説明

冷却装置

【課題】 冷却塔の内部に付着するダストを効率良く取り除くことができる冷却装置を提供することにある。
【解決手段】 高温状態の排ガスを冷却するための冷却装置であって、排ガスが上部から導入され、排ガスを下方に向かって移動させる冷却塔(3)と、冷却塔の内部に対して、排ガスの冷却に用いられる液状の冷媒を噴射するノズル(4)と、冷媒によって冷却された排ガスを、冷却塔の底面と対向する開口部(7a)から取り込み、冷却塔の外部に排ガスを排出させる排出ダクト(7)と、冷却塔の底面に沿って移動し、底面に付着したダストを排出位置に向かって移動させる第1スクレーパー(11)と、排出ダクトの開口部と接触し、開口部に沿って移動する第2スクレーパー(16)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の排ガスを冷却する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の調温装置では、冷却塔の上部から排ガスを導入し、冷却水を噴霧することにより、排ガスを冷却している。すなわち、冷却水を蒸発させることにより、排ガスの熱を奪うようにしている。そして、冷却塔の下部には、冷却された排ガスを冷却塔の外部に排出させるための排出ダクトが設けられている。また、冷却塔の底面にはスクレーパーが設けられており、排ガスに含まれているダストが冷却塔の底面に付着した際に、スクレーパーの動作によってダストを取り除くことができる。
【0003】
ここで、排出ダクトのうち、排ガスを取り込むための開口部は、冷却塔の下方に面しており、冷却塔の上部から下部に移動した排ガスは、上方に向かうことによって排出ダクトに取り込まれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−276547号公報
【特許文献2】特開平06−201293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構造では、冷却塔内で冷却された排ガスは、冷却時の移動方向(下降方向)とは異なる方向(上昇方向)に移動することによって、排出ダクトに取り込まれるため、排ガスの流れに渦が発生しやすくなる。このような排ガスの流れによって、排ガスに含まれるダストが、冷却塔の下部において不均一に堆積して成長することがある。例えば、排出ダクトのうち、排ガスを取り込むための開口部に対して、ダストが付着しやすくなることがある。
【0006】
特許文献1に記載の構造では、冷却塔の底面にスクレーパーが配置されているだけであるため、排出ダクトの開口部等に付着したダストを取り除くことができない。また、排出ダクト等にダストを付着させたままでは、冷却塔の内部における排ガスの流れに偏流が生じ、冷却水の蒸発を効率良く行うことができなくなってしまうことがある。冷却水の蒸発が不十分であれば、ダストが水分を吸収して、冷却塔の内壁部に固着してしまうおそれがある。ここで、水分を含むダストが冷却塔の底面に固着すれば、ダストを取り除く際にスクレーパーに過度の負荷が加わり、ダストの排出が不十分となるおそれがある。
【0007】
本発明の主な目的は、高温状態の排ガスを冷却する冷却装置において、冷却塔の内部に付着するダストを効率良く取り除くことができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高温状態の排ガスを冷却するための冷却装置であって、排ガスが上部から導入され、排ガスを下方に向かって移動させる冷却塔と、冷却塔の内部に対して、排ガスの冷却に用いられる液状の冷媒を噴射するノズルと、冷媒によって冷却された排ガスを、冷却塔の底面と対向する開口部から取り込み、冷却塔の外部に排ガスを排出させる排出ダクトと、冷却塔の底面に沿って移動し、底面に付着したダストを排出位置に向かって移動させる第1スクレーパーと、排出ダクトの開口部と接触し、開口部に沿って移動する第2スクレーパーと、を有する。
【0009】
ここで、第2スクレーパーを、排出ダクトの外壁面および内壁面に接触させることができる。これにより、排出ダクトの外壁面および内壁面に付着したダストを取り除くことができる。また、第1スクレーパーおよび第2スクレーパーは、所定の軸を中心として一体的に回転させることができる。これにより、1つの駆動源を用いて、第1スクレーパーおよび第2スクレーパーを動作させることができ、スクレーパーの駆動機構を簡素化および小型化することができる。
【0010】
冷却塔の内部に対して、排ガスに含まれる水分を希釈させるための希釈用ガスを導入する導入口を冷却塔に設けた場合において、冷却塔の内壁面のうち、少なくとも導入口と隣り合う領域と接触し、導入口と隣り合う領域に沿って移動する第3スクレーパーを設けることができる。希釈用ガスの導入口を設けると、導入口の周辺において、排ガスの流れに乱れが生じ、導入口の周辺部において、排ガスに含まれるダストが付着しやすくなってしまう。そこで、第3スクレーパーを用いることにより、上述したダストを取り除くことができる。
【0011】
ここで、導入口は、冷却塔に対する排出ダクトの接続位置よりも下方に配置することができる。また、第1スクレーパー、第2スクレーパーおよび第3スクレーパーは、所定の軸を中心として一体的に回転させることができる。これにより、1つの駆動源によって、第1スクレーパー、第2スクレーパーおよび第3スクレーパーを動作させることができ、スクレーパーの駆動機構を簡素化および小型化することができる。
【0012】
排出ダクトを金属で形成した場合には、冷却塔内のスペースのうち、排出ダクトの腐食特性に基づいて設定された温度よりも低い温度の領域内に、排出ダクトを配置することができる。これにより、排出ダクトの腐食を抑制することができる。
【0013】
また、ノズルに冷媒を供給する冷媒供給部と、希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給部と、冷媒供給部および希釈用ガス供給部の駆動を制御するコントローラと、を設けることができる。ここで、コントローラは、冷媒および希釈用ガスのうち、一方の供給量を一定にするとともに、他方の供給量を変化させることができる。
【0014】
冷媒又は希釈用ガスの供給量を変化させることにより、冷却塔に導入される排ガスの温度が変化しても、排出ダクトから排出される排ガスの温度を一定に維持することができる。これにより、例えば、排出ダクトに取り込まれた排ガスを集塵機に導く場合には、集塵機の耐熱性を考慮して、排ガスの温度を調節することができる。また、冷媒および希釈用ガスの供給量のうち、一方だけを変化させることにより、制御処理を簡素化でき、排ガスの温度変化に対して迅速に対応することができる。具体的には、排出ダクトに取り込まれた排ガスの温度を検出する温度センサを設けておき、コントローラは、温度センサの検出結果に基づいて、他方の供給量を変化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1スクレーパーを用いることにより、冷却塔の底面に付着したダストを取り除くだけでなく、第2スクレーパーを用いることにより、排出ダクトの開口部に付着したダストを取り除くことができる。これにより、冷却塔の内部にダストが付着したままとなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1である排ガス処理設備を示す概略図である。
【図2】排ガスの温度と、鋼製の排出ダクトの腐食速度との関係を示す図である。
【図3】実施形態1における冷却塔の内部構造を示す図であって、冷却塔の底部を冷却塔の上方から見たときの図である。
【図4】実施形態1において、冷媒および希釈用空気の供給量を制御する構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態1において、排ガスの温度を調節する制御を示すフローチャートである。
【図6】希釈用空気の供給量と排ガスの温度との関係を示す概略図である。
【図7】実施形態1の変形例において、排ガスの温度を調節する制御を示すフローチャートである。
【図8】冷媒の供給量と排ガスの温度との関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
【0018】
本発明の実施形態1である冷却塔を含む排ガス処理設備について、図1を用いて説明する。
【0019】
回転炉床炉1では、鉄鉱石、製鉄ダストなどの金属酸化物及び炭材をペレットにし、水平面で回転する回転炉床(不図示)上にペレットを装入して加熱(還元)することにより還元鉄を製造している。回転炉床炉1で発生した高温(例えば、800℃以上)の排ガスは、耐火物で構成されたダクト2を通過して冷却塔3に導かれる。本実施形態では、回転炉床炉1で発生した排ガスを冷却塔3に供給しているが、冷却塔3に供給される排ガスは、高温状態のガスであればよく、焼却炉や溶融炉で発生した排ガスを冷却塔3に供給することもできる。
【0020】
ダクト2は、冷却塔3の上部に接続されており、冷却塔3内に進入した排ガスは、冷却塔3の下方に向かって移動する。冷却塔3の上部に形成された斜面3aには、複数のノズル4が設けられている。ノズル4は、冷却塔3内に進入した排ガスを冷却するための冷媒を、冷却塔3の内部に向かって噴射する。冷媒としては、液体を用いたり、気液混合物を用いたりすることができる。これにより、冷却塔3の内部では、上部から下部に向かって温度が低下することになる。液状の冷媒を用いれば、排ガスの温度によって冷媒を気化(蒸発)させることができ、冷媒の気化熱を用いて、排ガスの温度を効率良く低下させることができる。
【0021】
冷却塔3の下部には、排ガス中の水分を希釈するための空気を冷却塔3の内部に導入するための配管5が接続されている。排ガスに含まれるダストは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、塩素(Cl)を含み、潮解性を有していることがあるため、排ガス中の水分を吸収し、後述する集塵機8のフィルタ8aに付着しやすくなってしまう。この場合には、フィルタ8aの差圧が上昇しやすくなってしまい、フィルタ8aによるダストの捕集を効率良く行うことができなくなってしまう。
【0022】
そこで、本実施形態では、冷却塔3の内部に空気を供給して、排ガス中の水分を低下(希釈)させることにより、排ガス中のダストが水分を吸収するのを抑制することができる。なお、本実施形態では、水分を希釈させるために、空気を用いているが、空気以外の気体を用いることもできる。
【0023】
配管5にはファン6が接続されており、ファン6を駆動することにより、希釈用の空気を、配管5を介して冷却塔3の内部に導入することができる。配管5は、ファン6に対して空気の移動経路の下流側において、複数に分岐しており、複数の分岐部が冷却塔3に接続されている。冷却塔3に対する複数の分岐部の接続位置は、同一の高さに設定されており、複数の分岐部は、冷却塔3の周方向において、等間隔に配置されている。
【0024】
なお、配管5における分岐部の数は、適宜選択することができる。また、本実施形態では、配管5を分岐させているが、互いに独立した複数の配管5を用いることにより、希釈用の空気を冷却塔3の内部に導入することもできる。この場合には、各配管5に対してファン6を設ければよい。
【0025】
また、冷却塔3の下部には、冷却塔3の内部で冷却された排ガスを冷却塔3の外部に排出させるための鋼製(金属製)の排出ダクト7が設けられている。排出ダクト7は、冷却された排ガスを取り込むための取込口7aを有している。取込口7aは、冷却塔3の内部に配置されており、冷却塔3の底面3bと向かい合って配置されている。
【0026】
排出ダクト7のうち、冷却塔3の内部に位置する部分は、冷却塔3内の温度が480℃よりも低い温度領域に配置されている。ノズル4から噴出された冷媒によって、冷却塔3の内部における温度は、下方に向かうにつれて低下するようになっており、冷却塔3の内部における温度分布(冷却塔3の上下方向における温度分布)は、予め測定しておくことができる。そして、予め測定した温度分布に基づいて、排出ダクト7を配置する位置を決定すればよい。
【0027】
図2には、排ガスの温度と、鋼製の排出ダクト7の腐食速度との関係を示している。図2に示すように、排ガスの温度が480℃よりも高くなると、塩化鉄又はアルカリ鉄硫酸の分解による腐食速度が急激に上昇してしまう。回転炉床炉1から供給される排ガスのダストには、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、塩素(Cl)が含まれていることがあり、鋼製の排出ダクト7には、塩化鉄又はアルカリ鉄硫酸の分解による腐食が発生してしまう。そこで、480℃以下の温度となる領域に排出ダクト7を配置することにより、排出ダクト7の腐食を抑制することができる。
【0028】
また、希釈用空気の導入口(冷却塔3に対する配管5の接続口)は、冷却塔3のうち、480℃以下の温度である領域に設けることが好ましい。本実施形態において、排ガスの温度が480℃以上となる領域では、ノズル4から噴射された冷媒によって排ガスを冷却させるとともに、冷媒を十分に蒸発させることが好ましい。冷媒を蒸発させるための領域において、希釈用空気を導入してしまうと、冷媒の蒸発が不十分になってしまう。
【0029】
冷媒の蒸発が不十分になると、排ガスに含まれるダストが冷媒と接触して、液化物や溶解物が生成され、液化物等が冷却塔3の内壁に固着してしまい、好ましくない。ここで、冷却塔3の高さを高くすれば、言い換えれば、排ガスの冷却に用いられる領域を大きくすれば、冷媒を蒸発させやすくなるが、冷却塔3が大型化してしまう。そこで、本実施形態のように、冷却塔3の内部を、冷媒によって排ガスを冷却させる領域と、希釈用空気によって排ガス中の水分を希釈させる領域とを分けることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、480℃以下の温度となる領域、言い換えれば、排出ダクト7が配置されている領域において、希釈用空気を冷却塔3の内部に供給するようにしている。希釈用空気の導入口は、冷却塔3に対する排出ダクト7の接続位置よりも下方の領域に配置されていればよい。
【0031】
冷却塔3に供給された排ガスは、冷却塔3の内部を下方に向かって移動するが、排出ダクト7に取り込まれるときには、冷却塔3の上方に向かって移動することになる。すなわち、排出ダクト7における取込口7aの内側および外側では、排ガスの移動方向が逆方向となる。
【0032】
取込口7aから排出ダクト7に取り込まれた排ガスは、集塵機8に導かれる。集塵機8の内部には、複数のフィルタ8aが配置されており、フィルタ8aは、排ガスに含まれるダストを捕集する。フィルタ8aを通過した排ガスは、排出ダクト7によって煙突9に導かれ、大気中に排出される。
【0033】
排出ダクト7のうち、集塵機8および煙突9の間には、ファン10が配置されており、ファン10を駆動することにより、冷却塔3内の排ガスを排出ダクト7に吸引することができる。ファン10は、排出ダクト7の任意の位置に配置することができ、冷却塔3内の排ガスを排出ダクト7に吸引させることができればよい。
【0034】
冷却塔3の底面3bには、第1スクレーパー11が配置されており、第1スクレーパー11は、回転駆動軸12に接続されている。回転駆動軸12は、排出ダクト7の取込口7aの下方に位置しており、冷却塔3の上部から見たときに、取込口7aおよび回転駆動軸12は、互いに重なるように配置されている。
【0035】
回転駆動軸12は、スクレーパー駆動装置13からの駆動力を受けて回転し、回転駆動軸12が回転することにより、第1スクレーパー11は、冷却塔3の底面3bに沿って移動する。スクレーパー駆動装置13は、冷却塔3の外部に配置されており、スクレーパー駆動装置13に接続された回転駆動軸12は、冷却塔3の底面3bを貫通して、冷却塔3の内部に突出している。
【0036】
図3には、冷却塔3の内部構造であって、冷却塔3の底部を、冷却塔3の上部から見たときの図を示している。図3に示すように、回転駆動軸12は、冷却塔3の底面3bにおける略中心に配置されており、第1スクレーパー11は、回転駆動軸12を中心に一方向(例えば、矢印RDの方向)に回転して、底面3bの全体を移動できるようになっている。冷却塔3の底面3bには、排ガスの冷却によって排ガスに含まれるダストが付着する。そこで、第1スクレーパー11を回転させることにより、冷却塔3の底面3bに付着したダストを集めることができる。
【0037】
本実施形態では、図3に示すように、回転駆動軸12に対して2つの第1スクレーパー11を設けているが、これに限るものではない。例えば、1つの第1スクレーパー11を回転駆動軸12に設けるだけでもよい。すなわち、第1スクレーパー11の回転動作によって、底面3bに付着したダストを取り除くことができればよい。また、第1スクレーパー11の形状は、底面3bに付着したダストを取り除く観点に基づいて、適宜設定することができる。
【0038】
冷却塔3の底面3bには、ダスト排出管14が接続されており、第1スクレーパー11によって集められたダストは、ダスト排出管14から冷却塔3の外部に排出される。ダスト排出管14には、ダスト排出装置(ロータリーバルブ)15が設けられており、ダスト排出管14に導かれたダストは、ダスト排出装置15で一次的に集められる。そして、ダスト排出装置15を動作させることにより、ダクト排出装置15に蓄積されたダストを取り出すことができる。尚、ダスト排出装置15を連続的に動作させても良い。
【0039】
一方、回転駆動軸12には、第2スクレーパー16および第3スクレーパー17が接続されている。図3に示すように、第2スクレーパー16および第3スクレーパー17は、回転駆動軸12を基準とする点対称の位置に配置されている。
【0040】
なお、本実施形態では、第1〜第3スクレーパー11,16,17を、図3に示すように配置しているが、これに限るものではない。すなわち、第1〜第3スクレーパー11,16,17は、回転駆動軸12の回転によって回転することができればよく、第1〜第3スクレーパー11,16,17を配置する位置は、適宜設定することができる。
【0041】
第2スクレーパー16の基端部は、回転駆動軸12に固定されており、第2スクレーパー16の先端部は、二叉に分岐した一対の接触部16aを有している。一対の接触部16aは、排出ダクト7の取込口7aを挟んで配置されており、各接触部16aは、取込口7aに沿った曲面を有している。一対の接触部16aのうち、一方の接触部16aは、排出ダクト7の外壁面と接触しており、他方の接触部16aは、排出ダクト7の内壁面と接触している。
【0042】
回転駆動軸12の回転によって第2スクレーパー16が回転すると、一対の接触部16aは、排出ダクト7の取込口7aに沿って移動する。これにより、排出ダクト7の取込口7aに付着したダストを取り除くことができる。なお、第2スクレーパー16の形状は、取込口7aに付着したダストを取り除く観点に基づいて、適宜設定することができる。
【0043】
本実施形態のように、排出ダクト7を配置すると、取込口7aの周囲では、排ガスの流れが乱れ、取込口7aの外壁面や内壁面に排ガスに含まれるダストが付着してしまうことがある。また、回転炉床炉1において、含有亜鉛濃度が高い電気炉ダストを処理した場合には、排ガス中のダスト(粗酸化亜鉛)の濃度は高炉系のダストに比べて約30倍、高くなるため、ダストが付着しやすくなる。
【0044】
そこで、本実施形態のように、第2スクレーパー16を用いることにより、取込口7aに付着したダストを取り除くことができる。ここで、接触部16aのサイズ、言い換えれば、第2スクレーパー16および排出ダクト7の接触面積は、ダストの付着しやすい領域等を考慮して適宜設定することができる。第2スクレーパー16を動作させると、取込口7aに付着したダストは、冷却塔3の底面3bに向かって落下し、底面3b上で堆積する。底面3bで堆積したダストは、第1スクレーパー11によってダスト排出管14に導かれる。
【0045】
本実施形態では、回転駆動軸12に対して、1つの第2スクレーパー16を設けているが、第2スクレーパー16を複数設けてもよい。この場合には、回転駆動軸12の回転方向において、複数の第2スクレーパー16を等間隔に配置することができる。
【0046】
第3スクレーパー17の基端部は、回転駆動軸12に固定されており、第3スクレーパー17の先端に設けられた接触部17aは、冷却塔3の側壁に沿って配置されている。回転駆動軸12が回転すると、第3スクレーパー17の接触部17aは、冷却塔3の側壁に沿って移動する。
【0047】
本実施形態において、冷却塔3の側壁からは、希釈用の空気が導入されるようになっており、この周辺では、冷却塔3の上部から下部に向かって移動する排ガスと、排ガスの移動方向とは異なる方向に移動する希釈用ガスとが衝突することになる。このように希釈用ガスによって排ガスの流れに乱れが生じると、排ガスに含まれるダストが冷却塔3の側壁に付着しやすくなってしまう。
【0048】
そこで、本実施形態では、第3スクレーパー17を用いることにより、冷却塔3の側壁に付着したダストを取り除くようにしている。第3スクレーパー17によって取り除かれたダストは、冷却塔3の底面3bに向かって落下して、底面3b上で堆積する。底面3b上で堆積したダストは、第1スクレーパー11によってダスト排出管14に導かれる。
【0049】
本実施形態では、回転駆動軸12に対して、1つの第3スクレーパー17を設けているが、第3スクレーパー17を複数設けてもよい。この場合には、回転駆動軸12の回転方向において、複数の第3スクレーパー17を等間隔に配置することができる。例えば、本実施形態で説明した接触部17aを2つに分割し、分割した接触部17aに対応した2つの第3スクレーパー17を設けることができる。なお、第3スクレーパー17の形状は、上述した冷却塔3の側壁に付着したダストを取り除く観点に基づいて、適宜設定することができる。
【0050】
また、本実施形態では、1つの回転駆動軸12によって、3つのスクレーパー11,16,17を回転させているが、これに限るものではない。例えば、3つのスクレーパー11,16,17のうち、少なくとも2つのスクレーパーを独立して回転させることもできる。この場合には、回転軸を中心とした同心円状にスクレーパーを独立して回転させる機構を設けることができる。
【0051】
本実施形態において、第1〜第3スクレーパー11,16,17を駆動するタイミングは、適宜選択することができる。例えば、作業者の動作指示によって、第1〜第3スクレーパー11,16,17を動作させたり、所定のタイミングで自動的に第1〜第3スクレーパー11,16,17を動作させたりすることができる。また、第1〜第3スクレーパー11,16,17を独立して動作させる構成においては、第1〜第3スクレーパー11,16,17を互いに異なるタイミングにおいて動作させることもできる。
【0052】
次に、本実施形態の冷却塔3において、ノズル4から噴射される冷媒の量と、希釈用空気の量を調節する制御について説明する。図4は、冷媒および空気の量を調節するための構成を示すブロック図であり、図5は、冷媒および空気の量を調節する処理を示すフローチャートである。
【0053】
冷却塔3に供給される排ガスの温度は、排ガスの発生源である回転炉床炉1における環境等に応じて変化してしまう。この場合には、冷却塔3に導入される排ガスの温度に応じて排ガスの冷却処理を変更する必要がある。特に、集塵機8のフィルタ8aは、所定の耐熱温度を有しているため、排ガスの温度を耐熱温度以下に低下させた状態で排ガスをフィルタ8aに供給する必要がある。
【0054】
温度センサ20は、排出ダクト7を移動する排ガスのうち、冷却塔3から集塵機8に向かう排ガスの温度を検出し、検出結果をコントローラ21に出力する。コントローラ21は、温度センサ20の検出結果に基づいて、ノズル4から噴射される冷媒の量と、希釈用空気の供給量とを制御する。コントローラ21は、所定の情報を格納するメモリ21aを有している。
【0055】
ノズル4には、冷媒を供給する冷媒供給部22が接続されており、コントローラ21は、冷媒供給部22からノズル4に供給される冷媒の量、言い換えれば、冷却塔3の内部に噴出される冷媒の量を制御する。また、コントローラ21は、ファン6の駆動を制御することにより、希釈用空気の供給量を調節する。
【0056】
図5のステップS101において、コントローラ21は、温度センサ20の出力に基づいて、冷却塔3から集塵機8に向かう排ガスの温度を取得する。ステップS102において、コントローラ21は、検出温度が閾値よりも高いか否かを判別し、検出温度が閾値よりも高ければ、ステップS103に進む。閾値とは、集塵機8のフィルタ8aの耐熱温度に基づいて設定された値である。
【0057】
ステップS103において、コントローラ21は、ノズル4からの冷媒の供給量を一定にするとともに、ステップS101で取得した温度に基づいて、希釈用空気の供給量を変更する。コントローラ21のメモリ21aには、希釈用空気の供給量と、集塵機8に向かう排ガスの温度との関係を示すマップ(図6参照)が記憶されており、コントローラ21は、このマップおよび排ガスの温度から希釈用空気の供給量を決定することができる。具体的には、排ガスの温度が上昇するにつれて、希釈用空気の供給量を増加させることができる。
【0058】
なお、図6に示すマップは、一例を示すものであり、メモリ21aに格納されるマップは、冷却塔3における排ガスの冷却特性に基づいて、適宜設定することができる。また、本実施形態では、マップを用いて希釈用空気の供給量を決定しているが、排ガスの温度および希釈用空気の供給量を変数とした演算式に基づいて、希釈用空気の供給量を算出することもできる。
【0059】
図5に示す処理では、冷媒の供給量を一定にするとともに、希釈用空気の供給量を変化させているが、これに限るものではない。具体的には、図7のフローチャートに示すように、希釈用空気の供給量を一定にするとともに、冷媒の供給量を変化させることができる。図7において、図5と同一の処理については、同一符号を付している。
【0060】
図7のステップS104において、コントローラ21は、希釈用空気の供給量を一定にするとともに、ステップS101で取得した温度に基づいて、冷媒の供給量を変更する。コントローラ21のメモリ21aには、冷媒の供給量と、集塵機8に向かう排ガスの温度との関係を示すマップ(図8参照)が記憶されており、コントローラ21は、このマップおよび排ガスの温度から冷媒の供給量を決定することができる。具体的には、排ガスの温度が上昇するにつれて、冷媒の供給量を増加させることができる。
【0061】
なお、図7に示すマップは、一例を示すものであり、メモリ21aに格納されるマップは、冷却塔3における排ガスの冷却特性に基づいて、適宜設定することができる。また、本実施形態では、マップを用いて冷媒の供給量を決定しているが、排ガスの温度および冷媒の供給量を変数とした演算式に基づいて、冷媒の供給量を算出することもできる。
【0062】
図5又は図7に示す処理を行えば、集塵機8に供給される排ガスの温度をフィルタ8aの耐熱温度よりも低い温度まで低下させることができ、フィルタ8aの劣化を抑制することができる。また、冷媒および希釈用空気の供給量の両者を調節するのではなく、一方の供給量を一定とし、他方の供給量を変化させるだけであるため、排ガスの温度を調節するための制御パラメータは1つとなり、温度調節の制御を簡素化することができる。これにより、温度調節の制御処理を迅速に行うことができ、排ガスの温度変化に迅速に対応することができる。
【0063】
一方、排ガスの温度を低下させすぎると、図2に示すように、鋼製の排出ダクト7において、低温腐食が発生してしまう。そこで、冷却塔3から集塵機8に導かれる排ガスの温度は、所定の温度範囲内であることが好ましい。ここで、集塵機8に導かれる排ガスの温度が下限値よりも低いか否かを判別し、排ガスの温度が下限値よりも低いときには、冷媒又は希釈用空気の供給量を減らせばよい。
【符号の説明】
【0064】
1:回転炉床炉、2:ダクト、3:冷却塔、4:冷媒噴出用のノズル、
5:希釈用空気の配管、6:希釈用空気のファン、7:排出ダクト、8:集塵機、
8a:フィルタ、9:煙突、10:排ガス吸引用のファン、11:第1スクレーパー、
12:回転駆動軸、13:スクレーパー駆動装置、14:ダスト排出管、
15:ダスト排出装置(ロータリーバルブ)、16:第2スクレーパー、
16a:接触部、17:第3スクレーパー、17a:接触部、20:温度センサ、
21:コントローラ、21a:メモリ、22:冷媒供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温状態の排ガスを冷却するための冷却装置であって、
前記排ガスが上部から導入され、前記排ガスを下方に向かって移動させる冷却塔と、
前記冷却塔の内部に対して、前記排ガスの冷却に用いられる液状の冷媒を噴射するノズルと、
前記冷媒によって冷却された前記排ガスを、前記冷却塔の底面と対向する開口部から取り込み、前記冷却塔の外部に前記排ガスを排出させる排出ダクトと、
前記冷却塔の前記底面に沿って移動し、前記底面に付着したダストを排出位置に向かって移動させる第1スクレーパーと、
前記排出ダクトの前記開口部と接触し、前記開口部に沿って移動する第2スクレーパーと、
を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第2スクレーパーは、前記排出ダクトの外壁面および内壁面に接触することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1スクレーパーおよび前記第2スクレーパーは、所定の軸を中心として一体的に回転することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却塔に設けられ、前記冷却塔の内部に対して、前記排ガスに含まれる水分を希釈させるための希釈用ガスを導入する導入口と、
前記冷却塔の内壁面のうち、少なくとも前記導入口と隣り合う領域と接触し、前記導入口と隣り合う領域に沿って移動する第3スクレーパーと、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1スクレーパー、前記第2スクレーパーおよび前記第3スクレーパーは、所定の軸を中心として一体的に回転することを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記導入口は、前記冷却塔に対する前記排出ダクトの接続位置よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記排出ダクトは、金属で形成されており、前記冷却塔内のスペースのうち、前記排出ダクトの腐食特性に基づいて設定された温度よりも低い温度の領域内に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の冷却装置。
【請求項8】
前記ノズルに前記冷媒を供給する冷媒供給部と、
前記希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給部と、
前記冷媒供給部および前記希釈用ガス供給部の駆動を制御するコントローラと、を有しており、
前記コントローラは、前記冷媒および前記希釈用ガスのうち、一方の供給量を一定にするとともに、他方の供給量を変化させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の冷却装置。
【請求項9】
前記排出ダクトに取り込まれた前記排ガスの温度を検出する温度センサを有しており、
前記コントローラは、前記温度センサの検出結果に基づいて、前記他方の供給量を変化させることを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−202920(P2011−202920A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72504(P2010−72504)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】