説明

分析方法および分析装置

【課題】基板上の分析対象物質が被膜で覆われている場合に、良好な精度で当該被膜の下の分析対象物質の分析を行うことが可能となる分析方法と、該分析方法を実施する分析装置を提供する。
【解決手段】基板上に形成された被膜を、紫外線を照射することで除去する第1の処理部と、前記基板表面に溶解液を供給して前記基板上の分析対象物質を溶解させる第2の処理部と、前記第2の工程で用いた前記溶解液中の前記分析対象物質を分析する第3の処理部と、を有することを特徴とする分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の分析対象物質を分析する分析方法、および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高性能化が進んでおり、半導体装置の製造工程におけるコンタミネーション(汚染)の管理が重要となってきている。例えば、半導体製造に係るSi基板が金属元素に汚染されると、当該基板に形成されるデバイスが所望の特性を得られない場合があり、半導体装置製造の歩留まりが低下してしまう場合があった。
【0003】
例えば、Si基板上の金属による汚染の検出方法としては、Si基板上にHFなどの金属を溶解する溶解液を滴下して金属を溶解させた後、当該溶解液をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)などによって分析する方法が知られている。
【0004】
図1A〜図1Dには、Si基板上の金属汚染を分析する場合の分析方法の概略を模式的に示した図である。図1Aには、分析の対象となるSi基板1を示している。図1Bに示す工程では、Si基板1上に、例えばHFを含む溶解液2を滴下する。次に、図1C〜図1Dに示す工程において、滴下されて粒状になった溶解液2を基板1上で走査し、基板1上の金属を溶解する。
【0005】
次に、金属などの汚染物質が溶解された溶解液2を回収し、例えばICP−MSなどの方法により分析することで、Si基板1上の金属汚染を定性的、または定量的に分析することができる。
【特許文献1】特開平8−233709号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば分析の対象となるSi基板上に被膜が形成されている場合には、上記の分析方法を適用することが困難となる場合があった。
【0007】
図2Aは、分析の対象となるSi基板1上に、被膜3が形成された状態を模式的に示した図である。例えば、Si基板1の表面を覆うように被膜3が形成されていると、溶解液によってSi基板1上の金属を溶解することが困難となってしまう。
【0008】
例えば、フロロカーボン系のガス(CF、CHFなど)を用いたプラズマエッチングプロセスでは、基板上にフロロカーボン系の被膜が形成されてしまう場合がある。このようなフロロカーボン系の被膜は、HF系の溶解液(またはHF蒸気)では容易に溶解しない特徴を有している。このため、プラズマエッチング装置での基板処理における基板の汚染状況を分析することが困難になる場合があった。
【0009】
また、酸素原子を含むフロロカーボン系の被膜の表面はSi表面に比べて撥液性が小さい(親液性が大きい)ため、図2Bに示すように、溶解液を滴下した場合に被膜表面に広がって、溶解液を走査することが困難となってしまう問題を有していた。
【0010】
また、上記の被膜を除去する場合に、例えば基板のプラズマエッチングやスパッタリングなどの処理を行うと、当該エッチングやスパッタリングによって汚染物質が飛散してしまう場合があった。また、さらに新たな汚染物質が発生する懸念があり、分析の精度を良好に保つことが困難となる問題を有していた。
【0011】
そこで、本発明では、上記の問題を解決した、新規で有用な分析方法、および当該分析方法を実施する分析装置を提供することを統括的課題としている。
【0012】
本発明の具体的な課題は、基板上の分析対象物質が被膜で覆われている場合に、良好な精度で基板表面に存在する分析対象物質の分析を行うことが可能となる分析方法と、該分析方法を実施する分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の課題を、
請求項1に記載したように、
基板上に形成された被膜を、紫外線を照射することで除去する第1の工程と、
前記基板表面に溶解液を供給して、前記基板上の分析対象物質を溶解させる第2の工程と、
前記第2の工程で用いた前記溶解液中の前記分析対象物質を分析する第3の工程と、を有することを特徴とする分析方法により、また、
請求項2に記載したように、
前記被膜はフロロカーボン系の膜であることを特徴とする請求項1記載の分析方法により、また、
請求項3に記載したように、
前記第1の工程は酸素を含む雰囲気で行われることを特徴とする請求項2記載の分析方法により、また、
請求項4に記載したように、
水素を含む雰囲気で前記基板上に紫外線を照射することにより、前記第1の工程で形成される化合物を除去する別の除去工程をさらに有することを特徴とする請求項3記載の分析方法により、また、
請求項5に記載したように、
前記第1の工程と前記別の除去工程が交互に繰り返し実施されることを特徴とする請求項4記載の分析方法により、また、
請求項6に記載したように、
前記分析対象物質は、金属を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の分析方法により、また、
請求項7に記載したように、
前記第3の工程の分析は、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマ原子発光分析法、および原子吸光分析法のいずれかにより行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の分析方法により、また、
請求項8に記載したように、
前記基板は、Si基板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の分析方法により、また、
請求項9に記載したように、
前記Si基板に形成される酸化膜を除去する工程をさらに有することを特徴とする請求項8記載の分析方法により、また、
請求項10に記載したように、
前記紫外線の照射の後に、前記基板を加熱する加熱工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の分析方法により、また、
請求項11に記載したように、
基板上に形成された被膜を、紫外線を照射することで除去する第1の処理部と、
前記基板表面に溶解液を供給して前記基板上の分析対象物質を溶解させる第2の処理部と、
前記第2の処理部で用いた前記溶解液中の前記分析対象物質を分析する第3の処理部と、を有することを特徴とする分析装置により、また、
請求項12に記載したように、
前記紫外線が照射された後で前記基板を加熱する加熱機構を有することを特徴とする請求項11記載の分析装置により、解決する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板上の分析対象物質が被膜で覆われている場合に、良好な精度で基板表面に存在する分析対象物質の分析を行うことが可能となる分析方法と、該分析方法を実施する分析装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による分析方法は、1)基板上に形成された被膜を、紫外線を照射することで除去する第1の工程と、2)前記基板表面に溶解液を供給して前記基板上の分析対象物質を溶解させる第2の工程と、3)前記第2の工程で用いた前記溶解液中の前記分析対象物質を分析する第3の工程と、を有することを特徴としている。
【0016】
基板上の金属などの分析対象物質の分析を行う場合に、当該分析対象物質が、例えばフロロカーボン系の被膜(C元素,F元素を含み、C−C結合、C−F結合などを有する材料よりなる被膜)で覆われている場合は、分析対象物質を溶解液で溶解させるのが困難となる場合があった。そこで、本発明では、前記被膜を、紫外線照射によって除去し、前記分析対象物質の溶解液による溶解を可能としている。
【0017】
また、紫外線照射による被膜の除去は、例えばエッチングやスパッタリングなどの方法に比べて分析対象物質を飛散させてしまう懸念が少なく、また反応が緩やかであるために新たな汚染物質を生成してしまう懸念が少ない。このため、良好な精度で分析対象物質の分析を行うことが可能となる。
【0018】
例えば、紫外線の照射によって、フロロカーボン系の被膜を構成する材料が分解される(結合手が切断される)作用を奏する。また、この場合に雰囲気中に酸素が含まれると、活性化された酸素によって被膜がエッチングされる作用が加わり、好適である。
【0019】
次に、上記の分析方法の具体的な例について、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0020】
図3は、本発明の実施例1による分析方法を示すフローチャートであり、図4A〜図4Dは、本発明の実施例1による分析方法を、手順を追って模式的に示した図である。
【0021】
まず、図3のステップ10(図中、S10と表記する、以下同様)において、基板上の分析対象物質を覆うように形成された被膜を、紫外線を照射することで除去する。当該ステップ10は、図4Aに対応している。図4Aを参照するに、例えばSiよりなる基板100上に形成された、例えばフロロカーボン系の材料よりなる被膜101に、波長100nm乃至320nm程度の紫外線103を照射することにより、除去する。この場合、基板100(被膜101)の周囲の雰囲気102が酸素を含むと、紫外線によって被膜が分解される効果に加えて、紫外線によって活性化された酸素によって被膜がエッチングされる効果を得ることが可能となり、好適である。
【0022】
また、上記の紫外線照射においては、基板100を加熱して基板100の温度を上昇させておくと、被膜除去の反応が促進され、好適である。基板温度は、例えば室温乃至400℃程度とする。
【0023】
次に、図3のステップ20において、基板表面に溶解液を供給して基板表面に付着した分析対象物質を溶解させる。当該ステップ20は、図4B〜図4Dに対応している。図4Bに示すように、被膜101が除去された基板100の表面には、例えばHF(フッ酸)を含む溶解液104が供給(滴下)される。さらに、図4C〜図4Dに示すように、基板100を傾ける方向を制御して、基板100上の溶解液104(液滴)を走査し、基板100上に付着した分析対象物質(例えば金属など)を溶解液104に十分に溶解させる。
【0024】
次に、図3のステップ30において、溶解液104を回収して、当該溶解液104を、例えば、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)などの方法によって分析し、分析対象物質(金属)の定性的な分析や定量分析を行う。上記の溶解液104の分析の方法としてはICP−MSに限定されず、例えば、誘導結合プラズマ原子発光分析法(ICP−AAS)、原子吸光分析法(AAS)などの公知の方法を用いることができる。
【0025】
このようにして、基板100上に付着した分析対象物質(基板100の汚染物質)の分析を行うことが可能となる。
【0026】
本実施例による分析方法によれば、基板上に被膜が形成されている場合であっても、基板表面に存在する分析対象物質を、良好な精度で分析(検出)することが可能となる。
【0027】
例えば、フロロカーボン系のガス(CF、CHFなど)を用いたプラズマエッチング装置では、基板上にHFでは除去が困難なフロロカーボン系の被膜が形成されてしまう場合があった。このようなフロロカーボン系の被膜が形成されると、基板表面の分析対象物の分析が困難になる場合があった。
【0028】
そこで、本実施例による分析方法では、当該被膜を紫外線照射により除去し、分析対象物質の回収を容易にしていることが特徴である。上記の紫外線照射による被膜の除去は、例えばエッチングやスパッタリングなどの方法に比べて分析対象物質を飛散させてしまう懸念が少なく、また反応が緩やかであるために新たな汚染物質を生成してしまう懸念が少ない。このため、良好な精度で分析対象物質の分析を行うことが可能となる。
【0029】
また、図4Aに示すように、被膜101に紫外線を照射する場合に、雰囲気102中に酸素が含まれていると、紫外線によって当該酸素が活性化されることになる。活性化された酸素が被膜101近傍に存在すると、紫外線によって被膜が分解される効果に加えて活性化された酸素によって被膜がエッチングされる効果が加わり、被膜除去の効率が向上し、好適である。例えば、ステップ10(図4A)の工程は、通常の酸素を含む大気中で実施することが可能であるが、必要に応じて酸素濃度、窒素濃度などを変更した雰囲気を用いてもよい。また、雰囲気102として、オゾンやNOなど、酸素原子を含む物質のガスを用いてもよい。
【0030】
また、図3に示した分析方法は、図5に示すように変形することも可能である。図5は、図3に示した分析方法の変形例を示す。ただし、先に説明したステップには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0031】
図5を参照するに、本図に示す場合、先に説明したステップ10とステップ20の間に、ステップ15を設けている。ステップ15においては、Siよりなる基板100の表面に形成された酸化膜(SiO)が除去される。酸化膜の除去は、例えば基板100にHF蒸気が供給されることによって実施される。また、本ステップは省略することも可能であり、この場合、ステップ20で供給される溶解液104によって、酸化膜の除去と分析対象物質の溶解を実質的に同時に行うようにすればよい。
【0032】
ステップ15を設けた場合、溶解液104によって酸化膜を除去する必要が無くなるため、ステップ20で基板100に供給する溶解液104の量を少なくすることができる。このため、分析対象物質の分析の精度が良好となる効果を奏する。
【0033】
また、上記の図5に示した分析方法において、基板の加熱とHFによる処理を繰り返し、フロロカーボン系の被膜に収縮と膨張を生じさせることで、酸化膜を除去しやすくなるようにしてもよい。例えば、図5の分析方法において、基板温度を室温〜400℃程度に加熱してステップ10を実施した後、基板温度を室温程度としてステップ15に相当する処理(HF処理)を実施する。次に、大気雰囲気で基板を300℃程度に再び加熱し、さらに基板温度を室温程度としてステップ15に相当する処理(HF処理)を行う。上記の処理によれば、被膜の膨張または収縮により、酸化膜の除去が容易となる。
【0034】
また、図3に示した分析方法は、図6に示すように変形することも可能である。図6は、図3に示した分析方法の別の変形例である。ただし、先に説明したステップには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0035】
図6を参照するに、本図に示す場合、先に説明したステップ10とステップ20の間に、ステップ10Aを設けている。ステップ10Aにおいては、ステップ10と異なる雰囲気で基板100上に紫外線103を照射することにより、ステップ10で形成される可能性のある化合物を除去することが可能になる。
【0036】
たとえば、ステップ10においては、紫外線照射の条件や被膜の組成などによっては、紫外線照射によって酸化反応が生じてしまい、CO化合物が形成されて基板100に付着してしまう懸念がある。
【0037】
そこで、ステップ10Aにおいては、例えば水素(H)雰囲気中で基板100に紫外線を照射することにより、活性化された水素による還元反応によって上記のステップ10で形成される化合物(例えばCO化合物)を除去している。また、必要に応じてステップ10とステップ10Aを交互に繰り返し実施して(すなわち酸化と還元を繰り返して)被膜101を除去するようにしてもよい。また、上記の図6に示した分析方法において、図5に示したステップ15(酸化膜除去のステップ)を、ステップ10Aの後に実施するようにしてもよい。
【0038】
また、図7A、図7Bは、Si基板上にフロロカーボン系の被膜が形成された構造において、紫外線照射の前後における(図3のステップ10の実施前後における)基板表面のXPS(光電子分光)スペクトルを示した図である。図7Aは、C1sスペクトルを、図7BはF1sスペクトルをそれぞれ示している。また、上記の評価においては、紫外線の波長は172nm、基板温度は、200℃とし、膜厚およそ6nmの被膜に対して、300秒間、紫外線を照射している。
【0039】
図7A、図7Bを参照するに、紫外線の照射によって、膜中のC−C結合や、C−F結合など、CやFに関連するピークが低くなり、フロロカーボン系の被膜が除去されていることがわかる。照射後に残っているピークはハイドロカーボンおよび吸着フッ素に関するものであり、フロロカーボン系の被膜はよく除去されている。
【0040】
また、図8A、図8Bは、XPSスペクトルから算出した、被膜中のC元素、C元素の減少率を時間経過を横軸にとって示したものである。ただし、図8Aでは、基板温度を室温程度、図8Bでは基板温度を200℃としている。
【0041】
図8Aを参照するに、紫外線の照射を持続することで膜中のC、Fが減少していくことが確認できる。また、図8Bをみると、基板を加熱することで(例えば200℃程度)、被膜を除去する速度を大きくして、効率よく被膜除去を行うことが可能となることが確認できる。
【0042】
また、図9Aは、Si基板上のSiO膜上にフロロカーボン系の被膜(図中CFポリマー膜と表記)が形成された構造のTEM(透過型電子顕微鏡)写真であり、図9Bは、図9Aの被膜に紫外線照射した後におけるTEM写真である。上記の評価においては、紫外線の波長は172nm、基板温度は、200℃とし、膜厚およそ6nmの被膜に対して、300秒間、紫外線を照射している。
【0043】
図9A,図9Bを参照するに、紫外線の照射によって、フロロカーボン系の被膜を除去することが可能であることがわかる。
【実施例2】
【0044】
また、図10は、実施例1に記載した分析方法を実施するための分析装置200の概略を模式的に示した平面図である。
【0045】
図10を参照するに、本図に示す分析装置200は、基板が搬送される搬送室202を有している。さらに、搬送室202の周囲に、ウェハ(基板)ポート201、UV処理(照射)部203と、酸化膜除去処理部204、溶解液供給処理部(検出対象物溶解処理部)205、溶解液保持部206、溶解液導入部207、および分析処理部208がそれぞれ搬送室202を囲むように接続されている。また、UV処理部203は、必要に応じて加熱機構を有する。
【0046】
なお、UV処理部203を構成する材料として、合成石英が多用されるが、基板上に残留するフッ素によるダメージを防ぐためには、単結晶サファイヤや、BaFを用いるのが好ましい。
【0047】
上記の分析装置200で、実施例1に記載された分析方法を実施する場合には、以下のようにされる。
【0048】
まず、図示を省略する搬送アームなどの搬送手段により、ウェハポート201に設置された基板100がUV処理部203へと搬送される。UV処理部203では、図3のステップ10(図4A)に相当する処理が実施される。すなわち、図4Aに記載されたように、基板100に形成された被膜101に、酸素を含む雰囲気102中で紫外線103が照射されることにより、被膜101が除去される。また、必要に応じて、基板100の周囲の雰囲気102を、水素を含む雰囲気に変更し、さらに紫外線を照射して、ステップ10で生成された化合物を除去する処理を実施してもよい(図6のステップ10Aに相当)。また、ステップ10とステップ10Aに相当する処理が、UV処理部203において交互に繰り返し実施されるようにしてもよい。
【0049】
また、実施例1で説明したように、基板100に紫外線を照射した後に基板100を加熱することで被膜の除去が容易になる。このため、UV処理部203が、基板を加熱する加熱機構を有するように構成していもよい。
【0050】
次に、前記搬送手段によって基板100が酸化膜除去処理部204に搬送される。酸化膜除去処理部204では、図5のステップ15に相当する処理が実施される。すなわち、基板100に、例えばHF蒸気が供給されることにより、基板100に形成された酸化膜が除去される。また、先に説明したように、酸化膜除去処理部204での処理は省略することも可能である。また、より効果的に、被膜101や酸化膜を除去するために、再びUV処理部203へ搬送し、UV照射や加熱処理を行ってもよい。
【0051】
次に、基板100が前記搬送手段によって溶解液供給処理部205に搬送される。溶解液供給処理部205では、図3のステップ20(図4B〜図4D)に相当する処理が実施される。
【0052】
この場合、図4Bに示すように、被膜101が除去された基板100の表面には、例えばHF(フッ酸)を含む溶解液104が供給(滴下)される。さらに、図4C〜図4Dに示すように、基板100を傾ける方向が制御されて、基板100上の溶解液104(液滴)が走査され、基板100上に付着した分析対象物質(例えば金属など)が溶解液104に十分に溶解される。
【0053】
次に、上記の分析対象物質が溶解された溶解液は回収されて溶解液保持部206に保持される。さらに、当該溶解液は、溶解液導入部207によって、分析処理部208に導入され、例えば、ICP−MSなどの装置によって分析され、分析対象物質(金属)の定性的な分析や定量分析が行われる。また、分析処理部208は、ICP−MS装置に限定されず、例えば、ICP−AAS装置、AAS装置よりなるように構成してもよい。
【0054】
このようにして、基板100上に付着した分析対象物質(基板100の汚染物質)の分析を行うことが可能となる。
【0055】
上記の分析装置によれば、実施例1に記載した効果を得ることが可能となる。また、上記の分析装置では、基板や溶解液を速やかに搬送して連続的に処理することが可能に構成されているため、良好な精度で基板上の汚染物質の分析を行うことが可能になる。
【0056】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、基板上の分析対象物質が被膜で覆われている場合に、良好な精度で当該被膜の下の分析対象物質の分析を行うことが可能となる分析方法と、該分析方法を実施する分析装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】従来の分析方法を示す図(その1)である。
【図1B】従来の分析方法を示す図(その2)である。
【図1C】従来の分析方法を示す図(その3)である。
【図1D】従来の分析方法を示す図(その4)である。
【図2A】従来の分析方法の問題点を示す図(その1)である。
【図2B】従来の分析方法の問題点を示す図(その2)である。
【図3】実施例1による分析方法を示すフローチャートである。
【図4A】実施例1による分析方法を示す図(その1)である。
【図4B】実施例1による分析方法を示す図(その2)である。
【図4C】実施例1による分析方法を示す図(その3)である。
【図4D】実施例1による分析方法を示す図(その4)である。
【図5】図3の変形例(その1)である。
【図6】図3の変形例(その2)である。
【図7A】基板表面のXPS分析結果を示す図(その1)である。
【図7B】基板表面のXPS分析結果を示す図(その2)である。
【図8A】基板表面のXPS分析結果を示す図(その3)である。
【図8B】基板表面のXPS分析結果を示す図(その4)である。
【図9A】被膜除去前の基板の断面TEM写真である。
【図9B】被膜除去後の基板の断面TEM写真である。
【図10】実施例2による分析装置を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
100 基板
101 被膜
102 雰囲気
103 紫外光
104 溶解液
200 分析装置
201 ポート
202 基板搬送室
203 UV処理部
204 自然酸化膜除去処理部
205 分析対象物溶解処理部
206 溶解液保持部
207 溶解液導入部
208分析処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された被膜を、紫外線を照射することで除去する第1の工程と、
前記基板表面に溶解液を供給して、前記基板上の分析対象物質を溶解させる第2の工程と、
前記第2の工程で用いた前記溶解液中の前記分析対象物質を分析する第3の工程と、を有することを特徴とする分析方法。
【請求項2】
前記被膜はフロロカーボン系の膜であることを特徴とする請求項1記載の分析方法。
【請求項3】
前記第1の工程は酸素を含む雰囲気で行われることを特徴とする請求項2記載の分析方法。
【請求項4】
水素を含む雰囲気で前記基板上に紫外線を照射することにより、前記第1の工程で形成される化合物を除去する別の除去工程をさらに有することを特徴とする請求項3記載の分析方法。
【請求項5】
前記第1の工程と前記別の除去工程が交互に繰り返し実施されることを特徴とする請求項4記載の分析方法。
【請求項6】
前記分析対象物質は、金属を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の分析方法。
【請求項7】
前記第3の工程の分析は、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマ原子発光分析法、および原子吸光分析法のいずれかにより行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の分析方法。
【請求項8】
前記基板は、Si基板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の分析方法。
【請求項9】
前記Si基板に形成される酸化膜を除去する工程をさらに有することを特徴とする請求項8記載の分析方法。
【請求項10】
前記紫外線の照射の後に、前記基板を加熱する加熱工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の分析方法。
【請求項11】
基板上に形成された被膜を、紫外線を照射することで除去する第1の処理部と、
前記基板表面に溶解液を供給して前記基板上の分析対象物質を溶解させる第2の処理部と、
前記第2の処理部で用いた前記溶解液中の前記分析対象物質を分析する第3の処理部と、を有することを特徴とする分析装置。
【請求項12】
前記紫外線が照射された後で前記基板を加熱する加熱機構を有することを特徴とする請求項11記載の分析装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図10】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2008−26063(P2008−26063A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196946(P2006−196946)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】