説明

内視鏡装置

【課題】観察部位の血流と、ファイバスコープの遠位端から観察部位までの距離と、観察部位の温度とを正確に把握して、人体に対して負担が少ない安全かつ確実なレーザ治療を施すことが可能な内視鏡装置を得る。
【解決手段】計測装置300は波長780nmの計測用レーザ光を観察部位に照射する。観察部位からは反射レーザ光が反射されて計測装置300に入射する。反射レーザ光は計測装置300が備えるフォトディテクター314に導かれて反射レーザ光の強度に従って計測信号を出力する。画像処理装置430は測定信号に従って治療用レーザ装置410に治療用レーザ光の出力レベルを指示する。治療用レーザ装置410は画像処理装置430からの指示に従って出力レベルを調整しながら、治療用レーザ光の照射を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関し、より詳しくは、胎児治療内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置は、例えば人体の内臓を観察、検査、又は治療するために用いられる。
【0003】
内視鏡装置は光結合分離装置と、それに接続されるファイバスコープ、光源装置、治療用レーザ発生装置、及び情報処理装置から構成される。ファイバスコープは複数の光ファイバから成る。光源装置はファイバスコープに接続されて、照明光をファイバスコープに出力する。ファイバスコープは人体に挿入される遠位端と、光結合装置及び光源装置に接続される近位端とを有する。遠位端が人体に挿入されると、ファイバスコープは観察部位からの反射光を光結合分離装置に伝達する。反射光は光結合分離装置が備える撮像素子により電気信号に変換される。電気信号は情報処理装置に伝達されて情報処理された後に、情報処理装置が備えるモニタに画像として表示される。
【0004】
治療用レーザ発生装置は治療用レーザ光を発生し、光結合分離装置に入力する。光結合分離装置は治療用レーザ光をファイバスコープに出力する。ファイバスコープは治療用レーザ光を伝達して観察部位に向けて照射し、観察部位を治療する。
【0005】
正確な治療を行うために、使用者はファイバスコープを介して伝えられる画像を参照しながら、治療用レーザ光をファイバスコープの遠位端から観察部位に照射する必要がある。これを解決するためにレーザ照射と同時に照射位置を観察できるようにした内視鏡システムやレーザ加工装置が知られている(特許文献1、2、3、4)。
【特許文献1】特開2003−1465号公報
【特許文献2】特開2005−237436号公報
【特許文献3】特許第3746554号公報
【特許文献4】特許第3746555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、照射位置を画像により確認するだけでは、ユーザの経験と勘により治療状態を判断せざるを得ず、確実に治療されていることを確認する術がない。また、確実に治療を行うためには必要量以上の治療用レーザ光を照射することがあり、患者の負担が増える問題がある。一方治療用レーザ光の照射を最小限に留めようとして照射量を減らすと十分に治療できず、再度の治療が必要となるという問題がある。
【0007】
他方、ファイバスコープの遠位端と観察部位との間の距離に従って治療用レーザ光は減衰する。正確な照射量で治療用レーザ光を照射するためには治療用レーザ光の減衰量を推定することが必要となる。しかし、従来の内視鏡システムでは遠位端と観察部位との距離を測定することが出来ないため、治療用レーザ光の減衰量を推定することが出来ないという問題もある。
【0008】
さらに、治療用レーザ光の照射時間は観察部位の状態により変化する。そのため、ユーザは随時治療用レーザ光の照射を中止して照射部位の状態を確認しなければならず、これにより治療時間が余計に必要となって患者の負担が増加するという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、観察部位の血流、ファイバスコープの遠位端から観察部位までの距離、及び観察部位の温度等の観察部位の状況を的確に計測することが可能な内視鏡装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による内視鏡装置は、画像用ファイバと、照明用ファイバと、画像用ファイバに接続される光結合分離装置と、光結合分離装置及び照明用ファイバに接続される計測装置とを備え、画像用ファイバは、観察部位からの反射光を伝達して光結合分離装置へ出力し、照明用ファイバは、計測装置から入力される計測用レーザ光を観察部位へ向けて伝達し、光結合分離装置は、画像用ファイバから入力される反射光を画像及び反射レーザ光に分離し、計測装置は、光結合分離装置から入力される反射レーザ光により観察部位の状態を測定することを特徴とする。
【0011】
内視鏡装置は、治療用レーザ光を発生する治療用レーザ装置と、治療用レーザ光を伝達するレーザ用ファイバとをさらに備え、治療用レーザ装置は、光結合分離装置へ治療用レーザ光を出力し、光結合分離装置は治療用レーザ光をレーザ用ファイバに出力することが好ましい。
【0012】
計測装置は、反射レーザ光を用いてファイバスコープの遠位端から観察部位までの距離、又は観察部位の血流若しくは温度を測定することが望ましい。観察部位の血流、ファイバスコープの遠位端から観察部位までの距離、及び観察部位の温度等の観察部位の状況を的確に計測して、人体に対して負担が少ない安全かつ確実なレーザ治療を施すことが可能な内視鏡装置を得ることができる。
【0013】
内視鏡装置は情報処理装置をさらに備え、計測装置は、反射レーザ光を用いて観察部位の温度を測定し、観察部位の温度を示す温度信号を情報処理装置へ出力し、情報処理装置は温度信号に従い治療用レーザ光の出力を制御しても良い。
【0014】
光結合分離装置は、ダイクロイックプリズムを用いて反射光の分離を行うことが望ましく、内視鏡装置は照明用ファイバに照明光を入力する光源装置を備えても良い。
【0015】
レーザ用ファイバの径方向における周囲には画像用ファイバがレーザ用ファイバと同軸に設けられて複合光ファイバを構成し、複合光ファイバの径方向における周囲には照明用ファイバが複合光ファイバと同軸に設けられてファイバスコープを構成することが好適である。
【0016】
内視鏡装置はモニタをさらに備え、画像はモニタに表示されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、観察部位の血流、ファイバスコープの遠位端から観察部位までの距離、及び観察部位の温度等の観察部位の状況を的確に計測することが可能な内視鏡装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明における内視鏡装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
第1の実施形態による内視鏡装置を図1から5を用いて説明する。
【0020】
内視鏡装置は、人体に挿入されるファイバスコープ100と、ファイバスコープ100と接続される光結合分離装置200と、治療用レーザ光を供給する治療用レーザ装置410と、観察部位の状態を測定する計測装置300と、観察部位を照明する光源を備える光源装置420と、画像処理装置430とから主に構成される。
【0021】
ファイバスコープ100は遠位端部101から人体に挿入される。遠位端部101は観察部位に対向する。近位端部102はファイバスコープ100の近位端部102において、光結合分離装置接続ファイバ110、及び光源装置接続ファイバ120に接続される。光源装置接続ファイバ120からは計測装置接続ファイバ122が分岐する。これらの接続ファイバは、光結合分離装置200、光源装置420、及び計測装置300にそれぞれ接続される。
【0022】
ファイバスコープ100は複合光ファイバ135と照明用ファイバ133とからなる。複合光ファイバ135は、治療用レーザ光を観察部位まで伝達する治療用レーザファイバ141、観察部位の反射光を光結合分離装置200まで伝達する画像用ファイバ143とからなる。複合光ファイバ135は、遠位端101に設けられる対物レンズ131を介して観察部位と対向する。治療用レーザファイバ141は複合光ファイバ135の断面における中心に位置し、画像用ファイバ143は治療用レーザファイバ141の周囲に設けられた多数のファイバ要素から成る。照明用ファイバ133は環状に配置され、光源装置420からの照明光を遠位端部101まで伝達する。
【0023】
光源装置420は観察部位を観察するために必要な照明を提供する。光源装置420は照明用ファイバ接続部421を備え、光源装置接続ファイバ120と接続する。光源装置420で発生した照明光は、照明用ファイバ接続部421から光源装置接続ファイバ120を経て照明用ファイバ133に伝達される。
【0024】
照明用ファイバ133に入力した照明光は、照明用ファイバ133の遠位端部101まで伝達される。そして照明光は遠位端部101から観察部位に照射される。
【0025】
計測装置300は計測用レーザを発生する計測用レーザ発生装置322、レーザカットフィルタ313、フォトディテクター314を主に有する。計測用レーザ発生装置322は波長が780nmである計測用レーザ光を発生する。計測用レーザ光は、計測装置300が備える計測装置接続ファイバ接続部321から、計測装置接続ファイバ122に伝達される。
【0026】
計測装置接続ファイバ122及び光源装置接続ファイバ120を経た計測用レーザ光は、照明用ファイバ133の遠位端部101まで伝達される。そして計測用レーザ光は遠位端部101から観察部位に照射される。
【0027】
治療用レーザ装置410は波長1064nmの治療用レーザ光を発生する。治療用レーザ光はYAGレーザ光である。治療用レーザ装置410は光結合分離装置200と接続ファイバ411を用いて接続される。治療用レーザ装置410で発生した治療用レーザ光は、接続ファイバ411により光結合分離装置200が備える治療用レーザ装置接続部213に伝達される。
【0028】
光結合分離装置200は、治療用レーザ光を治療用レーザファイバ141へ導入する機能と、画像用ファイバ143から伝達された観察部位からの反射光を画像と反射レーザ光に分離する機能とを有する。光結合分離装置200は、第1及び第2のダイクロイックプリズム231、241と、レーザカットフィルタ250と、CCD260と、4つのレンズ群221、222、223、224とを主に備える。
【0029】
第1及び第2のダイクロイックプリズム231、241は図5に示すような光学特性を有する。第1のダイクロイックプリズム231は波長780nm未満の波長を有する光を透過させる性質を有し、第2のダイクロイックプリズム241は波長780nmより大きい波長を有する光を透過させる性質を有する。一般に人間が認識しうる可視光線は波長380nmから780nmの光である。そのため、第1のダイクロイックプリズム231は可視光線を透過する光学特性を有する。
【0030】
光結合分離装置200が備える治療用レーザ装置接続部213には、治療用レーザ装置410から波長1064nmの治療用レーザ光が入力される。治療用レーザ光は第2のダイクロイックプリズム241の第2の反射面242の背面に入射する。第2の反射面242の背面に入射した光は第2のダイクロイックプリズム241により光路が曲げられること無く直進する。直進する治療用レーザ光は第1のダイクロイックプリズム231の第1の反射面232に入射する。治療用レーザ光は第1の反射面232で反射され、第1のレンズ群221に向けて光路が曲げられる。その後、治療用レーザ光は第1のレンズ群221により集光されて治療用レーザファイバ141へ入力される。
【0031】
治療用レーザファイバ141に入力した治療用レーザ光は、治療用レーザファイバ141の遠位端部101まで伝達される。そして治療用レーザ光は遠位端部101から観察部位に照射され、観察部位の治療を行う。
【0032】
観察部位には照明光、計測用レーザ光、及び治療用レーザ光が照射される。そのため、観察部位からの反射光には照明光、計測用レーザ光、及び治療用レーザ光の反射光が含まれる。画像用ファイバ143の遠位端部101には観察部位からの反射光が入射し、光結合分離装置200へ伝達される。
【0033】
光結合分離装置200に入力した反射光は、第1のレンズ群221を通過した後、第1のダイクロイックプリズム231に入射する。反射光が第1の反射面232に入射すると、反射光のうち780nm以下の波長を有する光、すなわち可視光線は画像として第1の反射面232を透過して第2のレンズ群に導かれる。さらに、第1のダイクロイックプリズム231により反射されなかった計測用レーザ及び治療用レーザ光を除去するため、画像はレーザカットフィルタ250を通過して、CCD260に入射する。CCD260に入射した画像は、電気信号に変換され、画像処理装置430に出力される。
【0034】
他方、第1の反射面232に入射した反射光のうち、780nm以上の波長を有する光は第1の反射面232で反射される。反射された光は反射レーザ光として第2のダイクロイックプリズム241の第2の反射面242に入射する。第2の反射面242は波長780nm以下の光を反射するため、反射レーザ光は第2の反射面242により反射されて計測装置接続部212へ導かれる。
【0035】
計測装置300は、反射レーザ光を光結合分離装置接続部311から受光する。反射レーザはレンズ群312を通過した後、レーザカットフィルタ313により780nm以外の波長の光を除去されてフォトディテクター314に入射する。フォトディテクター314は、反射レーザ光の強度に応じて変化する電圧を計測信号として出力する。計測信号は、計測信号ケーブル331により、画像処理装置430に伝えられる。
【0036】
画像処理装置430は画像信号ケーブル431により光結合分離装置200と、モニタ440ケーブル432により画像を表示するためのモニタ440とそれぞれ接続される。CCD260から出力された画像信号は画像処理装置430において様々な画像処理、例えば色素強調処理等が行われ、画像としてモニタ440に表示される。
【0037】
計測装置300から計測信号ケーブル331により伝えられた計測信号は、画像処理装置430により演算処理がなされる。この演算処理により観察部位の血流、温度、及びファイバスコープ100の遠位端部101と観察部位との距離が求められる。
【0038】
血流は公知の方法によって求められ得る。例えば光のドップラー効果を利用して求める光ヘテロダイン法が用いられる。ファイバスコープ100の遠位端部101と観察部位との距離は公知の方法によって求められ得る。例えば、観察部位の温度が一定であれば、遠位端部101と観察部位との距離が大きくなるに従って、観察部位からの反射レーザ光の強度が弱くなる性質を用いて計測される。温度は公知の方法によって求められ得る。例えば、遠位端部101と観察部位との距離が一定であるとき、観察部位の温度が上昇するにつれて、観察部位からの反射レーザ光の強度が強くなる性質を用いて計測される。
【0039】
求められた血流、温度、及び遠位端部101と観察部位との距離は、モニタ440に表示される。
【0040】
画像処理装置430は、制御ケーブル421により治療用レーザ装置410に接続される。画像処理装置430は求められた温度に従い、治療用レーザ光の残りの照射時間を算出する。残りの算出時間がなくなると、画像処理装置430は治療用レーザ光の出力を止める信号を治療用レーザ装置410に送信し、治療用レーザ光の照射を中止する。
【0041】
次に、図6を用いて本発明による内視鏡装置の処理について、例えば子宮の胎盤内に存在する血管の血流を止める処理を用いて説明する。
【0042】
ステップS601において、ファイバスコープ100の遠位端部101が子宮内に挿入される。ステップS602では、モニタ440を参照しながら、血流を停止すべき血管を探索する。このとき、照明用ファイバ133から計測用レーザを照射して、ファイバスコープ100の遠位端部101と観察部位との距離の測定が行われる。そして、モニタ440には遠位端部101と観察部位との距離が表示される。ステップS603では、ユーザが処置すべき血管を発見、決定する。ステップS604では、モニタ440に表示される遠位端部101と観察部位との距離を参照しながら遠位端部101を観察部位に接近させる。そして、観察部位の血流を測定する。
【0043】
ステップS605では、治療用レーザ光の照射に最適な位置に遠位端部101を置く。例えば対物レンズ131の焦点距離に適合する位置である。ステップS606では、観察部位へ治療用レーザ光を照射する。照射する間、計測用レーザを用いて観察部位の温度を測定する。計測温度に従って治療用レーザ光の出力は自動的に制御される。ステップS607では、温度によって観察部位が十分に治療用レーザ光により焼灼されたか否かを判断し、十分と判断したときには観察部位への治療用レーザ光の照射を終了する。
【0044】
ステップS608では、治療用レーザ光の照射が十分に行われたかを判断する。判断は観察部位における血流を測定することにより行われる。治療用レーザ光の照射によって観察部位の血液及び血管が凝固し、血流が停止しているのであれば、照射は十分であると判断してステップS609へ移行する。血流が停止していなければ照射は不十分であると判断してステップS606へ移行して治療用レーザ光の照射を再度行う。
【0045】
ステップS609では、治療用レーザ光の照射が必要な血管の全てに照射を行ったか否かを判断する。全ての血管について照射が終了しているのであれば、ステップS610へ移行してこの処理は終了する。終了していないのであれば、ステップS602へ移行して別の血管に治療用レーザ光の照射を行う。
【0046】
次に、図7を用いて治療用レーザ光の出力を制御する処理について説明する。
【0047】
治療用レーザ光の照射が開始されると、ブロック701では、コンピュータ、すなわち画像処理装置430がAD変換器からのデジタルデータを用いて観察部位の温度を推定する。そして、推定された温度に従って治療用レーザ装置410に治療用レーザ光の出力レベルを指示する。ブロック702において、治療用レーザ装置410は画像処理装置430からの指示に従って出力レベルを調整しながら、治療用レーザ光の照射を行う。ブロック703では、照射対象(観察部位)は治療用レーザ光の照射を受ける。
【0048】
一方、ブロック704において、血流計(計測装置300)は波長780nmの計測用レーザ光を照射対象に照射する。そして、照射対象からは波長780nmの反射レーザ光が反射されて血流計に入射する。反射レーザ光は血流計が備えるフォトディテクター314に導かれ、フォトディテクター314は反射レーザ光の強度に従って電圧(計測信号)を出力する。電圧は画像処理装置430が備えるAD変換器に伝達される。ブロック705では、電圧(計測信号)をAD変換器がデジタルデータに変換し、画像処理装置430へ伝達する。
【0049】
次に図8を用いて画像処理装置430がモニタ440に画像を表示する処理について説明する。
【0050】
ステップS800では、光結合分離装置200から画像処理装置430へアナログ信号による画像信号が入力されると、この処理が実行される。
【0051】
ステップS810では、前処理部において画像処理装置430内のビデオキャプチャ回路(図示せず)の初期化等、動画像を表示するために必要な処理が行われる。
【0052】
次にリアルタイム映像表示部820において、ステップS821からS823までの処理が行われる。ステップS821において、画像処理装置430はモニタ440の解像度をモニタ440から取得する。ステップS822では、モニタ440の解像度に応じてモニタ440上に画像データを表示する位置を決定する。ステップS823では、画像処理装置430がCCD260から連続的に入力される画像信号をビデオキャプチャ回路によってAD変換し、モニタ440に画像データを連続的に送信し動画として表示する。この画像データは、ファイバスコープ100の遠位端部101に現在入射している観察部位の画像であり、連続的に表示することによりリアルタイム動画としてモニタ440に表示される。ステップS830では、処理が続行されるか否かが判断される。ユーザのボタン操作等により処理を続行すると判断する場合にはリアルタイム映像表示部820に処理が戻される。処理を終了すると判断する場合にはステップS840に処理が移されて、モニタ440に画像を表示する処理が終了する。
【0053】
これにより、観察部位が十分に焼灼出来たかを正確に把握すると共に、観察部位の状態に応じて治療用レーザ光を照射することにより患者の負担を軽減することが出来る。また、ユーザは、治療をすべき観察部位を探している間においても遠位端部101と観察部位との距離を正確に把握して、子宮等の人体に遠位端部101が接触することを防ぐことが出来る。
【0054】
図9を用いて第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0055】
第2の実施形態では、光結合分離装置900は分離装置910と結合装置970とから主に構成される。
【0056】
分離装置910は第1のダイクロイックプリズム、レーザカットフィルタ950、及びCCD960から主に構成される。光結合分離装置接続ファイバ110から入射した反射光は第1のダイクロイックプリズム231に入射する。第1のダイクロイックプリズム231の光学特性は第1の実施形態と同様である。第1のダイクロイックプリズム231は第1の反射面232を備える。反射光のうち、波長780nmの反射レーザ光は第1の反射面232で結合装置970へ反射される。反射光のうち波長780nm以下の波長の光、すなわち可視光線は画像として第1の反射面232を透過する。画像はレーザカットフィルタ950により治療用レーザ光の成分を除去され、CCD960に入射する。
【0057】
結合装置970は第2のダイクロイックプリズムにより主に構成される。分離装置910から出力される反射レーザ光は結合装置970に入力される。結合装置970に入力された反射レーザ光は第2のダイクロイックプリズム241に入射する。第2のダイクロイックプリズム241の光学特性は実施形態1と同様である。反射レーザ光は第2のダイクロイックプリズム241の第2の反射面242により反射されて計測装置300へ導かれる。
【0058】
計測装置300は、結合装置970から入力された反射レーザ光を用いて実施形態1と同様の手段により、観察部位の血流、温度、及び遠位端部101から観察部位までの距離を算出する。
【0059】
治療用レーザ装置410は第1の実施形態と同様の手段により治療用レーザ光を生成して結合装置970に出力する。結合装置970に入力された治療用レーザ光は、第2のダイクロイックプリズム241に導かれる。治療用レーザ光は第2のダイクロイックプリズム241における第2の反射面242の背面から入射するため、第2の反射面242で反射されずに透過する。そして、治療用レーザ光は分離装置910に導かれる。分離装置910へ伝達された治療用レーザ光は、第1のダイクロイックプリズムにより光結合分離装置接続ファイバ110へ出力される。そして治療用レーザ光は、第1の実施形態と同様の手段により観察部位に照射される。
【0060】
これにより、分離装置910と結合装置970とを小型化して可搬性を向上させることが出来る。また、従来の光結合分離装置に結合装置970を接続することにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
図10及び図11を用いて第3の実施形態について説明する。第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0062】
第3の実施形態における光結合分離装置1100は、第1及び第3のダイクロイックプリズム231、1141と、レーザカットフィルタ1150とを主に備える。第1のダイクロイックプリズム231は実施形態1と同様の光学的特性を有する。
【0063】
治療用レーザ装置から入射した治療用レーザ光は第1のダイクロイックプリズム231の第1の反射面232で反射され、第3のダイクロイックプリズム1141に導かれる。第3のダイクロイックプリズム1141における第3の反射面1142は治療用レーザ光が入射する面とは反対側の面であるため、治療用レーザ光は第3の反射面1142を透過する。そして治療用レーザ光は光結合分離装置接続ファイバ110を介して複合光ファイバに出力され、第1の実施形態と同様の手段により観察部位に照射される。
【0064】
観察部位からの反射光は、複合光ファイバを介して光結合分離装置接続ファイバ110から光結合分離装置に伝達される。光結合分離装置接続ファイバ110から入射した反射光は第3のダイクロイックプリズム1141に入射する。第3のダイクロイックプリズム1141の特性は図11に示される。
【0065】
第3のダイクロイックプリズム1141は波長780nmの光のみを通過する光学特性を有する。第3のダイクロイックプリズム1141における第3の反射面1142に入射した反射光のうち、波長780nmの反射レーザ光は第3の反射面1142で反射されて計測装置に導かれる。波長780nm以外の波長の光は画像として第3の反射面1142を透過して第1のダイクロイックプリズム231に入射する。第1のダイクロイックプリズム231は波長780nm以下の波長の光、すなわち可視光線を透過させる光学特性を有する。波長780nm以下である画像は第1のダイクロイックプリズム231を透過してレーザカットフィルタ1150に入射する。画像はレーザカットフィルタにより治療用レーザ光の成分を除去され、CCD1114に出力される。画像はCCD1114により電気信号へ変換され、第1の実施形態と同様の手段によりモニタに表示される。
【0066】
計測装置300は、光結合分離装置1100から入力された反射レーザ光を用いて実施形態1と同様の手段により、観察部位の血流、温度、及び遠位端部101から観察部位までの距離を算出する。
【0067】
これにより、光結合分離装置接続ファイバの接続部と、第1及び第3のダイクロイックプリズム231、1141と、CCDとを直線的に設けることが出来、光結合分離装置の幅を小さくすることが可能となる。
【0068】
なお、第1から第3の実施形態において、光結合分離装置に接続される光結合分離装置接続ファイバ、治療用レーザ装置、及び計測装置、そしてCCDのそれぞれの位置は互いに置き換えられても良い。このとき、各ダイクロイックプリズムの光学特性は各装置の位置に応じて変更される。
【0069】
また、第1から第3のダイクロイックプリズムの光学特性は、計測用レーザ光の波長に応じて変更されても良い。
【0070】
さらに、第2及び第3のダイクロイックプリズムの光学特性は、計測用レーザ光を透過せず、治療用レーザ光を透過するものであればよい。
【0071】
血流の測定は具体的な数値が求められるような方法によらなくても良く、血流が有るか無いかを判断できるような方法であっても良い。
【0072】
治療用レーザ光の制御は自動で行われなくても良い。モニタ440への警告表示又は画像処理装置430からの音声による警告により、治療用レーザ光の出力の調整又は照射の終了をユーザに認知させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】内視鏡装置のブロック図である。
【図2】ファイバスコープの遠位端部周辺を模式的に示した断面図である。
【図3】複合光ファイバの径方向断面図である。
【図4】複合光ファイバの長手方向断面図である。
【図5】第1及び第2のダイクロイックプリズムの光学特性を示したグラフである。
【図6】内視鏡装置における処理を示したフローチャートである。
【図7】治療用レーザ光の照射について示したブロック図である。
【図8】モニタ440に画像を表示する処理を示したフローチャートである。
【図9】第2の実施形態における内視鏡装置を模式的に示した図である。
【図10】第3の実施形態における光結合分離装置を模式的に示した図である。
【図11】第3のダイクロイックプリズムの光学特性を示したグラフである。
【符号の説明】
【0074】
100 ファイバスコープ
135 複合光ファイバ
133 照明用ファイバ
200 第1の光結合分離装置
231 第1のダイクロイックプリズム
232 第1の反射面232
241 第2のダイクロイックプリズム
242 第2の反射面242
300 計測装置
314 フォトディテクター
410 治療用レーザ装置
420 光源装置
430 画像処理装置
440 モニタ440
900 第2の光結合分離装置
1100 第3の光結合分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像用ファイバと、照明用ファイバと、前記画像用ファイバに接続される光結合分離装置と、前記光結合分離装置及び前記照明用ファイバに接続される計測装置とを備え、
前記画像用ファイバは、観察部位からの反射光を伝達して前記光結合分離装置へ出力し、
前記照明用ファイバは、前記計測装置から入力される計測用レーザ光を観察部位へ向けて伝達し、
前記光結合分離装置は、前記画像用ファイバから入力される前記反射光を画像及び反射レーザ光に分離し、
前記計測装置は、前記光結合分離装置から入力される前記反射レーザ光により観察部位の状態を測定することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記内視鏡装置は、治療用レーザ光を発生する治療用レーザ装置と、治療用レーザ光を伝達するレーザ用ファイバとをさらに備え、
前記治療用レーザ装置は、前記光結合分離装置へ前記治療用レーザ光を出力し、
前記光結合分離装置は前記治療用レーザ光を前記レーザ用ファイバに出力することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記計測装置は、前記反射レーザ光を用いて前記ファイバスコープの遠位端から観察部位までの距離を測定することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記計測装置は、前記反射レーザ光を用いて観察部位の血流を測定することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記計測装置は、前記反射レーザ光を用いて観察部位の温度を測定することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記内視鏡装置は情報処理装置をさらに備え、
前記計測装置は、前記反射レーザ光を用いて観察部位の温度を測定し、観察部位の温度を示す温度信号を前記情報処理装置へ出力し、
前記情報処理装置は前記温度信号に従い前記治療用レーザ光の出力を制御することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記光結合分離装置は、ダイクロイックプリズムを用いて前記反射光の分離を行うことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記照明用ファイバに前記照明光を入力する光源装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記レーザ用ファイバの径方向における周囲には前記画像用ファイバが前記レーザ用ファイバと同軸に設けられて複合光ファイバを構成し、
前記複合光ファイバの径方向における周囲には前記照明用ファイバが前記複合光ファイバと同軸に設けられてファイバスコープを構成することを特徴とする請求項8に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記内視鏡装置はモニタをさらに備え、前記画像は前記モニタに表示されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−104791(P2008−104791A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292578(P2006−292578)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(502196050)国立成育医療センター総長 (8)
【出願人】(307029319)エーテック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】