説明

入力装置

【課題】ユーザの手の向きを特定する入力装置の提供。
【解決手段】入力装置1は、タッチパッド10と親指検出部21と人差し指検出部22と手方向特定部23と操作認識部24とを備える。タッチパッド10は、指の接触を検出する検出面を有する。親指検出部21は、タッチパッド10の検出面に1番目に接触した指の接触位置を親指の接触位置として検出する。人差し指検出部22は、タッチパッド10の検出面に2番目に接触した指の接触位置を人差し指の接触位置として検出する。手方向特定部23は、親指検出部21により検出された親指の位置と、人差し指検出部22により検出された人差し指の接触位置の軌跡に基づいて、タッチパッド10に対して入力を行う手の向きを特定する。操作認識部24は、手方向特定部23により特定された手の向きに基づいて、人差し指の接触位置の軌跡に対応した車載装置への入力操作を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置の入力操作に用いられる入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル上に描画された文字を認識する車載装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−178279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のタッチパッド(タッチパネルを含む)では、ユーザはタッチパッドの上下方向に従って入力操作を行う必要がある。しかし、シートベルトを締めたユーザ等が車載装置のタッチパッド(タッチパネルを含む)を操作するとき、ユーザが伸ばした手の方向とタッチパッドの上下方向とが大きく乖離することがある。このような状況において文字の描画などの複雑な入力操作を行う場合、ユーザは手首をねじるなど不自然な姿勢で操作を行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両に搭載される車載装置への入力操作に用いられる入力装置であって、指の接触を検出する検出面を有するタッチパッドと、検出面に1番目に接触した親指の接触位置を検出する親指検出手段と、検出面に2番目に接触した人差し指の接触位置を検出する人差し指検出手段と、親指検出手段により検出された親指の接触位置と、人差し指検出手段により検出された人差し指の接触位置とに基づいて、タッチパッドに対して入力を行う手の向きを特定する手方向特定手段と、手方向特定手段により特定された手の向きに基づいて、人差し指の接触位置の軌跡に対応した車載装置への入力操作を認識する操作認識手段と、を備えることを特徴とする入力装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タッチパッドに接触したユーザの手の向きを特定し、特定した手の向きに基づいて入力操作を認識するため、ユーザが不自然な姿勢で操作を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態による入力装置のブロック構成図である。
【図2】手方向特定手段が特定する手の方向について説明するための図である。
【図3】手方向特定手段に関するフローチャートの一例である。
【図4】親指の接触位置と人差し指の接触位置とに基づいてタッチパッドの検出面上に設定される第1検出領域と第2検出領域について説明するための図である。
【図5】入力装置1によるメニュー操作の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施の形態による入力装置のブロック構成図である。図1に例示される入力装置1は、ナビゲーション装置などの車載装置の入力装置であって、タッチパッド10と、入力制御部20とを備える。タッチパッド10は、ユーザの指の接触を検出する検出面を有し、指の接触位置に対応した信号を入力制御部20へ出力する。タッチパッド10は、マルチタッチ方式のタッチパッドであって、同時に複数の指が検出面に接触したとき、検出面に接触した複数の指を別々に検出することができる。
【0009】
入力制御部20は、親指検出部21と、人差し指検出部22と、手方向特定部23と、操作認識部24とを備える。入力制御部20は、タッチパッド10から入力される信号に基づいて、ユーザが行った入力操作を認識し、車載装置側に伝える。入力制御部20は、たとえば車載装置に備わるCPUなどによって構成される。
【0010】
親指検出部21は、タッチパッド10に接触したユーザの親指の接触位置を検出する。親指検出部21は、指がタッチパッド10の検出面に接触した順番に基づいて、ユーザが接触した指が親指であるか否かを判断する。たとえば、親指検出部21は、タッチパッド10の検出面に1番目に接触した指の接触位置を、親指の接触位置として検出する。
【0011】
人差し指検出部22は、タッチパッド10に接触したユーザの人差し指の接触位置を検出する。人差し指検出部22は、指がタッチパッド10の検出面に接触した順番に基づいて、ユーザが接触した指が人差し指であるか否かを判断する。たとえば、人差し指検出部22は、タッチパッド10の検出面に2番目に接触した指の接触位置を、人差し指の接触位置として検出する。
【0012】
手方向特定部23は、親指検出部21が検出した親指の接触位置と、人差し指検出部22が検出した人差し指の接触位置とに基づいて、タッチパッド10を操作する手の方向を特定する。手方向特定部23が特定する「手の方向」とは、タッチパッド10に指が接触している手の付け根から中指に向かう方向のことである。
【0013】
図2は、手方向特定部23が特定する手の方向について説明するための図である。図2(a)は、タッチパッド10が車両のセンターコンソール100に設置された状態を示す。図2(b)は、図2(a)に図示されている車両の運転席101に着座したユーザが、タッチパッド10に右手2を伸ばした状態を示している。図2(b)では、タッチパッド10の検出面に右手2の親指と人差し指とが接触している。矢印3は、タッチパッド10の上方向を示す。矢印4は、手方向特定部23が特定する「手の方向」の一例であって、タッチパッド10へ入力操作を行っている右手2の付け根2aから中指2bに向かう方向を示している。以降、矢印4のことを右手2の方向4と記載する。
【0014】
操作認識部24は、手方向特定部23により特定された手の方向と、人差し指検出部22が検出した人差し指の接触位置の軌跡とに基づいて、車載装置への入力操作を認識する。車載装置への入力操作とは、たとえば文字入力やメニュー操作などである。
【0015】
図2(b)の状況を用いて、操作認識部24が行う処理を説明する。図2(b)は、文字入力を受け付ける動作モードの車載装置へ、タッチパッド10を介して文字入力している状態を示している。図2(b)のタッチパッド10上には、右手2の人差し指により平仮名の「つ」が文字入力されている。操作認識部24は、車載装置の動作モードが文字入力を受け付けるモードであることを認識している。そして、操作認識部24は、手方向特定部23により特定された右手2の方向4を入力される文字の上方向として認識し、人差し指検出部22により検出された人差し指の接触位置の軌跡により描画される文字を解釈する。操作認識部24は、手方向特定部23により特定された右手2の方向4を入力される文字の上方向として認識するため、図2(b)に文字入力された文字を、「J」ではなく平仮名の「つ」と正しく解釈することができる。操作認識部24は、車載装置に対して「つ」が文字入力されたことを認識する。
【0016】
図3は、手方向特定部23の処理に関するフローチャートである。ステップS301では、手方向特定部23は、親指検出部21が検出した親指の接触位置に関する情報を取得する。ステップS302では、手方向特定部23は、人差し指検出部22が検出した人差し指の接触位置に関する情報を取得する。
【0017】
ステップS303では、手方向特定部23は、タッチパッド10の検出面上に左手に対応する第1検出領域と右手に対応する第2検出領域とを設定する。図4は、ステップS303で手方向特定部23が設定する第1検出領域および第2検出領域について説明する図である。
【0018】
手方向特定部23は、ステップS301において親指の接触位置41を取得し、ステップS302において人差し指の接触位置42を取得すると、まず親指の接触位置41と人差し指の接触位置42とに基づいて、左手44aおよび右手44bの大きさと、左手44aの方向に対応する第1方向46aと、右手44bの方向に対応する第2方向46bとを特定する。そして、左手44aおよび右手44bの大きさと、第1方向46aと、第2方向46bとに基づいて楕円弧43aおよび楕円弧43bをタッチパッド10の検出面上にそれぞれ設定する。楕円弧43aは、親指が接触位置41にあり、人差し指が接触位置42にある左手44aの各指の先端部を通るものとして設定される。楕円弧43bは、親指が接触位置41にあり、人差し指が接触位置42にある右手44bの各指の先端部を通るものとして設定される。なお、左手44aおよび右手44bは、人の標準的な手の形状等に基づいて、その指の開き具合や五指の長さ比などの形状が予め定められている。
【0019】
次に、手方向特定部23は、左手44aの付け根45aの中心を通り第1方向46aに向かって延在する直線47aと、楕円弧43aとによって形成される所定形状(楕円の1/4カット)の領域を第1検出領域48aに設定する。また、手方向特定部23は、右手44bの付け根45bの中心を通り第2方向46bに向かって延在する直線47bと、楕円弧43bとによって形成される所定形状(楕円の1/4カット)の領域を第2検出領域48bに設定する。図4に示すように第1検出領域48aと第2検出領域48bとは、親指の接触位置41と人差し指の接触位置42とを結ぶ線分49を対称軸とする線対称の関係にある。
【0020】
ステップS304では、手方向特定部23は、ユーザがタッチパッド10上で人差し指を動かすことにより人差し指検出部22が検出した人差し指の接触位置の軌跡がステップS303で設定した第1検出領域48aおよび第2検出領域48bのいずれを通過したかを判定する。手方向特定部23は、人差し指の接触位置の軌跡が第1検出領域48aを通過したときはステップS305に進み、人差し指の接触位置の軌跡が第2検出領域48bを通過したときはステップS306に進む。
【0021】
ステップS305では、手方向特定部23は、タッチパッド10に実際に接触している手の方向を、第1方向46aと特定する。ステップS306では、手方向特定部23は、タッチパッド10に実際に接触している手の方向を、第2方向46bと特定する。
【0022】
図5は、手方向特定部23により特定された手の方向と、人差し指検出部22が検出した人差し指の接触位置の軌跡とに基づいたメニュー操作の一例を説明するための図である。図5(a)および図5(b)では、タッチパッド10が表示モニタの上に重ねられ、タッチパネルの一部として用いられる。図5(a)に示されるように左手5の親指および人差し指がタッチパッド10の検出面に接触すると、手方向特定部23により左手5の方向が図5(b)の矢印6の方向であると特定される。このとき、タッチパッド10の下に存在する表示モニタに図5(b)のメニュー画面500が表示される。メニュー画面500は、左手5の親指の接触位置に対応して決定ボタン501が表示され、左手5の親指の接触位置から矢印6方向に所定距離(左手5の人差し指がスライドして届く範囲内の距離)離れた位置にメニューボタン502aが表示される。そして、メニューボタン502aの周辺(左手5の人差し指がスライドして届く範囲内の位置)にメニューボタン502bおよびメニューボタン502cが表示される。
【0023】
メニューボタン502a〜502cは、メニュー画面500で選択可能なメニュー項目に対応している。左手5の人差し指をメニューボタン502a〜502cのいずれかにスライドさせると、左手5の人差し指をスライドさせたメニューボタンがドラッグ可能となる。ドラッグ可能になったメニューボタンを決定ボタン501の上にドラッグすると、操作認識部24がそのメニューボタンに対応する項目が選択されたものとして認識する。
【0024】
以上で説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
本実施の形態による入力装置1は、車両に搭載される車載装置への入力操作に用いられ、タッチパッド10と、親指検出部21と、人差し指検出部22と、手方向特定部23と、操作認識部24とを備える。タッチパッド10は、指の接触を検出する検出面を有する。親指検出部21は、タッチパッド10の検出面に1番目に接触した指の接触位置を親指の接触位置として検出する。人差し指検出部22は、タッチパッド10の検出面に2番目に接触した指の接触位置を人差し指の接触位置として検出する。手方向特定部23は、親指検出部21により親指が検出されており、人差し指検出部22により検出された人差し指の接触位置の軌跡に基づいて、タッチパッド10に対して入力を行う手の向きを特定する(図3)。操作認識部24は、手方向特定部23により特定された手の向きに基づいて、人差し指の接触位置の軌跡に対応した車載装置への入力操作を認識する。本実施の形態による入力装置1は、車載装置へ入力操作を行うときに、入力装置1がユーザの手の向きを特定し、その特定した向きに対応する入力操作を正しく認識するため、ユーザが不自然な姿勢で操作を行う必要がない。
【0025】
以上で説明した実施の形態は、以下のように変形して実施できる。
(変形例1)タッチパッド10の設置位置は、図2(a)の位置だけに限定しない。たとえば、車両のアームレストや、車両の天井から吊り下げられる後部座席用表示装置の上などに重ねて設けられてもよい。
(変形例2)第1検出領域48aおよび第2検出領域48bの形状は、図4に図示した形状だけに限定しない。形状の外周が親指の接触位置41と人差し指の接触位置42とを少なくとも通過するものであれば、直角二等辺三角形や長方形などであってもよい。
(変形例3)タッチパッド10が車両の左右方向に対する略中心軸上の位置、たとえば図2(a)のようにセンターコンソール100に設けられたとき、入力制御部20は、手方向特定部23により特定された手の方向に基づいて、操作ユーザが着座する座席を特定することができる。すなわち、入力制御部20は、タッチパッド10に接触する手の方向が手方向特定部23により第1方向46aと特定された場合は左側座席として特定し、第2方向46bと特定された場合は右側座席として特定する。このような機能は、入力装置を介して入力操作される車載装置が運転者と助手席に座る乗員とで異なるメニューを開く場合に利用することができる。
【0026】
上記の実施の形態および変形例は、発明の特徴が損なわれない限り、組み合わせて実行してよい。また、上記の実施の形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【符号の説明】
【0027】
1 入力装置
10 タッチパッド
20 入力制御部
21 親指検出部
22 人差し指検出部
23 手方向特定部
24 操作認識部
100 センターコンソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置への入力操作に用いられる入力装置であって、
指の接触を検出する検出面を有するタッチパッドと、
前記検出面に1番目に接触した親指の接触位置を検出する親指検出手段と、
前記検出面に2番目に接触した人差し指の接触位置を検出する人差し指検出手段と、
前記親指検出手段により検出された前記親指の接触位置と、前記人差し指検出手段により検出された前記人差し指の接触位置とに基づいて、前記タッチパッドに対して入力を行う手の向きを特定する手方向特定手段と、
前記手方向特定手段により特定された手の向きに基づいて、前記人差し指の接触位置の軌跡に対応した前記車載装置への入力操作を認識する操作認識手段と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置において、
前記手方向特定手段は、
所定形状を有し前記親指の接触位置と前記人差し指の接触位置とをそれぞれ含む第1の検出領域および第2の検出領域を前記検出面上に設定して、
前記軌跡が前記第1の検出領域を通過したときは、前記親指の接触位置と前記人差し指の接触位置とに対応する左手の向きを、前記タッチパッドに対して入力を行う手の向きとして特定し、
前記軌跡が前記第2の検出領域を通過したときは、前記親指の接触位置と前記人差し指の接触位置とに対応する右手の向きを、前記タッチパッドに対して入力を行う手の向きとして特定することを特徴とする入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の入力装置において、
前記手方向特定手段は、前記第1の操作領域と前記第2の操作領域とを、前記親指の接触位置と前記人差し指の接触位置とを結ぶ線を対称軸として互いに線対称に設定することを特徴とする入力装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の入力装置において、
前記タッチパッドは、前記車両の左右方向に対する略中心軸上の位置に設けられ、
前記手方向特定手段が前記左手の向きを前記タッチパッドに対して入力を行う手の向きとして特定したとき、前記車両の右側座席に座ったユーザが前記入力装置を操作していると判断し、
前記手方向特定手段が前記右手の向きを前記タッチパッドに対して入力を行う手の向きとして特定したとき、前記車両の左側座席に座ったユーザが前記入力装置を操作していると判断することを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105425(P2013−105425A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250665(P2011−250665)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】