説明

内視鏡用キャリングケース

【課題】汚れた内視鏡の収容に使用された後に、汚染物質を全て洗い流して清潔な状態にすることができる衛生的な内視鏡用キャリングケースを提供すること。
【解決手段】内視鏡を収納して運搬するために、上下両ケース1a,1bがスーツケース状にヒンジ部4を中心に開閉自在に連結されると共に、耐薬品性の高い無孔の合成樹脂材によって両ケース1a,1bとは別体に形成された内枠2a,2bが両ケース1a,1b内に各々収容されて、各内枠2a,2bには、内視鏡が急な折れ曲がりのない状態に嵌め込まれる収容溝5が形成された内視鏡用キャリングケースにおいて、上ケース1b内の内枠2bと下ケース1a内の内枠2aとが、ヒンジ部4で一体に連結された状態に形成されて両ケース1a,1bに対し着脱できるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡を収納して運搬するための内視鏡用キャリングケースに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用キャリングケースの多くは、病院の内視鏡検査室に保管されて必要に応じてそこで使用される。
しかし近年は、在宅医療の普及と内視鏡技術の進歩等によって、往診の際に内視鏡検査を行うことができるようになっており、往診検査を行う場合には、内視鏡をキャリングケースに収納して往診先に運搬し、検査が終わって汚れた状態の内視鏡を再びキャリングケースに収納して持ち帰っている。
【0003】
そのような往診検査の際に内視鏡を運搬するために用いられるキャリングケースは、一般に、ケースが把手のついた開閉自在なスーツケース状に形成されている。
そしてケース内には、弾力性を付与するための無数の微細な連続孔を有する発泡プラスチック材で形成された図7に示されるような内枠11に、内視鏡が急な折れ曲がりのない状態に嵌め込まれる収容溝12が形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように無数の微細な連続孔を有する内枠に使用後の汚れた内視鏡を収納すると、内枠の微細孔内に汚染物質が入り込んで、洗浄しても全ての汚染物質を取り除くことはできなくなり、次に収容される清潔な内視鏡を汚染してしまう恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、汚れた内視鏡の収容に使用された後に、汚染物質を全て洗い流して清潔な状態にすることができる衛生的な内視鏡用キャリングケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用キャリングケースは、内視鏡を収納して運搬するために、上下両ケースがスーツケース状にヒンジ部を中心に開閉自在に連結されると共に、耐薬品性の高い無孔の合成樹脂材によって両ケースとは別体に形成された内枠が両ケース内に各々収容されて、各内枠には、内視鏡が急な折れ曲がりのない状態に嵌め込まれる収容溝が形成された内視鏡用キャリングケースにおいて、上ケース内の内枠と下ケース内の内枠とが、ヒンジ部で一体に連結された状態に形成されて両ケースに対し着脱できるように設けられているものである。
【0007】
なお、収容溝の底面に通液孔が穿設されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内視鏡を嵌め込む収容溝が形成されてケース内に収容された内枠を耐薬品性の高い無孔の合成樹脂材によって形成したことにより、汚れた内視鏡の収容に使用された後に、内枠の表面に付着した汚染物質を全て洗い流して完全に清潔な状態にすることができ、また、使用後の汚れた内視鏡を収納した状態のまま内枠を両ケースから取り出して洗浄することができるので、洗浄に携わる人への感染も確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2と図3は、本発明の参考例の内視鏡用キャリングケースが閉じられた状態の正面図と平面図であり、図4は内視鏡用キャリングケースが開かれた状態の平面図である。
【0010】
内視鏡用キャリングケースは開閉自在なスーツケース状に形成されており、各々が長方形の開口容器状に形成されてヒンジ部4で繋がった下ケース1aと上ケース1bとが、ヒンジ部4を中心に開閉自在に構成されて、運搬時に握るための把手3が下ケース1aに取り付けられている。
【0011】
下ケース1aと上ケース1bには、下側内枠2aと上側内枠2bが収容されている。ただしこの参考例の両内枠2a,2bは、I−I断面を示す図1に示されるように、下ケース1a及び上ケース1bと一体に形成されている。
【0012】
具体的には、上下両ケース1b,1aと上下両内枠2b,2aとは例えばポリプロピレン等のような耐薬品性の高い(即ち、酸やアルカリに侵され難い)無孔の薄板状の合成樹脂材によって一体成形されており、上下各ケース1b,1aと上下各内枠2b,2aとの間は中空になっている。
【0013】
図4及び図1に示されるように、上下両内枠2b,2aには、例えば可撓管状の挿入部を有する内視鏡及びその付属品類が急な折れ曲がりのない状態に嵌め込まれる収容溝5が形成されている。
【0014】
したがって、内視鏡と付属品を収容溝5に嵌め込んで上下両ケース1b,1aを閉じることにより、内視鏡と付属品を収容した状態で運搬することができ、目的地で上下両ケース1b,1aを開いて、内視鏡と付属品を取り出すことができる。
【0015】
上下両内枠2b,2aには、上下両ケース1b,1aが開かれてその表面が床面に面する状態に置かれたときに収容溝5内からケース1a,1b外に側方に通じる通液溝6が形成されている。
【0016】
このように構成された内視鏡用キャリングケースは、検査に使用された後の汚れた内視鏡を収納した後は、両ケース1a,1bを開いて内視鏡を取り出してから内枠2a,2bを洗浄することができる。
【0017】
そして、内枠2a,2bは無孔材によって形成されているので、表面に付着した汚染物質を全て洗い流すことができ、また、耐薬品性が高いので、薬液による滅菌や消毒を十分に行って感染防止を確実にすることができる。通液溝6は、洗浄液等の排水に有効である。
【0018】
図5及び図6は本発明の実施の形態を示している。図5にはケース1a,1bと内枠2a,2bが示されているが、そのうちのケース1a,1bは外観が示され、内枠2a,2bは図6におけるV−V断面が示されている。
【0019】
この実施の形態においては、図5に示されるように、一体に形成された上下両ケース1b,1aと、一体に形成された上下両内枠2b,2aとが別体に形成されて、上下両内枠2b,2aが上下両ケース1b,1a内に収容されるようになっている。
【0020】
上下両内枠2b,2aの材質等は参考例と同じであり、把手3は内枠2a,2bと一体に成形されている。また、洗浄液等の排水のための通液孔7が、収容溝5の底面に穿設されている。
【0021】
このように形成された内視鏡用キャリングケースは、使用後の汚れた内視鏡を収納した後は、内視鏡を収納した状態のまま内枠2a,2bを両ケース1a,1bから取り出して洗浄することができるので、洗浄に携わる人への感染も確実に防止することができる。
【0022】
そして、内枠2a,2bは無孔材によって形成されているので表面に付着した汚染物質を全て洗い流すことができ、また耐薬品性が高いので、薬液による滅菌や消毒を十分に行って感染防止を確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の参考例の内視鏡用キャリングケースの図4におけるI−I断面図である。
【図2】本発明の参考例の内視鏡用キャリングケースの閉じた状態の正面図である。
【図3】本発明の参考例の内視鏡用キャリングケースの閉じた状態の平面図である。
【図4】本発明の参考例の内視鏡用キャリングケースの開いた状態の平面図である。
【図5】本発明の実施の形態の内視鏡用キャリングケースの開いた状態を分解して示す側面一部断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の内枠の開いた状態の平面図である。
【図7】従来の内枠の平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1a,1b ケース
2a,2b 内枠
3 把手
5 収容溝
6 通液溝
7 通液孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡を収納して運搬するために、上下両ケースがスーツケース状にヒンジ部を中心に開閉自在に連結されると共に、耐薬品性の高い無孔の合成樹脂材によって上記両ケースとは別体に形成された内枠が上記両ケース内に各々収容されて、上記各内枠には、内視鏡が急な折れ曲がりのない状態に嵌め込まれる収容溝が形成された内視鏡用キャリングケースにおいて、
上記上ケース内の内枠と上記下ケース内の内枠とが、ヒンジ部で一体に連結された状態に形成されて上記両ケースに対し着脱できるように設けられていることを特徴とする内視鏡用キャリングケース。
【請求項2】
上記収容溝の底面に通液孔が穿設されている請求項1記載の内視鏡用キャリングケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−86809(P2008−86809A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333574(P2007−333574)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願平10−160036の分割
【原出願日】平成10年6月9日(1998.6.9)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】