説明

内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造

【課題】簡単な構造でありながら、携帯用光源装置を内視鏡に確実に着脱でき、しかも確実に装着されたか否かを目視により確認できる内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造を得る。
【解決手段】内視鏡10に形成した係合凹部18を有する光源接続筒状部15と、光源接続筒状部に挿脱される発光挿入部29を有する携帯用光源装置20と、携帯用光源装置の外周面に回動可能として枢着されかつ接近する方向に回転付勢された回転挟持部材33と、回転挟持部材に形成した、発光挿入部を光源接続筒状部に挿入したときに係合凹部と係脱可能な係合突起35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用光源装置を着脱可能な携帯型の内視鏡の従来例としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
この内視鏡1の操作部3の側面には雄ねじ部3cが設けてあり、携帯用光源装置(バッテリ型光源)5はこの雄ねじ部3cに螺合可能な取付けネジ24を具備している。
従って、携帯用光源装置5の取付けネジ24を内視鏡1の雄ねじ部3cに螺合すれば、携帯用光源装置5を内視鏡1に装着することができる。
【特許文献1】特許第3708387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のように携帯用光源装置5の取付けネジ24を内視鏡1の雄ねじ部3cに螺合する作業及び螺合を解除する作業は決して容易ではなく、特に術者が補助者をおかずに一人で内視鏡1を操作する場合は確実に螺合及び解除を行うのが難しい。
さらに、携帯用光源装置5の取付けネジ24と内視鏡1の雄ねじ部3cが確実に螺合しているか否かを目視により確認するのも容易でなかった。
【0004】
本発明は、簡単な構造でありながら、携帯用光源装置を内視鏡に確実に着脱でき、しかも確実に装着されたか否かを目視により確認できる内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造は、内視鏡に形成した光源接続筒状部と、該光源接続筒状部の外周面に凹設した環状の係合凹部と、上記光源接続筒状部に挿脱される発光挿入部を有する携帯用光源装置と、上記携帯用光源装置の外周面に該携帯用光源装置の中心軸線に対して接離する方向に回動可能として枢着され、かつ接近する方向に回転付勢された回転挟持部材と、該回転挟持部材に形成した、上記発光挿入部を上記光源接続筒状部に挿入したときに上記係合凹部と係脱可能な係合突起と、を備えることを特徴としている。
【0006】
複数の上記回転挟持部材を周方向に等角度間隔で設けるのが好ましい。
【0007】
本発明の内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造は別の態様によると、内視鏡に形成した光源接続筒状部と、該光源接続筒状部の外周面に凹設した係合凹部と、上記光源接続筒状部に挿脱される発光挿入部を有する携帯用光源装置と、上記携帯用光源装置の外周面に該携帯用光源装置の中心軸線に対して接離する方向に回動可能として枢着され、かつ接近する方向に回転付勢された回転挟持部材と、該回転挟持部材に形成した、上記発光挿入部を上記光源接続筒状部に挿入したときに上記係合凹部と係脱可能な係合突起と、を備えることを特徴としている。
【0008】
複数かつ互いに同数の上記回転挟持部材及び上記係合凹部を、周方向に同じ角度間隔で設けるのが好ましい。
【0009】
上記回転挟持部材は、その中間部が上記携帯用光源装置に枢着されており、該回転挟持部材の一端に上記係合突起を有し、上記回転挟持部材の上記一端と反対側の端部に該回転挟持部材を回転操作するための被押圧部を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明によると、携帯用光源装置に設けた回転挟持部材をその係合突起が光源接続筒状部の係合凹部から離れる方向に回転させた状態で、内視鏡に形成した光源接続筒状部に携帯用光源装置に形成した発光挿入部を挿入し、回転挟持部材から手を離せば、回転挟持部材の係合突起が自動的に対応する係合凹部と係合する。従って、内視鏡に携帯用光源装置を簡単に取り付けることができる。
さらに、回転挟持部材の係合突起が光源接続筒状部の係合凹部に係合した状態で、回転挟持部材を回転させてその係合突起を光源接続筒状部の係合凹部から脱出させれば、発光挿入部を光源接続筒状部の軸線方向に移動させることにより、携帯用光源装置を内視鏡から簡単に取り外すことができる。
しかも、携帯用光源装置の光源接続筒状部に対する相対位置を目視により確認できるので、術者(作業者)は携帯用光源装置と内視鏡の接続状態を容易に把握することができる。
さらに、本発明の着脱構造は簡単な構造なので、低コストで実現できる。
【0011】
請求項2または4のように構成すれば、回転挟持部材の係合突起と光源接続筒状部の係合凹部を強固に結合することが可能になる。
【0012】
また、請求項3のように構成した場合も、各係合凹部と各係合突起の周方向位置を合わせれば、回転挟持部材の係合突起を簡単に対応する係合凹部と係脱させることができる。
【0013】
請求項5のように構成すれば、回転挟持部材の回転操作をより簡単に行えるようになるので、内視鏡と携帯用光源装置の着脱作業をより一層容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の内視鏡10は医療用の携帯型の内視鏡であり、操作者が把持する操作部11と、操作部11から前方に延出する可撓性のある挿入部12と、操作部11の後端部に連続する接眼部13と、を備えている。挿入部12の先端面には図示を省略した照明用レンズと対物レンズが設けてあり、操作部11及び挿入部12の内部にはその先端が照明用レンズに接続する導光ファイバ14と、その先端が対物レンズに接続し後端が接眼部13に接続するイメージガイドファイバ(図示略)が配設してある。後術するランプ27から導光ファイバ14に光が供給されると、この光は導光ファイバ14及び照明用レンズを介して挿入部12の先端面から外部に照射される。さらに、対物レンズで被写体(患者の患部等)を観察すると、この被写体像が対物レンズ及びイメージガイドファイバを介して接眼部13に伝わるので、術者は接眼部13を覗くことにより被写体像を観察できる。
【0015】
図示するように操作部11の側面には端部が開口する筒状の光源接続筒状部15が突設してある。図2及び図3に示すように、光源接続筒状部15の内部空間の底部には導光ファイバ14の端部に接続する集光レンズL1が設けてある。
図示するように、光源接続筒状部15の開口端部の外周部には環状の鍔部17が突設してあり、さらに光源接続筒状部15の外周面には光源接続筒状部15の軸線を中心とする環状の係合凹部18が凹設してある。
【0016】
光源接続筒状部15に着脱される携帯用光源装置20は、図2及び図3に示すように中空の筒状体である。携帯用光源装置20は大きな構成要素として基部21と、基部21の開口端部に着脱自在な蓋部22と、を有している。
基部21は、レンズ保持筒24、中間筒部25及び大径筒部26という大きな3つの構成部材を備えている。レンズ保持筒24はその内周面に3枚のレンズからなる集光レンズL2を保持する筒状部材である。中間筒部25は中空の筒状部材であり、その内周面の先端部でレンズ保持筒24を嵌合保持しており、さらにその内部空間にはランプ27が設けてある。図示するように、中間筒部25は基部28と、基部28より小径の挿入部(発光挿入部)29と、を有している。基部28の外径は光源接続筒状部15の内径より大きいが、挿入部(発光挿入部)29の外径は光源接続筒状部15の内径より小さい。
【0017】
さらに、基部28の外周面に周方向に等角度間隔で凹設した一対の凹部30には、基部28の外周面の接線方向に延びる枢着軸31が固定してあり、各枢着軸31には回転挟持部材33の内側面の中央部に形成した枢着孔34が回転可能に嵌合している(一対の回転挟持部材33は周方向に180°間隔で設けられている)。各回転挟持部材33の内周面の先端部には係合凹部18と係脱可能な係合突起35が突設してあり、さらに各回転挟持部材33の反対側の端部は曲折された被押圧部36となっている。図示するように、各枢着軸31にはその両端部が回転挟持部材33と中間筒部25の凹部30とにそれぞれ弾性接触する捻りコイルばねSが巻かれている。従って、各回転挟持部材33は携帯用光源装置20の中心軸線(図示略)に接離する方向に回動可能であり、さらに捻りコイルばねSの付勢力によってその係合突起35が該中心軸線に接近する方向に回転付勢されている。
大径筒部26の内部には乾電池Bを収納するための電池収納空間38が形成してあり、電池収納空間38の一方の端部には乾電池Bの陰極と接触する陰極側電気接片39が設けてある。この陰極側電気接片39はランプ27の陰極と電気的に接続している。
【0018】
蓋部22の内部には、蓋部22を大径筒部26に装着したときに乾電池Bの陽極と接触する陽極側電気接片40が設けてある。さらに蓋部22の内部には、陽極側電気接片40及びランプ27の陽極と接続する内部スイッチ41が設けてある。この内部スイッチ41は、そのボタン42が一回押し込まれるごとに、ランプ27の陽極と陽極側電気接片40の間の電気の流れを許容するON状態と、ランプ27の陽極と陽極側電気接片40の間の電気の流れを遮断するOFF状態とに切り替わる。蓋部22の開口部には、弾性変形自在なゴムからなる弾性カバー43が嵌合固定してあり、術者がこの弾性カバー43を指で内部スイッチ41側に弾性変形させると、弾性カバー43を介してボタン42が押し込まれるようになっている。従って、術者が指で弾性カバー43を介してボタン42を一回押し込むごとに、内部スイッチ41がON状態とOFF状態に切り替わる。
【0019】
次に内視鏡10と携帯用光源装置20の着脱要領及び、装着時における携帯用光源装置20の使用要領について説明する。
最初に携帯用光源装置20の内視鏡10への装着要領について説明する。
まず、基部21から蓋部22を取り外した状態で基部21の電池収納空間38に乾電池Bを収納し、その後に基部21(大径筒部26)に蓋部22を接続する。図2の仮想線で示すように、一対の回転挟持部材33は捻りコイルばねSの回転付勢力によってその係合突起35が中間筒部25の外周面に当接しているので、手の指で回転挟持部材33の被押圧部36を押圧して一対の回転挟持部材33を被押圧部36が大径筒部26の外周面に当接するまで回転させる(図2参照)。この状態で携帯用光源装置20のレンズ保持筒24及び中間筒部25を光源接続筒状部15内に挿入し、図3に示すように基部28の端面を光源接続筒状部15の端面に当接させる。
このように基部28の端面が光源接続筒状部15の端面に当接したら、一対の回転挟持部材33から指を離す。すると、図3に示すように捻りコイルばねSの回転付勢力によって一対の回転挟持部材33が回転し、各係合突起35が係合凹部18にそれぞれ自動的に係合するので、携帯用光源装置20が光源接続筒状部15から抜け出すのが防止される。
この状態で、携帯用光源装置20の弾性カバー43を一回押し込めば、ボタン42が押し込まれることにより内部スイッチ41がOFF状態からON状態に切り替わるのでランプ27が点灯する。ランプ27で発生した光は集光レンズL2及び集光レンズL1を介して導光ファイバ14に伝わり、内視鏡10の挿入部12の先端に設けた上記照明用レンズから外部に照射される。
【0020】
次に、携帯用光源装置20の内視鏡10からの取り外し要領について説明する。
この場合は術者が手で一対の回転挟持部材33の被押圧部36を再度押圧し、回転挟持部材33を図2の実線の位置まで回転させる。すると、各係合突起35が係合凹部18から脱出するので、携帯用光源装置20を光源接続筒状部15に対して図3の右側にスライドさせれば、携帯用光源装置20を光源接続筒状部15から簡単に抜き取ることができる。
【0021】
以上説明したように本実施形態によれば、携帯用光源装置20を光源接続筒状部15に対して簡単に着脱できるので、仮に術者が補助者を伴わずに一人で診察を行う場合であっても、術者は携帯用光源装置20を内視鏡10に簡単かつ円滑に着脱できる。
しかも、術者は一対の回転挟持部材33の係合突起35が係合凹部18に嵌合しているか否かを目視により確認できるので、術者は携帯用光源装置20と内視鏡10の接続状態を容易に把握することができる。
さらに、本発明の内視鏡10と携帯用光源装置20の取付構造は簡単な構造なので、低コストで実現することができる。
【0022】
さらに、一対の回転挟持部材33を周方向に等角度(180°)間隔で設けたので、係合突起35が係合凹部18に係合すると光源接続筒状部15は一対の回転挟持部材33によって反対方向から挟持されることになる。そのため、回転挟持部材33による光源接続筒状部15の保持状態は安定する。
しかも、回転挟持部材33の係合突起35が係合凹部18に弾性的に係合するので、携帯用光源装置20と光源接続筒状部15のがたつきが防止される。
さらに、係合凹部18は光源接続筒状部15の全周に渡って形成された凹部なので、携帯用光源装置20と光源接続筒状部15の相対回転位置がどのような位置であっても、一対の回転挟持部材33の係合突起35を係合凹部18に確実に係合させることができる。
また、回転挟持部材33に被押圧部36を形成したので回転挟持部材33の回転操作は容易である。
【0023】
以上、上記実施形態を利用して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、光源接続筒状部15に環状の係合凹部18を設ける代わりに、光源接続筒状部15に周方向に等角度間隔で一対の非連続の係合凹部(図示略)を凹設し、各係合凹部に一対の回転挟持部材33の係合突起35をそれぞれ係脱させてもよい。
さらに、光源接続筒状部15に環状の係合凹部18を設ける場合も互いに非連続の係合凹部を形成する場合も、回転挟持部材33の数は2つでなく、一つ(この場合、非連続の係合凹部は一つでよい)、あるいは3つ以上の複数であってもよい。回転挟持部材33を3つ以上設ける場合の各回転挟持部材33の取付位置(さらに、光源接続筒状部15に非連続の係合凹部を回転挟持部材33と同数形成する場合は各係合凹部の形成位置も)は周方向に等角度間隔であることが望ましい。
さらに、本実施形態の内視鏡10は医療用の内視鏡であるが、工業用の内視鏡等、用途の異なる内視鏡に適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の内視鏡の全体図である。
【図2】光源接続筒状部から携帯用光源装置を取り外したときの横断平面図である。
【図3】光源接続筒状部に携帯用光源装置を装着したときの横断平面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 内視鏡
11 操作部
12 挿入部
13 接眼部
14 導光ファイバ
15 光源接続筒状部
17 鍔部
18 係合凹部
20 携帯用光源装置
21 基部
22 蓋部
24 レンズ保持筒
25 中間筒部
26 大径筒部
27 ランプ
28 基部
29 挿入部(発光挿入部)
30 凹部
31 枢着軸
33 回転挟持部材
34 枢着孔
35 係合突起
36 被押圧部
38 電池収納空間
39 陰極側電気接片
40 陽極側電気接片
41 内部スイッチ
42 ボタン
43 弾性カバー
B 乾電池
L1 集光レンズ
L2 集光レンズ
S 捻りコイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡に形成した光源接続筒状部と、
該光源接続筒状部の外周面に凹設した環状の係合凹部と、
上記光源接続筒状部に挿脱される発光挿入部を有する携帯用光源装置と、
上記携帯用光源装置の外周面に該携帯用光源装置の中心軸線に対して接離する方向に回動可能として枢着され、かつ接近する方向に回転付勢された回転挟持部材と、
該回転挟持部材に形成した、上記発光挿入部を上記光源接続筒状部に挿入したときに上記係合凹部と係脱可能な係合突起と、
を備えることを特徴とする内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造において、
複数の上記回転挟持部材を周方向に等角度間隔で設けた内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造。
【請求項3】
内視鏡に形成した光源接続筒状部と、
該光源接続筒状部の外周面に凹設した係合凹部と、
上記光源接続筒状部に挿脱される発光挿入部を有する携帯用光源装置と、
上記携帯用光源装置の外周面に該携帯用光源装置の中心軸線に対して接離する方向に回動可能として枢着され、かつ接近する方向に回転付勢された回転挟持部材と、
該回転挟持部材に形成した、上記発光挿入部を上記光源接続筒状部に挿入したときに上記係合凹部と係脱可能な係合突起と、
を備えることを特徴とする内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造。
【請求項4】
請求項3記載の内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造において、
複数かつ互いに同数の上記回転挟持部材及び上記係合凹部を、周方向に同じ角度間隔で設けた内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造において、
上記回転挟持部材は、その中間部が上記携帯用光源装置に枢着されており、
該回転挟持部材の一端に上記係合突起を有し、
上記回転挟持部材の上記一端と反対側の端部に該回転挟持部材を回転操作するための被押圧部を備える内視鏡と携帯用光源装置の着脱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−142145(P2008−142145A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330077(P2006−330077)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】