説明

光部品の脱着工具

【課題】光コネクタ又は光アッテネータの脱着工具に関して、同時に行う動作を減らし、使い勝手を向上させる。
【解決手段】先端1aが光コネクタ2の両脇に差し込まれる一対の弾性アーム1,1と、各弾性アーム1の先端1aに設けられ、光コネクタ2のリリース部2cを挟み付ける挟持部5と、各弾性アーム1に沿ってその先端1a側に移動することで各弾性アーム1の先端1aの間隔を狭めるスライダ3とを備えている。スライダ3は各弾性アーム1の先端1a側の閉位置7に保持可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ又は光アッテネータをアダプタに対して抜き差しする際に用いる光部品の脱着工具に関する。更に詳しくは、本発明は、光通信ネットワークなどで現在主流になっているLC型光コネクタ、SC型光コネクタ、光アッテネータの脱着作業に兼用できる光部品の脱着工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、PON方式を利用したFTTx方式の光通信ネットワーク例えばFTTHが広く構築されている。PON方式は、設備センター側の1つのOLT(Optical Line Terminal:光加入者線局内装置)に光スプリッタを介して複数のONU(Optical Network Unit:光加入者線宅内装置)が接続される形態(1対多接続)のポイント・ツー・マルチポイントシステムで構築されたネットワーク方式である。このPON方式の場合には、32分岐まで分波が行われるので、OLTからの出力ファイバを局内で4分岐あるいは8分岐(場合によっては16分岐)してから加入者宅近傍の架空光クロージャーでさらに8分岐あるいは4分岐(場合によっては2分岐)するようにしているのが一般的である。
【0003】
ファイバの分岐は局内に配置された光分岐接続装置あるいは光接続箱若しくは光配線架と呼ばれるもので行われており、光コネクタとアダプタを用いて光ファイバコードなどを接続するようにしている。この光分接続装置においては、近年、配線の高密度化が進み、コネクタピッチ間が狭くなったり、より小型の光コネクタを用いる傾向にあり、本来は手にて脱着可能な光コネクタの脱着作業が作業者の指先で行うことが難しくなっている問題がある。このことは光配線の高密度化を妨げる一因ともなっている。
【0004】
そこで、高密度で実装されたアダプタへの光コネクタの挿抜作業を治具を用いて補助することが提案されている。例えば、米国のルーセント社が開発したLC型光コネクタ(IEC61754-20にて国際標準化)を対応するアダプタへ挿抜するための工具として、ピンセット状の一対の弾性アームの先端にカギ部を設けたものが提案されている(特許文献1)。この工具は、図7〜図9に示すように、ピンセットのように使用されるものであり、一対の弾性アーム101,101の先端を光ケーブル102側から光コネクタ103の両脇に差し込んでカギ部101aでリリース部103aと当該リリース部103aの反対側の段部103bとを挟み付け、光コネクタ103を引っ掛けてそのまま真っ直ぐアダプタから引き抜くものである。
【0005】
使用者は一対の弾性アーム101の操作部101bを掴み、各操作部101bの間隔を狭めることで先端のカギ部101aで光コネクタ103を挟持する。一方、使用者が操作部101bを掴む力を弱めると、自身のばね力によって各弾性アーム101の操作部101bの間隔が広がり、先端のカギ部101aが挟持していた光コネクタ103を離す。各弾性アーム101の中間部には間隔規制手段としてのピン104が設けられており、各弾性アーム101の先端の開き過ぎを防止して狭い場所への差し込みを容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−39444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の工具では、光コネクタ103を挟持している状態を維持するためには使用者が操作部101bを常に掴み続ける必要がある。そのため、工具を使用して光コネクタ103をアダプタから引き抜くには、光コネクタ103を挟み付ける動作と光コネクタ103を引き抜く動作とを同時に行う必要があり、工具が使い勝手に劣るものであった。
【0008】
本発明は、同時に行う動作を減らし、使い勝手に優れた光部品の脱着工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の光部品の脱着工具は、先端がケーブル側から光コネクタ又は光アッテネータの両脇に差し込まれる一対の弾性アームと、弾性アームの先端に設けられ、光コネクタ又は光アッテネータのグリップ部又はリリース部を挟み付ける挟持部と、弾性アームに沿ってその先端側に移動することで弾性アームの先端の間隔を狭めると共に、弾性アームの先端側の閉位置に保持可能なスライダとを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光部品の脱着工具によれば、一対の弾性アームの先端をアダプタに嵌め込まれた光ケーブル又は光アッテネータの両脇に差し込んで挟持部によって光コネクタ又は光アッテネータを挟持した後、スライダを閉位置に移動させることで各弾性アームの先端の間隔即ち各挟持部の間隔が広がるのを防止することができ、挟持部による光コネクタ又は光アッテネータの挟持状態を維持することができる。そのため、光部品の脱着工具を単純に引っ張るだけで光コネクタ又光アッテネータをアダプタから引き抜くことができ、光コネクタ又は光アッテネータを挟み付ける動作を行いながら同時に工具を引っ張る動作を行う場合に比べて、光コネクタ又光アッテネータの引き抜き作業が容易になり、光部品の脱着工具が使い勝手の良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光部品の脱着工具の実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】同脱着工具の底面図である。
【図3】同脱着工具のLC型光コネクタへの使用状態を示し、(A)は挟持部を光コネクタのリリース部に位置合わせした状態の斜視図、(B)は挟持部で光コネクタのリリース部と反対側の面とを挟み込んだ状態の斜視図である。
【図4】同脱着工具のLC型光コネクタへの使用状態を示し、(A)は挟持部を光コネクタのリリース部に位置合わせした状態の底面図、(B)は挟持部で光コネクタのリリース部と反対側の面とを挟み込んだ状態の底面図である。
【図5】同脱着工具のSC型光コネクタへの使用状態を示し、挟持部を光コネクタのグリップ部に位置合わせした状態の斜視図である。
【図6】同脱着工具の光アッテネータへの使用状態を示し、挟持部を光コネクタのグリップ部に位置合わせした状態の斜視図である。
【図7】従来の脱着工具を示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は前端側面の拡大図である。
【図8】従来の脱着工具の光コネクタ抜き取り手順の説明図であり、(A)は工具前端をブーツに合わせた状態の側面図、(B)は工具をコネクタ端までゆっくりと挿入した状態の側面図、(C)は工具を勢いを付けて光コネクタに差し込んだ状態の側面図、(D)は工具を真っ直ぐ後ろに引き抜いた状態の側面図である。
【図9】従来の脱着工具の光コネクタ挿入手順の説明図であり、(A)は光コネクタを把持した状態の側面図、(B)は光コネクタを真っ直ぐ押し込んだ状態の側面図、(C)は工具を真っ直ぐ後ろに引き抜いた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1〜図4に、本発明を適用した光部品の脱着工具の実施形態の一例を示す。光部品の脱着工具は、先端1aが光コネクタ2又は光アッテネータの両脇に差し込まれる一対の弾性アーム1,1と、各弾性アーム1の先端1aに設けられ、光コネクタ2又は光アッテネータのグリップ部又はリリース部を挟み付ける挟持部5と、各弾性アーム1に沿ってその先端1a側に移動することで各弾性アーム1の先端1aの間隔を狭めるスライダ3とを備えている。
【0014】
各弾性アーム1は、例えば金属板、樹脂板等の弾性変形可能な板材により形成され、後側半部の間に取手部材4を挟み込んで例えばねじ止めされている。各弾性アーム1の前側部分の上側辺には内側に直角に折り曲げられ且つ前側に延出する水平部1bが設けられており、水平部1bの先端1aには下側に直角に伸びる挟持部5が設けられている。水平部1bを設けることで各弾性アーム1の横断面がL字形状になりアームとしての剛性を確保すると共に、各弾性アーム1の水平部1b同士が当たることで各弾性アーム1の間に光コネクタ2のケーブル2aやブーツ部2bを配置する空間6を確保することができる一方、前側部分にのみ水平部1bを設けることで各弾性アーム1の先端1aを開閉するような弾性変形を容易にしている。また、各弾性アーム1の下側縁にはスライダ3のストッパとなる段部1cが設けられている。なお、ここでは、光部品の脱着工具の水平部1cを設けている方向を上とし、段部1cを設けている方向を下として説明するが、実際には光コネクタ2又は光アッテネータの向きに応じたものとなる。
【0015】
本実施形態では、1枚の金属板を折り曲げることで各弾性アーム1に水平部1bと挟持部5を一体的に設けているが、水平部1bおよび挟持部5を別体にしても良い。また、アームとしての剛性を確保できる場合には水平部1bを省略しても良い。各弾性アーム1は先端1aを広げる方向に途中で折り曲げられている。本実施形態では各弾性アーム1を金属板により形成し、取手部材4を樹脂板により形成しているが、必ずしもこれに限られない。また、取手部材4を省略し、弾性アーム1,1同士を直接固着しても良い。さらに、1枚のプレートを折り曲げて一対の弾性アーム1,1を形成しても良い。
【0016】
各弾性アーム1の先端1aに設けられた挟持部5は細長い棒状を成しており、作業対象の光コネクタ2又は光アッテネータがLC型(光コネクタ2について図3,図4)の場合にはアダプタ7のロック爪7aを外すリリース部2cと当該リリース部2cの反対側の面2dとをリリース部2cを押し込みながら挟持し、SC型(光コネクタ2について図5)の場合にはスライドすることでリリースレバーを操作するグリップ部2eを挟持することができる。
【0017】
本実施形態のスライダ3は各弾性アーム1の外側を囲むように設けられている。スライダ3は、前方へは折り曲げ部3aが各弾性アーム1の段部1cに当たる位置まで移動でき、後方へは後端の凸部3bが取手部材4に当たる位置(開位置)まで移動できる。スライダ3を前方に移動させると前端部3cが各弾性アーム1を内側に窄ませて先端1aを閉じる(間隔を狭める)と共に、後方に移動させると前端部3cによる押圧が解除されて各弾性アーム1は自身のばね力によって先端1aを広げる(間隔を広げる)。スライダ3には使用者が指をかける操作片3dが設けられている。
【0018】
スライダ3は各弾性アーム1の先端1a側の閉位置に保持可能になっている。ここで、閉位置とは、各挟持部5によって光コネクタ2又は光アッテネータを挟持できるまで各弾性アーム1の先端1aの間隔を狭める位置をいい、例えば図3(B),図4(B)に示す位置である。本実施形態では各弾性アーム1が自身のばね力によって先端1aを広げようとする力を利用して各弾性アーム1とスライダ3との間に摩擦力を発生させてスライダ3を閉位置に保持するようにしている。ただし、引っ掛け部を設ける等の手段を講じてスライダ3を閉位置に保持するようにしても良い。
【0019】
次に、光部品の脱着工具の使用について説明する。LC型光コネクタ2については、主にアダプタ7から光コネクタ2を外す場合に使用する。スライダ3を開位置に移動させることで、各弾性アーム1の先端1aが広がるので、この状態で各弾性アーム1の先端1aをケーブル2a側から光コネクタ2の両脇に差し込む。そして、各挟持部5を光コネクタ2のリリース部2cとその反対側の面2dに位置合わせした(図3(A),図4(A))後、スライダ3を閉位置に移動させる。スライダ3を閉位置に移動させることで各弾性アーム1の先端1aが閉じ、各挟持部5がリリース部2cとその反対側の面2dを挟み込む(図3(B),図4(B))。このとき、リリース部2cが押し込まれてロック爪7aが操作され、光コネクタ2のアダプタ7へのロックが解除される。スライダ3は各弾性アーム1に摩擦係合して位置保持されているので、使用者が操作等をしなければ閉位置から外れることはない。したがって、使用者が挟み込む操作力を作用させなくても挟持部5による光コネクタ2の挟持状態は維持される。この状態で光部品の脱着工具を真っ直ぐ引き抜くことで光コネクタ2をアダプタ7から外すことができる。光コネクタ2をアダプタ7から外した後、スライダ3を開位置に移動させると、各弾性アーム1の先端1aが広がり各挟持部5が光コネクタ2を放すので、光部品の脱着工具から光コネクタ2を取り外すことができる。
【0020】
また、SC型光コネクタ2については、アダプタ7から外す場合とアダプタ7に嵌め込む場合との両方に使用する。アダプタ7から外す場合には、LC型光コネクタ2の場合と同様に、各弾性アーム1の先端1aをケーブル2a側から光コネクタ2の両脇に差し込んで使用する。ただし、SC型光コネクタ2にはLC型光コネクタ2のようにリリース部が無いので、各挟持部5をスライドすることでリリースレバーを操作するグリップ部2eに位置合わせしてスライダ3を閉位置に移動させる。これにより各挟持部5がグリップ部2eを挟持する。この状態で光部品の脱着工具を真っ直ぐ引き抜くことで、グリップ部2eをスライドさせてアダプタ7とのロックを解除し、アダプタ7から外すことができる。光コネクタ2をアダプタ7から外した後、スライダ3を開位置に移動させると、各弾性アーム1の先端1aが広がり各挟持部5がグリップ部2eを放すので、光部品の脱着工具から光コネクタ2を取り外すことができる。
【0021】
一方、SC型光コネクタ2をアダプタ7に嵌め込む場合には、各弾性アーム1の先端1aを光コネクタ2の両脇に差し込み、各挟持部5をグリップ部2eに位置合わせした後、スライダ3を閉位置に移動させる。これにより各挟持部5がグリップ部2eを挟持する。この状態で光コネクタ2をアダプタ7に押し込んで嵌め込む。そして、グリップ部2eをそのまま奥にスライドさせると光コネクタ2がアダプタ7にロックされる。その後、スライダ3を開位置に移動させて各挟持部5をグリップ部2eから放し、光部品の脱着工具を引き抜くことで、アダプタ7への嵌め込み作業が完了する。
【0022】
なお、LC型光コネクタ2をアダプタ7に嵌め込む場合にも光部品の脱着工具を使用しても良い。
【0023】
なお、上述の説明では、LC型とSC型の光コネクタ2について説明しているが、LC型とSC型の光アッテネータについても同様である。一例としてLC型の光アッテネータ8についての使用状態を図6に示す。この場合、各挟持部5によって光アッテネータ8のリリース部8cとその反対側の面8dとを挟み込むようにする。
【0024】
以上のように構成された光部品の脱着工具によれば、スライダ3を閉位置に移動させることで各挟持部5による光コネクタ2の挟持状態を維持することができるので、光部品の脱着工具を単純に引っ張るだけで光コネクタ2をアダプタ7から引き抜くことができ、光コネクタを挟み付ける動作を行いながら同時に工具を引っ張る動作を行う場合に比べて、光コネクタ2の引き抜き作業が容易になり、光部品の脱着工具が使い勝手の良いものとなる。
【0025】
また、本発明の光部品の脱着工具はLC型光コネクタ2、SC型光コネクタ2、光アッテネータ(LC型,SC型の両方)のいずれにも使用することができ、汎用性が高く、使い勝手の良いものとなる。
【0026】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、光部品の脱着工具の少なくとも使用者が握る部分をラバー等の絶縁体でコーティングしても良い。
【0027】
また、使用できる光部品としてLC型・SC型の光コネクタ2および光アッテネータを例にあげているがこれらに限られず、各挟持部1bによって挟持して脱着できるものでれば適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 弾性アーム
1a 弾性アームの先端
2 光コネクタ
2a ケーブル
2c 光コネクタのリリース部
3 スライダ
5 挟持部
7 アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が光コネクタ又は光アッテネータの両脇に差し込まれる一対の弾性アームと、前記弾性アームの先端に設けられ、前記光コネクタ又は前記光アッテネータのグリップ部又はリリース部を挟み付ける挟持部と、前記弾性アームに沿ってその先端側に移動することで前記弾性アームの先端の間隔を狭めると共に、前記弾性アームの先端側の閉位置に保持可能なスライダとを備えることを特徴とする光部品の脱着工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114239(P2013−114239A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263257(P2011−263257)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【Fターム(参考)】