説明

光輝性顔料及びその製造方法

【課題】優れた光安定性を有し、しかも独特なオパール色の光輝性光沢を維持できるオキシ塩化ビスマス光輝性顔料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、酸化チタン、酸化ケイ素などの金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を形成する。前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物の粒子径は0.5〜50nmであるのが好ましい。
オキシ塩化ビスマスの懸濁液に、チタン化合物、珪素化合物などの金属化合物を添加して、金属酸化物及び/又は金属水酸化物を析出して被覆を形成させ、必要に応じて300〜700℃程度で焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシ塩化ビスマスを主成分とする光輝性顔料及びその製造方法に関する。更に、本発明は、前記の光輝性顔料を含有する塗料組成物、塗装物品、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
光輝性顔料として、独特の柔らかい光輝性光沢を有し、非毒性であるオキシ塩化ビスマスが知られており、種々の塗装、化粧料に配合して用いられている。しかしながら、オキシ塩化ビスマスは、紫外線の照射により金属ビスマスに還元され黒色に変色しやすい。このような光変色性を抑制するため、可溶ビスマス塩と塩化物イオンを加水分解条件下の水性媒体中で混合してオキシ塩化ビスマス結晶の水性分散液を生じさせ、そして結晶形成の約80から95%が完了した時点で、酸化亜鉛、酸化チタン等の微細な金属酸化物を前記水性媒体に添加して、微細な金属酸化物粒子をオキシ塩化ビスマス結晶のほぼ表面に埋め込む方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−536592公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術は、オキシ塩化ビスマス結晶の表面に酸化亜鉛、酸化チタン等の微細な金属酸化物粒子を埋め込む方法であり、オキシ塩化ビスマス顔料の光安定性はある程度改良されるものの、オキシ塩化ビスマス結晶形成の約80から95%が完了した時点で金属酸化物粒子を添加するために工程管理が煩雑であることから、より簡便な方法による光安定性の更なる改良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、オキシ塩化ビスマスの光安定性を改良する方法を研究した結果、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を形成することにより、優れた光安定性が得られ、しかも独特なオパール色の光輝性光沢を維持でき、干渉色があまり発現しないことを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、(1)オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を有する光輝性顔料、(2)オキシ塩化ビスマスの懸濁液に金属化合物を添加して、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を形成する光輝性顔料の製造方法、(3)前記の光輝性顔料を含有する塗料組成物、塗装物品、化粧料などである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光輝性顔料は、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を有するため、オキシ塩化ビスマスの光変色性を抑制でき、また、独特の柔らかいオパール色の光輝性光沢を有する。しかも、被覆の厚みが1〜100nmであることから、干渉色があまり発現しない。
【0008】
前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、粒子径0.5〜50nmの粒子であり、この粒子が前記の被覆を形成すると、光変色性をより一層抑制することができる。
【0009】
前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、ケイ素、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、アンチモン及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有すると、光変色性をより一層抑制することができる。
【0010】
前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、焼成したものであると結晶性がよいため、オキシ塩化ビスマスの光変色性をより一層抑制することができる。
【0011】
本発明の光輝性顔料は、優れた光安定性を有し、BLB照射前後の色差ΔEが0.5〜10.0である。
【0012】
また、本発明は、オキシ塩化ビスマスの懸濁液に金属化合物を添加して、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を形成する光輝性顔料の製造方法であり、優れた光安定性を有する光輝性顔料を簡便に製造することができる。
【0013】
本発明の光輝性顔料は、光安定性に優れているため種々の用途に用いることができ、例えば、塗料組成物、塗装物品、化粧料などに用いることができ、塗装物品として、光輝性顔料を含む塗装が施された自動車、電車、建築物等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で得られたサンプルAの走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られたサンプルAの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を有する光輝性顔料である。オキシ塩化ビスマス自体は従来公知のものを用いることができ、粒子形状、粒子径等は適宜設定することができる。粒子形状は、独特なオパール色の光輝性光沢を持たせるため薄片状形状が好ましく、その粒子径は、薄片状粒子の最大粒径の個数平均値で表して0.1〜100μm程度が好ましく、1〜50μm程度がより好ましい。オキシ塩化ビスマスの結晶内部には、アルミニウム、ガリウム等の3価の金属イオンやランタン、セリウム等の希土類金属イオンを含有させると、光安定性が改良されるため好ましい。
【0016】
オキシ塩化ビスマスの粒子表面には、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を有することが重要であり、この被覆により優れた光安定性を有する光輝性顔料とすることができる。被覆の厚みを1〜100nmの範囲とすることにより、干渉色が強く発現しない。好ましい厚みとしては、10〜100nmであり、更に好ましい厚みは、20〜100nmである。金属酸化物及び/又は金属水酸化物の被覆は、一層でも二層以上の多層でもよく、また、被覆の各層の厚みは1〜100nmの範囲で適宜設定することができる。
【0017】
被覆を構成する金属酸化物及び/又は金属水酸化物は、遷移金属、ケイ素を含む典型金属の酸化物や水酸化物が挙げられる。金属酸化物には、含水酸化物、水和酸化物等が含まれる。具体的にはケイ素、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、アンチモン及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物及び/又は金属水酸化物が好ましく、紫外線遮蔽能が高いためにオキシ塩化ビスマスの光変色性を抑制できる酸化チタンがより好ましい。酸化チタンは、アモルファスでもよいが、ルチル、アナタース等の結晶形を有するものが好ましい。更に、酸化チタンの上にケイ素又はアルミニウムの金属酸化物及び/又は金属水酸化物の被覆を形成すると、紫外線に曝された際の酸化チタンの光触媒活性の発現を抑制することができるためより好ましい。
金属酸化物及び/又は金属水酸化物は、後述のように焼成したものが好ましく、焼成により結晶性がよくなるためにオキシ塩化ビスマスの光変色性をより一層抑制できる。焼成の温度は適宜設定することができるが、後述するように300〜700℃の範囲が好ましく、400〜600℃の範囲がより好ましい。
【0018】
本発明の光輝性顔料は、優れた光安定性を有しており、その指標として、BLB照射前後の色差ΔEで表して、好ましくは0.5〜10.0であり、より好ましくは0.5〜7.0であり、更に好ましくは0.5〜6.0である。BLB照射前後の色差ΔEは次のようにして測定する。光輝性顔料のサンプルを薬包紙上に広げ、8mW/cmの強度を持つブラックライト(BLB)にて24時間照射を行い、ブラックライト照射前のサンプルとブラックライト照射後のサンプルとの色差ΔEを次式から算出する。尚、色差の測定は、日本電色工業社製分光色彩計SD-5000を使用した。
色差ΔE=((L*−L*0)2 +(a*−a*0)2 +(b*−b*0)2(1/2)
*L*0、a*0、b*0;ブラックライト照射前の紛体L*値、a*値、b*値
*L*、a*、b* ;ブラックライト照射後の紛体L*値、a*値、b*値
【0019】
金属酸化物及び/又は金属水酸化物の被覆量は、被覆の厚みに応じて適宜設定することができ、例えば、オキシ塩化ビスマスの重量に対して0.01〜50重量%程度が好ましく、0.1〜10.0重量%程度がより好ましく、0.5〜5.0重量%程度が最も好ましい。金属酸化物及び/又は金属水酸化物の被覆量が0.01重量%より少ないと光安定性の改良が十分でないため好ましくなく、一方、50重量%より多くしても光安定性の更なる改良が行われにくいため好ましくない。
【0020】
本発明の光輝性顔料は、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に金属酸化物及び/又は金属水酸化物の被覆を備えた後に、カップリング剤、有機表面修飾剤等の有機物を被覆してもよい。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを用いることができる。チタネートカップリング剤としては、アミン系、亜リン酸型、ピロリン酸型、カルボン酸型等のチタネートカップリング剤を用いることができる。アルミネートカップリング剤としてはアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等を用いることができる。また、有機表面修飾剤は、溶媒、塗料組成物、プラスチックスへの分散性及び塗膜の耐久性を一層向上させるためなどに用いるものであって、その目的に応じて有機表面修飾剤の種類は適宜選定することができ、例えば、シリコーン、レシチン、樹脂、粘材、シラン化合物、フッ素化合物、紫外線吸収材、多価アルコール、アミノ酸、色素、脂肪酸、カルボン酸塩、金属石鹸、油剤、ワックスなどを用いるのが好ましく、更に、効果の異なる複数の処理剤を組み合わせることも可能である。カップリング剤及び/又は有機表面修飾剤の処理量は、目的に応じて適宜設定することができ、光輝性顔料に対して、有機物総量で表して0.1〜100重量%の範囲が適当である。
【0021】
次に、本発明は、光輝性顔料の製造方法であって、オキシ塩化ビスマスの懸濁液に金属化合物を添加して、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を形成する。
【0022】
オキシ塩化ビスマスの懸濁液は、オキシ塩化ビスマスを溶媒に懸濁したものであり、溶媒は、水溶媒、アルコール等の有機溶媒を用いることができ、水溶媒、アルコール溶媒又は水とアルコールの混合溶媒が好ましい。
【0023】
オキシ塩化ビスマスの懸濁液に、金属化合物を添加し、pH調整や加水分解などして、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物を析出させ、厚み1〜100nmの被覆を形成する。前記のpH調整や加水分解を行うと、被覆を構成する金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、粒子径0.5〜50nmの粒子となるため好ましい。
【0024】
金属化合物としては、遷移金属元素、ケイ素を含む典型金属元素の化合物が挙げられる。具体的には、ケイ素、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、アンチモン及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましく、紫外線遮蔽能の高い酸化チタンとなるチタン化合物がより好ましい。金属化合物としては、金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ナトリウム塩等の化合物を用いることができ、中和析出するpHに調整したり、加水分解するpHや温度に調整したり、あるいは、吸着反応により、金属の水酸化物、含水酸化物、水和酸化物、酸化物等を析出させる。金属酸化物及び/又は金属水酸化物を析出した後、溶媒を除去し、必要に応じて洗浄し、乾燥してもよい。
【0025】
また、必要に応じて金属酸化物及び/又は金属水酸化物を析出したオキシ塩化ビスマスを焼成するのが好ましい。焼成温度は適宜設定することができ、具体的には300〜700℃の範囲が好ましく、400〜600℃の範囲がより好ましい。300℃よりも低いと結晶性が低く十分な光安定性が得られにくいため好ましくなく、一方、700℃よりも高いと金属酸化物自体や金属水酸化物自体の焼結が起こりやすく黄変等の着色等が起こりやすいため好ましくない。焼成時間は適宜設定することができ、0.5〜10時間程度が適当である。焼成の雰囲気はいずれの雰囲気でもよく、大気、酸素ガス等の酸素含有雰囲気、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性雰囲気、水素ガス等の還元ガス雰囲気でもよい。
【0026】
このようにして得られた光輝性顔料は、必要に応じて粉砕して粉末状としてもよい。また、前記の無機物や有機物の表面処理を行ってもよい。更に、本発明の光輝性顔料を水性溶媒及び/又は有機溶媒に分散して、分散体とすることができる。溶媒としては、水性溶媒、アルコール、トルエン等の有機溶媒を用いることができ、光輝性顔料の含有量は適宜設定することができる。分散体を製造する際には、必要に応じて湿式粉砕や分級処理してもよい。
【0027】
本発明の光輝性顔料、それを含有した分散体は、光沢性付与剤として用いることができ、それらを含む組成物として例えば塗料組成物、インキやフィルム等のプラスチック成形物などが挙げられ、その優れた光輝性を利用することができる。このような組成物には、本発明の光輝性顔料を任意の量、好ましくは0.01重量%以上を配合し、そのほかにそれぞれの分野で使用される組成物形成材料を配合し、更に各種の添加剤を配合してもよい。
【0028】
塗料組成物やインキであれば、塗膜形成材料又はインキ膜形成材料、溶剤、分散剤、顔料、充填剤、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合する。塗膜形成材料としては例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂などの有機系成分や、オルガノシリケート、オルガノチタネートなどの無機系成分を用いることができ、インキ膜形成材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩酢ビ樹脂、塩素化プロピレン樹脂などを用いることができる。これらの塗膜形成材料、インキ膜形成材料には、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など各種のものを用いることができ特に制限はないが、モノマーやオリゴマーの紫外線硬化性樹脂を用い、光重合開始剤や光増感剤を配合し、塗布後に紫外光を照射して硬化させると、基材に熱負荷を掛けず、硬度や密着性の優れた塗膜が得られるので好ましい。
【0029】
また、プラスチック成形物であれば、プラスチック、顔料、染料、分散剤、滑剤、酸化防止材、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤などを本発明の光輝性顔料とともに練り込み、フィルム状などの任意の形状に成形する。プラスチックとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0030】
次に、本発明の光輝性顔料を含有する塗装物品としては、自動車、オートバイ、電車、船等の乗り物、ビル、橋、住宅等の建築物、携帯電話、パソコン、テレビ等の電気製品などが挙げられる。これらの塗装物品には、光輝性顔料を任意の量、好ましくは0.01重量%以上含む塗装を物品の表面に施す。
【0031】
塗装方法は従来公知の方法を用いることができ、前記の塗料組成物を電着塗装、スプレー、バーコーター、ディップィング等により物品の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて焼付けを行う。例えば、自動車の外板の塗装においては、一般的な塗膜積層形成の方法として「2コート1ベーク法」、隠蔽性を高める塗膜積層形成の方法として、「3コート2ベーク法」、「3コート1ベーク法」とよばれる従来方法を採用することができる。
【0032】
次に、化粧料には、本発明の光輝性顔料のほかに、効果を損なわない範囲において、通常化粧品や医薬品等に用いられる他の成分、例えば、その他の粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することができる。
【0033】
本発明の化粧料は、外皮に適用される化粧品、医薬品、及び医薬部外品に広く適用することが可能である。その剤型は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ゲル、エアゾール、ミスト、及びカプセル等、任意の形態で提供されることができる。また、化粧料の製品形態も任意であり、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、おしろい、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、サンスクリーン等のメーキャップ化粧料;ボディー化粧料;芳香化粧料;メーク落とし、洗顔料、ボディーシャンプー等の皮膚洗浄料;ヘアーリンス、シャンプー等の毛髪化粧料;軟膏;浴用剤;あぶら取り紙等、従来化粧料に用いるものであればいずれの形で適用することもできる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
実施例1
オキシ塩化ビスマス(PEARL-GLO UVR、BASF社製)10gを純水中に、10g/Lの濃度になるように分散させ、水温を20℃以下に保ちながら、四塩化チタン水溶液(オキシ塩化ビスマス重量に対して酸化チタンとして2.0重量%添加)と水酸化ナトリウム溶液をpH5以下になるように、2時間かけて並行添加を行い、サンプルAを得た。
次に、このサンプルAを電気炉(形式;SS-2030PKP、モトヤマ社製)にて400℃で2時間の焼成を行い、サンプルBを得た。
サンプルA、Bの被覆の厚みは、25〜30nmであり、その被覆は粒子径20〜25nmの粒子で形成されていた。
【0036】
実施例2
オキシ塩化ビスマス(PEARL-GLO UVR、BASF社製)10gを純水中に、10g/Lの濃度になるように分散させ、水温が80℃になるように昇温した。次に、ケイ酸ナトリウムをSiO2換算でオキシ塩化ビスマス重量に対して2.0重量%になるように添加した後、30分間熟成を行い、その後硫酸でpH調整(pH=7.0±0.1)を行った。更にろ過・洗浄し、120℃で12時間の乾燥を行い、サンプルCを得た。
次に、このサンプルCを電気炉(形式;SS-2030PKP、モトヤマ社製)にて400℃で2時間の焼成を行い、サンプルDを得た。
サンプルC、Dの被覆の厚みは、50〜70nmであり、その被覆は粒子径30〜50nmの粒子で形成されていた。
【0037】
比較例1
比較サンプルとして、実施例1で用いたオキシ塩化ビスマスそのものをサンプルEとした。
また、サンプルEを400℃で2時間焼成を行ったものをサンプルFとした。
【0038】
光安定性評価
各サンプルを薬包紙上に広げ、8mW/cmの強度を持つブラックライトにて24時間、48時間照射を行い、ブラックライト照射前サンプルとの色差ΔEで耐光性を評価した。尚、色差の測定は、日本電色工業社製分光色彩計SD-5000を使用した。
また、色差ΔEは次式にて計算を行った。(JIS Z 8730準拠)
色差ΔE=((L*−L*0)2 +(a*−a*0)2 +(b*−b*0)2(1/2)
*L*0、a*0、b*0;ブラックライト照射前の紛体L*値、a*値、b*値
*L*、a*、b* ;ブラックライト照射後の紛体L*値、a*値、b*値
結果を表1に示す。サンプルA、Cは、サンプルEに比べ、色差ΔEが小さく、光安定性がよく耐光性がよいことがわかった。更に、サンプルB、Dは、それぞれサンプルA、C、E、Fに比べ、色差ΔEが小さく、光安定性がよく耐光性がよいことがわかった。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の光輝性顔料は、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を有し、オキシ塩化ビスマスの光変色性を抑制でき、また、独特の柔らかいオパール色の光輝性光沢を有し、干渉色があまり発現しないことから、種々の用途に用いることができ、例えば、塗料組成物、塗装物品、化粧料などに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を有する光輝性顔料。
【請求項2】
前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、粒子径0.5〜50nmの粒子である請求項1に記載の光輝性顔料。
【請求項3】
前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、ケイ素、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、アンチモン及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素を含有する請求項1又は2に記載の光輝性顔料。
【請求項4】
前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、焼成したものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の光輝性顔料。
【請求項5】
BLB照射前後の色差ΔEが0.5〜10.0である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光輝性顔料。
【請求項6】
オキシ塩化ビスマスの懸濁液に金属化合物を添加して、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に、金属酸化物及び/又は金属水酸化物で構成された厚み1〜100nmの被覆を形成する光輝性顔料の製造方法。
【請求項7】
前記の金属酸化物及び/又は金属水酸化物が、粒子径0.5〜50nmの粒子である請求項6に記載の光輝性顔料の製造方法。
【請求項8】
前記の金属化合物が、ケイ素、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、アンチモン及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項6又は7に記載の光輝性顔料の製造方法。
【請求項9】
オキシ塩化ビスマスの懸濁液に金属化合物を添加して、オキシ塩化ビスマスの粒子表面に金属酸化物及び/又は金属水酸化物を析出させ、次いで、焼成する請求項6〜8のいずれか一項に記載の光輝性顔料の製造方法。
【請求項10】
前記の焼成の温度が300〜700℃である請求項9に記載の光輝性顔料の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光輝性顔料を含有する塗料組成物。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光輝性顔料を含有する塗装物品。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光輝性顔料を含有する化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−180403(P2012−180403A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42727(P2011−42727)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】