説明

再帰反射シート及びそれを用いた車両用ナンバープレート

【課題】エンボス成形後に取り除きやすく、標示部以外に破れが伝播しない再帰反射シートを提供すること、及びそのような再帰反射シートを用いた車両用ナンバープレートを提供することである。
【解決手段】標示部がエンボス成形され、標示部上部の再帰反射シートが取り除かれてプレート基材(51)が露出している車両用ナンバープレート(50)に用いられる再帰反射シート(10)であって、温度23℃、湿度RH65%の環境下で測定した際に、120%以下の伸びを持ち、10N/inch以上の破断強度を持ち、プレート基材(51)に対する接着力よりも破断強度が大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射シート及びそれを用いた自動車やオートバイ等の車両用ナンバープレートに関する。より詳しくは、再帰反射シートが封入レンズ型再帰反射シートで、ナンバープレートの標示部がエンボス成形された車両用ナンバープレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートはよく知られており、ナンバープレートの分野で広く利用されている。
【0003】
このような再帰反射シートとしては、微小ガラス球と、アルミニウム板を真空蒸着した鏡面反射層とを有するものを再帰反射素子として用いた、封入レンズ型再帰反射シートがよく知られている。
【0004】
封入レンズ型再帰反射シートの例としては、特開昭59−71848号公報(特許文献1)に詳しく開示されている。
【0005】
従来より、このような封入レンズ型再帰反射シートをアルミニウム板等の基材に貼り合わせて標示部をエンボス成形した後、標示部の封入レンズ型再帰反射シートを取り除き、標示部にローラーコート法やホットスタンプ法で印刷した車両用ナンバープレートが知られている。
【0006】
しかしながら、この印刷作業は煩わしいものであり、他の簡易な方法が要望されていた。
【0007】
印刷に代わる方法として、封入レンズ型再帰反射シート、接着剤層付きアルミニウム箔シート、塗装板をこの順に積層して、標示部をエンボス成形した後、標示部上に配置される封入レンズ型再帰反射シートと、接着剤層付きアルミニウム箔シートを取り除き、塗装板の色を標示部として識別させる車両用ナンバープレートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−71848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、エンボス成形したとき、そのエンボス成形により浮き出される標示部上に配置される封入レンズ型再帰反射シートと、その標示部以外の部分上に配置される封入レンズ型再帰反射シートとが切断されずに繋がった状態のままとなる場合がある。このような場合、標示部上に配置される封入レンズ型再帰反射シートを取り除こうとすると、標示部以外の反射シートが追随して取り除かれることとなり、この結果、車両用ナンバープレートの標示部が認識し難い状態となることがある。
【0010】
また、標示部上に配置される封入レンズ型再帰反射シートを取り除く際に、その封入レンズ型再帰反射シートに加えられる力によって、封入レンズ型再帰反射シートが取り外し途中で破れてしまう場合がある。このような場合、標示部上に配置される封入レンズ型再帰反射シート全体を取り除くことができずに取り残しが生じ、この結果、車両用ナンバープレートの標示部が認識し難い状態となることがある。
【0011】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、エンボス成形後に取り除きやすく、標示部以外に破れが伝播しない再帰反射シートを提供すること、及びそのような再帰反射シートを用いた車両用ナンバープレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
標示部がエンボス成形され、標示部上部の再帰反射シートが取り除かれてプレート基材が露出している車両用ナンバープレートに用いられる再帰反射シートであって、前記再帰反射シートは、温度23℃、湿度RH65%の環境下で測定した際に、120%以下の伸びを持ち、10N/inch以上の破断強度を持ち、前記プレート基材に対する接着力よりも前記破断強度が大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンボス成形後に取り除きやすく、標示部以外に破れが伝播しない再帰反射シートを提供すること、及びそのような再帰反射シートを用いた車両用ナンバープレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る再帰反射シートの構成を説明する断面図である。
【図2】本実施形態に係る車両用ナンバープレートを説明する図である。
【図3】図2のV−V断面の様子を示す図である。
【図4】プレート基材一面に封入レンズ型再帰反射シートを積層した様子を、図3と同様の視点から示す図である。
【図5】エンボス成形後の様子を、図3と同様の視点から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る再帰反射シートの好適な実施形態について、図を用いて説明する。
【0016】
図1に示されるように、封入レンズ型再帰反射シート(10)は、少なくとも、表面保護層(1)と、微小ガラス球(4)を保持する保持層(3)と、微小ガラス球の焦点位置に配置された鏡面反射層(6)と、鏡面反射層を焦点位置に配置させるための焦点形成層(5)と、接着剤層(17)とを有する。これら層は、表面保護層(1)、保持層(3)、焦点形成層(5)、鏡面反射層(6)、接着剤層(17)の順序で積層される。
【0017】
尚、図示しない光源より表面保護層(1)に向けて光線が発せられた場合、その光線は、表面保護層(1)より入射し、保持層(3)とガラス球(4)と焦点形成層(5)を通過する。通過後、入射した光線(入射光)は、鏡面反射層(6)によって、入射光が通過した同一経路Xを通って光源方向に再帰反射される。
【0018】
この実施形態の場合、表面保護層(1)と保持層(3)との間には、剥離改良層(16)が配置される。また、剥離改良層(16)と保持層(3)との間には、再帰反射シートを着色したり、製造ロットや製品グレード等を識別したりするための印刷層(2)が配置される。このような封入レンズ型再帰反射シート(10)には、再帰反射シート(10)を各種基材に接着するまでの間、接着剤層(17)を保護するために、反射シート(10)と剥離可能な剥離基材(30)が、接着剤層(17)に設けられている。
【0019】
なお、本封入レンズ型再帰反射シート(10)を構成する各層は、溶剤キャスト法で形成することが、各層の厚み精度を高くすることができるので好ましい。
【0020】
また、この封入レンズ型再帰反射シート(10)は、温度23℃、湿度RH65%の環境下で測定したときに、少なくとも伸びが120%以下とされ、破断強度が10N/inch以上とされる。封入レンズ型再帰反射シート(10)における伸びや破断強度は、例えば、表面保護層(1)や接着剤層(17)の厚みや組成等を変更することで調整可能である。
【0021】
表面保護層(1)は、再帰反射シートの表面を形成する層であり、封入レンズ型再帰反射シート(10)の耐久性や強度を向上させる目的で設けられる。
【0022】
この表面保護層(1)の材料は、特に限定されるものではないが、通常、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。中でも、耐候性、加工性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂を用いることが好ましく、塗工適性や着色する際の着色剤の分散性等を考慮するとアクリル樹脂、ポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
【0023】
保持層(3)は、微小ガラス球(4)を保持する層であって、通常、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。耐候性、加工性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂を用いることが好ましく、塗工適性や着色する際の着色剤の分散性等を考慮するとアクリル樹脂を用いることが特に好ましい。
【0024】
鏡面反射層(6)は、光を反射するための層であって、通常、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル、マグネシウム、金、スズ等の金属を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法等の手段により形成されるが、焦点形成層の形状を反映した金属薄膜を均一に形成するためには、蒸着法が特に好ましい。鏡面反射層の厚みは、0.05μm〜0.2μm、好ましくは0.05μm〜0.15μm、特に好ましくは0.08〜0.12μmである。
【0025】
焦点形成層(5)は、鏡面反射層(6)を微小ガラス球(4)の焦点位置に配置するための層であって、通常、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて用いられるが、耐候性、塗工適性、熱安定性の点からアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
剥離改良層(16)は、エンボス成形により浮き出された標示部上に配置される再帰反射シート部位を破くことなく、ナンバープレート等のプレート基材から剥離できるよう剥離性を改良するためのものである。この剥離改良層(16)における破断強度は、プレート基材に対する接着層(17)の接着力よりも大きいものとされる。
【0027】
このような剥離改良層(16)の材料は、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて形成された樹脂フィルムであることが、標示部上に配置される再帰反射シート部位を破くことなく剥離させる観点から好ましい。
【0028】
中でも、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて形成された樹脂であることが、標示部上に配置される再帰反射シート部位を破くことなく剥離させる観点から特に好ましい。
【0029】
接着剤層(17)は、プレート基材等の各種基材に再帰反射シートを接着するための層であり、接着剤層を形成する樹脂の種類は例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム樹脂、フェノール樹脂等が用いられる。中でも耐候性に優れ、接着特性の良好なアクリル系樹脂又はシリコーン系樹脂が好適に用いられる。なお、接着剤層(17)における接着力を小さくすることが、封入レンズ型再帰反射シート(10)を剥がれやすくする観点では好ましい。この接着剤層(17)の接着力は、接着剤層が含む樹脂組成物の樹脂種類や分子量や官能基量を調整する、可塑剤を添加する、あるいは、架橋剤量を調整する等により小さくすることができる。また、接着剤層(17)の厚みを薄くして接着力を小さくすることもできる。
【0030】
このような封入レンズ型再帰反射シート(10)は、例えば、以下に述べる方法によって製造される。まず、フィルム状の工程基材に表面保護層用の樹脂配合液を塗工、乾燥することで、表面保護層(1)を得る。
【0031】
なお、この工程基材は、十分な強度があり、熱をかけた際に膨張、収縮が十分小さいものであれば特に制限されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、塩化ビニル等を材質とする基材が使用可能であり、中でもPETが特に好ましい。また、樹脂配合液の塗工方法は、所定の厚さで均一に塗工できる方法であれば特に制限されるものではないが、リバースロールコーティング法、コンマダイレクトコーティング法等の方法が好適に用いられる。
【0032】
次に、表面保護層(1)上に、剥離改良層用の樹脂配合液を塗工した後に乾燥して剥離改良層(16)を得る。
【0033】
次いで、剥離改良層(16)上に保持層用の樹脂配合液を塗工、半乾燥する。次いで、この半乾燥された保持層上に微小ガラス球を散布し、熱処理を施す。こうして、保持層(3)が得られる。なお、保持層の半乾燥の程度で、微小ガラス球を保持層中へ埋設する埋設率を調節することができる。
【0034】
次に、焦点形成層用樹脂配合液を微小ガラス球の表面に塗工する。この塗工方法は、所定の厚さで均一に塗工できる方法であれば特に制限されるものではないが、リバースロールコーティング法、コンマダイレクトコーティング法等の方法が好適に用いられる。
【0035】
この焦点形成層用樹脂配合液は室温で塗工し、必要に応じて加熱処理して樹脂を硬化させる。こうして、焦点形成層(5)が得られる。硬化温度は樹脂・硬化剤の種類により異なるがアクリル樹脂を焦点形成層用樹脂として使用する場合50℃〜160℃、好ましくは70℃〜155℃に3分から10分間加熱するのがよい。
【0036】
次に、焦点形成層上に金属薄膜を形成し鏡面反射層(6)とする。金属薄膜の形成方法としては塗工法、真空蒸着法、等が可能であるが、焦点形成層の形状を反映した金属薄膜を均一に形成するためには、蒸着法が特に好ましい。金属薄膜の厚みは、0.05μm〜0.2μm、好ましくは0.05μm〜0.15μm、特に好ましくは0.08〜0.12μmである。
【0037】
蒸着の速度・温度・真空度等の条件は機器に応じて適宜最適な条件を選択すればよく、金属薄膜が均一に所定の厚みとなればよい。
【0038】
次に、別途接着剤層形成用樹脂配合液を剥離基材(30)上に塗工乾燥し、接着剤層(17)を得る。そして、上記のように作製した鏡面反射層(6)と接着剤層(17)とを貼り合わせる。貼り合わせ条件は接着剤により異なるが、接着剤としてアクリル系樹脂を用いた場合には、例えば50〜90℃程度の熱をかけながら圧力をかけるのが好ましい。
【0039】
最後に、工程基材を剥離して、図1に示したような封入レンズ型再帰反射シート(10)を得ることができる。
【0040】
続いて、封入レンズ型再帰反射シート(10)を用いた本実施形態に係る車両用ナンバープレートについて説明する。
【0041】
図2に示されるように、車両用ナンバープレート(50)は、プレート基材(51)の一方の面上に封入レンズ型再帰反射シート(10)を積層した構造でなる。このプレート基材(51)は、着色塗装板、着色フィルムが貼り付けられたラミネート金属板、電解着色金属板、あるいは、染色板等でなる。
【0042】
このような車両用ナンバープレート(50)における一方の面には、エンボス成形によって標示部が浮き出された状態とされる。また、図2のV−V断面である図3に示されるように、エンボス成形により浮き出された標示部上に配置される封入レンズ型再帰反射シート(10)は剥離される。
【0043】
このような車両用ナンバープレート(50)は、例えば、以下に述べる方法によって製造される。まず、封入レンズ型再帰反射シート(10)に積層した剥離基材(30)を剥離し、封入レンズ型再帰反射シート(10)の接着剤層(17)を露出させる。
【0044】
次に、図4に示されるように、接着剤層(17)を介して、プレート基材(51)の一面に封入レンズ型再帰反射シート(10)を貼り付けて、プレート中間体(50X)を得る。
【0045】
上述したように、封入レンズ型再帰反射シート(10)は、温度23℃、湿度RH65%の環境下におけるシート全体の伸びが120%以下、破断強度が10N/inch以上とされる。したがって、プレート基材(51)の一面が平坦であっても、封入レンズ型再帰反射シート(10)を貼る際に、皺が生じたり割れたりすることを抑止することができる。
【0046】
次に、プレート中間体(50X)をエンボス成形する。具体的には、凹側金型の凹面にプレート中間体(50X)の保護層(11)が対向し、凸側金型の凸面にプレート中間体(50X)のプレート基材(51)が対向する状態で、凹側金型と凸側金型との間にプレート中間体(50X)を配置する。そして、凹側金型と凸側金型とを型締し、この型締によって、図5に示されるように、凹側金型(61)と凸側金型(62)との間に配置されるプレート中間体(50X)の一部を標示部として浮き出す。
【0047】
上述したように、封入レンズ型再帰反射シート(10)は、温度23℃、湿度RH65%の環境下におけるシート全体の伸びが120%以下、破断強度を10N/inch以上とされる。したがって、凹側金型(61)と凸側金型(62)との型締圧が一般に採用される範囲内であれば、図5に示されるように、標示部上に配置される再帰反射シート部位と、それ以外の再帰反射シート部位とが切断され、繋がったままの状態になることを防止できる。また、切断に起因して、標示部上に配置される再帰反射シート部位、あるいは、それ以外の再帰反射シート部位に罅や皺が形成されたり割れたりすることも防止できる。
【0048】
最後に、所定の治具を用いて、標示部上に配置される再帰反射シート部位を一定の張力及び速度で剥離する。
【0049】
上述したように、剥離改良層(16)における破断強度は、プレート基材(51)に対する接着層(17)の接着力よりも大きいものとされる。したがって、標示部上に配置される再帰反射シート部位を破くことなく剥離することができる。また、標示部上に配置される封入レンズ型反射シートを取り残すことがないため、標示部上の封入レンズ型反射シートを何回にもわたって剥がすといった作業を回避することができ、作業効率を向上することができる。
【0050】
こうして、図2に示したような車両用ナンバープレート(50)を得ることができる。
【0051】
尚、標示部とは、文字、数字、記号、図柄等の組合せから構成される、ナンバープレートの情報を標示する部位のことである。
【0052】
以上、上記実施形態を本発明の一例として説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、封入レンズ型再帰反射シート(10)における剥離改良層(16)が、表面保護層(1)と保持層(3)との間に配置された。しかしながら、剥離改良層(16)の配置位置は、上記実施形態に限定されない。例えば、表面保護層(1)の光入射側、表面保護層(1)と保持層(3)との間、又は鏡面反射層(6)と接着剤層(17)との間に、配置させることができる。なお、剥離改良層(16)を、表面保護層(1)の上、又は表面保護層(1)と保持層(3)との間に設ける場合には、再帰反射性能を損なわないように、透明性を要する。
【0054】
以下、実施例を用いて、更に詳しく説明する。
【0055】
<実施例1>
まず、以下のように、白色の封入レンズ型再帰反射シートを作製した。
【0056】
三井化学株式会社製ポリエステル樹脂溶液(商品名、HMP90S)と三井化学株式会社製ポリエステル樹脂溶液(商品名、Q−203)と三井化学株式会社製ポリエステル樹脂溶液(商品名、P−110)を5:4:1の質量率で混合した混合溶液100質量部に対し、株式会社三和ケミカル製のメチル化メラミン樹脂溶液(商品名、ニカラックMS−11)を11質量部に株式会社トクシキ製セルロース誘導体(商品名、CAB)10質量部、シプロ化成株式会社製紫外線吸収剤(商品名、シーソープ103)を0.5質量部、BASFジャパン株式会社製紫外線吸収剤(商品名、TINUVIN 213)のMIBK50%溶液0.6質量部、ビックケミー・ジャパン株式会社製レベリング剤(商品名、BYK−300)を0.05質量部、DIC株式会社製触媒(商品名、ベッカミンP−198)を0.12質量部、溶剤としてMIBK9.2質量部、トルエン9.2質量部を加えて、攪拌混合した表面保護層形成用樹脂配合液を得た。
【0057】
工程基材として帝人株式会社製の厚み75μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名、帝人テトロンフィルムS−75)を用い、その上に、表面保護層形成用樹脂配合液を塗工乾燥して厚さ約26μmの無色透明の表面保護層を形成した。
【0058】
次いで、恩希愛化工有限公司製アクリル樹脂溶液(商品名、RS−1200)を100質量部に対し、株式会社三和ケミカル製のメチル化メラミン樹脂溶液(商品名、ニカラックMS−11)を16.7質量部に株式会社トクシキ製セルロース誘導体(商品名、CAB)6質量部、シプロ化成株式会社製ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(商品名、シーソーブ103)を1.5質量部、ビックケミー・ジャパン株式会社製レベリング剤(商品名、BYK−300)を0.04質量部、溶剤としてMIBK6.2質量部、トルエン9.3質量部を加えて、攪拌混合した剥離改良層形成用樹脂配合液を得た。
【0059】
その表面保護層の上に、その剥離改良層形成用樹脂配合液を塗工乾燥して厚み約20μmの無色透明の剥離改良層を形成した。
【0060】
次いで、恩希愛有限公司製アクリル樹脂(商品名RS−3000)を100質量部、住化バイエルウレタン株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、スミジュールN−75)を1質量部、旭化成株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、デュラネートD201)を11質量部、溶剤としてトルエンを28.2質量部に、MIBKを42.3質量部混合攪拌した保持層形成用樹脂配合液を得た。
【0061】
その剥離改良層上に、その保持層形成用樹脂配合液を表面保護層上に塗工し、70℃で5分間乾燥し、厚さ約18.5μmの保持層を得た。
【0062】
この保持層に平均粒径53μmを持つ恩希愛有限公司製微小ガラス球(NB−12)を付着させ、熱処理をして、微小ガラス球を保持層中に沈めた。顕微鏡で断面を観察したところ、微小ガラス球は保持層に接しており、保持層には微小ガラス球の直径のほぼ60%が埋設されていた。
【0063】
次いで、恩希愛化工有限公司製アクリル樹脂溶液(商品名、RS−5000)を100質量部、株式会社三和ケミカル製のメチル化メラミン樹脂溶液(商品名、ニカラックMS−11)を5.5質量部、溶剤として、MIBK15.7質量部、トルエン23.6質量部加えて攪拌混合した焦点層形成用樹脂配合液を得た。
【0064】
その焦点層形成用樹脂配合液を保持層及び微小ガラス球の上に、塗工乾燥して、平均厚さ約23μmの焦点形成層を形成した。
【0065】
次いで、焦点形成層の上から、アルミニウムを真空蒸着させ、鏡面反射層を得た。以下、中間製品という。
【0066】
また、別途、剥離基材として、リンテック株式会社製剥離紙(商品名、EN11PM(31)−CM−P)を用い、その上に2EHA/MA共重合体(質量比:2EHA/MA=50/50)の酢酸エチル/トルエン(1/1)溶液(固形分41%)100質量部、住化バイエルウレタン株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、スミジュールN−75)を0.3質量部、溶剤として酢酸エチル8質量部を加えて、攪拌混合した接着剤層形成用樹脂配合液を塗工乾燥して、厚さ約40μmの接着剤層を形成した。
【0067】
中間製品の鏡面反射層と上記接着剤層が接するように貼り合わせ、工程基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がして、再帰反射シートを得た。
【0068】
得られた再帰反射シートの伸びは、94.1%で、破断強度は、26.4/inchで、実施例1で用いるプレート基材に対する接着力は、7.8N/inchであった。
【0069】
次に、上記で作製した再帰反射シートを用いて、車両用ナンバープレートを以下の手順で作製した。
【0070】
まず、プレート基材として厚さ40μmの青紫色の塗料(Beckers社製商品名Beckrypol 350)が塗工された厚み0.9mm、サイズ520mm×113mmのアルミ基材(HULAMIN社製商品名アルミプレート)の塗料面に、上記再帰反射シート1を、直径40mm、長さ100mmのゴムロールを用いて1Kgf/cmの圧力で貼りつけた。
【0071】
再帰反射シート1が積層された上記プレート基材をエンボス加工装置(UNIPLATE社製SUPREME HYDRAULIC MACHINE)内のエンボス金型の凸型(下側金型)と凹型(上側金型)の間に、再帰反射シート面を凹型側にしてセットした。文字は「B」「D」「F」「4」の4種とし、文字の大きさは縦75mm、横34mmとした。
【0072】
エンボス成形は、室内環境温度23℃において、50kgf/m2の圧力で、エンボス高さ2mmを1秒間のエンボス速度で行った。
【0073】
このエンボス加工装置のエンボス成形によって、ナンバープレートの文字の形状に再帰反射シートが切断された。
【0074】
切断された再帰反射シートの標示部分は、先端が30度の傾斜に削られた冶具を使用して、文字の端部より不要な再帰反射シートを、ほぼ真上方向に再帰反射シートを約10N/mの張力で300mm/minの速度で取り除いた。
【0075】
ナンバープレートの標示部上にある再帰反射シートが取り除かれ、プレート基材が露出しており、標示部が青紫色で、標示の周辺部分が白色で再帰反射する車両用ナンバープレートが得られた。
【0076】
得られた車両用ナンバープレートに用いられた再帰反射シートは、皺や剥がれがなく、エンボス成形時に、標示部の形状に合わせてきれいに切断でき、エンボス成形後に標示部上部の不要な再帰反射シートを容易に取り除くことができ、必要部分に破れが伝播することもなかった。
【0077】
また、得られた車両用ナンバープレートを車両に装着し、半年屋外暴露したところ、標示の周辺部分の再帰反射シートに剥がれや破れは見られず、車両に装着時と同様にナンバープレートの情報標示が明確であることを目視で確認した。
【0078】
なお、実施例における接着力は次のようにして測定した。すなわち、本発明の再帰反射シートを1inch幅に切断し、切断した再帰反射シートの端部の剥離基材を剥がす。そして、HULAMIN社製アルミプレートの塗装面上に、室内環境温度23℃で1Kgf/cmの圧力をかけて再帰反射シートを貼り付け、24時間放置した。放置後、アルミプレートを固定し、再帰反射シートの基材を貼り付けていない端部を、180度の角度で、株式会社島津製作所製 テンシロンを用いて剥離し、接着力を求めた。測定は3回行い、その平均値を接着力とした。
【0079】
また、実施例における伸びは次のようにして測定した。すなわち、JIS Z9117に準拠し、幅25mm、長さ300mmの試験片を、つかみ間隔100mmに設定し、株式会社島津製作所製 テンシロンを用いて300mm/minの条件で引っ張り、伸びを求めた。
【0080】
また、実施例における破断強度は次のようにして測定した。すなわち、上記伸びの測定において、試験片が破断する強度の値を求めた。測定は3回行い、その平均値を破断強度とした。
【0081】
<実施例2>
トクシキ製アクリル樹脂溶液(商品名、ST−100)を100質量部に対し、株式会社三和ケミカル製のメチル化メラミン樹脂溶液(商品名、ニカラックMS−11)を16質量部に株式会社トクシキ製セルロース誘導体(商品名、CAB)6質量部、シプロ化成株式会社製ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(商品名、シーソーブ103)を1.5質量部、ビックケミー・ジャパン株式会社製レベリング剤(商品名、BYK−300)を0.05質量部、DIC株式会社製触媒(商品名、ベッカミンP−198)を0.12質量部、溶剤としてMIBK9.2質量部、トルエン9.2質量部を加えて、攪拌混合したアクリル樹脂層形成用樹脂配合液1を得た。
【0082】
工程基材として帝人株式会社製の厚み75μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名、帝人テトロンフィルムS−75)を用い、その上に、アクリル樹脂層形成用樹脂配合液を塗工乾燥して厚さ約30μmの無色透明アクリル樹脂層を形成した。
【0083】
次いで、トクシキ製アクリル樹脂溶液(商品名、ST3105)を86質量部に対し、シプロ化成株式会社製ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(商品名、シーソーブ103)を1.0質量部、住化バイエルウレタン株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、スミジュールN−75)を13質量部、溶剤としてMIBK10質量部を加えて、攪拌混合したアクリル樹脂層形成用樹脂配合液2を得た。
【0084】
無色透明アクリル樹脂層の上にアクリル樹脂層形成用樹脂配合液2を塗工乾燥して、厚さ約25μmの層を形成した。こうしてアクリル樹脂層が2層積層されたアクリル樹脂フィルムを得た。
【0085】
また、別途、剥離基材として、リンテック株式会社製剥離紙(商品名、EN11PM(31)−CM−P)を用い、その上にBA/AA共重合体(質量比:BA/AA=90/10)の酢酸エチル/トルエン(1/1)溶液(固形分34%)100質量部、三菱ガス化学株式会社製エポキシ系架橋剤(商品名、テトラド−C)を0.025質量部、溶剤として酢酸エチルを17.8質量部加えて、攪拌混合した接着剤層形成用樹脂配合液を塗工乾燥して、厚み約35μmの接着剤層を形成した。
【0086】
その接着剤層を、先に製造したアクリル樹脂フィルムと貼り合わせ、工程基材を剥がして接着剤層付きアクリル樹脂フィルムを得た。
【0087】
得られた接着剤層付きアクリル樹脂フィルムを剥離改良層として、市販の再帰反射シート(恩希愛(杭州)化工有限公司製商品名、T4412)の表面保護層上に積層して、先に製造したアクリル樹脂フィルムを剥離改良層とする再帰反射シート2を得た。
【0088】
再帰反射シート2の伸びは、55.7%で、破断強度は、21.5N/inchで、実施例1で用いる積層基材に対する接着力は、18.0N/inchであった。
【0089】
実施例1の再帰反射シートの代わりに再帰反射シート2を用いて、実施例1と同様にして車両用ナンバープレートが得られた。
【0090】
得られた車両用ナンバープレートに用いられた再帰反射シートは、エンボス成形時に、標示部の形状に合わせてきれいに切断でき、標示部上部の不要な再帰反射シートを容易に取り除くことができ、必要部分に破れが伝播することもなかった。
【0091】
また、得られた車両用ナンバープレートを車両に装着し、半年屋外暴露したところ、標示の周辺部分の再帰反射シートに剥がれや破れは見られず、車両に装着時と同様にナンバープレートの情報標示が明確であることを目視で確認した。
【0092】
以上説明したとおり、温度23℃、湿度RH65%の環境下で測定した際に、120%以下の伸びを持ち、10N/inch以上の破断強度を持ち、プレート基材に対する接着力よりも破断強度が大きいことを特徴とする再帰反射シートを用いることで、エンボス成形後に取り除きやすく、標示部以外に破れが伝播しない再帰反射シートを提供すること、及びそのような再帰反射シートを用いた車両用ナンバープレートを提供することができた。
【符号の説明】
【0093】
1・・・表面保護層
2・・・印刷層
3・・・保持層
4・・・微小ガラス球
5・・・焦点形成層
6・・・鏡面反射層
16・・・剥離改良層
17・・・接着剤層
30・・・剥離基材
X・・・再帰反射時の光の経路
50・・・車両用ナンバープレート
50X・・・プレート中間体
51・・・プレート基材
61・・・凹側金型
62・・・凸側金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標示部がエンボス成形され、標示部上部の再帰反射シートが取り除かれてプレート基材が露出している車両用ナンバープレートに用いられる再帰反射シートであって、
前記再帰反射シートは、
温度23℃、湿度RH65%の環境下で測定した際に、120%以下の伸びを持ち、10N/inch以上の破断強度を持ち、前記プレート基材に対する接着力よりも前記破断強度が大きい
ことを特徴とする再帰反射シート。
【請求項2】
前記再帰反射シートが封入レンズ型再帰反射シートである
ことを特徴とする請求項1に記載の再帰反射シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の再帰反射シートを用いた車両用ナンバープレート。
【請求項4】
前記プレート基材が、金属板である
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用ナンバープレート。
【請求項5】
前記金属板が、着色塗装板、着色フィルムが貼り付けられたラミネート金属板、電解着色板、染色板のいずれかである
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用ナンバープレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−48229(P2012−48229A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166259(P2011−166259)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】