説明

全プラスチック樹脂製暖冷房放熱器

【課題】 全プラスチック樹脂製で2枚の放熱パネルの重層化タイプの放熱器に於いて、放熱器自体へのエアー抜き装置が不要で、放熱面全面が斑無く放熱し、且つ、間仕切壁等に吊下げ添装出来る発熱量の大きな循環水型暖冷房用放熱器を得る。
【解決手段】 両側のヘッダー主管1A間に緯パイプ2A群を密集並列連通した、第1放熱パネル101と第2放熱パネル102の2枚を重層形態で一体化連通し、第1放熱パネル101の一端ヘッダー1の上端には供給口1Sを、第2放熱パネル102の一端ヘッダー1の上端には排出口1Rを配置し、且つ、第1及び第2放熱パネルの全緯パイプ2A群の水流は、各ヘッダー主管1Aからの流入、各ヘッダー主管1Aへの流出共、ヘッダー主管1A内の上昇流で実施する、全プラスチック樹脂製の暖冷房用放熱器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水循環による室内暖房と、冷水循環による室内冷房の可能な、全プラスチック樹脂製放熱器に関するものであり、より詳しくは、軽量で、奥行き厚さが小で、放熱量が大で、エアー抜きの不要な、建物の間仕切内等の収納奥行きの狭い空間内の配置に有効な放熱器に関するものであって、建物の室内暖冷房の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
温水循環放熱部をプラスチック製とした放熱器は、図6に示す従来例1、図7に示す従来例2、及び図8に示す従来例3等により既に提案されている。
従来例1(図6)は、特許文献1に開示された温水循環放熱器であって、図6(A)は、プラスチック製のパイプの1本を屈曲延展して放熱部としたものであり、(B)は複数のパイプを並列配置して両端をソケットで連通し、一端のソケットの上端には往き側パイプを、ソケットの下端には戻り側パイプを接続し、往き側パイプから戻り側パイプへ、温水を全パイプに循環させるものであり、(C)はソケット部の流水説明図、(D)はソケット部の斜視図である。
【0003】
また、従来例2(図7)は、特許文献2として挙げたものであり、本願発明者が、床面載置用の温水循環暖房器に好適な放熱器として開発した、2枚の放熱パネルを重層一体化した全プラスチック製放熱器であって、図7(A)は第1放熱パネル側の正面図、(B)は放熱器の左側面図、(C)は放熱部の右側面図、(D)は裏面用、即ち第2放熱パネル側の正面図である。
即ち、第1放熱パネルは、図7(A)に示す如く、上下横パイプ間に縦パイプ群を、横パイプの嵌入孔に縦パイプ先端を嵌合熱融着して連通一体化すると共に、上下横パイプの端部を閉止板で閉止し、下部横パイプの一端(右端)から供給口を下方突出する。
【0004】
また、第2放熱パネルは、図7(D)に示す如く、上下横パイプ間に縦パイプ群を、横パイプの嵌入孔に縦パイプ先端を嵌合熱融着して連通一体化すると共に、上下横パイプの端部を閉止板で閉止し、上側横パイプの他端(左端)では、閉止板から1本の縦パイプ分を保って仕切板を配置し、下側横パイプの一端(右端)では、閉止板から1本の縦パイプ分を保って仕切板を配置し、閉止板と仕切板との間から下方に排出口を配置する。
そして、第1放熱パネルと第2放熱パネルとを、図7(B)に示す如く、左端(他端)の、上側では横パイプ端間を連通パイプで接続し、下側では横パイプ端間をスペーサーパイプで接続し、右端(一端)の上側及び下側では、横パイプ端間をスペーサーパイプで接続したものである。
【0005】
従って、図7に示す如く、第1放熱パネルの一端下部の供給口から供給する温水は、供給口のf1流→下側横パイプ内の左行f2流→縦パイプ群の上昇f3流→上側横パイプの左行f4流→連通パイプ内の第1放熱パネルから第2放熱パネル内へのf5流→第2放熱パネルの上側横パイプ他端(左端)の閉止板と仕切板による左端縦パイプ内の下降f6流→下側横パイプの仕切板までの右行f7流→縦パイプ群の上昇f8流→上側横パイプの仕切板から右側の右行f9流→一端(右端)縦パイプ内の下降f10流→排出口からのf11流と、重層形態の2枚のパネル内を温水が循環するものである。
【0006】
また、従来例3(図8)は、本願発明者が、建物の間仕切内での隠蔽配置に好適な温冷水循環放熱器として開発したものであって、特許文献3として挙げたものであり、2枚の放熱パネルを重層一体化した全プラスチック樹脂製放熱器であって、図8の、(A)はヘッダーの一部横断平面図、(B)はヘッダーと縦パイプとの関係構造縦断側面図、(C)は放熱パネルの部分拡大平面図である。
【0007】
即ち、従来例3(図8)は、大径(27mm)のヘッダー主管から側方に中径(17mm)の継手用枝管群を、中心間距離20mmで並列突出したヘッダーを射出成形で用意し、上下ヘッダー間に小径(13mm)の縦パイプ2C群を連通接続して全プラスチック樹脂製放熱パネルとし、該放熱パネルの2枚を、重層形態で連通一体化して放熱器としたものである。
そして、ヘッダーと縦パイプ群との連通接続は、ヘッダーの継手用枝管の内周に、先端から10mm深さで配置した取付孔に、縦パイプの端部を1本ずつの手作業で嵌合当接し、加熱工具で継手用枝管外周を溶融して、外周部の継手用枝管と挿入縦パイプとを融着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−116475号公報
【特許文献2】特開2009−192144号公報
【特許文献3】登録実用新案第3163477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来例1(図6)の放熱器にあっては、パイプが横方向配置であるため、流水抵抗が大であり、パイプ本数が多い場合は、各パイプが偏流となって放熱面の温度が不均斉となる。
そして、放熱器内の空気は流水経路の最上部に溜まるため、放熱器の上端にエアー抜き装置の配置が必要である。
また、融着板、ソケット、閉止板、パイプ群等の融着個所が多くて製作が煩雑であり、製作作業に熟練を要する。
【0010】
また、従来例2(図7)の放熱器は、全プラスチック樹脂製で、輻射熱放熱に優れた放熱パネルの2枚を重層連通一体化しているため、軽量で、熱効率に優れた、画期的な放熱器であるが、第1パネルと第2パネルとの、下端横パイプ間隔及び上端緯パイプ間隔が、放熱面としての縦パイプ面間隔より小さいため、両パネル間の空間の上下貫通空気流は、空気流が澱んで、対流熱伝達がスムーズに実施出来ない。
また、全面均斉な放熱を得るためには、各縦パイプ群を横パイプに連通歪無く取付ける必要があり、大径横パイプへの小径の縦パイプ群の均斉密集接合は、煩雑で熟練を要する作業である。
【0011】
しかも、第1放熱パネルには、下側横パイプの一端(右端)に供給口を付設し、第2放熱パネルには、下側横パイプの一端(右端)に排出口を付設すると共に、右端の縦パイプと左端の縦パイプとに流路変更用仕切板を介在することとなり、第1放熱パネルと第2放熱パネルとは構造が異なるため、放熱パネルの製作、及び放熱パネルからの放熱器の製作が煩雑である。
しかも、循環水中の空気は上端横パイプ内に溜まるため、従来例1(図6)同様、放熱器の上端に、エアー抜き装置の配置が必要である。
【0012】
また、従来例3(図8)の放熱器は、大径(外径27mm)のヘッダー主管の側方から中径(外径17mm)の継手用枝管群を、中心間距離20mm、即ち継手用枝管相互の間隔を3mmで突出させ、継手用枝管の先端から10mm深さの取付孔を備えたヘッダーを射出成形するための、金型の製造が、煩雑且つ高価である。
しかも、溶融樹脂の、型内での流動廻り込み作用の面から、継手枝管の肉厚の薄肉化が制約され、継手用枝管とヘッダー主管との接続部での、巣の発生、使用中のヒートストレス及び水圧負荷による亀裂の発生の危険等を避けるためにも、継手用枝管の薄肉化が制約される。
【0013】
そして、各継手用枝管に対する各縦パイプの融着接合は、各継手用枝管外周面を上下一対の加熱工具(図示せず)で被覆挟着しての溶融接合となるため、放熱器の放熱量増大を意図して縦パイプ群の密集化を目指しても、各継手用枝管の融着用間隔は、上下一対の加熱工具を挿入介在させるための必要最小限の間隔(標準:3mm)は必要となる。
そのため、継手用枝管内に縦パイプを嵌入して、縦パイプを継手用枝管内に融着一体化する従来例3(図8)の放熱器にあっては、継手用枝管相互間の融着用間隔の、必要最小限の寸法の制約の下に、縦パイプを継手用枝管内に嵌入して融着一体化するため、縦パイプ間隔の最小化も継手用枝管相互の間隔より大(標準:7mm)となり、放熱器の発熱量増加のための、単位幅寸法当りの縦パイプ配置本数の最大化が制約を受ける。
【0014】
本発明は、従来例2(図7)、従来例3(図8)の機能上優れた放熱器を、より放熱量を増大させ、より合理的に製作可能としたものであって、ヘッダーの射出成形型の問題を軽減し、縦パイプ間の間隔をより小さくして単位面積当りの放熱量の増大を可能とし、且つ、放熱器上端へのエアー抜き装置の付設も不要としたもので、機能上も、デザイン上も、制作上も優れた、新規、且つ実用性の極めて高い全プラスチック樹脂製の放熱器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、図1に示す如く、プラスチック樹脂製の左右のヘッダー1間に、プラスチック樹脂製で同径同長の放熱用緯パイプ2A群を密集並列連通した、第1放熱パネル101と、第2放熱パネル102との2枚を、重層形態で一体化連通した全プラスチック樹脂製放熱器であって、第1及び第2放熱パネルは、ヘッダー1の、大径の主管1Aの側面の取付孔Ha群に小径の緯パイプ2A群が嵌合連通して、緯パイプ2A群が両側のヘッダー1と連通し、第1放熱パネル101の一端のヘッダー1の上端には供給口1Sを、第2放熱パネル102の一端のヘッダー1の上端には排出口1Rを備え、第1及び第2放熱パネルの全緯パイプ2A群の水流は、各ヘッダー主管1Aからの流入、各ヘッダー主管1Aへの流出共、ヘッダー主管1A内の上昇流で実施するものである。
【0016】
この場合、ヘッダー主管1A、緯パイプ2Aは、相互に熱融着出来る熱可塑性プラスチック樹脂製であれば良く、典型的には、ポリプロピレン、ランダム、コポリマー樹脂(PP−R樹脂)製であり、大径のヘッダー主管1Aは、外径d1が27mm、肉厚5mmで、図2(A)に示す如く、一側面に緯パイプ嵌合融着用の取付孔Ha群を備えた射出成形品であり、小径の緯パイプ2Aは、外径d2が13mm、肉厚1.6mmの押出成形品であり、典型的な放熱パネルとしては、図1(B)に示す如く、ヘッダー主管1Aの上下を閉止板1Fで閉止した全高h1が451mmのヘッダー1に、緯パイプ2Aが、露出長946mm(L2)で一体化連通したものである。
【0017】
また、図1に示す如く、第1放熱パネル101の一端(右側)ヘッダー1の上端に供給口1Sを、第2放熱パネル102の一端(右側)ヘッダー1の上端に排出口1Rを供えた放熱器にあっては、図5に示す如く、第1放熱パネル101の、供給口1Sからの水流f1をヘッダー主管1Aでは下降流f2で案内し、ヘッダー主管1Aの下端で上昇流f3に方向変換して、ヘッダー主管1Aの上昇流f3から各緯パイプ2Aに供給し、他端(左側)のヘッダー主管1Aで収集した上昇流f5を、連通パイプ片1Dで第2放熱パネルの他端(左側)ヘッダー主管1A上端に横水流f6で供給し、第2放熱パネル102の他端(左側)ヘッダー主管1Aでは、下端までの下降流f7を、下端で方向転換して上昇流f8とし、上昇流f8から各緯パイプ2Aに横流f9で供給し、一端(右側)のヘッダー主管1Aで収集した上昇流f10を排出口1Rから排出流f11として循環させれば、放熱器の全緯パイプ2A群の水流は、供給水も、排出水も、全てヘッダー主管1A内の上昇流での実施となる。
【0018】
従って、本発明の放熱器は、第1放熱パネル101は、供給口1Sを備えた一端のヘッダー主管1Aの下端位置、即ち第1放熱パネル101の緯パイプ2A群への実質上の水流供給位置から、他端のヘッダー主管1Aの上端位置、即ち第1放熱パネル101の流水の第2放熱パネル102への排出位置、までの各緯パイプ2Aを経由する各流水経路は同一長となって、一端のヘッダー主管1A内の上昇流が各緯パイプ2A群に分配流入し、各緯パイプ2A群の流水を他端のヘッダー主管1A内の上昇流として収集するため、緯パイプ2A群で構成する放熱面は実質上、均斉な放熱作用を奏する。
【0019】
そして、第2放熱パネル102も、他端(左側)のヘッダー主管1Aの下端位置、即ち第2放熱パネル102の各緯パイプ群への実質上の水流供給位置、から一端(右側)のヘッダー主管1Aの上端位置、即ち第2放熱パネル102の流水排出位置、までの各緯パイプ2Aを経由する各流水経路は同一長となって、他端のヘッダー主管1Aの下端位置からの上昇流が、各緯パイプ2Aに流入し、一端のヘッダー主管1A内の上昇流として収集するため、第2放熱パネル102も、実質上、均斉な放熱作用を奏する、
そのため、第1放熱パネル101の全面及び第2放熱パネル102の全面が、面内で、実質上、均斉な加熱又は冷却発熱作用を奏し、高品質のパネル放熱器を提供する。
【0020】
そして、全プラスチック樹脂製であるため、軽量で、取扱いが容易であり、材質自体の輻射熱線の高吸収、高放射性に基づいた高性能輻射熱暖冷房器を提供する。
そして、放熱器は、大径のヘッダー主管1Aが両側に存在するため、第1放熱パネル101と第2放熱パネル102との、緯パイプ2A群面間の間隔、即ち両放熱パネル間の間隔は、下端から上端まで同一寸法で上下開通形態となって、放熱器内での、加熱又は冷却空気の上下貫流が、澱むことなくスムーズとなり、対流熱伝達が向上する。
【0021】
また、放熱器の構成材としての、ヘッダー主管1Aは、単純、且つ安価な形状の射出金型で準備出来、緯パイプ2Aは押出成形で準備出来、ヘッダー主管1Aへの取付孔Haの配置も自在であるため、緯パイプ2Aを、密集並列配置した高性能放熱パネルの製作が簡便、且つ安価に実施出来、高性能放熱器が合理的に製作出来る。
しかも、循環水で生ずる放熱器内の空気も、最上端の緯パイプ2Aから排出口1Rへと放出するようになって、放熱器毎のエアー抜き装置は不要となり、高性能で、稼働率に優れた放熱器の提供が可能となる。
【0022】
また、本発明の放熱器にあっては、図1に示す如く、第1放熱パネル101の他端、即ち図1(A)で左側、のヘッダー主管1Aの上端と、第2放熱パネル102の他端のヘッダー主管1A上端とが、連通パイプ片1Dで連通し、第1放熱パネル101の一端、即ち図1(A)の右側、のヘッダー主管1A及び第2放熱パネル102の他端、即ち図1(A)の左側、のヘッダー主管1Aが、上端から流入する下降流を下端で上端への上昇流に変換して各緯パイプ2Aに供給するのが好ましい。
【0023】
この場合、第1放熱パネル101と第2放熱パネル102との重層一体化は、上下左右の四隅で一体化すれば良く、他端、即ち左側、上隅の連通パイプ片1Dは流水供給機能と共に、連結一体化機能を奏する構造とし、他の三隅は、スペーサーパイプ1Eで単に両パネルを一体化すれば良い。
また、ヘッダー主管1A内の下降流の上昇流への変換手段は、下降流用のパイプをヘッダー主管1Aの下端までヘッダー主管1A内に延出垂下して、パイプ内部を下降流用、パイプ外部を上昇流用に分割しても、或いは、ヘッダー主管1A内を下降流ルートと緯パイプ2A群に連通する上昇流ルートとに分離しても良い。
【0024】
従って、第1放熱パネル101の各緯パイプ2A群への循環水の供給は、一端の供給口1Sを備えたヘッダー主管1Aの下端から他端へのヘッダー主管1Aの上端への上下各緯パイプ2Aを経由する流水ルートとなり、各緯パイプ2Aのルートでの流水抵抗は実質同一となり、第2放熱パネル102内にあっても、他端のヘッダー主管1Aの下端から各緯パイプ2Aを経由した一端ヘッダー主管1Aの上端への流水ルートとなって、各緯パイプ2A内の流水抵抗は実質同一となる。
そのため、第1放熱パネル101も第2放熱パネル102も、共に、緯パイプ2A群のパネル面は、全面が実質的に均斉な発熱作用を奏することとなり、発熱斑の生じない高性能な放熱器となる。
【0025】
また、本発明の放熱器にあっては、図3に示す如く、第1放熱パネル101の一端のヘッダー主管1Aは、上端から最下端の緯パイプ2A下面レベルまでの流れ変換用の挿入管1Bを備え、第2放熱パネル102の他端のヘッダー主管1Aは、上端から最下端の緯パイプ2A下面レベルまでの流れ変換用の挿入管1Cを備え、且つ、挿入管1Cは、第1放熱パネル101の他端のヘッダー主管1Aと、上部で連通パイプ片1Dで連通しているのが好ましい。
この場合、各挿入管1B,1C共、下端が最下端の緯パイプ2Aの下面レベルで、且つ下端の閉止板1Fとの間に、挿入管1B,1Cを下降する供給水をヘッダー主管1A内へ噴出する間隔が存在すれば良く、典型的には、挿入管1B及び1Cと下端の閉止板1Fとの間隔は2mmである。
【0026】
従って、挿入管1B,1Cのヘッダー主管1A内への配置は、ヘッダー主管1Aの上端の閉止板1Fを介して容易であり、挿入管1B,1C共、最下端の緯パイプ2Aの下面のレベルで、下降供給水流を上昇供給水流に方向変換噴出するため、最下端の緯パイプ2Aも、上部の各緯パイプ2Aと同一の反転上昇流からの横方向流入作用を受け、最下端の緯パイプ2Aから最上端の緯パイプ2Aまでの全緯パイプ2Aに、実質上、均斉な流水抵抗での循環水供給が付与出来る。
【0027】
また、本発明の放熱器にあっては、図3(D)に示す如く、第1放熱パネル101の一端のヘッダー主管1A及び第2放熱パネル102の他端のヘッダー主管1Aは、流水仕切片1Pを最下端の緯パイプ2Aの下面レベルまで備えており、且つ第2放熱パネル102の他端のヘッダー主管1Aの流水仕切片1Pで区画された一半の下降用流路の上端と、第1放熱パネル101の他端のヘッダー主管1Aとが、連通パイプ片1Dで連通しているのが好ましい。
この場合、流水仕切片1Pは、ヘッダー主管1Aと一体成形で容易に付設出来る。
【0028】
従って、ヘッダー主管1Aは、流水仕切片1Pが補強リブの機能を奏するため、放熱器全体の剛性が向上し、取扱い容易となると共に、第1放熱パネル101と第2放熱パネル102とを連通する短寸の連通パイプ片1Dの融着接続、又は接着剤接続も容易となる。
そして、流水仕切片1Pを備えたヘッダー主管1Aは、仕切片1Pの下端が最下端の緯パイプ2Aの下面レベルに位置決めすることにより、反転上昇流が各緯パイプ2A群への均斉な一斉循環水供給流となる。
【0029】
また、本発明の放熱器にあっては、図1に示す如く、第1及び第2放熱パネル101,102は、複数本数の密接一体化した緯パイプ2Aのブロック2を、空気流横断用の間隔g2を介在して反復配置するのが好ましい。
この場合、緯パイプ2Aの密接一体化ブロック2は、緯パイプ2A群のヘッダー主管1Aへの融着一体化時に、手作業で各緯パイプ2A相互を1本ずつ当節形態で形成しても良いが、典型的には、複数本(標準:3本)の緯パイプ2Aを並列当接形態の押出成形で準備する。
また、空気流横断用の間隔g2は、大きくすれば空気横断機能が大となるが、放熱面内への間隔g2の配置は、同時に、単位面積当りの緯パイプ2Aの配置本数の減少を招き、放熱量の低下を招くため、典型的には、緯パイプ2A群は、3本の一体ブロック2を間隔g2が5mmで配置する。
【0030】
従って、放熱パネル101,102は、空気流横断用間隔g2を適所に備え、且つ各緯パイプ2Aのブロック2内では、各緯パイプ2Aが隙間なく密集した形態であるため、緯パイプ2Aの密接配置による放熱量の増大の下に、放熱器内の上下貫通開口空間、即ち両パネル間空間、と放熱器外側との間の、間隔g2を介した空気の乱流出入によって、放熱表面の接面空気の動きが大となり、放熱部と周囲の空気との熱伝達を向上し、放熱器全体の対流熱放出効果が向上する。
しかも、間隔g2は、軽量な放熱器の吊下げ保持部位としても使用可能である。
【0031】
また、本発明の放熱器にあっては、図1に示す如く、第1放熱パネル101と第2放熱パネル102とは、放熱パネル間の空気流の上下貫流を保証する最小の間隔gpを備え、各パネル内のブロック2間の空気流横断用の間隔g2が、パネル間空間とパネル外面との間に乱気流の出入を許容する4〜6mmの小間隔であるのが好ましい。
【0032】
この場合、放熱パネル間の間隔gpは、両方の放熱パネルの各緯パイプ2A群面の相互の離間寸法である。
そして、パネル面間の間隔gpは、大であれば、放熱面で加熱された空気はスムーズな上昇流となるが、大きすぎると両加熱面の中央部への上下からの非加熱対向流を許容することとなり、小さければ、加熱空気のドラフト上昇を空気粘性によって抑制することとなる。
【0033】
また、ブロック2間の間隔g2は、パネル両間の間隔gp内とパネル外面との横断空気の出入流のための寸法であり、空気の加熱層と常温層の並行縦層間移動を許容するものであり、該寸法g2は、大であれば、横断空気流は大となるが、パネル面の単位寸法当りの緯パイプ2Aの配置本数は減少するため、ブロック2内の間隔g2は、4〜6mmの範囲であれば、緯パイプ2Aの単位寸法当りの配置本数の減少を抑え、且つパネル横断空気流の有効発生が得られる。
【0034】
従って、本発明の放熱器は、第1放熱パネル101と第2放熱パネル102のパネル面間がドラフト空気流の上下貫流を保障する形態を備え、且つ、縦パネル2Aの各ブロック2間が間隔g2を備えているため、パネル面間で発生したドラフト気流、即ち暖房時の上昇流及び冷房時の下降流と、パネル面両外側で発生する上昇流又は下降流とが、放熱表面に乱流を生起して、間隔g2を介してパネル表面の接面空気の動きを大きくして出入合流することとなり、緯パイプブロック2間の間隔g2の存在によって、間隔gpが小さくても、パネル面間スペースでの空気流澱みが解消出来、放熱器からの対流熱放散がスムーズとなり、対流熱伝達による放熱作用が向上する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の放熱器は、全プラスチック樹脂製であるため、軽量で、製作、運搬取付作業が容易である。
そして、ヘッダー主管1Aは、大径のパイプの側面に取付孔Ha群を備えた構造に単純化したため、射出成形型の製作が安価で容易となり、均質、且つ高品質のヘッダー主管1Aが準備出来る。
そして、放熱パネル101,102の製作も、押出成形で準備した緯パイプ2A群の、ヘッダー主管1Aへの嵌合融着接合での実施となるため、均質の放熱パネル101,102の製作が簡単、且つ低コストで実施出来る。
【0036】
そして、2枚の放熱パネルを重層形態で一体化した放熱器は、大径のヘッダー主管1Aを有する各ヘッダー1が両側部位となり、密集並列した緯パイプ2Aの放熱面の2枚は、ドラフト空気流の上下貫流を許容する等間隔gpのスペースが上下に開通した形態であるため、両放熱面間、即ち間隔gpのスペースは、加熱及び冷却空気流が澱むことなく、上下に貫流して、対流熱伝達が向上する。
【0037】
また、放熱器内の循環水経路も、第1放熱パネル101の一端のヘッダー上端の供給口1Sから、第2放熱パネル102の一端のヘッダー上端の排出口1Rへの経路を、第1及び第2放熱パネル共、各パネル内では、全緯パイプ2A群の水流が、各ヘッダー主管1Aからの流入→緯パイプ2A→各ヘッダー主管への流出共、ヘッダー主管1A内の上昇流で実施するため、供給口1Sから排出口1Rまでの、各パネル内での各緯パイプ2A毎の水経路長が同一で、各パネル面は、実質上均斉な発熱作用を奏する。
【0038】
しかも、放熱器の供給口1Sも、排出口1Rも、共に同一側のヘッダー主管1Aの上端に配置するため、天井配管等の上方配管と接続が一側で容易に実施出来ると共に、第1及び第2放熱パネルの最上端の緯パイプ2Aは、ヘッダー主管1Aの上昇流からの導入流で充満して流通するため、パネル最上端部位での空気溜りが抑制出来て、水流循環経路中の空気溜りの発生の無い、エアー抜き装置の付設の不要な放熱器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明放熱器の全体略示図であって、(A)は斜視図、(B)は縦断側面図、(C)は横断面図である。
【図2】本発明の放熱パネルの部分説明図であって、(A)はヘッダーの分解斜視図、(B)はヘッダー主管1Aと縦パイプの分解縦断面図、(C)は縦パイプブロックの断面図、(D)はヘッダー主管と緯パイプの関係構造断面図である。
【図3】本発明放熱パネルの部分拡大図であって、(A)は第1放熱パネルの一端ヘッダーの表面図、(B)は第2放熱パネルの他端ヘッダーの表面図である。
【図4】本発明の部分説明図であって、(A)は第1放熱パネルの一端のヘッダー主管に適用する挿入管1Cの斜視図、(B)は(A)の縦断側面図、(C)は第2放熱パネルの他端のヘッダー主管に適用する挿入管1Cの斜視図、(D)は(A)の変形例横断面図である。
【図5】本発明放熱器の説明図であって、(A)は左側面図、(B)は正面図、(C)は右側面図、(D)は裏面図である。
【図6】従来例1の説明図であって、(A)は1本タイプで形成した放熱パネルの正面図、(B)は並列パイプの放熱面正面図、(C)は(B)の要部拡大図、(D)は(B)の要部斜視図である。
【図7】従来例2の説明図であって、(A)は第1放熱パネルの正面図、(B)は放熱器の左側面図、(C)は放熱器の右側面図、(D)は第2放熱パネルの正面図である。
【図8】従来例3の説明図であって、(A)はヘッダーの一部横断平面図、(B)はヘッダーと縦パイプの関係構造縦断側面図、(C)は放熱パネルの部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔放熱器の構造(図1)〕
製作する放熱器の全体形状は、図1に示す如く、左右の外径27mmのヘッダー主管1A間に、外径d2が13mmの緯パイプ2A群を、露出長L2が946mmで、且つ各緯パイプ2A群は、3本1組の一体化密接形態のブロック2で、各ブロック2間の間隔g2が2mmで連通一体化した、全長L1が1000mm、全高h1が451mmの、同形状の第1放熱パネル101と第2放熱パネル102とを、第1放熱パネル101の緯パイプ2A群面と第2放熱パネル102の緯パイプ2A群面との間隔gpが18.5mmで、第1放熱パネル101のヘッダー主管1Aと第2放熱パネル102のヘッダー主管1Aとの隙間gsが4.5mmで、両放熱パネル101と102とを、上下左右の四隅で接合一体化して前後幅、即ち奥行きW1が58.5mmであり、放熱器の一端の、第1放熱パネルのヘッダー主管1Aの上端には供給口1Sを、第2放熱パネル102のヘッダー主管1Aの上端には排出口1Rを突設したものである。
【0041】
また、第1放熱パネル101の一端のヘッダー主管1A内には、図3(A)に示す如く、上端閉止板1F下面から最下端の緯パイプ2Aの下端面まで、流れ変換用の挿入管1Bを延出して、供給口1Sからの供給水が、挿入管1B内を下降して、下端の閉止板1Fと挿入管1Bとの隙間h4(標準:2mm)から挿入管1Bの外周に噴出して、ヘッダー主管1A内の挿入管1Bの外周域を上昇するようにする。
また、第2放熱パネル102の他端のヘッダー主管1A内にも、流れ変換用の挿入管1Cを配置し、第1放熱パネル101の他端のヘッダー主管1Aの上端と第2放熱パネル102の他端のヘッダー主管1A内の挿入管1Cとを連通パイプ片1Dで一体化したものである。
【0042】
〔放熱パネルの製作(図2、図3、図4)〕
第1放熱パネル101も第2放熱パネル102も、両側のヘッダー主管1A間に緯パイプ2A群を連通一体化した放熱パネル基体は、同一物である。
放熱パネル基体は、図2(A),(D)に示す如く、外径d1が27mmで、肉厚t1が5mmで、側面に緯パイプ2Aを嵌合一体化する取付孔Ha群を備えたヘッダー主管1Aを、ポリプロピレン、ランダム、コポリマー樹脂(PP−R樹脂)の射出成形で準備する。
【0043】
この場合、各取付孔Haは、孔径が、緯パイプ2Aの内径d3(9.8mm)と同寸の9.8mmで、外面から深さ(奥行き)2mmで、幅、即ち段差厚が、緯パイプ2Aの肉厚t2(1.6mm)と同厚の1.6mmの嵌合用段差孔Hbを備えたものであり、各取付孔Haの配置間隔は、緯パイプ2A群の配置間隔と整合させておく。
また、緯パイプ2Aとしては、外径d2が13mm、肉厚t2が1.6mmの緯パイプ2Aを、図2(C)の如く、3本密接形態のブロック2として、ポリプロピレン、ランダム、コポリマー樹脂(PP−R樹脂)で押出成形し、所定長さ、即ち露出長L2(946mm)+両端の嵌合寸法(4mm)に切揃えて準備する。
【0044】
次いで、ヘッダー主管1Aの取付孔Ha群に対して各緯パイプ2Aのブロック2の一端を、例えば、本件出願人が特願2010−188655号公報で提示した加熱融着機等で、加熱溶融接合で一体化し、緯パイプ2A群の他端も、同様にヘッダー主管1Aと嵌合融着し、両側のヘッダー主管1A間を、緯パイプ2Aが各ブロック2間の間隔g2が5mmの反復形態で連通一体化した、且つ各緯パイプ2Aの内周面が、図2(D)に示す如く、ヘッダー主管1Aの取付孔Haの内周面と面一で、緯パイプ先端2fが段差孔Hbに衝合して一体化した放熱パネル基体を得る。
【0045】
〔第1放熱パネル(図3(A)、図4(A),(B)〕
次いで、放熱パネル基体の一端(右側)のヘッダー主管1Aの上端には、上面に供給口1Sを突設し、下面に挿入管1Bを垂下した上端閉止板1Fで融着接合閉止する。
この場合、上端閉止板1Fは、図4(B)に示す如く、PP−R樹脂製で、肉厚t4が6mm、外径がヘッダー主管1Aの外径d1(27mm)と同径の閉止板1Fの中央上部に、PP−R樹脂製の外径d2が13mm、内径d3が9.8mmで、長さh2が50mmのパイプ片を、閉止板1F上面の深さ2mm、厚さ1.6mmの嵌合用段差孔Hcに融着立設し、該閉止板1Fの下面には、深さ2mm、厚さ1mmの嵌合用段差孔Hdを介して、外径d4が10mm、内径d5が8mm、長さh3が424mmの水流変換用の挿入管1Bを融着一体化連通し、供給口1Sと挿入管1Bとは閉止板1Fの中央部の傾斜孔Hsで連通し、且つ挿入管1Bは、図3(A)に示す如く、ヘッダー主管1A内を、最下端の緯パイプ2Aの下面レベルまで、且つ閉止板1F内面と、高さ2mm(h4)の水流噴出用スペースSを保つ形態に延出させておく。
【0046】
次いで、一端のヘッダー主管1A、即ち挿入管1Bを備えたヘッダー主管1Aの下端、及び他端のヘッダー主管1Aの上下端を肉厚t4が6mm、外径がヘッダー主管1Aと同径(27mm)の閉止板1Fで融着接合閉止して、第1放熱パネル101を得る。
【0047】
〔第2放熱パネル(図3(B)、図4(C))〕
また、第2放熱パネル102の製作は、放熱パネル基体の、一端(右側)のヘッダー主管1Aの上端には、供給口1Sと同一物の、パイプ片の排出口1Rを上方に連通突設した上端閉止板1Fを融着接合し、他端(左側)のヘッダー主管1Aの上端閉止板1Fから、下方に流れ変換用の挿入管1Cを、最下端の緯パイプ2Aの下面のレベルまで垂下し、該ヘッダー主管1Aの下端及び一端のヘッダー主管1Aの下端を閉止板1Fで融着閉止すれば良い。
【0048】
この場合、第2放熱パネル102の挿入管1Cは、第1放熱パネル101のそれと同径同寸であるが、図4(C)に示す如く、挿入管1Cは、上端閉止板1Fの下面の嵌合用孔H3に、挿入管1B同様に嵌合融着して、挿入管1C下端に水流噴出用スペースSを確保し、上端閉止板1Fの直下に、連通パイプ片1D用の挿入用孔H2を穿設し、ヘッダー主管1Aの挿入用孔H2の対応位置にも挿入用孔H2´を穿設しておく。
【0049】
〔放熱器Heの製作(図1、図5)〕
放熱器Heは、第1放熱パネル101と第2放熱パネル102の2枚を、図1(A),(C)に示す如く、上下左右の四隅で連結一体化固定すれば良く、第1放熱パネル101の他端(図1(A)の左側)のヘッダー主管1Aの、上端閉止板1Fの直下には、第2放熱パネル102の他端のヘッダー主管1Aの挿入用孔H2´に対向する、挿入用孔H2´と同径の連通パイプ片1D嵌合孔を穿設し、連通パイプ片1Dを、第1放熱パネル101の該嵌合孔と、第2放熱パネル102の挿入管1Cの挿入用孔H2とに連通して接合固定する。
【0050】
また、他の三隅の連結部は、ヘッダー主管1Aの対向表面間に、差し渡し状にスペーサーパイプ1Eを介して一体化する。
この場合、連通パイプ片1D及びスペーサーパイプ1Eの接合固着は、熱融着手段の適用も可能であるが、典型的には、セメダイン(株)製の、下地調整用プライマー(商品番号:PP7F)を接合部に塗布して、一液常温速硬化型接着剤のスーパーX NO.8088ホワイト(商品名)を用いて実施する。
【0051】
この場合、前後放熱パネル間の間隔は、図1(C)の如く、ヘッダー主管1A間の間隔gsが4.5mmで一体化すれば、第1放熱パネル101の緯パイプ2A群と第2放熱パネル102の緯パイプ2A群との対向内面間の間隔gpが18.5mmとなり、放熱器Heは、同一形状の2枚の放熱パネル101と102が重層形態で、全横長L1が1000mm、緯パイプ2Aの露出長L2が946mm、前後幅W1が58.5mm、供給口1S及び排出口1Rを含めた高さが500mmのものとなる。
【0052】
〔完成放熱器〕
得られた放熱器は、図5に示す如く、第1放熱パネル101の上方突出パイプ片の供給口1Sから温水(標準:60℃)又は冷却水(標準:14℃)を圧送供給すれば、供給水流f1は、供給口1Sと連通する流れ変換用の挿入管1B内の下降流f2となって右側(一端)ヘッダー主管1Aの中心を流下し、最下端の緯パイプ2Aの下面で、挿入管1B下端からヘッダー主管1A内へ噴流してヘッダー主管1A内の上昇流f3及び緯パイプ2A群の横流f4となって他端(右側)のヘッダー主管1A内の上昇流f5から連通パイプ片1Dの横流f6で第2放熱パネル102内に入り、第2放熱パネル102内を、挿入管1C内の下降流F7→ヘッダー主管1A内の上昇流f8→緯パイプ2A内横流f9→右側(一端)ヘッダー主管1A内の上昇流f10→排出流f11の経路で循環流出する。
【0053】
従って、供給口1Sから排出口1Rまでの、全緯パイプ2Aのそれぞれの経路は、長さが同一であって、全緯パイプ2A内を横流が充満通水するため、第1放熱パネル101も第2放熱パネル102も、実質上、全面均斉な加熱又は冷却の発熱作用を奏する。
そして、水流経路中の空気溜りの生じ易い、最上部の緯パイプ2A内は、ヘッダー主管1Aからの一斉上昇流f3,f8で充満されて空気溜りが抑制され、排出口1Sが放熱器の最上部に存在するため、放熱器の稼働中は、放熱器内に空気溜りが生じない。
【0054】
また、放熱器Heは、前後厚さW1が58.5mmで薄く、高さh1が451mmと小さく、横長(1000mm)であって、2枚の放熱パネルのパネル間の間隔(gp)が18.5mmの重層タイプであること、各緯パイプ2Aが3本一体のブロック2の形態で各ブロック間に間隔5mm(g2)を保持したため、2枚の放熱パネルの間隔内は、澱みなく上下貫流を発揮し、ブロック2間の横方向間隔g2(5mm)が、2枚のパネル間内とパネル外側との、空気流の乱流出入を生じ、緯パイプ2A面の接面空気(境界層)を大きく動かして、周囲空気への対流熱伝達が向上する。
【0055】
尚、本実施例の放熱器Heは、現在、高性能放熱器として評価されている従来例2(図7)の放熱器と、北海道立工業試験場で、発熱量の比較試験をした結果、本件放熱器は、発熱量51%増の結果が得られた。
従って、本願実施例で得られる放熱器は、例えば、建物の間仕切壁に吊下げ形態で配置して、天井配管と接続すれば、放熱器He内には空気溜りが生じない、即ち空気抜きメンテナンスが不要な、発熱量の大きな暖冷房システムの構築が可能となる。
【0056】
〔ヘッダー内流水変換の変形例(図4(D))〕
図4(D)は、図4(A),(C)の実施例に示す、挿入管配置ヘッダー主管1Aに対する変形例横断面図である。
即ち、ヘッダー主管1A´として、流水仕切片1Pを一体化成形して、流水仕切片1Pの下端を、ヘッダー主管1A´の下端に対して、流れ変換用スペース(標準:2mm)を保った上方位置とし、流水仕切片1Pで分割された管路の一半PAに、供給口1S又は連通パイプ片1Dを接続し、分割管路の他半PBを緯パイプ2A群と連通させれば、変形ヘッダー主管1A´は、実施例のヘッダー主管1Aに流れ変換用の、挿入管1B又は挿入管1Cを配置したヘッダー主管1Aと同効機能を奏し、発明の所期の目的が達成出来る。
【符号の説明】
【0057】
1 ヘッダー
1A,1A´ ヘッダー主管
1B,1C 挿入管
1D 連通パイプ片
1E スペーサーパイプ
1F 閉止板
1P 流水仕切片
1R 排出口
1S 供給口
2 緯パイプブロック(ブロック)
2A 緯パイプ
101 第1放熱パネル
102 第2放熱パネル
He 放熱器
Ha 取付孔
Hb,Hc,Hd 嵌合用段差孔
Hs 傾斜孔
H2,H2´ 挿入用孔
S 水流噴出用スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック樹脂製の左右のヘッダー(1)間に、プラスチック樹脂製で同径同長の放熱用緯パイプ(2A)群を密集並列連通した、第1放熱パネル(101)と、第2放熱パネル(102)との2枚を、重層形態で一体化連通した全プラスチック樹脂製放熱器であって、第1及び第2放熱パネルは、ヘッダー(1)の、大径の主管(1A)の側面の取付孔(Ha)群に小径の緯パイプ(2A)群が嵌合連通して、緯パイプ(2A)群が両側のヘッダー(1)と連通し、第1放熱パネル(101)の一端のヘッダー(1)の上端には供給口(1S)を、第2放熱パネル(102)の一端のヘッダー(1)の上端には排出口(1R)を備え、第1及び第2放熱パネルの全緯パイプ(2A)群の水流は、各ヘッダー主管(1A)からの流入、各ヘッダー主管(1A)への流出共、ヘッダー主管(1A)内の上昇流で実施する、全プラスチック樹脂製暖冷房放熱器。
【請求項2】
第1放熱パネル(101)の他端のヘッダー主管(1A)の上端と、第2放熱パネル(102)の他端のヘッダー主管(1A)上端とが、連通パイプ片(1D)で連通し、第1放熱パネル(101)の一端のヘッダー主管(1A)及び第2放熱パネル(102)の他端のヘッダー主管(1A)が、上端から流入する下降流を下端で上端への上昇流に変換して各緯パイプ(2A)に供給する、請求項1に記載の放熱器。
【請求項3】
第1放熱パネル(101)の一端のヘッダー主管(1A)は、上端から最下端の緯パイプ(2A)下面レベルまでの流れ変換用の挿入管(1B)を備え、第2放熱パネル(102)の他端のヘッダー主管(1A)は、上端から最下端の緯パイプ(2A)下面レベルまでの流れ変換用の挿入管(1C)を備え、且つ、挿入管(1C)は、第1放熱パネル(101)の他端のヘッダー主管(1A)と、上部で連通パイプ片(1D)で連通している、請求項2に記載の放熱器。
【請求項4】
第1放熱パネル(101)の一端のヘッダー主管(1A)及び第2放熱パネル(102)の他端のヘッダー主管(1A)は、流水仕切片(1P)を最下端の緯パイプ(2A)の下面レベルまで備えており、且つ第2放熱パネル(102)の他端のヘッダー主管(1A)の流水仕切片(1P)で区画された一半の下降用流路の上端と、第1放熱パネル(101)の他端のヘッダー主管(1A)とが、連通パイプ片(1D)で連通している、請求項2に記載の放熱器。
【請求項5】
第1及び第2放熱パネル(101,102)は、複数本数の密接一体化した緯パイプ(2A)のブロック(2)を、空気流横断用の間隔(g2)を介在して反復配置した、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放熱器。
【請求項6】
第1放熱パネル(101)と第2放熱パネル(102)とは、放熱パネル間の空気流の上下貫流を保証する最小の間隔(gp)を備え、各パネル内のブロック(2)間の空気流横断用の間隔(g2)が、パネル間空間とパネル外面との間に乱気流の出入りを許容する4〜6mmの小間隔である、請求項3に記載の放熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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