説明

冊子、箔押用版、箔押装置及び冊子の製造方法

【課題】 アドレス帳の前小口側に階段状のインデックスを設けるものとしたが、インデックスに頻繁に指が触れるので汚れる。また、インデックスの汚れを防止するために、インデックスの部分を樹脂フィルム等で被覆しようとするとコストがかかる。
【解決手段】 アドレス帳の階段状のインデックスに箔押しを行い、インデックス部分を箔で被覆する。これにより、箔がインデックス部分の被膜となり、箔からなる被膜によってインデックス部分の汚れを防止することができる。また、箔押しにおいては、箔押用版として階段状の特殊なものをつくれば、通常の箔押機で対応できる。従って、インデックス部分を被膜するものとしても、箔押機があれば、新たな設備投資を必要とせず、低コストでインデックスの被覆を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、手帳、アドレス帳、その他の各種の製本された冊子に係り、特に、前小口部分に切り込みによりインデックスとなる段部が設けられた冊子に関するとともに、該冊子の段部に箔押しを行う箔押用版と、該箔押用版を用いて箔押しを行う箔押装置と、上記冊子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ルーズリーフ式の手帳やアドレス帳や各種帳簿やノート等においては、その仕切頁等に他の頁の前小口側の側縁部より外側に突出したインデックスが取り付けられていた。該インデックスは、複数設けられるとともに、各インデックス毎に上下に位置をずらして配置されるようになっているので、目的とするインデックスの部分に指を掛けて頁を開くことにより、目的とする一群の頁の部分をすぐに開くことが可能となっていた。
【0003】また、ルーズリーフ式のものではなく、製本された冊子においても、辞書などには、その前小口部分に、対応する項目の一群の頁毎に円弧状の切り込みを入れた、切り込みインデックスも知られている。この切り込みインデックスにおいては、各項目に対応する各頁群毎に冊子の前小口部分に凹部が形成されることになり、この凹部に指を掛けることで、目的とする頁群をすぐに開くことができるようになっている。
【0004】そして、製本された冊子においては、最初の頁から一群の頁毎に前小口側の側縁部に、該側縁部に沿った長さが順次短くなるような切欠部を形成することにより、階段状の段部を形成し、階段状の段部の各段において、その一枚目の部分をインデックスとしたものが開発されている。このような冊子は、例えば、アドレス帳などとして使用されるものであり、階段状の段部の各段に、例えば、ア行、カ行等のアイウエオの51文字の各行の先頭の文字やアルファベット等が割り付けられるようになっている。
【0005】そして、このようなアドレス帳においては、例えば、上記階段状の段部の一番上の段を指で上から押さえ、次に、指を段部上を滑らすようにして下側に移動させ、目的のインデックスの部分で指を止めて頁を開くようにすることで、上記切り込みインデックスにより容易に目的とする頁群を開けるようになっている。しかし、上述のような階段状のインデックスにおいては、インデックス上を指を滑らすようにして移動させるので、頻繁に指で擦られることにより、インデックスの部分が手垢等により汚れやすいという問題や、インデックスの部分が傷む等の問題があった。すなわち、紙は、多数の繊維からなりその表面に多数の凹凸があるので、汚れが付着しやすい状態となっている。また、紙は、擦られるとその繊維が切断される等により、柔らかくなったり、薄くなったりすることになる。
【0006】そこで、上記インデックスの部分に例えば合成樹脂性の被膜を形成することで、汚れを付着しにくするとともに、指で擦られることに対する耐久性を付与することが考えられる。従来、ルーズリーフ式の手帳やその他ファイル等において用いられる仕切紙のインデックスにおいては、そのインデックス部分に貼り付けるための樹脂フィルムが市販されている。
【0007】また、製本された状態の手帳やアドレス帳に上述のような階段状の段部を形成し、これをインデックスとしたものについては、段部の各段において、その一番上の紙のインデックスとなる部分に、樹脂をコーティングして被膜を形成したものが知られている。上述のようにインデックス部分に樹脂の被膜を形成することで、指等が直接インデックスとなる紙の部分に触れないようにし、手垢による汚れや、擦ることによる紙の傷みを防止し、ある程度長期に渡って、インデックス部分の美観を確保するとともに耐久性を付与することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のようにインデックス部分にフィルムを一枚ずつ貼っていくものとした場合には、大変手間がかかることになり、使用者が自分の使用する冊子のインデックスにフィルムを貼る場合には、それほど問題ないが、冊子を製品化する段階で、フィルムを貼るようにした場合には、冊子のコストが高くなってしまう。一方、インデックス部分に樹脂をコーティングするものとした場合には、樹脂をコーティングする専用の高価な機械を必要とし、高い設備コストがかかることになる。
【0009】なお、上述のような階段状の段部をインデックスとして設けた冊子においては、インデックス部分が綴じられる前の紙の状態ならば、比較的容易に、樹脂フィルムを貼ったり、樹脂をコーティングすることが可能となるが、紙が冊子の状態となった後では、樹脂フィルムを貼ったり、樹脂をコーティングすることが困難なものとなり、自動化等においても設備に大きなコストがかかることになる。また、紙の状態でインデックス部分に樹脂の被膜を形成するのならば、印刷によっても樹脂の被膜を形成することが可能であり、既存の印刷機を使用することも可能となる。しかし、アドレス帳等の比較的薄い冊子においては、中綴じにより製本されるので、各頁となる紙が綴じられた際に、前小口側においては、各頁のうちの中央の頁が一番突出した状態となり、中央より外側(表紙側及び裏表紙側)に向かうにつれて後退した状態となるので、紙を綴じた後に前小口側を裁断することにより、前小口が揃えられた状態となる。
【0010】すなわち、このような冊子においては、綴じられて裁断された状態で、各頁の前側の側縁の位置が決まることになるので、綴じられる前の紙の段階で、インデックスが配置される頁の前側の側縁部に樹脂の被膜を形成するようにしても、製本した段階、すなわち、前側の側縁部を裁断した段階で位置ずれが生じることになる。従って、階段状のインデックスを有する冊子をきれいに仕上げるためには、製本後にインデックス部分に樹脂の被膜を形成する必要があり、製本された冊子に対して、上述のように樹脂の被膜を形成しようとすると、比較的高価な専用の設備が必要となり、設備コストが高くなってしまう。
【0011】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、比較的安価に製造することができる段状のインデックス部分に被膜が形成された冊子と、該冊子のインデックス部分に容易に被膜を形成することができる箔押用版、箔押装置及び冊子の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の冊子は、複数の紙が綴じられ、かつ、綴じられた紙の綴じられた部分の反対側の側縁部に、一枚もしくは複数枚の紙毎に上記側縁部に沿って異なる長さの切欠部が形成されることにより、上記側縁部に複数の段からなる段部が形成された冊子であって、上記段部の各段の上面に対応する上記紙の部分に、箔押しにより箔が接着されていることを上記課題の解決手段とした。
【0013】上記構成によれば、段部の各段の上面を例えば、インデックスとした場合に、インデックスの表面が箔に覆われることになり、指でインデックス部分を押さえたり擦ったりしても、インデックス部分の汚れや傷みの防止を図ることができる。また、インデックス部分に箔押しを行うことにより、インデックス部分に被膜を形成しているので、上述のような冊子の段部に対応した箔押し用の版さえあれば、既存の箔押機により、インデックス部分を被膜で覆うことが可能となり、インデックス部分に被膜を形成するために必要な初期の設備コストは、既に、箔押機があれば、版の作成費用だけとなり、インデックス部分に被膜を形成するのに必要な設備コストを大幅に低減することができる。
【0014】また、箔押しを施すことにより、インデックス部分の汚れや傷みの防止だけではなく、インデックス部分に、金属光沢や各種色をつけることができ、美観の向上を図って冊子に豪華さを付与することができる。なお、箔押しにおける箔とは、金属箔、色箔等があるが、基本的には箔押しのうちのホットスタンピングで用いられる透明な転写箔が好ましい。また、透明な転写箔は、必ずしも、無色透明ではなく、色や模様をつけたり、金属光沢をつけたりすることが可能である。
【0015】本発明の請求項2記載の冊子は、上記箔が透明な樹脂製とされるとともに、ホットスタンピングにより箔押しされることを上記課題の解決手段とした。上記構成によれば、箔がホットスタンピングで用いられる透明な転写箔となっているので、インデックス部分に箔押しの前にアルファベットやアイウエオ等の文字や、その他の文字を印刷するものとしても、その文字を箔を透かして見ることが可能となる。なお、箔押し(Stamping)におけるホットスタンピングは、一種の熱転写印刷であり、箔押しに際して箔フィルムが用いられる。この箔フィルムは、転写される箔部分を支持するベースフィルムと、ベースフィルム上に形成され、箔部分をベースフィルムから剥がす機能を有する離型層と、箔部分を被箔押物に接着させる接着層と、これら離型層と接着層とに挟まれた実際の箔となる部分からなるものである。
【0016】本発明の請求項3記載の箔押用版は、上記請求項1または2記載の上記冊子の段部において、上記紙の各段の上面に対応する部分に箔押しする際に、上記箔を上記冊子の上記段部に押し当てる箔押用版であって、上記箔を上記冊子の段部に押圧する押圧面に、上記冊子の段部に対応するように複数の段が形成されていることを上記課題の解決手段とした。上記構成によれば、綴じられた紙の綴じられた部分の反対側の側縁部に、一枚もしくは複数枚の紙毎に上記側縁部に沿って異なる長さの切欠部が形成されることにより設けられた冊子の段部において、各段の一番上の紙の部分、すなわち、インデックスとして用いられる部分に箔押しを行うことができる。
【0017】この箔押用版を用いることにより、一度の箔押しにより、冊子の段部において、各段のインデックス部分に、箔による被膜を形成することができる。従って、極めて容易かつ安価に冊子のインデックス部分に被膜を形成して、インデックス部分を指で操作することによる汚れ及び傷みを防止することができる。なお、上記箔押用版は、基本的に金版であり、箔押しに際して容易に加熱できるようになっている。
【0018】本発明の請求項4記載の箔押用版は、上記押圧面を有する金属製の版本体と、該版本体の上記押圧面を覆うように形成されたゴム層とを備えたことを上記課題の解決手段とした。上記構成によれば、箔押しに際して、箔押用版を冊子の段部に押し付けた際に、ゴム層が押圧されて広がり、各段の上面において、段差側の側縁部分等にもきれいに箔を押すことが可能となる。なお、ゴム層は、例えば、シリコンラバーであり、加熱されて押圧されるゴム層としては、比較的耐熱性に優れるとともに、高温で適度な弾性を有する樹脂からなるものが好ましく、耐熱性等が劣る合成ゴムや天然ゴム等を用いるのは困難である。
【0019】本発明の請求項5記載の箔押装置は、上記請求項3または4記載の箔押用版を用いて上記冊子の段部に、箔押しを行う箔押装置であって、上記箔押用版と、上記冊子の段部と上記箔押用版との間に上記箔を挟んだ状態で、上記箔を上記冊子の段部に押し付ける押圧手段と、上記箔押用版を加熱する加熱手段とを備え、上記押圧手段により箔押用版の押圧面を箔を挟んだ状態で上記冊子の段部に押し付けるとともに、上記加熱手段により箔押用版を加熱することで、上記箔の上記箔押用版に対応する部分を加熱し、上記冊子の段部に箔を接着させることを上記課題の解決手段とした。上記構成によれば、上記請求項3または請求項4記載の箔押用版を用いて、箔を押すことができるが、基本的に箔押装置は、公知の箔押機に上記箔押用版を取り付けたことを特徴とするものであり、既存の箔押機を版を交換するだけで、特殊な形状となった冊子の段部に箔押しを行うことができるようになっており、設備コストの低減を図ることができる。
【0020】本発明の請求項6記載の冊子製造方法は、上記請求項1または2記載の上記冊子を製造する冊子の製造方法であって、複数の紙を綴じるとともに、綴じられた紙の綴じられた部分の反対側の側縁部に、一枚もしくは複数毎の紙毎に上記側縁部に沿って異なる長さの切欠部を形成することにより段部を形成し、次いで、上記段部の各段の上面に対応する上記紙の部分に、箔押しすることにより箔を接着することを上記課題の解決手段とした。
【0021】上記構成によれば、インデックスとして利用可能な段部を有する請求項1または2記載の冊子の製造において、製本するとともに段部が形成された状態の冊子に際して、その段部に箔押しにより各段の上面に被膜を形成するようになっているので、製本する前にインデックスとなる部分に被膜を形成した場合のように被膜の位置がずれるようなことがない。また、インデックスとして利用可能な段部に、箔押しにより被膜を形成しているので、樹脂フィルムを貼ったり、樹脂をコーティングしたりするのに比較して、被膜を形成するための機械にかかる設備コストを低減できるとともに、容易にインデックス部分に被膜を形成することができる。すなわち、この冊子の製造方法によれば、位置ずれなど生じることなく、段部の各段の上面を構成する紙の部分を低コストで綺麗に被覆することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態の一例の冊子、箔押用版、箔押装置及び冊子製造方法を図面を参照して説明する。図1は、この一例の冊子1を、表紙2を開いた状態で示したものである。図1に示すように、この一例の冊子1の各頁となる紙が綴じられた背3の反対側の側縁部、すなわち、前小口側には、階段状の段部4が形成され、この段部の各段の上面となる部分がアイウエオ51音の行毎の文字を示すインデックスとなっている。
【0023】上記段部4は、冊子1として綴じられた紙の前小口側の側縁部に、一枚もしくは複数枚の紙毎に上記側縁部に沿って異なる長さの切欠部が形成されることにより形成されたものである。すなわち、冊子1の前小口側の側縁部においては、各頁に切欠部が設けられるとともに、複数枚の頁毎に、頁数が多くなるにつれて切欠部の長さが短くなるようにされ、かつ、切欠部の長さを短くするに際して、切欠部の上側縁部が例えば下側になるようにされているので、残された部分が階段状の段部4となっている。
【0024】また、言い換えれば、最初の数枚の頁においては、アとかかれた矩形状の一番上のインデックス部分が、上記頁の側縁部より突出した状態とされ、次の数枚の頁においては、インデックス部分の側縁部に沿った長さが、アとかかれたインデックス部分の倍の長さとされ、次の数枚の頁においては、インデックス部分の側縁部に沿った長さが、アとかかれたインデックス部分の三倍の長さとされ、それ以降の頁においても、数枚の頁毎に、インデックス部分の長さが順次、アとかかれたインデックス部分の長さ分ずつ長くされるようになっていることで、階段状の段部が形成されている。
【0025】すなわち、冊子1の綴じられた紙の綴じられた部分の反対側の側縁部に、該側縁部が突出するようにインデックス部分が設けられるとともに、該インデックスの上記側縁部の長さが、数枚の頁毎に順次頁が大きくなるにつれて長くなることで、階段状の段部が形成されている。そして、階段状の段部においては、数枚の頁毎に各段が形成され、図2に示すように、各段の一番上の頁となる紙pの部分に、上述のようにアイウエオ51音の各行の最初の文字が印字されるとともに、後述する箔押しにより設けられた箔からなる被覆層hが形成されている。
【0026】すなわち、図1に示す冊子1の段部4において、冊子1を形成する各紙pのうちの段部4の各段の上面を構成する部分、すなわち、図1に示すように、冊子1を閉じた状態(表紙を除く)で、段部4で露出する部分に、箔からなる被覆層hが形成されている。該被覆層hは、この一例において、箔押しのうちのホットスタンピングにより転写された箔であり、その主要部分が合成樹脂(例えば、テトロンフィルム)からなる透明なものである。なお、箔からなる被覆層hは、例えば、3μm程度のものであり、必ずしも透明度が高い必要はなく、被覆層hを透かして下の紙pに印刷された文字が透けて読めれば良い。
【0027】そして、上記階段状の段部4をインデックスとした場合には、例えば、冊子1の背3側の部分を左手で持ち、段部4の一番上の段を上から右手の親指で押さえるとともに、段部4の下側を右手の他の指で支えた状態とし、右手の親指を下側に滑らせるようにずらして、親指が目的のインデックスが印刷された段を押さえた状態とする。そして、この状態で、右手を下げるようにして冊子の頁を開くことにより目的のインデックスに対応する頁が開くことになる。
【0028】そして、このように冊子1を用いる場合に、インデックスとなる段部4に上述のように、被覆層hを形成することにより、段部4の各段の上面が手垢等で汚れるのを防止するとともに、段部4の紙pが指で擦られることにより傷むのを防止することができる。また、一般的に、被覆層hの方が冊子1の紙の表面より滑りやすく、上述のよに段部を指で押さえた状態で、指を滑らすように移動させる際に、スムーズに指を動かすことができる。
【0029】また、段部4に上記被覆層hを設けることにより、インデックスとなる段部4に他と異なる色をつけたり、金属光沢等の光沢をつけたりすることができ、冊子1の美観を高めることができるとともに、冊子1に豪華さを付与することができる。次に、上記冊子1の製造において、段部4に被覆層hを形成するための箔押装置10について説明する。
【0030】図3は、この一例の箔押装置10を示すものである。箔押装置10は、その箔押用版20を除いて、基本的に周知の箔押機である。そして、この例において、箔押装置10となる箔押機は、ホットスタンピング用の箔押機となっている。そして、箔押装置10は、冊子1に箔を押し付けて箔を接着させる上記箔押用版20と、箔押しされる冊子1等の被箔押物を載置する台11と、該台上11の被箔押物に箔押用版20を押し付けるための押圧手段12と、箔押用版20を加熱するための加熱手段(図示略)と、箔押用版20を取り付けるための取付部13と、箔フィルム14を自動供給する箔フィルム供給装置(図示略)とを備えたものである。
【0031】なお、箔押装置10は、箔を被箔押物に熱をかけた状態でプレスするプレス装置となっている。そして、上記箔押用版20は、図4に示すように、その箔を押圧する面が冊子1の段部4に対応する段とされたものであり、この一例において、その押圧面が階段状となっている。また、箔押用版20は、金属製の金版21と、金版21の階段状の押圧面を被覆するシリコンラバー層22とからなっている。
【0032】そして、金版21の押圧面は、上述のように冊子1の段部4に対応する形状となっており、押圧面の各段の上面(使用時には下面となる)は、冊子1の段部4の各段の上面とほぼ同じ形状及び面積を有するものとなっている。また、金版21の押圧面に形成された階段状の段において、各段の段差の長さは、冊子1の段部4の各段の段差の長さとほぼ等しいものとなっている。
【0033】そして、金版21の押圧面は、シリコンラバー層22で覆われた状態となっているが、シリコンラバー層22の上面、すなわち、箔押用版20の実際の押圧面も金版21の押圧面の形状とほぼ同じものとなっている。なお、シリコンラバー層22の各段の段差の位置は、金版21の各段の段差の位置に対して、シリコンラバー層22の厚さ分だけ段が低くなる方向にシフトした状態となっている。
【0034】そして、上述のような箔押用版20によれば、冊子1の段部4に対応した形状を有するので、一度に、冊子1の段部4において、各段の上面となる冊子1の紙の部分に、箔を押圧して接着することができる。すなわち、箔押用版20を用いれば、極めて容易に冊子1のインデックスとなる段部4の各段の上面に箔による被覆を施すことができる。
【0035】上記台11は、箔押しされる冊子1を載置するものであり、上から押圧される冊子1を支持するようになっている。上記押圧手段12は、箔押用版20を台11上の冊子1等の被箔押物に、押し付けるためのプレス装置である。上記加熱手段は、箔押用版20に熱をかけるためのものであり、取付部13を介して箔押装置10の押圧手段12に取り付けられる箔押用版20を、上記取付部13側から加熱するようになっている。
【0036】上記取付部13は、図5に示すように、金属製の板部13aと、取付部13の箔押装置10からの着脱操作用のハンドル部13b、13bとを有するものである。そして、取付部13は、板部13aの下面に箔押用版20が取り付けられるようになっている。また、取付部13は、その板部13aが押圧手段12の下端部に取り付けられるようになっている。また、取付部13の板部13aは、加熱手段により加熱可能となっている。上記フィルム供給手段は、テープ状の箔フィルム14を供給する装置であり、巻き取られてロール状の箔フィルム14を引き出すとともに、ローラ15,15等を用いて箔押装置10に取り付けられた箔押用版20の下側を通し、再び巻き取るようにしたものであり、基本的に一般的なテープの送り装置となっている。
【0037】また、上記箔フィルム14(スタンピング用転写箔)は、テープ状のものであり、例えば、5層構造となっている。このような箔フィルム14としては、例えば、転写される箔の部分を支持するベースフィルムと、ベースフィルム上に形成された離型層、着色層、蒸着層及び接着層からなるものなどが知られている。そして、このような箔フィルム14においては、被箔押物に接着層を向けた状態で箔押用版20により箔フィルム14をベースフィルム側から被箔押物側に押圧するとともに加熱すると、箔フィルム14の箔押用版20に接触した部分において、ベースフィルムから離型層がはがれるとともに、接着層が被箔押物に接着することになる。
【0038】つぎに、上記箔押用版20及び箔押装置10を用いて、冊子1の段部4に箔押を行って冊子1を完成させる冊子1の製造方法を説明する。まず、冊子1は、複数の紙を中綴じにより製本するとともに、その前小口側の側縁部が段状となるように、切欠部を形成する、すなわち、階段状の段部4からなるインデックスを形成する。また、インデックスとなる階段上の段部4の各段において、その上面に索引となる文字を印字しておく。
【0039】以上のように、冊子1を紙を綴じてほぼ製本した状態とし、次いで、箔押装置10において、取付部13に箔押用版20を取り付けて固定し、箔押用版20が固定された取付部13を箔押装置10の押圧手段12に取り付ける。そして、冊子1の表紙2を開いて図1に示すように段部4を露出した状態とし、この冊子1を台11上において、箔押用版20に対応する位置に載置する。また、この際には、箔フィルム14が箔押用版20と冊子1との間に配置されるようにするとともに、箔フィルム14を予め送っておき、箔フィルム14のまだ転写が行われていない部分が冊子1の上に来るようにしておく。
【0040】また、箔押用版20は、箔押装置10に取り付けられた状態で、加熱手段により所定の温度に加熱しておく。次に、押圧手段12により箔押用版20を下方に押し下げて、箔フィルム14の転写側の面を冊子1の段部4に押し付ける。この際に、冊子1の段部4の形状と箔押用版20の押圧面とが対応した形状とされ、もし箔フィルム14がないものとすれば、冊子の段部4の各段上面と、箔押用版20の押圧面の各段の下面とが面接触した状態となるようになっている。
【0041】従って、押圧手段12により箔押用版20を押圧した状態においては、箔押用版20により、冊子1の段部4の各段上面に、箔フィルム14の転写面が押し付けられるとともに、加熱された状態となる。これにより、冊子1の段部4の各段上面には、その全面(段部4の範囲内)に渡って、箔が転写される。
【0042】以上のように、この一例の冊子1によれば、インデックスとなる段部4において、各段の上面に箔押しによる被覆層hが形成され、かつ、被覆層hが冊子1を構成する紙に比較して汚れが付着しずらいので、指で頻繁に触られる段部の各段上面が手垢等で汚れるのを防止することができる。また、被覆層hがインデックスとなる段部4の各段の上面を構成する紙の保護層となり、指で頻繁に操作されることにより、段部4の紙が傷むのを防止することができる。
【0043】また、被覆層hが、冊子1を構成する紙の表面よりも滑りやすくすることが可能であり、段部4上で指を滑りやすくすることで、段部4のインデックスとしての操作性を向上することができる。また、この一例の箔押用版20は、その押圧面が冊子1の段部4の形状に対応する形状、すなわち段部4と同様の段が形成された形状となっているので、冊子1の段部4に箔押用版20の押圧面を押当てた場合に、冊子の段部4の各段上面に、箔押用版20の段が形成された押圧面の各段の下面が面接触するようになっている。
【0044】従って、箔押しに際して、冊子1の段部4の各段上面に、一度の箔押用版20を用いた箔押しにより、箔を接着することができる。すなわち、箔押用版20を用いることにより、容易に冊子1の段部4に箔押しを行うことができる。また、箔押用版20は、金型21の押圧面にシリコンラバー層22を被覆した状態となっているので、箔押用版20を冊子1の段部4に押し付けた際に、押圧力によりシリコンラバー層22が広がり、冊子1の段部4の各段上面において、その隅々まで、広がることになる。
【0045】従って、箔押用版20を用いれば、冊子1の段部4において、各段の上面の隅々、例えば、隣接する段との段差部分の境目まで綺麗に箔を接着することが可能となる。また、箔押装置10は、基本的に、箔押用版20を除いて既存の箔押装置10であり、以前から冊子1の製本を行う現場において箔押し(ホットスタンピング)を用いているものとすれば、冊子1の段部4の各段上面を被膜で被覆するために、新しい装置を導入する必要がなく、上記箔押用版20を新たにつくるだけで、冊子1の段部4において、各段上面の被覆を行うことができる。
【0046】すなわち、冊子1の段部4を被覆するための設備投資としては、従来の箔押機がある場合に、箔押用版20をつくるための費用だけで良く、設備コストを極めて低いものとすることができる。また、箔押機を新たに購入するものとしても、冊子1の段部4に樹脂をコーティングするための高価な設備を購入するのに比較すれば、僅かな費用ですむことになる。
【0047】そして、上記箔押用版20が取り付けられた箔押装置10を用いて冊子1の段部4に被覆を行って冊子1を完成させる冊子1の製造方法によれば、冊子1に段部を形成した状態で製本した後に、段部4の各段の上面に被覆を施すので、製本前(綴じられる前)の紙において、段部4の各段の上面に対応する部分に被覆を施した場合に比較して、位置ずれがほとんどなく、綺麗に被覆を施すことができるとともに、段部4が形成された状態で製本された冊子1において、上記段部4において被覆を形成するものとしても、上述のように箔押用版20を備えた箔押装置10により、容易に箔押しによって被覆を形成することができる。
【0048】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の冊子によれば、段部の各段の上面を例えば、インデックスとした場合に、インデックスの表面が箔に覆われることになり、指でインデックス部分を押さえたり擦ったりしても、インデックス部分の汚れや傷みの防止を図ることができる。また、インデックス部分に箔押しを行うことにより、インデックス部分に被膜を形成しているので、上述のような冊子の段部に対応した箔押し用の版さえあれば、既存の箔押機により、インデックス部分を被膜で覆うことが可能となり、インデックス部分に被膜を形成するために必要な初期の設備コストは、版の作成費用だけとなり、インデックス部分に被膜を形成するのに必要な設備コストを大幅に低減することができる。また、箔押しを施すことにより、インデックス部分の汚れや傷みの防止だけではなく、インデックス部分に、金属光沢や各種色をつけることができ、美観の向上を図って冊子に豪華さを付与することができる。
【0049】本発明の請求項2記載の冊子によれば、箔がホットスタンピングで用いられる透明な転写箔となっているので、インデックス部分に箔押しの前に文字を印刷するものとしても、その文字を箔を透かして見ることが可能となる。本発明の請求項3記載の箔押用版によれば、綴じられた紙の綴じられた部分の反対側の側縁部に、一枚もしくは複数枚の紙毎に上記側縁部に沿って異なる長さの切欠部が形成されることにより設けられた冊子の段部において、各段の一番上の紙の部分、すなわち、インデックスとして用いられる部分に箔押しを行うことができる。この箔押用版を用いることにより、一度の箔押しにより、冊子の段部において、各段のインデックス部分に、箔による被膜を形成することができる。従って、極めて容易かつ安価に冊子のインデックス部分に被膜を形成し、インデックス部分を指で操作することによる汚れ及び傷みを防止できる。
【0050】本発明の請求項4記載の箔押用版によれば、箔押しに際して、箔押用版を冊子の段部に押し付けた際に、ゴムが押圧されて広がり、各段の上面において、その側縁部分等にもきれいに箔を押すことが可能となる。本発明の請求項5記載の箔押装置によれば、上記請求項3または請求項4記載の箔押用版を用いて、箔を押すことができるが、基本的に箔押装置は、公知の箔押機に上記箔押用版を取り付けたことを特徴とするものであり、既存の箔押機を版を交換するだけで、特殊な形状となった冊子の段部に箔押しを行うことができるようになっており、設備コストの低減を図ることができる。
【0051】本発明の請求項6記載の冊子の製造方法によれば、インデックスとして利用可能な段部を有する請求項1または2記載の冊子の製造において、製本するとともに段部が形成された状態の冊子に、その段部に箔押しにより各段の上面に被膜を形成するようになっているので、製本する前にインデックスとなる部分に被膜を形成した場合のように被膜の位置がずれるようなことがない。また、インデックスとして利用可能な段部に、箔押しにより被膜を形成しているので、樹脂フィルムを貼ったり、樹脂をコーティングしたりするのに比較して、被膜を形成するための機械にかかる設備コストを低減できるとともに、容易にインデックス部分に被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の冊子を示す斜視図である。
【図2】上記例の冊子の段部における段の上面を構成する紙に被覆が施された状態を示す段面図である。
【図3】上記例の箔押装置を示す要部斜視図である。
【図4】上記例の箔押用版を示す斜視図である。
【図5】上記例の箔押用版を箔押装置に取り付けるための箔押装置の取付部を示す斜視図である。
【符号の説明】
p 紙
h 被覆層(箔)
1 冊子
4 段部
10 箔押装置
12 押圧手段
20 箔押用版
21 金版(版本体)
22 シリコンラバー層(ゴム層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の紙が綴じられ、かつ、綴じられた紙の綴じられた部分の反対側の側縁部に、一枚もしくは複数枚の紙毎に上記側縁部に沿って異なる長さの切欠部が形成されることにより、上記側縁部に複数の段からなる段部が形成された冊子であって、上記段部の各段の上面に対応する上記紙の部分に、箔押しにより箔が接着されていることを特徴とする冊子。
【請求項2】 上記箔が透明な樹脂製とされるとともに、ホットスタンピングにより箔押しされることを特徴とする請求項1記載の冊子。
【請求項3】 上記請求項1または2記載の上記冊子の段部において、上記紙の各段の上面に対応する部分に箔押しする際に、上記箔を上記冊子の上記段部に押し当てる箔押用版であって、上記箔を上記冊子の段部に押圧する押圧面に、上記冊子の段部に対応するように複数の段が形成されていることを特徴とする箔押用版。
【請求項4】 上記押圧面を有する金属製の版本体と、該版本体の上記押圧面を覆うように形成されたゴム層とを備えたことを特徴とする請求項3記載の箔押用版。
【請求項5】 上記請求項3または4記載の箔押用版を用いて上記冊子の段部に、箔押しを行う箔押装置であって、上記箔押用版と、上記冊子の段部と上記箔押用版との間に上記箔を挟んだ状態で、上記箔を上記冊子の段部に押し付ける押圧手段と、上記箔押用版を加熱する加熱手段とを備え、上記押圧手段により箔押用版の押圧面を箔を挟んだ状態で上記冊子の段部に押し付けるとともに、上記加熱手段により箔押用版を加熱することで、上記箔の上記箔押用版に対応する部分を加熱し、上記冊子の段部に箔を接着させることを特徴とする箔押装置。
【請求項6】 上記請求項1または2記載の上記冊子を製造する冊子の製造方法であって、複数の紙を綴じるとともに、綴じられた紙の綴じられた部分の反対側の側縁部に、一枚もしくは複数毎の紙毎に上記側縁部に沿って異なる長さの切欠部を形成することにより段部を形成し、次いで、上記段部の各段の上面に対応する上記紙の部分に、箔押しすることにより箔を接着することを特徴とする冊子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平11−245540
【公開日】平成11年(1999)9月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−49705
【出願日】平成10年(1998)3月2日
【出願人】(598028017)株式会社吉澤晃文堂 (1)
【出願人】(000005027)株式会社パイロット (6)