説明

内視鏡用光源装置

【課題】大型の調光機構を配置可能で光量損失の少ない内視鏡用光源装置を得る。
【解決手段】光源ランプからの光束を収束させる第1レンズ群と、この第1レンズ群で収束され集光点を通過して発散する光束をライトガイドに集光させる第2レンズ群と、この第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置した調光機構と、を有し、次の条件式(1)を満足する内視鏡用光源装置。
(1)1.30<L(1/f1-1/x)<2.30
但し、
L;第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔、
f1;第1レンズ群の焦点距離、
x;光源ランプの集光点から第1レンズ群の前側主点までの距離。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用光源装置に関し、特に系内に大型の光量調整装置を内蔵させるのに適した内視鏡用光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射ミラーを有する光源ランプからの光束を内視鏡ライトガイドの入射端に集光させる内視鏡用光源装置は、光路中にIRカットフィルターや回転フィルター、光量調整装置等の調光機構を配置している。光源ランプには、放物面ミラーを有して平行光束を発するタイプと楕円ミラーを有して収束光を発するタイプが知られているが、これらの光源ランプを用いた内視鏡用光源装置は、いずれも光束径の小さい場所に、調光機構を配置している。すなわち、平行光束を発するタイプでは、一旦倍率変換光学系で光束径を縮小し、その縮小した平行光束内に調光機構を配置している。また、収束光を発する光源ランプでは、ランプの集光点をリレー光学系を介してライトガイドの入射端に集光させているが、そのリレー光学系の平行光束内に調光機構を配置している。
【特許文献1】特開昭62-40416公報
【特許文献2】実開平1-135408号公報
【特許文献3】特開平10-288739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
理論的には、完全な平行光束中であれば、平行光束の光路長を長くして調光機構を大型にしても問題はない。しかし、光源ランプの発光点は大きさを持っているので、厳密には平行光束にならず、光束径を小さくするほど軸外光の光軸に対する角度が大きくなり、光路長を長くした場合に光量損失が大きい。
【0004】
本発明は、大型の調光機構を配置可能で光量損失の少ない内視鏡用光源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光源ランプからの光束を収束させる第1レンズ群と、この第1レンズ群で収束された後発散する光束をライトガイドに集光させる第2レンズ群との間であれば、光路長を長くしても光量損失を少なくしながら大型の調光機構を配置できるという着眼に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の内視鏡用光源装置は、光源ランプからの光束を収束させる第1レンズ群と、この第1レンズ群で収束され集光点を通過して発散する光束をライトガイドに集光させる第2レンズ群と、この第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置した調光機構と、を有し、次の条件式(1)を満足することを特徴としている。
(1)1.30<L(1/f1-1/x)<2.30
但し、
L;第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔、
f1;第1レンズ群の焦点距離、
x;光源ランプの集光点から第1レンズ群の前側主点までの距離、
である。
【0006】
条件式(1)は、次の別の条件式(2)に置き換えてもよい。
(2)0.43<y/L<0.77
但し、
L;第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔、
y;第1レンズ群の最も第2レンズ群側の面から第1レンズ群で収束される集光点までの距離、
である。
【0007】
本発明の内視鏡用光源装置は、加えて、次の条件式(3)を満足するのがよい。
(3)1.5<L/D<5
但し、
D;光源ランプの開口部の直径、
である。
【0008】
また、次の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)0.1<f2/L<0.25
但し、
f2;第2レンズ群の焦点距離、
である。
【0009】
光源ランプは、平行光束を発するタイプ、収束光を発するタイプのいずれも使用可能であるが、次の条件式(5)を満足する収束タイプがより好ましい。
(5)0.60<WD/D<1.35
但し、
WD;光源ランプの開口部端面から集光点までの距離、
である。
【0010】
収束タイプの光源ランプであれば、第1レンズ群と第2レンズ群は、同一のレンズ構成とすることができる。
【0011】
また、第1レンズ群と第2レンズ群はそれぞれ、1枚の非球面レンズを含むように構成し、レンズ枚数を削減することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内視鏡用光源装置によれば、特に光軸方向の大きさが長い大型の調光機構を配置可能で光量損失の少ない内視鏡用光源装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明による内視鏡用光源装置10の第一の実施形態を示している。この内視鏡用光源装置10は、光源ランプ11側から順に、第1レンズ群12、及び第2レンズ群13を有し、第2レンズ群13によって集光された光束が内視鏡のライトガイド14の入射端面14aに入射する。
【0014】
光源ランプ11は、楕円ミラーの第一焦点に光源ランプ(の輝点)を置いた収束タイプであり、第二焦点に集光する。このような収束タイプの光源ランプは周知である。第1レンズ群12は、光源ランプ11の集光点を通過して発散する光束を収束させるレンズ群であり、第2レンズ群13は、第1レンズ群12で収束され集光点を通過して発散する光束をライトガイド14に集光させるレンズ群である。光源ランプ11と第1レンズ群12の間には、光源ランプ11の集光点より第1レンズ群12側に位置させてIRフィルター15が配置されている。
【0015】
第1レンズ群12と第2レンズ群13との間には、調光機構として、絞り16、光量調整装置(ロータリシャッタ)17、オンオフシャッタ18、及び補助灯ユニット19が配置されている。光量調整装置17は、2枚の回転円板17aと17bの回転位相を異ならせて開口角17Xを変化させる機構と、同2枚の回転円板17aと17bを一体に回転させる機構とを備えており、回転円板の回転中であっても通過光量を調整することができる。このような光量調整機構は公知である。絞り16は、光量調整装置17では光量を落としきれないときにさらに光量を落とすために使用し、オンオフシャッタ18は、光束を完全にオフにする(遮光する)ときに使用する。補助灯ユニット19は、常時は光路から待避しており、光源ランプ11の故障(予期せぬ消灯)時に光路内に進出して白色LED19aによる補助光を発する。これらの調光機構の要素のうち特に光量調整装置17は構成が複雑なので大型化する。
【0016】
条件式(1)、(2)は、光量損失を少なくしながら、第1レンズ群12と第2レンズ群13の間の光束径を小さくし、さらに長い光路長を確保するための条件である。条件式(1)の上限を上回ると(条件式(2)の下限を下回ると)、第2レンズ群13に入射する発散光束の発散度が大きくなりすぎるので、光量損失が大きくなる。条件式(1)の下限を下回ると(条件式(2)の上限を上回ると)、第1レンズ群12による集光径が大きくなるので、光束径を小さくできない。
【0017】
条件式(3)は、第1レンズ群12と第2レンズ群13の間に、調光機構の各要素を配置するための十分なスペースを確保するための条件である。条件式(3)の下限を下回ると、十分なスペースを確保できない。条件式(3)の上限を上回ると、必要以上に間隔が拡がるので、光量損失が大きくなる。
【0018】
条件式(4)は、第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔と、第2レンズ群13のパワーに関する条件である。条件式(4)の下限を下回るとライトガイド14へ集光する角度が大きくなってライトガイド14のNAを超えるため、集光効率が低下する(光量損失が大きくなる)。条件式(4)の上限を上回るとライトガイド14の入射端面14aへの集光径が大きくなり、ライトガイド14で取り込める光量が低下する。なお、第2レンズ群13は少ないレンズ枚数で集光効率をよくするため,非球面レンズを用いるのが望ましい。
【0019】
光源ランプ11としては、図2に示すように、放物面ミラーの焦点に光源(の輝点)を置いた平行光束を発するタイプも使用可能である。しかし、放物面ミラーより楕円ミラーの方が輝点からの光束の取込量が大きいため、同じ出力のランプを用いても楕円ミラーで集光するタイプの方が光量の有効利用が図れる。なお、平行光束を発するタイプの光源ランプでは、x(光源ランプの集光点から第1レンズ群の前側主点までの距離)=∞である。
【0020】
条件式(5)は、図1の実施形態のように、光源ランプ11として収束タイプを使用する場合の好ましい条件式である。条件式(5)の下限を下回ると、ランプ自体の収束角度が大きくなり、光源ランプ11と第1レンズ群12の間隔を確保できず、IRフィルター15の配置に支障が出たり、絶縁が不十分になるおそれがある。条件式(5)の上限を上回ると、ランプの楕円ミラーの倍率が大きいため、輝点の結像が大きくなって光の利用効率がよくない。
【0021】
第1レンズ群と第2レンズ群は、同一のレンズ構成とすると、コストダウンが図れる。また第1レンズ群12と第2レンズ群13はそれぞれ、非球面単レンズから構成することもできる。本実施形態において、第1レンズ群12と第3レンズ群13の間に配置する調光機構として必須の要素は、光量調整装置(ロータリシャッタ)17である。
【0022】
次に具体的な実施例を説明する。以下の各実施例では、第1レンズ群12と第2レンズ群13の間に設置する調光機構の要素を描いていない。表中、Fbはバックフォーカス(第2レンズ群の最終面からライトガイドの入射端面までの距離)、Mは横倍率、rは曲率半径、dはレンズ厚またはレンズ間隔、Nd はd線の屈折率、νはアッベ数を示す。
また、回転対称非球面は次式で定義される。
x=cy2/[1+[1-(1+K)c2y2]1/2]+A4y4+A6y6+A8y8+A10y10+A12y12・・・
(但し、cは曲率(1/r)、yは光軸からの高さ、Kは円錐係数、A4、A6、A8、・・・・・は各次数の非球面係数)
【実施例1】
【0023】
図3と表1は本発明による内視鏡用照明光学系の実施例1を示しており、図3はその光学構成図、表1はその数値データである。面No.1と2はIRカットフィルター15、面No.2から6は第1レンズ群12、面No.7から10は第2レンズ群13である。光源ランプ11は収束光を発するタイプであり、第1レンズ群12と第2レンズ群13は、この実施形態では、平凸レンズを2枚組み合わせた同一構成であり、互いに向きを反対に向けている。
(表1)
f1 = 12.488
f2 = 12.488
L = 69
x = 18.98
y = 32.39
D = 19.46
WD = 14.55
Fb = 11.12
M = 0.850
X'(光源ランプの集光点から第1レンズ群の光源側の面までの距離(空気換算) = 10.43
面 No. r d Nd ν
1 ∞ 1.00 1.51633 64.1
2 ∞ 1.00
3 ∞ 10.00 1.52288 58.6
4* -9.414 1.00
5 19.878 5.20 1.51633 64.1
6 ∞ 69.00
7 ∞ 5.20 1.51633 64.1
8 -19.878 1.00
9* 9.414 10.00 1.52288 58.6
10 ∞ -
*は回転対称非球面。
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である。);
面NO K A4 A6 A8
4 -0.10×10 -0.23605×10-3 0.43437×10-5 -0.4418×10-7
A10
0.16179×10-9
9 -0.10×10 0.23605×10-3 0.43437×10-5 0.44184E×10-7
A10
-0.16179×10-9
【実施例2】
【0024】
図4と表2は本発明による内視鏡用照明光学系の実施例1を示しており、図4はその光学構成図、表2はその数値データである。面No.1と2はIRカットフィルター、面No.3と4は第1レンズ群12、面No.5と6は第2レンズ群13である。この実施例では、光源ランプ11は収束光を発するタイプであり、第1レンズ群12と第2レンズ群13はそれぞれ同一構成で向きを反対に向けた片面非球面レンズからなっている。
(表2)
f1 = 13.854
f2 = 13.854
L = 80
x = 20.49
y = 40.00
D = 17.00
WD = 14.55
Fb = 14.10
M = 1.001
X' = 12.44
面 No. r d Nd ν
1 ∞ 1.00 1.51633 64.1
2 ∞ 1.00
3 20.667 12.00 1.52288 58.6
4* -8.930 80.00
5* 8.930 12.00 1.52288 58.6
6 -20.667 -
*は回転対称非球面。
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である。);
面NO K A4 A6 A8
4 -0.53030 0.13931×10-3 0.34991×10-6 0.33049×10-8
5 -0.53030 0.13931×10-3 0.34991×10-6 0.33049×10-8
【実施例3】
【0025】
図5と表3は本発明による内視鏡用照明光学系の実施例3を示しており、図5はその光学構成図、表3はその数値データである。面No.1と2はIRカットフィルター、面No.3と4は第1レンズ群、面No.5から8は第2レンズ群である。この実施例では、光源ランプ11は平行光を発するタイプであり、第1レンズ群12は単レンズからなり、第2レンズ群13は片面非球面レンズを含む2枚のレンズからなっている。
(表3)
f1 = 30.155
f2 = 8.878
L = 41.3
x = - (集光点なし)
y = 26.30
D = 19.46
WD = -
Fb = 12.21
M = 0.0
面 No. r d Nd ν
1 ∞ 1.00 1.51633 64.1
2 ∞ 4.00
3 15.570 5.60 1.51633 64.1
4 ∞ 41.30
5 ∞ 5.20 1.51633 64.1
6 -10.380 0.50
7* 8.107 7.00 1.52288 58.6
8 ∞ -
*は回転対称非球面。
非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である。);
面NO K A4 A6
7 -0.10×10 -0.16047×10-3 0.32592×10-6
【0026】
各実施例の各条件式に対する値を表4に示す。
(表4)
実施例1 実施例2 実施例3
条件式(1) 1.89 1.87 1.37
条件式(2) 0.47 0.50 0.64
条件式(3) 3.55 4.71 2.17
条件式(4) 0.18 0.17 0.21
条件式(5) 0.75 0.86 -
【0027】
表4から明らかなように、実施例1ないし3は条件式(1)ないし(5)を満足している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による内視鏡用光源装置の一実施形態を光学構成図である。
【図2】本発明の内視鏡用光源装置に用いる光源ランプの別の態様を示す光学構成図である。
【図3】本発明の内視鏡用光源装置の実施例1の光学構成を示す図である。
【図4】本発明の内視鏡用光源装置の実施例2の光学構成を示す図である。
【図5】本発明の内視鏡用光源装置の実施例3の光学構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 内視鏡用光源装置
11 光源ランプ
12 第1レンズ群
13 第2レンズ群
14 ライトガイド
15 IRフィルター
16 絞り
17 光量調整装置(ロータリシャッタ)
18 オンオフシャッタ
19 補助灯ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ランプからの光束を収束させる第1レンズ群と、
この第1レンズ群で収束され集光点を通過して発散する光束をライトガイドに集光させる第2レンズ群と、
この第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置した調光機構と、
を有し、
次の条件式(1)を満足することを特徴とする内視鏡用光源装置。
(1)1.30<L(1/f1-1/x)<2.30
但し、
L;第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔、
f1;第1レンズ群の焦点距離、
x;光源ランプの集光点から第1レンズ群の前側主点までの距離。
【請求項2】
光源ランプからの光束を収束させる第1レンズ群と、
この第1レンズ群で収束され集光点を通過して発散する光束をライトガイドに集光させる第2レンズ群と、
この第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置した調光機構と、
を有し、
次の条件式(2)を満足することを特徴とする内視鏡用光源装置。
(2)0.43<y/L<0.77
但し、
L;第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔、
y;第1レンズ群の最も第2レンズ群側の面から第1レンズ群で収束される集光点までの距離。
【請求項3】
請求項1または2記載の内視鏡用光源装置において、次の条件式(3)を満足する内視鏡用光源装置。
(3)1.5<L/D<5
但し、
D;光源ランプの開口部の直径。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の内視鏡用光源装置において、次の条件式(4)を満足する内視鏡用光源装置。
(4)0.1<f2/L<0.25
但し、
f2;第2レンズ群の焦点距離。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の内視鏡用光源装置において、光源ランプは、次の条件式(5)を満足する収束タイプである内視鏡用光源装置。
(5)0.60<WD/D<1.35
但し、
WD;光源ランプの開口部端面からランプの集光点までの距離。
【請求項6】
請求項5記載の内視鏡用光源装置において、第1レンズ群と第2レンズ群は、同一のレンズ構成である内視鏡用光源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の内視鏡用光源装置において、第1レンズ群と第2レンズ群は、それぞれ1枚の非球面レンズを含む内視鏡用光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−110046(P2008−110046A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294652(P2006−294652)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】