説明

入浴装置

【課題】入浴介助者が浴槽側壁近傍にまで充分接近できるとともに、入浴者の移乗動作や入浴介助者の介助作業をより一層行い易くした入浴装置を提供すること。
【解決手段】入浴介助者がストレッチャーの搭乗台25上に搭乗した状態でストレッチャー4と浴槽との間での担架3の受け渡しを可能とし、浴槽側面にストレッチャー4に備えられる係合部と係脱可能に係合する被係合部44が設けられた入浴装置であって、担架3の受け渡し方向における搭乗台25の幅を、少なくとも担架3上への入浴者の移乗時に入浴者の脚部が搭乗台25の側端部分に接触しない程度にまで短縮化するとともに、係合部と被係合部44との係合状態において、被係合部44の少なくとも一部の上面と搭乗台25上面とが連続面状かつ面一状にあたかも一体状態となるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者等の入浴者を仰臥位姿勢で浴槽に浸漬させ入浴させる入浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入浴者を載せた担架をストレッチャーにて搬送し、ストレッチャーの一方側長辺を浴槽の一方側長辺に対して横付けし係合した後、担架を浴槽内方の受け台上に渡して、浴槽を昇降機構により上昇させて入浴者を入浴させる入浴装置が知られている(例えば、特許文献1)。
そして、出願人は、浴槽受け台上とストレッチャー上との間における担架のスライド移動の操作等を、入浴介助者が前屈みの無理な姿勢を強いられることなく楽な姿勢で行えるようにするため、ストレッチャーの一方長辺側から他方長辺側にかけて横断する空間部を設け、この空間部内に入浴介助者が入り込み踏み台上に搭乗して入浴介助ができるように入浴装置の改良を施した(特許文献2〜3及び非特許文献1)。
【0003】
これによって、浴槽の係止部にストレッチャーを係合した状態のまま、入浴介助者がストレッチャーの空間部を通って浴槽の側壁近傍にまで接近移動し担架上の入浴者の介助や看視が容易に行えることとなった。また、ストレッチャーを浴槽から除去移動させる必要がないので、ストレッチャーの操作に掛かる手数を減らし入浴介助者の負担をより軽減することが実現できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−12789号公報
【特許文献2】特開2000−102586号公報
【特許文献3】特開2000−225166号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】GENERAL CATALOG2009、オージー技研株式会社、63〜68頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の入浴装置に用いられるストレッチャーは、担架短辺方向の幅に対応する踏み台の幅が広くなっているがゆえに、他の搬送機器から担架上へ入浴者が移乗動作を行う際に踏み台面の側端部分に入浴者の脚部が接触し側端部分が邪魔になったり、さらには、担架を浴槽方向にスライド移動させるため入浴介助者がストレッチャーの一方長辺側に正対し踏み台上に搭乗動作をする際に入浴介助者の爪先が踏み台の側端下面に引っ掛かり躓いて転倒する危険性があるという問題点を有しており、担架短辺方向の幅に対応する踏み台の幅を短縮化する必要性があった。
【0007】
一方、踏み台の上記幅を短縮化するだけでは、浴槽の係止部とストレッチャーの踏み台との間に間隙が生じることになり、その結果として、入浴介助者が浴槽側壁近傍まで接近できなくなり前屈みの無理な姿勢での介助作業を余儀なくされることとなる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、入浴介助者が浴槽側壁近傍にまで充分接近できるとともに、入浴者の移乗動作や入浴介助者の介助作業をより一層行い易くした入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現する為、請求項1記載の発明は、
入浴介助者がストレッチャーの搭乗台上に搭乗した状態で前記ストレッチャーと浴槽との間での担架の受け渡しを可能とし、前記浴槽側面に前記ストレッチャーに備えられる係合部と係脱可能に係合する被係合部が設けられた入浴装置であって、
前記担架の受け渡し方向における前記搭乗台の幅を、少なくとも前記担架上への入浴者の移乗時に前記入浴者の脚部が前記搭乗台の側端部分に接触しない程度にまで短縮化するとともに、
前記係合部と前記被係合部との係合状態において、前記被係合部の少なくとも一部の上面と前記搭乗台面とが連続面状かつ面一状にあたかも一体状態となるように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の入浴装置において、
前記担架の受け渡し方向と直交する方向における前記搭乗台の幅を拡幅にするとともに、前記担架を前記ストレッチャー上に案内する案内レールの配設間隔を前記搭乗台の幅と同幅以上に設定することにより、二名の入浴介助者が同時に前記搭乗台上に搭乗し介助作業が行える作業スペースを確保したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の入浴装置において、
請求項1記載の入浴装置において、
前記ストレッチャーの車輪を転動不自在とするロック手段と、
該ロック手段による車輪のロック及びそのロックを解除操作する操作機構と、を備え、
前記被係合部に対する前記係合部の係合解除を、前記操作機構を用いて操作できることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の入浴装置において、
少なくとも前記被係合部の側面に沿って当接転動し前記ストレッチャーを前記被係合部に対する所定位置へ誘導案内するガイド部材を、前記搭乗台下面から面外方向へ突出しないように配設したことを特徴する。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の入浴装置において、
前記被係合部の前記上面及び前記搭乗台の上面は各々凹凸部に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の入浴装置において、
前前記係合部と前記被係合部との係合状態にあっては、前記被係合部の凹凸部と前記搭乗台の凹凸部とが所定方向に連続状に配列されることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の入浴装置において、
前記搭乗台面における前記凹部面は、落下水滴が前記搭乗台に設けられる排水口に流入するよう勾配面に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、担架の受け渡し方向における搭乗台の幅を、少なくとも担架上への入浴者の移乗時に入浴者の脚部が前記搭乗台の側端部分に接触しない程度にまで短縮化したので、側端部分が他の搬送機器からストレッチャー上に載置される担架への移乗動作の妨げになることはない。
また、係合部と被係合部との係合状態において、被係合部の少なくとも一部の上面と搭乗台面とが連続面状かつ面一状にあたかも一体状態となるので、両面の高さに段差が生じることはなく、入浴介助者がストレッチャーの搭乗台と浴槽の被係合部との間で躓いたりする虞れもなく、しかも、入浴介助者は浴槽側壁に充分接近できるので、自然な姿勢で担架の受け渡し作業や浴槽の側壁越しの入浴介助作業を行える。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、担架の受け渡し方向と直交する方向における搭乗台の幅を拡幅にするとともに、担架をストレッチャー上に案内する案内レールの配設間隔を搭乗台の幅と同幅以上に設定することにより、二名の入浴介助者が同時に搭乗台上に搭乗し介助作業が行える作業スペースを確保したので、搭乗台上に2名の入浴介助者が同時に搭乗し並行して作業(例えば、入浴者の上半身側と下半身側を同時に介助して作業効率化を図る)を行う場合にも適したものとなる。
また、搭乗台上において浴槽の側壁越しに入浴者を介助できる範囲が拡大するので、一旦搭乗台から降りて再び介助作業を行うという煩わしさを軽減できる。また、案内レールの配設間隔が拡大したので、安定感が増し担架をストレッチャー上でより安全に支持することが可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、車輪のロック及びロック解除と、ストレッチャーと浴槽の係合解除とを別個の操作機構を設けることなく行えるため、入浴介助者の操作手数を減らすことが可能となり、操作性に優れたものとなる。
また、従来は、担架を浴槽から移動させてストレッチャー上で受け取り搭乗台から下りた後、ストレッチャーの一方短辺側にまで回り込み、ストレッチャーに設けられる浴槽とストレッチャーとの係合を解除する操作レバーを操作しなければ、係合解除が行えなかったが、本発明によれば、搭乗台から下りたまま車輪付近に設けられる操作機構を操作することで係合を解除できるため、ストレッチャーの一方短辺側にまで回り込む移動動作は不要であり、入浴介助者の移動労力を軽減することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、少なくともガイド部材を搭乗台下面から面外方向へ突出しないように配設しているので、入浴介助者や入浴者が脚部をガイド部材に衝突させて負傷を負うという心配はなく安全である。また、ガイド部材が被係合部の側面以外に衝突し破損するという不都合な点も解消できる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、被係合部及び搭乗台の上面が各々凹凸部に形成されているので、入浴介助者が担架の受け渡し作業を行う際に滑り難いものとなる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、係合部と被係合部との係合状態にあっては、被係合部の凹凸部と搭乗台の凹凸部とが所定方向に連続状に配列されるので、係合部と被係合部との境界面が目立ち難く意匠上の一体感があり、入浴介助者も安心感を感得できる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、搭乗台面の凹部面は、入退浴時に落下した水滴が搭乗台に設けられる排水口に流入するよう勾配面に形成されているので、凹部内に水滴が滞留し難くなり、入浴介助者が作業中に滑って転倒する危険性を軽減でき、衛生上も好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る入浴装置の斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る担架を浴槽側に渡した状態の入浴装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るストレッチャーの平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るストレッチャーの側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るストレッチャーの係合部が浴槽の被係合部に係合した状態を示す部分断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るストレッチャーのロック手段付近を示す部分斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係るストレッチャーの操作機構を説明する断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るストレッチャーの排水口付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1ないし7を参照しつつ本発明の第一の実施形態について説明する。図1、2に示すように、本発明の入浴装置1は、浴槽2、担架3及びストレッチャー4を主たる要素として構成される。入浴装置1は、入浴者が仰臥姿勢で横たわる担架3を載せた平面視略長方形状のストレッチャー4の一方長辺方向を、平面視略長方形状の浴槽2の一方長辺方向に対して横付けし両者を係合し、担架3をストレッチャー4上から浴槽2の入浴部5内に設けられる受け部6方向に渡した後、入浴部5内に湯を給湯した浴槽2を上昇させることにより入浴者を湯に浸漬して入浴を行わせるものである。
【0025】
浴槽2は不図示のパンタグラフや油圧シリンダ等より構成される浴槽昇降手段によって、所定下限位置と所定上限位置の区間を上下に昇降可能であって、入浴部5内には、底壁2aを貫通して鉛直状に延設される支柱部6aと、この支柱部6aの上端部に担架3を支持する受け枠部6bとから構成される受け部6が設けられている。
受け枠部6bの上面左右端の各位置には、担架3を受け枠部6b上の所定位置に案内する案内レール7・7が、所定の間隔を有して浴槽2の短辺と同方向に平行態様に配設されている。
【0026】
浴槽2長辺方向に沿う側壁2bの中央付近の下部には、後述するストレッチャー4の係合部43と係脱可能に係合する被係合部44が設けられ(図2参照)、被係合部44はストレッチャー4が浴槽2の側壁2bの所定位置に横付けされた際に、ストレッチャー4を浴槽2から分離しないようにするためのものである。
【0027】
図5に示すように、被係合部44は、浴室床面に接地脚27により所定高さに支持される中空角パイプ55と、この上に載設され側面視階段状の受け台24と、中空角パイプ55下面から浴槽2外方向へ突出する平面視コ字形に曲折されたロッド23より構成され、被係合部44は連結金具56を介して浴槽フレーム26と連結されている。
【0028】
受け台24は、低段部24aと、高段部24bと、起立部24cが一体成形されてなる。低段部24aは、ストレッチャー4の搭乗台25側部より僅か下方に位置する高さに設定されるとともに、低段部24aの前後方向の側面の中央部には後述するストレッチャー4の係合部43がロッド23に係合できるようにするための窪み部12が形成されている。また、低段部24aより一段高い高段部24b上面は入浴介助者が足先を載せ置く載せ面になっている。
【0029】
高段部24b上面は滑り止めを防止するため凹凸部67に形成され、この高段部24bにおける浴槽2の側壁2b寄り側は高段部24bに連続して起立状に起立部24cが形成されていて、この起立部24cは高段部24bに入浴介助者の足が載せ置かれた際に爪先を防護する防護機能の役目を果たしている。
受け台24は、安全性を確保するため、ロッド23の先部を除いてその他の被係合部44の構成部材(中空パイプ55等)を覆い隠すように設けられている。
【0030】
図1に示すように、平面視略長方形状の担架3は、入浴者を載せるものであって、概ね入浴者の頭部から腰部にかけての範囲を支持する背もたれ部8と、入浴者の臀部付近を支持する臀部受け部9と、入浴者の脚から下の部位を支持する脚受け部10との三つの部分に分割して構成され、各部分の間は不図示の関節軸により連結されている。
【0031】
平面視略長方形状のストレッチャー4は、入浴者が仰臥姿勢で横たわる担架3を上方に支持し浴槽2が設置される浴室まで入浴者を運搬するとともに、ストレッチャー4の一方長辺方向を浴槽2の一方長辺方向に横付けし係合した後、担架3を受け部6上へ渡したり、逆に受け部6から担架3を受け入れたりする役割を果たすものである。
【0032】
以下、図3中、下側を前側、上側を後側としてストレッチャー4の構成について説明する。図4に示すように、ストレッチャー4は、ベース部11と、このベース部11の前後左右の四隅位置に配設される支柱57により支持される担架載置部13と、を主たる構成要素としている。
【0033】
ベース部11は、前後に延在され左右に平行配設される中空角パイプ14が連結板16等によって連結されて構成され、各中空角パイプ14の前後左右端部の内側面には取付板15が立設され、この取付板15の内側に各支柱57が固着されている。担架載置部13は前後に配設される載台18によって構成されている。
【0034】
前後の各載台18上には、担架3裏面において短辺方向に延在して平行配設される横架フレーム21の下面に複数個設けられる転動ローラ(不図示)が転動する案内レール20がストレッチャー4の短辺方向に延在して配設される。
ストレッチャー4を浴槽2の所定位置に横付けし係合すると、ストレッチャー4の案内レール20・20と受け部6の案内レール7・7とが同高且つ同一直線上になるように案内レール20・20の高さは設定されている。
【0035】
図3、4に示すように、前後の載台18の間は、入浴介助者が担架3を受け部6へ渡したり、逆に受け部6から担架3をストレッチャー4上に受け入れたりする際等に入出可能な空隙に形成されており、中空角パイプ14・14上には、入浴介助者が搭乗しやすいように平面視略長方形状の平板からなる搭乗台25が中空角パイプ14・14から両短辺方向にやや張出すようにして載設されている。
【0036】
搭乗台25の長辺方向幅は、二名の入浴介助者が同時に搭乗台25上で並んで介助作業が可能な程度の幅に形成されていて、この幅と同程度に案内レール20・20の配設間隔が設定されている。具体的には、搭乗台25の長辺方向幅(有効幅)は800〜1200mmにするのが好ましい。
【0037】
搭乗台25下面の四隅に対応する位置には、受け台24の低段部24a側面に沿って当接転動しストレッチャー4を被係合部44に対する所定位置へ誘導案内するガイド部材としてのガイドローラ17が、中空角パイプ14側面に固定金具65を介して固定され、各ガイドローラ17は搭乗台25下面から面外方向へ突出しないように配設されている。
【0038】
また、図2に示すように搭乗台25上面も受け台24と同様形状の凹凸部68に形成され(図3では凹凸部68を省略している)、凹凸部68の凹凸面全体は入退浴時に落下した水滴が搭乗台25に設けられる排水口66に流入するよう勾配面に形成されている(図8参照)。
【0039】
ベース部11の前後左右端付近には、取付板15の外側面と中空角パイプ14上面とにわたって設けられるブラケット29に車輪軸28aが取着された車輪28が配設されている。また、車輪28を転動不自在とするロック手段30が設けられ、このロック手段30は前後左右に配設される車輪28を同時にロックできる構成となっている。以下、この構成について図6、7を主に用いて説明する。ロック手段30は、ブレーキ31と、このブレーキ31を車輪部28bに押圧または押圧解除することで車輪28のロックまたはロック解除の操作を行う操作機構32を有している。
【0040】
ブレーキ31は、ブラケット29に枢着された支軸33で基端が軸支される支持腕34の先端に車輪軸28aを円中心とするリング形状の部材が取着されたものである。操作機構32は、中空角パイプ14の延在方向と同方向に中空角パイプ14に挿通された操作軸38と、操作軸38を受ける凹形状の軸受58と、操作軸38に連結片62を介して連結されるクランク37とを有している。操作軸38の各端部は中空角パイプ14の端面に螺着されたプレート35にて支持されている。
【0041】
中空角パイプ14の一部を切り欠いて形成された切欠部51において、クランク37の基部側37aが操作軸38に止着された連結片62に軸着され、先部側37bは支持腕34に螺着されている。基部側37aと先部側37bとの間は、連結軸63にて枢着されている。クランプ37は後述の操作機構32による操作軸38の回動を介して支持腕34を上下動作させることによりブレーキ31を車輪28bに対して押圧または押圧解除させる役割を果たすものである。また、支持腕34をブレーキ31が車輪部28bを押圧しない方向へ付勢するため、クランプ37の先部側37bにおける支持腕34とブラケット29に螺着される取付部材59の間には圧縮バネ60が挟まれるように設けられ、クランプ37の先部側37bは取付部材59に挿通されている。
【0042】
操作機構32は、具体的には、中空角パイプ14の端部において操作軸38に対し直交してストレッチャー4の外側に向けて設けられるブレーキ操作子39である。
ブレーキ操作子39は、操作軸38に基端が連結される棒状部39aの先端に環状部39bが固着して形成される。棒状部39aに直交状の突出する突出部39cは、中空角パイプ14に設けられるストッパー受け片41にあたり、ブレーキ操作子39の回動を規制するものである。
【0043】
また、図6に示すように、前後左右の4箇所位置に設けられるブレーキ操作子39は、前側及び後側における左右の操作軸38が各々連結リンク40にて連結されており、1箇所のブレーキ操作子39を操作することで、四輪の車輪28を同時にロックしたり、逆にロック解除を行うことができるように構成されている。
【0044】
案内レール20・20の略中央に位置する中空角パイプ14外側面には浴槽2の被係合部44に係合する係合部43が設けられている(図3参照)。以下、図3、5、7を主に用いて係合部43の構造について説明する。
係合部43は、中空角パイプ14外側面に取付される取付金具45に回動軸47にて回動可能に軸着された係合レバー46を有しており、係合レバー46の先端にはかぎ状のフック部46aが形成されている。回動軸47にはフック部46aを被係合部44へ係合する方向へ付勢する捻りバネ48が介装され、捻りバネ48の各端は係合レバー46及び取付金具45にそれぞれ止着されている。
【0045】
係合レバー46は前後方向に2個並設され(図6参照)、両係合レバー46はフック部46a先端及び係合レバー46の下端においてそれぞれ連結棒52及び連結棒53にて連結され、一体となって回動可能に構成されている。
【0046】
図5、6に示すように、操作軸38には、前述の操作機構32と連繋し被係合部44に対する係合部43の係合解除を操作する操作アーム50が設けられている。操作アーム50は、操作軸38外周面に沿う周面部50aと、中空角パイプ14外側面に形成される四角窓49及び取付面45aの上側凹部45aaを通過して取付金具45内方まで臨むとともに、取付金具45の下側凹部45abを通過して中空角パイプ14下面まで延出する屈曲アーム部50bとを有して形成され、屈曲アーム部50b先端には中空角パイプ14と同方向に延在するボルト61が設けられている。
【0047】
周面部50aには円周溝64が各溝端と操作軸38の軸心とを結ぶ線分のなす角度(中心角)が約45°となるように形成されており、この円周溝64内においてピン36が操作軸38に穿設されている。
また、ボルト61と同高となる取付面45aの下部にはストレッチャー4の左右方向に延在し、取付面45aに対して進退動可能な進退ピン54が、先端が連結棒53と当接可能に設けられている。
【0048】
以下、入浴装置1の作用について説明する。担架載置部13に載置される担架3に入浴者を移乗させる。このとき、入浴者の脚部が搭乗台25の側端部分に接触しない程度にまで搭乗台25の短辺方向幅が短縮化されているので、この側端部分が他の搬送機器からストレッチャー上に載置される担架3への移乗動作の妨げになることはない。
続いて、操舵ハンドル22を操縦しながら、入浴者の頭部側が浴槽2の肩掛けシャワー19の配設位置側になるように、ストレッチャー4の長辺方向を浴槽2に接近させる。被係合部44の有する受け台24の低段部24a側端面に、ストレッチャー4のガイドローラ17・17を押し当てながら、ストレッチャー4を所定位置に誘導する。ストレッチャー4が所定位置に至るとフック部46aがロッド23に自動的に係合される。
【0049】
ストレッチャー4と浴槽2とが係合されたのを確認した後、いづれか一つのブレーキ操作子39を足裏で踏み込む。ストレッチャー4の車輪28のロックが解除されている状態において、操作子39は圧縮バネ60の弾性作用によって、図7中、B位置に維持されている。環状部39bが略水平状態に至る程度位置(図7中、A位置)まで踏み込むと、操作軸38が同図中、右回りに回動することによって、クランク37がブレーキ31を下降させる方向に支持腕34を操作し、車輪部28bがブレーキ31にて押圧されロックされる。ブレーキ31は略水平状態となり車輪部28bを押圧する。一つのブレーキ操作子39を操作すると、連結リンク40を介して四輪の車輪28が同時にロックされるので、各車輪28を個別にロックする必要性はない。
【0050】
浴槽2に係合される側と反対側のストレッチャー4の長辺方向に正対し、担架3を受け部6方向へ渡す動作を開始する。この搭乗台25のストレッチャー4短辺方向幅は、入浴介助者が担架3を受け部6方向へ渡すため搭乗台25上に搭乗動作をする際に、入浴介助者の爪先が搭乗台25の側端下面に引っ掛かり難くなるように、担架3の短辺方向幅に対して短縮化して成形されている(図3参照)。従って、搭乗動作をするときに、爪先が搭乗台25の側端下面に引っ掛かり躓いて転倒する危険性を防止でき、より安全に担架3を浴槽2に渡す作業を行うことが可能となる。
【0051】
また、ストレッチャー4の係合レバー46が、浴槽2のロッド23に係合されると同時に、搭乗台25と受け台24の高段部24bの各上面が連続面状且つ面一状にあたかも一体状態になるので、係合部43と搭乗台25との間に間隙が生じることはなく、故に、入浴介助者は搭乗台25と高段部24bとの間で躓くことはなく、浴槽2の側壁2bに接近した状態で担架3の受け渡し作業を楽な姿勢で行えることになる。さらに、受け台24の凹凸部67と、搭乗台25上面の凹凸部68がストレッチャー4の短辺方向に連続状に配列される(図1、2、5参照)。
【0052】
担架3を受け部6へ渡した後、浴槽2を昇降させて担架3上の入浴者を浴湯に浸漬する。入浴介助者は、搭乗台25上において側壁2b越しに入浴者に対して介助作業を行う。搭乗台25の長辺方向幅を拡幅にしているので、搭乗台25上において浴槽2の側壁2b越しに入浴者を介助できる範囲が拡大することになる。
【0053】
また、入浴者の上半身側と下半身側を同時に介助したい場合など、必要に応じて2名の入浴介助者が同時に搭乗台25に搭乗し並行して介助作業を行うことも可能である。
退浴する場合は、浴槽2を下降させて、受け部6上の担架3をストレッチャー4の担架載置部13まで引き寄せて受け取る。案内レール20の配設間隔を搭乗台25の長辺方向幅と同程度に広く設定しているので、安定感が増し担架3を案内レール20上で安全に支持することができる。
【0054】
搭乗台25から降り車輪28のロック解除操作を行う。車輪28がロックされている状態において、操作軸38に穿設されるピン36は図5に示す円周溝64の一方端64aに位置している。足甲部で環状部39bを持ち上げる方向にブレーキ操作子39を操作する。環状部39bの水平線に対する角度が約45°になる位置(図7中、B位置)までブレーキ操作子39を持ち上げると、クランク37が図7中、二点鎖線で示す位置に動作し支持腕34を操作する結果、ブレーキ31が同図中、二点鎖線で示す位置まで上昇する。
【0055】
ブレーキ31の上昇は、ブラケット29の水平面から下方に鉛直垂下状態に設けられるストッパーピン42に支持腕34が当接する位置で規制される。このとき操作軸38のピン36は円周溝64の他方端64bに位置する。
【0056】
環状部39bが図7におけるA位置からB位置に至るまでの間は、操作軸38はブレーキ操作子39の上昇に連動して回動するが、この間操作軸38のピン36は操作アーム50の円周溝64内を一方端64aから他方端64bまで移動するので、操作アーム50自体は回動しない。
【0057】
さらにブレーキ操作子39を図7中、C位置にまで持ち上げると、操作軸38と操作アーム50が一体となって、図5中、右回り方向に回動することにより、操作アーム50のボルト61が進退ピン54を左方向へ押し出すことになる。
この押し出しにより連結棒53が押される結果、係止レバー46が同図中、右回り方向に回動し、フック部46aがロッド23から外れてストレッチャー4と浴槽2との係合が解除される(係止レバー46が、図5中、二点鎖線で示す状態に至る)。
【0058】
ブレーキ操作子39から足甲部を離すと、自重によりブレーキ操作子39はB位置まで下降し圧縮バネ60の弾性作用により当該位置にて維持される一方、係合レバー46は捻りバネ48の作用により図5中、実線で示す被係止部44との係合可能な位置まで復帰する。
従って、一つの操作機構32を操作することで、車輪28のロック及びロック解除と、ストレッチャー4と浴槽2の係合解除が行えるため、入浴介助者の操作手数を減らすことが可能となる。
【0059】
尚、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、ストレッチャー4は、浴槽2側の案内レール7とストレッチャー4側の案内レール20が同高になるようにできれば、担架載置部13を水平状態に保ちながら上下方向に昇降可能な昇降手段を備えるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、高齢者や身体障害者等の入浴者を仰臥位姿勢で浴槽に浸漬させ入浴させる入浴装置に適用できるもので、産業上の利用可能性は高いものである。
【符号の説明】
【0061】
1 入浴装置
2 浴槽
3 担架
4 ストレッチャー
24 受け台
24a 低段部
24b 高段部
24c 起立部
25 搭乗台
28 車輪
30 ロック手段
31 ブレーキ
32 操作機構
39 ブレーキ操作子
43 係合部
44 被係合部
66 排水口
67 凹凸部
68 凹凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴介助者がストレッチャーの搭乗台上に搭乗した状態で前記ストレッチャーと浴槽との間での担架の受け渡しを可能とし、前記浴槽側面に前記ストレッチャーに備えられる係合部と係脱可能に係合する被係合部が設けられた入浴装置であって、
前記担架の受け渡し方向における前記搭乗台の幅を、少なくとも前記担架上への入浴者の移乗時に前記入浴者の脚部が前記搭乗台の側端部分に接触しない程度にまで短縮化するとともに、
前記係合部と前記被係合部との係合状態において、前記被係合部の少なくとも一部の上面と前記搭乗台面とが連続面状かつ面一状にあたかも一体状態となるように構成したことを特徴とする入浴装置。

【請求項2】
請求項1記載の入浴装置において、
前記担架の受け渡し方向と直交する方向における前記搭乗台の幅を拡幅にするとともに、前記担架を前記ストレッチャー上に案内する案内レールの配設間隔を前記搭乗台の幅と同幅以上に設定することにより、二名の入浴介助者が同時に前記搭乗台上に搭乗し介助作業が行える作業スペースを確保したことを特徴とする入浴装置。

【請求項3】
請求項1記載の入浴装置において、
前記ストレッチャーの車輪を転動不自在とするロック手段と、
該ロック手段による車輪のロック及びそのロックを解除操作する操作機構と、を備え、
前記被係合部に対する前記係合部の係合解除を、前記操作機構を用いて操作できることを特徴とする入浴装置。

【請求項4】
請求項1記載の入浴装置において、
少なくとも前記被係合部の側面に沿って当接転動し前記ストレッチャーを前記被係合部に対する所定位置へ誘導案内するガイド部材を、前記搭乗台下面から面外方向へ突出しないように配設したことを特徴する入浴装置。

【請求項5】
請求項1記載の入浴装置において、
前記被係合部の前記上面及び前記搭乗台の上面は各々凹凸部に形成されていることを特徴とする入浴装置。

【請求項6】
請求項5記載の入浴装置において、
前記係合部と前記被係合部との係合状態にあっては、前記被係合部の凹凸部と前記搭乗台の凹凸部とが所定方向に連続状に配列されることを特徴とする入浴装置。

【請求項7】
請求項5記載の入浴装置において、
前記搭乗台面における前記凹部面は、落下水滴が前記搭乗台に設けられる排水口に流入するよう勾配面に形成されていることを特徴とする入浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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