説明

写真複写装置

【目的】 暗箱又は外箱を使用せずに、安価で手軽にポジフィルムを一般に市販されているフィルム(陰画)に再現性良く複写できる装置を提供する。
【構成】 装置上部に支柱1により上下に自由に移動できるように取り付けられたカメラ2、光源位置決めアーム6により保持され照射する角度を可変とした一対の光源5、ポジフィルム位置決めポケット4を有する拡散板7と2枚の側板8とからなり該光源側が開口した断面略コ字状の拡散ボックス9、該拡散ボックスの下部に設けられる反射板10から構成される。該拡散板として一片の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍である正四方形又は長辺の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍であり短辺の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの3〜5倍である矩形のものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は写真複写装置に関し、更に詳しくはポジフィルムから陰画を再現性良く複写し得る装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】陽画から陰画に撮影すると実写との再現が異なる(特に色調等)ことが知られている。この問題を解決すべく、従来より複写に際し、所謂副露光を利用して複写画像の軟調化を図ることが行われており、特開昭54-154318 号公報、特開昭63-155135 号公報等では、写真原版に主光と補助光を与え、この補助光を副露光効果として利用したり、主光の一部を拡散板により反射させ、この光を副露光として利用している。これらの特許は、本質的に撮影時の外乱光、即ち室内光等を避けて、暗箱中で複写を行うものであり、条件が制限されるという問題があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために種々検討した結果、従来不必要光として出来るだけ排除されてきた外乱光を有効に利用することに着目し、既に公知の事実である副露光理論を応用して一光源を使用することにより主露光とフレアー光(副露光)となる光源を同一とし、暗箱又は外箱を使用せずに、安価で手軽にポジフィルムを一般に市販されているフィルム(陰画)に再現性良く複写できる装置を完成するに到った。即ち本発明は、装置上部に支柱(1)により上下にに自由に移動できるように取り付けられたカメラ(2)、光源位置決めアーム(6)により保持され照射する角度を可変とした一対の光源(5)、ポジフィルム位置決めポケット(4)を有する拡散板(7)と2枚の側板(8)とからなり該光源側が開口した断面略コ字状の拡散ボックス(9)、該拡散ボックスの下部に設けられる反射板(10)から構成される写真複写装置であって、該拡散板として一片の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍である正四方形又は長辺の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍であり短辺の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの3〜5倍である矩形のものを使用し、カメラ(2)とポジフィルムの中心を通る点aを延長して反射板と交わる点をbとし、拡散板のエッジ点をcとした場合に、点bと点cを結んだ延長線上に光源(5)の中心があるように光源が設置され、且つ光源(5)の設置角度である水平面と点bと点cを結ぶ直線が成す角度θが30〜60°であることを特徴とする写真複写装置である。
【0004】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は本発明の写真複写装置の全体斜視図である。本発明の写真複写装置は、装置上部に支柱1により上下にに自由に移動できるように取り付けられたカメラ2、光源位置決めアーム6により保持され照射する角度を可変とした一対の光源5、ポジフィルム位置決めポケット4を有する拡散板7と2枚の側板8とからなり該光源側が開口した断面略コ字状の拡散ボックス9、該拡散ボックスの下部に設けられる反射板10から構成される。カメラ2は固定支柱1により上下に可動状態に設置されており、トリミングも自由である。照明用光源5は、例えば単数又は複数の白熱電球を使用して片側又は両側から光源位置決めアーム6により照射角度を可変な状態で支持されており、均一な光を照射する。
【0005】本発明の特徴は、特定の拡散ボックス9を用い、且つ特定の均一な主光を前記光源から照射することにある。本発明で用いる拡散ボックス9とは、ポジフィルム位置決めポケットを有する拡散板と2枚の側板とからなり、該光源側が開口した断面略コ字状のものである。該拡散板は正四方形又は矩形であり、より具体的には正四方形の場合は一片の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍であり、矩形の場合は長辺の長さを使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍、短辺の長さを同じく3〜5倍としたものである。拡散板の大きさがこれより小さくても大きくても下記する如き、特定の角度での光線照射が困難になる。ここで使用するポジフィルムは一般に市販されているライカサイズ、ブローニサイズ及び4×5インチのものでよく、これら使用されるフィルムにより拡散板の大きさが決まる。
【0006】一方、図2に示すように、カメラ1とポジフィルムの中心を通る点aを延長して反射板と交わる点をbとし、拡散板の開口側のエッジ点をcとした場合に、点bと点cを結んだ延長線上に光源5の中心があるように光源が設置される。即ち、光源の光軸は拡散板のエッジ点cを通り、カメラ真下の反射板に向かうようにされ、前述の機構により光源位置が調整される。又、光源の設置角度、即ち水平面と点bと点cを結ぶ直線が成す角度θは30〜60°とすることが必要である。角度θを小さくすると調子は硬調に、大きくすると調子は軟調になる傾向がある。拡散ボックスの高さhは、光軸が拡散板のエッジ点をcを通り、カメラ真下の反射板に向かい、且つ光源の設置角度θが30〜60°を確保できる高さであれば限定はされないが、光源は光源位置決めアーム6により照射角度を可変な状態で支持されているので、拡散ボックスの高さhは拡散板の一片の長さの0.5 〜1倍程度になされている。本発明では光源と拡散ボックスとの位置関係を上記の如く設定したので、光源から照射された光線は、その一部が反射板10で反射し、ポジフィルム位置決めポケット4に置かれたポジフィルムを透過し、撮影フィルムが指定した色温度に調整するためにカメラ2の先端部に設置されたゼラチンフィルター3を通りカメラ2に至る。一方、拡散板7で反射された光の一部は散乱光となり、ゼラチンフィルター部に照射されてフレアー光となり、その結果複写画像の軟調化を図ることができる。
【0007】拡散板は、白アクリル板、白紙など、反射のよいものであれば、その素材は特に限定されず、その表面は平坦でもザラザラでも有効な散乱光を発生させるものであればよい。又、装置底部の反射板は拡散板の2〜3倍の大きさとし、白色発泡スチロールまたは同等品など、光を充分に拡散させるもので構成すればよい。尚、調子を変化させる手段としてポジフィルム位置決めポケットにあるポジフィルム保持部品として、無反射ガラス、白アクリル板など透過性の極端に異なるものを使用しても複写画像の軟調化を図ることができる。即ち、透過性の高いものを使用するとフィルムの適性露光を与える露光時間を速く、また絞りを絞るので硬調に、透過性の低いものを使用すると露光時間を遅く、また絞りを開けるので軟調に成ることが判明した。
【0008】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によればポジフィルムから陰画を再現性良く、即ち適度な調子で複写することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の写真複写装置の全体斜視図である。
【図2】 本発明の写真複写装置における拡散ボックスと光源の位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1…カメラ固定支柱
2…カメラ
3…ゼラチンフィルター
4…ポジフィルム位置決めポケット
5…照明用光源
6…光源位置決めアーム
7…拡散板
8…側板
9…拡散ボックス
10…反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 装置上部に支柱(1)により上下に自由に移動できるように取り付けられたカメラ(2)、光源位置決めアーム(6)により保持され照射する角度を可変とした一対の光源(5)、ポジフィルム位置決めポケット(4)を有する拡散板(7)と2枚の側板(8)とからなり該光源側が開口した断面略コ字状の拡散ボックス(9)、該拡散ボックスの下部に設けられる反射板(10)から構成される写真複写装置であって、該拡散板として一片の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍である正四方形又は長辺の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの4〜8倍であり短辺の長さが使用するポジフィルムの対角線の長さの3〜5倍である矩形のものを使用し、カメラ(2)とポジフィルムの中心を通る点aを延長して反射板と交わる点をbとし、拡散板のエッジ点をcとした場合に、点bと点cを結んだ延長線上に光源(5)の中心があるように光源が設置され、且つ光源(5)の設置角度である水平面と点bと点cを結ぶ直線が成す角度θが30〜60°であることを特徴とする写真複写装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−241237
【公開日】平成5年(1993)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−43362
【出願日】平成4年(1992)2月28日
【出願人】(000103862)オリエンタル写真工業株式会社 (3)