説明

内視鏡用ドルミア型異物摘出具

【課題】ケージを形成する弾性ワイヤに疲労による断線が発生し難く、断線した場合にも安全性の高い内視鏡用ドルミア型異物摘出具を提供すること。
【解決手段】少なくとも3本の複数の弾性ワイヤ3の前後両端を結束して全体を螺旋状に捩じって紡錘形に形成されたケージ4を、可撓性のあるシース1中に進退自在に挿通された操作ワイヤ2の先端に連結して、上記操作ワイヤ2を基端側から牽引すると上記ケージ4が上記シース1中に引き込まれてすぼまり、上記操作ワイヤ2を押して上記ケージ4を上記シース1中から押し出すと、上記弾性ワイヤ3の弾性力によって上記ケージ4が紡錘形に膨らむようにした内視鏡用ドルミア型異物摘出具において、上記弾性ワイヤ3として、複数の素線を撚り合わせた撚り線を用いた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通されて体腔内の異物等を摘出するために使用される内視鏡用ドルミア型異物摘出具に関する。
【0002】
【従来の技術】体腔内から異物などを摘出するために、各種のバスケット型異物摘出具が存在するが、いわゆるドルミア型の異物摘出具は、紡錘形のケージを形成する複数の弾性ワイヤが全体として螺旋状に捩じられていることに特徴がある。
【0003】そのような捩じりがあることにより、細い管腔内等においてケージを前後に進退させたときケージがネジ状に回転するので、例えば尿道、胆管、血管などのように細い管腔内の異物をケージ内に容易に取り込んで摘出することができる。
【0004】そのような内視鏡用ドルミア型異物摘出具のケージを形成する弾性ワイヤは、細い管腔内で粘液の付着等があっても確実に紡錘形に広がるように、ある程度の腰の強さが必要である。
【0005】そこで従来は、弾性ワイヤとして、直径が0.15mm〜0.3mm程度のステンレス鋼線(単線)を用い、これを3〜6本程度組にして前後両端で結束し、紡錘形のケージを形成していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述のように単線で形成された弾性ワイヤは、疲労等によって切断する際には瞬時に切れてしまうので、体腔内での使用中に切断すると非常に危険な状態になる可能性がある。
【0007】そこで本発明は、ケージを形成する弾性ワイヤに疲労による断線が発生し難く、断線した場合にも安全性の高い内視鏡用ドルミア型異物摘出具を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用ドルミア型異物摘出具は、少なくとも3本の複数の弾性ワイヤの前後両端を結束して全体を螺旋状に捩じって紡錘形に形成されたケージを、可撓性のあるシース中に進退自在に挿通された操作ワイヤの先端に連結して、上記操作ワイヤを基端側から牽引すると上記ケージが上記シース中に引き込まれてすぼまり、上記操作ワイヤを押して上記ケージを上記シース中から押し出すと、上記弾性ワイヤの弾性力によって上記ケージが紡錘形に膨らむようにした内視鏡用ドルミア型異物摘出具において、上記弾性ワイヤとして、複数の素線を撚り合わせた撚り線を用いたことを特徴とする。
【0009】なお、上記弾性ワイヤの断面係数Zが、0.3307×10-3≦Z≦2.646 ×10-3の範囲にあるとよく、上記弾性ワイヤが、直径が0.11mm〜0.20mmの範囲の素線を3本撚り合わせて形成されていてもよく、上記弾性ワイヤが、直径が0.08mm〜0.15mmの範囲の素線を7本撚り合わせて形成されていてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1及び図2は、本発明の内視鏡用ドルミア型異物摘出具の先端部分の側面断面図と正面図である。1は、図示されていない内視鏡の鉗子チャンネルに挿脱される可撓性のあるシースであり、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブによって形成されている。
【0011】シース1内には、操作ワイヤ2が軸線方向に進退自在に挿通されていて、シース1の基端部に連結された操作部(図示せず)からの操作によって押し引き操作される。
【0012】操作ワイヤ2の先端には、四本の弾性ワイヤ3によって紡錘形に形成されたケージ4が連結されている。ケージ4の膨らんだ状態における長さは30mm〜40mm程度、膨らみの直径は10mm〜20mm程度である。
【0013】四本の弾性ワイヤ3は、前後両端が先端チップ5と連結管6に差し込まれ、そこでロー付け又は半田付け等によって固着されて互いに結束され、全体が螺旋状(スクリュー状)に捩じられている。連結管6の後半部分には操作ワイヤ2の先端部分が差し込まれて、ロー付け又は半田付け等によって固着されている。
【0014】その結果、操作部側から操作ワイヤ2を牽引すると、図3に示されるようにケージ4がシース1中に引き込まれてすぼまり、操作ワイヤ2を押してケージ4をシース1の先端から押し出すと、図1に示されるように、弾性ワイヤ3の弾性力によってケージ4が紡錘形に膨らむ。
【0015】各弾性ワイヤ3としては、素線径の細いステンレス鋼線材を撚り合わせた撚り線が用いられている。したがって、ケージ4をシース1内に出し入れすることによって連結管6への固着部付近(図3のA部)に最も大きく生じる疲労が、単線に比べるとはるかに小さくて耐久性がある。
【0016】また、撚り線が疲労したときは、まず撚り線の素線の中の一本が切れてそれが目視されるので、弾性ワイヤ3が完全に切断する前に廃棄等適切な処理をとることができ、安全性が確保される。
【0017】ケージ4は、ある程度の粘液の付着などがあっても自己の弾性力で紡錘形に膨らむように、腰の強さが必要である。そのようなケージ4の腰の強さは、弾性ワイヤ3の断面係数Zによって決まる。ただし、素線径をdとして、Z=πd3/32である。
【0018】これまで用いられている単線の直径は、0.15mm〜0.3mmなので、それを基準とすると、0.3307×10-3≦Z≦2.646 ×10-3■である。
【0019】そこで、図4に断面が示されるような3本撚りの撚り線と、図5に断面が示されるような7本撚りの撚り線の場合について、断面係数Zの大きさを計算して検討した。ただし、素線の断面係数をzとすると、3本撚りの撚り線はZ=3zであり、7本撚りの撚り線はZ=7zである。
【0020】その結果、素線の直径と撚り線の断面係数との関係を表した図6に示されるように、3本撚りの場合には、素線径が0.11mm〜0.2mmの範囲において上記■の範囲に入り、7本撚りの場合には、素線径が0.08mm〜0.15mmの範囲において上記■の範囲に入って、直径が0.15mm〜0.3mmの範囲の単線と同程度の腰の強さを確保することができる。
【0021】なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、ケージ4を形成する弾性ワイヤ3の数は、3本以上の複数なら何本でもよい。ただし、余り本数が多くなると異物を内部に取り込むための隙間が狭くなるので、6本程度までが良好な実用範囲であり、8本程度を上限とするとよい。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、ケージを形成する複数の弾性ワイヤとして、複数の素線を撚り合わせた撚り線を用いたことにより、使用による弾性ワイヤの疲労が単線に比べるとはるかに小さくて耐久性がある。
【0023】また、撚り線が疲労したときは、まず撚り線の素線の中の一本が切れるので、弾性ワイヤが完全に切断する前にその切断を目視して廃棄等適切な処理をとることができ、安全性が確保される。
【0024】そして、弾性ワイヤの断面係数Zが、0.3307×10-3≦Z≦2.646 ×10-3の範囲にあるように撚り線の素線径を選択すれば、良好な腰の強さを得ることができるので、粘液等が付着してもケージが自己の弾性で膨らんで異物等を捕獲することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の内視鏡用ドルミア型異物摘出具の先端部分のケージが膨らんだ状態の側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の内視鏡用ドルミア型異物摘出具の先端部分のケージが膨らんだ状態の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の内視鏡用ドルミア型異物摘出具の先端部分のケージがシース中ですぼまった状態の側面断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の3本撚りの撚り線の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の7本撚りの撚り線の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の弾性ワイヤを形成する撚り線の素線径と断面係数との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1 シース
2 操作ワイヤ
3 弾性ワイヤ
4 ケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも3本の複数の弾性ワイヤの前後両端を結束して全体を螺旋状に捩じって紡錘形に形成されたケージを、可撓性のあるシース中に進退自在に挿通された操作ワイヤの先端に連結して、上記操作ワイヤを基端側から牽引すると上記ケージが上記シース中に引き込まれてすぼまり、上記操作ワイヤを押して上記ケージを上記シース中から押し出すと、上記弾性ワイヤの弾性力によって上記ケージが紡錘形に膨らむようにした内視鏡用ドルミア型異物摘出具において、上記弾性ワイヤとして、複数の素線を撚り合わせた撚り線を用いたことを特徴とする内視鏡用ドルミア型異物摘出具。
【請求項2】上記弾性ワイヤの断面係数Zが、0.3307×10-3≦Z≦2.646 ×10-3の範囲にある請求項1記載の内視鏡用ドルミア型異物摘出具。
【請求項3】上記弾性ワイヤが、直径が0.11mm〜0.20mmの範囲の素線を3本撚り合わせて形成されている請求項2記載の内視鏡用ドルミア型異物摘出具。
【請求項4】上記弾性ワイヤが、直径が0.08mm〜0.15mmの範囲の素線を7本撚り合わせて形成されている請求項2記載の内視鏡用ドルミア型異物摘出具。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開平10−192296
【公開日】平成10年(1998)7月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−5419
【出願日】平成9年(1997)1月16日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)