説明

光電センサおよび光電センサの受光状態を確認する作業の支援方法

【課題】検出に適したしきい値を判別するのに適した情報を表示する。
【解決手段】投光部103および受光部104と、受光処理により得られた受光量をあらかじめ設定されたしきい値と比較することにより入光状態および非入光状態のいずれであるかを判別して、その判別結果を出力する検出部として機能する制御部105と、受光量を表示することが可能な表示部100とを具備する光電センサにおいて、現在設定されているしきい値により判別される複数の入光期間および複数の受光期間を対象に、各入光期間の中で受光量が相対的に最も低くなった期間における受光量と、各受光期間の中で受光量が相対的に最も高くなった期間における受光量とをそれぞれ特定し、特定された2つの代表受光量を、表示部100に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出のための光を投光すると共に、その投光された光または投光された光に対する反射光を受光し、受光量を所定のしきい値と比較することにより物体を検出する光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
移動する物体を検出する光電センサの受光量には、設定されたしきい値を超えて山状に変化する部分と、しきい値より下がって谷状に変化する部分とが交互に生じる(以下、各変動部分を「山」「谷」という。)。透過型のセンサでは、山から谷への変化が生じたことをもって「物体あり」を示す検出信号を出力する。反対に反射型のセンサでは、谷から山への変化が生じたことをもって「物体あり」を示す検出信号を出力する。
【0003】
いずれの型のセンサでも、検出の精度を確保するには、山と谷との間に十分な差が生じるように感度を調整すると共に、山のピーク値と谷のボトム値との双方に対して余裕のある値をしきい値に設定する必要がある。また、ユーザが手操作でしきい値を設定する場合の参考にしたり、検出に適したしきい値が設定されているかどうかを確認するために、実際の受光状態を確認できるようにする必要がある。
【0004】
上記の必要性を鑑みて、一定長さの期間における受光量の最大値と最小値とを抽出し、抽出された各値を表示する機能を備えた光電センサがある(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4023621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光電センサでは、微小な物体や高速で移動する物体を検出対象とすることが多く、また複数種の物体が検出対象となる場合もあるので、検出対象物によって反射状態(反射率、反射の方向など)が変動する可能性がある。この反射状態の変動が大きいと、受光量の山や谷のばらつきも大きくなる。
【0007】
特許文献1に記載された発明によれば、一定長さの期間内に含まれる山の中で最も振幅が大きな山のピーク値と、同期間に含まれる谷の中で最も振幅が大きな谷のボトム値とが抽出されて表示されるので、これらに対して十分な余裕度を有する値がしきい値として設定される。このため、受光量の山や谷に大きなばらつきが生じていると、振幅が小さな山や谷では、しきい値に対する余裕度が小さくなり、検出動作が不安定になるおそれがある。
【0008】
本発明は上記の問題に着目してなされたもので、検出に適したしきい値を判別するのに適した情報が表示されるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が適用される光電センサは、検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をしきい値と比較することにより入光状態および非入光状態のいずれであるかを判別して、その判別結果を出力する検出手段とを具備するもので、さらに、以下の代表受光量特定手段および出力手段を具備する。
【0010】
代表受光量特定手段は、現在設定されているしきい値により入光状態と判別される受光量が得られる入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も低くなった入光期間に得た受光量の中から入光状態を表す代表受光量を特定し、前記しきい値により非入光状態と判別される受光量が得られる非入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も高くなった非入光期間に得た受光量の中から非入光状態を表す代表受光量を特定する。
出力手段は、代表受光量特定手段により特定された2つの代表受光量を示す情報を、各代表受光量の表示のために出力する。この出力に伴い実施される表示処理では、たとえば、各代表受光量を並べて表示したり、両者を切り替え操作に応じて交互に表示することができる。
【0011】
上記において、入光期間は受光量の山が生じる期間に相当し、非入光期間は受光量の谷が生じる期間に相当する。上記の構成によれば、複数の山の中の最も低い山における受光量と複数の谷の中の最も浅い谷における受光量とを表示することが可能になる。山と谷とは、あくまでも現在設定されているしきい値に基づいて区別されるので、ユーザは、表示された2つの代表受光量の関係(各代表受光量の差の値など)に基づき、検出に適したしきい値の値を判断することができる。
【0012】
なお、代表受光量特定手段が処理対象とする入光期間と非入光期間とを分けるしきい値は、検出手段の判別処理のために設定されているしきい値に限らず、当該判別処理のためのしきい値を変更する候補の値として仮に設定されたしきい値であってもよい。
【0013】
上記の光電センサの第1の実施形態では、代表受光量特定手段は、あらかじめ定めた一定時間内に生じた複数の入光期間につき、それぞれその期間内に得た受光量を大きさの降順に並べた場合に第1の特定の順位に当たる受光量を抽出して、抽出された受光量の中の最小値を入光状態を表す代表受光量として特定する。また一定期間内に生じた複数の非入光期間につき、それぞれその期間内に得た複数の受光量を大きさの昇順に並べた場合に第2の特定の順位に当たる受光量を抽出して、抽出された受光量の中の最大値を非入光状態を表す代表受光量として特定する。なお、第1および第2の特定の順位は、あらかじめ定められて固定されている順位でも良いし、ユーザの入力等により変更可能に設定される順位であってもよい。
この実施形態によれば、たとえば検出対象物の移動速度に基づき、十分な数の対象物が通過するのに要する時間を求めて、この時間を代表受光量特定手段による処理時間として設定することにより、様々な値にばらつく受光量の山や谷を得て、それらの中で山と谷とを分けたしきい値に対する余裕度が最も小さい山および谷の受光量を表示することができる。
【0014】
第2の実施形態による光電センサでは、代表受光量特定手段は、受光処理により得られる受光量をしきい値と比較して入光期間と非入光期間との切り替わりを判別しつつ、入光期間については当該期間内に得た受光量を大きさの降順に並べた場合に第1の特定の順位に当たる受光量を抽出し、非入光期間については当該期間内に得た受光量を大きさの昇順に並べた場合に第2の特定の順位に当たる受光量を抽出する。また、入光期間から非入光期間への切り替わりを判別する都度、その直前の入光期間から遡る過去の複数の入光期間につき抽出した受光量の中の最小値を入光状態を表す代表受光量として特定し、非入光期間から入光期間への切り替わりを判別する都度、その直前の非入光期間から遡る過去の複数の非入光期間につき抽出した受光量の中の最大値を非入光状態を表す代表受光量として特定する。なお、この実施形態でも、第1および第2の特定の順位は、あらかじめ定められて固定されている順位でも良いし、ユーザの入力等により変更可能に設定される順位であってもよい。
この実施形態によれば、たとえば、複数の対象物が移動している間の受光量を取得して処理を行うことにより、最終的に、各対象物に対応する山や谷の中からしきい値に最も近い山および谷の代表受光量を表示することができる。
【0015】
第3の実施形態による光電センサでは、検出手段は、受光部からの受光量データを一定の時間間隔で取得してしきい値と比較することにより、入光状態および非入光状態のいずれであるかを判別すると共に、この判別の結果が切り替わったとき、切り替え後と同じ判別結果を得る受光量データを一定回数P続けて取得したことを条件として、出力を反転させる。代表受光量特定手段は、入光期間については当該期間で最大受光量から数えてP番目に高い受光量を、非入光期間については当該期間で最小受光量から数えてP番目に低い受光量を、それぞれその期間における代表受光量として抽出すると共に、各入光期間の代表受光量の中の最小値を入光状態を表す代表受光量として特定し、各非入光期間の代表受光量の中の最大値を非入光状態を表す代表受光量として特定する。
【0016】
入光状態と非入光状態とが切り替わっても、すぐには出力を切り替えずに、切り替わった後の状態がP回続いたことをもって出力を反転させるタイプのセンサでは、山、谷ともに、少なくともP個の受光量が確保できるようにしきい値が設定されていないと、誤検出が生じてしまう。またP個の受光量が得られる場合でも、それらの受光量のしきい値に対する余裕度が小さい場合には、受光量のばらつきに対して安定した検出を行うのが困難である。
第3の実施形態では、上記の問題点を考慮して、各山のP番目に高い受光量の中の最小値と、各谷のP番目に低い受光量の中の最大値とを、表示の対象として特定するので、ユーザは、両者の値の関係から、検出処理に適したしきい値を容易に判別することが可能になる。
【0017】
第4の実施形態による光電センサでは、出力手段に、代表受光量特定手段により特定された2つの代表受光量を表示するための表示部が含まれる。すなわち、検出を行うセンサ自体が2種類の代表受光量を表示する機能を備えることになる。
出力手段に表示部が含まれない場合でも、各代表受光量を示す情報を外部の表示装置に与えて表示することができる。
【0018】
第5の実施形態による光電センサは、しきい値を変更する操作を行うための操作部と、代表受光量特定手段により特定された2つの代表受光量の表示に連動させて検出手段の判別処理のために設定されているしきい値が表示されるように当該しきい値を出力し、この出力による表示が行われている状態下で操作部による操作に応じてしきい値を変更するしきい値変更手段とを、さらに具備する。この構成によれば、たとえば、各代表受光量の表示に対してしきい値を呼び出す操作が行われたことに応じて、現在のしきい値を表示し、ユーザがしきい値と代表受光量との関係が適切でないと判断した場合に、操作によりしきい値を変更することができる。
【0019】
上記のしきい値の表示は、代表受光量の表示と切り替えて行っても良いし、代表受光量の表示にしきい値の表示を加える方法をとってもよい。また、ユーザによるしきい値の呼び出し操作を行うことなく、最初から、各代表受光量およびしきい値を、三者の比較が可能な態様により表示してもよい。
【0020】
本発明は、光電センサの受光状態を確認する作業を支援する方法に適用することができる。この方法では、光電センサに現在設定されているしきい値より入光状態と判別される受光量が得られる入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も低くなった入光期間に得た受光量の中から入光状態を表す代表受光量を特定し、しきい値により非入光状態と判別される受光量が得られる非入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も高くなった非入光期間に得た受光量の中から非入光状態を表す代表受光量を特定し、特定された2つの代表受光量を表示する。
【0021】
上記の方法は、光電センサの制御部により実施することができるが、これに限らず、光電センサの受光部から取得した受光量を外部機器に伝送し、外部機器で代表受光量の特定や表示を行ってもよい。または、代表受光量を特定する処理は光電センサで行い、特定された代表受光量を外部機器に送信して、センサの外部で代表受光量の表示を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検出対象物によって受光量の変化の状態にばらつきが生じる場合でも、入光期間および非入光期間につき、それぞれしきい値に対する余裕度が最も小さな期間における代表受光量が表示されるので、ユーザは、双方の代表受光量に対して十分な余裕度が得られる受光量がしきい値の適正値であると判断することができる。よって、現在のしきい値がこの適正値から離れている場合には、しきい値を変更することにより、安定した検出処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光ファイバ式の光電センサの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の光電センサの上面カバーを開けた状態を示す斜視図である。
【図3】上記光電センサの操作部および表示部を含む上面を正面視した図である。
【図4】上記光電センサの電気構成を示すブロック図である。
【図5】受光量のピーク値およびボトム値を参照してしきい値を変更する処理を行う場合に表示部に展開される表示の例を示す図である。
【図6】検出処理に用いられるパルスカウント数をモード別に示すテーブルである。
【図7】パルスカウント方式の検出処理の具体例をその問題点と共に示す図である。
【図8】受光量のピーク値およびボトム値を表示する処理に関する手順を示すフローチャートである。
【図9】入光時処理および非入光時処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図10】入光期間中の受光量を格納するバッファの値の変化の例を示すテーブルである。
【図11】受光量のピーク値およびボトム値を表示する処理に関する手順の第2の例を示すフローチャートである。
【図12】受光量のピーク値およびボトム値を表示する処理に関する手順の第3の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1および図2は、本発明が適用される光ファイバ式の光電センサの外観を示す。
この光電センサ1は、本体部10と本体部10の前面に取り付けられる一対の光ファイバ11,12とを具備する。光ファイバ11は投光用で、他方の光ファイバ12は受光用である。各光ファイバ11,12の先端部には、それぞれレンズなどを含むヘッド部11A,12Aが取り付けられている。なお、実際の光ファイバ11,12は、図示の状態より長くすることができる。
【0025】
各光ファイバ11,12は、それぞれ本体部10の前面の挿入口11B,12Bに挿入される。投光用の光ファイバ11の挿入口11Bの近傍には投光部が設けられ、受光用の光ファイバ12の挿入口12Bの近傍には受光部が設けられる。また本体部10の背面からは、接続用のケーブル14が引き出されている。
【0026】
上記の光電センサ1は、投光部から投光された光を受光部により受光し、この光路が遮光された状態を「物体あり」と判別する透過型のセンサとして機能するが、物体からの反射光を受光して「物体あり」と判別する反射型の光電センサとして機能させることもできる。反射型の光電センサとして使用する場合には、各光ファイバ11,12の先端に共通のヘッド部が装着され、このヘッド部が検出エリアに向けて配備される。
【0027】
受光部により生成された受光量データは、制御部(CPU)に入力され、あらかじめ登録されたしきい値との比較により入光状態であるか否かが判定されて、その判定結果が出力される。
【0028】
本体部10の上面には、表示部100や複数の押ボタンスイッチSW1〜SW5が設けられる。使用時の上面にはカバー13が被せられるが、設定の際などには、カバー13が開放されて各押ボタンスイッチSW1〜SW5の操作が可能になる。図2は、カバー13が開放された状態の本体部10の斜視図であり、図3は上面を正面視した図である。なお、カバー13は透明であるので、カバー13が装着されている場合でも、カバー13を介して表示部100の表示を確認することができる。
【0029】
図2,3を参照して上面の構成を説明する。
この実施例では、本体部の前面寄りの位置に、押ボタンスイッチSW1が配備され、その後方に表示部100が設けられ、さらに表示部100の後方に4個の押ボタンスイッチSW2,SW3,SW4,SW5が配備されている。なお、押ボタンスイッチSW2,SW3のボタン部は一体になっているが、筐体10内のスイッチ本体(図示せず。)はそれぞれ独立している。
【0030】
表示部100には、一対の表示器101,102や5個の表示灯111〜115が設けられる。表示器101,102は、4個の7セグLEDが組み合わせられたもので、それぞれ4桁以内の数字やアルファベット文字列を表示する。
【0031】
前方の押ボタンスイッチSW1は、後記するチューニング処理に使用されるので、以下、このスイッチSW1を「チューニングスイッチSW1」という。
表示部100の後方の一対の押ボタンスイッチSW2,SW3は、表示器101,102に表示される数値やサブメニューを変更するために用いられる。以下、ボタン部に+印が付いたスイッチSW2を「アップスイッチSW2」と呼び、ボタン部に−印が付いたスイッチSW3を「ダウンスイッチSW3」と呼ぶ。
【0032】
押ボタンスイッチSW4は、計測モードと設定モードとを切り替えたり、設定モードのメインメニューの選択や決定に用いられる。以下では、このスイッチSW4を「モードスイッチSW4」と呼ぶ。
設定モードにおいて何らかの設定が行われると、設定された内容が確定する。モードスイッチSW4により計測モードに切り替えられると、設定された内容にて計測が開始される。
【0033】
押ボタンスイッチSW5は、センサ1の出力形式を切り替えるためのものである。具体的には、受光量がしきい値以上となったときに出力をオン状態にする「ライトオンモード」か、受光量がしきい値以下となったときに出力をオン状態とする「ダークオンモード」が選択される。
【0034】
表示灯111は、検出処理において、センサ1からの検出信号がオン状態になったときに点灯する。表示灯112はライトオンモードが選択されているときに点灯し、表示灯113はダークオンモードが選択されているときに点灯する。
表示灯114は、表示上の受光量を自動的に調整する処理が有効に設定されている場合に点灯する。表示灯115は、チューニング処理が行われている間とチューニング終了後とに点灯する。
【0035】
図4は、上記光電センサ1の電気的構成を示す。
このセンサ1では、制御部となるCPU105に、投光部103や受光部104のほか、プログラムが格納されたメモリ106、表示部100、操作部110、外部機器用インタフェース107、出力部108、電源部109などが接続される。
【0036】
表示部100には、前述した表示器101,102や表示灯111〜115が含まれ、操作部110には、各押ボタンスイッチSW1〜SW5が含まれる。投光部103には、LED131とLED駆動回路132とが含まれ、受光部104には、フォトダイオード(PD)141のほか、増幅回路142やA/D変換回路143が含まれる。投光部103では、LED駆動回路132からLED131に駆動用の電流が流れて、投光処理が行われる。受光部104では、フォトダイオード141からの出力が増幅回路142およびA/D変換回路143により処理されることにより、受光量を表すディジタルデータ(以下、「受光量データ」という。)が生成される。
【0037】
CPU105は、メモリ106に格納されたプログラムに従って、投光部103および受光部104の動作を制御しながら、受光部104から受光量データを入力して検出処理を実行する。検出結果は、出力部108や外部機器用インタフェース107を介して出力される。
【0038】
計測モードにおいてチューニングスイッチSW1が操作されると、「チューニング」と呼ばれる設定処理が実施される。チューニングは、検出処理に不可欠な設定であるしきい値の設定処理と感度調整処理とを一括で行うものである。簡単に説明すると、移動するワークを検出対象とする場合には、検出時と同じ条件でワークを移動させながらチューニングスイッチSW1を所定時間以上押し続け、その間に得られる受光量の中の最大値と最小値とを特定する。そして、最大値があらかじめ定めた目標値になるように感度を調整すると共に、この調整に合わせて最小値を補正し、最大値と最小値との間の中間値をしきい値に設定する。なお、感度の調整は、投光部103に流す駆動電流や受光部104の増幅回路142の倍率の調整により行われる。
【0039】
また、比較的短い間隔をおいてチューニングスイッチSW1を2回押下する操作に伴ってチューニング処理が行われる場合もある。この場合には、一方の操作は、ワークが検出エリアに置かれた状態で実施され、他方の操作はワークが検出エリアにない状態下で行われる。そして、各操作に応じて取り込まれた受光量のうちの高い方の値が目標値になるように感度を調整し、この調整に合わせて他方の受光量を補正し、各受光量の間の中間値をしきい値に設定する。
【0040】
モードスイッチSW4により設定モードが選択されると、表示部100の各表示器101,102に、設定用のメニューが表示される。ユーザは、アップスイッチSW2やダウンスイッチSW3によってメニュー表示を切り替えながら、所望の設定を実行する。
【0041】
上記の設定モードには、センサの受光状態を確認し、チューニング処理により設定されたしきい値を必要に応じて手操作で変更する処理が含まれている。図5は、この受光量の確認作業およびしきい値の変更作業のために表示部100に展開される表示例を示す。
【0042】
まず、ユーザは、メインメニューやサブメニューの選択により、図5の(a)に示すように、表示器101に「disp」という文字列(「display」の略である。)が表示され、表示器102に「P−b」という文字列が表示された状態にする。この表示状態下でユーザがモードスイッチSW4を操作すると、図5(b)に示すように、表示器101は「PEAK」という文字列を表示する状態になり、表示器102は「botn(nはバー付)」という文字列(「BOTTOM」を意味する。)を表示する状態になる。
【0043】
さらに所定時間が経過すると、表示器101,102には、図5(c)に示すような数値が表示される。この実施例では、しきい値以上の受光量を得た状態を入光状態とし、しきい値より小さい受光量を得た状態を非入光状態としており、表示器101に表示される数値(3185)は、入光状態が続く期間(入光期間)における代表受光量であり、表示部102に表示される数値(1467)は、非入光状態が続く期間(非入光期間)における代表受光量である。
【0044】
図5(c)の表示と図5(b)の表示とは、所定の時間をおいて交互に切り替えられる。これにより、表示器101に表示される代表受光量は受光量のピーク値として、表示器102に表示される代表受光量は受光量のボトム値として、それぞれユーザに提示される。
【0045】
この実情に合わせて、以下の説明でも、表示器101に表示される代表受光量をピーク値と呼び、表示器102に表示される代表受光量をボトム値と呼ぶ。ただし、以下に詳細に述べるように、各代表受光量は、受光量の最大値や最小値ではない。
【0046】
ピーク値およびボトム値の表示に対し、所定の時点でユーザがアップスイッチSW2またはダウンスイッチSW3を操作すると、当該表示が終了し、図5(d)に示すように、表示器102に「th」という文字列(threshold(しきい値)の略。)が表示され、表示器101に、現在のしきい値を示す数値が表示される。
【0047】
上記の表示状態において、ユーザは、アップスイッチSW2やダウンスイッチSW3を操作することにより、図5(e)に示すように、表示器101の数値を自由に変更することができる。この変更後にモードスイッチSW4が操作されると、計測モードに戻り、変更された数値をしきい値とした検出処理が開始される。
【0048】
なお、ピーク値およびボトム値の表示やしきい値の表示の形態は、図5の例に限らず、たとえば、3種類の値を、それぞれの値の意味を示す文字列と共に、1つずつ切り替えて表示してもよい。または、表示部100を液晶パネルなどにより構成して、3種類の値を並列表示してもよい。この場合には、各数値を、バーグラフなどの視覚的に大きさを表現する形態にして表示してもよい。
【0049】
つぎに、この実施例の検出処理では、制御用のクロックパルスに従って受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量をしきい値と比較することにより入光状態および非入光状態のいずれであるかを判別しながら、出力を制御する。ただし、判別の結果が切り替わっても、出力を直ちに切り替えるのではなく、切り替え後と同じ結果を一定数P回続けて得たことを確認してから、出力を切り替える。
【0050】
具体的には、非入光を示す受光量(しきい値より小)を得ている状態から入光を示す受光量(しきい値以上)を得ている状態に変わると、CPU105は、その受光を1回目として、入光がP回続くことを確認してから、非入光を示す出力から入光を示す出力に切り替える。入光を示す受光量を得ている状態から非入光を示す受光量を得ている状態に変わった場合も同様に、その受光を1回目として、非入光がP回続くことを確認してから、入光を示す出力から非入光を示す出力に切り替える。したがって、受光状態が変化した時点を1回目とすると、P+1回目の受光のタイミングに合わせて、出力が切り替えられることになる。
【0051】
上記の方法による検出処理を、以下、「パルスカウント方式の検出処理」という。
パルスカウント方式の検出処理では、Pの値を変更することにより、検出の精度や速度を変更することができる。この実施例では、図6に示すような4種類の検出モードを用意して、これらの中のいずれか1つを設定モードにおいて選択できるようにしている。
【0052】
図7は、パルスカウント方式の検出処理の具体例を、その問題点と共に示す。
この例では、出力形式がライトオンモードに設定され、検出モードとして最速モード(P=2)が選択されているものとする。また、図7では、受光量の変化曲線を示すと共に。この曲線上にCPU105によるサンプリング点をドットにより示し、さらに各サンプリング点とセンサからの出力の変化とを対応づけて示す。
【0053】
入光期間中の受光量曲線は受光量の山に相当し、非入光期間中の受光量曲線は受光量の谷に相当すると考えると、P=2としてパルスカウント方式の検出処理を誤りなく行うには、全ての山および全ての谷に、それぞれ2点以上のサンプリング点が含まれる必要がある。
【0054】
図7の例の受光量の変化曲線は、2つのワークが検出エリアを通過する間に生じたもので、ワーク毎に山および谷が1つずつ生じているが、ワーク間での反射状態の違いが大きいために、山や谷の振幅にかなり大きなばらつきが生じている。また、設定されるしきい値によっても、山や谷の振幅や幅が変動する。
このように受光量のばらつきが大きい場合でも、図7(1)に示すように、各山および各谷にそれぞれ2点以上のサンプリング点が含まれる状態でしきい値が設定されると、ワーク毎に出力のオン/オフを切り替えることができる。一方、図7(2)の例のように、しきい値が図7(1)より低い値に設定され、谷となる箇所に対するサンプリング点が1点のみとなると、この谷に対して出力を切り替えることができなくなる。この結果、図7(2)の例では、2つのワークが1つのワークとして誤検出されている。
【0055】
しきい値が高すぎて、山となる箇所で2点以上のサンプリング点を確保できなくなった場合も、同様に、ワーク毎に出力を切り替えることができなくなって、誤検出が生じる。
【0056】
前述したチューニング処理では、ワークが検出エリアにある状態での受光量とワークが検出エリアにない状態での受光量とを取得して、各受光量に基づきしきい値を自動設定するが、受光量のばらつきが大きく、振幅が大きな山や谷の受光量に基づいてしきい値が設定されると、振幅が小さな山や谷に対しては、いずれか一方にしきい値が偏った状態になる。この結果、図7(2)に示すような誤検出が生じるおそれがある。
【0057】
上記の問題点に着目して、この実施例では、入光期間および非入光期間からそれぞれ代表受光量を1つ抽出し、各入光期間の代表受光量の中の最小値(以下、MTminとする。)をピーク値とし、非入光期間の代表受光量の中の最大値(以下、VYmaxとする。)をボトム値とする。図5(c)に示した表示例は、この方法により特定されたMTminとVYmaxとを表示したものである。
【0058】
代表受光量は、検出処理に設定されているパルスカウント数Pに基づいて抽出される。具体的には、入光期間については、期間中の受光量を最大値から降順に並べた場合にP番目に位置する受光量が、代表受光量として抽出され、非入光期間については、期間中の受光量を最小値から昇順に並べた場合にP番目に位置する受光量が、代表受光量として抽出される。
【0059】
図8は、表示器101,102により図5(c)に示した表示を行うための処理の手順を示す。また、図9(A)は図8中の入光時処理(ステップS111)の詳細な手順を示し、図9(B)は図8中の非入光時処理(ステップS121)の詳細な手順を示す。また、図10は、入光期間中の代表受光量の特定に関わる受光量を格納するバッファの値が変化する例を示す。
【0060】
以下、これらの図を参照して、各代表受光量の表示処理について詳細に説明する。なお、この実施例では、あらかじめ定められた処理時間をT秒とし、制御部105内のタイマにより時間の経過をチェックする。
【0061】
図8において、最初のステップS101では、初期化処理を実施する。この初期化処理には、表示器101に表示されるピーク値MTmin、表示器102に表示されるボトム値VYmax、および2種類のバッファmt(i),vy(j)に初期値を設定する処理が含まれる。
【0062】
MTminには、表示器101に表示可能な最大の値9999が初期値として格納され、VYmaxには表示器102に表示される最小の値0が初期値として格納される。
バッファmt(i)(i=1〜P)は、入光期間中の受光量を、最大値から降順にP番目まで格納するためのもので、初期値として0が格納される。vy(j)(j=1〜P)は、非入光期間中の受光量を、最小値から昇順にP番目まで格納するためのもので、初期値として9999が格納される。
【0063】
初期化処理の後はタイマをリセットする(ステップS102)。その後は、クロックパルスに応じたタイミングで受光量Dを取得し(ステップS103)、取得した受光量Dをしきい値と比較して、入光か非入光かを判定する(ステップS104)。
図8では詳細を省略しているが、ステップS104では、検出処理時と同様のパルスカウント方式に従って、入光、非入光の切り替えを判別する。すなわち、ステップS103で取得した受光量Dがしきい値以上であれば、さらにしきい値以上となる受光量をP−1回続けて受光したことを確認して入光状態であると判定する。ステップS103で取得した受光量Dがしきい値より小さい場合も同様に、しきい値より小さい受光量をP−1回続けて受光したことを確認して非入光状態であると判定する。
【0064】
なお、入光、非入光ともに、同じ状態がP回続くことなく別の状態に変動した場合(受光量Dがしきい値以上となる入光状態からしきい値より小さい非入光状態への変動、または非入光状態から入光状態への変動をいう。)には、さらに変動後の状態がP回続くか否かによって判定を行う。また、判定に用いられたP個の受光量は、作業用のバッファに一時保存される。
【0065】
ステップS104において入光状態であると判定された場合には、ステップS111の入光時処理に移行し、非入光状態であると判定された場合には、ステップS121の非入光時処理に移行する。
【0066】
ここで、処理開始後の最初のステップS104で入光状態と判定されたものと仮定して、図9(A)および図10を参照して、入光時処理の詳細を説明する。
この処理は、直前に取得した受光量Dを、バッファmt(i)に格納されている値と比較し、バッファmt(i)よりDの方が大きい場合に、バッファmt(i)の書き換えを行うものである。
【0067】
まず、ステップS11でi=Pとし、ステップS12で、直前の取得受光量Dをmt(i)と比較する。
i=PのときにD>mt(i)となると、ステップS12が「YES」、ステップS13が「NO」となり、ステップS15に進む。ステップS15では、mt(i)の現在値を破棄して、受光量Dをmt(i)に格納する。
【0068】
この後は、ステップS16からステップS17に進んで、iをディクリメントし(i=P−1)、ステップS12で、更新後のiにより特定されるバッファmt(i)に格納されている値と取得受光量Dとを比較する。この段階でもD>mt(i)となると、ステップS12およびこれに続くステップS13が共に「YES」となり、ステップS14に進む。
【0069】
ステップS14では、バッファmt(i+1)の現在値を破棄して、このバッファmt(i+1)にmt(i)の値を格納する。さらにステップS15に進み、受光量Dをmt(i)に格納する。
【0070】
以下、iが1になるまで(ステップS16が「YES」)、上記と同様の処理を繰り返し実行するが、途中で受光量Dがmt(i)以下になった場合(ステップS12が「NO」)には、処理を終了する。
【0071】
図10は、P=3として、3回の受光に対してそれぞれ入光時処理が行われた場合のバッファmt(1),mt(2),mt(3)に生じる値の変化を示す。
バッファmt(1),mt(2),mt(3)には、それぞれ初期値として0がセットされている。初期化後の最初の受光量Dが100であるとすると、mt(1),mt(2),mt(3)はいずれもDより小さくなるので、ステップS12〜S17のループが3回繰り返される。
【0072】
最初のループでは、ステップS15によってmt(3)に100が格納される。2回目のループでは、ステップS14によってmt(2)の0がmt(3)に移動し、ステップS15によって、mt(2)に100が格納される。さらに、3回目のループでは、ステップS14によってmt(1)の0がmt(2)に移動し、ステップS15によってmt(1)に100が格納される。
【0073】
2回目の受光量Dが150であるとすると、上記と同様に、ステップS12〜S17のループが3回繰り返され、最初のループで、mt(3)に150が格納される。2回目のループでは、mt(2)の0がmt(3)に移動して、mt(2)に150が格納される。さらに3回目のループで、mt(1)の100がmt(2)に移動し、mt(1)に150が格納される。
【0074】
3回目の受光量Dが80であるとすると、1回目のループで着目されるmt(3)にはDより小さい値0が格納されているので、ステップS15によりmt(3)に80が格納される。しかし、2回目のループでは、着目されるmt(2)にDより大きい値(100)が格納されているので、ステップS12の判定が「NO」となって処理が終了する。これにより、mt(2)やmt(1)の値は維持される。
【0075】
上記のとおり、入光期間中の各受光量に対して入光時処理を行うことにより、受光量の中の最大値がバッファmt(1)に格納され、以下、2番目に高い受光量からP番目に高い受光量までの各受光量が、mt(2)・・・mt(P)に順に格納される。
【0076】
図9(B)に示す非入光時処理も、図9(A)の入光時処理と同様の流れで進行する。
簡単に説明すると、j=Pとして処理を開始し(ステップS21)、バッファvy(j)の値を取得受光量Dと比較して(ステップS22)、バッファvy(j)が取得受光量より小さい場合(ステップS22が「YES」)にはバッファvy(j)を取得受光量Dに書き換える(ステップS25)。またjがPより小さい場合には、ステップS25を実行する前にバッファvy(j)の値をvy(j+1)に移動させる(ステップS23,24)。
上記の処理を、jの値をディクリメントして続け(ステップS27)、jが1となった場合(ステップS26が「YES」)か、vy(j)が取得受光量D以下となった場合(ステップS22が「NO」)に、処理を終了する。
【0077】
上記のとおり、非入光期間中の各受光量に対して非入光時処理を行うことにより、受光量の中の最小値がバッファvy(1)に格納され、以下、2番目に低い受光量からP番目に低い受光量までの各受光量が、バッファvy(2)・・・vy(P)に順に格納される。
【0078】
図8に参照を戻す。
ステップS104での入光判定に応じた入光時処理(ステップS111)では、上記の判定に使用されたP個の受光量を順にDにセットして、図9(A)の処理を実行する。その後は、T秒が経過していないことを条件に(ステップS112が「NO」)、再び受光量を取得し(ステップS113)、その受光量Dにより非入光状態に切り替わったか否かを判定する。
【0079】
この判定でも、しきい値より小さい受光量がP回得られたことをもって、非入光状態に変化したと判定し、非入光状態になったと判定されるまではステップS111〜S114のループを繰り返す。これにより、入光期間中の各受光量に対して図9(A)に示した処理が実行され、受光量の山の頂点の受光量(最大受光量)から降順に数えてP番目に相当する受光量がバッファmt(P)に格納される。
【0080】
入光状態から非入光状態に切り替わると、ステップS111〜S114のループを終了してステップS115に進み、バッファmt(P)の値をMTminと比較する。ここでmt(P)<MTminであれば(ステップS115が「YES」)、mt(P)をMTminとする(ステップS116)。mt(P)がMTmin以上になる場合(ステップS115が「NO」)には、ステップS116はスキップされ、MTminの現在値が維持される。
この後は、バッファmt(i)(i=1〜P)を初期値の0に戻し(ステップS117)、ステップS121の非入光時処理に移行する。
【0081】
ステップS121の非入光時処理でも、ステップS104またはステップS114の判定に用いられたP個の受光量を順にDにセットして、図9(B)の処理を実行する。その後は、T秒が経過しないことを条件に(ステップS122が「NO」)、再び受光量を取得し(ステップS123)、取得した受光量Dにより入光状態に切り替わったか否かを判定する(ステップS124)。
【0082】
このステップS124でも、しきい値D以上の受光量をP回連続して受光するまでは、判定は「NO」となる。入光状態になったと判定されるまでステップS121〜S124のループを繰り返すことにより、非入光期間中の各受光量に対して図9(B)に示した処理が実行される。これにより、受光量の谷底(最小受光量)から昇順に数えてP番目に相当する受光量がバッファvy(P)に格納される。
【0083】
非入光状態から入光状態に切り替わると(ステップS124が「YES」)、ステップS125において、vy(P)をVYmaxと比較する。ここでvy(P)>VYmaxであれば(ステップS125が「YES」)、vy(P)をVYmaxとする(ステップS126)。一方、vy(P)がVYmax以下の場合(ステップS125が「NO」)には、ステップS126はスキップされる。
この後はバッファvy(j)(j=1〜P)を初期値の9999に戻し、ステップS111の入光時処理に移行する。なお、ステップS111でも、その移行のための判定に用いられたP個の受光量を順に対象として、図9(A)に示した処理を実行する。
【0084】
このように、毎回の受光量により入光状態と非入光状態との切り替わり時期を判別しながら、入光時処理を含むループ(S101〜104)と非入光時処理を含むループ(S111〜114)とを繰り返し実行する。これにより入光期間中の受光量群(受光量の山)毎に最大値から数えてP番目に高い受光量が代表受光量として抽出され、それらの代表受光量の中の最小値がMTminに格納される。また非入光期間中の受光量群(受光量の谷)毎に最小値から数えてP番目に低い受光量が代表受光量として抽出され、それらの代表受光量の中の最大値がVYmaxに格納される。
【0085】
最終的に、タイマの計時時刻がT秒に達すると、ステップS112またはステップS122が「YES」となってステップS105に進み、その時点でのMTminをピーク値として表示器101に表示し、VYmaxをボトム値として表示器102に表示する。
【0086】
図8では、上記の表示をもって処理終了となるが、以後は、適宜、MTmin,VYmaxを表示する状態と図5(b)に示した表示とを切り換えながら、ユーザの操作に待機する。ユーザにより、アップスイッチSW2またはダウンスイッチSW3が操作されると、処理を終了し、しきい値を表示する状態(図5の(d))に移行する。
【0087】
なお、上記の処理では、ピーク値MTminやボトム値VYmaxの表示に合わせて、これらの値を外部機器に出力することもできる。またセンサの本体部に表示部がない場合でも、特定されたMTmin,VYmaxを外部機器に出力し、外部のモニタで各値を表示することが可能である。
【0088】
図8の例では、ピーク値MTminおよびボトム値VYmaxを特定する処理を1回としたが、これに限らず、しきい値を設定するための操作が行われるまで図8に示した処理を繰り返すことにより、ピーク値およびボトム値の値の表示が周期的に更新されるようにしてもよい。また、この処理の周期の長さ(T秒間のT)を、ユーザの設定操作に応じて変更できるようにしてもよい。さらに、表示の更新に合わせて、各値を外部に出力したり、メモリ106に保存してもよい。
このようにすれば、ワークが高速で移動するためにその移動に伴う受光量の変化を直接認識するのが困難な場合でも、表示されるピーク値およびボトム値のばらつきの度合いに基づき、ワークの移動に伴い生じる受光量のおよその変化を知ることができる。
【0089】
上記図8および図9に示した処理によれば、T秒間に生じた受光量の山や谷の中で、現在のしきい値に対する余裕度が最も小さい山および谷から抽出された代表受光量が、ピーク値およびボトム値として表示される。また、サンプリングされた各受光量により実際に検出を行うとした場合に、入光状態と非入光状態との切り替わりの判定に必要となる受光量データの中で最もしきい値に近い値が、ピーク値およびボトム値として特定される。
【0090】
よって、ユーザは、表示されたピーク値およびボトム値の双方に対して余裕度のある値(たとえばピーク値とボトム値との中間値)を、しきい値の適正値であると判定し、切替操作に応じて表示されたしきい値(図5(d)参照)が適正値に近い値であれば、検出処理を安定して実行することが可能であると解釈する。一方、しきい値の適正値と表示されたしきい値との間に大きな差がある場合には、しきい値が偏った設定になっており、しきい値を変更する必要があることがわかる。
【0091】
なお、図8および図9に示した処理によれば、しきい値が高すぎたために、しきい値以上の受光量をP回続けて受光することができなかった場合には、入光時処理が一度も行われず、その結果、MTminが0となる。また、しきい値が低すぎて、しきい値より小さい受光量をP回続けて受光することができなかった場合には、非入光時処理が一度も行われず、その結果、VYmaxが9999となる。このような結果になった場合のステップS94では、MTmin,VYmaxの表示後、またはこの表示と交互に、エラー表示を行って、しきい値の変更を促すのが望ましい。
【0092】
一方で、パルスカウント数Pの値が比較的小さい(たとえば、図6の最速モードの場合のP=2)場合や、パルスカウント方式の検出処理を実施しない場合には、各入光期間の最大受光量の中の最も小さい値をピーク値とし、各非入光期間の最小受光量の中の最も大きい値をボトム値として、それぞれ表示してもよい。
【0093】
また、上記実施例では、各入光期間および各非入光期間の代表受光量を期間の種類毎に比較し、入光期間の代表受光量の中の最小値をピークとし、非入光期間の代表受光量の中の最大値とボトム値としたが、ピーク値およびボトム値を特定するための方法は、これに限定されるものではない。たとえば、入光期間について、最大受光量からP番目に高い受光量までの各受光量の平均値を算出し、この平均値が最小となる入光期間の代表受光量をピーク値として特定してもよい。非入光期間についても、最小受光量からP番目に低い受光量までの各受光量の平均値を算出し、この平均値が最大となる非入光期間の代表受光量をボトム値として特定してもよい。
【0094】
また、上記の実施例では、あらかじめ定めたT秒間の受光量の中から、表示対象のピーク値およびボトム値を特定したが、処理の期間を定めることなく、処理開始後にMTminおよびVYmaxの値が初めて特定されたことに応じてこれらを表示し、以後、MTminまたはVYmaxの値が更新される都度、それに応じて表示を更新してもよい。
この場合には、ユーザは、ピーク値およびボトム値の表示が安定したことをもって、それらに基づき、しきい値の適正値を判別することができる。
【0095】
またパルスカウント方式の検出処理の精度を重視するために、受光量のばらつきを把握したい場合には、図11に示すような処理により、入光期間と非入光期間とが切り替わる都度、その切り替えの直前の期間の代表受光量により表示を更新してもよい。
【0096】
図11の処理について説明する。なお、この実施例では、ピーク値をMT、ボトム値をVYとする。
最初のステップS201の初期化処理では、入光期間中の受光量を格納するためのバッファmt(i)(i=1〜P)に0を格納し、非入光期間中の受光量を格納するためのバッファvy(j)(j=1〜P)に9999を格納する。
【0097】
つぎに受光量Dを取得し(ステップS202)、入光、非入光のいずれになるかを判定する。この実施例でも、同じ受光状態がP回続いたことをもって、判定を確定するようにしており、入光と判定された場合には、その判定に用いられたP個の受光量を順に対象にして、ステップS211の入光時処理を実行する。非入光と判定された場合にも同様に、その判定に用いられたP個の受光量を順に対象にして、ステップS221の非入光時処理を実行する。なお、ステップS211の具体的手順は図9(A)に示したものと同様であり、ステップS221の具体的手順は図9(B)に示したものと同様である。
【0098】
入光時処理(ステップS211)の後は、再び受光量Dを取得し(ステップS212)、その受光量Dにより入光状態が続いていると判定した場合(ステップS213が「NO」)には、新たに取得した受光量Dを対象として、再び入光時処理(ステップS211)を実行する。以下、同様に、非入光状態に切り替わったと判定されるまで(ステップS213が「YES」)、受光量Dの取得と入光時処理とが繰り返される。
【0099】
上記一連の処理により、入光状態から非入光状態に切り替わったとき(ステップS213が「YES」)のバッファmt(P)には、入光期間中で最大受光量から数えてP番目に高い受光量が格納される。ステップS214では、このmt(P)の値をMTとし、ステップS215ではバッファmt(i)を初期値のゼロに戻す。さらにステップS216では、MTをピーク値として表示器101に表示する。
【0100】
ステップS203で非入光と判定されて非入光時処理(ステップS221)が行われた場合も、同様に、入光状態に切り替わったと判定されるまで、受光量Dを取得する処理(ステップS222)と非入光時処理(ステップS221)とを繰り返す。この一連の処理により、非入光状態から入光状態に切り替わったと判定されたとき(ステップS223が「YES」)に、非入光期間の受光量の中で最大値から数えてP番目に低い受光量がバッファvy(P)に格納される。ステップS224では、このvy(P)の値をVYとし、ステップS225では、バッファVY(i)を初期値の9999に戻す。さらにステップS226では、VYをボトム値として表示器102に表示する。
【0101】
以下、同様に、表示部100の表示を切り替える操作が行われるまで(ステップS217が「YES」)、入光と非入光との切り替わりを判別しながら、ステップS211〜216またはステップS221〜S226を実行する。所定のタイミングでユーザによる切り替え操作が行われると、ステップS217が「YES」となり、処理を終了する。
なお、ステップS211,S223でも、それぞれ非入光状態、入光状態がP回続いたことをもって、「YES」判定となり、それぞれの判定を受けたステップS211,S221では、判定に用いられたP個の受光量を順に処理対象とする。
【0102】
図11に示した処理によれば、受光量の山毎に、その山を検出するために最低限確保すべき受光量の中で現在のしきい値に最も近い値(P番目に高い受光量)が抽出され、ピーク値として表示される。また、受光量の谷毎に、その谷を検出するために最低限確保すべき受光量の中で現在のしきい値に最も近い値(P番目に低い受光量)が抽出され、ボトム値として表示される。したがって、ユーザは、毎回の表示により受光量の山と谷とのばらつきを把握すると共に、各値のしきい値に対する余裕度に基づき、現在のしきい値の適否を判別することができる。
【0103】
なお、図11に示した方法でピーク値MTおよびボトム値VYを特定する場合には、これらを表示する処理に代えて、または表示と共に、毎回のMT,VYの値をメモリ106に蓄積し、蓄積された各値を所定のタイミングで外部機器に出力してもよい。または、新たなピーク値MTや新たなボトム値VYを得る都度、その値を直ちに外部機器に出力してもよい。このようにすれば、毎回のピーク値MTやボトム値VYを時系列に並べて表示するなど、各値のばらつき度合いやしきい値との関係の詳細な分析に適した処理を行うことが可能になる。
【0104】
また、図8や図11の処理に先立ち設定されるしきい値は、チューニング処理により設定されるものに限らず、メモリ106にデフォルトで登録されているしきい値を用いてもよい。
【0105】
つぎに、これまでに示した実施例では、あらかじめしきい値が設定されていることを前提にして、そのしきい値に基づき入光期間と非入光期間との切り替わりを判別しながら、ピーク値およびボトム値を特定したが、事前にしきい値を設定することなく、一定の時間内に得られた受光量の中から、ピーク値およびボトム値となる代表受光量を抽出することも可能である。その場合の処理を、図12を参照して説明する。
【0106】
この処理でも、2種類のバッファmt(i),vy(j)によりそれぞれP個の受光量を保存するようにしている。ステップS301の初期化処理では、先の各例と同様に、バッファmt(i)に0を格納し、バッファvy(j)に9999を格納する。
【0107】
つぎに、内部のタイマをリセットし(ステップS302)、クロックパルスに応じて受光量を取得し(ステップS303)、この受光量に対し、入光時処理(ステップS304)と非入光時処理(ステップS305)とを順に実行する。各処理の詳細手順は、それぞれ図9(A),図9(B)に示したものと同様である。
【0108】
この後も、あらかじめ定めたT1秒が経過していないことを条件に(ステップS306が「NO」)、新たな受光量を取得し(ステップS303)、この受光量を対象にして、入光時処理(ステップS304)と非入光時処理(ステップS305)とを実行する。これにより、バッファmt(i)においては、P個の受光量が最大値を先頭に降順に整列し、バッファmt(j)においては、P個の受光量が最小値を先頭に昇順に整列する。
【0109】
T1秒が経過すると(ステップS306が「YES」)、ステップS307に進み、バッファmt(P)の値をピーク値として表示器101に表示し、バッファvy(P)の値をボトム値として表示器102に表示する。
【0110】
図8の実施例によれば、1つのワークの通過にかかる時間に応じてT1の値を決めることにより、受光量の山と谷とを1つずつ発生させて、山の中で最大値から数えてP番目に高い受光量をピーク値とし、谷の中で最小値から数えてP番目に低い受光量をボトム値として、それぞれ表示することができる。よって、これらの値の関係に基づき、しきい値として適切な値を設定することができる。
【0111】
図8の実施例でも、ピーク値およびボトム値の表示を1回にとどめずに、ワークの通過に応じてステップS301〜S307の手順を繰り返すようにすれば、図7の例と同様に、ワーク毎のピーク値とボトム値とのばらつきを確認することができる。また、この実施例でも、毎回のピーク値およびボトム値をメモリ106に蓄積したり、外部機器に出力することが可能である。また、検出処理のために設定されているしきい値を変更することを検討する場合にも、変更後の値として仮設定されたしきい値により入光状態と非入光状態との切り替わりを判別しながら、ピーク値およびボトム値を求め、表示や出力を行うことができる。
【符号の説明】
【0112】
1 光電センサ
100 表示部
101,102 表示器
110 操作部
103 投光部
104 受光部
105 制御部(CPU)
106 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をしきい値と比較することにより入光状態および非入光状態のいずれであるかを判別して、その判別結果を出力する検出手段とを具備する光電センサにおいて、
現在設定されているしきい値により入光状態と判別される受光量が得られる入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も低くなった入光期間に得た受光量の中から入光状態を表す代表受光量を特定し、前記しきい値により非入光状態と判別される受光量が得られる非入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も高くなった非入光期間に得た受光量の中から非入光状態を表す代表受光量を特定する代表受光量特定手段と、
前記代表受光量特定手段により特定された2つの代表受光量を示す情報を、各代表受光量の表示のために出力する出力手段とを、
具備することを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記代表受光量特定手段は、あらかじめ定めた一定時間内に生じた複数の入光期間につき、それぞれその期間内に得た受光量を大きさの降順に並べた場合に第1の特定の順位に当たる受光量を抽出して、抽出された受光量の中の最小値を前記入光状態を表す代表受光量として特定し、前記一定時間内に生じた複数の非入光期間につき、それぞれその期間内に得た複数の受光量を大きさの昇順に並べた場合に第2の特定の順位に当たる受光量を抽出して、抽出された受光量の中の最大値を前記非入光状態を表す代表受光量として特定する、請求項1に記載された光電センサ。
【請求項3】
前記代表受光量特定手段は、受光処理により得られる受光量を前記しきい値と比較して入光期間と非入光期間との切り替わりを判別しつつ、入光期間については当該期間内に得た受光量を大きさの降順に並べた場合に第1の特定の順位に当たる受光量を抽出し、非入光期間については当該期間内に得た受光量を大きさの昇順に並べた場合に第2の特定の順位に当たる受光量を抽出し、入光期間から非入光期間への切り替わりを判別する都度、その直前の入光期間から遡る過去の複数の入光期間につき抽出した受光量の中の最小値を前記入光状態を表す代表受光量として特定し、非入光期間から入光期間への切り替わりを判別する都度、その直前の非入光期間から遡る過去の複数の非入光期間につき抽出した受光量の中の最大値を前記非入光状態を表す代表受光量として特定する、請求項1に記載された光電センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された光電センサにおいて、
前記検出手段は、受光部からの受光量データを一定の時間間隔で取得して前記しきい値と比較することにより、入光状態および非入光状態のいずれであるかを判別すると共に、この判別の結果が切り替わったとき、切り替え後と同じ判別結果を得る受光量データを一定回数P続けて取得したことを条件として、出力を反転させ、
前記代表受光量特定手段は、入光期間については当該期間で最大受光量から数えてP番目に高い受光量を、非入光期間については当該期間で最小受光量から数えてP番目に低い受光量を、それぞれその期間における代表受光量として抽出すると共に、各入光期間の代表受光量の中の最小値を前記入光状態を表す代表受光量として特定し、各非入光期間の代表受光量の中の最大値を前記非入光状態を表す代表受光量として特定する、光電センサ。
【請求項5】
前記出力手段は、前記代表受光量特定手段により特定された2つの代表受光量を表示するための表示部を含む、請求項1に記載された光電センサ。
【請求項6】
請求項1に記載された光電センサにおいて、
しきい値を変更する操作を行うための操作部と、
前記代表受光量特定手段により特定された2つの代表受光量の表示に連動させて前記検出手段の判別処理のために設定されているしきい値が表示されるように当該しきい値を出力し、この出力による表示が行われている状態下で操作部による操作に応じてしきい値を変更するしきい値変更手段とを、さらに具備する光電センサ。
【請求項7】
検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をしきい値と比較することにより入光状態および非入光状態のいずれであるかを判別して、その判別結果を出力する検出手段とを具備する光電センサを対象に、当該センサの受光状態を確認する作業を支援するための方法であって、
前記光電センサに現在設定されているしきい値により入光状態と判別される受光量が得られる入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も低くなった入光期間に得た受光量の中から入光状態を表す代表受光量を特定し、前記しきい値により非入光状態と判別される受光量が得られる非入光期間を複数対象として、相対的に受光量が最も高くなった非入光期間に得た受光量の中から非入光状態を表す代表受光量を特定し、特定された2つの代表受光量を表示することを特徴とする、光電センサの受光状態を確認する作業の支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113795(P2013−113795A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262536(P2011−262536)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【特許番号】特許第5152397号(P5152397)
【特許公報発行日】平成25年2月27日(2013.2.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】