説明

凍結抑制剤

【課題】流失抑制能を有し、より少ない散布回数でより高い融氷効果及び/又は融雪効果が得られる凍結抑制剤を提供する。
【解決手段】
下記(A)成分と下記(B)成分とを含有する凍結抑制剤。
(A)金属酢酸塩
(B)無機鉱物及び/又は水溶性高分子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪寒冷地域では、冬場の交通安全や道路環境確保のため、路面に各種の凍結抑制剤が使用されている。凍結抑制剤は、その利便性の高さから使用量も数十年前と比べて格段に増加してきており、降雪時や積雪後に路面上に大量に散布されている。しかし、凍結抑制剤の主成分は、一般に塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩化物や、酢酸カルシウムマグネシウム、酢酸カリウム等の酢酸塩等であり、凍結抑制剤の大量散布は自動車車体や道路標識等の金属部品の腐食、道路そのものや縁石等の周辺構造物の劣化、周辺植物等の生物の生育阻害等、周辺各所への種々の被害が懸念されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような凍結抑制剤の大量散布は、凍結抑制剤の融氷効果が持続しないことに起因するところが大きい。本発明者らは、従来の凍結抑制剤が自らが融氷又は融雪した水と共に路面から流失しやすいことに、融氷効果が持続しないことの一因があることに着目した。この融氷水又は融雪水の流失は、路面の傾斜や車両の通過が主な要因と考えられるが、このような条件下での使用は日常一般的である。
本発明は、流失抑制能を有し、より少ない散布回数でより高い融氷効果及び/又は融雪効果が得られる凍結抑制剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を行い、金属酢酸塩を融氷成分とする凍結抑制剤において、さらに無機鉱物及び/又は水溶性高分子を含有せしめると、該凍結抑制剤に適度な吸水性又は粘性が付与されて融氷水や融雪水を保持又は流動し難くできるようになり、これにより融氷水や融雪水の流失が抑制できることを見出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、下記の手段により達成された。
[1]下記(A)成分と下記(B)成分とを含有する凍結抑制剤。
(A)金属酢酸塩
(B)無機鉱物及び/又は水溶性高分子
[2]無機鉱物がベントナイト、スメクタイト、パイロフィライト、ゼオライト、クロライト、タルク及びカオリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、
水溶性高分子がメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の凍結抑制剤。
[3](A)成分がアルカリ金属の酢酸塩及び/又はアルカリ土類金属の酢酸塩である、[1]又は[2]に記載の凍結抑制剤。
[4](A)成分100質量部に対して(B)成分を4.7〜1362質量部含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の凍結抑制剤。
[5](A)成分100質量部に対して、無機鉱物を4.7〜1324質量部及び水溶性高分子を0〜38質量部含有する、[4]に記載の凍結抑制剤。
[6](A)成分及び(B)成分を総量で50〜100質量%含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の凍結抑制剤。
[7」金属酢酸塩濃度が15.3質量%になるように凍結抑制剤を水に分散させた際の見掛粘度x(mPa・s)と、金属酢酸塩1gを含有する該凍結抑制剤の正味の吸水量y(g)が下記式(I)を満足する、[6]に記載の凍結抑制剤。
y≧−0.002x+1.4(x>0、y>0) (I)
[8]粒径0.1〜10mmの粒状である、[1]〜[7]のいずれかに記載の凍結抑制剤。
[9]水溶性高分子が生分解性である、[1]〜[8]のいずれかに記載の凍結抑制剤。
[10](B)成分が水溶性高分子からなり、(A)成分100質量部に対して該(B)成分を4.7〜38質量部含有する、[1]〜[9]のいずれかに記載の凍結抑制剤。
[11]周辺環境に対する塩害が抑えられた、[1]〜[10]のいずれかに記載の凍結抑制剤。
【発明の効果】
【0005】
本発明の凍結抑制剤は、水分を吸水することで適度な粘性を発現する無機鉱物及び/又は水溶性高分子を有するため、路面や住宅屋根等から、融氷水や融雪水と共に融氷成分である金属酢酸塩までもが流失してしまう現象を抑制することができ、これにより散布回数をより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施例に記載の融氷試験に用いた試験体の模式図である。
【図2】実施例に記載の融氷試験に用いた試験体(陽性対照)の模式図である。
【図3】実施例に記載の融氷試験の実施方法を模式的に表した図である。
【図4】実施例で使用した吸水量測定器の模式図である。
【図5】実施例で調製した凍結抑制剤の見掛粘度xと吸水量yとの関係を示すグラフである。図5中、aはy=−0.002x+1.4、bはy=−0.002x+1.6、cはy=−0.002x+1.8で表される直線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について、その好ましい実施態様の基づき詳細に説明する。
本発明の凍結抑制剤は金属酢酸塩((A)成分)と無機鉱物及び/又は水溶性高分子((B)成分)とを含有する。本発明において「凍結抑制剤」とは融氷剤と同義であり、主に降雪時の路面への積雪や降雪後の路面凍結等を軽減又は防止するために用いられる。
【0008】
上記(A)成分は路面等に降り積もった雪や凍結した氷を融解するための融氷成分である。上記(A)成分として用いる金属酢酸塩は融氷作用を有する限り特に制限はなく、融氷成分として通常用いられている金属酢酸塩を用いることができるが、アルカリ金属の酢酸塩及び/又はアルカリ土類金属の酢酸塩であることが好ましい。上記(A)成分の具体例として、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウムマグネシウム、酢酸ナトリウム等から選ばれる少なくとも1種の金属酢酸塩が挙げられ、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムマグネシウム、酢酸カリウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ここで、上記(A)成分は、金属酢酸塩の無水物を意味する。したがって、金属酢酸塩を配合するために金属酢酸塩水和物を用いる場合には、水和成分は(A)成分ではなく水(水分)として本発明の凍結抑制剤に含有されることになる。
【0009】
上記(B)成分は無機鉱物及び/又は水溶性高分子からなり、吸水作用を有すると同時に、吸水した水に適度な粘度を付与しうる成分である。上記(B)成分に含有されうる無機鉱物は、上記の特性を有すれば特に制限はなく、例えば、ベントナイト、スメクタイト、パイロフィライト、ゼオライト、クロライト、タルク、カオリン等から選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、ベントナイト及び/又はゼオライトであることがより好ましい。
【0010】
また、上記(B)成分に含有されうる水溶性高分子もまた、上記の特性を有すれば特に制限はなく、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等から選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロースであることがより好ましい。
【0011】
一般に、路面等の凍結を防ぐために凍結抑制剤を散布すると、融氷成分が雪や氷の融解により生じる融氷水中に溶け出し、該融氷水が路面から流れ出す際に該融氷成分も路面等から流れ出してしまう(すなわち、流失してしまう。)。この結果、凍結抑制剤の融氷作用が持続せず、これが凍結抑制剤の度重なる大量散布に繋がっている。
本発明の凍結抑制剤では、上記(B)成分が融氷により生じた融氷水を吸水して保持することができるため、融氷水の流失が抑制され、これにより融氷成分である(A)成分の流失をも抑制することができる。凍結抑制剤中の上記(A)成分と上記(B)成分の含有量に特に制限はないが、(A)成分100質量部に対して(B)成分を4.7〜1362質量部含有することが好ましく、4.7〜454.3質量部含有することがより好ましく、4.7〜227.3質量部含有することがさらに好ましい。
【0012】
(B)成分が無機鉱物及び水溶性高分子からなる場合において、(B)成分中の無機鉱物と水溶性高分子の含有割合に特に制限はなく、例えば、無機鉱物100質量部に対して水溶性高分子を0.01〜10000質量部含有させることができ、無機鉱物100質量部に対して水溶性高分子を0.1〜1000質量部含有させるのが好ましい。
【0013】
また、(A)成分100質量部に対して、無機鉱物を4.7〜1324質量部、好ましくは4.7〜437.5質量部、より好ましくは4.7〜218.4質量部、さらに好ましくは4.7〜17.8質量部含有し、かつ、水溶性高分子を0〜38質量部、好ましくは0〜16.8質量部、より好ましくは0〜8.9質量部含有する凍結抑制剤も、本発明の凍結抑制剤として好適に用いられる。
【0014】
さらに、(B)成分が水溶性高分子からなる場合には、(A)成分100質量部に対して(B)成分4.7〜38質量部含有することが好ましく、4.7〜26.7質量部含有することがより好ましく、4.7〜16.8質量部含有することがさらに好ましい。
【0015】
本発明の凍結抑制剤を散布した際に、融氷成分である(A)成分の融氷効果を維持しながら該(A)成分の流失をより効果的に抑制するために、本発明の凍結抑制剤は、(A)成分が15.3質量%の濃度になるように凍結抑制剤を水に分散させた分散液の見掛粘度x(mPa・s)と、(A)成分1gを含有する該凍結抑制剤の正味の吸水量y(g)が下記式(I)を満足するものであることが好ましく、下記式(II)を満足するものであることがより好ましく、下記式(III)を満足するものであることがさらに好ましい。なお、本発明において用語「分散」は、分散と溶解の両者を含む概念として用いる。また、凍結抑制剤の正味の吸水量とは、凍結抑制剤の吸水量から、当該凍結抑制剤中の金属酢酸塩の吸水量を差し引いた値である。
【0016】
y≧−0.002x+1.4(x>0、y>0) (I)
y≧−0.002x+1.6(x>0、y>0) (II)
y≧−0.002x+1.8(x>0、y>0) (III)
【0017】
ここで、上記見掛粘度x及び上記の正味の吸水量yは、後述の実施例に記載の方法に基づき測定することができる。
【0018】
本発明の凍結抑制剤の形態に特に制限はないが、散布時のハンドリングや凍結抑制剤中の成分の偏析を考慮すると、粒状であることが好ましい。
粒の大きさは、小さすぎると、散布時に目的の場所以外にも飛散しやすくなってしまい、また、大きすぎると、車両の通行に悪影響を及ぼすと同時に均一散布が困難になるおそれがある。したがって、粒径は0.1〜10mmとすることが好ましく、0.5〜6mmとすることがより好ましい。このような粒状の凍結抑制剤は、攪拌造粒法、押出し造粒法、転動造粒法、打錠造粒法、流動層造粒法、噴霧乾燥造粒法、溶融造粒法、真空凍結乾燥法、懸濁凝集造粒法、コーティング造粒法等の通常の方法で製造することができる。
上記粒径は、乾式粒度分布測定装置やJIS Z 8801規格の篩等により得られる値である。
【0019】
本発明の凍結抑制剤は、該凍結抑制剤中に、(A)成分及び(B)成分を総量で50〜100質量%含有することが好ましく、55〜100質量%含有することがより好ましく、60〜100質量%含有することがさらに好ましい。
【0020】
本発明の凍結抑制剤は、上記(A)成分及び(B)成分以外に他の成分を含有していてもよい。上記他の成分は、環境負荷が少なく、融雪性能に悪影響が出ないものであることが好ましく、例えば、水、水溶性低分子、有機鉱物、生物岩、木粉、おから等が挙げられる。これらの成分は、本発明の凍結抑制剤中に好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜45質量%、さらに好ましくは0〜40質量%含有される。
また、本発明に含まれる成分は、周辺の土壌、植物等の生物及び家屋やコンクリート等の構造物への塩害が少ない材料からなることが好ましい。すなわち、本発明の凍結抑制剤を用いることで、従来の凍結抑制剤に比べて、周辺環境に対する塩害をより抑制できることが好ましい。
【0021】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
調製例 凍結抑制剤の調製
酢酸マグネシウム4水和物(商品名:酢酸マグネシウム4水塩、大東化学社製)、ベントナイト(商品名:クニゲルU、クニミネ工業社製)、ゼオライト(商品名:クニミネゼオライト150G、クニミネ工業社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ60SH−4000(略称:HPMC4000、信越化学工業社製)、メトローズ60SH−10000(略称:HPMC10000、信越化学工業社製))、カルボキシメチルセルロース(商品名:CMCダイセル1380、ダイセル化学工業社製)、水を下記表1に示す割合(質量部)で混合し、攪拌造粒機(商品名:RMO−2H、不二パウダル社製)で5分間攪拌造粒させた粒を、JIS Z 8801規格の篩(目開き:0.25mm及び1.40mm)で篩分けして本発明品(1)〜(14)及び比較品を得た。
【0023】
【表1】

【0024】
試験例1 融氷試験
融氷試験は−5℃の恒温室内にて行った。融氷試験に用いた試験体(氷板とその容器)及び凍結抑制剤は使用前に−5℃雰囲気中にて十分養成させたものを用いた。
70mm×70mm×2mmの氷板10gを図1に示すように上面と1つの側面とが開口したアクリル製の容器に設置し、この容器を、図3に示すように開口側面が下流側になるように勾配12%の傾斜台に静置した。開口側面に融氷水を回収するためのろ紙を設けた後、この氷板上に酢酸マグネシウム無水分(本発明の(A)成分に相当)が0.3gになるように計量した本発明品(1)〜(14)及び比較品を均一に散布した。散布後8時間経過してから残存している融氷水をティッシュで拭き取り、散布前の試験体の質量(氷板と容器の総質量)から上記拭き取り後の試験体の質量(残存した氷板と容器の総質量)を差し引いて、その差(溶け出した水分量)を融氷量(g)とした。
【0025】
また、陽性対照として、図2に示すように開口側面がなく融氷水が流失し得ない容器に70mm×70mm×2mmの氷板10gを設置し、これを勾配0%の水平な台に静置した。氷板上に酢酸マグネシウム無水分が0.3gになるように計量した比較品を均一に散布し、上記と同様に散布後8時間経過してから残存している融氷水をティッシュで拭き取り、上記と同様に融氷量(g)を求めた。
【0026】
上記で算出した各凍結抑制剤の融氷量と陽性対照の融氷量に基づき、融氷率を下記計算式により求めた。
【0027】
融氷率(%)=100×[融氷量(g)/陽性対照の融氷量(g)]
【0028】
結果を下記表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2に示す融氷量及び融氷率の結果から、勾配12%の傾斜台を用いた融氷試験において、本発明品(1)〜(14)を散布した場合には、比較品を散布した場合と同等以上の融氷効果が得られることがわかった。特に(B)成分が無機鉱物を含有する場合(本発明品(1)〜(7)、(9)及び(10))や、(B)成分が水溶性高分子のみからなる場合において(A)成分100質量部に対して(B)成分を4.7質量部以上含有する場合(本発明品(8)、(11)及び(12))により高い融氷作用が認められた。
【0031】
試験例2 粘度及び吸水量の測定
[粘度測定]
酢酸マグネシウム無水分の濃度が15.3質量%となるように本発明品(1)〜(14)及び比較品をそれぞれ蒸留水に分散させた分散液400mLを調製した。具体的には、86mmφのタービンを用いて攪拌速度250rpmで2時間攪拌後、25℃雰囲気中で一晩養成することで上記分散液を得た。測定前にこの分散液を250rpmで5分間再攪拌し、VISCOMETER TV−10型粘土計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて回転速度60rpm時の見掛粘度(単位:mPa・s)を25℃雰囲気中で測定した。
【0032】
[吸水量測定]
図4に示すフロインドリッヒ型吸水量測定器を用いて、本発明品(1)〜(14)及び比較品0.2gを試料として25℃雰囲気中で各試料の吸水量(単位:g)を求めた。このフロインドリッヒ型吸水量測定器では、試料設置部と、吸水量読み取り部とが水平に維持されている。試料が吸水すると、試料周辺の水が試料に吸い上げられて上記水平位置より上部に移動する。これにより、吸水量読み取り部側の水が試料設置部側に移動する。この移動量は、試料の吸水量に依存し、試料の吸水量分だけ吸水量読み取り部側の水の界面が移動するので、移動した量(吸水した量)を吸水量読み取り部側の目盛を読み取ることで測定し、吸水量(単位:g)を求めるというものである。
【0033】
まず、試料を測定器にセットしてから1440分後に吸水量読み取り部の水界面の位置の目盛から見掛けの吸水量(吸水量A)を求めた。
【0034】
上記見掛け吸水量から下記に記載の方法により酢酸マグネシウム4水和物の吸水分を差し引いたものを正味の吸水量とした。
【0035】
酢酸マグネシウム4水和物単体0.2gの見掛け吸水量と、試料0.2gの見掛け吸水量とをそれぞれ上記方法で測定し、下記式(i)より試料0.2gの正味の吸水量(吸水量B)を求めた。
【0036】
計算式(i):
〔試料0.2gの正味の吸水量(吸水量B)〕
=〔試料0.2gの見掛けの吸水量(吸水量A)〕−〔(酢酸マグネシウム4水和物0.2gの見掛け吸水量)×(試料中の酢酸マグネシウム4水和物の含有量(質量%)/100)〕
【0037】
酢酸マグネシウム無水分1gを含有する試料の正味の吸水量(本発明における正味の吸水量、吸水量C)を下記式(ii)より算出した。
【0038】
計算式(ii):
〔酢酸マグネシウム無水分1gを含有する試料の正味の吸水量(吸水量C)〕
=〔吸水量B〕/〔0.2×(試料中の酢酸マグネシウム4水和物の含有量(質量%)/100)×(酢酸マグネシウム4水和物中の酢酸マグネシウム無水分含有量(質量%)/100)〕
【0039】
結果を上記表1に示す。本発明品(1)〜(14)において、比較品に比べて見掛粘度と、酢酸マグネシウム無水分1gを含有する試料の正味の吸水量とが高まっていることがわかる。また、図5に示すように、上記で測定した見掛粘度x(mPa・s)と、酢酸マグネシウム無水分1gを含有する試料の正味の吸水量y(g)とが下記式(I)に示す関係を満たす凍結抑制剤において、12%勾配に設置した氷に対してもより高い融氷作用を示すことがわかった。

y≧−0.002x+1.4(x>0、y>0) (I)

本発明品(1)〜(12)が上記式(I)の条件を満たす凍結抑制剤である。
【0040】
また、図5の結果から、上記で測定した見掛粘度xと酢酸マグネシウム無水分1gを含有する試料の正味の吸水量yとが下記式(II)に示す関係を満たす凍結抑制剤において、12%勾配に設置した氷に対してさらに優れた融氷作用を示しうることもわかる。

y≧−0.002x+1.6(x>0、y>0) (II)

本発明品(2)〜(11)が上記式(II)の条件を満たす凍結抑制剤である。
【0041】
さらに、図5の結果から、上記で測定した見掛粘度xと酢酸マグネシウム無水分1gを含有する試料の正味の吸水量yとが下記式(III)に示す関係を満たす凍結抑制剤において、12%勾配に設置した氷に対して特に優れた融氷作用を示しうることもわかった。

y≧−0.002x+1.8(x>0、y>0) (III)

本発明品(3)〜(10)が上記式(III)の条件を満たす凍結抑制剤である。
【0042】
以上の結果は、本発明の凍結抑制剤を用いると、融氷水の流失による融氷成分の流失が抑えられ、その結果、本発明の凍結抑制剤が優れた融氷効果を奏することを示すものである。
【符号の説明】
【0043】
1 融氷試験に用いた試験体
2 70mm×70mm×2mmの氷板10g
3 勾配12%傾斜台を用いた融氷試験に使用した容器
4 勾配0%水平台を用いた融氷試験に使用した容器
5 ろ紙
6 勾配12%傾斜台
7 吸水量測定器
8 試料設置部
9 吸水量読み取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と下記(B)成分とを含有する凍結抑制剤。
(A)金属酢酸塩
(B)無機鉱物及び/又は水溶性高分子
【請求項2】
無機鉱物がベントナイト、スメクタイト、パイロフィライト、ゼオライト、クロライト、タルク及びカオリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、
水溶性高分子がメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の凍結抑制剤。
【請求項3】
(A)成分がアルカリ金属の酢酸塩及び/又はアルカリ土類金属の酢酸塩である、請求項1又は2に記載の凍結抑制剤。
【請求項4】
(A)成分100質量部に対して(B)成分を4.7〜1362質量部含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の凍結抑制剤。
【請求項5】
(A)成分100質量部に対して、無機鉱物を4.7〜1324質量部及び水溶性高分子を0〜38質量部含有する、請求項4に記載の凍結抑制剤。
【請求項6】
(A)成分及び(B)成分を総量で50〜100質量%含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の凍結抑制剤。
【請求項7】
金属酢酸塩濃度が15.3質量%になるように凍結抑制剤を水に分散させた際の見掛粘度x(mPa・s)と、金属酢酸塩1gを含有する該凍結抑制剤の正味の吸水量y(g)が下記式(I)を満足する、請求項6に記載の凍結抑制剤。
y≧−0.002x+1.4(x>0、y>0) (I)
【請求項8】
粒径0.1〜10mmの粒状である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の凍結抑制剤。
【請求項9】
水溶性高分子が生分解性である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の凍結抑制剤。
【請求項10】
(B)成分が水溶性高分子からなり、(A)成分100質量部に対して該(B)成分を4.7〜38質量部含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の凍結抑制剤。
【請求項11】
周辺環境に対する塩害が抑えられた、請求項1〜10のいずれかに記載の凍結抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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