光通信装置
【課題】保持部材に保持された状態にある光ファイバであっても、LDからの光の入射位置が迅速かつ正確にコアの中心近傍に導くようにする位置調整を行うことができる光通信装置を提供すること。
【解決手段】光通信装置は、光源と、光ファイバと保持部材からなり入射端面におけるコアに入射した光を透過する光伝送手段と、光源と光伝送手段との間に配設される集光レンズと、集光レンズを介した光が入射端面で形成するスポットを第一、第二の方向に移動させる移動手段と、入射端面での反射光を複数の受光エリアで受光する受光手段と、各受光エリアからの出力に基づいて、コア中心を基準としたスポット中心の第一、第二の方向へのずれ量に関する各出力差信号を生成する第一、第二出力差演算手段と、全ての受光エリアからの出力を加算して和信号を生成する和信号生成手段と、各信号に基づいて、移動手段を駆動制御する制御手段と、を有する構成にした。
【解決手段】光通信装置は、光源と、光ファイバと保持部材からなり入射端面におけるコアに入射した光を透過する光伝送手段と、光源と光伝送手段との間に配設される集光レンズと、集光レンズを介した光が入射端面で形成するスポットを第一、第二の方向に移動させる移動手段と、入射端面での反射光を複数の受光エリアで受光する受光手段と、各受光エリアからの出力に基づいて、コア中心を基準としたスポット中心の第一、第二の方向へのずれ量に関する各出力差信号を生成する第一、第二出力差演算手段と、全ての受光エリアからの出力を加算して和信号を生成する和信号生成手段と、各信号に基づいて、移動手段を駆動制御する制御手段と、を有する構成にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報による変調を施された光をLDから照射し、集光レンズを介して光ファイバに入射、伝送させる光通信装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報伝送のために光通信装置が多用されている。該光通信装置では、光伝送効率を高めて信号伝送の精度を向上させるために、LDからの光が光ファイバのコアの略中心に集光するようにする必要がある。具体的には、LD、集光レンズ、光ファイバにおける入射端面の相対的位置を高精度で調整をする必要がある。このような位置調整を可能とする光通信装置は、例えば、以下の特許文献1に開示される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−321669号公報
【0004】
特許文献1に記載の光通信装置は、光ファイバの入射端面からの反射光を4分割フォトディテクタで受光する。そして、各受光エリアからの出力が所定の関係を有するようにLD、集光レンズ、光ファイバの相対位置の粗調整および微調整を行っている。
【0005】
詳しくは、粗調整とは、LDからの光の入射位置をより迅速に光ファイバの入射端面におけるコア近傍に導くために、該光の入射位置を比較的広範囲にわたって低分解能で移動させる調整のことをいう。粗調整は、主として初期調整時に行われる。これに対し、微調整とは、コア近傍にある光の入射位置(スポット中心)を高い精度をもってコア中心に一致させるために、該光の入射位置をコア近傍の限られた範囲内で高分解能で移動させる調整のことをいう。微調整は、初期調整のみならず経時変化にも対応すべく光通信時においてもリアルタイムで行われることもある。
【0006】
ここで、一般に光ファイバは、非常に細径なものであるため、そのままの状態で使用するよりも、クラッドの外周に取り付けられたキャピラリ等の保持部材によって保持された状態で装置内に配設される。キャピラリを使用すると、クラッド外周に取り付ける際にキャピラリとクラッド間に接着層が必然的に形成される。該接着層があると、該接着層およびその周辺で反射した光によって、上記4分割フォトディテクタにおける出力に変化が生じてしまうおそれがある。また、光ファイバの入射端面加工時に、該接着層を構成する接着剤が一部剥離するなどして、加工後の光ファイバの接着層に微少な溝が形成される可能性もある。該溝は、上記4分割フォトディテクタにおける出力変化の要因の一つとされる。このような出力変化は、主として粗調整の迅速性や正確性の妨げになりかねない。しかし、上記特許文献1では、キャピラリについて想定していなかったため、さらなる改善が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の諸事情に鑑み、本発明は、保持部材に保持された状態にある光ファイバであっても、LDからの光の入射位置が迅速かつ正確に該光ファイバのコアの中心近傍に導くようにする位置調整を行うことができる光通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の光通信装置は、情報により変調された光を照射することができる光源と、光ファイバと、該光ファイバのクラッドとは異なる反射率を有し、光ファイバの少なくとも一端の一部を保持する保持部材とからなり、一端には光が入射する入射端面を有し、該入射端面におけるコアに入射した光を透過する光伝送手段と、光の光路上、光源と光伝送手段との間に配設される集光レンズと、集光レンズを介した光が入射端面で形成するスポットを該入射端面上において互いに非平行な第一の方向および第二の方向に移動させる移動手段と、二本の境界線によって均等に分割された4つの受光エリアを有し、入射端面での反射光を各受光エリアで受光する、コア中心で反射した光が二本の境界線の交点に入射するように配設された受光手段と、各受光エリアからの出力に基づいて、コア中心を基準としたスポット中心の第一の方向へのずれ量に関する第一出力差信号を生成する第一出力差演算手段と、各受光エリアからの出力に基づいて、コア中心を基準としたスポット中心の第二の方向へのずれ量に関する第二出力差信号を生成する第二出力差演算手段と、全ての受光エリアからの出力を加算することにより和信号を生成する和信号生成手段と、第一出力差信号、第二出力差信号、および和信号に基づいて、移動手段を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の光通信装置によれば、和信号を用いることにより、材料の反射率の違いに基づいたクラッドと保持部材の判別が容易になされる。そして該和信号と出力差信号を用いることにより、スポットを効率よくかつ正確にコア近傍へ導くことができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の光通信装置によれば、制御手段は、第一出力差信号、第二出力差信号、および和信号に基づいて、現在の入射端面上でのコア中心に対するスポットの相対位置を検出し、かつ該スポットを前記コアに向かわせる移動方向を決定する。
【0011】
請求項3に記載の光通信装置によれば、和信号生成手段は、全ての受光エリアからの出力を加算する加算回路と、加算回路からの出力を所定の閾値に基づいて第一のレベルと第二のレベルからなる和信号に変換する変換回路と、を有する。
【0012】
請求項4に記載の光通信装置によれば、制御手段は、和信号が第一のレベルにあって、かつ第一および第二の出力差信号が、入射端面におけるコア中心とスポット中心がほぼ一致しているときに得られる各出力差信号とほぼ同一レベルになるように移動手段を駆動制御する。
【0013】
請求項5に記載の光通信装置によれば、制御手段は、和信号について第二のレベルである状態が継続した場合、移動手段の移動方向を逆転させること。
【0014】
また請求項6に記載の光通信装置によれば、制御手段は、移動手段の移動量または移動時間のいずれか一方に基づいて、和信号について第二のレベルである状態が継続したことを判別することができる。
【0015】
請求項7に記載の光通信装置によれば、所定の閾値は、スポットがクラッドと保持部材間を移動した際に生じる前記受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、和信号は、第一のレベルが入射端面においてスポットがクラッドまたはコアに位置していることを示し、第二のレベルが該スポットがクラッドまたはコアに位置していないことを示す。
【0016】
または請求項8に記載の光通信装置によれば、所定の閾値は、スポットがクラッドとコア間を移動した際に生じる受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、和信号は、第一のレベルが入射端面においてスポットがコアに位置していることを示し、第二のレベルが該スポットがコアに位置していないことを示す。
【0017】
請求項9に記載の光通信装置によれば、保持部材は、クラッドと同種の材料であってかつクラッドよりも高い反射率を有することが望ましい。請求項10に記載の光通信装置によれば、保持部材としてキャピラリが例示される。
【0018】
請求項11に記載の光通信装置によれば、移動手段は、集光レンズを光軸に直交する面内で移動させることができる。より具体的には、第一の方向と前記第二の方向は互いに直交するように構成すれば、制御が容易になるため、望ましい(請求項12)。
【0019】
制御が容易になるという観点からは、二本の境界線は、それ第一の方向および前記第二の方向に平行に延出していることが望ましい(請求項13)。
【0020】
また、請求項14に記載の光通信装置によれば、入射端面は、コアとクラッド間に前記光が回折するような所定寸法の段差が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、和信号と各出力差信号を併用しつつ、位置調整を行うことにより、保持部材と光ファイバ(クラッド)とを正確に判別しつつ、コア近傍にスポットを迅速に導くことができる。つまり、本発明によれば、保持部材を有する光伝送手段を用いた場合であっても、迅速かつ正確な粗調整が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態の光通信装置10の構成を表す図である。図1に示す光通信装置10は、光ファイバ通信を加入者宅内に引き込むONU(Optical Network Unit)として用いられる。例えば光通信装置10は、一本の光ファイバで上り信号として波長1.3μmを送信し、下り信号として1.5μmの信号を受信するように構成された、双方向のWDM伝送に対応した光通信装置である。
【0023】
本実施形態の光通信装置10は、LD、集光レンズ2、光ファイバ部3、光検出器4、駆動システム5、を備える。なお、実際に使用される光通信装置では、LDから出力され集光レンズ2を介して光ファイバ部3に入射する光束の光ファイバ部3での入射角は極めて小さい。しかし図1では、説明の便宜上、該入射角を実際の角度よりも大きく示している。なお、LD、集光レンズ2、光ファイバ部3、光検出器4、の各部材は、LDから照射されたレーザー光の主光線が集光レンズ2の光学中心と光ファイバ部3の光学中心を介して光検出器4の中心に入射するような設計の下、装置10内部に取り付けられる。しかし、取り付け誤差や自重等の個体差が生じるため、必ずしも設計通りにはならない。そこで、以降に詳述する光ファイバ部3の入射端面におけるレーザー光の入射位置(スポット)がコア中心に一致するように調整処理が行われる。
【0024】
LDで発光された光は、集光レンズ2を介して光ファイバ部3の入射端面3aに収束し、スポットを形成する。なお、光通信時、図示しない通信制御部の制御の下、通信対象である情報により変調された光がLDから照射される。ただし、以下に詳述する光ファイバ入射端面での光の入射位置に関する調整時には、LDから変調されない光を照射する、換言すればLDは常時点灯状態にすることもできる。ここで集光レンズ2は、駆動システム5の制御下、光軸に直交する面内において、互いに直交する二つの軸方向(X’方向、Y’方向)で移動可能な状態にある。つまり、スポットは、該レンズ2の駆動する方向に応じて入射端面3a上を移動する。以下、スポットの移動方向のうち、集光レンズ2のX’方向、Y’方向への各移動に対応する方向をそれぞれX方向、Y方向という。
【0025】
なお、本明細書では上記スポットの駆動方向(X方向、Y方向)を基準として位置関係および方向を説明する。本実施形態の構成では、LD側から入射端面3aを臨んだ場合、コア31の中心位置を基準として、右方向(図1紙面下方)をX(+)方向、左方向(図1紙面上方)をX(−)方向とする。またLD側から入射端面3aを臨んだ場合、コア31の位置の上方向(図1紙面から離れる方向)をY(+)方向、下方向(図1紙面に向かう方向をY(−)方向とする。
【0026】
光通信装置10では、入射端面3aで反射する光は光検出器4に導かれる。そのため、光通信装置10は、集光レンズ2から射出された光が入射端面3aで反射するとき、入射してくる方向とは異なる方向に反射するように構成している。これにより、光ファイバ部3の入射端面3aに入射する光の光路を妨げることなく、入射端面3aで反射した反射光の光路上に光検出器4を配設することができる。本実施形態では、光検出器4は、LDから照射されコア中心で反射した光線が中心Oに導かれるように配設されている。
【0027】
なお、本実施形態の光通信装置10は、各部材に関する粗調整と微調整の双方を実行することができる。各調整をより効果的に実行すべく、本実施形態の光ファイバ部3の入射端面3aは、以下のように構成される。
【0028】
図2は、光ファイバ部3における、LDからの光が入射する面(入射端面)3a近傍の拡大図である。光ファイバ部3は、コア31とクラッド32からなる光ファイバ35と、光ファイバ35の外側に配設された円筒状のキャピラリ34から構成される。光ファイバ35は、キャピラリ34の空洞部に挿通され、接着剤によって固定されている。以下、クラッド32の外周とキャピラリ34の内周の間に位置し、接着剤が存在する層を接着層33という。また、光ファイバ部3の入射端面3aは、コア31、クラッド32、接着層33、キャピラリ34の各部位の表面が表れる。図2では、各部位に対応する表面を31a〜34aで示す。なお、本明細書では、説明の便宜上、コア31の中心は光ファイバ部3の中心と一致するものとする。
【0029】
キャピラリ34は、光ファイバ35の取扱いを容易にするために少なくとも端部近傍に取り付けられる保持部材である。キャピラリ34は加工の容易性に鑑み、クラッド32と同種の材料(例えば、ガラス)により構成されるが同一材料ではない。具体的には、キャピラリ34は、クラッド32よりも高い反射率を持つガラス材料によって構成されている。
【0030】
図2に示すように、入射端面3aは、コア31がクラッド32の面に対して略直交する方向(光ファイバ部3の光軸方向)に突出することにより段差が形成されている。また入射端面3aは、突出したコア表面31aとクラッド表面32aとが略平行になるように加工される。本実施形態では、フォトリソ技術を用いることにより入射端面3aを上記形状に加工している。段差の寸法は、λ/(4n)よりも小さい値、より好適にはλ/(8n)に設定される。但し、λは入射する光の波長で、nは媒質の屈折率である。このように段差の寸法を設定することにより、集光レンズ2を介した収束光が、突出したコア表面31aとクラッド表面32aの双方にまたがるように入射すると、最適な回折現象が起こる。リアルタイム調整は、該回折現象を利用する。なお本実施形態では、上記所定寸法を略λ/8に設定する。
【0031】
一般的に、LDで発光された光のスポットサイズは、該光の強度分布において、最大強度の1/e2(但し、eは自然対数の底)以上の強度を持つ範囲として規定される。また、より大きな強度を持つ光によって回折パタンはより顕著に形成されることが知られている。
【0032】
つまり、入射端面3aで形成されるスポット径r1とコア径r2を一致させる時が最も入射効率が大きくなるが、受光面4aでの光強度分布パタンに回折現象による影響は小さくなる。逆に、該パタンに回折現象が大きく影響するように光通信装置10を設計しようとすると、入射端面3aでのスポット径r1は大きくなる。よって、光ファイバ部3内に入射する光量が減少して、LD〜光ファイバ部3間のカップリング効率は劣化してしまう。
【0033】
上記の事情に鑑み、回折パタンを明確にする、つまり高精細な微調整を実現するために必要な光強度分布パタンにおける回折現象による影響を大きくすることと、高精度な光通信を実現するために必要なカップリング効率を高めることとのバランスを図るため、本実施形態では、図2に示すように、入射端面3aで形成されるスポットの径r1が該端面におけるコアの径r2よりもわずかに大きくなるように設計される。そのため、光が入射端面3aにおいて光伝送効率の最も高い位置、つまりコア31に入射している場合であっても、該光のスポット周縁部はクラッド32に入射している。具体的には、本実施形態では、r1=11μm、r2=10μmに設定される。但し、r1<r2に設定する、つまり入射端面においてスポットがコア31内に収まるような構成にしても、スポット中心をコア中心に一致させるためのリアルタイム調整は可能である。
【0034】
本実施形態では、光検出器4として4分割フォトディテクタを使用する。図3は、第一実施形態の光検出器4の受光面4aを示す図である。図3は、説明の便宜上、受光面4aを裏側から臨んだ状態を示している。図3に示すように、受光面4aにおける方向は、受光面4aを裏側から臨んだ場合に、中心Oを基準として、X(+)方向に対応する方向つまり受光エリアA、Dに向かう方向がX”(+)方向、X(−)方向に対応する方向つまり受光エリアB、Cに向かう方向がX”(−)方向と定義される。同様に、中心Oを基準として、Y(+)方向に対応する方向つまり受光エリアA、Bに向かう方向はY”(+)方向、Y(−)方向に対応する方向つまり受光エリアC、Dに向かう方向はY”(−)方向と定義する。
【0035】
具体的には、図3に示すように、受光面4aは、該受光面4aの中心Oで互いに直交する2本の境界線4b、4cによって4つの格子状の受光エリアA〜Dに分割されている。光検出器4は、上記2本の境界線4b、4cの延出方向が第一集光レンズ2の移動可能な方向(X方向、Y方向)に対応する方向(X”方向、Y”方向)と略一致するように配置される。また、光ファイバ部3と光検出器4は、入射端面3aのコア31中心で反射した光線が受光面4a上における中心Oに入射するように、予め、位置決めされた状態で固定されている。なお入射端面3aと光検出器4との間には、反射光が4つの受光エリアA〜D内に入射するように、所定の光学系(不図示)が配置されている。光検出器4は、受光エリアA〜Dごとに受光した光の光量に対応する4種類の電圧信号を駆動システム5に出力する。以下の説明では、受光エリアA〜Dそれぞれから出力される電圧信号を、順に電圧信号a〜dとする。
【0036】
図4は、主として駆動システム5の構成を示すブロック図である。光検出器4から出力された各電圧信号a〜dは、図示しないセンサアンプによって所定レベルまで増幅された後、第一から第五の各加算回路511〜515に入力する。詳しくは、電圧信号aは第一加算回路511、第三加算回路513、第五加算回路515に入力する。電圧信号bは第二加算回路512、第三加算回路513、第五加算回路515に入力する。電圧信号cは第二加算回路512、第四加算回路514、第五加算回路515に入力する。電圧信号dは第一加算回路511、第四加算回路514、第五加算回路515に入力する。
【0037】
第一から第四の各加算回路511〜514は、入力する二種類の電圧信号を加算し、生成した加算信号を後段の減算回路521、522に出力する。具体的には、第一加算回路511は、電圧信号aと電圧信号dを加算し、電圧信号(a+d)を生成する。第二加算回路512は、電圧信号bと電圧信号cを加算し、電圧信号(b+c)を生成する。よって、第一減算回路521には、上記の電圧信号(a+d)と電圧信号(b+c)が入力する。同様に、第三加算回路513は、電圧信号aと電圧信号bを加算し、電圧信号(a+b)を生成する。第四加算回路514は、電圧信号cと電圧信号dを加算し、電圧信号(c+d)を生成する。よって、第二減算回路522には、上記の電圧信号(a+b)と電圧信号(c+d)が入力する。
【0038】
電圧信号(a+d)は、受光面4aの中心Oを基準としてX”(+)側にある受光エリアAおよびDでの受光光量に対応する。電圧信号(b+c)は、X”(−)側にある受光エリアBおよびCでの受光光量に対応する。同様に、電圧信号(a+b)、(c+d)は、それぞれY”(+)側、Y”(−)側にある受光エリアでの受光光量に対応する。
【0039】
第一減算回路521は、電圧信号(b+c)から電圧信号(a+d)を減算することにより、X”方向の出力差信号xを生成し、コントローラ550に出力する。X”方向の出力差信号xは、受光面4a上での中心Oに対するスポット中心のX”方向のずれ量に対応して変化する。ここで、上記の通り、X”方向はX方向に対応する。従って、X”方向の出力差信号xは、入射端面3a上でのコア中心に対するスポット中心のX方向のずれ量に対応して変化するとも言える。
【0040】
第二減算回路522は、電圧信号(c+d)から電圧信号(a+b)を減算することにより、Y”方向の出力差信号yを生成し、コントローラ550に出力する。上記と同様の理由から、Y”方向の出力差信号yは、入射端面3a上でのコア中心に対するスポット中心のY方向のずれ量に対応して変化すると言える。
【0041】
また、第五加算回路515には、全ての受光エリアからの電圧信号a〜dが入力する。第五加算回路515は、各電圧信号a〜dを加算することにより生成したSUM信号を後段の信号変換回路530に出力する。信号変換回路530は、入力するSUM信号を所定の閾値により二値化処理してデジタル化された和信号(以下、便宜上コンパレート信号Cという)に変換する。図5は、SUM信号とコンパレート信号Cの一例を示す図である。図5(A)は、光ファイバ部3のコア表面31a中心を通り径方向にスポットを移動させた場合に得られるSUM信号である。図5(B)は、二値化処理により得られるコンパレート信号Cである。
【0042】
図5(A)に示すように、SUM信号は、入射端面3aにおける各表面31a〜34aの光学性能(特に反射率)の違いよって、互いの境界において大きくレベル変化する。特に、クラッド32とキャピラリ34は、上記の通り積極的に異なる反射率の材料を使用しているため、互いの境界は明確に現れる。そこで、予め各部材32、34を識別可能なレベルを設定し、メモリ540に閾値Vrefとして格納しておく。図5(A)中閾値Vrefを破線で示す。信号変換回路は、SUM信号が入力すると、該閾値Vrefをメモリ540から読み出す。そして、読み出した閾値Vrefを基準にして該SUM信号を二値化処理し、図5(B)に示すコンパレート信号Cを生成する。
【0043】
なお、閾値Vrefは装置毎の個体差によって必ずしも一定とは限らない。ただし、個体差に起因する変化量は大きくはないため、実機数台に対する実験結果から平均値を算出することによって有効な閾値Vrefが得られる。より高精度な二値化処理をすることが望まれる場合には、初期調整時に各装置を実際に駆動して得られたSUM信号から装置毎の閾値Vrefを算出、設定しても良い。
【0044】
各減算回路521、522で生成された各出力差信号x、yおよび信号変換回路530で生成されたコンパレート信号Cは、それぞれコントローラ550に入力する。コントローラ550は、各信号を用いて後に詳述する粗調整処理を行い、コア表面31a中心に対するスポット中心のX、Yの各方向に関するずれ量を算出し、該ずれ量を0にするように後段のX’駆動部561、Y’駆動部562を駆動制御する。各駆動部561、562は、コントローラ550の制御下、集光レンズ2をX’、Y’の各方向に移動させる。集光レンズ2の移動に伴い、光ファイバ部3の入射端面3aにおけるスポットの位置もコア表面31a中心に向かうように移動する。
【0045】
次に、コントローラ550が行う粗調整処理について図6以降を参照しつつ詳述する。なお、以下の説明では便宜上X方向に関する粗調整処理についてのみ説明するが、実際にはX方向の調整処理と同時に、あるいは交互にY方向に関しても同様の処理が行われる。
【0046】
図6(A)は出力差信号xのレベルとX方向のずれ量との関係を示すグラフである。図6(B)はコンパレート信号を示す。図6(C)は光ファイバ部3の入射端面3a近傍に関し、光ファイバ35の光軸を含む面での断面を拡大して示す図である。図6(A)において縦軸が出力差信号xのレベルを、横軸がX方向のずれ量を、それぞれ表す。図6(A)における信号レベルおよびずれ量、および図6(B)の信号レベルは、図6(C)に示す入射端面3aの位置に対応している。
【0047】
図6(A)に示すように、出力差信号xのレベルは、一部の山や谷を除けば、ずれ量に対して概ねリニアに変化している。図6(A)の原点近傍に生じるS字状のレベル変化は、図6(C)に示すコア表面31aとクラッド表面32a間の段差によって反射光に回折現象が生じて強度分布が大きく変化するために起こる。また、図6(A)の両端付近に生じる山または谷は、入射端面3aを加工する際の影響により、接着層表面33aが必ずしもクラッド表面32aやキャピラリ表面34aと同一平面上に存在しない、つまりクラッド表面32a、接着層表面33a、キャピラリ表面34a間に段差が生じることに起因する。
【0048】
コントローラ550は、第一減算回路521から出力される出力差信号xのレベルが、X方向のずれ量が0のときの信号レベルに等しくなるように集光レンズ2の位置を調整する。ここでは、X方向のずれ量が0のときの信号レベルを0とする。つまり、コントローラ550は、出力差信号xとずれ量との関係が図6(A)中P4であるように制御を行う。
【0049】
仮に、接着層表面33a近傍に段差が発生しなければ、出力差信号xの信号レベルが0となる状態、つまり図6(A)中ゼロクロス点はP4(つまり原点)のみとなる。しかし、実際生成される出力差信号xでは、ゼロクロス点は、P1、P3、P5、P7にも存在する。ゼロクロス点P1、P3、P5、P7は、いずれもずれ量が0でないにも関わらず出力差信号xレベルが0である状態である。そのため、該状態を有効に回避して出力差信号xとずれ量との関係がP4の状態となるように、コントローラ550は、図6(B)に示すコンパレート信号Cを利用する。上述した通り、コンパレート信号Cは入射端面3aにおけるスポットの位置がクラッド表面32a(およびコア表面31a)とキャピラリ表面34aのいずれに存在しているかを示す。従って、該コンパレート信号Cを利用することにより、ゼロクロス点P1、P3、P5、P7ではなく、ゼロクロス点P4にのみを最終到達点とした調整処理を行うことができる。
【0050】
なお、図6(A)において、A1は、ゼロクロス点P1よりも出力差信号xのレベルおよびX(−)方向のずれ量が大きい範囲を示す。A2は、接着層表面33a近傍の段差に起因する谷のゼロクロス点P1から頂点P2までの間の範囲を示す。A3は、頂点P2とゼロクロス点P3間の範囲を示す。A4は、二つのゼロクロス点P3、P4間の範囲を示す。A5は、二つのゼロクロス点P4、P5間の範囲を示す。A6は、接着層表面33a近傍の段差に起因する山のゼロクロス点P5から頂点P6までの間の範囲を示す。A7は、頂点P6とゼロクロス点P7間の範囲を示す。A8は、ゼロクロス点P7よりも出力差信号xのレベルおよびX(+)方向のずれ量が大きい範囲を示す。
【0051】
図7〜図11は、コントローラ550の粗調整処理の流れを示すフローチャートである。粗調整処理が開始されると、コントローラ550は、まず処理開始時点における入射端面3aでのスポットの位置を検出する。具体的には、S1において、第一減算回路521から出力された出力差信号xのレベルが基準値よりも大きいかどうか判断する。基準値とは、X方向のずれ量が0のときの出力差信号xのレベルのことであり、ここでは0に設定される。出力差信号xが基準値よりも大きい場合(S1:YES)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA1、A4、A6、A7のいずれかに存在すると判断する。そして集光レンズ2の初期移動方向をX’(+)方向に設定する(S2)。次いでS3の処理に進み、コンパレート信号Cを参照する。該コンパレート信号Cが「H」であれば(S3:NO)、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA4かA6のいずれかに存在すると判断する。そしてS4〜S6の処理に移行する。
【0052】
すなわち、コントローラ550は、まずS4において、集光レンズ2をS2で決定した方向、つまりX’(+)方向に所定量移動させる。次いで、S5において、コンパレート信号を参照する。コンパレート信号Cが「L」であれば(S5:YES)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6を越えてA7に存在すると判断し、図9に示すS16以降の処理に移行する。
【0053】
コンパレート信号Cが「H」であれば(S5:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA4内に存在すると判断する。図6(A)に示すように、現在の信号xレベルとずれ量の関係が範囲A4に存在していると言うことは、X’(+)方向に集光レンズを移動(つまりX(+)方向にスポットを移動)し続けることにより、ゼロクロス点P4を通過することがわかる。従ってコントローラ550は、S6において、出力差信号xのレベルが基準値以下になるまで、S4、S5の各処理を繰り返す(S6:YES)。S6において、出力差信号xのレベルが基準値以下になったと判断すると、コントローラ550は、入射端面3aにおけるスポットの位置がコア31中心近傍に位置したと判断し、粗調整処理を終了する(S6:NO)。
【0054】
S1において、出力差信号xのレベルが基準値以下であると判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA2、A3、A5、A8のいずれかに存在すると判断する。そして集光レンズ2の初期移動方向をX’(−)方向に設定する(S7)。次いでS8の処理に進み、コンパレート信号Cを参照する。該コンパレート信号Cが「H」であれば(S8:NO)、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA3かA5のいずれかに存在すると判断する。そしてS9〜S11の処理に移行する。
【0055】
すなわち、コントローラ550は、まずS9において、集光レンズ2をS7で決定した方向、つまりX’(−)方向に所定量移動させる。次いで、S10において、コンパレート信号を参照する。該コンパレート信号Cが「H」であれば(S10:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA5内に存在すると判断する。図6(A)に示すように、現在の信号xレベルとずれ量の関係が範囲A5に存在していると言うことは、X’(−)方向に集光レンズを移動(つまりX(−)方向にスポットを移動)し続けることにより、ゼロクロス点P4を通過することがわかる。従ってコントローラ550は、S11において、出力差信号xのレベルが基準値以上になるまで、S9、S10の各処理を繰り返す(S11:NO)。S11において、出力差信号xのレベルが基準値以上になったと判断すると、コントローラ550は、入射端面3aにおけるスポットの位置がコア31中心近傍に位置したと判断し、粗調整処理を終了する(S11:YES)。
【0056】
S3において、コンパレート信号Cが「L」であると判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA1かA7のいずれかに存在すると判断する。そしてS12以降の処理に移行する。
【0057】
S12において、コントローラ550は、集光レンズ2をS2で決定した方向、つまりX’(+)方向に所定量移動させる。そして、コンパレート信号Cを参照する(S13)。該信号Cが「L」であると判断すると(S13:YES)、コントローラ550は、出力差信号xのレベルが基準値以下になるまで、S12、S13の処理を繰り返す(S14:YES)。
【0058】
S14において、出力差信号xのレベルが基準値以下になったと判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA1またはA7からA2またはA8に移動したと判断する。そして、S15において、集光レンズの移動量をチェックする。詳しくは、移動量が所定量(ここでは20μm)以上である場合か否かを判断する。移動量が所定量未満である場合(S15:NO)、S12からの処理を繰り返す。なお、本実施形態ではS15での判断基準は集光レンズ2の実移動距離としているが、例えばステッピングモータを使用しているのであればパルス数であってもよいし、さらには移動時間であっても良い。
【0059】
現在の信号xレベルとずれ量の関係がA2内に存在する場合、レンズ移動量が20μm以上になると該関係はほぼ確実にA3もしくはA4に変化する。換言すれば、S14における判定がNOからYESに切り替わる。特に該関係がA4に存在するようになった場合には、S13における判定もYESからNOに切り替わり、後述のS32以降の処理が行われる。
【0060】
逆に、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA8内に存在する場合には、移動量がいくら大きくなろうとも該関係はA8内に存在し続ける。よって、移動量が所定量より大きいと判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA8に存在していると確定し、図9に示すS16以降の処理を行う。
【0061】
S5においてYESと判断した場合、およびS15においてYESと判断した場合(コア表面31a近傍から大きく離れている場合)、コントローラ550は次いでS2で設定された集光レンズ2の移動方向をX’(−)方向に逆転させ(S16)、該方向に移動させる(S17)。
【0062】
S17での移動処理は、コンパレート信号Cが「H」に切り替わるまで継続される(S18:YES)。コンパレート信号Cが「H」であると判断すると(S18:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6に存在すると認定する(S19)。
【0063】
次いでコントローラ550は、さらに集光レンズ2をX’方向に移動させ、スポットのずれ量を低減していく(S20)。S20での移動処理は、出力差信号xのレベルが基準値以下になるまで継続される(S21:YES)。出力差信号xのレベルが基準値以下になると(S21:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6に存在すると認定する(S22)。
【0064】
次いでコントローラ550は、さらに集光レンズ2をX’方向に移動させ、スポットのずれ量を低減していく(S23)。S23での移動処理は、出力差信号xのレベルが基準値を超えるまで継続される(S24:NO)。出力差信号xのレベルが基準値を越えると(S24:YES)、コントローラ550は、入射端面3aにおけるスポットの位置がコア31中心近傍に位置したと判断し、粗調整処理を終了する。
【0065】
図7に示すS8において、コンパレート信号Cが「L」であると判断された場合(S8:YES)、コントローラ550は、図10に示すS25からの処理に移行する。S25からS28までの処理は、集光レンズ2の移動方向(スポットの移動方向)が異なる以外は図8に示すS12からS15の処理と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0066】
なお、S26において、コンパレート信号Cが「H」に切り替わったと判断した場合(S26:NO)、コントローラ550は、上述したS19の処理、つまり現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6(場合によってはA5)の範囲内にあると判断する。そしてコントローラ550は、S20以降の処理を実行する。
【0067】
S10においてYESと判断した場合、およびS28においてYESと判断した場合(コア表面31a近傍から大きく離れている場合)、コントローラ550は、図11に示すS29からの処理を実行する。具体的にはコントローラ550は、S7で設定された集光レンズ2の移動方向をX’(+)方向に逆転させ(S29)、該方向に移動させる(S30)。S31からS37迄の処理は、集光レンズ2の移動方向(スポットの移動方向)が異なる以外は図9に示すS18からS24の処理と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
なお、図8に示すS13において、コンパレート信号Cが「H」であると判断された場合(S13:NO)、コントローラ550は、図11に示すS32からの処理に移行する。
【0069】
以上がコントローラ550により行われる粗調整処理に関する説明である。上記の粗調整処理をまとめた表を図12に示す。本実施形態のコントローラ550は、出力差信号xとコンパレート信号Cに基づいて、入射端面3a上において現在のスポットがコア表面31a中心からどれだけ離れた位置にあるか、および該スポットを該コア中心に導くためにいずれの方向に移動させればよいかが正確に求められていることが分かる。よって、光ファイバ35にキャピラリ34を装着した構成であっても、試行錯誤で初期の移動方向を決定したり、再度移動方向を改めたりする必要がなくなる。すなわち、短時間で正確な粗調整が実現される。
【0070】
以上の粗調整が完了した段階で、駆動システム5は、微調整を行う。図13は、図6に示した出力差信号xレベルとずれ量の関係におけるP4近傍を拡大して示す図である。上記の通り、コア表面31aとクラッド表面32a間の段差に起因する回折現象によって光強度分布が変化するため、上記関係は、S字状に変化する軌跡を描く。上述した粗調整により、現在の信号xレベルとずれ量の関係は、S字状の軌跡にほぼ対応する範囲A9内にある。
【0071】
このように、回折現象を利用して、コア表面31a近傍にあるときの出力差信号xのレベルを大きく変化させることにより、スポット中心をコア表面31a中心に一致させるためのより高精度な位置調整を実現している。なお、微調整時の移動量は、上記粗調整時の移動量よりも微細に設定される。
【0072】
以上が本発明の実施形態である。本発明にかかる駆動システムおよび該駆動システムを搭載する光通信装置は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0073】
上記実施形態の光通信装置10では、入射端面3aで形成されるスポットの移動方向を示すX方向とY方向は互いに直交すると説明した。これは同方向を直交する二軸に移動させる構成がより簡易な制御を可能にするからである。従って、本発明に係る光通信装置においてX方向とY方向は、必ずしも直交している必要はなく、非平行であればよい。
【0074】
また、上記実施形態では、集光レンズ2を駆動させることにより、LDからの光が入射端面3aにおいて形成するスポットを移動させてコア31中心に導く調整を行う構成を示した。スポットの移動手段としては、上記の構成以外の構成によるものであっても良い。例えば、集光レンズ2ではなく、LD自体をX’、Y’の各方向にスライドさせて入射端面3aにおけるスポットの位置を移動させることも可能である。他にも、頂角可変プリズムのような偏向部材をLDから入射端面3aまでの光路中に配設する。そして、第一集光レンズ2を駆動させる代替として、該偏向部材を駆動させるような変形も可能である。このように、偏向部材を配設する変形例は、集光レンズが一体形成されたLDを用いたモジュールのように、集光レンズ自体を駆動させることができない構成に非常に好適である。
【0075】
また上記実施形態では、キャピラリ34はクラッド32よりも高い反射率を持つと説明した。しかし、本発明に係る光通信装置におけるキャピラリ34は、クラッド32とは異なる反射率を有していればよい。
【0076】
また上記実施形態では、コンパレート信号CにおいてL/Hが切り替わる位置がちょうどP2あるいはP6と一致しているが、これはあくまで粗調整処理が簡易化されるより好適な一例であって、必ずしもL/Hの切り替わり位置と頂点P2、P6とが一致している必要はない。
【0077】
また上記実施形態では、メモリ540に格納される閾値Vrefは、キャピラリ34とクラッド32を識別可能な値として説明したが、キャピラリ34とコアを識別可能な値に設定しても良い。
【0078】
また、上記説明では出力差信号のレベルの比較対象となる基準値は0であると説明したが、必ずしも0に設定する必要はなく、あくまで、スポット中心とコア中心が一致している状態での出力差信号のレベルに設定される。つまり、装置の構成や光検出器4の性能等に応じて基準値は、適切な値に設定される。
【0079】
なお、上記の実施形態では、光ファイバ部3の入射端面3aに入射したLDからの光が回折するために、該入射端面3aにおいて、コア表面31aをクラッド表面32aよりも突出させる構成にしているが、これ以外の構成、例えば、コア表面31aをクラッド表面32aよりもλ/(8n)分凹ませる構成であっても同様の効果を得ることができる。
【0080】
さらには、入射端面3aにおけるコア31とクラッド32間に段差を設けなくても良い。この場合、図7に示す第一の出力差(第二の出力差)とずれ量の関係は、ゼロクロス点近傍も含め略リニアになる。そのため、位置調整に関する制御処理が簡易化される利点が得られる。
【0081】
さらに本発明に係る光通信装置の構成は、光ファイバ部3の入射端面3aへの光の入射位置を調整することにより、該光の減衰率を調整する可変光減衰装置としても利用することができる。この場合、上記実施形態におけるLDの代替として射出端面が二次的な点光源として機能する光ファイバが配設される。
【0082】
また上記実施形態の光通信装置によれば、光検出器4は、各境界線がX’、Y’のいずれかの方向に一致するように配設されているが、対角線がX’、Y’のいずれかの方向に一致するように配設されていてもよい。この場合、出力差信号は、二つの受光エリアの出力和の差ではなく、一つの受光エリアの差として求まる。
【0083】
また、上記実施形態の光通信装置によれば、光検出器4として各受光エリアが均等に分割された4分割PDを使用している。しかし、本発明に係る光通信装置は、必ずしも該実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、4つ以上に分割された受光エリアからなる光検出器であってもよい。この場合、X方向の調整時には、中心を基準としてX”(−)側にある各受光エリアの出力和からX”(+)側にある各受光エリアの出力和の差を求めれば出力差信号xを生成することができる。また、各受光エリアは必ずしも均等でなくても良い。例えば、受光面中心近傍はより小さなエリア分割し、端部近傍は比較的大きなエリアに分割された光検出器を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態の光通信装置の概略構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態の光ファイバ部における入射端面近傍の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態の光検出器の受光面を裏側から示した図である。
【図4】本発明の実施形態の駆動システムを表すブロック図である。
【図5】実施形態のSUM信号とコンパレート信号の一例を示す図である。
【図6】実施形態のコントローラが行う粗調整処理について説明するための図である。
【図7】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施形態のコントローラの粗調整処理をまとめた表である。
【図13】出力差信号xレベルとずれ量の関係における原点近傍を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0085】
2 集光レンズ
3 光ファイバ
3a 入射端面
31 コア
32 クラッド
33 接着層
34 キャピラリ
4 光検出器
5 駆動システム
10 光通信装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報による変調を施された光をLDから照射し、集光レンズを介して光ファイバに入射、伝送させる光通信装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報伝送のために光通信装置が多用されている。該光通信装置では、光伝送効率を高めて信号伝送の精度を向上させるために、LDからの光が光ファイバのコアの略中心に集光するようにする必要がある。具体的には、LD、集光レンズ、光ファイバにおける入射端面の相対的位置を高精度で調整をする必要がある。このような位置調整を可能とする光通信装置は、例えば、以下の特許文献1に開示される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−321669号公報
【0004】
特許文献1に記載の光通信装置は、光ファイバの入射端面からの反射光を4分割フォトディテクタで受光する。そして、各受光エリアからの出力が所定の関係を有するようにLD、集光レンズ、光ファイバの相対位置の粗調整および微調整を行っている。
【0005】
詳しくは、粗調整とは、LDからの光の入射位置をより迅速に光ファイバの入射端面におけるコア近傍に導くために、該光の入射位置を比較的広範囲にわたって低分解能で移動させる調整のことをいう。粗調整は、主として初期調整時に行われる。これに対し、微調整とは、コア近傍にある光の入射位置(スポット中心)を高い精度をもってコア中心に一致させるために、該光の入射位置をコア近傍の限られた範囲内で高分解能で移動させる調整のことをいう。微調整は、初期調整のみならず経時変化にも対応すべく光通信時においてもリアルタイムで行われることもある。
【0006】
ここで、一般に光ファイバは、非常に細径なものであるため、そのままの状態で使用するよりも、クラッドの外周に取り付けられたキャピラリ等の保持部材によって保持された状態で装置内に配設される。キャピラリを使用すると、クラッド外周に取り付ける際にキャピラリとクラッド間に接着層が必然的に形成される。該接着層があると、該接着層およびその周辺で反射した光によって、上記4分割フォトディテクタにおける出力に変化が生じてしまうおそれがある。また、光ファイバの入射端面加工時に、該接着層を構成する接着剤が一部剥離するなどして、加工後の光ファイバの接着層に微少な溝が形成される可能性もある。該溝は、上記4分割フォトディテクタにおける出力変化の要因の一つとされる。このような出力変化は、主として粗調整の迅速性や正確性の妨げになりかねない。しかし、上記特許文献1では、キャピラリについて想定していなかったため、さらなる改善が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の諸事情に鑑み、本発明は、保持部材に保持された状態にある光ファイバであっても、LDからの光の入射位置が迅速かつ正確に該光ファイバのコアの中心近傍に導くようにする位置調整を行うことができる光通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の光通信装置は、情報により変調された光を照射することができる光源と、光ファイバと、該光ファイバのクラッドとは異なる反射率を有し、光ファイバの少なくとも一端の一部を保持する保持部材とからなり、一端には光が入射する入射端面を有し、該入射端面におけるコアに入射した光を透過する光伝送手段と、光の光路上、光源と光伝送手段との間に配設される集光レンズと、集光レンズを介した光が入射端面で形成するスポットを該入射端面上において互いに非平行な第一の方向および第二の方向に移動させる移動手段と、二本の境界線によって均等に分割された4つの受光エリアを有し、入射端面での反射光を各受光エリアで受光する、コア中心で反射した光が二本の境界線の交点に入射するように配設された受光手段と、各受光エリアからの出力に基づいて、コア中心を基準としたスポット中心の第一の方向へのずれ量に関する第一出力差信号を生成する第一出力差演算手段と、各受光エリアからの出力に基づいて、コア中心を基準としたスポット中心の第二の方向へのずれ量に関する第二出力差信号を生成する第二出力差演算手段と、全ての受光エリアからの出力を加算することにより和信号を生成する和信号生成手段と、第一出力差信号、第二出力差信号、および和信号に基づいて、移動手段を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の光通信装置によれば、和信号を用いることにより、材料の反射率の違いに基づいたクラッドと保持部材の判別が容易になされる。そして該和信号と出力差信号を用いることにより、スポットを効率よくかつ正確にコア近傍へ導くことができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の光通信装置によれば、制御手段は、第一出力差信号、第二出力差信号、および和信号に基づいて、現在の入射端面上でのコア中心に対するスポットの相対位置を検出し、かつ該スポットを前記コアに向かわせる移動方向を決定する。
【0011】
請求項3に記載の光通信装置によれば、和信号生成手段は、全ての受光エリアからの出力を加算する加算回路と、加算回路からの出力を所定の閾値に基づいて第一のレベルと第二のレベルからなる和信号に変換する変換回路と、を有する。
【0012】
請求項4に記載の光通信装置によれば、制御手段は、和信号が第一のレベルにあって、かつ第一および第二の出力差信号が、入射端面におけるコア中心とスポット中心がほぼ一致しているときに得られる各出力差信号とほぼ同一レベルになるように移動手段を駆動制御する。
【0013】
請求項5に記載の光通信装置によれば、制御手段は、和信号について第二のレベルである状態が継続した場合、移動手段の移動方向を逆転させること。
【0014】
また請求項6に記載の光通信装置によれば、制御手段は、移動手段の移動量または移動時間のいずれか一方に基づいて、和信号について第二のレベルである状態が継続したことを判別することができる。
【0015】
請求項7に記載の光通信装置によれば、所定の閾値は、スポットがクラッドと保持部材間を移動した際に生じる前記受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、和信号は、第一のレベルが入射端面においてスポットがクラッドまたはコアに位置していることを示し、第二のレベルが該スポットがクラッドまたはコアに位置していないことを示す。
【0016】
または請求項8に記載の光通信装置によれば、所定の閾値は、スポットがクラッドとコア間を移動した際に生じる受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、和信号は、第一のレベルが入射端面においてスポットがコアに位置していることを示し、第二のレベルが該スポットがコアに位置していないことを示す。
【0017】
請求項9に記載の光通信装置によれば、保持部材は、クラッドと同種の材料であってかつクラッドよりも高い反射率を有することが望ましい。請求項10に記載の光通信装置によれば、保持部材としてキャピラリが例示される。
【0018】
請求項11に記載の光通信装置によれば、移動手段は、集光レンズを光軸に直交する面内で移動させることができる。より具体的には、第一の方向と前記第二の方向は互いに直交するように構成すれば、制御が容易になるため、望ましい(請求項12)。
【0019】
制御が容易になるという観点からは、二本の境界線は、それ第一の方向および前記第二の方向に平行に延出していることが望ましい(請求項13)。
【0020】
また、請求項14に記載の光通信装置によれば、入射端面は、コアとクラッド間に前記光が回折するような所定寸法の段差が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、和信号と各出力差信号を併用しつつ、位置調整を行うことにより、保持部材と光ファイバ(クラッド)とを正確に判別しつつ、コア近傍にスポットを迅速に導くことができる。つまり、本発明によれば、保持部材を有する光伝送手段を用いた場合であっても、迅速かつ正確な粗調整が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態の光通信装置10の構成を表す図である。図1に示す光通信装置10は、光ファイバ通信を加入者宅内に引き込むONU(Optical Network Unit)として用いられる。例えば光通信装置10は、一本の光ファイバで上り信号として波長1.3μmを送信し、下り信号として1.5μmの信号を受信するように構成された、双方向のWDM伝送に対応した光通信装置である。
【0023】
本実施形態の光通信装置10は、LD、集光レンズ2、光ファイバ部3、光検出器4、駆動システム5、を備える。なお、実際に使用される光通信装置では、LDから出力され集光レンズ2を介して光ファイバ部3に入射する光束の光ファイバ部3での入射角は極めて小さい。しかし図1では、説明の便宜上、該入射角を実際の角度よりも大きく示している。なお、LD、集光レンズ2、光ファイバ部3、光検出器4、の各部材は、LDから照射されたレーザー光の主光線が集光レンズ2の光学中心と光ファイバ部3の光学中心を介して光検出器4の中心に入射するような設計の下、装置10内部に取り付けられる。しかし、取り付け誤差や自重等の個体差が生じるため、必ずしも設計通りにはならない。そこで、以降に詳述する光ファイバ部3の入射端面におけるレーザー光の入射位置(スポット)がコア中心に一致するように調整処理が行われる。
【0024】
LDで発光された光は、集光レンズ2を介して光ファイバ部3の入射端面3aに収束し、スポットを形成する。なお、光通信時、図示しない通信制御部の制御の下、通信対象である情報により変調された光がLDから照射される。ただし、以下に詳述する光ファイバ入射端面での光の入射位置に関する調整時には、LDから変調されない光を照射する、換言すればLDは常時点灯状態にすることもできる。ここで集光レンズ2は、駆動システム5の制御下、光軸に直交する面内において、互いに直交する二つの軸方向(X’方向、Y’方向)で移動可能な状態にある。つまり、スポットは、該レンズ2の駆動する方向に応じて入射端面3a上を移動する。以下、スポットの移動方向のうち、集光レンズ2のX’方向、Y’方向への各移動に対応する方向をそれぞれX方向、Y方向という。
【0025】
なお、本明細書では上記スポットの駆動方向(X方向、Y方向)を基準として位置関係および方向を説明する。本実施形態の構成では、LD側から入射端面3aを臨んだ場合、コア31の中心位置を基準として、右方向(図1紙面下方)をX(+)方向、左方向(図1紙面上方)をX(−)方向とする。またLD側から入射端面3aを臨んだ場合、コア31の位置の上方向(図1紙面から離れる方向)をY(+)方向、下方向(図1紙面に向かう方向をY(−)方向とする。
【0026】
光通信装置10では、入射端面3aで反射する光は光検出器4に導かれる。そのため、光通信装置10は、集光レンズ2から射出された光が入射端面3aで反射するとき、入射してくる方向とは異なる方向に反射するように構成している。これにより、光ファイバ部3の入射端面3aに入射する光の光路を妨げることなく、入射端面3aで反射した反射光の光路上に光検出器4を配設することができる。本実施形態では、光検出器4は、LDから照射されコア中心で反射した光線が中心Oに導かれるように配設されている。
【0027】
なお、本実施形態の光通信装置10は、各部材に関する粗調整と微調整の双方を実行することができる。各調整をより効果的に実行すべく、本実施形態の光ファイバ部3の入射端面3aは、以下のように構成される。
【0028】
図2は、光ファイバ部3における、LDからの光が入射する面(入射端面)3a近傍の拡大図である。光ファイバ部3は、コア31とクラッド32からなる光ファイバ35と、光ファイバ35の外側に配設された円筒状のキャピラリ34から構成される。光ファイバ35は、キャピラリ34の空洞部に挿通され、接着剤によって固定されている。以下、クラッド32の外周とキャピラリ34の内周の間に位置し、接着剤が存在する層を接着層33という。また、光ファイバ部3の入射端面3aは、コア31、クラッド32、接着層33、キャピラリ34の各部位の表面が表れる。図2では、各部位に対応する表面を31a〜34aで示す。なお、本明細書では、説明の便宜上、コア31の中心は光ファイバ部3の中心と一致するものとする。
【0029】
キャピラリ34は、光ファイバ35の取扱いを容易にするために少なくとも端部近傍に取り付けられる保持部材である。キャピラリ34は加工の容易性に鑑み、クラッド32と同種の材料(例えば、ガラス)により構成されるが同一材料ではない。具体的には、キャピラリ34は、クラッド32よりも高い反射率を持つガラス材料によって構成されている。
【0030】
図2に示すように、入射端面3aは、コア31がクラッド32の面に対して略直交する方向(光ファイバ部3の光軸方向)に突出することにより段差が形成されている。また入射端面3aは、突出したコア表面31aとクラッド表面32aとが略平行になるように加工される。本実施形態では、フォトリソ技術を用いることにより入射端面3aを上記形状に加工している。段差の寸法は、λ/(4n)よりも小さい値、より好適にはλ/(8n)に設定される。但し、λは入射する光の波長で、nは媒質の屈折率である。このように段差の寸法を設定することにより、集光レンズ2を介した収束光が、突出したコア表面31aとクラッド表面32aの双方にまたがるように入射すると、最適な回折現象が起こる。リアルタイム調整は、該回折現象を利用する。なお本実施形態では、上記所定寸法を略λ/8に設定する。
【0031】
一般的に、LDで発光された光のスポットサイズは、該光の強度分布において、最大強度の1/e2(但し、eは自然対数の底)以上の強度を持つ範囲として規定される。また、より大きな強度を持つ光によって回折パタンはより顕著に形成されることが知られている。
【0032】
つまり、入射端面3aで形成されるスポット径r1とコア径r2を一致させる時が最も入射効率が大きくなるが、受光面4aでの光強度分布パタンに回折現象による影響は小さくなる。逆に、該パタンに回折現象が大きく影響するように光通信装置10を設計しようとすると、入射端面3aでのスポット径r1は大きくなる。よって、光ファイバ部3内に入射する光量が減少して、LD〜光ファイバ部3間のカップリング効率は劣化してしまう。
【0033】
上記の事情に鑑み、回折パタンを明確にする、つまり高精細な微調整を実現するために必要な光強度分布パタンにおける回折現象による影響を大きくすることと、高精度な光通信を実現するために必要なカップリング効率を高めることとのバランスを図るため、本実施形態では、図2に示すように、入射端面3aで形成されるスポットの径r1が該端面におけるコアの径r2よりもわずかに大きくなるように設計される。そのため、光が入射端面3aにおいて光伝送効率の最も高い位置、つまりコア31に入射している場合であっても、該光のスポット周縁部はクラッド32に入射している。具体的には、本実施形態では、r1=11μm、r2=10μmに設定される。但し、r1<r2に設定する、つまり入射端面においてスポットがコア31内に収まるような構成にしても、スポット中心をコア中心に一致させるためのリアルタイム調整は可能である。
【0034】
本実施形態では、光検出器4として4分割フォトディテクタを使用する。図3は、第一実施形態の光検出器4の受光面4aを示す図である。図3は、説明の便宜上、受光面4aを裏側から臨んだ状態を示している。図3に示すように、受光面4aにおける方向は、受光面4aを裏側から臨んだ場合に、中心Oを基準として、X(+)方向に対応する方向つまり受光エリアA、Dに向かう方向がX”(+)方向、X(−)方向に対応する方向つまり受光エリアB、Cに向かう方向がX”(−)方向と定義される。同様に、中心Oを基準として、Y(+)方向に対応する方向つまり受光エリアA、Bに向かう方向はY”(+)方向、Y(−)方向に対応する方向つまり受光エリアC、Dに向かう方向はY”(−)方向と定義する。
【0035】
具体的には、図3に示すように、受光面4aは、該受光面4aの中心Oで互いに直交する2本の境界線4b、4cによって4つの格子状の受光エリアA〜Dに分割されている。光検出器4は、上記2本の境界線4b、4cの延出方向が第一集光レンズ2の移動可能な方向(X方向、Y方向)に対応する方向(X”方向、Y”方向)と略一致するように配置される。また、光ファイバ部3と光検出器4は、入射端面3aのコア31中心で反射した光線が受光面4a上における中心Oに入射するように、予め、位置決めされた状態で固定されている。なお入射端面3aと光検出器4との間には、反射光が4つの受光エリアA〜D内に入射するように、所定の光学系(不図示)が配置されている。光検出器4は、受光エリアA〜Dごとに受光した光の光量に対応する4種類の電圧信号を駆動システム5に出力する。以下の説明では、受光エリアA〜Dそれぞれから出力される電圧信号を、順に電圧信号a〜dとする。
【0036】
図4は、主として駆動システム5の構成を示すブロック図である。光検出器4から出力された各電圧信号a〜dは、図示しないセンサアンプによって所定レベルまで増幅された後、第一から第五の各加算回路511〜515に入力する。詳しくは、電圧信号aは第一加算回路511、第三加算回路513、第五加算回路515に入力する。電圧信号bは第二加算回路512、第三加算回路513、第五加算回路515に入力する。電圧信号cは第二加算回路512、第四加算回路514、第五加算回路515に入力する。電圧信号dは第一加算回路511、第四加算回路514、第五加算回路515に入力する。
【0037】
第一から第四の各加算回路511〜514は、入力する二種類の電圧信号を加算し、生成した加算信号を後段の減算回路521、522に出力する。具体的には、第一加算回路511は、電圧信号aと電圧信号dを加算し、電圧信号(a+d)を生成する。第二加算回路512は、電圧信号bと電圧信号cを加算し、電圧信号(b+c)を生成する。よって、第一減算回路521には、上記の電圧信号(a+d)と電圧信号(b+c)が入力する。同様に、第三加算回路513は、電圧信号aと電圧信号bを加算し、電圧信号(a+b)を生成する。第四加算回路514は、電圧信号cと電圧信号dを加算し、電圧信号(c+d)を生成する。よって、第二減算回路522には、上記の電圧信号(a+b)と電圧信号(c+d)が入力する。
【0038】
電圧信号(a+d)は、受光面4aの中心Oを基準としてX”(+)側にある受光エリアAおよびDでの受光光量に対応する。電圧信号(b+c)は、X”(−)側にある受光エリアBおよびCでの受光光量に対応する。同様に、電圧信号(a+b)、(c+d)は、それぞれY”(+)側、Y”(−)側にある受光エリアでの受光光量に対応する。
【0039】
第一減算回路521は、電圧信号(b+c)から電圧信号(a+d)を減算することにより、X”方向の出力差信号xを生成し、コントローラ550に出力する。X”方向の出力差信号xは、受光面4a上での中心Oに対するスポット中心のX”方向のずれ量に対応して変化する。ここで、上記の通り、X”方向はX方向に対応する。従って、X”方向の出力差信号xは、入射端面3a上でのコア中心に対するスポット中心のX方向のずれ量に対応して変化するとも言える。
【0040】
第二減算回路522は、電圧信号(c+d)から電圧信号(a+b)を減算することにより、Y”方向の出力差信号yを生成し、コントローラ550に出力する。上記と同様の理由から、Y”方向の出力差信号yは、入射端面3a上でのコア中心に対するスポット中心のY方向のずれ量に対応して変化すると言える。
【0041】
また、第五加算回路515には、全ての受光エリアからの電圧信号a〜dが入力する。第五加算回路515は、各電圧信号a〜dを加算することにより生成したSUM信号を後段の信号変換回路530に出力する。信号変換回路530は、入力するSUM信号を所定の閾値により二値化処理してデジタル化された和信号(以下、便宜上コンパレート信号Cという)に変換する。図5は、SUM信号とコンパレート信号Cの一例を示す図である。図5(A)は、光ファイバ部3のコア表面31a中心を通り径方向にスポットを移動させた場合に得られるSUM信号である。図5(B)は、二値化処理により得られるコンパレート信号Cである。
【0042】
図5(A)に示すように、SUM信号は、入射端面3aにおける各表面31a〜34aの光学性能(特に反射率)の違いよって、互いの境界において大きくレベル変化する。特に、クラッド32とキャピラリ34は、上記の通り積極的に異なる反射率の材料を使用しているため、互いの境界は明確に現れる。そこで、予め各部材32、34を識別可能なレベルを設定し、メモリ540に閾値Vrefとして格納しておく。図5(A)中閾値Vrefを破線で示す。信号変換回路は、SUM信号が入力すると、該閾値Vrefをメモリ540から読み出す。そして、読み出した閾値Vrefを基準にして該SUM信号を二値化処理し、図5(B)に示すコンパレート信号Cを生成する。
【0043】
なお、閾値Vrefは装置毎の個体差によって必ずしも一定とは限らない。ただし、個体差に起因する変化量は大きくはないため、実機数台に対する実験結果から平均値を算出することによって有効な閾値Vrefが得られる。より高精度な二値化処理をすることが望まれる場合には、初期調整時に各装置を実際に駆動して得られたSUM信号から装置毎の閾値Vrefを算出、設定しても良い。
【0044】
各減算回路521、522で生成された各出力差信号x、yおよび信号変換回路530で生成されたコンパレート信号Cは、それぞれコントローラ550に入力する。コントローラ550は、各信号を用いて後に詳述する粗調整処理を行い、コア表面31a中心に対するスポット中心のX、Yの各方向に関するずれ量を算出し、該ずれ量を0にするように後段のX’駆動部561、Y’駆動部562を駆動制御する。各駆動部561、562は、コントローラ550の制御下、集光レンズ2をX’、Y’の各方向に移動させる。集光レンズ2の移動に伴い、光ファイバ部3の入射端面3aにおけるスポットの位置もコア表面31a中心に向かうように移動する。
【0045】
次に、コントローラ550が行う粗調整処理について図6以降を参照しつつ詳述する。なお、以下の説明では便宜上X方向に関する粗調整処理についてのみ説明するが、実際にはX方向の調整処理と同時に、あるいは交互にY方向に関しても同様の処理が行われる。
【0046】
図6(A)は出力差信号xのレベルとX方向のずれ量との関係を示すグラフである。図6(B)はコンパレート信号を示す。図6(C)は光ファイバ部3の入射端面3a近傍に関し、光ファイバ35の光軸を含む面での断面を拡大して示す図である。図6(A)において縦軸が出力差信号xのレベルを、横軸がX方向のずれ量を、それぞれ表す。図6(A)における信号レベルおよびずれ量、および図6(B)の信号レベルは、図6(C)に示す入射端面3aの位置に対応している。
【0047】
図6(A)に示すように、出力差信号xのレベルは、一部の山や谷を除けば、ずれ量に対して概ねリニアに変化している。図6(A)の原点近傍に生じるS字状のレベル変化は、図6(C)に示すコア表面31aとクラッド表面32a間の段差によって反射光に回折現象が生じて強度分布が大きく変化するために起こる。また、図6(A)の両端付近に生じる山または谷は、入射端面3aを加工する際の影響により、接着層表面33aが必ずしもクラッド表面32aやキャピラリ表面34aと同一平面上に存在しない、つまりクラッド表面32a、接着層表面33a、キャピラリ表面34a間に段差が生じることに起因する。
【0048】
コントローラ550は、第一減算回路521から出力される出力差信号xのレベルが、X方向のずれ量が0のときの信号レベルに等しくなるように集光レンズ2の位置を調整する。ここでは、X方向のずれ量が0のときの信号レベルを0とする。つまり、コントローラ550は、出力差信号xとずれ量との関係が図6(A)中P4であるように制御を行う。
【0049】
仮に、接着層表面33a近傍に段差が発生しなければ、出力差信号xの信号レベルが0となる状態、つまり図6(A)中ゼロクロス点はP4(つまり原点)のみとなる。しかし、実際生成される出力差信号xでは、ゼロクロス点は、P1、P3、P5、P7にも存在する。ゼロクロス点P1、P3、P5、P7は、いずれもずれ量が0でないにも関わらず出力差信号xレベルが0である状態である。そのため、該状態を有効に回避して出力差信号xとずれ量との関係がP4の状態となるように、コントローラ550は、図6(B)に示すコンパレート信号Cを利用する。上述した通り、コンパレート信号Cは入射端面3aにおけるスポットの位置がクラッド表面32a(およびコア表面31a)とキャピラリ表面34aのいずれに存在しているかを示す。従って、該コンパレート信号Cを利用することにより、ゼロクロス点P1、P3、P5、P7ではなく、ゼロクロス点P4にのみを最終到達点とした調整処理を行うことができる。
【0050】
なお、図6(A)において、A1は、ゼロクロス点P1よりも出力差信号xのレベルおよびX(−)方向のずれ量が大きい範囲を示す。A2は、接着層表面33a近傍の段差に起因する谷のゼロクロス点P1から頂点P2までの間の範囲を示す。A3は、頂点P2とゼロクロス点P3間の範囲を示す。A4は、二つのゼロクロス点P3、P4間の範囲を示す。A5は、二つのゼロクロス点P4、P5間の範囲を示す。A6は、接着層表面33a近傍の段差に起因する山のゼロクロス点P5から頂点P6までの間の範囲を示す。A7は、頂点P6とゼロクロス点P7間の範囲を示す。A8は、ゼロクロス点P7よりも出力差信号xのレベルおよびX(+)方向のずれ量が大きい範囲を示す。
【0051】
図7〜図11は、コントローラ550の粗調整処理の流れを示すフローチャートである。粗調整処理が開始されると、コントローラ550は、まず処理開始時点における入射端面3aでのスポットの位置を検出する。具体的には、S1において、第一減算回路521から出力された出力差信号xのレベルが基準値よりも大きいかどうか判断する。基準値とは、X方向のずれ量が0のときの出力差信号xのレベルのことであり、ここでは0に設定される。出力差信号xが基準値よりも大きい場合(S1:YES)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA1、A4、A6、A7のいずれかに存在すると判断する。そして集光レンズ2の初期移動方向をX’(+)方向に設定する(S2)。次いでS3の処理に進み、コンパレート信号Cを参照する。該コンパレート信号Cが「H」であれば(S3:NO)、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA4かA6のいずれかに存在すると判断する。そしてS4〜S6の処理に移行する。
【0052】
すなわち、コントローラ550は、まずS4において、集光レンズ2をS2で決定した方向、つまりX’(+)方向に所定量移動させる。次いで、S5において、コンパレート信号を参照する。コンパレート信号Cが「L」であれば(S5:YES)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6を越えてA7に存在すると判断し、図9に示すS16以降の処理に移行する。
【0053】
コンパレート信号Cが「H」であれば(S5:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA4内に存在すると判断する。図6(A)に示すように、現在の信号xレベルとずれ量の関係が範囲A4に存在していると言うことは、X’(+)方向に集光レンズを移動(つまりX(+)方向にスポットを移動)し続けることにより、ゼロクロス点P4を通過することがわかる。従ってコントローラ550は、S6において、出力差信号xのレベルが基準値以下になるまで、S4、S5の各処理を繰り返す(S6:YES)。S6において、出力差信号xのレベルが基準値以下になったと判断すると、コントローラ550は、入射端面3aにおけるスポットの位置がコア31中心近傍に位置したと判断し、粗調整処理を終了する(S6:NO)。
【0054】
S1において、出力差信号xのレベルが基準値以下であると判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA2、A3、A5、A8のいずれかに存在すると判断する。そして集光レンズ2の初期移動方向をX’(−)方向に設定する(S7)。次いでS8の処理に進み、コンパレート信号Cを参照する。該コンパレート信号Cが「H」であれば(S8:NO)、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA3かA5のいずれかに存在すると判断する。そしてS9〜S11の処理に移行する。
【0055】
すなわち、コントローラ550は、まずS9において、集光レンズ2をS7で決定した方向、つまりX’(−)方向に所定量移動させる。次いで、S10において、コンパレート信号を参照する。該コンパレート信号Cが「H」であれば(S10:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA5内に存在すると判断する。図6(A)に示すように、現在の信号xレベルとずれ量の関係が範囲A5に存在していると言うことは、X’(−)方向に集光レンズを移動(つまりX(−)方向にスポットを移動)し続けることにより、ゼロクロス点P4を通過することがわかる。従ってコントローラ550は、S11において、出力差信号xのレベルが基準値以上になるまで、S9、S10の各処理を繰り返す(S11:NO)。S11において、出力差信号xのレベルが基準値以上になったと判断すると、コントローラ550は、入射端面3aにおけるスポットの位置がコア31中心近傍に位置したと判断し、粗調整処理を終了する(S11:YES)。
【0056】
S3において、コンパレート信号Cが「L」であると判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA1かA7のいずれかに存在すると判断する。そしてS12以降の処理に移行する。
【0057】
S12において、コントローラ550は、集光レンズ2をS2で決定した方向、つまりX’(+)方向に所定量移動させる。そして、コンパレート信号Cを参照する(S13)。該信号Cが「L」であると判断すると(S13:YES)、コントローラ550は、出力差信号xのレベルが基準値以下になるまで、S12、S13の処理を繰り返す(S14:YES)。
【0058】
S14において、出力差信号xのレベルが基準値以下になったと判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA1またはA7からA2またはA8に移動したと判断する。そして、S15において、集光レンズの移動量をチェックする。詳しくは、移動量が所定量(ここでは20μm)以上である場合か否かを判断する。移動量が所定量未満である場合(S15:NO)、S12からの処理を繰り返す。なお、本実施形態ではS15での判断基準は集光レンズ2の実移動距離としているが、例えばステッピングモータを使用しているのであればパルス数であってもよいし、さらには移動時間であっても良い。
【0059】
現在の信号xレベルとずれ量の関係がA2内に存在する場合、レンズ移動量が20μm以上になると該関係はほぼ確実にA3もしくはA4に変化する。換言すれば、S14における判定がNOからYESに切り替わる。特に該関係がA4に存在するようになった場合には、S13における判定もYESからNOに切り替わり、後述のS32以降の処理が行われる。
【0060】
逆に、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA8内に存在する場合には、移動量がいくら大きくなろうとも該関係はA8内に存在し続ける。よって、移動量が所定量より大きいと判断すると、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA8に存在していると確定し、図9に示すS16以降の処理を行う。
【0061】
S5においてYESと判断した場合、およびS15においてYESと判断した場合(コア表面31a近傍から大きく離れている場合)、コントローラ550は次いでS2で設定された集光レンズ2の移動方向をX’(−)方向に逆転させ(S16)、該方向に移動させる(S17)。
【0062】
S17での移動処理は、コンパレート信号Cが「H」に切り替わるまで継続される(S18:YES)。コンパレート信号Cが「H」であると判断すると(S18:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6に存在すると認定する(S19)。
【0063】
次いでコントローラ550は、さらに集光レンズ2をX’方向に移動させ、スポットのずれ量を低減していく(S20)。S20での移動処理は、出力差信号xのレベルが基準値以下になるまで継続される(S21:YES)。出力差信号xのレベルが基準値以下になると(S21:NO)、コントローラ550は、現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6に存在すると認定する(S22)。
【0064】
次いでコントローラ550は、さらに集光レンズ2をX’方向に移動させ、スポットのずれ量を低減していく(S23)。S23での移動処理は、出力差信号xのレベルが基準値を超えるまで継続される(S24:NO)。出力差信号xのレベルが基準値を越えると(S24:YES)、コントローラ550は、入射端面3aにおけるスポットの位置がコア31中心近傍に位置したと判断し、粗調整処理を終了する。
【0065】
図7に示すS8において、コンパレート信号Cが「L」であると判断された場合(S8:YES)、コントローラ550は、図10に示すS25からの処理に移行する。S25からS28までの処理は、集光レンズ2の移動方向(スポットの移動方向)が異なる以外は図8に示すS12からS15の処理と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0066】
なお、S26において、コンパレート信号Cが「H」に切り替わったと判断した場合(S26:NO)、コントローラ550は、上述したS19の処理、つまり現在の信号xレベルとずれ量の関係がA6(場合によってはA5)の範囲内にあると判断する。そしてコントローラ550は、S20以降の処理を実行する。
【0067】
S10においてYESと判断した場合、およびS28においてYESと判断した場合(コア表面31a近傍から大きく離れている場合)、コントローラ550は、図11に示すS29からの処理を実行する。具体的にはコントローラ550は、S7で設定された集光レンズ2の移動方向をX’(+)方向に逆転させ(S29)、該方向に移動させる(S30)。S31からS37迄の処理は、集光レンズ2の移動方向(スポットの移動方向)が異なる以外は図9に示すS18からS24の処理と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
なお、図8に示すS13において、コンパレート信号Cが「H」であると判断された場合(S13:NO)、コントローラ550は、図11に示すS32からの処理に移行する。
【0069】
以上がコントローラ550により行われる粗調整処理に関する説明である。上記の粗調整処理をまとめた表を図12に示す。本実施形態のコントローラ550は、出力差信号xとコンパレート信号Cに基づいて、入射端面3a上において現在のスポットがコア表面31a中心からどれだけ離れた位置にあるか、および該スポットを該コア中心に導くためにいずれの方向に移動させればよいかが正確に求められていることが分かる。よって、光ファイバ35にキャピラリ34を装着した構成であっても、試行錯誤で初期の移動方向を決定したり、再度移動方向を改めたりする必要がなくなる。すなわち、短時間で正確な粗調整が実現される。
【0070】
以上の粗調整が完了した段階で、駆動システム5は、微調整を行う。図13は、図6に示した出力差信号xレベルとずれ量の関係におけるP4近傍を拡大して示す図である。上記の通り、コア表面31aとクラッド表面32a間の段差に起因する回折現象によって光強度分布が変化するため、上記関係は、S字状に変化する軌跡を描く。上述した粗調整により、現在の信号xレベルとずれ量の関係は、S字状の軌跡にほぼ対応する範囲A9内にある。
【0071】
このように、回折現象を利用して、コア表面31a近傍にあるときの出力差信号xのレベルを大きく変化させることにより、スポット中心をコア表面31a中心に一致させるためのより高精度な位置調整を実現している。なお、微調整時の移動量は、上記粗調整時の移動量よりも微細に設定される。
【0072】
以上が本発明の実施形態である。本発明にかかる駆動システムおよび該駆動システムを搭載する光通信装置は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0073】
上記実施形態の光通信装置10では、入射端面3aで形成されるスポットの移動方向を示すX方向とY方向は互いに直交すると説明した。これは同方向を直交する二軸に移動させる構成がより簡易な制御を可能にするからである。従って、本発明に係る光通信装置においてX方向とY方向は、必ずしも直交している必要はなく、非平行であればよい。
【0074】
また、上記実施形態では、集光レンズ2を駆動させることにより、LDからの光が入射端面3aにおいて形成するスポットを移動させてコア31中心に導く調整を行う構成を示した。スポットの移動手段としては、上記の構成以外の構成によるものであっても良い。例えば、集光レンズ2ではなく、LD自体をX’、Y’の各方向にスライドさせて入射端面3aにおけるスポットの位置を移動させることも可能である。他にも、頂角可変プリズムのような偏向部材をLDから入射端面3aまでの光路中に配設する。そして、第一集光レンズ2を駆動させる代替として、該偏向部材を駆動させるような変形も可能である。このように、偏向部材を配設する変形例は、集光レンズが一体形成されたLDを用いたモジュールのように、集光レンズ自体を駆動させることができない構成に非常に好適である。
【0075】
また上記実施形態では、キャピラリ34はクラッド32よりも高い反射率を持つと説明した。しかし、本発明に係る光通信装置におけるキャピラリ34は、クラッド32とは異なる反射率を有していればよい。
【0076】
また上記実施形態では、コンパレート信号CにおいてL/Hが切り替わる位置がちょうどP2あるいはP6と一致しているが、これはあくまで粗調整処理が簡易化されるより好適な一例であって、必ずしもL/Hの切り替わり位置と頂点P2、P6とが一致している必要はない。
【0077】
また上記実施形態では、メモリ540に格納される閾値Vrefは、キャピラリ34とクラッド32を識別可能な値として説明したが、キャピラリ34とコアを識別可能な値に設定しても良い。
【0078】
また、上記説明では出力差信号のレベルの比較対象となる基準値は0であると説明したが、必ずしも0に設定する必要はなく、あくまで、スポット中心とコア中心が一致している状態での出力差信号のレベルに設定される。つまり、装置の構成や光検出器4の性能等に応じて基準値は、適切な値に設定される。
【0079】
なお、上記の実施形態では、光ファイバ部3の入射端面3aに入射したLDからの光が回折するために、該入射端面3aにおいて、コア表面31aをクラッド表面32aよりも突出させる構成にしているが、これ以外の構成、例えば、コア表面31aをクラッド表面32aよりもλ/(8n)分凹ませる構成であっても同様の効果を得ることができる。
【0080】
さらには、入射端面3aにおけるコア31とクラッド32間に段差を設けなくても良い。この場合、図7に示す第一の出力差(第二の出力差)とずれ量の関係は、ゼロクロス点近傍も含め略リニアになる。そのため、位置調整に関する制御処理が簡易化される利点が得られる。
【0081】
さらに本発明に係る光通信装置の構成は、光ファイバ部3の入射端面3aへの光の入射位置を調整することにより、該光の減衰率を調整する可変光減衰装置としても利用することができる。この場合、上記実施形態におけるLDの代替として射出端面が二次的な点光源として機能する光ファイバが配設される。
【0082】
また上記実施形態の光通信装置によれば、光検出器4は、各境界線がX’、Y’のいずれかの方向に一致するように配設されているが、対角線がX’、Y’のいずれかの方向に一致するように配設されていてもよい。この場合、出力差信号は、二つの受光エリアの出力和の差ではなく、一つの受光エリアの差として求まる。
【0083】
また、上記実施形態の光通信装置によれば、光検出器4として各受光エリアが均等に分割された4分割PDを使用している。しかし、本発明に係る光通信装置は、必ずしも該実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、4つ以上に分割された受光エリアからなる光検出器であってもよい。この場合、X方向の調整時には、中心を基準としてX”(−)側にある各受光エリアの出力和からX”(+)側にある各受光エリアの出力和の差を求めれば出力差信号xを生成することができる。また、各受光エリアは必ずしも均等でなくても良い。例えば、受光面中心近傍はより小さなエリア分割し、端部近傍は比較的大きなエリアに分割された光検出器を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態の光通信装置の概略構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態の光ファイバ部における入射端面近傍の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態の光検出器の受光面を裏側から示した図である。
【図4】本発明の実施形態の駆動システムを表すブロック図である。
【図5】実施形態のSUM信号とコンパレート信号の一例を示す図である。
【図6】実施形態のコントローラが行う粗調整処理について説明するための図である。
【図7】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施形態のコントローラの粗調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施形態のコントローラの粗調整処理をまとめた表である。
【図13】出力差信号xレベルとずれ量の関係における原点近傍を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0085】
2 集光レンズ
3 光ファイバ
3a 入射端面
31 コア
32 クラッド
33 接着層
34 キャピラリ
4 光検出器
5 駆動システム
10 光通信装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報により変調された光を照射することができる光源と、
光ファイバと、該光ファイバのクラッドとは異なる反射率を有し、前記光ファイバの少なくとも一端の一部を保持する保持部材とからなり、前記一端には前記光が入射する入射端面を有し、該入射端面におけるコアに入射した光を透過する光伝送手段と、
前記光の光路上、前記光源と前記光伝送手段との間に配設される集光レンズと、
前記集光レンズを介した前記光が前記入射端面で形成するスポットを該入射端面上において互いに非平行な第一の方向および第二の方向に移動させる移動手段と、
二本の境界線によって均等に分割された4つの受光エリアを有し、前記入射端面での反射光を各受光エリアで受光する、前記コア中心で反射した光が前記二本の境界線の交点に入射するように配設された受光手段と、
前記各受光エリアからの出力に基づいて、前記コア中心を基準としたスポット中心の第一の方向へのずれ量に関する第一出力差信号を生成する第一出力差演算手段と、
前記各受光エリアからの出力に基づいて、前記コア中心を基準としたスポット中心の第二の方向へのずれ量に関する第二出力差信号を生成する第二出力差演算手段と、
全ての前記受光エリアからの出力を加算することにより和信号を生成する和信号生成手段と、
前記第一出力差信号、前記第二出力差信号、および前記和信号に基づいて、前記移動手段を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記第一出力差信号、前記第二出力差信号、および前記和信号に基づいて、現在の前記入射端面上でのコア中心に対する前記スポットの相対位置を検出し、かつ該スポットを前記コアに向かわせる移動方向を決定することを特徴とする光通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光通信装置において、
前記和信号生成手段は、全ての前記受光エリアからの出力を加算する加算回路と、前記加算回路からの出力を所定の閾値に基づいて第一のレベルと第二のレベルからなる和信号に変換する変換回路と、を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記和信号が第一のレベルにあって、かつ前記第一および第二の出力差信号が、前記入射端面におけるコア中心と前記スポット中心がほぼ一致しているときに得られる各出力差信号とほぼ同一レベルになるように前記移動手段を駆動制御することを特徴とする光通信装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記和信号について第二のレベルである状態が継続した場合、前記移動手段の移動方向を逆転させることを特徴とする光通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記移動手段の移動量または移動時間のいずれか一方に基づいて、前記和信号について第二のレベルである状態が継続したことを判別することを特徴とする光通信装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれかに記載の光通信装置において、
前記所定の閾値は、前記スポットが前記クラッドと前記保持部材間を移動した際に生じる前記受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、
前記和信号は、前記第一のレベルが前記入射端面において前記スポットが前記クラッドまたは前記コアに位置していることを示し、前記第二のレベルが該スポットが前記クラッドまたは前記コアに位置していないことを示すことを特徴とする光通信装置。
【請求項8】
請求項3から請求項6に記載の光通信装置において、
前記所定の閾値は、前記スポットが前記クラッドと前記コア間を移動した際に生じる前記受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、
前記和信号は、前記第一のレベルが前記入射端面において前記スポットが前記コアに位置していることを示し、前記第二のレベルが該スポットが前記コアに位置していないことを示すことを特徴とする光通信装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光通信装置において、
前記保持部材は、前記クラッドと同種の材料であってかつ前記クラッドよりも高い反射率を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の光通信装置において、
前記保持部材は、キャピラリであることを特徴とする光通信装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の光通信装置において、
前記移動手段は、前記集光レンズを光軸に直交する面内で移動させることを特徴とする光通信装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光通信装置において、
前記第一の方向と前記第二の方向は互いに直交することを特徴とする光通信装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の光通信装置において、
前記二本の境界線は、それぞれ前記第一の方向および前記第二の方向に平行に延出していることを特徴とする光通信装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の光通信装置において、
前記入射端面は、コアとクラッド間に前記光が回折するような所定寸法の段差が形成されていることを特徴とする光通信装置。
【請求項1】
情報により変調された光を照射することができる光源と、
光ファイバと、該光ファイバのクラッドとは異なる反射率を有し、前記光ファイバの少なくとも一端の一部を保持する保持部材とからなり、前記一端には前記光が入射する入射端面を有し、該入射端面におけるコアに入射した光を透過する光伝送手段と、
前記光の光路上、前記光源と前記光伝送手段との間に配設される集光レンズと、
前記集光レンズを介した前記光が前記入射端面で形成するスポットを該入射端面上において互いに非平行な第一の方向および第二の方向に移動させる移動手段と、
二本の境界線によって均等に分割された4つの受光エリアを有し、前記入射端面での反射光を各受光エリアで受光する、前記コア中心で反射した光が前記二本の境界線の交点に入射するように配設された受光手段と、
前記各受光エリアからの出力に基づいて、前記コア中心を基準としたスポット中心の第一の方向へのずれ量に関する第一出力差信号を生成する第一出力差演算手段と、
前記各受光エリアからの出力に基づいて、前記コア中心を基準としたスポット中心の第二の方向へのずれ量に関する第二出力差信号を生成する第二出力差演算手段と、
全ての前記受光エリアからの出力を加算することにより和信号を生成する和信号生成手段と、
前記第一出力差信号、前記第二出力差信号、および前記和信号に基づいて、前記移動手段を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記第一出力差信号、前記第二出力差信号、および前記和信号に基づいて、現在の前記入射端面上でのコア中心に対する前記スポットの相対位置を検出し、かつ該スポットを前記コアに向かわせる移動方向を決定することを特徴とする光通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光通信装置において、
前記和信号生成手段は、全ての前記受光エリアからの出力を加算する加算回路と、前記加算回路からの出力を所定の閾値に基づいて第一のレベルと第二のレベルからなる和信号に変換する変換回路と、を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記和信号が第一のレベルにあって、かつ前記第一および第二の出力差信号が、前記入射端面におけるコア中心と前記スポット中心がほぼ一致しているときに得られる各出力差信号とほぼ同一レベルになるように前記移動手段を駆動制御することを特徴とする光通信装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記和信号について第二のレベルである状態が継続した場合、前記移動手段の移動方向を逆転させることを特徴とする光通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光通信装置において、
前記制御手段は、前記移動手段の移動量または移動時間のいずれか一方に基づいて、前記和信号について第二のレベルである状態が継続したことを判別することを特徴とする光通信装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれかに記載の光通信装置において、
前記所定の閾値は、前記スポットが前記クラッドと前記保持部材間を移動した際に生じる前記受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、
前記和信号は、前記第一のレベルが前記入射端面において前記スポットが前記クラッドまたは前記コアに位置していることを示し、前記第二のレベルが該スポットが前記クラッドまたは前記コアに位置していないことを示すことを特徴とする光通信装置。
【請求項8】
請求項3から請求項6に記載の光通信装置において、
前記所定の閾値は、前記スポットが前記クラッドと前記コア間を移動した際に生じる前記受光手段からの出力変化に基づいて設定されており、
前記和信号は、前記第一のレベルが前記入射端面において前記スポットが前記コアに位置していることを示し、前記第二のレベルが該スポットが前記コアに位置していないことを示すことを特徴とする光通信装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光通信装置において、
前記保持部材は、前記クラッドと同種の材料であってかつ前記クラッドよりも高い反射率を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の光通信装置において、
前記保持部材は、キャピラリであることを特徴とする光通信装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の光通信装置において、
前記移動手段は、前記集光レンズを光軸に直交する面内で移動させることを特徴とする光通信装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の光通信装置において、
前記第一の方向と前記第二の方向は互いに直交することを特徴とする光通信装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の光通信装置において、
前記二本の境界線は、それぞれ前記第一の方向および前記第二の方向に平行に延出していることを特徴とする光通信装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の光通信装置において、
前記入射端面は、コアとクラッド間に前記光が回折するような所定寸法の段差が形成されていることを特徴とする光通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−83174(P2008−83174A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260669(P2006−260669)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
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