説明

冷凍たこ焼き

【課題】加熱解凍後の喫食時においても、ソフトで口溶けがよく、良好なトロミ及び風味を有する冷凍たこ焼きの提供。
【解決手段】穀物粉、液状油及び水を含有する生地に、たこを内包させて焼成した後、凍結させてなる冷凍たこ焼きであって、前記液状油が、生地100質量部に対して、2〜9質量部配合されることを特徴とする冷凍たこ焼き;前記液状油は、液状植物油であることが好ましい;前記液状植物油は、菜種油であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトで口溶けがよく、良好なトロミ及び風味を有する冷凍たこ焼きに関する。
【背景技術】
【0002】
たこ焼きは、嗜好食品として子供から大人まで多くの人々に好まれる食品である。一般的なたこ焼きは、穀物粉、卵、調味料、水等からなる生地中に、たこの小片を包含させて一口大の球形や分銅形に成形しつつ焼成することにより製造される。
近年では、電子レンジ等の家庭用マイクロ波装置を用いて加熱解凍するのみで喫食可能な、焼成済の冷凍たこ焼きも販売されており、その手軽さから家庭における間食用途等として広く利用されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−168073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、食品、特に穀物粉の焼成品にソフトな食感が求められる傾向にあり、たこ焼きにおいても内部がソフトで喫食した際の口溶けがよく、良好なトロミを有するものが望まれている。しかしながら、たこ焼きは一般に球形又は分銅形をしているため、内部まで充分に火が通り、且つ、ソフトな口溶けやトロミを有する程度に焼成を行うためには、熟練の技が必要であった。さらに、特許文献1に記載のような従来の冷凍たこ焼きでは、凍結や加熱解凍による劣化もあるため、良好な食感を維持するのは非常に困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ソフトで口溶けがよく、良好なトロミ及び風味を有する冷凍たこ焼きを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、たこ焼きに油脂を添加する点に着目した。本発明者らは、油脂として液状油を特定の比率で用いることにより、凍結及び加熱解凍後の喫食時においてもソフトで口溶けがよく、良好なトロミ及び風味を有するたこ焼きが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有する冷凍たこ焼きを提供するものである。
(1)穀物粉、液状油及び水を含有する生地に、たこを内包させて焼成した後、凍結させてなる冷凍たこ焼きであって、前記液状油が、生地100質量部に対して、2〜9質量部配合されることを特徴とする冷凍たこ焼き。
(2)前記液状油が、液状植物油である(1)の冷凍たこ焼き。
(3)前記液状植物油が、菜種油である(2)の冷凍たこ焼き。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷凍たこ焼きは、加熱解凍後の喫食時においても、ソフトで口溶けがよく、良好なトロミ及び風味を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の冷凍たこ焼きは、穀物粉、液状油及び水を含有する生地に、たこを内包させて焼成した後、凍結させてなるものである。本発明では生地中に液状油を含有させることにより、加熱解凍後の喫食時においても、ソフトで口溶けがよく、良好なトロミ及び風味を有するたこ焼きとすることができる。
【0009】
なお、通常のたこ焼きにおいて油脂を添加した場合、たこ焼きの内部のみならず外部も柔らかくなってしまい、且つ、たこ焼きが油っぽくなることで風味に劣るため、通常のたこ焼きに油脂が使用されることはない。
【0010】
本発明において生地とは、穀物粉、液状油、水等を含む液状物をいう。本発明における生地は、澱粉類、植物性タンパク質等の、水に添加して液状又は半液状となる成分を含むが、キャベツ、ネギ等の具材に代表される固形成分は含まない。
【0011】
本発明において穀物粉とは、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、米、トウモロコシ、ソバ、大豆、小豆、緑豆、ヒエ、粟、きび等の穀物を粉砕して得られる粉をいい、澱粉、加工澱粉、デキストリンなどで上記穀物粉の一部の量又は全量を置き換えたものも含まれる。なかでも、本発明における穀物粉としては、小麦粉であることが好ましい。
本発明における穀物粉の配合量は特に限定されるものではないが、生地100質量部に対して10〜30質量部であることが好ましく、15〜25質量部であることがより好ましく、15〜20質量部であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明において液状油としては、通常食品に用いられる油脂であって、常温(25℃)において液状の油脂であれば特に限定されるものではない。液状油を用いることで、粉末油や固形油を用いた場合よりも、該油脂を均一に生地中に分散することができるため、本発明の効果であるソフトでトロミのある食感を良好に得ることができ、且つ、油が生地中で偏在することによる食感の劣化を防ぐことができる。
【0013】
液状油は、植物由来の植物油であってもよく、動物由来の動物油であってもよいが、植物油であることが好ましい。液状植物油を用いることにより、動物油を用いた場合の様に、得られたたこ焼きが過度に油っぽくなることを防止することができる。
液状植物油としては、キャノーラ油を代表とする菜種油、大豆油、ゴマ油、ココナッツ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、ベニバナ油、米油、ヒマワリ油、落花生を代表とするナッツ油等が挙げられる。液状植物油は、1種の植物原料のみから得られた油であってもよく、2種以上の植物原料から得られた油を混合した油であってもよい。
また、液状植物油は、予め分離精製処理、脱酸処理、脱色処理等がなされたものであってもよい。このような液状植物油としては、脱酸、脱色等の処理がなされた白絞油、白絞油にさらにロウ分の除去処理を施したサラダ油が挙げられる。
なかでも液状植物油としては白締油、サラダ油等を用いることができるが、なかでもサラダ油が特に好ましい。サラダ油はロウ分の除去により低温条件下で凝固や白濁しない油であるため、サラダ油を用いたたこ焼き生地を焼成後凍結した場合においても、該サラダ油がたこ焼きの内部で凝集しづらく、再加熱して喫食する際の食感に特に優れるものとなる。また、液状植物油は、菜種油であることが好ましく、キャノーラ油であることがより好ましい。
【0014】
本発明における液状油の配合量は、生地100質量部に対して2〜9質量部であって、2.5〜7質量部であることが好ましく、5〜7質量部であることがより好ましく、5.5〜6.5質量部であることが特に好ましい。液状油の配合量を上記下限値以上とすることにより、本発明の効果であるソフトでトロミのある食感を良好に得ることができ、上記上限値以下とすることにより、たこ焼きの内部が過度に油っぽくなること、及び、たこ焼き表面に油が染み出すことを防ぐことができる。
【0015】
本発明における水は、冷水であっても温水(湯)であってもよいが、生地中の膨張剤の過度な膨張を防げる点で冷水の方が好ましい。
水の配合量は特に限定されるものではないが、生地100質量部に対して40〜80質量部であることが好ましく、50〜70質量部であることがより好ましい。
【0016】
生地は、穀物粉、液状油及び水以外に、他の副原料を含んでいてもよい。他の副原料として具体的には例えば、食塩、糖類、出汁、香辛料等の調味料;卵や山芋等のつなぎ;澱粉類;植物性タンパク質;増粘剤、膨張剤、品質改良剤、酸化防止剤、乳化剤等の添加剤等が挙げられる。
【0017】
本発明における生地は、上記のような液状又は半液状成分を混合することにより得ることができる。各成分の混合は、全ての成分を一度に混合してもよく、数種の成分を混合した後、残りの成分を添加して混合してもよい。例えば、液状油や穀物粉は、水中において凝集したりダマになったりしやすいため、水や副原料に対して、混和しながら少量ずつ添加することが好ましい。
【0018】
上記の様にして得られた生地に、たこを内包させて焼成することにより、たこ焼きを得ることができる。
なお、焼成前の生地には、たこ以外の具材を添加しておくことも好ましい。具材として具体的には、キャベツ、ネギ、紅生姜、桜海老、天かす等が挙げられる。これらの具材は、生地と混和しやすい大きさに予め細断しておいてもよい。
たことしては特に限定されるものではなく、たこ焼きの大きさに応じて細断されたたこを用いることができる。
【0019】
生地にたこを内包させて焼成し、たこ焼きを得る方法は特に限定されるものではなく常法により行うことができる。具体的には例えば、半球形又は分銅形の凹部を有するたこ焼き器(たこ焼き用鉄板)を用いて、予め120〜250℃に熱された該凹部内に生地(生地及びたこ以外の具材)を流し込んだ後、該凹部内の生地中に細断されたたこを投入し、途中で反転又は回転させて表面の全面を焼成しながら成形することにより、焼成済のたこ焼きを得ることができる。
また、予め具材と共に生地にたこを添加して混合した上で、該たこ含有生地をたこ焼き器に流し込んで焼成しながら成形することにより焼成済のたこ焼きを得ることもできる。
焼成済のたこ焼きの大きさ、形状は特に限定されるものではなく、例えば1個あたり10〜100gの、球形又は分銅形とすることができる。
【0020】
焼成済のたこ焼きを凍結させることにより、本発明の冷凍たこ焼きを得ることができる。
冷凍の方法は特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。具体的には例えば、エアーブラスト式凍結法、セミエアーブラスト式凍結法、コンタクト式凍結法等の凍結法に基づくフリーザーを用いて焼成済のたこ焼きを凍結した後に、−18℃以下で保存する方法や、液化窒素や液化炭酸を噴霧して焼成済のたこ焼きを凍結した後に、−18℃以下で保存する方法を用いることができる。
【0021】
凍結された冷凍たこ焼きは、電子レンジ等の家庭用マイクロ波装置、オーブントースター、蒸し器等を用いて加熱解凍することにより喫食することができる。本発明の製造方法により製造された冷凍たこ焼きは、凍結及び冷凍保存後に家庭用マイクロ波装置を用いて加熱解凍された場合であっても、ソフトで口溶けがよく、良好なトロミ及び風味を有するものとなる。
【0022】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
食感及び風味に対する油脂の影響について、各種の油脂を添加した冷凍たこ焼きを製造して検討を行った。
まず、表1記載の生地原料のうち、水に卵を加えてミキサーで攪拌し、卵以外の副原料、小麦粉をこの順で投入・混合した後、表2に示す油脂を投入して混合し、最後に予めみじん切りにした表1記載の具材を加えて混合した。なお、1−1では表1中の処方より、油脂のみを抜いた処方を用いた。
次に、上記で得られた具材入りの生地を、185℃に熱したたこ焼き器の凹部に注いだ後、ぶつ切りにしたたこを凹部内に投入して焼成し、途中で反転して成形した後、表面全面に適度な焼き色が付くまで焼成して焼成済たこ焼きを製造した。
その後、急速凍結庫にて凍結し、−18℃で冷凍保存して冷凍たこ焼きを製造した。
7日間冷凍保存した後、解凍を行うことなく、5個ずつ皿に載せてラップをせずに、電子レンジを用いて500Wで2分40秒間又は600Wで2分30秒間(10個の場合は、500Wで4分40秒間又は600Wで4分20秒間)加熱調理を行った。得られたたこ焼きの官能試験の結果を表2に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
上記の結果から、植物性液状油を用いた1−5及び1−6の冷凍たこ焼きは、油脂を用いていない1−1の冷凍たこ焼き、動物性の固形又は半固形の油脂を用いた1−2及び1−3の冷凍たこ焼き、並びに、1−4の植物性ではあるが固形油のパーム油を用いた冷凍たこ焼きに比して、口溶けが良く、食感が油っぽいこともなく、たこ焼きとして好ましいものであった。特に、1−5のキャノーラサラダ油を用いた冷凍たこ焼きは、食感及び風味が最も優れていた。
また、1−5及び1−6の冷凍たこ焼きは作業性にも優れ、ラインでの製造に適したものであった。
【0027】
[実施例2]
食感及び風味に対する液状油の配合量の影響について、キャノーラサラダ油を添加した冷凍たこ焼きを製造して検討を行った。
表1における油脂の添加量を、表3に示すキャノーラサラダ油の量に変更した以外は実施例1と同様にして冷凍たこ焼きを製造した。なお、表1と比べて油脂量が増減したものについては、水などの添加による調整は行わず、単純に油脂量を増減させたのみの調整を行った。
実施例1と同様に解凍加熱を行い、1を悪い、4を最も良いとする4段階で評価を行い、2以上を合格とした。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
上記の結果から、キャノーラサラダ油を、たこ以外の原料全体100質量部に対して2.65質量部〜7.55質量部(生地100質量部に対しては、3.16部〜8.92部)を用いた2−2、2−3及び2−4の冷凍たこ焼きは、キャノーラサラダ油を用いていない2−1の冷凍たこ焼き、並びにキャノーラサラダ油を9.82質量部(生地100質量部に対しては、11.54質量部)用いた2−5の冷凍たこ焼きに比して、口溶けがよく、食感が油っぽいこともなく、たこ焼きとして好ましいものであった。特に、2−3の、生地100質量部に対して6.12質量部のキャノーラサラダ油を用いた冷凍たこ焼きは、食感及び風味が最も優れていた。
また、2−2〜2−4の冷凍たこ焼きは作業性にも優れ、ラインでの製造に適したものであった、
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の冷凍たこ焼きは、食品製造分野で好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粉、液状油及び水を含有する生地に、たこを内包させて焼成した後、凍結させてなる冷凍たこ焼きであって、
前記液状油が、生地100質量部に対して、2〜9質量部配合されることを特徴とする冷凍たこ焼き。
【請求項2】
前記液状油が、液状植物油である請求項1に記載の冷凍たこ焼き。
【請求項3】
前記液状植物油が、菜種油である請求項2に記載の冷凍たこ焼き。

【公開番号】特開2013−42745(P2013−42745A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185122(P2011−185122)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000140650)テーブルマーク株式会社 (55)
【Fターム(参考)】