説明

冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物

【課題】フルオロプロペン冷媒を用いる冷凍システムにおいて、冷媒相溶性を高水準で達成することが可能な冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍機油は、一般式(1)で表される構造単位を有し且つ炭素/酸素モル比が4.0〜5.8であるポリビニルエーテルを含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられる。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、上記ポリビニルエーテルとフルオロプロペン冷媒とを含有する。[式中、R,R及びRは水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、mは前記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示す。]
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)及びHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。
【0003】
CFCやHCFCを冷媒とする場合は、冷凍機油として鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油が好適に使用されてきたが、冷媒が替わると共存下で使用される冷凍機油は、冷媒との相溶性、潤滑性、冷媒との溶解粘度、熱・化学的安定性など予想し得ない挙動を示すため、冷媒ごとに冷凍機油の開発が必要となる。そこで、HFC冷媒用冷凍機油として、例えば、ポリアルキレングリコール(特許文献1を参照)、エステル(特許文献2を参照)、炭酸エステル(特許文献3を参照)、ポリビニルエーテル(特許文献4を参照)などが開発されている。
【0004】
HFC冷媒のうち、カーエアコン用冷媒として標準的に用いられているHFC−134aはオゾン破壊係数(ODP)がゼロであるものの地球温暖化係数(GWP)が高いため、欧州では規制の対象となっている。そこで、HFC−134aに替わる冷媒の開発が急務となっている。
【0005】
このような背景の下、HFC−134aに代わる冷媒として、ODP及びGWPの双方が非常に小さく、不燃性であり、かつ、冷媒性能の尺度である熱力学的特性がHFC−134aとほぼ同等かそれ以上である、フルオロプロペン類の冷媒の使用が提案されている。さらに、フルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒の使用も提案されている(特許文献5を参照)。
【0006】
また、フルオロプロペン冷媒あるいはフルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒と共に使用可能な冷凍機油としては、鉱油、アルキルベンゼン類、ポリアルファオレフィン類、ポリアルキレングリコール類、モノエステル類、ジエステル類、ポリオールエステル類、フタル酸エステル類、アルキルエーテル類、ケトン類、炭酸エステル類、ポリビニルエーテル類などを用いた冷凍機油が提案されている(特許文献5〜7を参照)。
【特許文献1】特開平02−242888号公報
【特許文献2】特開平03−200895号公報
【特許文献3】特開平03−217495号公報
【特許文献4】特開平06−128578号公報
【特許文献5】国際公開WO2006/094303号パンフレット
【特許文献6】特表2006−512426号公報
【特許文献7】国際公開WO2005/103190号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献5、6、7に記載されているように、フルオロプロペン冷媒を用いる冷凍システムにおいては、CFCやHCFCに使用されている鉱油やアルキルベンゼン等の炭化水素類、HFCに使用されているポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、ポリビニルエーテルなどの冷凍機油のいずれも適用可能であると考えられている。しかし、本発明者らの検討によれば、これら従来の冷凍機油を当該システムにそのまま転用しただけでは、冷媒相溶性を高水準で達成することができない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、フルオロプロペン冷媒を用いる冷凍システムにおいて、冷媒相溶性を高水準で達成することが可能な冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリビニルエーテルを用いることによって、フルオロプロペン冷媒の共存下で冷媒との十分な相溶性を有する冷凍機油を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位を有し且つ炭素/酸素モル比が4.0〜5.8であるポリビニルエーテルと、フルオロプロペン冷媒と、を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【化1】


[式中、R,R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは前記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R〜Rは構造単位毎に同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。]
【0011】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される構造単位を有し且つ炭素/酸素モル比が4.0〜5.8であるポリビニルエーテルを含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油を提供する。
【0012】
本発明の冷凍機用作動流体組成物は、フルオロプロペン冷媒として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC1234ye)及び3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0013】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、フルオロプロペン冷媒の少なくとも1種(以下、「冷媒(A)」という。)を単独で用いてもよく、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド及び3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(B)」という。)をさらに含有していてもよい。
【0014】
さらに、冷媒(A)と冷媒(B)との混合冷媒において、フルオロプロペン冷媒としては、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC1234ye)及び3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)から選ばれる少なくとも1種が好ましく;
飽和ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)から選ばれる少なくとも1種が好ましく;
炭素数3〜5の炭化水素としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタン及びノルマルペンタンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、本発明によれば、冷媒相溶性を高水準で達成することが可能な冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明の冷凍機油は、下記一般式(1)で表される構造単位を有し且つ炭素/酸素モル比が4.0〜5.8であるポリビニルエーテル(以下、場合により「本発明にかかるポリビニルエーテル」という。)を含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられることを特徴とする。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、下記一般式(1)で表されるポリビニルエーテルとフルオロプロペン冷媒とを含有することを特徴とする。ここで、本発明の冷凍機用作動流体組成物には、本発明の冷凍機油と、フルオロプロペン冷媒を含有する態様が包含される。
【化2】


[式中、R,R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは前記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R〜Rは構造単位毎に同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。]
【0018】
上記一般式(1)におけるR、R及びRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。炭素数1〜8の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等のアリールアルキル基などが挙げられる。R、R及びRの各々としては、特に水素原子が好ましい。
【0019】
一般式(1)中のRは、炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示す。炭素数1〜10の二価の炭化水素基としては、具体的には、メチレン基;エチレン基;フェニルエチレン基;1,2−プロピレン基;2−フェニル−1,2−プロピレン基;1,3−プロピレン基;各種ブチレン基;各種ペンチレン基;各種ヘキシレン基;各種ヘプチレン基;各種オクチレン基;各種ノニレン基;各種デシレン基の二価の脂肪族基、シクロヘキサン;メチルシクロヘキサン;エチルシクロヘキサン;ジメチルシクロヘキサン;プロピルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式基、各種フェニレン基;各種メチルフェニレン基;各種エチルフェニレン基;各種ジメチルフェニレン基;各種ナフチレン基などの二価の芳香族炭化水素基、トルエン;キシレン;エチルベンゼンなどのアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ一価の結合部位を有するアルキル芳香族基、キシレン;ジエチルベンゼンなどのポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有するアルキル芳香族基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜4の脂肪族基が特に好ましい。また、炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシメチレン基;メトキシエチレン基;メトキシメチルエチレン基;1,1−ビスメトキシメチルエチレン基;1,2−ビスメトキシメチルエチレン基;エトキシメチルエチレン基;(2−メトキシエトキシ)メチルエチレン基;(1−メチル−2−メトキシ)メチルエチレン基などを好ましく挙げることができる。
【0020】
一般式(1)におけるmはROの繰り返し数を示し、本発明にかかるポリビニルエーテルについてのmの平均値は0〜10、好ましくは0〜5である。なお、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。
【0021】
一般式(1)におけるRは炭素数1〜20の炭化水素基を示す。この炭化水素基とは、具体的にはメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種ヘプチル基,各種オクチル基,各種ノニル基,各種デシル基のアルキル基、シクロペンチル基,シクロヘキシル基,各種メチルシクロヘキシル基,各種エチルシクロヘキシル基,各種プロピルシクロヘキシル基,各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基,各種メチルフェニル基,各種エチルフェニル基,各種ジメチルフェニル基,各種プロピルフェニル基,各種トリメチルフェニル基,各種ブチルフェニル基,各種ナフチル基などのアリール基、ベンジル基,各種フェニルエチル基,各種メチルベンジル基,各種フェニルプロピル基,各種フェニルブチル基のアリールアルキル基などを示す。なお、該R〜Rは構造単位毎に同一であっても異なっていてもよい。即ち本発明にかかるポリビニルエーテルには、R〜Rのいずれか又は全部が構造単位毎に異なる共重合体が包含される。
【0022】
また、本発明にかかるポリビニルエーテルにおいては、その炭素/酸素モル比が4.2〜5.8の範囲にあることが必要である。このモル比が4.0未満では、吸湿性が高く、5.8を超えると、フルオロプロペンとの相溶性が低下する。
【0023】
また、本発明にかかるポリビニルエーテルにおいて、上記一般式(1)で表される構造単位の繰り返し数(すなわち重合度)は、所望する動粘度に応じて適宜選択すればよいが、通常は温度40℃における動粘度が好ましくは5〜1,000mm/s,更に好ましくは7〜300mm/sになるように選ばれる。
【0024】
本発明にかかるポリビニルエーテルは、一般式(1)で表される構造単位が同一である単独重合体であっても、2種以上の構造単位で構成される共重合体であってもよいが、共重合体とすることにより、相溶性を満足しつつ潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる効果がある。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類並びに共重合体の比率を選ぶことにより、油剤の上記性能を目的レベルに合わせることが可能となる。従って、冷凍システムあるいは空調システムにおけるコンプレッサーの型式、潤滑部の材質及び冷凍能力や冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた油剤を自在に得ることができるという効果がある。共重合体はブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0025】
また、本発明にかかるポリビニルエーテルが共重合体である場合、当該共重合体は、上記一般式(1)で表され且つRが炭素数1〜3の炭化水素基である構造単位(1−1)と、上記一般式(1)で表され且つRが炭素数3〜20、好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8の炭化水素基である構造単位(1−2)と、を含むことが好ましい。構造単位(1−1)におけるRとしてはエチル基が特に好ましく、また、構造単位(1−2)におけるRとしてはイソブチル基が特に好ましい。さらに、本発明にかかるポリビニルエーテルが上記の構造単位(1−1)及び(1−2)を含む共重合体である場合、構造単位(1−1)と構造単位(1−2)とのモル比は、5:95〜95:5が好ましく、20:80〜90:10がより好ましい。当該モル比が上記範囲を逸脱する場合は冷媒との相溶性が不十分となり、また、吸湿性が高くなる傾向にある。
【0026】
本発明にかかるポリビニルエーテルは、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位をさらに含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【化3】


[式中、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0027】
〜Rで示される炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記一般式(1)におけるRと同様のものを挙げることができる。R〜Rは構造単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
【0028】
一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位とを有するブロック又はランダム共重合体からなるポリビニルエーテルの重合度は、所望する動粘度に応じて適宜選択すればよいが、通常は温度40℃における動粘度が好ましくは5〜1,000mm/s、更に好ましくは7〜300mm/sになるように選ばれる。また、このポリビニルエーテルの場合も、その炭素/酸素モル比が4.0〜5.8の範囲にあることが必要である。当該モル比が4.0未満では、吸湿性が高く、5.8を超えると、フルオロプロペンとの相溶性が低下する。
【0029】
本発明にかかるポリビニルエーテルは、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、及び対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。一般式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(2)で表されるモノマーが好適である。
【化4】


[式中、R、R、R、R、R及びmは、それぞれ一般式(1)中のR、R、R、R、R及びmと同一の定義内容を示す。]
【0030】
上記一般式(3)で表されるビニルエーテル系モノマーとしては、具体的には例えば、ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル−n−プロピルエーテル;ビニル−イソプロピルエーテル;ビニル−n−ブチルエーテル;ビニル−イソブチルエーテル;ビニル−sec−ブチルエーテル;ビニル−tert−ブチルエーテル;ビニル−n−ペンチルエーテル;ビニル−n−ヘキシルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル;ビニル−2−エトキシエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−2−メチルエーテル;ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル;ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル;1−メトキシプロペン;1−エトキシプロペン;1−n−プロポキシプロペン;1−イソプロポキシプロペン;1−n−ブトキシプロペン;1−イソブトキシプロペン;1−sec−ブトキシプロペン;1−tert−ブトキシプロペン;2−メトキシプロペン;2−エトキシプロペン;2−n−プロポキシプロペン;2−イソプロポキシプロペン;2−n−ブトキシプロペン;2−イソブトキシプロペン;2−sec−ブトキシプロペン;2−tert−ブトキシプロペン;1−メトキシ−1−ブテン;1−エトキシ−1−ブテン;1−n−プロポキシ−1−ブテン;1−イソプロポキシ−1−ブテン;1−n−ブトキシ−1−ブテン;1−イソブトキシ−1−ブテン;1−sec−ブトキシ−1−ブテン;1−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−1−ブテン;2−エトキシ−1−ブテン;2−n−プロポキシ−1−ブテン;2−イソプロポキシ−1−ブテン;2−n−ブトキシ−1−ブテン;2−イソブトキシ−1−ブテン;2−sec−ブトキシ−1−ブテン;2−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−2−ブテン;2−エトキシ−2−ブテン;2−n−プロポキシ−2−ブテン;2−イソプロポキシ−2−ブテン;2−n−ブトキシ−2−ブテン;2−イソブトキシ−2−ブテン;2−sec−ブトキシ−2−ブテン;2−tert−ブトキシ−2−ブテンなどが挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。
【0031】
上記一般式(2)で表される構造単位に対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとして、下記一般式(4)で表されるモノマーが好ましく用いられる。
【化5】

[式中、R〜Rは、それぞれ一般式(1)中のR〜Rと同一の定義内容を示す。]
【0032】
上記一般式(4)で表されるモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン,各種アルキル置換スチレンなどが挙げられる。
【0033】
また、本発明にかかるポリビニルエーテルとしては、以下の末端構造を有するものが好適である。
【0034】
(A)一方の末端が、一般式(5)又は(6)で表され、かつ他方の末端が一般式(7)又は(8)で表される構造を有するもの。
【化6】


[式中、R11、R21及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nはポリビニルエーテルについてのnの平均値が0〜10となるような数を示し、nが2以上の場合には、複数のR41Oは同一でも異なっていてもよい。]
【化7】


[式中、R61、R71、R81及びR91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【化8】


[式中、R12,R22及びR32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、pはポリビニルエーテルについてのpの平均値が0〜10となるような数を示し、pが2以上の場合には、複数のR41Oは同一でも異なっていてもよい。]
【化9】


[式中、R62、R72、R82及びR92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0035】
(B)一方の末端が上記一般式(5)又は(6)で表され、かつ他方の末端が下記一般式(9)で表される構造を有するもの。
【化10】


[式中、R13、R23及びR33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
【0036】
このようなポリビニルエーテル系化合物の中で、特に次に挙げるものが本発明の圧縮型冷凍機用潤滑油の主成分として好適である。
(1)一方の末端が一般式(5)又は(6)で表され、かつ他方の末端が一般式(7)又は(8)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR、R及びRが共に水素原子、mが0〜4の数、Rが炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(2)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が一般式(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(7)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR、R及びRが共に水素原子、mが0〜4の数、Rが炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(3)一方の末端が一般式(5)又は(6)で表され、かつ他方の末端が一般式(9)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR、R及びRが共に水素原子、mが0〜4の数、Rが炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(4)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、その一方の末端が一般式(III)で表され、かつ他方の末端が一般式(9)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR、R及びRが共に水素原子、mが0〜4の数、Rが炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びRが炭素数1〜20の二価の炭化水素基及びRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(5)上記(1)〜(4)の各々であって、一般式(1)におけるRが炭素数1〜3の炭化水素基である構造単位と該Rが炭素数3〜20の炭化水素基である構造単位を有するもの。
【0037】
本発明にかかるポリビニルエーテルは、前記したモノマーをラジカル重合,カチオン重合,放射線重合などによって製造することができる。例えばビニルエーテル系モノマーについては、以下に示す方法を用いて重合することにより、所望の粘度の重合物が得られる。重合の開始には、ブレンステッド酸類,ルイス酸類又は有機金属化合物類に対して、水,アルコール類,フェノール類,アセタール類又はビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を組み合わせたものを使用することができる。ブレンステッド酸類としては、例えばフッ化水素酸,塩化水素酸,臭化水素酸,ヨウ化水素酸,硝酸,硫酸,トリクロロ酢酸,トリフルオロ酢酸などが挙げられる。ルイス酸類としては、例えば三フッ化ホウ素,三塩化アルミニウム,三臭化アルミニウム,四塩化スズ,二塩化亜鉛,塩化第二鉄などが挙げられ、これらのルイス酸類の中では、特に三フッ化ホウ素が好適である。また、有機金属化合物としては、例えばジエチル塩化アルミニウム,エチル塩化アルミニウム,ジエチル亜鉛などが挙げられる。
【0038】
これらと組み合わせる水,アルコール類,フェノール類,アセタール類又はビニルエーテル類とカルボン酸との付加物は任意のものを選択することができる。ここで、アルコール類としては、例えばメタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,ブタノール,イソブタノール,sec−ブタノール,tert−ブタノール,各種ペンタノール,各種ヘキサノール,各種ヘプタノール,各種オクタノールなどの炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール、アリルアルコールなどの炭素数3〜10の不飽和脂肪族アルコールなどが挙げられる。ビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を使用する場合のカルボン酸としては、例えば酢酸;プロピオン酸;n−酪酸;イソ酪酸;n−吉草酸;イソ吉草酸;2−メチル酪酸;ピバル酸;n−カプロン酸;2,2−ジメチル酪酸;2−メチル吉草酸;3−メチル吉草酸;4−メチル吉草酸;エナント酸;2−メチルカプロン酸;カプリル酸;2−エチルカプロン酸;2−n−プロピル吉草酸;n−ノナン酸;3,5,5−トリメチルカプロン酸;カプリル酸;ウンデカン酸などが挙げられる。
【0039】
また、ビニルエーテル類は重合に用いるものと同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。このビニルエーテル類と該カルボン酸との付加物は、両者を混合して0〜100℃程度の温度で反応させることにより得られ、蒸留などにより分離し、反応に用いることができるが、そのまま分離することなく反応に用いることもできる。ポリマーの重合開始末端は、水,アルコール類,フェノール類を使用した場合は水素が結合し、アセタール類を使用した場合は水素又は使用したアセタール類から一方のアルコキシ基が脱離したものとなる。またビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を使用した場合には、ビニルエーテル類とカルボン酸との付加物からカルボン酸部分由来のアルキルカルボニルオキシ基が脱離したものとなる。
【0040】
一方、停止末端は、水,アルコール類,フェノール類,アセタール類を使用した場合には、アセタール,オレフィン又はアルデヒドとなる。またビニルエーテル類とカルボン酸との付加物の場合は、ヘミアセタールのカルボン酸エステルとなる。このようにして得られたポリマーの末端は、公知の方法により所望の基に変換することができる。この所望の基としては、例えば飽和の炭化水素,エーテル,アルコール,ケトン,ニトリル,アミドなどの残基を挙げることができるが、飽和の炭化水素,エーテル及びアルコールの残基が好ましい。
【0041】
ビニルエーテル系モノマーの重合は、原料や開始剤の種類にもよるが、−80〜150℃の間で開始することができ、通常は−80〜50℃の範囲の温度で行うことができる。また、重合反応は反応開始後10秒から10時間程度で終了する。この重合反応における分子量の調節については、ビニルエーテル系モノマーに対し、水、アルコール類、フェノール類、アセタール類及びビニルエーテル類とカルボン酸との付加物の量を多くすることで平均分子量の低いポリマーが得られる。さらに上記ブレンステッド酸類やルイス酸類の量を多くすることで平均分子量の低いポリマーが得られる。この重合反応は、通常溶媒の存在下に行われる。該溶媒については、反応原料を必要量溶解し、かつ反応に不活性なものであればよく特に制限はないが、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系、及びエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル系の溶媒を好適に使用することができる。なお、この重合反応はアルカリを加えることによって停止することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。
【0042】
本発明にかかるポリビニルエーテルは、前記したように炭素/酸素モル比が4.0〜5.8の範囲にあることが必要であるが、原料モノマーの炭素/酸素モル比を調節することにより、該モル比が前記範囲にあるポリマーを製造することができる。すなわち、炭素/酸素モル比が大きいモノマーの比率が大きければ、炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られ、炭素/酸素モル比の小さいモノマーの比率が大きければ、炭素/酸素モル比の小さなポリマーが得られる。また、上記ビニルエーテル系モノマーの重合方法で示したように、開始剤として使用する水、アルコール類、フェノール類、アセタール類及びビニルエーテル類とカルボン酸との付加物と、モノマー類との組合せによっても可能である。重合するモノマーより炭素/酸素モル比が大きいアルコール類、フェノール類などを開始剤として使用すれば、原料モノマーより炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られ、一方、メタノールやメトキシエタノールなどの炭素/酸素モル比の小さなアルコール類を用いれば、原料モノマーより炭素/酸素モル比の小さなポリマーが得られる。
【0043】
さらに、ビニルエーテル系モノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合させる場合には、ビニルエーテル系モノマーの炭素/酸素モル比より炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られるが、その割合は、使用するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーの比率やその炭素数により調節することができる。
【0044】
本発明にかかるポリビニルエーテルの100℃における動粘度は5〜20mm/sであることが好ましく、好ましくは6〜18mm/s、より好ましくは7〜16mm/s、さらに好ましくは8〜15mm/s、最も好ましくは10〜15mm/sである。100℃における動粘度が前記下限値未満であると冷媒共存下での潤滑性が不十分となり、他方、前記上限値を超えると、冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。また、当該ポリビニルエーテルの40℃における動粘度は、40℃における動粘度が10〜200mm/sであることが好ましく、20〜150mm/sであることがより好ましい。40℃における動粘度が10mm/s未満であると潤滑性や圧縮機の密閉性が低下するという傾向にあり、また、200mm/sを越えると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる傾向にある。
【0045】
また、上記一般式(1)で表されるポリビニルエーテルの流動点は−10℃以下であることが好ましく、−20〜−50℃であることがより好ましい。流動点が−10℃以上のポリビニルエーテルを用いると、低温時に冷媒循環システム内で冷凍機油が固化しやすくなる傾向にある。
【0046】
また、上記一般式(1)で表されるポリビニルエーテルの製造工程において、副反応を起こして分子中にアリル基などの不飽和基が形成される場合がある。ポリビニルエーテル分子中に不飽和基が形成されると、ポリビニルエーテル自体の熱安定性が低下する、重合物を生成してスラッジを生成する、あるいは抗酸化性(酸化防止性)が低下して過酸化物を生成するといった現象が起こりやすくなる。特に、過酸化物が生成すると、分解してカルボニル基を有する化合物を生成し、さらにカルボニル基を有する化合物がスラッジを生成してキャピラリー詰まりが起こりやすくなる。
【0047】
したがって、本発明にかかるポリビニルエーテルとしては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましく、具体的には0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。また、過酸化物価は10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが最も好ましい。さらに、カルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが最も好ましい。
【0048】
なお、本発明にかかる不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価とは、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明にかかる不飽和度とは、試料にウィス液(ICl−酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいい;本発明にかかる過酸化物価とは、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいい;本発明にかかるカルボニル価とは、試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(重量ppm)をいう。また、水酸基価は特に限定されないが、10mgKOH/g、好ましくは5mgKOH/g、さらに好ましくは3mgKOH/gであるのが望ましい。
【0049】
本発明の冷凍機油は上記の構成を有するポリビニルエーテルを含有するものであり、当該ポリビニルエーテルのみを単独で用いた場合であっても、低温流動性、潤滑性及び安定性が十分に高く、且つフルオロプロペン冷媒に対する十分に広い相溶領域を有するといった優れた特性を示すものであるが、必要に応じて後述する他の基油や添加剤を添加してもよい。なお、本発明の冷凍機油中の当該ポリビニルエーテルの含有量については、上記の優れた特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、冷凍機油全量基準で50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。上記一般式(1)で表されるポリビニルエーテルの含有量が50質量%未満であると、冷凍機油の潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学安定性などの各種性能のうちのいずれかが不十分となる傾向にある。
【0050】
本発明の冷凍機油において、本発明にかかるポリビニルエーテルの含有量は特に制限されないが、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性等の各種性能により優れる点から、冷凍機油全量基準で、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらにより好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。
【0051】
本発明の冷凍機油は、本発明にかかるポリビニルエーテルのみからなるものであってもよいが、当該ポリビニルエーテル以外の基油及び各種添加剤をさらに含有してもよい。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物においても、本発明にかかるポリビニルエーテル以外の基油及び各種添加剤をさらに含有してもよい。なお、以下の説明において、本発明に係るポリビニルエーテル以外の基油及び添加剤の含有量については、冷凍機油全量を基準として示すが、冷凍機用流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0052】
本発明にかかるポリビニルエーテル以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、並びにエステル系基油(モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル等)、ポリアルキレングリコール、本発明以外のポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でもポリオールエステル、ポリアルキレングリコールが好ましく用いられる。
【0053】
また、本発明の冷凍機油は、必要に応じてさらに各種添加剤を配合した形で使用することもできる。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油組成物全量を基準として示すが、冷凍機用流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油組成物全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0054】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸又は亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0055】
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0056】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0057】
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
【0058】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。
【0059】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0060】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
また、本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル及びエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0062】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテル又はアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0063】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0064】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0065】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0066】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0067】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0068】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコール又はフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニル及びブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0069】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0070】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及びエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物及びグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0071】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
また、本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0073】
本発明の冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm/s、より好ましくは4〜500mm/s、最も好ましくは5〜400mm/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm/s、より好ましくは2〜50mm/sとすることができる。
【0074】
また、本発明の冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、最も好ましくは200ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0075】
また、本発明の冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止するため、及び本発明の冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0076】
また、本発明の冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本発明の冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0077】
本発明の冷凍機油はフルオロプロペン冷媒と共に用いられるものであり、また、本発明の冷凍機用作動流体組成物はフルオロプロペン冷媒を含有するものである。
【0078】
フルオロプロペン冷媒としては、フッ素数が3〜5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC1234ye)、及び3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)のいずれかの1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFC−1225ye、HFC−1234ze及びHFC−1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0079】
また、本発明において使用される冷媒は、フルオロプロペン冷媒と他の冷媒との混合冷媒であってもよい。他の冷媒としては、HFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル、アンモニア及び炭化水素等の自然系冷媒が挙げられる。
【0080】
HFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0081】
また、HFC冷媒のうち、飽和ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)のいずれかの1種又は2種以上の混合物であることが好ましく、冷媒物性の観点から、さらにHFC−32、HFC−125、HFC−134a、HFC−152a、又はHFC−32とHFC−134aの混合物であることが好ましい。
【0082】
炭化水素冷媒としては、炭素数3〜5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタン又はこれらの混合物が好ましい。
【0083】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。
【0084】
本発明において使用される冷媒が混合冷媒である場合、当該混合冷媒は、フルオロプロペン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(A)」という。)と、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド及び3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(B)」という。)とを含有することが好ましい。
【0085】
また、本発明において使用される冷媒が冷媒(A)と冷媒(B)とを含有する混合冷媒である場合、当該混合冷媒は共沸混合物であることが好ましいが、冷媒として必要な物性を有していれば特に共沸混合物である必要はなく、両者の混合比は1:99〜99:1が好ましく、5:95〜95:5がより好ましい。
【0086】
さらに、本発明において使用される冷媒が冷媒(A)と冷媒(B)とを含有する混合冷媒である場合、当該混合冷媒は、フルオロプロペン冷媒又は飽和ハイドロフルオロカーボン以外のHFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、炭素数3〜5の炭化水素以外の炭化水素あるいはアンモニア等の自然系冷媒を更に含有してもよい。
【0087】
本発明の冷凍機油は、通常、冷凍空調機器において、上述したようなフルオロプロペン冷媒あるいは混合冷媒と混合された冷凍機用流体組成物の形で存在している。この組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合、並びに本発明の冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
【0088】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型又は密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0090】
[実施例1〜2、比較例1〜4]
実施例1〜2及び比較例1〜4においては、それぞれ以下に示す基油1〜6を用いて冷凍機油を調製した。得られた冷凍機油の各種性状を表1に示す。
【0091】
(基油)
基油1:エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=7/1(モル比)、重量平均分子量:910、炭素/酸素モル比:4.25)
基油2:エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=2/1(モル比)、重量平均分子量:740、炭素/酸素モル比:4.67)
基油3:ポリイソブチルビニルエーテル。(重量平均分子量:1000、炭素/酸素モル比:6.00)
基油4:ポリエチレンプロピレングリコールジメチルエーテル。(エチレン基/プロピレン基のモル比:50/50、重量平均分子量:1100)
基油5:n−ヘプタン酸とペンタエリスリトールとのエステル
基油6:ナフテン系鉱油。
【0092】
次に、実施例1〜2及び比較例1〜4の各冷凍機油について、以下に示す評価試験を実施した。
【0093】
(冷媒相溶性の評価)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン18gに対して冷凍機油を2g配合し、冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察した。得られた結果を表1に示す。表1中、「相溶」は冷媒と冷凍機油とが相互に溶解したことを意味し、「分離」は冷媒と冷凍機油とが2層に分離したことを意味する。
【0094】
(熱・化学的安定性の評価)
JIS−K−2211に準拠し、水分を100ppm以下に調整した冷凍機油(初期色相L0.5)1gと、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン1gと、触媒(鉄、銅、アルミの各線)とをガラス管に封入した後、150℃に加熱して1週間保持し試験した。試験後は冷凍機油組成物の色相及び触媒の色変化を評価した。色相は、ASTM D156に準拠して評価した。また、触媒の色変化は、外観を目視で観察し、変化なし、光沢なし、黒化のいずれに該当するかを評価した。得られた結果を表1に示す。
【0095】
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位を有し且つ炭素/酸素モル比が4.0〜5.8であるポリビニルエーテルと、フルオロプロペン冷媒と、を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。
【化1】


[式中、R,R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは前記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R〜Rは構造単位毎に同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記フルオロプロペン冷媒として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン及び3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項3】
フルオロプロペン冷媒の少なくとも1種と、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド及び3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項4】
前記フルオロプロペン冷媒が、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン及び3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種であり、前記飽和ハイドロフルオロカーボンが、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンから選ばれる少なくとも1種であり、前記炭素数3〜5の炭化水素が、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタン及びノルマルペンタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項5】
下記一般式(1)で示される構造単位を有し且つ炭素/酸素モル比が4.0〜5.8であるポリビニルエーテルを含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油。
【化2】


[式中、R,R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは前記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R〜Rは構造単位毎に同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。]

【公開番号】特開2009−126979(P2009−126979A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305088(P2007−305088)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】