説明

内視鏡の操作レバーの連結固定構造

【課題】回転軸に対して操作レバーを、操作部の分解性を損なうことなく強固に安定した状態に連結固定することができる内視鏡の操作レバーの連結固定構造を提供すること。
【解決手段】回転軸7の突端部71が、突端側へ次第に窄まった斜面(72)を有する台形状に形成されると共に、回転軸突端部71の斜面壁72に当接する斜面52を有する非円形状の嵌め合い孔51が操作レバー5に形成されて、嵌め合わせ状態において、操作レバー5の突端側表面5aより回転軸7の突端面71aが潜った状態になるように構成され、操作レバー5の突端側表面5aに配置されたワッシャ8に外方から通された有頭ビス9を、回転軸7の突端面71aに形成されたねじ孔74に締め込むことにより、ワッシャ8が有頭ビス9の頭部で押圧されて弾性変形し、その状態で操作レバー5が回転軸7に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の操作部に設けられた回転軸の突端部に操作レバーがビス止めにより連結固定された内視鏡の操作レバーの連結固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部の先端近傍に設けられた湾曲部を手元側の操作部からの遠隔操作で屈曲させる操作を行うために、操作部に設けられた回転軸の突端部に湾曲操作レバーが取り付けられており、操作部を分解修理する際の必要性等から、湾曲操作レバーは回転軸の突端部にビス止めにより連結固定された構成になっている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2005−160791
【特許文献2】特開2000−126119
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7は従来の内視鏡の操作レバーの連結固定構造の一例を示しており、内視鏡の操作部90に設けられた回転軸91の突端面にネジ孔92が形成されて、そこに湾曲操作レバー93が固定ビス94で押圧固定されている。
【0004】
しかし、回転軸91には図示されていない湾曲操作ワイヤを牽引するための大きな力が作用するだけでなく、回転軸91が図示されていないストッパにぶつかってそれ以上の回転が規制された状態になっても、湾曲操作レバー93に大きな操作力が加えられる場合がある。
【0005】
そのため、回転運動方向に対して垂直方向に作用する固定ビス94の押圧力だけで湾曲操作レバー93を回転軸91に固定する図7の構成では、すぐにガタつきが発生してしまう場合がある。
【0006】
また、図8は従来の内視鏡の操作レバーの連結固定構造の他の例を示しており、回転軸91の突端面に底側へ次第に幅が狭まった溝95が形成され、湾曲操作レバー93側も溝95にピッタリ嵌まり込む台形状に形成されて、皿ビス96により湾曲操作レバー93が回転軸91に押圧固定されている。
【0007】
しかしそのような構成を採ると、例えば湾曲操作レバー93で回転軸91を回転限界位置以上に回転させようとする力が作用したとき等には、溝95側から湾曲操作レバー93が受ける反力によって皿ビス96を斜め上に持ち上げる力が発生するため、皿ビス96が緩んで湾曲操作レバー93が回転軸91に対してガタついた状態になってしまい易い。
【0008】
また、図9に示されるように、溝95が形成された回転軸91の突端部分が湾曲操作レバー93側から受ける力で広がった状態に塑性変形してしまうことにより、操作部カバー97を取り外せなくなって操作部90が分解不能になってしまう場合がある。
【0009】
そこで本発明は、回転軸に対して操作レバーを、操作部の分解性を損なうことなくビス止めにより強固に安定した状態に連結固定することができる内視鏡の操作レバーの連結固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の操作レバーの連結固定構造は、内視鏡の操作部に設けられた回転軸の突端部に操作レバーがビス止めにより連結固定された内視鏡の操作レバーの連結固定構造において、回転軸の突端部が、軸線に垂直な断面における断面形状が非円形であって側方から見て突端側へ次第に窄まった斜面を有する台形状に形成されると共に、その回転軸突端部の斜面壁に当接する斜面を有していて回転軸突端部に嵌め合わされる非円形状の嵌め合い孔が操作レバーに形成されて、回転軸突端部と嵌め合い孔とが、互いに嵌め合わせたときに操作レバーの突端側表面より回転軸の突端面が潜った状態になるように形成され、操作レバーの突端側表面には嵌め合い孔内に入らない大きさに形成されたワッシャが配置されて、ワッシャに外方から通された有頭ビスを回転軸の突端面に形成されたねじ孔に締め込むことにより、ワッシャが有頭ビスの頭部で押圧されて弾性変形し、その状態で操作レバーが回転軸に固定されるようにしたものである。
【0011】
なお、回転軸突端部と嵌め合い孔の軸線に垂直な断面における断面形状が各々、平行な二辺を有する形状に形成されていてもよく、回転軸突端部と嵌め合い孔の軸線に垂直な断面における断面形状が各々、略小判形又は矩形状に形成されていてもよい。また、有頭ビスが複数設けられて、その数に対応する数だけワッシャにビス通し孔が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転軸突端部の斜面壁と嵌め合い孔の斜面との圧接面にワッシャの弾性変形によるテンションが常に作用して、その圧接面に強い摩擦力が継続的に加わるので、操作レバーが回転軸に強固に連結固定された状態が安定して維持される。そして、修理等の際には、有頭ビスを緩めることにより、回転軸から操作レバーを外す等の分解作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
内視鏡の操作部に設けられた回転軸の突端部に操作レバーがビス止めにより連結固定された内視鏡の操作レバーの連結固定構造において、回転軸の突端部が、軸線に垂直な断面における断面形状が非円形であって側方から見て突端側へ次第に窄まった斜面を有する台形状に形成されると共に、その回転軸突端部の斜面壁に当接する斜面を有していて回転軸突端部に嵌め合わされる非円形状の嵌め合い孔が操作レバーに形成されて、回転軸突端部と嵌め合い孔とが、互いに嵌め合わせたときに操作レバーの突端側表面より回転軸の突端面が潜った状態になるように形成され、操作レバーの突端側表面には嵌め合い孔内に入らない大きさに形成されたワッシャが配置されて、ワッシャに外方から通された有頭ビスを回転軸の突端面に形成されたねじ孔に締め込むことにより、ワッシャが有頭ビスの頭部で押圧されて弾性変形し、その状態で操作レバーが回転軸に固定される。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図6は本発明が適用される内視鏡の全体構成の一例を示しており、体内に挿入される可撓性の挿入部1の先端近傍部分に、遠隔操作によって屈曲する湾曲部2が形成され、観察窓等が配置された先端部本体3が湾曲部2の先端に連結されている。
【0015】
挿入部1の基端に連結された操作部4には、湾曲部2を屈曲操作するための湾曲操作レバー5が回動自在に配置されており、湾曲操作レバー5を回動操作することにより湾曲操作ワイヤ6が牽引されて湾曲部2が屈曲する。
【0016】
湾曲操作レバー5は、操作ワイヤ6の基端が連結されたプーリ(図示せず)を回転駆動するように操作部4に回転自在に配置された回転軸7の突端に、ワッシャ8を介して二本の有頭ビス9で着脱自在に連結固定されている。
【0017】
図1は、回転軸7に対する湾曲操作レバー5の固定部分の分解斜視図、図2は、二本の有頭ビス9を結ぶ線分に対して直交する断面の縦断面図、図3は、二本の有頭ビス9を含む断面の縦断面図である。
【0018】
回転軸7の突端部(回転軸突端部71)は、図1に示されるように、軸線に対して垂直な断面の断面形状が略小判形に形成されている。ただし、回転軸突端部71の断面形状は非円形であればよく、矩形等のように平行な二辺を有するものであればより好ましい。
【0019】
図2に示されるように、回転軸突端部71は側方(小判形の長手方向)から見て突端側へ次第に窄まった斜面を有する台形状に形成されている。図1等に示される72がその斜面壁である。この実施例においては、軸線に対して垂直な断面の断面形状が略小判状をなす回転軸突端部71の平行な二辺を構成する側壁が斜面壁72になっている。
【0020】
回転軸7の突端面71aには、有頭ビス9が螺合する二つのねじ孔74が、二つの斜面壁72と平行な中心線上に並んで形成されている。なお、図4にも示されるように、二つのねじ孔74のうちの一方は縁部が一部欠けているが、これは、回転軸7の径を極力細く形成した結果によるものであり、回転軸7を少々太く形成すれば、ねじ孔74の縁部を切り欠く必要はない。
【0021】
湾曲操作レバー5には、回転軸突端部71に嵌め合わされる嵌め合い孔51が形成されている。嵌め合い孔51は、回転軸突端部71の形状に対応した形状の非円形状に形成されて、嵌め合い孔51の平行な二辺を構成する側壁が、回転軸突端部71の斜面壁72に当接する斜面52になっている。なお、図5は湾曲操作レバー5の裏面5b側から嵌め合い孔51を見た状態を示している。
【0022】
そのような回転軸突端部71と嵌め合い孔51との寸法関係は、図2及び図3に示されるように、回転軸突端部71と嵌め合い孔51とを互いに嵌め合わせて、回転軸突端部71の斜面壁72に嵌め合い孔51の斜面52をピッタリと当接させたときに、回転軸7の突端面71aが湾曲操作レバー5の突端側表面5aより下に潜って両面の間に隙間10ができるように設定されている。
【0023】
図1に戻って、ワッシャ8は、弾性体である例えばステンレス鋼板等を素材として、嵌め合い孔51内に入らない径の円形状に形成されており、回転軸7の突端面71aに形成されたねじ孔74と対応する位置に二つのビス通し孔81が穿設されている。なお、ワッシャ8を円形以外の形状に形成しても差し支えない。
【0024】
そして、図2及び図3に示されるように、二本の有頭ビス9がビス通し孔81に通されてねじ孔74にきつく締め込まれ、それによってワッシャ8が有頭ビス9の頭部で押圧されて隙間10内方向に弾性変形し、その状態で湾曲操作レバー5が回転軸7に固定されている。なお、有頭ビス9が二本取り付けられていることにより、湾曲操作レバー5が回転軸7の軸線周りに回転操作されたとき、有頭ビス9が一本の場合より有頭ビス9に緩みが発生し難い。
【0025】
このように構成された実施例の内視鏡の操作レバーの連結固定構造においては、回転軸突端部71の斜面壁72と嵌め合い孔51の斜面52との圧接面にワッシャ8の弾性変形によるテンションが常に作用して、斜面壁72と斜面52との間に強い摩擦力が継続的に加わるので、湾曲操作レバー5が回転軸7に強固に連結固定された状態が安定して維持される。そして、修理等の際には、有頭ビス9を緩めることにより、回転軸7から湾曲操作レバー5を外す等の分解作業を容易に行うことができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば有頭ビス9は皿ビス等であってもよく、本発明を、処置具起上操作レバー等のように湾曲操作レバー以外の操作レバーの連結固定部分に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の操作レバーの連結固定構造の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例の二本の有頭ビスを結ぶ線分に対して直交する断面の縦断面図である。
【図3】本発明の実施例の二本の有頭ビスを含む断面の縦断面図である。
【図4】本発明の実施例の回転軸の単体斜視図である。
【図5】本発明の実施例の湾曲操作レバーを裏面側から見た状態の斜視図である。
【図6】本発明が適用される内視鏡の一例の外観図である。
【図7】従来の内視鏡の操作レバーの連結固定構造の一例の断面図である。
【図8】従来の内視鏡の操作レバーの連結固定構造の他の例の断面図である。
【図9】従来の内視鏡の操作レバーの連結固定構造で生じる不具合の状態を例示する断面図である。
【符号の説明】
【0028】
5 湾曲操作レバー
5a 突端側表面
7 回転軸
8 ワッシャ
9 有頭ビス
10 隙間
51 嵌め合い孔
52 斜面
71 回転軸突端部
71a 突端面
72 斜面壁
74 ねじ孔
81 ビス通し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の操作部に設けられた回転軸の突端部に操作レバーがビス止めにより連結固定された内視鏡の操作レバーの連結固定構造において、
上記回転軸の突端部が、軸線に垂直な断面における断面形状が非円形であって側方から見て突端側へ次第に窄まった斜面を有する台形状に形成されると共に、その回転軸突端部の斜面壁に当接する斜面を有していて上記回転軸突端部に嵌め合わされる非円形状の嵌め合い孔が上記操作レバーに形成されて、上記回転軸突端部と上記嵌め合い孔とが、互いに嵌め合わせたときに上記操作レバーの突端側表面より上記回転軸の突端面が潜った状態になるように形成され、
上記操作レバーの突端側表面には上記嵌め合い孔内に入らない大きさに形成されたワッシャが配置されて、上記ワッシャに外方から通された有頭ビスを上記回転軸の突端面に形成されたねじ孔に締め込むことにより、上記ワッシャが上記有頭ビスの頭部で押圧されて弾性変形し、その状態で上記操作レバーが上記回転軸に固定されるようにしたことを特徴とする内視鏡の操作レバーの連結固定構造。
【請求項2】
上記回転軸突端部と上記嵌め合い孔の軸線に垂直な断面における断面形状が各々、平行な二辺を有する形状に形成されている請求項1記載の内視鏡の操作レバーの連結固定構造。
【請求項3】
上記回転軸突端部と上記嵌め合い孔の軸線に垂直な断面における断面形状が各々、略小判形又は矩形状に形成されている請求項1記載の内視鏡の操作レバーの連結固定構造。
【請求項4】
上記有頭ビスが複数設けられて、その数に対応する数だけ上記ワッシャにビス通し孔が形成されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の操作レバーの連結固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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