説明

光学補償フィルム及びこれを用いた偏光板

【課題】光軸を合わせて2枚の位相差フィルムを貼り合わせるような煩雑な工程を必要とせず、かつ、安価に、光の各波長に対する位相差の制御が容易な光学補償フィルムを提供し、さらには、その光学補償フィルムを用いて製造した光学補償層付き偏光板を提供することである。
【解決手段】セルロースエステル100重量部に対して、ポリエステルポリオール1〜30重量部を含む延伸フィルムであり、特定の光学特性を満たすことを特徴とする光学補償フィルムにより達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、光ピックアップ等の光学装置に好適に用いることが可能な光学補償フィルムに関するものである。または、これを用いた偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、装置中の他の構成により生じる複屈折を補償するための光学補償フィルムが一般的に用いられている。かかる光学補償フィルムは、例えば、視野角の拡大、黒表示時の光漏れ防止等のために使用される。
【0003】
ところで、光学補償フィルムを液晶表示装置の表示画面の色味変化防止に用いるためには光の各波長に対する位相差(位相差の波長分散)が制御されていることが必要である。そのようなものの例としては、光の各波長に対し、位相差がその波長の1/4になるような位相差板(1/4波長板)等が挙げられる。このように広帯域で必要な位相差に制御されたものとしては、例えば、(波長450nmの光におけるリタデーション)/(波長550nmの光におけるリタデーション)の値及びリタデーションが異なるフィルムをそれらの光軸が交差した状態で積層された位相差板が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の例として、正の固有複屈折値を有するポリマーと負の固有複屈折値を有するポリマーの混合物から形成されるフィルムを1軸延伸して作製した1/4波長膜が挙げられる(例えば、特許文献2や非特許文献1参照)。ここで、正の固有複屈折値を有するポリマーとは、ポリマーの主鎖が延びきって理想状態まで配向した時、(ポリマー主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(ポリマー主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)>0となるポリマーであり、例えば、ポリ塩化ビニルである。また、負の固有複屈折値を有するポリマーとは、ポリマーの主鎖が延びきって理想状態まで配向した時、(ポリマー主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(ポリマー主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)<0となるポリマーであり、例えば、ポリメチルメタクリレートである。
【0005】
また、正の屈折率異方性を有する高分子化合物のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子化合物のモノマー単位とを含む高分子化合物から構成されるフィルムの例も挙げられる(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらに、他の例として、構造複屈折を利用した表面レリーフ型ホログラムが挙げられる(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、光ピックアップのような光学装置には、1/4波長板が偏光ビームスプリッタと組み合わされて用いられている。コンパクトディスクやDVDのような光ディスク媒体から情報を読み取るため、レーザーダイオードから出射した光線を偏光ビームスプリッタ、1/4波長板の順に通過させた後、光ディスク媒体の反射面に反射させて再び1/4波長板、偏光ビームスプリッタの順に光線を入射させた時、つまり偏光ビームスプリッタと1/4波長板に光線を往復入射させた時、上記1/4波長板と偏光ビームスプリッタとの組み合わせは、光ディスク媒体から反射してきた光線を復路ではレーザーダイオード側に通過させずに遮断するアイソレーター機能を発現し、レーザーダイオードの発振を安定化させる。光ディスク媒体から情報を読み取るためにコンパクトディスクでは波長780nmの光が用いられ、DVDでは波長650nmの光が用いられる。これらに加え、最近ではコンパクトディスク、DVDよりも多くの情報量が収納できるBlu−ray Disk(BD)が使用されるようになり、波長405nmの光が用いられている。したがって、これらの光ディスク媒体の全てが使用可能な再生装置では、波長780nmの光に対してはその1/4波長の195nmの位相差を有し、波長650nmの光に対しては162.5nmの位相差を有し、波長405nmの光に対しては101.3nmの位相差を有する1枚の広帯域1/4波長板が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−27118号公報
【特許文献2】特開昭56−125702号公報
【特許文献3】国際公開第00/26705号パンフレット
【特許文献4】特開昭62−212940号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】井上隆、斉藤拓、「低複屈折性プラスチックの設計」、機能材料、第7巻、第3号、p21−29、1987年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液晶表示装置の場合、例えば、最近のVA(Vertical Alignment)モードの液晶セルの複屈折を補償するためには、液晶セルの位相差の波長分散に光学補償フィルムの位相差の波長分散を合わせる必要がある。波長λ(nm)の光に対する光学補償フィルムの面内位相差をR(λ)(nm)とした時、例えば、波長447nmの光、波長548nmの光、波長628nmの光のそれぞれに対するR(447)、R(548)、R(628)が、
R(447)<R(548)<R(628) (数式A)
の関係を有する、すなわち、可視光域の光の波長が大きくなるにしたがって、R(λ)が大きくなる逆の波長分散を示す光学補償フィルムが必要であり、逆の波長分散の度合いが制御されていることが重要である。尚、本明細書では、
R(447)>R(548)>R(628) (数式B)
のように、可視光域の光の波長が大きくなるにしたがって、R(λ)が小さくなる関係を「正の波長分散」と称し、これとは逆の数式Aの関係を「逆の波長分散」と称する。また、数式Aの関係を有する光学補償フィルムのR(447)/R(548)の値を「逆の波長分散の度合い」と称し、数式Aの関係を有する2種の光学補償フィルムで逆の波長分散の度合いを比較した時、その値が小さい方を「逆の波長分散性が高い」と表現する。
【0011】
特許文献1に記載のフィルムでは、複数のフィルムの光軸の交差角度により逆の波長分散の度合いが変えられるものの、光軸の交差角度を合わせる煩雑さがある。
【0012】
また、特許文献2や非特許文献1に記載のフィルムでは、1軸延伸した時、それぞれのポリマー単位の位相差の符号が逆になるため、フィルム全体の位相差は足し合わせの結果小さくなり、必要な位相差を得るためには膜厚を厚くする必要がある。その結果、材料のコスト高や表示装置の厚みが増す等の問題が生じる。
【0013】
さらに、特許文献3に記載のフィルムでも、それぞれのモノマー単位からなる部分の位相差の符号が逆のため、フィルム全体の位相差は足し合わせの結果小さくなり、上記例と同様に必要な位相差を得るためには膜厚を厚くする必要がある。
【0014】
特許文献4に記載の技術の場合、光の波長レベルサイズに微細加工する必要があり、加工による継ぎ目のないロール状のフィルムを作製することは困難である。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光軸を合わせて2枚の位相差フィルムを貼り合わせるような煩雑な工程を必要とせず、かつ、安価に、光の各波長に対する位相差の制御が容易な光学補償フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を解決するために本発明者は鋭意研究の結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0017】
セルロースエステルフィルムは複屈折がそれほど大きくはなく、必要な面内位相差を得るためには制約を超えた膜厚を要する場合がある(面内位相差は、(面内位相差)=(複屈折)×(膜厚)で表される。)。面内位相差を大きくするためには膜厚を大きくする以外に、面内位相差の発現性の高い樹脂や添加剤を併用する方法もあるが、一般的に、面内位相差の発現性の高い樹脂は正の波長分散を示すことが多く、併用により、セルロースエステルを含むフィルムの位相差の波長分散が正の波長分散方向に導かれる場合が多い。しかしながら、セルロースエステルとポリエステルポリオールを混合使用することにより、上記の面内位相差の発現性の高い樹脂や添加剤の併用系においても逆の波長分散性を高めることができることも見出され、面内位相差と逆の波長分散性を同時に制御できることが分かった。
【0018】
すなわち本発明は、以下に関する。
【0019】
〔1〕セルロースエステル100重量部に対して、ポリエステルポリオール1〜30重量部を含む延伸フィルムであり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とする光学補償フィルム。
【0020】
1≦R(548)≦600 (数式1)
[R(447)/R(548)]<[R0(447)/R0(548)] (数式2)
(式中、R(447)は波長447nmの光に対する面内位相差(nm)、R(548)は波長548nmの光に対する面内位相差、R0(447)、R0(548)はそれぞれ、本発明の光学補償フィルムの組成からポリエステルポリオールを除いて延伸したフィルムにおける波長447nmの光に対する面内位相差、波長548nmの光に対する面内位相差を表す。)
〔2〕前記セルロースエステルは、セルロースのグルコース残基当たりの水酸基の少なくとも一つがエステル基で置換されており、複数のエステル基は同一または異なって、下記一般式(1)から選ばれる基であることを特徴とする〔1〕に記載の光学補償フィルム。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中R1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
〔3〕前記ポリエステルポリオールは二塩基酸と、アルキレングリコールと、ポリアルキレングリコールとの重縮合体であり、二塩基酸、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールがそれぞれ下記一般式(2)、(3)、(4)で表され、数平均分子量が400から20000の化合物であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の光学補償フィルム。
【0023】
【化2】

【0024】
(式中R2は、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
【0025】
【化3】

【0026】
(式中R3は、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
【0027】
【化4】

【0028】
(式中R4は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。)
〔4〕前記ポリエステルポリオールは、下記一般式(5)、(6)、(7)で表される少なくとも1種を含む化合物であることを特徴とする〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
【0029】
【化5】

【0030】
(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、p、qは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
【0031】
【化6】

【0032】
(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、r、sは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
【0033】
【化7】

【0034】
(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、t、uは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
〔5〕〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の光学補償フィルムを装着したことを特徴とする光学補償層付き偏光板。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、逆波長分散性に優れた光学補償フィルムを得ることができ、光軸を合わせて2枚の位相差フィルムを貼り合わせるような煩雑な工程を必要とせず、かつ、安価に、光の各波長に対する位相差の制御が容易な光学補償フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明は、セルロースエステル100重量部に対して、ポリエステルポリオール1〜30重量部を含む延伸フィルムであり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とする光学補償フィルムである。
【0038】
1≦R(548)≦600 (数式1)
[R(447)/R(548)]<[R0(447)/R0(548)] (数式2)
(式中、R(447)は波長447nmの光に対する面内位相差(nm)、R(548)は波長548nmの光に対する面内位相差、R0(447)、R0(548)はそれぞれ、本発明の光学補償フィルムの組成からポリエステルポリオールを除いて延伸したフィルムにおける波長447nmの光に対する面内位相差、波長548nmの光に対する面内位相差を表す。)
初めに、セルロースエステルについて説明する。本発明において使用するセルロースエステルは、例えば、各種木材パルプ、綿リンター、綿リント等から得られるセルロースを原料とし、硫酸等の酸触媒存在下でモノカルボン酸、モノカルボン酸の無水物、または、これらの混合物を反応させる既知の方法、あるいは、上記セルロースを原料とし、ピリジン、トリエチルアミン等の塩基触媒存在下でモノカルボン酸の無水物、モノカルボン酸のハライドを反応させる既知の方法により製造することができる(例えば、米国特許第2,033,820号参照)。
【0039】
反応させるモノカルボン酸の例としては、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化8】

【0041】
(式中R5は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
尚、本発明において炭素数1〜20のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を指す。
【0042】
一般式(8)で表される化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明では、上記モノカルボン酸の入手性の観点から、R5が水素原子、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、R5が水素原子、炭素数1〜16のアルキル基であることがより好ましく、R5が水素原子、炭素数1〜12のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0044】
一般式(8)で表される化合物を具体的に例示すると、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等が挙げられる。
【0045】
これら及び前記モノカルボン酸を反応して得られるセルロースエステルは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、反応させるモノカルボン酸の無水物の例としては、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【化9】

【0048】
(式中R6は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
一般式(9)で表される化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明では、上記モノカルボン酸の無水物の入手性の観点から、R6が水素原子、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、R6が水素原子、炭素数1〜16のアルキル基であることがより好ましく、R6が水素原子、炭素数1〜12のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0050】
一般式(9)で表される化合物を具体的に例示すると、無水ギ酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水ヘキサン酸、無水ヘプタン酸、無水オクタン酸、無水ノナン酸、無水デカン酸、無水ウンデカン酸、無水ドデカン酸、無水トリデカン酸、無水テトラデカン酸、無水ペンタデカン酸、無水ヘキサデカン酸、無水ヘプタデカン酸、無水オクタデカン酸等が挙げられる。
【0051】
これら及び前記モノカルボン酸の無水物を反応して得られるセルロースエステルは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
また、反応させるモノカルボン酸のハライドの例としては、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【化10】

【0054】
(式中R7は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R8は、ハロゲン原子を表す。)
尚、本発明においてハロゲン原子とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を指す。
【0055】
一般式(10)で表される化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明では、上記モノカルボン酸のハライドの入手性の観点から、R7が水素原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、R8がハロゲン原子であることが好ましく、R7が水素原子、炭素数1〜16のアルキル基であり、R8がハロゲン原子であることがより好ましく、R7が水素原子、炭素数1〜12のアルキル基であり、R8がハロゲン原子であることがさらに好ましい。
【0057】
一般式(10)で表される化合物を具体的に例示すると、フッ化ホルミル、フッ化アセチル、フッ化プロピオニル、フッ化ブチリル、フッ化イソブチリル、フッ化バレロイル、フッ化イソバレロイル、フッ化ヘキサノイル、フッ化ヘプタノイル、フッ化オクタノイル、フッ化ノナノイル、フッ化デカノイル、フッ化ウンデカノイル、フッ化ドデカノイル、フッ化トリデカノイル、フッ化テトラデカノイル、フッ化ペンタデカノイル、フッ化ヘキサデカノイル、フッ化ヘプタデカノイル、フッ化オクタデカノイル、塩化ホルミル、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化イソブチリル、塩化バレロイル、塩化イソバレロイル、塩化ヘキサノイル、塩化ヘプタノイル、塩化オクタノイル、塩化ノナノイル、塩化デカノイル、塩化ウンデカノイル、塩化ドデカノイル、塩化トリデカノイル、塩化テトラデカノイル、塩化ペンタデカノイル、塩化ヘキサデカノイル、塩化ヘプタデカノイル、塩化オクタデカノイル、臭化ホルミル、臭化アセチル、臭化プロピオニル、臭化ブチリル、臭化イソブチリル、臭化バレロイル、臭化イソバレロイル、臭化ヘキサノイル、臭化ヘプタノイル、臭化オクタノイル、臭化ノナノイル、臭化デカノイル、臭化ウンデカノイル、臭化ドデカノイル、臭化トリデカノイル、臭化テトラデカノイル、臭化ペンタデカノイル、臭化ヘキサデカノイル、臭化ヘプタデカノイル、臭化オクタデカノイル、ヨウ化ホルミル、ヨウ化アセチル、ヨウ化プロピオニル、ヨウ化ブチリル、ヨウ化イソブチリル、ヨウ化バレロイル、ヨウ化イソバレロイル、ヨウ化ヘキサノイル、ヨウ化ヘプタノイル、ヨウ化オクタノイル、ヨウ化ノナノイル、ヨウ化デカノイル、ヨウ化ウンデカノイル、ヨウ化ドデカノイル、ヨウ化トリデカノイル、ヨウ化テトラデカノイル、ヨウ化ペンタデカノイル、ヨウ化ヘキサデカノイル、ヨウ化ヘプタデカノイル、ヨウ化オクタデカノイル等が挙げられる。
【0058】
これら及び前記モノカルボン酸のハライドを反応して得られるセルロースエステルは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
また、セルロースはその構成単位であるグルコース残基当たり3個の水酸基を有している。したがって、これらの水酸基を置換する場合に、グルコース残基当たりの置換度(以下、DSと称する)は最大3になる。本発明においては、DSの下限は好ましくは1.0、より好ましくは1.5、さらに好ましくは1.9であり、上限は3がより好ましい。DSが1.0より低いと、例えば、溶液キャストによって延伸前のフィルムを形成する際、溶媒に溶け難くなる傾向がある。本発明では、DSが異なるセルロースエステルの2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0060】
本発明のセルロースエステルは、セルロースのグルコース残基当たりの水酸基の少なくとも一つがエステル基で置換されており、複数のエステル基は同一または異なって、下記一般式(1)から選ばれる基であることが好ましい。
【0061】
【化11】

【0062】
(式中R1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
さらに、セルロースエステルの数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは1000000、より好ましくは500000、さらに好ましくは300000である。数平均分子量が5000より小さいとフィルムの強度が低下する傾向があり、数平均分子量が1000000より大きいと製膜時の加工性が劣る傾向がある。尚、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なるセルロースエステルの2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0063】
次に、ポリエステルポリオールについて説明する。本発明において使用するポリエステルポリオールは、二塩基酸と、アルキレングリコールと、ポリアルキレングリコールとをテトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどの有機チタネート等の触媒存在下で重縮合反応させる既知の方法により製造することができる(例えば、特開昭47−25295参照)。
【0064】
二塩基酸の例としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化12】

【0066】
(式中R2は、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
尚、本発明において炭素数1〜10のアルキレン基とは、例えば、メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,1−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、2,2−プロピレン基、1,1−ブチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2,2−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,1−ペンチレン基、1,2−ペンチレン基、1,3−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、1,1−ヘキシレン基、1,2−ヘキシレン基、1,3−ヘキシレン基、1,4−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−へプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,2−シクロヘキサンジメチレン基、1,3−シクロヘキサンジメチレン基、1,4−シクロヘキサンジメチレン基等を指す。
【0067】
本発明では、一般式(2)で表される化合物の入手性の観点から、R2が炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、R2が炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、R2が炭素数1〜6のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0068】
一般式(2)で表される化合物を具体的に例示すると、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
【0069】
また、アルキレングリコールの例としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化13】

【0071】
(式中R3は、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
本発明では、一般式(3)で表される化合物の入手性の観点から、R3が炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、R3が炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、R3が炭素数1〜6のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0072】
一般式(3)で表される化合物を具体的に例示すると、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,2−ペンチレングリコール、1,3−ペンチレングリコール、1,4−ペンチレングリコール、1,5−ペンチレングリコール、1,2−ヘキシレングリコール、1,3−ヘキシレングリコール、1,4−ヘキシレングリコール、1,5−ヘキシレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,7−ヘプチレングリコール、1,8−オクチレングリコール、1,9−ノニレングリコール、1,10−デシレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0073】
また、ポリアルキレングリコールの例としては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【化14】

【0075】
(式中R4は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。)
本発明では、一般式(4)で表される化合物の入手性の観点から、R4が炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、R4が炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、R4が炭素数1〜6のアルキレン基であることがさらに好ましい。また、同様に化合物の入手性の観点から、nが下限2、上限20の整数であることが好ましく、nが下限3、上限15の整数であることがより好ましく、nが下限4、上限10の整数であることがさらに好ましい。
【0076】
一般式(4)で表される化合物を具体的に例示すると、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール、ポリノナメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール等が挙げられる。
【0077】
上記の二塩基酸と、アルキレングリコールと、ポリアルキレングリコールとを重縮合反応して得られるポリエステルポリオールは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記のポリエステルポリオールの構造を例示すると、下記一般式(5)、(6)、(7)で表され、本発明ではこれらの構造を有する化合物を単独、または、2種以上の混合物として用いることができる。
【0079】
【化15】

【0080】
(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、p、qは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
【0081】
【化16】

【0082】
(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、r、sは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
【0083】
【化17】

【0084】
(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、t、uは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
尚、上記一般式(5)、(6)、(7)で表される化合物は、両末端に構造式に示したアルキレングリコール由来の末端基及び/またはポリアルキレングリコール由来の末端基を有していれば、分子鎖中の二塩基酸と、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールのエステル結合による配列はランダムであっても規則性があってもよい。
【0085】
本発明では、製造時の化合物の入手性の観点から、R2、R3、R4が同一または異なって、1〜10のアルキレン基であることが好ましく、R2、R3、R4が同一または異なって、炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、R2、R3、R4が同一または異なって、炭素数1〜6のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0086】
また、同様に製造時の化合物の入手性の観点から、nが下限2、上限20の整数であることが好ましく、nが下限3、上限15の整数であることがより好ましく、nが下限4、上限10の整数であることがさらに好ましい。
【0087】
また、p、qが同一または異なって、下限1、上限40の整数であることが好ましく、p、qが同一または異なって、下限2、上限30の整数であることがより好ましく、p、qが同一または異なって、下限3、上限20の整数であることがさらに好ましい。p、qが40より大きいと前記セルロースエステルとの相溶性が低下する傾向がある。
【0088】
また、r、sが同一または異なって、下限1、上限40の整数であることが好ましく、r、sが同一または異なって、下限2、上限30の整数であることがより好ましく、r、sが同一または異なって、下限3、上限20の整数であることがさらに好ましい。r、sが40より大きいと前記セルロースエステルとの相溶性が低下する傾向がある。
【0089】
また、t、uが同一または異なって、下限1、上限40の整数であることが好ましく、t、uが同一または異なって、下限2、上限30の整数であることがより好ましく、t、uが同一または異なって、下限3、上限20の整数であることがさらに好ましい。t、uが40より大きいと前記セルロースエステルとの相溶性が低下する傾向がある。
【0090】
一般式(5)、(6)、(7)で表される化合物を具体的に例示すると、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,2−エチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4
が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,4−ブチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,6−ヘキシレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2
−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−エチレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−エチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,2−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,3−プロピレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,4−ブチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,6−ヘキシレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが2の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが4の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが6の化合物、R2が1,8−オクチレン基、R3が1,8−オクチレン基、R4が1,2−プロピレン基、nが8の化合物等が挙げられる。
【0091】
本発明では、ポリエステルポリオールは、セルロースエステル100重量部に対して、下限1重量部、上限30重量部の範囲で用いることが必要である。下限2重量部、上限25重量部の範囲で用いるのがより好ましく、下限3重量部、上限20重量部の範囲で用いるのがさらに好ましい。ポリエステルポリオールが1重量部より少ない場合は、ポリエステルポリオールを用いない延伸フィルムと比べて、逆の波長分散の度合いが高まり難くなる傾向があり、30重量部より多い場合は、延伸倍率を上げてもフィルムの面内位相差が上がり難くなる傾向がある。
【0092】
また、ポリエステルポリオールの数平均分子量の下限は400であり、より好ましくは500、さらに好ましくは600であり、上限は20000であり、より好ましくは15000、さらに好ましくは10000である。数平均分子量が400より小さいと併用時にセルロースエステルフィルムの強度が低下する傾向があり、数平均分子量が20000より大きいと前記セルロースエステルとの相溶性が低下する傾向がある。尚、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なるポリエステルポリオールの2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0093】
尚、上記のポリエステルポリオールはウレタン樹脂製造時の原料として市販品を入手することもできる。
【0094】
次に、本発明の光学補償フィルム(本願明細書においてフィルムとは、厚さに関わらず、薄板状のものを指すものとする)について説明する。
【0095】
初めに、本発明の光学補償フィルムの製造方法について説明する。
【0096】
製造方法としては、溶融キャスト法または溶液キャスト法を用いることができる。溶融キャスト法を用いる場合、溶融押出してフィルム状に成形後、縦1軸延伸、横1軸延伸、縦横同時2軸延伸、縦横逐次2軸延伸、斜め延伸等の延伸を行うことにより、本発明の光学補償フィルムとすることができる。また、溶液キャスト法を用いる場合、前記セルロースエステルが溶解可能な溶媒に溶かし、この溶液を剥離性基板上に塗布・乾燥した後、形成したフィルムを剥がして、縦1軸延伸、横1軸延伸、縦横同時2軸延伸、縦横逐次2軸延伸、斜め延伸等の延伸を行うことにより本発明の光学補償フィルムとすることができる。剥離性基板上に形成したフィルムを剥がさずに剥離性基板といっしょに、縦1軸延伸、横1軸延伸、縦横同時2軸延伸、縦横逐次2軸延伸、斜め延伸等の延伸を行い、その後、剥離性基板から剥がして本発明の光学補償フィルムとすることもできる。
【0097】
上記溶液キャスト時の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼンの異性体混合物等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1,1−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸n−ヘキシル、酢酸n−ヘプチル、酢酸n−オクチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン等のアミド系溶媒;ピロリジン、ピペリジン、ピロール等のアミン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも前記セルロースエステルの溶解性の観点から、塩化メチレン、クロロホルムが好ましい。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
溶媒量は、前記セルロースエステルと溶媒の総重量に対する前記セルロースエステルの割合が下限1重量%、上限50重量%の範囲で用いるのが好ましく、下限2重量%、上限40重量%の範囲で用いるのがより好ましく、下限3重量%、上限30重量%の範囲で用いるのがさらに好ましい。前記セルロースエステルの割合が1重量%より小さい場合は溶液キャスト時の膜厚が薄くなり、必要な膜厚が得られ難くなる傾向があり、50重量%より大きい場合は溶液キャスト時の溶液の粘度が高くなり、作業性が劣る傾向がある。
【0099】
また、上記剥離性基板としては、塗布・乾燥後のフィルムまたは延伸後のフィルムの剥離性を有するものであり、フィルム形成時に該基板の物性が損なわれるものでなければ特に限定されるものではない。剥離性基板を形成する具体的な化合物の例としては、ポリカーボネート系重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル;アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合体又はラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系重合体;アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリエーテルイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリフェニレンオキシド;ポリアリレート;ポリアセタール;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂;鉄、アルミニウム、銅等の金属、ガラス等が挙げられる。
【0100】
これらの材料は、例えば溶液流延法、溶融流延法、押出法、カレンダー法、圧延、溶融成型等によりシート状に成形し、無延伸、または一軸延伸法、二軸延伸法等により延伸し、剥離性基板として用いることができる。前記化合物の中では、成形品の高温使用時の熱収縮率が低い、または比較的低く、安定性がよいことから、ポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合体)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールの重縮合体)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアリレート;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;鉄、アルミニウム、銅等の金属、ガラス等が好ましい。
【0101】
また、剥離性基板作製後、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキル四級アンモニウム塩、リン酸エステル、流動パラフィン、ワックス、高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルコール、ビスアミド類、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物等の外部離型剤を片面又は両面に塗布し、形成したフィルムの剥離性を向上させた剥離性基板とすることができる。さらに、前記剥離性基板作製用化合物に、該外部離型剤を内部離型剤として添加した後、上記成形を行うことにより、膜の剥離性を向上させた剥離性基板とすることもできる。
【0102】
また、前記セルロースエステルを溶かした溶液を剥離性基板上に塗布してフィルムを形成する方法としては、グラビヤロールコート法、マイヤーバーコート法、ドクターブレードコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カレンダーコート法、スキーズコート法、キスコート法、バーコート法、スロットダイコート法、スピンコート法等が挙げられる。
【0103】
また、この塗布後の乾燥方法としては、例えば空気中または窒素等の不活性ガス中に放置(風乾)する方法、熱風オーブン、赤外線加熱炉等で加熱乾燥する方法、真空乾燥機等で減圧乾燥する方法等により、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
【0104】
乾燥温度条件としては、定温、多段階昇温のいずれも用いることができる。定温の場合、下限5℃、上限200℃の温度範囲が好ましく、下限10℃、上限190℃がより好ましく、下限15℃、上限180℃がさらに好ましい。乾燥温度が5℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、200℃より高いと形成したフィルムや剥離性基板の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。このような定温乾燥を用いることができるが、効果的に乾燥させるためには多段階に温度を上げることが好ましく、経済的観点から1次乾燥、2次乾燥の2段乾燥が特に好ましい。
【0105】
2段乾燥を行う場合、1次乾燥は、下限5℃、上限40℃の温度範囲が好ましく、下限10℃、上限35℃がより好ましく、下限15℃、上限30℃がさらに好ましい。また、その乾燥時間は3分以上であることが好ましい。1次乾燥温度が5℃より低いと形成したフィルムが発泡しないようにするための初期乾燥時間が長くなる傾向があり、40℃より高いと発泡し易くなる傾向がある。
【0106】
2次乾燥においては、下限60℃、上限200℃の温度範囲が好ましく、下限70℃、上限190℃がより好ましく、下限80℃、上限180℃がさらに好ましい。2次乾燥温度が60℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、200℃より高いと形成したフィルムや剥離性基板の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0107】
さらに、前記セルロースエステルを溶かした溶液を剥離性基板に塗布後、溶媒の蒸気にさらして形成したフィルムをアニーリングした後、上記の乾燥を行うことにより延伸前のフィルムの形成方法とすることもできる。
【0108】
次に、本発明の光学補償フィルムにおいて、面内位相差を発現し易くするために併用可能な樹脂について説明する。当該添加することが可能な樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアリレート;ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。
【0109】
本発明では、上記樹脂の2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。これらの樹脂は本発明の目的及び光学補償フィルムの透明性を損なわない範囲において添加することができる。
【0110】
また、上記樹脂の数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは1000000、より好ましくは500000、さらに好ましくは300000である。数平均分子量が5000より小さいと併用した際、フィルムの強度が低下する傾向があり、数平均分子量が1000000より大きいと製膜時の加工性が劣る傾向がある。尚、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なる同種の上記樹脂の2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
【0111】
次に、本発明の光学補償フィルムの特性を改質する目的で加えることが可能な添加剤について説明する。添加剤としては、酸化防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGANOX 1010、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330等のヒンダードフェノール類)、加工安定剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製HP−136、IRGANOX E201、IRGAFOS 168等)、光安定剤(例えば、三共ライフテック製サノールLS−765、サノールLS−770等のヒンダードアミン類)、紫外線吸収剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製TINUVIN P、TINUVIN 213、TINUVIN 326等のベンゾトリアゾール類)、接着性改良剤(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤)、シラノール縮合触媒(例えば、川研ファインケミカル製アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM等のアルミニウムキレート類)、可塑剤(例えば、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジn−オクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル類)、界面活性剤(例えば、住友スリーエム製Fluorad FC−430、Fluorad FC−4430等のフッ素系化合物)、帯電防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGASTAT P18、IRGASTAT P22等)等が挙げられ、これらは本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0112】
次に、本発明の光学補償フィルムの特性について説明する。
【0113】
液晶セル等の複屈折による位相差を光学補償する場合、本発明の光学補償フィルムの面内位相差は548nmの光による測定において、下限1nm、上限600nmが好ましく、下限10nm、上限500nmがより好ましく、下限20nm、上限400nmがさらに好ましい。面内位相差が1nmより小さい、または、600nmより大きいと液晶セル等の複屈折による位相差の補償が困難になる傾向がある。また、本発明の光学補償フィルムの波長447nmの光に対する面内位相差をR(447)(nm)、波長548nmの光に対する面内位相差をR(548)(nm)とした時、
[R(447)/R(548)]<[R0(447)/R0(548)] (数式2)
(式中、R0(447)、R0(548)はそれぞれ、本発明の光学補償フィルムの組成からポリエステルポリオールを除いて延伸したフィルムにおける波長447nmの光に対する面内位相差、波長548nmの光に対する面内位相差を表す。)
の関係を満たす。[R(447)/R(548)]が[R0(447)/R0(548)]と同等以上の場合、逆の波長分散を示す液晶セルの複屈折の補償が困難になる傾向がある。
【0114】
次に、本発明の偏光板について説明する。偏光板としては、例えば、偏光子の両面にポリエステル系接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等の接着剤を用いて保護材を貼り合わせたもの等が挙げられる。偏光子の例としては、親水性高分子フィルムにヨウ素及び/または二色性染料を吸着配向して作製した偏光子、ポリビニルアルコール系フィルムを脱水処理してポリエンを形成させ、配向して作製した偏光子、ポリ塩化ビニルフィルムを脱塩酸処理してポリエンを形成させ、配向して作製したものが挙げられる。偏光子に使用される親水性高分子フィルムとしては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物フィルム等が挙げられる。保護材としては、両面に本発明の光学補償フィルムを用いることもできるし、片面に本発明の光学補償フィルムを使用し、反対の面には他の透光性フィルムを用いることもできる。
【0115】
透光性フィルムとしては、透明であり、面内位相差が10nm以下であれば各種のものが使用可能である。透光性フィルムを形成する具体的な化合物の例としては、ポリカーボネート系重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル;アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合体またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系重合体;アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;アセチル基による置換度が2から3のセルロースアセテート等のセルロースエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアリレート;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;国際公開第01/37007号パンフレットに記載される化合物等が挙げられる。
【0116】
また、これらの偏光板、または、両面に透光性フィルムが保護材として用いられた偏光板に本発明の光学補償フィルムを別途、設けることもできる。
【0117】
尚、保護材として、片面に上記透光性フィルムを使用し、反対の面に本発明の光学補償フィルムの一つである1/4波長板を、偏光子の吸収軸に対し、1/4波長板の遅相軸が45度になるように貼り合わせたものや、両面に透光性フィルムが保護材として用いられた偏光板に本発明の光学補償フィルムの一つである1/4波長板を、偏光板の吸収軸に対し、1/4波長板の遅相軸が45度になるように貼り合わせたもののように、偏光板(偏光子)と1/4波長板を組み合わせたものは特に、円偏光板とも呼ばれる。
【0118】
次に、本発明の光学補償フィルム及び偏光板が使用できる液晶表示装置の例について説明する。液晶表示装置としては、例えば、光源/導光板/光拡散フィルム/レンズフィルム/輝度向上フィルム/偏光板/液晶セル/偏光板の順に構成された表示装置等が挙げられるが、液晶セルの入射光側及び/または出射光側に本発明の光学補償フィルムを装着すること及び/または液晶セルの入射光側及び/または出射光側の偏光板に本発明の偏光板を装着することができる。液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式等挙げられる。
【0119】
尚、本発明の光学補償フィルム、該光学補償フィルムを用いて製造した偏光板は、TN方式、VA方式、IPS方式、OCB方式等の液晶セルを用いた液晶表示装置の視野角拡大、黒表示時の光漏れ防止用途に使用できる。本発明における光学補償フィルムの光学特性の性能を十分に発揮するためには、VA方式、IPS方式が特に好ましい。また、本発明の光学補償フィルム、該光学補償フィルムを用いて製造した偏光板は、ビデオ、カメラ、携帯電話、パソコン、テレビ、モニター、自動車のインパネ等の液晶表示装置作製部品等に好適に使用できる。
【実施例】
【0120】
以下に、本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0121】
(1)面内位相差(R(447),R(548),R(628),R0(447),R0(548),R0(628))の測定
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、25℃下で波長447nmの光、波長548nmの光、波長628nmの光により測定した。尚、R(λ)は、波長λ(nm)の光に対する本発明の光学補償フィルムの面内位相差を示し、R0(λ)は本発明の光学補償フィルムの組成からポリエステルポリオールを除いて延伸したフィルムの面内位相差を示す。
【0122】
(2)フィルムの厚み測定
アンリツ製電子マイクロメータを用いてフィルムの厚みを求めた。
【0123】
(実施例1)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基置換度:0.1,プロピオニル基置換度DS:2.6)10.0gとプロピレングリコール(以下PGと称する)、ポリエチレングリコール(以下PEGと称する)、コハク酸(以下SAと称する)からなる市販のポリエステルポリオール(数平均分子量:3500,PGとPEGのエチレングリコール単位とSAのモル比が12:67:21)1.0gを混合し、塩化メチレン56.7gを加えて25℃下で溶解した。
【0124】
次に、この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して塗布基板とした後、25℃で17時間、空気中で静置乾燥した。その後、塗布基板から塗布フィルムを剥がして60℃で5分間、続いて、120℃で30分間、空気中で乾燥した後、160℃で1.41倍、自由端縦1軸延伸して光学補償フィルムとした後、物性測定を行った。その結果を表1に示した。これは、表2に示した、上記ポリエステルポリオールを用いない比較例1の結果より逆の波長分散性が高くなっている。
【0125】
(実施例2)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基置換度DS:0.1,プロピオニル基置換度DS:2.6)3.726g、エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD型Premium FPグレード,品番:100,数平均分子量:63400,エチル基置換度:2.5)0.324g、実施例1に示したポリエステルポリオール0.405gを混合し、塩化メチレン24.0gを加えて25℃下で溶解した。
【0126】
次に、この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して塗布基板とした後、25℃で17時間、空気中で静置乾燥した。その後、塗布基板から塗布フィルムを剥がして60℃で5分間、続いて、120℃で30分間、空気中で乾燥した後、155℃で1.60倍、自由端縦1軸延伸して光学補償フィルム(1/4波長板)とした後、物性測定を行った。その結果を表1に示した。これは、表2に示した、上記ポリエステルポリオールを用いない比較例2の結果より逆の波長分散性が高くなっている。尚、表2に示した比較例3の結果から、実施例2で用いたエチルセルロースはわずかに正の波長分散を示し、逆の波長分散性を高めるものではないことがわかる。このことは、エチルセルロースを混合したセルロースアセテートプロピオネート延伸フィルム(比較例2)とセルロースアセテートプロピオネート単体の延伸フィルム(比較例1)を比べた時、比較例2の方が逆の波長分散性が低下していることからもわかる。
【0127】
【表1】

【0128】
(比較例1)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基置換度DS:0.1,プロピオニル基置換度DS:2.6)10.0gに塩化メチレン56.7gを加えて25℃下で溶解した。
【0129】
次に、この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して塗布基板とした後、25℃で17時間、空気中で静置乾燥した。その後、塗布基板から塗布フィルムを剥がして60℃で5分間、続いて、120℃で30分間、空気中で乾燥した後、160℃で1.34倍、自由端縦1軸延伸し、物性測定を行った。その結果を表2に示した。
【0130】
(比較例2)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基置換度DS:0.1,プロピオニル基置換度DS:2.6)3.726g、エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD型Premium FPグレード,品番:100,数平均分子量:63400,エチル基置換度:2.5)0.324gを混合し、塩化メチレン24.0gを加えて25℃下で溶解した。
【0131】
次に、この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して塗布基板とした後、25℃で17時間、空気中で静置乾燥した。その後、塗布基板から塗布フィルムを剥がして60℃で5分間、続いて、120℃で30分間、空気中で乾燥した後、155℃で1.31倍、自由端縦1軸延伸し、物性測定を行った。その結果を表2に示した。
【0132】
(比較例3)
エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD型Premium FPグレード,品番:100,数平均分子量:63400,エチル基置換度:2.5)3.37gに塩化メチレン47.8gを加えて25℃下で溶解した。
【0133】
次に、この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムといっしょに155℃で1.18倍、自由端縦1軸延伸し、塗布フィルムを剥離して物性測定を行った。その結果を表2に示した。
【0134】
【表2】

【0135】
(実施例3)
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を含浸させ、延伸することにより偏光子を作製した。この偏光子の両面にポリアクリル系接着剤を用いて80μm厚の市販のセルロースアセテートフィルム(偏光子保護フィルム)を貼り合わせて偏光板とした。さらに、この偏光板の片面に実施例2で作製した1/4波長板を、偏光板の吸収軸に対し、1/4波長板の遅相軸が45度の角度となるようにポリアクリル系接着剤を用いて貼り合わせ、円偏光板(光学補償層付き偏光板)を作製した。
【0136】
作製した円偏光板の性能確認は、円偏光板を鏡面上に置き、偏光板側から自然光を入射して反射光を観察することにより行った。反射光は青みや赤みはなく、黒褐色であり、可視光域全般の反射防止機能を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル100重量部に対して、ポリエステルポリオール1〜30重量部を含む延伸フィルムであり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とする光学補償フィルム。
1≦R(548)≦600 (数式1)
[R(447)/R(548)]<[R0(447)/R0(548)] (数式2)
(式中、R(447)は波長447nmの光に対する面内位相差(nm)、R(548)は波長548nmの光に対する面内位相差、R0(447)、R0(548)はそれぞれ、本発明の光学補償フィルムの組成からポリエステルポリオールを除いて延伸したフィルムにおける波長447nmの光に対する面内位相差、波長548nmの光に対する面内位相差を表す。)
【請求項2】
前記セルロースエステルは、セルロースのグルコース残基当たりの水酸基の少なくとも一つがエステル基で置換されており、複数のエステル基は同一または異なって、下記一般式(1)から選ばれる基であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
【化1】

(式中R1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールは二塩基酸と、アルキレングリコールと、ポリアルキレングリコールとの重縮合体であり、二塩基酸、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールがそれぞれ下記一般式(2)、(3)、(4)で表され、数平均分子量が400から20000の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学補償フィルム。
【化2】

(式中R2は、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
【化3】

(式中R3は、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
【化4】

(式中R4は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。)
【請求項4】
前記ポリエステルポリオールは、下記一般式(5)、(6)、(7)で表される少なくとも1種を含む化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
【化5】

(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、p、qは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
【化6】

(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、r、sは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
【化7】

(式中R2、R3、R4は同一または異なって、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは2〜20の整数を表す。また、t、uは同一または異なって、1〜40の整数を表す。)
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学補償フィルムを装着したことを特徴とする光学補償層付き偏光板。

【公開番号】特開2011−17932(P2011−17932A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162912(P2009−162912)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】