説明

光通信用アダプタとその組立方法

【課題】取り付けパネルが薄くなった場合に、ストッパー部材の形状を変えることなく、容易に取り付け可能なパネル厚を変更できる光通信用アダプタを提供する。
【解決手段】光通信用アダプタによれば、底壁に底壁凹部が形成され、両側壁に側壁第1凹部および側壁第2凹部が形成され、ストッパー部材の底板が底壁凹部に嵌合するとともに、ストッパー部材の両側板がフランジ部切り欠きまで連続した側壁第1凹部に嵌合することから、光通信用アダプタを薄いパネルへも容易に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ接続用コネクタどうしまたは光ファイバ接続用コネクタと半導体レーザ等の光発信装置とを接続する光通信用アダプタに関し、特に光通信用アダプタをパネル等へ固定する為のストッパー部材(ストッパー金具)の光通信用アダプタへの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、SC型に代表される幾つかの光通信用アダプタには、その外周面に光通信用アダプタ取り付けパネルと係合する金属製の係止ばねであるストッパー部材が設けられている。
【0003】
例えば、SC型光通信用アダプタ取り付けパネルの厚さはJIS C 5973において、1.6mmと規定されており、一般的なストッパー部材は1.6mm用を前提に設計されている。その為、パネルの厚さが薄い場合、ストッパー部材を新たに作製する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−45622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、光通信用アダプタを取り付けて使用する装置等の軽量化に伴い、取り付けパネルの薄板品が採用され始めている。
【0006】
一般的に、ストッパー部材は弾性を有する薄板状部材を金型によりプレス成形で加工しており、形状の異なるストッパー部材を作製するには、多大な費用が発生する問題があった。
【0007】
また、前記特許文献1に開示の光通信用アダプタは、弾性係合板部を設けることで1mmまでの厚みのあるパネルへアダプタを取り付けることが可能であるが、1mm以下のパネルへの取り付けが困難である。更に、フランジ部も幅が狭い光通信用アダプタの場合は、アダプタ取り付け穴の位置間隔が狭くなる為、弾性係合板部の幅を広くできなくなり、十分なバネ性が得られなくなる可能性がある。
【0008】
本発明は、光通信用アダプタの取り付けパネルが薄くなった場合やフランジ部の幅が狭くなった場合に、ストッパー部材の形状を変えることなく、容易に取り付け可能なパネル厚を変更できる光通信用アダプタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の前提は、前後方向へ延びる頂底壁および両側壁と、それら壁に囲繞されて前後方向へ貫通し、光ファイバ接続用コネクタを着脱可能に挿入する挿入孔と、前記頂底壁および両側壁の外側に張り出したフランジ部と、挿入孔の中央部に設置されてコネクタのフェルールを支持する光接続用スリーブとを有する光通信用アダプタである。
【0010】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、前記アダプタが、前記挿入孔の両端部の少なくとも一方に着脱可能に設置されるストッパー部材を含み、前記ストッパー部材が、底板と、前記底板の両側縁から上方へ延びる両側板と、前記両側板に形成された弾性変形可能な係止板とを有し、前記両端部に延びる底壁の外面には、該外面から内面に向かって凹む底壁凹部が形成され、前記両端部に延びる両側壁の外面には、該外面から内面に向かって凹む側壁第1凹部と、前記側壁第1凹部よりも前記挿入孔入り口側に位置し、該外面から内面に向かって凹むとともに前記側壁第1凹部よりも凹み深さが浅い側壁第2凹部とが形成され、前記側壁第1凹部はフランジ部に切り欠き形状を形成するまで連続した凹部であり、前記ストッパー部材の底板が前記底壁凹部に嵌合し、前記ストッパー部材の両側板が前記側壁第1凹部に嵌合し、且つ、前記フランジ部切り欠きへ前記ストッパー部材が入り込んだ状態であることを特徴とする光通信用アダプタにある。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記光接続用スリーブを内臓保持する貫通孔が複数並設されていることを特徴とする光通信用アダプタにある。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1〜2の何れかの態様において、前記アダプタに前記ストッパー部材を取り付ける手順が、前記アダプタの側壁第2凹部を前記両側板で挟み込んだ後、前記フランジ切り欠きまで前記ストッパー部材を側壁凹部に沿って移動させながら嵌合することを特徴とする光通信用アダプタにある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の光通信用アダプタによれば、底壁に底壁凹部が形成され、両側壁に側壁第1凹部および側壁第2凹部が形成され、ストッパー部材の底板が底壁凹部に嵌合するとともに、ストッパー部材の両側板がフランジ部切り欠きまで連続した側壁第1凹部に嵌合することから、光通信用アダプタを規格より薄いパネルへも容易に固定することができる。アダプタは、ストッパー部材の底板を底壁に形成された底壁凹部に嵌合させ、ストッパー部材の両側板を両側壁に形成された側壁第1凹部に嵌合させることで、ストッパー部材をアダプタに簡単に取り付けることができるから、ストッパー部材のアダプタに対する取り付けが容易であり、組み立てに手間や時間がかからず、その結果、アダプタ自体を低い単価で作ることができる。
【0014】
請求項2の光通信用アダプタによれば、両側壁の間に位置する少なくとも1つの仕切壁を含むとともに、仕切板を挟んで横方向へ並ぶ少なくとも2つの挿入孔を備えた光通信用アダプタは、少なくとも2つの光ファイバ接続用コネクタを横方向へ並べた状態でそれらコネクタを挿入孔に挿入し、それらコネクタを介してレーザ光を接続させることができ、一度に複数の線路による光接続を行うことができる。アダプタは、ストッパー部材の底板を底壁に形成された底壁凹部に嵌合させ、ストッパー部材の両側板を両側壁に形成された側壁第1凹部に嵌合させることで、ストッパー部材をアダプタに簡単に取り付けることができるから、ストッパー部材のアダプタに対する取り付けが容易であり、組み立てに手間や時間がかからず、その結果、アダプタ自体を低い単価で作ることができる。
【0015】
請求項3の光通信用アダプタによれば、前記アダプタに前記ストッパー部材を取り付ける手順が、前記アダプタの側壁第2凹部を前記両側板で挟み込んだ後、前記フランジ切り欠きまで前記ストッパー部材を側壁凹部に沿って移動させながら嵌合することができるから、ストッパー部材のアダプタに対する取り付けが容易であり、組み立てに手間や時間がかからず、その結果、アダプタ自体を低い単価で作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一例として示す光通信用アダプタの斜視図。
【図2】図1のD−D線矢視断面図。
【図3】アダプタの頂壁面を示す平面図。
【図4】ストッパー部材取り付け前のアダプタ底壁を示す底面図。
【図5】ストッパー部材取り付け前のアダプタ側壁を示す側面図。
【図6】一例として示すストッパー部材の斜視図。
【図7】光通信用アダプタをパネルへ固定した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一例として示す光通信用アダプタの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る光通信用アダプタの詳細を説明すると、以下の通りである。なお、図2は図1アダプタのD−D線矢視断面図である。図3はアダプタの頂壁面を示す平面図である。図4はストッパー部材50(係止金具)を取り付ける以前のアダプタ10の底壁12を示す底面図である。図5はストッパー部材50を取り付ける以前のアダプタ10の側壁13を示す側面図である。図6は、一例として示すストッパー部材50の斜視図である。図7は、光通信用アダプタをパネルへ固定した状態の斜視図である。図1〜5では、前後方向を矢印A、横方向を矢印Bで示し、上下方向を矢印Cで示す。
【0018】
光通信用アダプタ10は、半導体レーザ等の光発信装置から発信されるレーザ光(光信号)を光ファイバを利用して伝送する光通信において、光ファイバ等を接続する接続手段として利用される。アダプタ10は、合成樹脂あるいは亜鉛ダイカスト等の金属から作られたハウジングである。
【0019】
アダプタ10は、上下方向へ離間対向して前後方向へ延びる頂底壁11,12と、横方向へ離間対向して前後方向へ延びる両側壁13,14と、両側壁13,14の間に位置して前後方向へ延びる仕切壁15と、それら壁11〜15に囲繞されて前後方向へ貫通する2つの挿入孔17と、それら挿入孔17の中央部20に設置された2つのスリーブホルダ40および2つの光接続用割りスリーブ30(図2参照)と、金属製(たとえば、ばね用ステンレス鋼板)のストッパー部材50とを有する。両側壁13,14は、頂底壁11,12に直交してそれら壁11,12につながっている。
【0020】
挿入孔17は、前後方向へ離間対向する一対の両端部18,19と、それら両端部18,19の間に位置する中央部20とを有する。挿入孔17には、光ファイバ接続用コネクタが着脱可能に挿入される。
【0021】
アダプタ10の底壁12の外面には、中心線Lを挟んで前後方向に並ぶ2つの底壁凹部28が作られている。底壁12の外面から内面に向かって上下方向へ凹む矩形の底壁凹部28は、中心線Lを挟んで対称型に作られている(底壁凹部28が鏡像関係にある)。
【0022】
アダプタ10の両側壁13,14の外面には、それらの外面から内面に向かって横方向へ凹む側壁凹部25が作られている。側壁凹部25は、一方の側壁13と他方の側壁14とにおいて同一形状に作られ、中心線Lを挟んで対称型に作られている(側壁凹部25が鏡像関係にある)。側壁凹部25は、図5に示すように、底壁12の側に位置して底壁凹部28につながる側壁第1凹部26と、側壁第1凹部26の挿入孔17入り口側に位置する側壁第2凹部27から形成されている。
【0023】
側壁第1凹部26は、図3に示すように、フランジ部16の内側まで連続する構造であり、フランジ部16に切り欠き部26aを形成する。側壁第1凹部26は、その凹み深さ(両側壁13,14の外面から内面に向かう第1凹部26の凹み寸法)が側壁第2凹部27のそれよりも深い。側壁第2凹部27と両側壁13,14との間に残差が生じ、両側壁13,14が第2凹部27に対する障壁となっている。側壁第1凹部26と側壁第2凹部27との間に残差が生じ、第2凹部27が第1凹部26に対する障壁となっている。
【0024】
ストッパー部材50は、図6に示すように、略矩形の底板51と、底板51の両側縁から上方へ延びる両側板52と、両側壁52に形成されて横方向外方へ末広がりに傾斜して延びる係止板53と、係止板連結部54から形成されている。ストッパー部材50の両側板52は、その平面形状が側壁第1凹部26の形状と略同形同大である。
【0025】
ストッパー部材50のアダプタ10への設置手順は、ストッパー部材50の両側板52をその弾性力に抗して横方向外方へ押し広げた後、ストッパー部材50の係止板連結部54が側壁第2凹部27の上に重なるようにストッパー部材50の位置決めを行い、両側板52を側壁第1凹部26と側壁第2凹部27の上に嵌め込み、ストッパー部材50をフランジ部16側へ滑らせるように切り欠き部26aに突き当たるまで移動して完全に側壁第1凹部26へ嵌め込む。
【0026】
ストッパー部材50は、アダプタ10の一方の端部19の側壁凹部25および低壁凹部28に着脱可能に固定されている。ストッパー部材50の底板51は、底壁凹部28に嵌め込まれ、底壁凹部28の全体に嵌合かつ密着している。底板51が底壁凹部28に嵌め込まれた状態では、底板51の外面と底壁12の外面とが略同一平面になっている。ストッパー部材50の両側板52は、側壁第1凹部26に嵌め込まれ、側壁第1凹部26の全体に嵌合かつ密着している。両側板52が側壁第1凹部26に嵌め込まれた状態では、両側板52の外面と両側壁13,14の外面とが略同一平面になっている。
【0027】
アダプタ10は、ストッパー部材50の底板51をアダプタ10の底壁12の外面に形成された底壁凹部28に嵌合させ、ストッパー部材50の両側板52を両側壁13,14の外面に形成された側壁第1凹部26に嵌合させることで、ストッパー部材50をアダプタ10に簡単に取り付けることができる。アダプタ10は、ストッパー部材50のアダプタ10に対する取り付けが容易であり、アダプタ10の組み立てに手間や時間がかからず、その結果、アダプタ10自体を低い単価で作ることができる。
【0028】
なお、図1のアダプタ10では1つの仕切板15が設置され、横方向へ2つの挿入孔17が並んでいるが、仕切板15の数に特に限定はなく、アダプタ10に2つ以上の仕切板15が設置され、3つ以上の挿入孔17が横方向へ並んでいてもよい。また、図1のアダプタ10ではストッパー部材50が一方の端部19の側壁凹部25および低壁凹部28に設置されているが、ストッパー部材50を他方の端部18のみに設置することもでき、ストッパー部材50を両端部18,19に設置することもできる。
【符号の説明】
【0029】
10 光通信用アダプタ
11 頂壁
12 底壁
13 側壁
14 側壁
15 仕切壁
16 フランジ部
17 挿入孔
18 端部
19 端部
20 中央部
25 側壁凹部
26 側壁第1凹部
27 側壁第2凹部
28 底壁凹部
30 光接続用スリーブ
50 ストッパー部材
51 底板
52 両側板
53 係止板
54 係止板連結部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向へ延びる頂底壁および両側壁と、それら壁に囲繞されて前記前後方向へ貫通し、光ファイバ接続用コネクタを着脱可能に挿入する挿入孔と、前記頂底壁および両側壁の外側に張り出したフランジ部と、前記挿入孔の中央部に設置されて前記コネクタのフェルールを支持する光接続用スリーブとを有する光通信用アダプタにおいて、
前記アダプタが、前記挿入孔の両端部の少なくとも一方に着脱可能に設置されるストッパー部材を含み、前記ストッパー部材が、底板と、前記底板の両側縁から上方へ延びる両側板と、前記両側板に形成された弾性変形可能な係止板とを有し、
前記両端部に延びる底壁の外面には、該外面から内面に向かって凹む底壁凹部が形成され、前記両端部に延びる両側壁の外面には、該外面から内面に向かって凹む側壁第1凹部と、前記側壁第1凹部よりも前記挿入孔入り口側に位置し、該外面から内面に向かって凹むとともに前記側壁第1凹部よりも凹み深さが浅い側壁第2凹部とが形成され、
前記側壁第1凹部はフランジ部に切り欠き形状を形成するまで連続した凹部であり、
前記ストッパー部材の底板が前記底壁凹部に嵌合し、前記ストッパー部材の両側板が前記側壁第1凹部に嵌合し、且つ、前記フランジ部切り欠きへ前記ストッパー部材が入り込んだ状態であることを特徴とする光通信用アダプタ。
【請求項2】
請求項1記載の光通信用アダプタにおいて、
前記光接続用スリーブを内臓保持する貫通孔が複数並設されていることを特徴とする光通信用アダプタ。
【請求項3】
請求項1〜2の何れか1項記載の光通信用アダプタにおいて、
前記アダプタに前記ストッパー部材を取り付ける手順が、前記アダプタの側壁第2凹部を前記両側板で挟み込んだ後、前記フランジ切り欠きまで前記ストッパー部材を側壁凹部に沿って移動させながら嵌合することを特徴とする光通信用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−53083(P2012−53083A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193093(P2010−193093)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【Fターム(参考)】