説明

光記録用組成物、光記録媒体及びその製造方法

【課題】 高多重記録が可能な厚膜の記録層を容易に形成でき、塗布液などの管理が容易で、かつ、悪臭や環境毒性を伴わない優れた光記録用組成物及び該光記録用組成物からなる光記録媒体並びにその製造方法を提供すること。
【解決手段】 エポキシド化合物及び硬化剤の混合により形成されるマトリックスポリマー及び不飽和炭素結合を有する重合性モノマーと、感光性重合開始剤とを含み、前記硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸無水物、ポリアミド、カルボン酸化合物のブロック化合物、カルボン酸無水物化合物のブロック化合物、ポリアミド化合物のブロック化合物、カルボン酸の誘導体、カルボン酸無水物の誘導体、及びポリアミドの誘導体から選ばれる少なくともいずれかを含むことを特徴とする光記録用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを利用して情報を記録する光記録媒体に用いられ、高感度であり、かつ高多重記録が可能な光記録用組成物、光記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度画像データ等の大容量の情報を書き込み可能な記録媒体の一つとして光記録媒体が挙げられる。この光記録媒体としては、例えば、光磁気ディスク、相変化型光ディスク等の書換型光記録媒体やCD−R等の追記型光記録媒体については既に実用化されているが、光記録媒体の更なる大容量化に対する要求は高まる一方である。しかし、従来より提案されている光記録媒体は全て二次元記録であり、記録容量の増大化には限界があった。そこで、近時、三次元的に情報を記録可能なホログラム型に対応する光記録用組成物を用いた光記録媒体が注目されている。
【0003】
前記光記録用組成物として、例えば、イソシアネートとポリオールを用い、該光記録用組成物がイソシアネートとポリオールの反応によりポリウレタンポリマーを系中にて形成する方法であり、該記録層を積層する時点では液状、然るべき後に自発的に硬化するため、ホログラムに必要な所望の厚みの記録層を形成することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記イソシアネートを用いたマトリックス形成システムにおいては、前記イソシアネートが極めて高い加水分解性を有し、かつ、加水分解反応により炭酸ガスとアミンを生成するため、例えば、生じた炭酸ガスにより層に泡状の故障を生じたり、生じたアミンにより反応が急激に加速され予想外の発熱を生じたりするために、液の保存管理や、混合後のロット管理などのハンドリングが極めて困難であるという問題がある。また、硬化による収縮が大きく、適用可能な製造方法が極めて限定されるという問題もある。
一方、同様のマトリックス形成システムとして、エポキシ化合物と、メルカプタン化合物若しくはポリアミン化合物との反応を用いた方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。このシステムでは、化合物の加水分解性が比較的低く、また、例え加水分解が起きてもガス発生や望まざる硬化の加速が起こらないという利点がある。また、一般には、硬化に伴う体積収縮が比較的小さく、得られる光記録媒体の寸法安定性がよいとされている。
しかしながら、一般にメルカプタン化合物やポリアミン化合物はエポキシド化合物との反応性が高く、混合した状態では前記イソシアネートを用いたマトリックス形成システムと同様に、長期の保存ができないという問題がある。また、前記メルカプタン化合物および前記ポリアミン化合物は極めて不快な悪臭を伴い、特に、該ポリアミン化合物は環境毒性が懸念されるという問題もある。
【0004】
したがって、高多重記録が可能な厚膜の記録層を容易に形成でき、塗布液などの管理が容易で、かつ、悪臭や環境毒性を伴わない光記録用組成物及び該光記録用組成物からなる光記録媒体は未だ実現されておらず、その速やかな提供が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特表2004−537620号公報
【特許文献2】特開平11−352303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高多重記録が可能な厚膜の記録層を容易に形成でき、塗布液などの管理が容易で、かつ、悪臭や環境毒性を伴わない優れた光記録用組成物及び該光記録用組成物からなる光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> エポキシド化合物及び硬化剤の混合により形成されるマトリックスポリマーと、不飽和炭素結合を有する重合性モノマーと、感光性重合開始剤とを含み、前記硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸無水物、ポリアミド、カルボン酸化合物のブロック化合物、カルボン酸無水物化合物のブロック化合物、ポリアミド化合物のブロック化合物、カルボン酸の誘導体、カルボン酸無水物の誘導体、及びポリアミドの誘導体から選ばれる少なくともいずれかを含むことを特徴とする光記録用組成物である。
<2> エポキシド化合物が、クリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、不飽和炭化水素の酸化により合成されるアルキルオキサイド類及びこれらの化合物の誘導体からなる前記<1>に記載の光記録用組成物である。
<3> 重合性モノマーが、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物、スチレン化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物から選択される少なくともいずれかを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の光記録用組成物である。
<4> 感光性重合開始剤が、感光性ラジカル重合開始剤、感光性カチオン重合開始から選択される少なくともいずれかを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の光記録用組成物である。
<5> 光記録用組成物の全固形分中の重合性モノマーの含有量が、1〜20質量%、感光性重合開始剤の含有量が、0.1〜10質量%である前記<1>から<4>のいずれかに記載の光記録用組成物である。
【0008】
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の光記録用組成物を含む記録層を有することを特徴とする光記録媒体である。
<7> 第一の基板と、記録層と、フィルタ層と、第二の基板とをこの順に有する前記<5>に記載の光記録媒体である。
<8> フィルタ層が、第一の光を透過し、第二の光を反射する前記<6>から<7>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<9> 基板が、サーボピットパターンを有する前記<6>から<8>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<10> サーボピットパターン表面に反射膜を有する前記<9>に記載の光記録媒体である。
<11> 反射膜が、金属反射膜である前記<9>に記載の光記録媒体である。
<12> フィルタ層と反射膜との間に、第二の基板表面を平滑化するための第一ギャップ層を有する前記<6>から<11>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<13> 記録層とフィルタ層との間に、第二ギャップ層を有する前記<6>から<12>のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0009】
<14> 可干渉性を有する情報光及び参照光を前記<6>から<8>に記載の光記録媒体に照射し、前記情報光と前記参照光とにより干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録することを特徴とする光記録方法である。
<15> 情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、光記録媒体に前記情報光及び前記参照光を照射し、該情報光と該参照光との干渉による干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録する前記<14>に記載の光記録方法である。
【0010】
<16> 可干渉性を有する情報光及び参照光を前記<6>から<15>のいずれかに記載の光記録媒体に照射し、前記情報光と前記参照光とにより干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録することを特徴とする光記録装置である。
<17> 前記<1>から<5>に記載の光記録用組成物を調製する組成物調製工程と、前記光記録用組成物からなる記録層を基材上に積層する記録層積層工程とを含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、高多重記録が可能な厚膜の記録層を容易に形成でき、塗布液などの管理が容易で、かつ、悪臭や環境毒性を伴わない優れた光記録用組成物及び該光記録用組成物からなる光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(光記録用組成物)
本発明の光記録用組成物は、エポキシド化合物及び硬化剤の混合により形成されるマトリックスポリマーと、不飽和炭素結合を有する重合性モノマーと、感光性重合開始剤と、必要に応じて適宜選択したその他の化合物とを含む光記録用組成物である。
【0013】
−マトリックスポリマー−
前記マトリックスポリマーは、前記エポキシド化合物及び前記硬化剤を混合し、厚膜を形成することができるin situマトリックス形成反応形成により得られる。
前記混合とは、前記混合とは、別途用意したエポキシド含有組成物と、硬化剤含有組成物とを合一・攪拌し均一な組成物を得ることを指す。この混合により、エポキシド化合物と硬化剤とが同一組成物内に含まれることとなり、事実上硬化反応可能な状態が作り出される。この状態から、ある温度条件で一定時間処理すると、エポキシド化合物と硬化剤とが組成物中で化学反応して、ゲル状の前記マトリックスポリマーが形成される。前記液混合時まで、および混合から上記化学反応の終結に至る間の素材の加水分解性は小さく、ハンドリングは極めて良好であり液管理が容易になるという効果がある。
なお、ここでいう「ゲル」とは、「あらゆる溶媒に不溶の、三次元構造を有するポリマー固体又はその膨潤体」をいう。
【0014】
前記マトリックスポリマーとしては、後述のエポキシド化合物と硬化剤及び硬化触媒によって形成されるマトリックスポリマーが用いられる。複数のエポキシド化合物と複数の硬化剤によってマトリックスポリマーが形成されていてもよいが、マトリックスポリマー全体としては均一かつ単一の相で構成されていることが好ましい。均一かつ単一の相で構成されているか否かは、各種測定方法によりガラス転移点を計測し、それが単一であることを基準にしてもよいし、マトリックスポリマーのレーリー比を測定し、ホログラム形成に有効な波長の90゜光散乱におけるレーリー比が約7×10−3以下であることを基準にしてもよい。また、レーザー顕微鏡により、マトリックスポリマーの相分離による屈折率変調が全く見られないことを基準としてもよい。
【0015】
前記エポキシド化合物と前記硬化剤の前記マトリックスポリマーの全固形分中の含有量の比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記エポキシド化合物を1とした場合、前記硬化剤は、0.5〜1.5の範囲が好ましく、0.7〜1.3の範囲が更に好ましく、0.8〜1.2の範囲が特に好ましい。この範囲において、硬化反応後も未反応のエポキシドまたは硬化剤が過剰に残存することを防ぎ、結果として、例えば、マトリックスポリマー自身の流動により目的の形状を保つことができないといった問題、また、エポキシド化合物または硬化剤が経時により分解変性して光記録用組成物としての機能を失わせたりする弊害を回避することが可能となる。
前記マトリックスポリマーの光記録用組成物の全固形分中の含有量は、60〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、80〜90質量%が特に好ましい。この範囲において、その他の成分により記録層全体が流動的となって目的の形状及び、記録した屈折率像の形状を保持することができなくなる現象を防止することができ、また、重合性モノマーを十分に含有し得ることによって、多重記録性能を高めることが可能である。
【0016】
―エポキシド化合物―
前記エポキシド化合物は、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、不飽和炭化水素の酸化により合成されるアルキルオキサイド類およびこれらの化合物の誘導体からなる化合物である。経時黄変防止のため、エポキシド化合物には芳香環を含まないことが望ましい。具体例としては、グリシジルエーテル類として、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、および、これらの化合物のポリエチレンオキサイド変性物、ポリプロピレンオキサイド変性物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラヒドロフランジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールトリオールトリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールトリオールトリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
前記グリシジルエステル類として、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチル化ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロピロメリット酸などの芳香族ジカルボン酸水素添加物のグリシジルエステル、コハク酸、アルケニルコハク酸、ナジック酸、メチルナジック酸、マレイン化脂肪酸、ドデセニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類のグリシジルエステル化合物、及びこれらのポリエチレンオキサイド変性物、ポリプロピレンオキサイド変性物などが挙げられる。
【0018】
前記グリシジルアミン類として、ポリメチレンジアミンなど各脂肪族多官能アミン類とエピクロロヒドリンの反応によって得られる二官能または三官能グリシジルアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミンなどのポリアミン類とエピクロロヒドリンの反応によって得られる多官能グリシジルアミン、などが挙げられる。
【0019】
前記不飽和炭化水素の酸化により合成されるアルキルオキサイド類として、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、4,4.−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3.,4.−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3.,4.−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4.,5.−エポキシ−2.−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテルや、以下に示す化合物等が挙げられる。
【0020】
【化1】

これらの中でも、グリシジルエーテル類が、入手の容易さおよび化合物のハンドリング性において好ましく用いられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記エポキシド化合物の光記録用組成物の全固形分中の含有量としては特に制限はなく、硬化剤との当量比および前記エポキシドと後述の硬化剤との反応により形成されるマトリックスポリマーの光記録用組成物の全固形分中の含有量に応じ、また、目的のハンドリングに適した粘性を有するようその含有量が決定される。おおまかには、およそ10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい範囲である。この範囲において、入手が容易でかつハンドリング性に優れた素材を用い、望ましい力学的物性を有するホログラム記録層を形成することが可能である。
【0022】
―硬化剤―
前記硬化剤は、カルボン酸、カルボン酸無水物、ポリアミド、カルボン酸化合物のブロック化合物、ポリアミド化合物のブロック化合物、カルボン酸誘導体、カルボン酸無水物の誘導体、およびポリアミドの誘導体から選ばれる少なくともいずれかを含む化合物からなる。前記マトリックスポリマーの経時黄変を防止するため、これらの化合物は芳香族環を含まないことが好ましい。前記カルボン酸としては、前記グリシジルエステル類の原料として記述したジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸などが好ましく、また、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸も好適に利用される。
【0023】
前記カルボン酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル化テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル化ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの水添芳香族ポリカルボン酸無水物類、マレイン酸無水物、リノレン酸無水物、リノール酸無水物、エレオステアリン酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ドデカンジカルボン酸無水物、エイコサンジカルボン酸無水物などの脂肪族ポリカルボン酸無水物類などが挙げられる。
【0024】
前記ポリアミド類は、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸の重合によるダイマー酸に、前記グリシジルアミンの原料として挙げたポリアミン類を反応させることにより得られる。また、公知のジカルボン酸、トリカルボン酸、4つ以上のカルボン酸基を有する各種化合物と上記ポリアミン類とを反応させることによっても得ることができる。光学的な透明性を確保する観点、及び長期保存の際に着色を防止する観点において、上記に挙げたカルボン酸無水物の加水分解物であるジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸と、脂肪族又は脂環式ポリアミンとを反応させて得られるポリアミドアミン類が好ましい。
【0025】
特に、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸、メチル化ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸が、ハンドリング性および形成されるマトリックスポリマーの耐候性において好ましく利用される。これらの化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
【0026】
前記硬化剤の、光記録用組成物の全固形分中の含有量としては特に制限はなく、エポキシド化合物との当量比および前記エポキシドと上記硬化剤との反応により形成されるマトリックスポリマーの光記録用組成物の全固形分中の含有量に応じ、また、組成物が一定時間、目的のハンドリングに適した粘性を有するようその含有量が決定される。おおまかには、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。この範囲において、入手が容易でかつハンドリング性に優れた素材を用い、望ましい力学的物性を有するホログラム記録層を形成することが可能である。
【0027】
前記硬化剤の、エポキシドと反応しうる官能基の当量比は、前記エポキシドのエポキシ当量比を1としたとき、0.7〜1.3が好ましく、0.8〜1.25がより好ましく、0.9〜1.2が特に好ましい。また前記硬化剤による硬化を促進させる作用のある硬化触媒である硬化促進剤を用いることが好ましい。
【0028】
<硬化促進剤>
前記硬化促進剤は、その添加により、所望の加熱温度、加熱時間でマトリックス形成反応を進めることが可能である。一般に前記エポキシ化合物と前記硬化剤の混合のみではマトリックス形成反応の進行は極めて遅く、目的とする硬化膜を得るためには、長時間高温の加熱が必要となるが、基板又は支持体の耐熱性及び、含まれるフォトポリマー成分、具体的にはモノマー、感光性重合開始剤の安定性の観点から、より低い加熱温度で短時間にマトリックス形成反応が進むことが好ましい。
【0029】
前記硬化促進剤としては、エポキシ化合物の硬化触媒として利用可能な各種の金属の有機錯塩類、金属塩類、エナミン類、アンモニウム塩類、3級アミン類、3級アミノフェノール類、ボレート類、イミダゾリウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、リン化合物類などが利用可能である。特に、潜在性触媒として公知であるものが好ましい。詳細は「新エポキシ樹脂」(垣内 弘編著、昭晃堂)に記載がある。
【0030】
これら硬化促進剤は、感光性組成物の全固形分量に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。この範囲において、機械特性に優れ、かつ、光学的に安定かつ透明度の高い硬化物を得ることができる。しかしながら、下限を下回ると硬化促進剤としての機能をはたさなくなり、一方、上限を超えると機械特性が失われたり光学的特性が失われたりするおそれがある。
【0031】
本発明の組成物には、必要に応じて着色防止剤、老化防止剤、無機質充填剤、変性剤、シランカップリング剤、顔料、染料、反応性若しくは非反応性の希釈剤などの公知のエポキシ樹脂用の添加剤を含有させることができる。
【0032】
<重合性モノマー>
前記重合性モノマーは、前記エポキシド化合物及び前記硬化剤の混合により形成される前記マトリックスポリマー及び前記不飽和炭素結合を有するモノマーであり、例えば、不飽和カルボン酸エステル類、不飽和カルボン酸エステル類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類から選ばれる少なくとも1種類の化合物である。
【0033】
前記不飽和カルボン酸エステル類およびアミド類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸のエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸とアルコール化合物もしくはフェノール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸とアミン化合物もしくは芳香族アミン化合物とのアミド類が用いられる。更にハロゲン基等の置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。
【0034】
前記アルコール化合物、フェノール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ビス〔p−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(アクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ベンジルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ナフチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェノキシエチルアクリレート、ジブロモフェニルアクリレート、パークロロフェニルアクリレート、トリクロロフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ベンジルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、トリブロモフェノキシエチルメタリレート、ジブロモフェニルメタリレート、トリクロロフェニルメタリレートなどが挙げられる。
【0036】
前記アクリル酸、メタクリル酸をイタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸で置換したものも好適に使用される。
【0037】
その他エステルの例としては、特許2849021号公報に記載の9,9−ジアリールフルオレン骨格を有するエステル類、特開平8−101499号公報および特許3532679号に記載のシロキサン結合含有(メタ)アクリレート類、特開2001−125474号広報に記載のビフェニルを含んだ(メタ)アクリレート類、特開平7−199777号公報、同199779号公報、同104643号公報に記載のオリゴマー構造の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
前記アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、アクリル酸アミドとして、エチレングリコールジアクリルアミド、イソシアヌール酸EO変性トリアクリルアミド、ビス〔p−(3−アクリルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(アクリルアミノエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ベンジルアクリルアミド、2−フェノキシエチルアクリルアミド、ナフチルアクリルアミド、イソボルニルアクリルアミド、トリブロモフェニルアクリルアミド、トリブロモフェノキシエチルアクリルアミド、ジブロモフェニルアクリルアミド、パークロロフェニルアクリルアミド、トリクロロフェニルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0039】
前記メタクリル酸アミド、イタコン酸アミド、クロトン酸アミド、イソクロトン酸アミド、マレイン酸アミドとしては、上記アクリル酸アミドをメタクリル酸アミド、イタコン酸アミド、クロトン酸アミド、イソクロトン酸アミド、マレイン酸アミドとして置換したものが好適に使用される。
【0040】
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレン、ビニルナフタレン、ブロモビニルナフタレン、クロロビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、および各種スチレン誘導体が挙げられる。
【0041】
また、ビニルエーテル化合物としては、例えば、フェニルビニルエーテル、ビス〔p−(3−ビニルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(ビニルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ジブロモフェニルビニルエーテル、ブロモフェニルビニルエーテル、レゾルシンジビニルエーテル、ブロモレゾルシンジビニルエーテル、などが挙げられる。
【0042】
前記重合性モノマーの含有量は、感光性組成物の全質量に対し、1〜20質量%の範囲が好ましく、2〜15質量%の範囲がより好ましく、3〜10質量%の範囲が特に好ましい。これらの化合物は、単一で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
<感光性重合開始剤>
前記感光性重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の各種の系が利用可能ある。開始剤系は、単一の化合物でなる系でもよいし、複数の化合物からなる系であってもよい。開始剤系は、ラジカル重合を活性化する系と、カチオン重合又は開環重合を活性化する系とを、単一の開始剤系で行ってもよいし、異なる2つの開始剤系で各々行ってもよい。
【0044】
前記光カチオン重合又は開環重合開始剤としては、光酸発生剤が好ましく、該光酸発生剤としては、例えば、トリクロロメチル−s−トリアジン類、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、第四アンモニウム塩類、スルホン酸エステル類、等が挙げられる。
【0045】
前記トリクロロメチル−s−トリアジン類としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メトキシ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メチルチオ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メチルチオ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、等が挙げられる。
【0046】
前記ジアリールヨードニウム塩類としては、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0047】
前記トリアリールスルホニウム塩類としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)ジメチルスルホニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、等が挙げられる。
【0048】
前記第四アンモニウム塩類としては、例えば、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスホネート、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロアルセネート、テトラメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラメチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、テトラメチルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスホネート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロアルセネート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、テトラブチルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラブチルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、テトラブチルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ベンジルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスホネート、ベンジルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジルトリメチルアンモニウムトリフルオロアセテート、ベンジルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、ベンジルトリメチルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ベンジルトリメチルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、ベンジルトリメチルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムテトラフルオロボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキサフルオロホスホネート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムトリフルオロアセテート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムテトラフルオロボレート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムヘキサフルオロホスホネート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムヘキサフルオロアルセネート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムトリフルオロアセテート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、N−シンナミリデンエチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、等が挙げられる。
【0049】
前記スルホン酸エステル類としては、例えば、α−ヒドロキシメチルベンゾイン−p−トルエンスルホン酸エステル、α−ヒドロキシメチルベンゾイン−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、α−ヒドロキシメチルベンゾイン−メタンスルホン酸エステル、ピロガロール−トリ(p−トルエンスルホン酸)エステル、ピロガロール−トリ(トリフルオロメタンスルホン酸)エステル、ピロガロール−トリメタンスルホン酸エステル、2,4−ジニトロベンジル−p−トルエンスルホン酸エステル、2,4−ジニトロベンジル−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、2,4−ジニトロベンジル−メタンスルホン酸エステル、2,4−ジニトロベンジル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,6−ジニトロベンジル−p−トルエンスルホン酸エステル、2,6−ジニトロベンジル−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、2,6−ジニトロベンジル−メタンスルホン酸エステル、2,6−ジニトロベンジル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2−ニトロベンジル−p−トルエンスルホン酸エステル、2−ニトロベンジル−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、2−ニトロベンジル−メタンスルホン酸エステル、2−ニトロベンジル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4−ニトロベンジル−p−トルエンスルホン酸エステル、4−ニトロベンジル−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、4−ニトロベンジル−メタンスルホン酸エステル、4−ニトロベンジル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミド−p−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミド−メタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド−p−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド−メタンスルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、などが挙げられる。
【0050】
これらの化合物のうち、トリクロロメチル−s−トリアジン類としては、2−(3−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン又は2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン;ジアリールヨードニウム塩類としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート又は4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート;トリアリールスルホニウム塩類としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート又は4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート;第四アンモニウム塩類としては、テトラメチルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート;スルホン酸エステル類としては、2,6−ジニトロベンジル−p−トルエンスルホン酸エステル、2,6−ジニトロベンジル−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミド−p−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステル、などが挙げられる。
【0051】
前記光ラジカル重合開始系としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、などが挙げられる。
【0052】
前記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」などに記載の化合物が挙げられる。これらの中でも、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、S−トリアジン化合物が特に好ましい。
【0053】
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、等が挙げられる。
【0054】
前記カルボニル化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、などが挙げられる。
【0055】
前記アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0056】
前記有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化コハク酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0057】
前記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報に記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0058】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号明細書、米国特許第4,311,783号明細書、米国特許第4,622,286号明細書等に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0059】
前記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号公報、特開昭62−150242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報、特開2000−131837号公報、特開2002−107916号公報、特許第2764769号公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech'98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体などが具体例として挙げられる。
【0060】
前記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特開2002−328465号公報等に記載される化合物が挙げられる。
【0061】
前記オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979)1653〜1660頁、J.C.S. Perkin II (1979)156〜162頁、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202〜232頁、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、具体的には以下に示す化合物が挙げられる。
【0062】
【化2】

【0063】
前記オニウム塩化合物としては、カチオン重合開始剤として上述した化合物、更には、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、米国特許第4,069,056号明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号明細書、米国特許第339,049号明細書、米国特許第410,201号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号明細書、欧州特許第390,214号明細書、欧州特許第233,567号明細書、欧州特許第297,443号明細書、欧州特許第297,442号明細書、米国特許第4,933,377号明細書、米国特許第161,811号明細書、米国特許第410,201号明細書、米国特許第339,049号明細書、米国特許第4,760,013号明細書、米国特許第4,734,444号明細書、米国特許第2,833,827号明細書、独国特許第2,904,626号明細書、独国特許第3,604,580号明細書、独国特許第3,604,581号明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、などが挙げられる。
【0064】
特に反応性、安定性の面から前記オキシムエステル化合物或いはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩はカチオン重合開始剤としての機能も有するが、同時にイオン性のラジカル重合開始剤としても機能する。この性質を利用して、単一の化合物でカチオン重合及びラジカル重合の両方を活性化することも可能である。
【0065】
前記感光性重合開始剤を更に増感するために、更に増感助剤を加えることが可能である。かかる増感助剤としては、例えば、3−位及び7−位の少なくともいずれかに置換基を有するクマリン類、フラボン類、ジベンザルアセトン類、ジベンザルシクロヘキサン類、カルコン類、キサンテン類、チオキサンテン類、ポルフィリン類、フタロシアニン類、アクリジン類、アントラセン類等を用いることができる。
【0066】
前記重合性モノマーとして、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミドを用いる際は、感光性ラジカル重合開始剤が好適に使用される。また、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物を用いる際は、感光性カチオン重合開始剤が好適である。スチレン化合物を重合性モノマーとして用いる場合は、感光性ラジカル重合開始剤、感光性カチオン重合開始剤ともに利用することが可能である。
【0067】
前記感光性重合開始剤の、前記光記録用組成物の全固形分中の含有量としては、0.1〜10質量%の範囲が好ましく、1〜7質量%の範囲がより好ましく、1.5〜5質量%の範囲が特に好ましい。この範囲において、最も高い感度を得ることが可能である。
【0068】
前記光重合反応に用いられる光照射手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光記録媒体の用途においては、405nm及び532nm、または、より紫外域の光線、特にレーザ光線が好適に使用される。レーザ光は可干渉であって、実際の光束の幅より細かいパターンを干渉縞によって書き込み可能である点から、光源として最も好ましい。前記光照射手段の照射エネルギーは、0.001〜200mJ/cmが好ましく、0.01〜100mJ/cmがより好ましく、0.5〜50mJ/cmが特に好ましい。また、前記光重合反応を促進するため、任意の手段により加熱条件下として光照射を実施してもよい。
【0069】
また、照射する光の波長に合わせて増感剤として増感色素を併用してもよい。
前記増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メロシアニン色素、シアニン色素、スクアリウム色素、ジベンジルアセトン色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、若しくは、アクリジウム色素、又はチオキサントン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、アクリジン、カルバゾール、若しくは、フェノチアジンの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、キサンテン系色素、チオキサントン、アントラセン、カルバゾール、フェノチアジンの誘導体が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記増感剤の記録用組成物中における含有量は、全記録用組成物の固形分中、0.05〜0.1質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0070】
<その他の化合物>
前記その他の化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、貯蔵安定性を改良するため、フォトポリマーの重合禁止剤及び酸化防止剤などを添加してもよい。
前記重合禁止剤及び酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシヤリ−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシヤリ−ブチルフェノール)、トリフェルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、フェノチアジン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、トリフェルホスファイト、フェノチアジンが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記重合禁止剤及び酸化防止剤の使用量としては、組成物に使用する前記重合性モノマーの全量に対して3質量%以内が好ましい。前記使用量が、3質量%を超えると重合反応が遅くなることがあり、著しい場合には重合しなくなることがある。
【0071】
(光記録媒体)
本発明の光記録媒体は、支持体上に、ホログラフィを利用して情報を記録する本発明の記録層及び必要に応じて適宜選択したその他の層を有する光記録媒体である。
本発明の光記録媒体は、2次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラムであってもよく、透過型及び反射型のいずれであってもよい。また、ホログラムの記録方式もいずれであってもよく、例えば、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなどでもよい。
本発明の光記録媒体を記録及び再生する方法、装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、米国特許第5,719,691号明細書、同第5,838,467号明細書、同第6,163,391号明細書、同第6,414,296号明細書、米国特許出願公開第2002−136143号明細書、特開2000−98862号公報、同2000−298837号公報、同2001−23169号公報、同2002−83431号公報、同2002−123949号公報、同2002−123948号公報、同2003−43904号公報、同2004−171611号公報、国際公開第99/57719号パンフレット、同第02/05270号パンフレット、第02/75727号パンフレットなどに記載された光記録方法、光記録装置などが挙げられる。
本発明の光記録媒体は、少なくとも一の支持体上に記録層を積層し、情報光と参照光とが異なる方向から照射される一般的なホログラムの記録に用いられる第一の形態と、情報光及び参照光の照射が、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸になるようにして行われるコリニア方式に用いられ、第一の基板と、第二の基板と、該第二の基板上に記録層と、前記第二の基板と該記録層との間にフィルタ層及び必要に応じて適宜選択したその他の層とを有する第二の形態などが挙げられる。以下第一の形態及び第二の形態について順に説明する。
【0072】
≪第一の形態≫
前記第一の形態は一般のホログラム記録方法に用いられるもので、層構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、支持体上に記録層を単層又は2以上の層を積層した構成、図2に示すように、支持体42及び43により記録層41を挟み込み、支持体42及び43の最外層にそれぞれ反射防止層44及び45を形成した層構成などが挙げられる。
更に、記録層41及び支持体42との間、記録層41と支持体43との間にガスバリア層などを形成してもよい。また、反射防止層44及び45の表面に保護層などを設けてもよい。
【0073】
前記第一の形態における光記録方法では、以下のように記録される。即ち、図9に示すように、光源61から出射した光が、ハーフミラー64を透過した情報光51と、該ハーフミラー64に反射した参照光52に分割され、情報光51はミラー66及びビームエキスパンダ68を経由して拡大され、光記録媒体50の記録層面に照射される。他方、参照光52は、ミラー65及びビームエキスパンダ67を経由して拡大され、情報光51が照射される前記記録層面と反対側の記録層面に照射され、情報光51と参照光52とにより干渉縞が生成され、この干渉縞が光情報として前記記録層に記録される。
この記録方法により光記録媒体50への多重記録は、図9に示すように、光記録媒体50を少しつづ移動させて記録を繰り返すことにより可能である。
【0074】
<情報光及び参照光>
前記情報光及び前記参照光の光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光源から出射される可干渉性のあるレーザ光などが好ましい。
前記レーザ光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、波長が、360〜850nmから選択される1種以上の波長からなるレーザ光などが挙げられる。該波長は、380〜800nmが好ましく、400〜750がより好ましく、可視領域の中心が最も見え易い500〜600nmが最も好ましい。
前記波長が、360nm未満であると、鮮明な立体画像が得られないことがあり、850nmを超えると、前記干渉縞が微細となり、それに対応する感光材料が得られないことがある。
【0075】
前記レーザ光の光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固体レーザ光発振器、青色領域の半導体レーザ光発振器、液体レーザ光発振器、アルゴンなどの気体レーザ光発振器、He−Cdレーザ発振器、周波数2倍YAGレーザ発振器、He−Neレーザ発振器、Krレーザ発振器などが挙げられる。これらの中でも、気体レーザ光発振器、青色領域の半導体レーザ光発振器などが好ましい。
【0076】
前記情報光及び前記参照光の照射方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、同一の光源から出射される一のレーザ光などを分割して、該情報光及び該参照光として照射してもよく、異なる光源から出射される二つレーザ光などを照射してもよい。
前記情報光と前記参照光の照射方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記情報光と前記参照光が異なった方向から照射されてもよく、同一方向で照射されもよい。また、前記情報光の光軸と前記参照光の光軸と同軸となるようにして照射されるものでもよい。
【0077】
<定着光>
前記定着光は、前記情報光及び参照光を出射した光源61を用いてよく、図9に示すように、別個の光源62を用い、該光源62から出射した定着光53をビームエキスパンダ69を介して記録領域に照射してもよい。前記定着光を照射する領域としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記記録層の任意の箇所における前記情報光及び前記参照光による記録対象部分と同じ領域か、該記録対象部分の外延よりも広くかつ該外延から少なくとも1μm外側まで延設された領域であることが好ましい。前記記録対象部分の外延から1μmを超えた領域まで定着光を照射すると、隣接する記録領域にも照射され、過剰な照射エネルギーとなり非効率的である。
【0078】
前記定着光の照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記記録層の任意の箇所において、1ns〜100msが好ましく、1ns〜80msがより好ましい。前記照射時間が、1ns未満であると、定着が不十分なことがあり、100msを超えると過剰なエネルギーの照射となる。
前記定着光の照射方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記記録層の任意の箇所における前記情報光及び前記参照光と同じ方向でもよく、異なった方向でもよい。また、照射角度としては、記録層の層面に対して0〜60°が好ましく、0〜40°がより好ましい。前記照射角度が、上記以外の角度であると、定着が非効率となることがある。
前記定着光の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記記録層の任意の箇所において、350〜850nmであることが好ましく、400〜600nmであることがより好ましい。
前記波長が、350nm未満であると、材料が分解してしまうことがあり、850nmを超えると、温度が上がり材料が劣化することがある。
【0079】
前記定着光の光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インコヒーレントな光を照射することが好ましく、蛍光灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、発光ダイオード、コヒーレント光に位相をランダムに変える操作(例えば、すりガラスを光路に入れる。)をした光などが挙げられる。これらの中でも、発光ダイオード、コヒーレント光に位相をランダムに変える操作(例えば、すりガラスを光路に入れる。)をした光などが好ましい。
前記定着光の照射量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記記録層の任意の箇所において、0.001〜1J/cmであることが好ましく、0.01〜300mJ/cmであることがより好ましい。
【0080】
前記定着光の照射方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記記録層の任意の箇所における前記情報光及び前記参照光と同一の光源から出射される光を照射してもよく、異なる光源から出射される光などを照射してもよい。
【0081】
<記録層>
前記記録層は、本発明の記録用組成物及び必要に応じて適宜選択したその他の成分が含まれる。
【0082】
前記記録層は、公知の方法により塗設又は注入された後、加熱硬化の過程を経て形成される。塗設の方法としては、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、カーテンコート法、キャスト法、スクリーン転写法などが公知であり適用可能である。また、公知の注入の方法としては、所望の基板に隔壁を設け、その内部にディスペンサー、スクリーン転写、キャスティングなどの手法を用いて一定量の光記録用組成物を流し込み、上部基板にて封をした上で加熱硬化させる方法、予め複数の基板を、隔壁材を挟んで接着するか、外部の保持具により一定間隔の空隙を基板間に設けた後、その空隙にディスペンサー等で光記録用組成物を注入し直ちに加熱硬化する方法が公知である。
【0083】
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜1,000μmが好ましく、100〜800μmがより好ましく、200〜700μmが特に好ましい。特に、体積ホログラム用途に用いる場合、上述の範囲の厚みであると、十分なS/N比が得られるばかりでなく、多重記録に適した媒体となり、更に、上記におけるより好ましい範囲内であると、10〜300回の多重記録を行っても十分なS/N比と信号強度を維持することが可能である。
【0084】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記光記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0085】
前記支持体の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができるが、光記録媒体の機械的強度を確保できるものであり、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する透過型の場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0086】
前記支持体としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターなどにより回転して用いる場合には、過剰な負荷をかけることがある。
【0087】
≪第二の形態≫
前記第二の形態は、情報光及び参照光の照射が、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行われるコリニア方式に用いられる光記録媒体の形態で、第一の基板と、第二の基板と、該第二の基板上に本発明の記録層と、前記第二の基板と該記録層との間にダイクロイックミラー層とを有する光記録媒体、前記ダイクロイックミラー層の代わりにフィルタ層を積層した光記録媒体などが挙げられる。
【0088】
<第二の形態における光記録方法及び再生方法>
前記第二の形態における光記録方法は、前記光記録媒体に情報光及び参照光を同軸光束として照射し、該情報光と参照光との干渉による干渉パターンによって情報を記録層に記録するいわゆるコリニア方式による光記録方法である。
前記コリニア方式においても、前記第一の形態と同様に、光記録媒体における記録層の少なくとも一部の記録対象部分に対して、情報光及び参照光を照射することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録が得られる。
【0089】
前記再生方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光記録方法により記録層に形成された前記干渉像に参照光と同じ光を照射して該干渉像に対応した記録情報を再生することができる。
【0090】
前記第二の形態の光記録方法及び再生方法では、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光とを感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉パターンを利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより、情報を記録する。一方、書き込んだ情報を読み出す(再生する)際には、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光として記録層から出射される。
ここで、前記第二の形態の光記録方法及び再生方法は、以下に説明する光記録再生装置を用いて行われる。
【0091】
前記光記録方法及び再生方法に使用される光記録再生装置について図11を参照して説明する。図11は、前記第二の形態に係る光記録再生装置の全体構成の一例を表すブロック図である。なお、光記録再生装置は、光記録装置と再生装置を含んでなる。
この光記録再生装置100は、光記録媒体22が取り付けられるスピンドル81と、このスピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、光記録媒体22の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。また、光記録再生装置100は、光記録媒体22に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録すると共に、光記録媒体22に対して再生用参照光を照射し、再生光を検出して、光記録媒体22に記録されている情報を再生するためのピックアップ31と、このピックアップ31を光記録媒体22の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。
【0092】
光記録再生装置100は、ピックアップ31の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、及び再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)を光記録媒体22の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、検出回路85によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体22の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、トラッキングエラー信号TE及び後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御してピックアップ31を光記録媒体22の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
【0093】
光記録再生装置100は、更に、ピックアップ31内の後述するCMOS又はCCDアレイの出力データをデコードして、光記録媒体22のデータエリアに記録されたデータを再生したり、検出回路85からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、このコントローラ90に対して種々の指示を与える操作部91とを備えている。
コントローラ90は、信号処理回路89より出力される基本クロックやアドレス情報を入力すると共に、ピックアップ31、スピンドルサーボ回路83、及びスライドサーボ回路88等を制御するようになっている。スピンドルサーボ回路83は、信号処理回路89より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、及びRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、コントローラ90の機能を実現するようになっている。
【0094】
<記録層>
前記記録層は第一の形態に用いられた記録層と同様の記録層を用いることができる。
【0095】
<フィルタ層>
前記フィルタ層は、複数種の光線の中から特定の波長の光のみを反射する、波長選択反射機能を有する。特に、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光による光記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する機能もあり、前記光記録媒体に前記フィルタ層を積層することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録が得られる。
前記フィルタ層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダイクロイックミラー層、色材含有層を有し、誘電体蒸着層、単層又は2層以上のコレステリック層及び必要に応じて適宜選択したその他の層の少なくともいずれかを積層した積層体により形成される。
前記フィルタ層は、直接記録層など共に、前記支持体上に塗布などにより積層してもよく、フィルムなどの基材上に積層して光記録媒体用フィルタを作製し、該光記録媒体用フィルタを、支持体上に積層してもよい。
【0096】
−ダイクロイックミラー層−
前記ダイクロイックミラー層は、波長選択反射膜とするためには、複数層積層することが好ましい。前記積層数は、1〜50層が好ましく、2〜40層がより好ましく、2〜30層が特に好ましい。前記積層数が、50層を超えると、多層蒸着により生産効率性が低下し、分光透過率特性の変化が小さくなり層数を増加するだけの効果は小さくなる。
【0097】
前記ダイクロイックミラー層の積層方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンプレーティング、イオンビーム等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)、化学的気相成長法(CVD法)、などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法、スパッタリングが好ましく、スパッタリングがより好ましい。
前記スパッタリングとしては、成膜レートの高いDCスパッタリング法が好ましい。なお、DCスパッタリング法においては、導電性が高い材料を用いることが好ましい。
また、前記スパッタリングにより多層成膜する方法としては、例えば、(1)1つのチャンバで複数のターゲットから交互又は順番に成膜する1チャンバ法、(2)複数のチャンバで連続的に成膜するマルチチャンバ法とがある。これらの中でも、生産性及び材料コンタミネーションを防ぐ観点から、マルチチャンバ法が特に好ましい。
前記ダイクロイックミラー層の厚みとしては、光学波長オーダーで、λ/16〜λの膜厚が好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8がより好ましい。
【0098】
−色材含有層−
前記色材含有層は、色材、バインダー樹脂、溶剤及び必要に応じてその他の成分により形成される。
【0099】
前記色材としては、顔料及び染料の少なくともいずれかが好適に挙げられ、これらの中でも、532nmの光を吸収し、655nm若しくは780nmのサーボ用光を透過させる観点から、赤色染料、赤色顔料が好ましく、赤色顔料が特に好ましい。
【0100】
前記赤色染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.アシッドレッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289等の酸性染料;C.I.ベーシックレッド2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112等の塩基性染料;C.I.リアクティブレッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97等の反応性染料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
前記赤色顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド48:1、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメントレッド146)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメントレッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメントレッド81)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
これらの中でも、532nmの光に対する透過率が10%以下であり、かつ655nmの光に対する透過率が90%以上である透過スペクトルを示す赤色顔料が特に好ましく用いられる。
【0103】
前記色材の含有量としては、前記色材含有層の全固形質量に対し0.05〜90質量%が好ましく、0.1〜70質量%がより好ましい。前記含有量が0.05質量%未満であると、色材含有層の厚みが500μm以上必要となってしまうことがあり、90質量%を超えると、色材含有層の自己支持性がなくなり、色材含有層の作製工程中に膜が崩れてしまうことがある。
【0104】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体;塩化ビニル、酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸及びアクリル酸の少なくともいずれかとの共重合体;塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体;塩化ビニル/アクリロニロリル共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体;ニトロセルロース樹脂等のセルロース誘導体;ポリアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、分散性及び耐久性を更に高めるため、以上に挙げたバインダー樹脂分子中に、極性基(エポキシ基、COH、OH、NH、SOM、OSOM、PO、OPO(ただし、Mは水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムであり、一つの基の中に複数のMがあるときは互いに異なっていてもよい)を導入したものが好ましい。該極性基の含有量としては、バインダー樹脂1グラム当り10−6〜10−4当量が好ましい。
以上列挙したバインダー樹脂は、イソシアネート系の公知の架橋剤を添加して硬化処理されることが好ましい。
【0105】
前記バインダー樹脂の含有量としては、前記色材含有層の全固形質量に対し10〜99.95質量%が好ましく、30〜99.9質量%がより好ましい。
【0106】
前記各成分は、適当な溶媒に溶解乃至は分散し、塗布液に調製し、この塗布液を所望の塗布方法により後述する基材上に塗布することにより、色材含有層を形成することができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、3−メトキシプロピオン酸メチルエステル、3−メトキシプロピオン酸エチルエステル、3−メトキシプロピオン酸プロピルエステル、3−エトキシプロピオン酸メチルエステル、3−エトキシプロピオン酸エチルエステル、3−エトキシプロピオン酸プロピルエステル等のアルコキシプロピオン酸エステル類;2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のアルコキシアルコールのエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法、などが挙げられる。
【0108】
前記色材含有層の厚みは、例えば、0.5〜200μmが好ましく、1.0〜100μmがより好ましい。前記厚みが、0.5μm未満であると、色材を包んで膜とするためのバインダー樹脂を十分な量添加することができなくなることがあり、200μmを超えると、フィルタの厚みが大きくなりすぎて、照射光及びサーボ用光の光学系として過大なものが必要になることがある。
【0109】
−誘電体蒸着層−
前記誘電体蒸着層は、前記色材含有層上に形成され、互いに屈折率の異なる誘電体薄層を複数層積層してなり、波長選択反射膜とするためには、高屈折率の誘電体薄層と低屈折率の誘電体薄層とを交互に複数層積層することが好ましいが、2種以上に限定されず、それ以上の種類であってもよい。
前記積層数は、2〜20層が好ましく、2〜12層がより好ましく、4〜10層が更に好ましく、6〜8層が特に好ましい。前記積層数が、20層を超えると、多層蒸着により生産効率性が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
【0110】
前記誘電体薄層の積層順については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、隣接する膜の屈折率が高い場合にはそれより低い屈折率の膜を最初に積層する。その逆に隣接する層の屈折率が低い場合にはそれより高い屈折率の膜を最初に積層する。前記屈折率が高いか低いかを決めるしきい値としては1.8が好ましい。なお、屈折率が高いか低いかは絶対的なものではなく、高屈折率の材料の中でも、相対的に屈折率の大きいものと小さいものとが存在してもよく、これらを交互に使用してもよい。
【0111】
前記高屈折率の誘電体薄層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Sb、Sb、Bi、CeO、CeF、HfO、La、Nd、Pr11、Sc、SiO、Ta、TiO、TlCl、Y、ZnSe、ZnS、ZrO、などが挙げられる。これらの中でも、Bi、CeO、CeF、HfO、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOが好ましく、これらの中でも、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOがより好ましい。
【0112】
前記低屈折率の誘電体薄層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Al、BiF、CaF、LaF、PbCl、PbF、LiF、MgF、MgO、NdF、SiO、Si、NaF、ThO、ThF、などが挙げられる。これらの中でも、Al、BiF、CaF、MgF、MgO、SiO、Siが好ましく、これらの中でも、Al、CaF、MgF、MgO、SiO、Siがより好ましい。
なお、前記誘電体薄層の材料においては、原子比についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、成膜時に雰囲気ガス濃度を変えることにより、原子比を調整することができる。
【0113】
前記誘電体薄層の積層方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ダイクロイックミラー層の積層に用いた積層方法と同様の方法を用いることができる。
前記誘電体薄層の厚みとしては、光学波長オーダーで、λ/16〜λの膜厚が好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8が特に好ましい。
【0114】
前記誘電体蒸着層においては、該誘電体蒸着層中を伝播する光の一部が、各誘電体薄層毎に多重反射し、それらの反射光が干渉するため、誘電体薄層の厚みと光に対する膜の屈折率との積で決まる波長の光のみが選択的に透過されることになる。また、誘電体蒸着層の中心透過波長は入射光に対して角度依存性を有しており、入射光を変化させると透過波長を変えることができる。
ただし、前記誘電体蒸着層の積層数を20層以下としたことにより、数%〜数十%の選択反射波長光がフィルタを漏れて透過するが、該漏れ光を前記誘電体蒸着層の直下に仕込んだ色材含有層で吸収してしまう。なお、前記色材含有層は赤色顔料や赤色染料を含んでいるので、350〜600nmの光は吸収するが、サーボ用光として使用する600〜900nmの光は透過する。
前記色材含有層と前記誘電体蒸着層とを有する光記録媒体用フィルタの機能は、第一の光を透過し、該第一の光と異なる第二の光を反射することが好ましく、前記第一の光の波長が350〜600nmであり、かつ第二の光の波長が600〜900nmであることが好ましい。そのためには、光学系側から見て、記録層、誘電体蒸着層、色材含有層、及びサーボピットパターンの順に積層されている構造の光記録媒体であることが好ましい。
【0115】
また、前記フィルタ層は、入射角度±40°における、655nmでの光透過率が50%以上であり、80%以上が好ましく、かつ532nmでの光反射率が30%以上であり、40%以上が好ましい。
【0116】
−コレステリック液晶層−
前記コレステリック液晶層は、少なくともネマチック液晶化合物、及びカイラル化合物を含有してなり、重合性モノマー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記コレステリック液晶層は、単層コレステリック液晶層及び2層以上の複数層コレステリック液晶層のいずれであってもよい。
【0117】
前記コレステリック液晶層としては、円偏光分離機能を有するものが好ましい。前記円偏光分離機能を有するコレステリック液晶層は、液晶の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)と円偏光方向とが一致し、波長が液晶の螺旋ピッチであるような円偏光成分の光だけを反射する選択反射特性を有する。このコレステリック液晶層の選択反射特性を利用して、一定の波長帯域の自然光から特定波長の円偏光のみを透過分離し、その残りを反射する。
したがって、前記コレステリック液晶層は、第一の波長の光を透過し、該第一の光と異なる第二の光の円偏光を反射することが好ましく、前記第一の光の波長が350〜600nmであり、かつ前記第二長の光の波が600〜900nmであることが好ましい。
【0118】
前記コレステリック液晶層の選択反射特性は、特定の波長帯域のみに限定され、可視光域をカバーすることは困難である。即ち、前記コレステリック液晶層の選択反射波長領域幅Δλは、下記数式1で表される。
<数式1>
Δλ=2λ(ne−no)/(ne+no)
ただし、前記数式1中、noは、コレステリック液晶層に含有されるネマチック液晶分子の正常光に対する屈折率を表す。neは、該ネマチック液晶分子の異常光に対する屈折率を表す。λは、選択反射の中心波長を表す。
【0119】
前記数式1で示すように、前記選択反射波長帯域幅Δλは、ネマチック液晶そのものの分子構造に依存する。前記数式1から、(ne−no)を大きくすれば、前記選択反射波長帯域幅Δλを拡げられるが、(ne−no)は通常0.3以下であり、0.3より大きくなると、液晶としてのその他の機能、例えば、配向特性、液晶温度等が不十分となり、実用化が困難となる。
【0120】
また、前記コレステリック液晶層の選択反射中心波長λは、下記数式2で表される。
<数式2>
λ=(ne+no)P/2
ただし、前記数式2中、ne及びnoは上記数式1と同じ意味を表す。Pは、コレステリック液晶層の一回転ねじれに要する螺旋ピッチ長を表す。
【0121】
前記数式2で示すように、前記選択反射中心波長λは、コレステリック液晶層の螺旋ピッチが一定であれば、コレステリック液晶層の平均屈折率と螺旋ピッチ長Pに依存する。それ故、コレステリック液晶層の選択反射特性を拡げるには、前記コレステリック液晶層の選択反射中心波長が互いに異なり、前記コレステリック液晶層の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)が互いに同じであることが好ましい。また、前記コレステリック液晶層の選択反射波長帯域は連続的であることが好ましい。ここで、前記「連続的」とは、選択反射波長帯域間にギャップがなく、波長λ〜λ/cos20°(好ましくはλ〜λ/cos40°)の間にギャップがなく、実質的にこの範囲の反射率が40%以上であることを意味する。
したがって、前記コレステリック液晶層の選択反射中心波長λ間の距離は、各選択反射波長帯域が少なくとも1つの他の選択反射波長帯域と連続となる範囲内であることが好ましい。
【0122】
前記光記録媒体用フィルタは、垂直入射を0°とし±20°の範囲であるλ〜λ/cos20°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることが好ましく、垂直入射を0°とし±40°の範囲であるλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることが特に好ましい。前記λ〜λ/cos20°、特にλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であれば、照射光反射の角度依存性を解消でき、通常の光記録媒体に用いられているレンズ光学系を採用することができる。
【0123】
また、複数層コレステリック液晶層の場合には、選択反射中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向が互いに同じであるコレステリック液晶層を3層積層すると、図4に示すような反射特性を有する光記録媒体用フィルタが得られる。この図4は正面(0°)からの垂直入射光に対する反射特性が40%以上であることを示している。これに対し、斜め方向からの入射光になると次第に短波長側にシフトしていき、液晶層内で40°傾斜した時は図5に示すような反射特性を示す。
同様に、選択反射中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向が互いに同じであるコレステリック液晶層を2層積層すると、図6に示すような反射特性を有する光記録媒体用フィルタが得られる。この図6は正面(0°)からの垂直入射光に対する反射特性が40%以上であることを示している。これに対し、斜め方向からの入射光になると次第に短波長側にシフトしていき、液晶層内で20°傾斜した時は図8に示すような反射特性を示す。
【0124】
なお、図4に示したλ〜1.3λの反射域は、λ=532nmのとき1.3λ=692nmとなり、サーボ用光が655nmの場合はサーボ用光を反射してしまう。ここに示すλ〜1.3λの範囲は光記録媒体用フィルタにおける±40°入射光への適性であるが、実際にそうした大きな斜め光まで使用する場合は、入射角±20°以内のサーボ用光をマスキングして使用すれば支障なくサーボ制御できる。また、使用するフィルタにおける各コレステリック液晶層の平均屈折率を十分大きくすれば、光記録媒体用フィルタ内での入射角を±20°以内で全て設計することも容易であり、その場合は図6に示すλ〜1.1λのコレステリック液晶層を2層積層することでよいので、サーボ用光透過には全く支障がなくなる。
したがって図4〜図7の結果から、本発明の光記録媒体用フィルタ内においては、複数層コレステリック液晶層の場合には、入射波長が0°〜20°(好ましくは0°〜40°)傾斜しても40%以上の反射率が確保できているので、信号読み取りには何ら支障のない光記録媒体用フィルタが得られる。
【0125】
前記コレステリック液晶層は、上記特性を満たせば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述したように、ネマチック液晶化合物、及びカイラル化合物を含有してなり、重合性モノマー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0126】
−ネマチック液晶化合物−
前記ネマチック液晶化合物は、液晶転移温度以下ではその液晶相が固定化することを特徴とし、その屈折率異方性Δnが、0.10〜0.40の液晶化合物、高分子液晶化合物、及び重合性液晶化合物の中から目的に応じて適宜選択することができる。溶融時の液晶状態にある間に、例えば、ラビング処理等の配向処理を施した配向基板を用いる等により配向させ、そのまま冷却等して固定化させることにより固相として使用することができる。
【0127】
前記ネマチック液晶化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記の化合物などが挙げられる。
【0128】
【化3】

【0129】
【化4】

【0130】
【化5】

【0131】
前記式中において、nは1〜1,000の整数を表す。なお、前記各例示化合物においては、その側鎖連結基を、以下の構造に変えたものも同様に好適なものとして挙げられる。
【0132】
【化6】

【0133】
上記の各例示化合物のうち、ネマチック液晶化合物としては、十分な硬化性を確保する観点から、分子内に重合性基を有するネマチック液晶化合物が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)重合性液晶が好適である。該UV重合性液晶としては、市販品を用いることができ、例えば、BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC242;Merck社製の商品名E7;Wacker−Chem社製の商品名LC−Sllicon−CC3767;高砂香料株式会社製の商品名L35、L42、L55、L59、L63、L79、L83、などが挙げられる。
【0134】
前記ネマチック液晶化合物の含有量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し30〜99質量%が好ましく、50〜99質量%がより好ましい。前記含有量が30質量%未満であると、ネマチック液晶化合物の配向が不十分となることがある。
【0135】
−カイラル化合物−
前記カイラル化合物としては、複数層コレステリック液晶層では、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、液晶化合物の色相、色純度改良の観点から、例えば、イソマニード化合物、カテキン化合物、イソソルビド化合物、フェンコン化合物、カルボン化合物、等の他、以下に示す化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
【化7】

【0137】
【化8】

【0138】
また、前記カイラル化合物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、Merck社製の商品名S101、R811、CB15;BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC756、などが挙げられる。
【0139】
前記複数層コレステリック液晶層の各液晶層におけるカイラル化合物の含有量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。前記含有量が30質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0140】
−重合性モノマー−
前記コレステリック液晶層には、例えば、膜強度等の硬化の程度を向上させる目的で重合性モノマーを併用することができる。該重合性モノマーを併用すると、光照射による液晶の捻れ力を変化(パターンニング)させた後(例えば、選択反射波長の分布を形成した後)、その螺旋構造(選択反射性)を固定化し、固定化後のコレステリック液晶層の強度をより向上させることができる。ただし、前記液晶化合物が同一分子内に重合性基を有する場合には、必ずしも添加する必要はない。
前記重合性モノマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン性不飽和結合を持つモノマー等が挙げられ、具体的には、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
前記エチレン性不飽和結合を持つモノマーの具体例としては、以下に示す化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0141】
【化9】

【0142】
前記重合性モノマーの添加量としては、前記コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。前記添加量が50質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向を阻害することがある。
【0143】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感光性重合開始剤、増感剤、バインダー樹脂、重合禁止剤、溶媒、界面活性剤、増粘剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、ゲル化剤などが挙げられる。
【0144】
前記感光性重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記感光性重合開始剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア814;BASF社製の商品名ルシリンTPOなどが挙げられる。
【0145】
前記感光性重合開始剤の添加量としては、前記コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。前記添加量が0.1質量%未満であると、光照射時の硬化効率が低いため長時間を要することがあり、20質量%を超えると、紫外線領域から可視光領域での光透過率が劣ることがある。
【0146】
前記増感剤は、必要に応じてコレステリック液晶層の硬化度を上げるために添加される。
前記増感剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、などが挙げられる。
前記増感剤の添加量としては、前記コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0.001〜1.0質量%が好ましい。
【0147】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン化合物;メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース樹脂;側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体;ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体;アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマー;その他の水酸基を有するポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマーにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
前記その他の水酸基を有するポリマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタアクリル酸のホモポリマー)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーの多元共重合体などが挙げられる。
【0148】
前記バインダー樹脂の添加量としては、前記コレステリック液晶層の全固形質量に対し0〜80質量%が好ましく、0〜50質量%がより好ましい。前記添加量が80質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0149】
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ベンゾキノン、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
前記重合禁止剤の添加量としては、前記重合性モノマーの固形分に対し0〜10質量%が好ましく、100ppm〜1質量%がより好ましい。
【0150】
前記溶媒としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチルエステル、3−メトキシプロピオン酸エチルエステル、3−メトキシプロピオン酸プロピルエステル、3−エトキシプロピオン酸メチルエステル、3−エトキシプロピオン酸エチルエステル、3−エトキシプロピオン酸プロピルエステル等のアルコキシプロピオン酸エステル類;2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のアルコキシアルコールのエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0151】
前記コレステリック液晶層の形成方法としては、例えば、前記溶媒を用いて調製したコレステリック液晶層用塗布液(複数層の場合には各コレステリック液晶層用塗布液)を前記基材上に塗布し、乾燥させて、例えば紫外線照射することにより、コレステリック液晶層を形成することができる。
最も量産適性のよい手法としては、前記基材をロール状に巻いた形で準備しておき、該基材上にコレステリック液晶層用塗布液をバーコート、ダイコート、ブレードコート、カーテンコートのような長尺連続コーターにて塗布する形式が好ましい。
【0152】
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法などが挙げられる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、照射紫外線は、160〜380nmが好ましく、250〜380nmがより好ましい。照射時間としては、例えば、0.1〜600秒が好ましく、0.3〜300秒がより好ましい。紫外線照射の条件を調整することによって前記コレステリック液晶層における螺旋ピッチを液晶層の厚み方向に沿って連続的に変化させることができる。
【0153】
前記紫外線照射の条件を調整するために、前記コレステリック液晶層に紫外線吸収剤を添加することもできる。該紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤などが好適に挙げられる。これらの紫外線吸収剤の具体例としては、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同第3,707,375号明細書、同第3,754,919号明細書、同第4,220,711号明細書などに記載されている。
【0154】
前記複数層の場合には各コレステリック液晶層の厚みは、例えば、1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。前記厚みが1μm未満であると、選択反射率が十分でなくなり、10μmを超えると、液晶層の均一配向が乱れてしまうことがある。
また、各コレステリック液晶層の合計厚み(単層の場合にはコレステリック液晶層の厚み)は、例えば、1〜30μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。
【0155】
<コレステリック層を有する光記録媒体用フィルタの製造方法>
前記光記録媒体用フィルタの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述したように、前記基材上に色材含有層を塗布形成し、該色材含有層上にコレステリック液晶層を塗布形成する方法、などが挙げられる。
前記光記録媒体用フィルタは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、基材ごとディスク形状に加工(例えば打ち抜き加工)されて、光記録媒体の第二の基板上に配置されるのが好ましい。また、光記録媒体のフィルタ層に用いる場合には、基材を介さず直接第二の基板上に設けることもできる。
【0156】
前記光記録媒体用フィルタは、色材含有層とコレステリック液晶層とを組み合わさせた構成では、フィルタ層内の±20°における、655nmでの光透過率が80%以上であり、かつ532nmでの光反射率が40%以上であることが好ましい。
具体的には、色材含有層上に誘電体蒸着層を有する光記録媒体用フィルタは、正面(0°)からの垂直入射光に対して十分な反射特性を有する。これに対し、斜め方向からの入射光になると次第に短波長側にシフトしていき、20°傾斜時には反射特性の低下を示す。
本発明の光記録媒体用フィルタは、フィルタ層内の光が0°〜20°傾斜しても532nmでの40%以上の反射率が確保でき、信号読み取りには何ら支障がなく、また、フィルタを通過した漏れ光(532nm)を吸収し、サーボ用光(655nm)を通過させることができ、ノイズの発生を防止できるものである。
【0157】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第一の形態に用いられた支持体と同じ材料を用いることができる。
【0158】
前記基材としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10〜500μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。前記基材の厚みが、10μm未満であると、基板の撓みにより密着性が低下することがある。一方、500μmを超えると、情報光と参照光の焦点位置を大きくずらさなければならなくなり、光学系サイズが大きくなってしまう。
【0159】
前記光記録媒体用フィルタは、各種分野において使用することができ、ホログラム型の光記録媒体の形成乃至製造に好適に使用することができ、以下の本発明のホログラム型の光記録媒体及びその製造方法並びに光記録方法及び再生方法に特に好適に使用することができる。
【0160】
<反射膜、第一及び第二ギャップ層を有する光記録媒体>
前記光記録媒体は、第一の基板と、第二の基板と、該第二の基板上に前記記録層と、前記第二の基板と前記記録層との間に前記フィルタ層とを有してなり、反射膜、第一ギャップ層、第二ギャップ層、更に必要に応じてその他の層を有してなる構成でもよい。
前記記録層及び前記フィルタ層としては、前記光記録媒体用フィルタが用いられる。
【0161】
−基板−
前記基板は、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられ、光記録媒体の機械的強度を確保できる材料のものを選定する必要がある。また、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記基板材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性、コストの点から、樹脂が特に好適である。
前記樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が特に好ましい。
前記基板としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0162】
前記基板には、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられ、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の区間がデータエリアになっている。アドレス−サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とが、予めエンボスピット(サーボピット)等によって記録されている(プリフォーマット)。なお、フォーカスサーボは、反射膜の反射面を用いて行うことができる。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えば、ウォブルピットを用いることができる。なお、光記録媒体がカード形状の場合には、サーボピットパターンは無くてもよい。
【0163】
前記基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターに過剰な負荷をかけることがある。
【0164】
−反射膜−
前記反射膜は、前記基板のサーボピットパターン表面に形成される。
前記反射膜の材料としては、記録光や参照光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。使用する光の波長が400〜780nmである場合には、例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、などを使用することが好ましい。使用する光の波長が650nm以上である場合には、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金、TiN、などを使用することが好ましい。
なお、前記反射膜として、光を反射すると共に、追記及び消去のいずれかが可能な光記録媒体、例えば、DVD(ディジタル ビデオ ディスク)などを用い、ホログラムをどのエリアまで記録したかとか、いつ書き換えたかとか、どの部分にエラーが存在し交替処理をどのように行ったかなどのディレクトリ情報などをホログラムに影響を与えずに追記及び書き換えすることも可能となる。
【0165】
前記反射膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等の点で優れている。
前記反射膜の厚みとしては、十分な反射率を実現し得るように、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
【0166】
−第一ギャップ層−
前記第一ギャップ層は、必要に応じて前記フィルタ層と前記反射膜との間に設けられ、第二の基板表面を平滑化する目的で形成される。また、記録層内に生成されるホログラムの大きさを調整するのにも有効である。即ち、前記記録層は、記録用参照光及び情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるので、前記記録層とサーボピットパターンとの間にギャップを設けることが有効となる。
前記第一ギャップ層は、例えば、サーボピットパターンの上から紫外線硬化樹脂等の材料をスピンコート等で塗布し、硬化させることにより形成することができる。また、フィルタ層として透明基材の上に塗布形成したものを使用する場合には、該透明基材が第一ギャップ層としても働くことになる。
前記第一ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0167】
−第二ギャップ層−
前記第二ギャップ層は、必要に応じて記録層とフィルタ層との間に設けられる。
前記第二ギャップ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル=ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のような透明樹脂フィルム、又は、JSR社製商品名ARTONフィルムや日本ゼオン社製商品名ゼオノアのような、ノルボルネン系樹脂フィルム、などが挙げられる。これらの中でも、等方性の高いものが好ましく、TAC、PC、商品名ARTON、及び商品名ゼオノアが特に好ましい。
前記第二ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0168】
ここで、本発明の前記反射膜、前記第一及び前記第二ギャップ層を有する光記録媒体の具体例について、図面を参照して更に詳しく説明する。
【0169】
<光記録媒体の具体例>
図8は、本発明の具体例における光記録媒体の構造を示す概略断面図である。この具体例1に係る光記録媒体22では、ポリカーボネート樹脂又はガラスの第二の基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3上にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。なお、図8では第二の基板1全面にサーボピットパターン3が形成されているが、図3に示すように、周期的に形成されていてもよい。また、このサーボピットパターン3の高さは、通常1750Å(175nm)であり、基板を始め他の層の厚みに比べて充分に小さいものである。
【0170】
第一ギャップ層8は、紫外線硬化樹脂等の材料を第二の基板1の反射膜2上にスピンコート等により塗布して形成される。第一ギャップ層8は、反射膜2を保護すると共に、記録層4内に生成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効である。つまり、記録層4において記録用参照光と情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるため、記録層4とサーボピットパターン3との間にギャップを設けると有効である。
第一ギャップ層8上にはフィルタ層6が設けられ、該フィルタ層6と第一の基板5(ポリカーボネート樹脂基板やガラス基板)によって記録層4を挟むことによって光記録媒体21が構成される。
【0171】
図10において、フィルタ層6は、赤色光のみを透過し、それ以外の色の光を通さないものである。従って、情報光、記録及び再生用参照光は緑色又は青色の光であるので、フィルタ層6を透過せず、反射膜2まで達することなく、戻り光となり、入出射面Aから出射することになる。
このフィルタ層6は、螺旋ピッチが液晶層の厚み方向に連続的に変化した単層のコレステリック液晶層からなる。このコレステリック液晶層からなるフィルタ層6は、第一ギャップ層8上に塗布によって直接形成してもよいし、基材上にコレステリック液晶層を形成したフィルムを光記録媒体形状に打ち抜いて配置してもよい。螺旋ピッチが液晶層の厚み方向に連続的に変化した単層のコレステリック液晶層によって、λ〜λ/cos20°、特にλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上となり、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることがなくなる。
【0172】
具体例における光記録媒体22は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。カード形状の場合にはサーボピットパターンは無くてもよい。また、この光記録媒体21では、第二の基板1は0.6mm、第一ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は2〜3μm、記録層4は0.6mm、第一の基板5は0.6mmの厚みであって、合計厚みは約1.9mmとなっている。
【0173】
次に、図10を参照して、光記録媒体22周辺での光学的動作を説明する。まず、サーボ用レーザから出射した光(赤色光)は、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、対物レンズ12を通過する。対物レンズ12によってサーボ用光は反射膜2上で焦点を結ぶように光記録媒体22に対して照射される。つまり、ダイクロイックミラー13は緑色や青色の波長の光を透過し、赤色の波長の光をほぼ100%反射させるようになっている。光記録媒体22の光の入出射面Aから入射したサーボ用光は、第一の基板5、記録層4、フィルタ層6、及び第一ギャップ層8を通過し、反射膜2で反射され、再度、第一ギャップ層8、フィルタ層6、記録層4、及び第一の基板5を透過して入出射面Aから出射する。出射した戻り光は、対物レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、サーボ情報検出器(不図示)でサーボ情報が検出される。検出されたサーボ情報は、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、スライドサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料は、赤色の光では感光しないようになっているので、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。また、サーボ用光の反射膜2による戻り光は、ダイクロイックミラー13によってほぼ100%反射するようになっているので、サーボ用光が再生像検出のためのCMOSセンサ又はCCD14で検出されることはなく、再生光に対してノイズとなることもない。
なお、図4に示したλ〜1.3λの反射域は、λ=532nmのとき1.3λ=692nmとなり、サーボ用光が655nmの場合はサーボ用光を反射してしまう。ここに示すλ〜1.3λの範囲はフィルタ層における±40°入射光への適性であるが、実際にそうした大きな斜め光まで使用する場合は、入射角±20°以内のサーボ用光をマスキングして使用すれば支障なくサーボ制御できる。また、使用するフィルタ層におけるコレステリック液晶層の螺旋ピッチを十分大きくすれば、フィルタ層内での入射角を±20°以内で全て設計することも容易であり、その場合は図6に示すλ〜1.1λのコレステリック液晶層でよいのでサーボ用光透過には全く支障がなくなる。
【0174】
また、記録用/再生用レーザから生成された情報光及び記録用参照光は、偏光板16を通過して線偏光となりハーフミラー17を通過して1/4波長板15を通った時点で円偏光になる。ダイクロイックミラー13を透過し、対物レンズ11によって情報光と記録用参照光が記録層4内で干渉パターンを生成するように光記録媒体21に照射される。情報光及び記録用参照光は入出射面Aから入射し、記録層4で干渉し合って干渉パターンをそこに生成し、該干渉パターンを記録する。その後、情報光及び記録用参照光は記録層4を通過し、フィルタ層6に入射するが、該フィルタ層6の底面までの間に反射されて戻り光となる。つまり、情報光と記録用参照光は反射膜2までは到達しない。フィルタ層6は螺旋ピッチが液晶層の厚み方向に連続的に変化した単層のコレステリック液晶層から形成され、赤色光のみを透過する性質を有するからである。あるいは、フィルタ層を漏れて通過する光を入射光強度の20%以下に抑えていれば、たとえその漏れ光が底面に到達して戻り光となっても、再度フィルタ層で反射されるので再生光へ混じる光強度は20%×20%=4%以下となり、実質的に問題とはならない。
【0175】
(光記録媒体の製造方法)
本発明の光記録媒体の製造方法は、本発明の光記録用組成物を調製する組成物調製工程と、前記光記録用組成物からなる記録層を基材上に積層する記録層積層工程と、フィルタ層形成工程とを少なくとも含み、反射膜形成工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0176】
―組成物調整工程―
前記組成物調整工程は、マトリックスポリマーの原材料である前記エポキシド化合物と前記硬化剤とを混合し、更に、フォトポリマー成分である重合性モノマー、感光性重合開始剤、及び硬化を促進するための硬化触媒とを均一に混合する工程である。ここで前記エポキシド化合物と前記硬化剤との混合は、前記エポキシド化合物の固形分比率を1としたとき、0.7〜1.3の範囲であることが好ましく、0.8〜1.2の範囲であることがより好ましい。また、調液は温度が10〜30℃の範囲内、湿度が10〜50%の範囲内で行われることが好ましい。この範囲において、可撓性に優れ、かつ温湿度変化に耐え、光記録組成物として良好な性質を示すものが得られる。
【0177】
−フィルタ層形成工程−
前記フィルタ層形成工程は、本発明の前記光記録媒体用フィルタを光記録媒体形状に加工し、該加工したフィルタを前記第二の基板に貼り合わせてフィルタ層を形成する工程である。ここで、本発明の前記光記録媒体用フィルタの製造方法については、上述した通りである。
前記光記録媒体形状としては、ディスク形状、カード形状、などが挙げられる。
前記加工としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プレスカッターによる切り出し加工、打ち抜きカッターによる打ち抜き加工、などが挙げられる。前記貼り合わせでは、例えば、接着剤、粘着剤、などを用いて気泡が入らないようにフィルタを基板に貼り付ける。
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UV硬化型、エマルジョン型、一液硬化型、二液硬化型等の各種接着剤が挙げられ、それぞれ公知の接着剤を任意に組み合わせて使用することができる。
前記粘着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、などが挙げられる。
前記接着剤又は前記粘着剤の塗布厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、光学特性や薄型化の観点から、接着剤の場合、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。また、粘着剤の場合、1〜50μmが好ましく、2〜30μmがより好ましい。
【0178】
なお、場合によっては、基板上に直接フィルタ層を形成することもできる。例えば、基板上に色材含有層用塗布液を塗布して色材含有層を形成し、該色材含有層上にスパッタリング法により誘電体蒸着膜を形成する方法などが挙げられる。
【0179】
−記録層積層工程−
前記記録層積層工程は、前記フィルタ層上に、ホログラフィにより情報を記録する記録層を積層する工程であり、前記組成物調製工程において調製された本発明の光記録用組成物を塗工することにより積層する工程である。
【0180】
<光記録再生方法>
前記光記録再生方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の光記録方法により記録された光記録媒体に対して、記録時の参照光の照射と、同一の方向から同じ光を照射することにより再生する方法などが挙げられる。前記光を前記光記録媒体の記録層に形成された干渉像に照射すると、該干渉像に対応した記録情報としての回折光が生成され、該回折光を受光することにより再生することができる。
【実施例】
【0181】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
本発明の光記録用組成物を調製し、該光記録用組成物を含む記録層を積層した光記録媒体を作成し、作成時の臭気を官能評価し、作成後に該記録層の欠陥を検査し、更に、情報光および参照光を、作成した光記録媒体に照射し、干渉像を形成して前記記録層へ記録した。また、調製した光記録用組成物の経時安定性を評価した。前記光記録媒体は、該光記録媒体用フィルタを基板上に積層した基板上に積層される場合と、透明な支持体上に積層される場合とがある。実施例1〜7、比較例1〜5においては、該光記録媒体用フィルタを基板上に積層した基板上に積層される場合について記述する。
【0182】
(実施例1)
<光記録媒体用フィルタの作製>
−色材含有層の形成−
まず、ポリカーボネートフィルム(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名ユーピロン)厚み100μm上に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名MP203)を厚み1μmとなるように塗布したベースフィルムを用意した。
【0183】
次に、下記組成の色材含有層用塗布液を常法により調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・赤色顔料(C.I.ピグメントレッド9)・・・・・・・・・・・・・10質量部
・バインダー樹脂(ポリビニルアルコール樹脂、株式会社クラレ製)・100質量部
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・700質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0184】
次に、前記ベースフィルム上に、前記色材含有層用塗布液をバーコーターで塗布し、乾燥させて、厚み3μmの色材含有層を形成した。
【0185】
−誘電体蒸着層の膜厚構成及び反射特性についてのシミュレーション−
次に、光学薄膜計算ソフト(商品名:TFCalc、Software Spectra社製)を用いて、以下の計算条件で誘電体蒸着層の膜厚構成及び反射特性についてのシミュレーションを行った。
【0186】
<計算条件>
・TiOやMgFの屈折率はTFCalcのデータベース値を用いた。
・535nmの反射率、650nmの透過率をそれぞれ高めるように膜厚を最適化した。
・媒質の屈折率は1.52とした。
・波長は、535nm記録及び650nmトラッキングで計算した。なお、535nm記録及び780nmトラッキング、405nm記録及び650nmトラッキング、405nm記録及び780nmトラッキング、などの組み合わせであってもよい。
【0187】
<3層積層の場合>
誘電体薄膜を3層積層した場合のシミュレーションの結果を、表1及び表2に示す。
【0188】
【表1】

【表2】

【0189】
<5層積層の場合>
誘電体薄膜を5層積層した場合のシミュレーションの結果を、表3及び表4に示す。
【0190】
【表3】

【表4】

【0191】
<7層積層の場合>
誘電体薄膜を7層積層した場合のシミュレーションの結果を、表5及び表6に示す。
【0192】
【表5】

【表6】

【0193】
<9層積層の場合>
誘電体薄膜を9層積層した場合のシミュレーションの結果を、表7及び表8に示す。
【0194】
【表7】

【表8】

【0195】
以上のシミュレーションの結果から、誘電体薄膜を3層〜9層の積層した場合において、実用的な反射特性の結果が得られ、反射特性及び生産性とのバランスから7層の積層が最も好ましいことが確認できた。
【0196】
−誘電体蒸着フィルタの形成−
まず、厚み100μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フイルム株式会社製、フジタック12/3)上にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製)を厚み0.5μmとなるように塗布した基材フィルムを用意した。
次に、前記基材フィルム上に、マルチチャンバ法によるスパッタリング(Unaxis社製、Cube)により、前記7層積層の場合のシミュレーションと同様にして、7層積層した誘電体蒸着フィルタを作製した。
【0197】
前記色材含有層を設けたベースフィルムと前記誘電体蒸着フィルタとを接着剤で貼り合わせて、光記録媒体用フィルタを作製した。
得られた光記録媒体用フィルタについて、光反射特性を分光反射測定器(光源として浜松ホトニクス株式会社製、L−5662、フォトマルチチャンネルアナライザーとして浜松ホトニクス株式会社製、PMA−11)を用いて測定した。
その結果、実施例1の光記録媒体用フィルタは、入射角度±40°以内の光に対して選択波長である532nm光を30%以上反射できることが認められた。
【0198】
−光記録媒体の作製−
前記光記録媒体は、第一の基板、第二の基板と、記録層と、フィルタ層とからなる光記録媒体を作製した。
前記第二の基板としては、直径120mm、内径15mm、板厚0.6mmのDVD+RW用に用いられている一般的なポリカーボネート樹脂製基板を使用した。この基板表面には、全面にわたってサーボピットパターンが形成されており、そのトラックピッチは0.74μmであり、溝深さは140nm、溝幅は300nmである。
まず、第二の基板のサーボピットパターン表面に反射膜を成膜した。反射膜材料には銀(Ag)を用いた。成膜はDCマグネトロンスパッタリング法により厚み150nmのAg反射膜を成膜した。前記反射膜の上に第一ギャップ層として、厚み100μmのポリカーボネートフィルムを用い、紫外線硬化樹脂にて接着した。
【0199】
次に、作製した光記録媒体用フィルタを前記基板に設置できるように所定のディスクサイズに打ち抜き、ベースフィルム面をサーボピットパターン側にして貼り付けた。貼り合わせには紫外線硬化性樹脂や粘着剤を用いて気泡が入らないようにして行った。以上によりフィルタ層を形成した。
【0200】
前記光記録用組成物として、以下の組成物からなる液を調製した。調液環境は、温度25℃湿度40%の雰囲気にて行った。前期調液後、30分経過時の該光記録用組成物の粘度値を、粘度計(CMCマテリアルズ(株)製、VISCOMATE VM−10A)にて測定した。
【0201】
光記録用組成物(A)
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・ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400P) 71質量%
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700) 17質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0202】
得られた光記録用組成物液を、外周120mm、内周116mm、厚み200μmの外周土手と、外周36mm、内周15mmの内周土手を接着剤にてフィルタ層上に設けた基板1上に、ディスペンサーを用いて流し込み、さらに外周120mm、内周15mm、厚み0.6mmのポリカーボネート樹脂製カバー基板を積層し、外周辺縁部および内周辺縁部を固定用具にて固定したまま100℃1時間にて加熱硬化し、光記録媒体を得た。なお、図2は、本実施例に類似の形態を示す概略断面図である。
【0203】
―層の状態の評価―
光記録用組成物が硬化し、得られた前記記録層の層の状態を、共焦点光学顕微鏡にて深さ方向へ向かって観察し、基板との屈折率差から界面を判別し前記記録層の厚みを評価した。評価結果を表2に示す。
【0204】
―記録層への記録―
光源にはNd:YVO4レーザ(コヒーレント社製VECTOR532−1000−20、波長532nm、出力1W)出力を用い、これを情報光および参照光として用いて媒体に照射して干渉縞を生成し、該干渉縞を前記記録層に記録した。1J/cmの照射エネルギー以下で干渉縞が描けたか否かを、被照射部に赤色レーザ(コヒーレント社製RADIUS635−25、出力波長 635nm)を照射して回折光の有無を確認して判断した。
【0205】
(実施例2〜実施例5)は、下記に示す組成物を用いて、光記録用組成物を調製し、実施例1と同様にして光記録媒体を作成し、実施例1と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0206】
光記録用組成物(B)
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・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 73質量%
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700) 15質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
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【0207】
光記録用組成物(C)
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・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 64質量%
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700) 24質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0208】
光記録用組成物(D)
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・ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 64質量%
・メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物
(大日本インキ(株)製、エピクロンEXB−4400) 24質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
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【0209】
光記録用組成物(E)
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・ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 64質量%
・トリメチロールプロパントリグルシジルエーテル
(共栄社(株)製、エポライト100MF) 4.0質量%
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700) 20質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
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【0210】
光記録用組成物(F)
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・ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 71質量%
・メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物
(大日本インキ(株)製、エピクロンEXB−4400) 17質量%
・硬化触媒 トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
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【0211】
光記録用組成物(G)
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・ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 72質量%
・ジ(2−アミノエチル)メチルヘキサヒドロフタルジアミド 15質量%
・硬化触媒 トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
(Aldrich製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0212】
(比較例1〜比較例5)は、下記に示す組成物を用いて、光記録用組成物を調製し、実施例1と同様にして光記録媒体を作成し、実施例1と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0213】
光記録用組成物(V)
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・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 64質量%
・ペンタエリスリトールテトラメルカプトプロピオネート
(Aldrich製) 24質量%
・硬化触媒 トリスジメチルアミノメチルフェノール
(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0214】
光記録用組成物(W)
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・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 82質量%
・トリエチレンテトラミン(住友化学(株)製) 6質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
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【0215】
光記録用組成物(X)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 74質量%
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700) 14質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
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【0216】
光記録用組成物(Y)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(共栄社化学(株)製、エポライト400E) 63質量%
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
(新日本理化(株)製、リカシッドMH−700) 25質量%
・硬化触媒 DBU(東京化成工業(株)製) 4.0質量%
・重合性モノマー トリブロモフェノキシエチルアクリレート
(第一工業化学(株)製 BR−31) 7.3質量%
・感光性重合開始剤 イルガキュア784
(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.74質量%
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【0217】
光記録用組成物(Z)
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・Baytech WE−180
(バイエル社製イソシアネートプレポリマー) 15.7質量%
・Mondur ML
(バイエル社製イソシアネートプレポリマー) 15.7質量%
・トリブロモフェニルアクリレート 3.57質量%
・イルガキュア784 0.77質量%
・3,5ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン 0.02質量%
・ポリプロピレンオキサイドトリオール(平均分子量1,000) 63.3質量%
・ターシャリーブチルペルオキサイド 0.01質量%
・ジブチルラウレートスズ 0.98質量%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0218】
【表9】

注)(*)は、作成できなかったため、データなし。
表9の結果から、ポリプロピレングリコールジグリリジルエーテル及び硬化剤を用いた実施例1〜7の光記録用組成物では、容易に記録層の厚みを厚くすることができ、層に気泡などによる故障は生じないことが判った。
比較例1及び2では、層中に故障はないものの、好ましくない特異臭が発生することが判った。比較例3〜5では、特異臭はないものの、層の硬化が得られないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0219】
本発明の光記録用組成物は、高多重記録が可能な光記録用組成物を得ることができ、情報光及び参照光により形成する干渉像の高多重記録化を図ることができる感光性材料として好適に用いられる。
本発明の光記録媒体は、高多重記録が可能な光記録用組成物を得ることができ、情報光及び参照光により形成する干渉像の高多重記録化を図ることができるホログラム型の各種光記録媒体として幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】図1は、光記録媒体の部分断面図である。
【図2】図2は、ディスク型の光記録媒体の部分断面図である。
【図3】図3は、従来の光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、コレステリック液晶層の反射率特性を示すグラフである。
【図5】図5は、コレステリック液晶層の積層数と反射率特性を示すグラフである。
【図6】図6は、コレステリック液晶層の積層数と反射率特性を示すグラフである。
【図7】図7は、コレステリック液晶層の積層数と反射率特性を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明による実施形態に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図9】図9は、第一の形態の光記録媒体周辺の光学系の一例を示す説明図である。
【図10】図10は、第二の形態の光記録媒体周辺の光学系の一例を示す説明図である。
【図11】図11は、第二の形態の光記録再生装置の全体構成の一例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0221】
1 第二の基板
2 反射膜
3 サーボピットパターン
4 記録層
5 第一の基板
6 フィルタ層
6a、6b、6c、6d コレステリック液晶層
7 第二ギャップ層
8 第一ギャップ層
9 外周スペーサ
10 内周スペーサ
12 対物レンズ
13 ダイクロイックミラー
14 検出器
15 1/4波長板
16 偏光素子
17 ハーフミラー
20 光記録媒体
21 光記録媒体
22 光記録媒体
31 ピックアップ
41 記録層
42、43 支持体
44、45 反射防止層
50 光記録媒体
51 情報光
52 参照光
53 定着光
61、62 光源
64 ハーフミラー
65、66 ミラー
67、68、69 ビームエキスパンダ
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカルサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 走査部
100 光記録再生装置
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシド化合物及び硬化剤の混合により形成されるマトリックスポリマーと、不飽和炭素結合を有する重合性モノマーと、感光性重合開始剤とを含み、
前記硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸無水物、ポリアミド、カルボン酸化合物のブロック化合物、カルボン酸無水物化合物のブロック化合物、ポリアミド化合物のブロック化合物、カルボン酸の誘導体、カルボン酸無水物の誘導体、及びポリアミドの誘導体から選ばれる少なくともいずれかを含むことを特徴とする光記録用組成物。
【請求項2】
エポキシド化合物が、クリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、不飽和炭化水素の酸化により合成されるアルキルオキサイド類及びこれらの化合物の誘導体からなる請求項1に記載の光記録用組成物。
【請求項3】
重合性モノマーが、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物、スチレン化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物から選択される少なくともいずれかを含む請求項1から2のいずれかに記載の光記録用組成物。
【請求項4】
感光性重合開始剤が、感光性ラジカル重合開始剤、感光性カチオン重合開始剤から選択される少なくともいずれかを含む請求項1から3のいずれかに記載の光記録用組成物。
【請求項5】
光記録用組成物の全固形分中の重合性モノマーの含有量が、1〜20質量%、感光性重合開始剤の含有量が、0.1〜10質量%である請求項1から4のいずれかに記載の光記録用組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光記録用組成物を含む記録層を有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項7】
第一の基板と、記録層と、フィルタ層と、第二の基板とをこの順に有する請求項5に記載の光記録媒体。
【請求項8】
フィルタ層が、第一の光を透過し、第二の光を反射する請求項5から6のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項9】
可干渉性を有する情報光及び参照光を請求項6から8に記載の光記録媒体に照射し、前記情報光と前記参照光とにより干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録することを特徴とする光記録方法。
【請求項10】
情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、光記録媒体に前記情報光及び前記参照光を照射し、該情報光と該参照光との干渉による干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録する請求項9に記載の光記録方法。
【請求項11】
可干渉性を有する情報光及び参照光を請求項6から8のいずれかに記載の光記録媒体に照射し、前記情報光と前記参照光とにより干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録することを特徴とする光記録装置。
【請求項12】
請求項1から5に記載の光記録用組成物を調製する組成物調製工程と、
前記光記録用組成物からなる記録層を基材上に積層する記録層積層工程とを含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−57572(P2007−57572A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239718(P2005−239718)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】