方向に細長く延びるように形成されている。
【0057】
2つの位置決め部材(又はピン)280は、例えば棒状を呈し、互いに対向するように光学素子材料100を保持することにより、光学素子材料100に当接して光学素子材料100を位置決めする。
【0058】
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
まず、図5Aに示すように、2つの位置決め部材280が光学素子材料100を保持して位置決めした状態(位置決め工程)のまま、加熱部210の本体部211のスリット211aに上方から挿入される。このとき、加熱部210は、2つの可動型21,31の間に位置する。
【0059】
加熱部210では、位置決めされた光学素子材料100が本体部211において加熱ガスGにより例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。この加熱工程では、2つの位置決め部材280は、光学素子材料100を保持したまま回転する。これにより、光学素子材料100が回転して均等に加熱される。
【0060】
なお、「光学素子材料100が回転して加熱される」場合には、「回転中の光学素子材料100が加熱される場合と、回転動作の前後の静止状態の光学素子材料100が加熱される場合とが含まれる。
【0061】
例えばガラス転移点以上になるまで加熱された光学素子材料100は、図5Bに示すように、2つの位置決め部材280により保持(位置決め)された状態のまま、加熱部210が下降することで、加熱部210の外部に露出する。これにより、光学素子材料100は、2つの可動型21,31の間に供給される(供給工程)。
【0062】
そして、位置決め部材280により保持(位置決め)された状態のまま、光学素子材料100は、可動型ユニット20,30のシリンダ24,34が可動型21,31を互いに接近させることで、可動型21,31に接触し(接触工程)、加圧される(加圧工程)。
【0063】
なお、接触工程において可動型21,31が光学素子材料100に接触すると(光学素子材料100が2つの可動型21,31のうちの一方または双方に接触したとき以降の一例)、図5Cに示すように、光学素子材料100に当接した位置決め部材280が互いに遠ざかるように移動して、光学素子材料100から分離する(分離工程)。
【0064】
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット20,30のヒータ22a,32aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。
【0065】
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0066】
以上説明した本実施形態の加熱工程では、2つの位置決め部材280が光学素子材料100を回転させて加熱するため、加熱工程において位置決めされることで回転しなくなる光学素子材料100を均等に加熱することができる。したがって、光学素子を高精度に製造することができる。
【0067】
<第4実施形態>
図6A〜図6Cは、第4実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための平面図及び正面図である。
【0068】
本実施形態の光学素素子の製造装置301は、2つの加熱部310、2つの加熱部移動機構350、加熱部側ベース部360、及び位置決め部材380において上述の第1実施形態の光学素子の製造装置1と相違し、その他の点は概ね同様であるため、相違する事項を中心に説明し、共通する事項については第1実施形態と同一の符号を図面に付して説明を適宜省略する。
【0069】
2つの加熱部310は、本体部311と、気体供給管313と、図示しない電気コイル及び熱電対と、を有する。
2つの本体部311は、略円筒形状を呈し、鉛直なZ軸方向に延びる長手方向を有し、互いに対向する。各本体部311の上端には、2つの切り欠き311a,311aが正面側及び背面側に対向するように形成されている。
【0070】
2つの加熱部移動機構350は、対向するように配置され、それぞれが第1実施形態と同様の加熱部支持部351、Z軸スライダ352、及びガイドプレート353を有し、加熱部310を移動させる。
【0071】
加熱部側ベース部360には、2つの加熱部移動機構350のガイドプレート353が固定されている。
2つの位置決め部材(又はピン)380は、例えば棒状を呈し、互いに対向するように光学素子材料100を保持することにより、光学素子材料100に当接して光学素子材料100を位置決めする。
【0072】
以下に光学素子材料100から光学素子を製造する流れについて説明するが、上述の説明と重複する点については適宜説明を省略する。
まず、図6Aに示すように、2つの本体部311に跨るように2つの本体部311の内部に挿入された光学素子材料100は、上下の本体部311が先端で互いに当接した状態で、2つの位置決め部材380によって保持され位置決めされる(位置決め工程)。この位置決め工程では、位置決め部材380は、上下の本体部311の連通する2つの切り欠き311a,311aを通して挿入される。なお、位置決め工程において、2つの加熱部310は、2つの可動型21,31の間に位置する。
【0073】
位置決めされた光学素子材料100は、2つの加熱部310から加熱ガスGを吹き付けられ、例えばガラス転移点以上になるまで加熱される(加熱工程)。なお、2つの加熱部310から供給される加熱ガスGは、例えば切り欠き311a或いはその他の排気孔から排出されるようにするとよい。
【0074】
例えばガラス転移点以上になるまで加熱された光学素子材料100は、図6Bに示すように、2つの位置決め部材380により保持(位置決め)された状態のまま、2つの加熱部310が互いに遠ざかるように退避することで、加熱部310の外部に露出する。これにより、光学素子材料100は、2つの可動型21,31の間に供給される(供給工程)。
【0075】
また、位置決め部材380は、加熱された光学素子材料100を90°回転させ、光学素子材料100のうち加熱ガスGの吹き付け位置を可動型21,31に対向させる。これにより、2つの可動型21,31の中心同士を結ぶ中心軸に対して光学素子材料100の温度分布が軸対称にもなる。
【0076】
そして、位置決め部材380により保持(位置決め)された状態のまま、光学素子材料100は、可動型ユニット20,30のシリンダ24,34が可動型21,31を互いに接近させることで、可動型21,31に接触し(接触工程)、可動型21,31により加圧される(加圧工程)。
【0077】
なお、接触工程において光学素子材料100が可動型21,31の双方に接触すると(光学素子材料100が2つの可動型21,31のうちの一方または双方に接触したとき以降の一例)、図6Cに示すように、光学素子材料100に当接した位置決め部材380が互いに遠ざかるように移動して、光学素子材料100から分離する(分離工程)。
【0078】
加圧工程において加圧された光学素子材料100は、可動型ユニット20,30のヒータ22a,32aの温度を降下させることにより、或いは自然冷却により、例えばガラス転移点以下になるまで加圧保持された状態のまま冷却される(冷却工程)。
【0079】
冷却工程の後、光学素子材料100(製造された光学素子)は、図示しない材料搬送部或いは搬出機構により光学素子の製造装置から搬出される。以上のようにして、光学素子が製造される。
【0080】
以上説明した本実施形態の加熱工程では、光学素子材料100を挟んで対向する2つの加熱部310が加熱ガスGを光学素子材料100に吹き付け、加圧工程では、2つの可動型21,31の中心同士を結ぶ中心軸に対して光学素子材料100の温度分布が軸対称となるように回転した後の光学素子材料100を加圧する。そのため、加熱工程において位置決めされることで回転しなくなる光学素子材料100を均等に加熱することができる。したがって、光学素子を高精度に製造することができる。
【0081】
また、本実施形態では、位置決め部材380は、加熱された光学素子材料100を例えば90°回転させ、光学素子材料100のうち2つの加熱部310による加熱ガスGの吹き付け位置を可動型21,31に対向させる。そのため、可動型21,31の成形面21a,31aに形状を転写される部分において光学素子材料100を有効に加熱することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 光学素子の製造装置
10 加熱部
11 本体部
12 電気コイル
13 気体供給管
14 熱電対
20,30 可動型ユニット
21,31 可動型
21a,31a 成形面
21b,31b フランジ部
22,32 加熱ブロック
22a,32a ヒータ
23,33 断熱ブロック
24,34 シリンダ
25,35 熱電対
40 制御部
50 加熱部移動機構
51 加熱部支持部
52 Z軸スライダ
53 ガイドプレート
60 加熱部側ベース部
71,72 可動型ユニット取付部
73 側壁
80 位置決め部材
81 貫通孔
81a 拡径部
101 光学素子の製造装置
110 加熱部
111a 下側本体部
111b 上側本体部
112 気体供給管
120,30 可動型ユニット
121,131 可動型
121a,131a 成形面
121b フランジ部
131b 小径部
122,132 加熱ブロック
122a,132a ヒータ
123,133 断熱ブロック
124,134 シリンダ
151 下側加熱部支持部
152 下側Z軸スライダ
153 上側加熱部支持部
154 上側Z軸スライダ
170 型側ベース部
171,172 可動型ユニット取付部
173 側壁
180 位置決め部材
181 貫通孔
181a 大径部
181b 小径部
182 フランジ部
201 光学素子の製造装置
210 加熱部
211 本体部
211a スリット
213 気体供給管
280 位置決め部材
301 光学素子の製造装置
310 加熱部
311 本体部
311a 切り欠き
313 気体供給管
350 加熱部移動機構
351 加熱部支持部
352 Z軸スライダ
353 ガイドプレート
360 加熱部側ベース部
380 位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部の内部において加熱ガスにより光学素子材料を加熱する加熱工程と、
加熱された前記光学素子材料を第1の成形型と第2の成形型との間に供給する供給工程と、
供給された前記光学素子材料を前記第1の成形型及び前記第2の成形型により加圧する加圧工程と、
加圧された前記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含み、
位置決め部材を前記光学素子材料に当接させて該光学素子材料を位置決めする位置決め工程を更に含み、
前記加熱工程では、前記位置決め部材により位置決めされた状態の前記光学素子材料を加熱する、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記位置決め工程では、前記加熱工程が開始する前から前記光学素子材料を位置決めする、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記供給工程後、前記加圧工程前に、前記光学素子材料が前記第1の成形型及び前記第2の成形型のいずれか一方の成形型に接触し、それ以降に該光学素子材料が他方の成形型に接触する接触工程を更に含み、
前記光学素子材料が前記一方の成形型に接触したとき以降に、前記光学素子材料に当接した前記位置決め部材を分離させる分離工程を更に含む、請求項1又は請求項2記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程では、前記位置決め部材により前記光学素子材料を回転させて加熱する、請求項1から請求項3のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、前記光学素子材料を挟んで対向する2つの前記加熱部から前記加熱ガスを前記光学素子材料に吹き付け、
前記加圧工程では、前記第1の成形型と前記第2の成形型との中心同士を結ぶ中心軸に対して前記光学素子材料の温度分布が軸対称となるように回転した後の前記光学素子材料を加圧する、請求項1から請求項4のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程では、前記位置決め部材により前記加熱部の内部に搬送された前記光学素子材料を加熱し、
前記供給工程では、加熱された前記光学素子材料を、前記位置決め部材を移動させて前記第1の成形型と前記第2の成形型との間に供給する、請求項1から請求項5のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
光学素子材料を内部において加熱ガスにより加熱する加熱部と、
前記光学素子材料を加圧する第1の成形型及び第2の成形型と、
前記光学素子材料を前記第1の成形型と前記第2の成形型との間に供給する供給部と、
前記加熱部の内部に位置する前記光学素子材料に当接して該光学素子材料を位置決めする位置決め部材と、を備える、光学素子の製造装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2013−107797(P2013−107797A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254097(P2011−254097)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)