説明

冷却装置

【課題】ポンプへの空気の混入を防止し、所定の温度の冷却液を安定して送り続けることができるコンパクトなタンクの冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却液を貯留するタンク10の内部を、仕切り壁11で低温槽13と高温槽12に分割する。仕切り壁11は、タンク10内の冷却液の平均液面より下方に連通部14を有している。低温槽13に接続し、第1ポンプ40と被冷却体の熱交換路91とを介して、高温槽12に接続する第1循環路20と、高温槽13に接続し、第2ポンプ50と冷却液冷却用の熱交換器80とを介して、低温槽13に接続する第2循環路30を設ける。
そして、低温槽13から熱交換路91までの間に温度センサ60を配設し、温度センサ60の計測値に基づき、第2ポンプを作動または停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液のタンクを有し、冷却液を強制循環させて被冷却体を冷却する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却水を貯留するタンクを有し、冷却水を強制循環させて被冷却体を冷却する冷却装置として、タンクを小型化するために、タンクの内部に仕切り壁を設け、低温槽と高温槽に分割した特許文献1記載の装置が知られている。
【0003】
確かに、特許文献1の装置は、従来の冷却装置よりもタンクが小型化されている。しかし、冷却水の温度調節をする際、冷却水が仕切り壁の上を乗り越えるため、その際、泡を生じさせ、ポンプに空気が混入するおそれがある。また、被冷却体に送られる冷却水の温度、すなわち低温槽の冷却水の温度が下がりすぎたときに、高温槽の高温の冷却水を仕切り壁の上から低温槽に流入させ低温槽の冷却水の温度を調節するようになっているが、高温の冷却水のほうが低温の冷却水より比重が小さいため、すぐに混合せず、被冷却体に送られる冷却水の温度が所定の温度になる頃には、低温槽の冷却水の温度が高くなりすぎてしまうおそれがある。つまり、被冷却体に送る冷却水の温度を一定に保つのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−2652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ポンプへの空気の混入を防止し、所定の温度の冷却液を安定して送り続けることができるコンパクトなタンクの冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、
内部の仕切り壁にて低温槽と高温槽とが形成された冷却液を貯留するタンクと、
前記低温槽に低温液吸入口で接続され、被冷却体の熱交換路を介して、前記高温槽に高温液吐出口で接続される第1循環路と、
前記高温槽に高温液吸入口で接続され、冷却液冷却用の熱交換器を介して、前記低温槽に低温液吐出口で接続される第2循環路と、
前記第1循環路に冷却液を強制循環させる第1ポンプと、
前記第2循環路に冷却液を強制循環させる第2ポンプと、
前記低温液吸入口から前記被冷却体の熱交換路までの間の前記第1循環路内に配設され、前記被冷却体に送られる冷却液の温度を計測する第1温度センサと、
第1温度センサの計測値に基づき、第2ポンプを作動または停止させる第2ポンプ制御部と、
を備える冷却装置において、
前記仕切り壁は、前記タンク内の冷却液の平均液面より下方に連通部を有していることを特徴としている。
【0007】
請求項に2に係る発明は、請求項1において、
前記連通部は、前記仕切り壁の下部に設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2において、
前記低温液吸入口と前記高温液吸入口は、それぞれ前記タンクの下部に配設され、
前記高温液吐出口と前記低温液吐出口は、それぞれ前記低温液吸入口と前記高温液吸入口の近傍に配設されていることを特徴としている。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3において、
前記被冷却体は、プレス型であることを特徴としている。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4において、
前記被冷却体の熱交換路から前記高温液吐出口までの間の前記第1循環路内に、第2温度センサがさらに配設され、
前記第2ポンプ制御部は、第2ポンプが停止している状態において第2温度センサの計測値に基づき第2ポンプを作動させ、または、第2ポンプが作動している状態において第2温度センサの計測値に基づき第2ポンプを停止させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、第1ポンプを常に運転させた状態にして、第2ポンプを作動させることで、低温槽の冷却液の温度を低下させ、第2ポンプを停止させることで、低温槽の冷却液の温度を上昇させることができる。これにより、コンパクトなタンクで低温槽の冷却液の温度を一定に保つことができ、その結果、所定の温度の冷却液を被冷却体の熱交換路に送り続けることができる。また、第2ポンプを停止させたときに高温槽の冷却液が仕切り壁の連通部を通って低温槽に移動するが、連通部は、タンク内の冷却液の平均液面よりも下方に設けられているため、冷却液の移動の際、泡が生じることはなく、ポンプのエア噛みを防止することができる。
そして、パスカルの原理により、冷却液の液面高さは平均液面を維持するため、タンクから冷却液が溢れることはない。
【0012】
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、高温槽から低温槽に流入した冷却液を低温槽の冷却液と短時間に混合させることができる。高温槽の冷却液のほうが低温槽の冷却液よりも比重が小さいため、例えば仕切り壁の上から冷却液を流入させたのでは低温槽の冷却液と混合されるのに時間がかかってしまう。この点、本願発明では、仕切り壁の下部から冷却液を流入させるため、効率よく混合させることができる。
【0013】
上記のように構成した請求項3に係る発明によれば、高温液吐出口と高温液吸入口とが近くに配設されているため、高温液吐出口から高温槽に吐出される冷却液は、高温槽の冷却液の温度の影響をほとんど受けることなく、そのまま第2循環路に吸入される。また、低温液吐出口と低温液吸入口とが近くに配設されているため、低温液吐出口から低温槽に吐出された冷却液は、低温槽の冷却液の温度の影響をほとんど受けることなく、そのまま第1循環路に吸入される。
これにより、高温槽および低温槽の冷却液全体の温度が低下するのを待たずに被冷却体の状態に反応し、第2ポンプを停止させることができる。そして、さらに、第2ポンプを始動または再始動させる場合には、高温槽および低温槽の冷却液全体の温度の影響をあまり受けることなく、短時間で定常時の運転状態に安定させることができる。
また、連通部は仕切り壁の下部に設けられ、高温液吐出口および低温液吸入口もタンクの下部に設けられていることから、高温液吐出口から高温槽に吐出された冷却液は、高温槽の冷却液の温度の影響をあまり受けることなく低温槽に移動しやすくなっており、また、低温槽に移動した後も低温槽の冷却液の温度の影響をあまり受けることなく、低温液吸入口に吸入されやすくなっている。
これにより、高温槽および低温槽の冷却液全体の温度が上昇するのを待たずに被冷却体の状態に反応し、第2ポンプを作動させることができる。
また、第1循環路および第2循環路からタンクに送られる冷却液がそれぞれ高温槽および低温槽の冷却液の液面下で吐出されるため、吐出時の泡の発生を防ぐことができ、ポンプのエア噛みを防止することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項4に係る発明によれば、被冷却体であるプレス型を所定の温度の冷却液で冷却し続けることができる。本願発明は、特にプレス型の冷却に適しているものである。
【0015】
上記のように構成した請求項5に係る発明によれば、プレス機の一時停止等のためにプレス型の熱交換路から高温槽に送られる冷却液の温度が下がった場合、第2ポンプを停止させるタイミングをより早くすることができ、プレス型の熱交換路に送られる冷却液の温度が下がりすぎてしまうことを防止できる。また、プレス機の運転を再開した等の理由によりプレス型の熱交換路から高温槽に送られる冷却液の温度が上がった場合、第2ポンプを作動させるタイミングをより早くすることができ、定常時の運転状態になるまでの時間をより短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の概略を示す全体図である。
【図2】第2ポンプ停止時のタンク内の冷却液の流れを示す模式図である。
【図3】第2ポンプ作動時のタンク内の冷却液の流れを示す模式図である。
【図4】実施例2の概略を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の冷却装置を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、実施例1の冷却装置1の構成について、図1を参照して説明する。冷却装置1はタンク10、第1循環路20、第2循環路30、第1ポンプ40、第2ポンプ50、温度センサ60、第2ポンプ制御部70、熱交換器80、チラー81、プレス型90で構成される。
【0019】
タンク10には、内部に仕切り壁11が設けられ、タンク10の内部を高温槽12と低温槽13とに分割している。仕切り壁11の下端は、タンク10の底部からやや離れたところに設けられ、その仕切り壁11の下端とタンク10内の底部との間に連通部14が形成されている。この連通部14の開口面積は、第1循環路20を循環する冷却液の流量が十分連通する大きさである。本実施形態では、少なくとも後述のとおり毎分Cリットルの冷却液が連通可能な開口面積となっている。
【0020】
第1循環路20は、低温液吸入口21で低温槽13に接続され、プレス型90に設けられた冷却用通路91(本発明の被冷却体の熱交換路に相当する。)を介して、高温液吐出口22で高温槽12に接続されている。低温液吸入口21は、低温槽13側のタンク10の側面下部に配設された管の先端部である。高温液吐出口22は、高温槽12の上部からタンクの底部に向かって延びる管の先端部である。そして、低温液吸入口21と高温液吐出口22は、近傍に配設されている。
【0021】
第2循環路30は、高温液吸入口31で高温槽12に接続され、チラー81に接続された熱交換器80を介して、低温液吐出口32で低温槽13に接続されている。高温液吸入口31は、高温槽12側のタンク10の側面下部に配設された管の先端部である。低温液吐出口32は、低温槽13の上部からタンクの底部に向かって延びる管の先端部である。そして、高温液吸入口31と低温液吐出口32は、近傍に配設されている。
【0022】
第1ポンプ40は、渦巻きポンプであり、第1循環路20に冷却液を強制循環させる。第1ポンプは、本冷却装置1が作動している間は、常に一定の能力で運転されている。
第2ポンプ50は、渦巻きポンプであり、第2循環路30に冷却液を強制循環させる。第2ポンプ50は、第2ポンプ制御部70によって、作動または停止される。
【0023】
温度センサ60は、低温液吸入口21から冷却用通路91までの間の第1循環路20内に配設され、冷却用通路91に送られる冷却液の温度を計測する。計測値は第2ポンプ制御部70に送られる。
第2ポンプ制御部70は、温度センサ60の計測値に基づいて、第2ポンプ50を作動または停止させる。
【0024】
つぎに、冷却装置1がどのように作動するかについて、プレス機の定常運転時、プレス機の一時停止時、プレス機の運転を再開した時の順に説明する。本装置の目的は、被冷却体であるプレス型90を所定の温度に維持することである。プレス機が定常間隔で運転されている場合に、プレス型90を所定の温度に維持するためには、冷却用通路91に継続して何℃の冷却液を毎分何リットル送らなければいけないか、あらかじめ調べておくことが可能である。また、それが決まると、冷却用通路91を経由した冷却液の温度、すなわち高温槽12に送られる冷却液の温度も決まる。
本実施形態では、プレス型90を所定の温度に維持するためには、継続してA℃の冷却液を毎分Cリットル送る必要があり、冷却用通路91を経由した冷却液の温度は、B℃であるとする。
第1ポンプ40は、第1循環路20の抵抗を考慮して冷却液を毎分Cリットル送る能力を備えている。また、第2ポンプ50は、第2循環路30の抵抗を考慮して冷却液を毎分Cリットル送る能力を備えている。
【0025】
(1)プレス機の定常運転時
低温槽13のA℃の冷却液は、第1ポンプ40によって、低温液吸入口21から第1循環路20に毎分Cリットル吸入され、プレス型90の冷却用通路91を通って、高温液吐出口22から高温槽12に吐出される。高温液吐出口22から高温槽12に吐出される冷却液は、毎分Cリットルで、温度はB℃である。
高温槽12のB℃の冷却液は、第2ポンプによって、高温液吸入口31から第2循環路30に毎分Cリットル吸入され、チラー81に接続された熱交換器80を通って、低温液吐出口32から低温槽13に吐出される。低温液吐出口32から低温槽13に吐出される冷却液は、毎分Cリットルで、温度はA℃である。
ここで、熱交換器80は、B℃の冷却液を毎分Cリットル送ったときに熱交換後の温度がA℃となるように調整されている。
このように、定常時は、第1ポンプ40と第2ポンプ50の両方が作動して、プレス型90の冷却用通路91に対しA℃の冷却液を毎分Cリットル送り続けることができる。
そして、高温液吐出口22および低温液吐出口32は、それぞれタンクの下部に配設された高温液吸入口31および低温液吸入口21の近傍、すなわち、高温槽12および低温槽13の下部に配設されているため、冷却液を吐出する際に泡を生じることがなく、ポンプのエア噛みを防止することができる。
なお、プレス機が定常運転している時の高温槽12と低温槽13の冷却液の流入量と流出量は、すべて毎分Cリットルで同じであるため、高温槽12と低温槽13との間に冷却液の移動はほとんど生じない。
【0026】
(2)プレス機の一時停止時
前述のとおり、第1ポンプ40によって、低温槽13のA℃の冷却液は、低温液吸入口21から第1循環路20に毎分Cリットル吸入され、プレス型90の冷却用通路91を通って、高温液吐出口22から高温槽12に吐出される。しかし、プレス機が一時停止しているため、高温液吐出口22から高温槽12に吐出される冷却液は、毎分Cリットルで、温度はB℃よりも低い温度となる。この段階では、高温槽12の冷却液の温度は、まだほぼB℃である。
【0027】
ここで、高温液吐出口22と高温液吸入口31とが近くに配設されているため、高温液吐出口22から高温槽12に吐出されるB℃よりも温度が低い冷却液は、高温槽12の冷却液の温度の影響をほとんど受けることなく、第2ポンプによって、そのまま第2循環路に吸入される。そして、熱交換器80を通って、A℃より低い温度となり、低温液吐出口32から低温槽13に吐出される。この段階では、低温槽13の冷却液の温度は、まだほぼA℃である。
また、ここで、低温液吐出口32と低温液吸入口21とが近くに配設されているため、低温液吐出口32から低温槽12に吐出されたA℃よりも温度が低い冷却液は、低温槽13の冷却液の温度の影響をほとんど受けることなく、第1ポンプによって、そのまま第1循環路に吸入される。
【0028】
そして、第2ポンプ制御部70は、温度センサ60の計測値が設定された下限の閾値よりも下がった場合、第2ポンプを停止する。つまり、プレス機が停止し、冷却用通路91から高温槽12に送られる冷却液の温度がB℃より下がると、高温槽12の冷却液の温度や低温槽13の冷却液の温度の影響をほとんど受けずに、比較的短時間で第2ポンプを停止するようになっている。第2ポンプが停止された後も、第1ポンプは定常時の運転を続けている。
【0029】
第2ポンプが停止されると、低温槽13は、冷却液が送出されるばかりで流入しないため、液面が下がろうとする。反対に高温槽12は、冷却液が流入するばかりで流出しないため、液面が上がろうとする。その結果、パスカルの原理により、高温槽12の冷却液が仕切り壁11の連通部14を通じて低温槽13に移動する。
【0030】
仕切り壁11は、下端がタンク10内の底部からやや離れたところに配設されている。すなわち、仕切り壁11の下部に連通部14が設けられており、高温槽12の冷却液は、この連通部14を通って低温槽13に移動するため、移動の際泡が立つことがない。これにより、ポンプのエア噛みを防止することができる。また、上記のように第2ポンプを停止した場合であってもタンクから冷却液が溢れ出すこともない。
このようにして、冷却用通路91に送られる冷却液の温度が下がりすぎてしまうことを防止している。
【0031】
そして、第2ポンプ制御部70は、冷却用通路91に送られる冷却液の温度が設定された上限の閾値を超えたところで、再び第2ポンプを作動させる。
このように、第2ポンプ制御部70が第2ポンプ50を作動、停止させることによって、冷却用通路91に送られる冷却液の温度をA℃に維持し、プレス機の運転をいつ再開してもいいようになっている。
【0032】
(3)プレス機の運転を再開した時
プレス機の停止時間が長いほど、高温槽12の冷却液の温度はA℃に近づいていくことになる。しかし、高温槽12の冷却液の温度がA℃よりも下がることはない。また、低温槽13の冷却液の温度は、温度調節のため多少上下するがA℃を維持する。
ここでは、高温槽13の冷却液の温度がA℃に近い状態であり、第2ポンプが停止しているとして説明する。第1ポンプは定常時の運転している。
【0033】
プレス機の運転を再開すると、高温液吐出口22から高温槽12に吐出される冷却液の温度はB℃となる。
まだ第2ポンプは作動していない。高温槽12の冷却液の温度は少しずつ上がり始め、高温槽12の冷却液は、連通部14を通って低温槽13に移動している。
ここで、連通部14は、仕切り壁11の下部に設けられており、高温液吐出口22および低温液吸入口32の比較的近くに位置している。このため、高温液吐出口22から高温槽12に吐出された冷却液は、図2に示すとおり、高温槽12の冷却液の温度の影響をあまり受けることなく、低温槽13に移動しやすくなっている。また、高温槽12から低温槽13に移動した冷却液も低温槽13の冷却液の温度の影響をあまり受けることなく、低温液吸入口21に吸入されやすくなっている。
したがって、高温槽12の冷却液全体の温度が上がる前にB℃に近い温度の冷却液が連通部14を通過し、低温槽13全体の温度が上がる前にB℃に近い温度の冷却液が第1循環路20に吸入されることとなる。ここで、第2ポンプが作動される。
【0034】
この段階で、高温槽12の冷却液の温度は、まだB℃よりも低い状態となっている。しかし、前述のとおり、高温液吐出口22と高温液吸入口31とが近くに設けられているため、高温液吐出口22から高温槽12に吐出されたB℃の冷却液は、高温槽12の冷却液の温度の影響をほとんど受けることなく、そのまま高温液吸入口31から第2循環路30 に吸入され、低温液吐出口32から低温槽13に吐出する冷却液の温度をA℃とすることができる。
このようにして、プレス機の運転を再開した時に、冷却装置1がプレス機の定常運転時の作動状態になるまでの時間を短縮している。
【実施例2】
【0035】
実施例2の冷却装置2は、温度センサ61を備える点以外、冷却装置1と同様の構成となっている。このため、冷却装置1と異なる点についてのみ説明する。
温度センサ61は、冷却用通路91から高温液吐出口22までの間の第1循環路20内に配設され、冷却用通路91から高温液吐出口22に送られる冷却液の温度を計測する。計測値は第2ポンプ制御部70に送られる。
第2ポンプ制御部70は、温度センサ61の計測値に基づいて、第2ポンプ50を作動または停止させる。具体的には、第2ポンプが停止している状態において、冷却用通路91から高温液吐出口22に送られる冷却液の温度が設定された値よりが上がれば、第2ポンプを作動させ、第2ポンプが作動している状態において、冷却用通路91から高温液吐出口22に送られる冷却液の温度が設定された値よりが下がれば、第2ポンプを停止させる。
【0036】
これにより、プレス機の一時停止等のためにプレス型90の冷却用通路91から高温槽12に送られる冷却液の温度が下がった場合、第2ポンプを停止させるタイミングをより早くすることができ、冷却用通路91に送られる冷却液の温度が下がりすぎてしまうことを防止できる。また、プレス機の運転を再開した等の理由によりプレス型90の冷却用通路91から高温槽12に送られる冷却液の温度が上がった場合、第2ポンプを作動させるタイミングをより早くすることができ、冷却装置2がプレス機の定常運転時の作動状態になるまでの時間をより短縮できる。
【0037】
なお、本実施例1および2では、冷却液に水を使用しているが、プレス型90が錆びないように脱気という方法を用いてもよい。脱気とは、冷却液中の酸素を除去し、タンク10内の冷却液にビーズを浮かせ冷却液と大気とを遮断する方法である。この方法を用いた場合、冷却液を仕切り壁の上から移動させる従来の技術では、ビーズが高温槽から低温に移動し、冷却液が大気に触れてしまう。しかし、本実施形態では、連通部14が仕切り壁11の下部に設けられているため、ビーズが移動することはない。
【0038】
また、本実施例1および2では、タンク10、仕切り壁11、第1循環路20および第2循環路30に用いられる配管等をステンレス製としているが、材質はこれに限るものではない。
【符号の説明】
【0039】
1:冷却装置1(実施例1)、 2:冷却装置2(実施例2)
10:タンク、 11:仕切り壁、 12:高温槽、 13:低温槽、 14:連通部
20:第1循環路、 21:低温液吸入口、 22:高温液吐出口
30:第2循環路、 31:高温液吸入口、 32:低温液吐出口
40:第1ポンプ、 50:第2ポンプ
60:温度センサ、 61温度センサ、 70:第2ポンプ制御部
80:熱交換器、 81:チラー
90:プレス型(被冷却体)、 91:冷却用通路(被冷却体の熱交換路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の仕切り壁にて低温槽と高温槽とが形成された冷却液を貯留するタンクと、
前記低温槽に低温液吸入口で接続され、被冷却体の熱交換路を介して、前記高温槽に高温液吐出口で接続される第1循環路と、
前記高温槽に高温液吸入口で接続され、冷却液冷却用の熱交換器を介して、前記低温槽に低温液吐出口で接続される第2循環路と、
前記第1循環路に冷却液を強制循環させる第1ポンプと、
前記第2循環路に冷却液を強制循環させる第2ポンプと、
前記低温液吸入口から前記被冷却体の熱交換路までの間の前記第1循環路内に配設され、前記被冷却体に送られる冷却液の温度を計測する第1温度センサと、
第1温度センサの計測値に基づき、第2ポンプを作動または停止させる第2ポンプ制御部と、
を備える冷却装置において、
前記仕切り壁は、前記タンク内の冷却液の平均液面より下方に連通部を有していることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記連通部は、前記仕切り壁の下部に設けられていることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記低温液吸入口と前記高温液吸入口は、それぞれ前記タンクの下部に配設され、
前記高温液吐出口と前記低温液吐出口は、それぞれ前記低温液吸入口と前記高温液吸入口の近傍に配設されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1〜3において、
前記被冷却体は、プレス型であることを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記被冷却体の熱交換路から前記高温液吐出口までの間の前記第1循環路内に、第2温度センサがさらに配設され、
前記第2ポンプ制御部は、第2ポンプが停止している状態において第2温度センサの計測値に基づき第2ポンプを作動させ、または、第2ポンプが作動している状態において第2温度センサの計測値に基づき第2ポンプを停止させることを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−33277(P2011−33277A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180246(P2009−180246)
【出願日】平成21年8月2日(2009.8.2)
【出願人】(593074008)
【Fターム(参考)】