説明

入力装置

【課題】静電容量方式のタッチパネルにおいて、微弱な電流を生活環境下のノイズの中で早く正確に計測する方法を提供する。
【解決手段】sin信号と、90度位相の違うcos信号の2つを掛算回路で掛ける事により、真の電流値のAC信号だけがDC信号を含む2倍のAC周波数になりローパス・フィルタを通すことでDC信号になる。他の周波数成分である生活環境下のノイズは、sin信号の周波数より高い周波数のAC信号のままでローパス・フィルタを通すことで0になる。これにより人体に流れ込む微弱な電流を正確に測定できる。また、低いAC電圧と厚い絶縁層により人体が他の周辺導電体と接触してもAC電流が変化しにくいので、ノイズのある環境下でも正確に指の入力位置を決定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも、面抵抗体を使用した全面アナログ方式の二次元座標検出装置(位置検出装置)に関し、特に面抵抗体と人体または導電性スタイラスペンとの間に特に微小なAC電流を流して位置検出するいわゆる静電容量方式のタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、面抵抗体を使用した静電容量方式の入力裝置が知られており、指が面抵抗体に直接接触して電流を流す直接接触型や、二層の抵抗膜方式が知られている。これらは、オンセル型のタッチパネルと呼ばれている。この中で、静電容量方式のタッチパネルでは、ガラス等の表面に面抵抗体層を作り、さらにその表面に非常に薄い絶縁層(1μm前後)を作る。更に面抵抗体層の四角に設けた電極にAC電圧を印加することで、絶縁層に接触する指に数百μAから1mA前後のAC電流を流し、生活環境下のノイズの中で、1μA以上の精度で四隅の電流を測定することにより指の位置を検出することが知られている。
【0003】
ガラス等(主にアクリルなどのプラスチック類)の表面ではなく、裏面に面抵抗体層を作り、ガラス自体を絶縁層に使用することで、従来面抵抗体層の上に作っていた絶縁層をなくすことにより構造を簡単にでき、さらに絶縁層の強度を数mm厚のガラスに置換えることができる。しかし、絶縁層になるガラスが厚くては指に流れる電流が絶縁層の厚さの比で大幅(約1/1000)に減少し数μA前後になる。
【特許文献1】特開2001−99609号 寄生信号除去式タッチパネル装置 パネルからの電磁放射による寄生信号及び寄生容量による寄生信号に対しAC信号状態で、ベクトル的に、逆位相同振幅の除去信号を制御回路において強制印加するものである。
【特許文献2】特開2002−14771号 容量結合式タッチパネルにおける絶縁方法タッチパネルと電源との間に、アイソレータ、電源周波数において絶縁体のインピーダンスとなるコンデンサ、結合コイル(相互インダクタンス)、AC電源の絶縁トランスを排泄するものである。
【特許文献3】特開2000−315139号 低干渉式タッチパネル装置 絶対値検出型のAC信号のレベル復調手段とした。また、パネルの電圧振動の周波数誤差を1/(50T)[Hz]以内とするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラスの表面ではなく、ガラス裏面に面抵抗体を作り、ガラス自体を絶縁層に使用することで構造を簡単にでき、さらに絶縁層の強度を数mm厚のガラスに置換えることができる。しかし、この構造では印加するAC電圧を変えなければ指に流れる電流が絶縁層の厚さの比で大幅(約1/1000)に減少する。このため測定する電流がmAレベルから数μA前後になり、生活環境下のノイズの中で1nA以上の精度で四隅の電流を測定するのは、非常に困難である。
これを防ぐために流れる電流や電圧の過度現象を計測したり、離散的に計測したりしても、生活環境下のノイズの中で、面抵抗体の四隅の電流を測定するのは、困難である。また計測する電流を増やすために、面抵抗体に印加するAC電圧を高くすることは人体が十分に吸収できる以上の電流が流れるようになり、人体が他の周辺導電体と接触することによりAC電流に変化をおよぼし正確な指の位置座標を測定するのは、非常に困難である。上記2つのことが大きな課題となっていた。
本発明の目的は、上記2つの課題を解決し、微弱な電流を生活環境下のノイズの中で早く正確に計測する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ガラスと該ガラスの裏面に面抵抗体を形成したタッチパネルであり、人体が十分に吸収できる微弱な電流よりさらに少ない10μA以下の電流を計測するためにsin信号とcos信号の同期発信回路と、少なくとも4つの電流・電圧変換回路とそれを経由して面抵抗体層の少なくとも4箇所に接続される配線と、少なくとも4つの電流・電圧変換された信号とsin信号およびcos信号とを掛算する少なくとも8つの掛算回路と、その結果をDC信号とする少なくとも8つのローパス・フィルタ回路と、そのDC信号化された電圧を計測し演算処理する制御装置により、座標位置を特定する入力装置を提案するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、四隅から入力されたAC信号が指に流れ込む微弱な数μAの電流をnaの精度で計測するさいの生活環境下のノイズ問題を解決し、さらにac信号を小さいままにすることで過剰な電流が指に流れ込まないようにするために面抵抗体層に印加するAC電圧をピークtoピークで1から5ボルトと低くする。また絶縁層の厚さを1mm以上とすることで人体が十分に吸収できる以上の電流が流れないようにし、人体が他の周辺導電体と接触することによりAC電流に変化をおよぼさせないようにする。
【0007】
sin信号と90度位相の違うcos信号の2つを電流・電圧変換回路の出力に掛算回路で掛ける事により、真の電流値のAC信号だけがDC信号を含む2倍のAC周波数になりローパス・フィルタを通すことでDC信号になる。他の周波数成分である生活環境下のノイズは、全てsin信号の周波数より高い周波数のAC信号のままでローパス・フィルタを通すことで0になる。四隅から人体に流れ込む微弱な電流は生活環境下のノイズを0にすることで正確に比較できる。また、低いAC電圧と厚い絶縁層により人体が他の周辺導電体と接触してもAC電流が変化しにくいので、ノイズの大きい環境下でも正確に指の入力位置を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例の入力装置システム構成図。
【図2】本実施例の掛算回路波形図。
【図3】本実施例の入力信号レベルと位相差図。
【図4】本実施例の位置座標計算図
【図5】本実施例の断面構造比較図
【図6】sin信号掛算波形図
【発明を実施するための形態】
【0009】
ガラスの裏面に面抵抗体層を作り、ガラス自体を絶縁層に使用することで構造を簡単にし、さらに絶縁層の強度を数mm厚のガラスに置換えることができる。また面抵抗体層に印加するAC電圧を低くすることと、絶縁層が厚くなったことで人体が十分に吸収できる以上の電流が流れないようにし、人体が他の周辺導電体との接触によるAC電流の変化を防ぎ、正確な指の位置座標を測定する。
発振器からsin信号と90度位相の違うcos信号の2つを発信し、sin信号の一つは増幅回路経由で4つの電流・電圧変換回路の抵抗Rを通して面抵抗体の4箇所に接続される。sin信号の一つは4つの掛算回路に接続される。またcos信号は4つの掛算回路に接続される。4つの電流・電圧変換回路の出力はそれぞれ2箇所づつ8つの掛算回路に接続され、それぞれsin信号・cos信号と掛けられる。真の電流値のAC信号だけがDC信号を含む2倍のAC周波数になりローパス・フィルタを通すことでDC信号になる。他の周波数成分である生活環境下のノイズは、全てsin信号・cos信号との掛算によりsin信号・cos信号の周波数より高い周波数のAC信号になりsin信号・cos信号の周波数より十分低いローパス・フィルタを通すことで0にできる。間に絶縁層を挟んでいるのでsin信号との掛算による検出信号Xとcos信号との掛算による検出信号Yとから入力信号のベクトル値を以下から求められる、ルート(Xの二乗+Yの二乗)。また、位相差をアークタンジェント(X/Y)から求められる。
四隅から人体に流れ込む微弱な電流は生活環境下のノイズを上記方法で0にすることで正確に測定できる。最初に指等が触れていないときの電流を測定記憶し、指等が触れたときとの電流との差で実際に指に流れる電流を計算できる。4点で測定された電流からi1、i2、i3,i4が求められ、それは対角の面積比に対応した電流になることから、XY座標を計算できる。
【実施例】
【0010】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。図1〜6は、装置図面が煩雑にならないよう単純な構成を模式的に表現した物である。本発明は、以下の実施例に限定される物ではなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。
【0011】
図1に本発明の入力装置システム構成図を示す。制御装置内の発信器から出力される発振周波数に基づいてsin波形とcos波形が90度の位相差で出力される。sin波形は増幅回路によりac電圧をピークtoピークで1から5ボルトにされ4箇所の抵抗Rを通って面抵抗体に流される。この電流i1〜i4は抵抗Rを通過することで電圧E1〜E4に変換されハイパス・フィルタを通過することで発信周波数より高い周波数はカットされる。次の増幅回路で増幅されローパス・フィルタで発振周波数より低い周波数はカットされそれぞれ2つの掛算回路のY側に入力される。8つの掛算回路のX側4つにはsin波形、他のX側4つにはcos波形が入力される。掛算回路の結果は非常に低いローパス・フィルタでDC信号をとりだされ生活環境下のノイズ信号は消してしまう。DC信号は制御装置のA/D変換器で変換される。A/d変換されたデータは演算処理され、電流の実効値と位相差が求められ図3に示された方法で入力信号に変換され、図4に示された方法で座標に変換される。
四隅から入力されたAC信号が指に流れ込む微弱な数μAの電流をnaの精度で計測するさいの生活環境下のノイズ問題を解決し、さらにac信号を小さいままにし、絶縁層を厚くすることで過剰な電流が指に流れ込まないようにすることで、人体が十分に吸収できる以上の電流が流れないようにし、人体が他の周辺導電体との接触によりAC電流に変化を及ぼさせないようにすることとで正確な四隅の電流比を得ることができる。
【0012】
図2に、本発明の掛算回路波形図を示す。掛算回路のX入力にsin信号あるいはcos信号を入力する。抵抗Rに増幅回路を通過したsin信号を加え、Rの反対側は面抵抗体のAに接続されている。人間の指等がガラス面上に近づき接触すると電流i1が面抵抗体Aから指等に流れRの両端に電位差E1が発生し掛算回路のY入力に加えられる。XとYの入力信号は掛算され真の電流値のAC信号だけがDC信号を含む2倍のAC周波数になり次のローパス・フィルタを通すことでDC信号になる。他の周波数成分である生活環境下のノイズは、全てsin信号・cos信号との掛算によりsin信号・cos信号の周波数より高い周波数のAC信号になりsin信号・cos信号の周波数より十分低いローパス・フィルタを通すことで0にできる。
【0013】
図3に、本発明の入力信号レベルと位相差図を示す。図1の掛算回路でsin信号と掛算された入力信号はsinによる検出信号になり、cos信号と掛算された入力信号はcosによる検出信号になる。入力信号のベクトル値は以下から求められる、ルート(Xの二乗+Yの二乗)。また、位相差をアークタンジェント(X/Y)から求められる
図4に位置座標計算図を示す。図3の方法でi1〜i4のベクトル値が求められたら入力有効エリアを4分割し、その面積比をS1からS4とする。その対角の面積比に対応したi1〜i4の電流が流れる。以下の座標の計算方法は特開2000−222109による。中心部に対して上下、左右に対象性があることから、中心部を座標原点と考え任意のパネルサイズに容易に適応させるために正規化したX値、Y値を使用する。
−1≦X≦1
−1≦Y≦1
i=i1+i2+i3+i4
A、B、C、D点へ配分される電流値は、
i1=i・S3/(S1+S2+S3+S4)
i2=i・S4/(S1+S2+S3+S4)
i3=i・S1/(S1+S2+S3+S4)
i4=i・S2/(S1+S2+S3+S4)
各面積は、
S1+S2+S3+S4=S=4
S1=(1+X)・(1−Y)
S2=(1−X)・(1−Y)
S3=(1−X)・(1+Y)
S4=(1+X)・(1+Y)
座標X,Yは以上から
X=(i2+i3−i1−i4)/(i1+i2+i3+i4)
Y=(i1+i2−i3−i4)/(i1+i2+i3+i4)
以上A,B,C,D点を通過する電流i1,i2,i3,i4の電流を計測することができれば座標X,Yが求まる。電流の総和i=i1+i2+i3+i4には依存しない。
【0014】
図5に断面構造比較図を示す。図5の上図は従来技術による静電容量方式のタッチパネルで、ガラス等の表面に面抵抗体層を作り、さらにその表面に非常に薄い絶縁層(1μm前後)を作り四隅から面抵抗体層にAC電圧を印加することで絶縁層に接触する指に数百μAから1mA前後のAC電流を流し、生活環境下のノイズの中で1μA以上の精度で四隅の電流を測定することにより位置を検出する。図5の下図は、ガラス等の裏面に面抵抗体層を作り、ガラス自体を絶縁層に使用することで構造を簡単にし、絶縁層の強度を数mm厚のガラスに置換えることができる。厚い絶縁層により四隅から入力されたAC信号が指に流れ込む電流は上図の1/1000の微弱な数μAの電流を流し、生活環境下のノイズの中でnA以上の精度で四隅の電流を測定することにより位置を検出する。
【0015】
図6にsin信号掛算波形図を示す。a・sinαとb・sinαを掛けると以下の式
(a・sinα)・(b・sinα)=(a・b/2)−(a・b・cos2α)/2
となり、a・b/2だけ加えられたところに2倍の周波数の半分になったcos信号がある。これは十分低いローパス・フィルタを通過するとa・b/2の定数になる。
【0016】
図1入力装置システム構成図について、具体的に説明する。発信器の発振周波数は100kHzから500kHzの間で任意に変えられる。これは、特定の周波数に極度に強いノイズがある場合その周波数を避けるためである。sin波形とcos波形の出力電圧はピークtoピーク20Vで掛算回路の入力に。sin波形はさらに増幅回路の入力に、出力はピークtoピーク3Vで面抵抗体に。面抵抗体の抵抗値は100オーム。電流電圧変換の抵抗Rは100オーム。電流電圧変換のゲインは50倍。ハイパスのカット周波数は750kHz。増幅回路のゲインは4倍。ローパスのカット周波数は、60kHzで掛算回路の入力に。掛算回路は入力を1/10にして掛算し、その結果を10倍して出力する。掛算回路の出力は、ゲイン10倍、カット周波数3kHzのローパスに。以上の回路の出力は制御装置でA/D変換され実効値と位相差が求められる。指がふれていない時、周辺へ流れる電流を前もって測定し、指がふれたときの測定電流から引いてi1〜i4を求め、以下の計算をおこなう。電流の合計は数μAで安定している。
座標X,Yは
X=(i2+i3−i1−i4)/(i1+i2+i3+i4)
Y=(i1+i2−i3−i4)/(i1+i2+i3+i4)
で求められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスと該ガラスの裏面に面抵抗体を形成したタッチパネルであり、人体が十分に吸収できる微弱な電流よりさらに少ない10μA以下の電流を計測するためにsin信号とcos信号の同期発信回路と、少なくとも4つの電流・電圧変換回路とそれを経由して面抵抗体層の少なくとも4箇所に接続される配線と、少なくとも4つの電流・電圧変換された信号とsin信号およびcos信号とを掛算する少なくとも8つの掛算回路と、その結果をDC信号とする少なくとも8つのローパス・フィルタ回路と、そのDC信号化された電圧を計測し演算処理する制御装置により、座標位置を特定することを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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