分節された履物底構造を有する履物
【課題】履物底構造の横方向の柔軟性を与える。
【解決手段】この履物は、分節された履物底構造を有する。履物底構造は、連結部分と、複数の不連続な履物底要素とを含む。連結部分は、履物底構造の長手方向に延びている。不連続な履物底要素は、連結部分から下に向かって延びているとともに、履物底構造内に上に向かって延びる複数のサイプによって分離されている。複数のサイプは、履物底構造に関して長手方向に延びる第一のサイプおよび第二のサイプを有している。履物底構造の前方領域は、第一および第二のサイプのカーブし大略的に平行な部分を含む。
【解決手段】この履物は、分節された履物底構造を有する。履物底構造は、連結部分と、複数の不連続な履物底要素とを含む。連結部分は、履物底構造の長手方向に延びている。不連続な履物底要素は、連結部分から下に向かって延びているとともに、履物底構造内に上に向かって延びる複数のサイプによって分離されている。複数のサイプは、履物底構造に関して長手方向に延びる第一のサイプおよび第二のサイプを有している。履物底構造の前方領域は、第一および第二のサイプのカーブし大略的に平行な部分を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は履物の分野に関し、さらに詳しくは、サイプを有する履物底構造を有する履物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の運動用の履物は2つの主な要素、すなわちアッパーと履物底構造とを有する。アッパーは足を確実に収容し、履物底構造との相対的な足の位置に定めるための足の覆いをなす。アッパーはまた、足を保護しかつ換気を行なう構造を有し、それにより足を冷却して汗を除去することもできる。履物底構造はアッパーの下側表面に固定されており、一般に足と地面との間に位置する。地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収する(すなわちクッション作用を与える)ことに加えて、履物底構造は地面を捕捉し、かつ過剰な回内動作のような障害をもたらす可能性のある足の動きを抑制することもできる。これによりアッパーと履物底構造とは互いに協働して、ウォーキングやランニングのような広範囲の脚の運動に適した快適な構造を与える。以下、アッパーおよび履物底構造の一般的な特徴および構成を詳しく説明する。
【0003】
アッパーは履物の内部に足を収容する空洞を形成する。空洞は足の一般的な形状を有し、足首の開口部が空洞への入口となる。そのためアッパーは、足の内側部および外側部に沿い、また足の踵部分を回り、足の甲およびつま先の部分の上に延びる。足首の開口部の寸法を選択的に増加させ、かつ様々な寸法比を有する足を収容するために、アッパーのある種の寸法、特に周囲の長さを使用者が変更できるように、紐システムがアッパーに組み込まれることが多い。更にアッパーには、紐システムの下に延設されて履物の快適性を向上するためのベロを含むこともでき、またアッパーには踵の動きを規制する踵部カウンターが含まれることもある。
【0004】
アッパーの製造には様々な材料を使用できる。例えば運動用の履物のアッパーは、外部層、中間層および内部層を含む複数の材料の層で形成できる。アッパーの外部層を形成する材料は、例えば耐摩耗性、柔軟性および通気性などの特性に基づいて選択できる。外部層に関しては、つま先部分と踵の部分とは比較的高い耐磨耗性を持たせるために皮、合成皮革またはゴムなどの材料で形成することができる。皮、合成皮革およびゴムは、望ましいレベルの柔軟性および通気性を有しない場合がある。そのため、アッパーの外部層のその他の部分は合成繊維で形成されることもある。従ってアッパーの外部層は、それぞれアッパーの特定の部分に異なる特性を与える多くの材料要素から形成することもできる。
【0005】
アッパーの中間層は、クッション作用を与えると共に、アッパーに接触する可能性のある物体から足を保護する軽量なポリマー発泡材料から形成できる。同様にアッパーの内部層は、足を直接取り囲む部分から汗を除去する吸湿性のある織物で形成できる。ある種の運動用の履物では、接着剤を使って各層を結合し、また糸で縫うことで1つの層の内部の各要素を結合し、またはアッパーの特定の部位を強化することができる。
【0006】
履物底構造は一般にインソール、ミッドソール、およびアウトソールと通常称される複数の層を組み込んで構成される。インソールはアッパーの内部で足の裏側(下)面に隣接して位置する薄いクッション部材で、履物の快適性を向上させる。ミッドソールは、従来はアッパーの全長に沿ってアッパーに取り付けられており、履物底構造の中間層を形成し、足の動きを制御したりクッション作用を与えるなど様々な目的を果たす。アウトソールは履物の接地要素を形成し、通常は地面捕捉性能を高めるテクスチュアリングを含む耐久性と耐摩耗性とを有する材料から構成される。
【0007】
従来のミッドソールの主要な要素は、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテートのような弾力性のあるポリマー発泡材料で形成され、履物の全長にわたって延設されている。ミッドソール内のポリマー発泡材料の特性は、ミッドソールの寸法形状と、ポリマー発泡材料の密度などのポリマー発泡に対して選択された材料の特定の性質とを含む様々な要因に主に依存する。これらの要因をミッドソール全体にわたって変化させることにより、相対的な剛性、地面反力の減衰の程度およびエネルギー吸収特性を変化させ、履物の使用目的である運動の特定の要求を満たすことができる。
【0008】
ポリマー発泡材料のほかに、従来のミッドソールは例えば過剰な回内動作に抵抗する安定装置、および地面反力を分散させる緩和部を含むことがある。運動用の履物のミッドソール内にポリマー発泡材料を使用することは、地面反力に対する保護を与える一方で、過剰な回内動作を生じる傾向のある不安定性をもたらすことがある。回内動作は正常なものであるが、これは足および脚の障害をもたらす可能性があり、過剰な回内動作は特にそうである。安定装置は足に於ける回内動作の程度を制御するために、ミッドソールのポリマー発泡材料内に組み込まれることが多い。安定装置の例はBowermanに対する下記特許文献1、Nortonらに対する下記特許文献2、Nortonらに対する下記特許文献3、Frederick他に対する下記特許文献4、Turnerらに対する下記特許文献5、Batesに対する下記特許文献6、およびKilgoreらに対する下記特許文献7に見られる。安定装置の他に、従来のミッドソールはRudyに対する下記特許文献8および下記特許文献9に開示されているような流体を充てんした袋状部材を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,255,877号明細書
【特許文献2】米国特許第4,287,675号明細書
【特許文献3】米国特許第4,288,929号明細書
【特許文献4】米国特許第4,354,318号明細書
【特許文献5】米国特許第4,364,188号明細書
【特許文献6】米国特許第4,364,189号明細書
【特許文献7】米国特許第5,247,742号明細書
【特許文献8】米国特許第4,183,156号明細書
【特許文献9】米国特許第4,219,945号明細書
【特許文献10】米国特許第5,990,444号明細書
【特許文献11】米国特許第6,140,602号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分節された履物底構造を有する履物に関する。本発明の1つの局面においては、履物の履物底構造は、連結部分と、複数の不連続な履物底要素とを含む。連結部分は、履物底構造の長手に沿って長手方向に延びている。不連続な履物底要素は、連結部分から下に向かって延びているとともに、履物底構造内に上に向かって延びる複数のサイプによって分離されている。複数のサイプは、履物底構造に関して長手方向に延びる第一のサイプおよび第二のサイプを有している。履物底構造の前方領域は、第一および第二のサイプのカーブし大略的に平行な部分を含む。
【0011】
上記履物を製造するための方法は、履物底構造の大略的な形状を有する金型であって、複数の刃を含む金型を提供することと、金型内で刃の周囲にポリマー材料を配置して履物底構造を形成することと、履物底構造を金型から取り出すこととを含む。
履物は、伸縮可能なアッパーと、分節された履物底構造とを有してもよい。この場合、アッパーは外部層と内部層とを含んでもよい。外部層はアッパーの外側の少なくとも一部を形成し、また外部層は外部層を貫通して延びる複数の切込みを含んでもよい。内部層は外部層の内側表面の少なくとも一部に隣接して位置していてもよく、また内部層は前記切込みの少なくとも一部を通して露出していてもよい。
【0012】
前記切込みは第一のグループと第二のグループとを含むことができる。第一のグループはアッパーの内側部と外側部との間に延びる方向における伸縮を可能にするような向きとされ、また切込みの第二のグループは内側部に隣接してアッパーの前方領域内に位置することができる。
また、履物底構造は連結部分と複数の不連続な履物底要素とを含んでもよい。連結部分はアッパーに隣接して位置し、アッパーの長手方向に沿って延びていてもよい。履物底要素は連結部分から下に向かって延び、また履物底要素は上に向かってミッドソール内に延びる複数のサイプによって分離されていてもよい。
【0013】
連結部分は、厚みが異なるように構成してもよい。そのため連結部分は履物の前方領域では第一の厚みを示してもよく、履物の中間領域では第二の厚みを示してもよく、そして履物の踵部分では第三の厚みを示してもよく、ここで第一および第三の厚みは第二の厚みよりも小さくてもよい。更にサイプは第一のサイプ、第二のサイプおよび複数の第三のサイプを含んでもよい。第一のサイプは長手方向に向けられ、ミッドソールの全長にわたって延びていてもよい。第二のサイプは長手方向に延びてミッドソールの全長の一部分だけを通ってもよい。第三のサイプはミッドソールの内側部から外側部に向かって横向きに延びてもよい。
【0014】
本発明を特徴付ける新規性の利点および特徴を、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘する。しかし新規性の利点および特徴をよりよく理解するために、本発明に関する様々な実施形態および概念を説明し、示す下記の記述および添付図面を参照する。
本発明の上記の概要および以下の詳細な説明は、添付の図面を参照して読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】靴の外側部の立面図である。
【図2】靴の内側部の立面図である。
【図3】靴の上から見た平面図である。
【図4A】靴の図3における切断線4A−4Aに沿った第一の横断面図である。
【図4B】靴の図3における切断線4B−4Bに沿った第二の横断面図である。
【図5】靴の後部の立面図である。
【図6】足を収容したときの靴の状態を示す外側部の立面図である。
【図7】靴を曲げた状態を示す部分的な外側部の立面図である。
【図8】靴底構造の底から見た平面図である。
【図9A】靴底構造の図8における切断線9A−9Aに沿った第一の横断面図である。
【図9B】靴底構造の図8における切断線9B−9Bに沿った第二の横断面図である。
【図9C】靴底構造の図8における切断線9C−9Cに沿った第三の横断面図である。
【図9D】靴底構造の図8における切断線9D−9Dに沿った第四の横断面図である。
【図9E】靴底構造の図8における切断線9E−9Eに沿った第五の横断面図である。
【図9F】靴底構造の図8における切断線9F−9Fに沿った第六の横断面図である。
【図9G】靴底構造の図8における切断線9G−9Gに沿った第七の横断面図である。
【図10A】図8における切断線9A−9Aの位置に対応する別の実施形態の横断面図である。
【図11】靴のインソール部分の底から見た平面図である。
【図12】靴の別のインソール部分の底から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記の記述および添付図面により、本発明による靴(履物)10を開示する。図面および以下の説明において、靴10は運動、特にランニングに適した構成を有するものとして示される。ただし靴10に関して開示される概念は、例えばバスケットボール、野球、フットボール、サッカー、ウォーキングおよびハイキングを含む広範囲の運動のために特に設計された靴のスタイルに適用でき、また運動以外に使用される靴(履物)の様々なスタイルにも適用できる。従って当業者であれば、ここに開示される概念は広範囲の履物のスタイルに適用でき、また以下で説明し図面に示した特定の実施形態に限定されないことを理解するであろう。
【0017】
靴10は図1〜図7に図示するように、アッパー20と靴底構造30とを含む。アッパー20は互いに縫い合わせ、または接着剤で結合された様々な材料要素から形成され、足を快適に収容し、また靴底構造30に対する足の相対的な位置を固定する内部の空洞を形成する。靴底構造30はアッパー20の下側部分に固定され、靴10が地面に当たるときの地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収する(すなわちクッション作用を与える)ための耐久性と耐摩耗性とを有する部品を構成する。
【0018】
多くの通常の靴が、ランニングおよびその他の運動中の足の動きを制御する構成を有する。例えばある従来の靴底構造は比較的剛性が高い、すなわち曲がりにくい構造を有し、足の自然な動きを阻害する。アッパー20と靴底構造30とは、協働して分節結合し、たわみ、伸縮しまたはその他の動きにより使用者に自然で裸足で走っているような感覚を与えるような構造を有する。すなわち、アッパー20と靴底構造30とはランニングその他の運動の間の足の自然な動きを補完するように構成される。しかし裸足で走る場合と違い、靴底構造30は地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収して足にクッション作用を与え、足にかかる全体的なストレスを低減する。
【0019】
参考として、靴10は図1および図2に示すように前方領域11、中間領域12および踵領域13という3つの一般的な領域に分けられる。領域11〜13は、靴10の正確な領域を区分するものではない。そうではなく、領域11〜13は以下の説明のための参照の枠組みとして、靴10の一般的な各領域を表すものである。領域11〜13は靴10の全体に適用されるものであるが、領域11〜13を参照する場合は、アッパー20、靴底構造30、もしくはアッパー20または靴底構造30のいずれかの内部の個々の部品または部分に特に該当する場合もある。
【0020】
以下でより詳細に説明することになるアッパー20を形成する様々な材料要素が組み合わされて、アッパー20の内部に空洞を形成する外側部21、反対側の内側部22、ベロ23および永続的な(耐久力のある)内部ライニング(底敷き)24を有する構造を形成する。外側部21は領域11〜13の各々を通って延び、一般に足の外側面に接触してそれを覆うように構成されている。外側部21の一部は足の甲の上に延設され、ベロ23の外側部に重なる。内側部22は足の内側部表面に大略的に対応する同様の形状を有する。内側面22の一部もまた足の甲の上に延設され、ベロ23の反対側の内側面に重なる。更に外側部21、内側部22およびベロ23は協働して踵領域13内に足首の開口部25を形成して、足がアッパー20内の空洞に入れるようにする。
【0021】
ベロ23はアッパー20に沿って長手方向に延設され、足の甲部分に接触するように配置される。ベロ23の両脇部分は外側部21および内側部22の各々の内部表面に固定されている。靴紐26はベロ23の上に延び、外側部21および内側部22に形成された開口部を通っている。ベロ23は靴紐26の下に延設されて足の甲部分から靴紐26を分離する。靴紐26の張力を強めることにより、外側部21および内側部22内の張力を増加して、外側部21および内側部22を足に接触させることができる。同様に、靴紐26の張力を弱めることにより、外側部21および内側部22内の張力を低減して、アッパー20内に足のための追加の容積を与えることができる。従ってこの一般的な構成により、アッパー20のフィッティングを調節して様々な足の寸法を収容するメカニズムが提供される。
【0022】
アッパー20には、通常靴のアッパーに使用される材料を含む様々な材料が適している。従ってアッパー20は、皮、合成皮革、天然もしくは合成繊維、ポリマーシート、ポリマー発泡材料、メッシュ状織物、フェルト、ポリマー不織布またはゴムのような材料の組み合わせで形成できる。アッパー20の露出した部分は、互いに縫い合わせ、または接着剤で貼り合わせた、同じ範囲を占める2枚の材料層で形成されている。図4Aおよび図4Bに図示するように、これらの層は外部層14および隣接する内部層15を含む。外部層14はアッパー20の外部に位置し、かつ内部層15はアッパー20の内部に位置することで、アッパー20内の空洞の表面を構成する。永続的な内部ライニング24は、層14および15の下端に固定されて靴底構造30の上側表面に沿って延設されている。
【0023】
層14および15を形成する材料は、アッパー20の異なる部分で違っていてよく、アッパー20のある部分には層14および15の1つだけ、またはそれ以上が存在できる。前方領域11と中間領域12とを通って延びる外側部21および内側部22の各部分に関しては、外部層14に適した材料は様々な繊維の織布または不織布、皮、合成皮革または単一層のメッシュであり、内部層15も同様の材料で形成できる。ベロ23および足首の開口部26の周囲の部分を形成する材料は上記の材料とは異なっていてもよい。例えば外部層14は複数の結合繊維によって互いに結合された2つの間隔を開けた繊維層を含む材料から形成できる。繊維層の一方または両方をメッシュ状材料として、この部分におけるアッパー20の通気性を高くしてもよい。更に外部層14および内部層15の間に発泡材料を挟んでもよい。
【0024】
上で述べた各部分は層14および15の両方で構成されるが、アッパー20の一部は単一層を含むだけでよい。図4Bおよび図5を参照して、踵領域13内に位置されて踵領域13の後部の周囲に延びるアッパー20の部分は、内部層15のみから形成されている。すなわち、踵領域13のこの部分には外部層14は存在せず、内部層15がアッパー20の外部と内部との両方を形成する。しかし本発明のいくつかの実施形態では、踵領域13内のアッパー20の部分は、例えば半硬質ポリマー材料で形成された従来の踵部カウンターを組み込み、踵がアッパー20に関して適切な位置を保つことを保証するようにできる。踵部カウンターはアッパー20の外部の上、またはアッパー20を形成する様々な材料要素の中に位置することができる。しかし以下で説明するように、アッパー20と靴底構造30との構成は、踵部カウンターの存在を必要とするものではない。
【0025】
上の議論に基づき、アッパー20の様々な部分は層14および15を形成する各材料の異なる組み合わせを含む。例えばベロ23の領域と足首の開口部26の周囲とで外部層14と内部層15とを形成する材料は、前方領域11と中間領域12とを通って延びる外側部21および内側部22の部分内の外部層14と内部層15とを形成する材料とは異なっていてもよい。ただし図に示すように、内部層15を形成する材料はこれらの部分の両方を通じて同じであり、同一の材料が踵領域13の最も後ろの部分の周囲に延設される。そのため同一の材料でアッパー20の内部表面のかなりの部分を形成してもよい。しかし別の実施形態では、内部層15の異なる部分に異なる材料を使用してもよく、またアッパー20が2つよりも多くの材料層を含んでもよい。
【0026】
外部層14は内部層15の下部を露出させる複数の切込み27aおよび27bを含む。内部層15を露出させることにより、アッパー20の伸縮特性が選択的に調整される。切込み27aおよび27bが存在しない部分では、層14および15の各々がアッパー20の引き伸ばしに抵抗するように貢献する。しかし切込み27aおよび27bがある部分では、切込み27aおよび27bは外部層14がもっと大幅に延びることを可能にする。そのため切込み27aおよび27bは、アッパー20の特定の部分における伸縮度を選択的に変化させるようにアッパー20内に形成される。更に切込み27aおよび27bは、アッパー20の通気性、柔軟性および全体的な美観(色など)を変更するために利用することができる。
【0027】
図1〜図3において切込み27aおよび27bは、前方領域11と中間領域12とを通って延びる外側部21および内側部22の各部分にわたって分布しているものとして図示されている。一般に切込み27aは線状の形状を有し、靴10の長手方向に延びる方向に向けられている。つまり切込み27aは前方領域11と踵領域13との間に延びる方向に向けられている。ただし母指に対応する前方領域11の一部では、切込み27bは横方向に延設されている。
【0028】
切込み27aおよび27bの向きは、切込み27aおよび27bによってもたらされる伸縮の方向に影響を与える。一般に切込み27aおよび27bは、切込み27aおよび27bの長手方向に対応する方向における伸縮を増加させない。つまり、特定の切込み27aおよび27bは、その切込み27と平行な方向における伸びを増大させることはない。しかし切込み27aおよび27bは、切込み27aおよび27bの長手方向と垂直な方向におけるアッパー20の伸縮は増大させる。
【0029】
切込み27aは長手方向に延びるスリット列を形成するものとして図示されており、隣接する列の切込み27aは互いにずらされている。同様に、切込み27bは横方向に延びるスリット列を形成するものとして図示されており、隣接する列の切込み27bは互いにずらされている。ただし様々な切込み27aおよび27bをその他の配列でアッパー20に追加することもできる。例えば切込み27aおよび27bをずらして列を形成しないようにしてもよく、または切込み27aおよび27bをアッパー20に関してランダムに配置してもよい。
【0030】
切込み27aは上で説明したように、靴10に関して長手方向に向けられている。図6に示したように足をアッパー20の中に入れて、アッパー20、特に外部層14に対して伸ばす力を加えると、切込み27aはアッパー20の周囲長さを増加させるようにアッパー20が延びることを可能にする。すなわち切込み27aは、切込み27aの長手方向に垂直な方向に延びる。切込み27bも同様に延びる。しかし上で説明したように、切込み27bは横方向に向いている。そのため切込み27bは長手方向に延びる。
【0031】
切込み27aおよび27bは、外部層14内への線状の切込みとして図示されている。切込み27aおよび27bの1つまたはそれ以上に対して、大略的に垂直な方向に外部層14に対して伸ばす力が働くと、切込み27aおよび27bの縁が分離して、図6に示すようにとがった端部を有する大略的に楕円形を形成する。切込み27aおよび27bは比較的直線的で短い形態を有するものとして図示されている。しかし本発明の範囲内において、切込み27aおよび27bは直線的または曲線の形状を示すことができ、例えば個々の切込み27aおよび27bの長さを変更することができる。切込み27aおよび27bの形状および長さの違いを利用して、アッパー20の伸びの程度、アッパー20の通気性およびアッパー20の柔軟性と全体の美観とを調整することができる。切込み27aおよび27bの形状および長さを決めるときに考慮すべき要因には、例えばアッパー20内で使用される材料、各材料の固有の伸び率、および伸びが望まれる方向が含まれる。
【0032】
従来のアッパーを形成する材料は互いに縫い合わされることが多く、また接着により材料の同じ範囲の部分を互いに固定することもできる。従来のアッパーの場合と同様に、層14および15は同じ範囲を占める仕方で位置され、互いに接着することができる。しかしいくつかの実施形態では、層14および15は接着されずに分離していてもよい。すなわち層14および15は互いに隣接して位置されるが、縁または応力点以外では互いに固定されていなくてもよく、例えば切込み27aおよび27bの近傍部分では内部層15が外部層14に固定されないようにできる。この構成の利点は、外部層14が内部層15とは独立に伸びて移動できることである。すなわち切込み27aおよび27bは、層14および15の間の接着を通じて大幅には妨げられない外部層14の伸びを可能にする。一般に層14および15は、切込み27aおよび27bを含む部分では、互いに接着その他により固定しなくてもよい。
【0033】
切込み27aおよび27bは外部層14内に形成されるように図示されている。しかし本発明の範囲内で、切込み27aおよび27bはまた層14および15の一方または両方に形成してもよい。例えば切込み27aおよび27bは、外部層14のみ、または外部層14と内部層15との両方に、または内部層15のみに形成してもよい。層14および15の両方が切込み27aおよび27bを含む実施形態では、切込み27aおよび27bの位置を合わせてもまたずらしてもよい。従ってこれまでの説明に基づき、切込み27aおよび27bの形状は本発明の範囲内で大幅に変えることが出来る。
【0034】
切込み27aおよび27bは様々な方法で形成できる。例えばダイス(打ち抜き型)、ナイフまたはかみそりのような切断器具を用いて、切込み27aおよび27bを形成することができる。切断器具のほかに、レーザー装置を使って切込み27aおよび27bを形成し、かつ外部層14を大きな材料要素から除去することができる。従って切込み27aおよび27bは、レーザーを外部層14に照射して、切込み27aおよび27bに対応する部分を外部層14から除去することで形成できる。切込み27aおよび27bの幅はレーザーの幅とほぼ一致する。あるいはまた、レーザーを何度も通過させることでもっと幅の大きい切込み27aおよび27bを形成することもできる。レーザー装置は、出力を調整することにより可変強度のレーザービームを発生する能力を有することができる。出力を調整することに加えて、レーザービームの焦点と、外部層14に対するレーザービームの速度も変えることが出来る。適切なレーザー装置の例としては参照により本明細書に組み入れた、Costinに対する上記特許文献10および上記特許文献11に開示されているように、通常のCO2またはNd:YAGレーザー装置の任意のものである。
【0035】
靴のアッパーに組み込まれることの多い合成皮革、皮、ポリマーシートおよびポリマー繊維などの材料の場合、切込み27aおよび27bを形成するためのレーザービームの出力は一般に、例えば0.25から25ワットの範囲である。レーザービームが比較的狭い焦点を有する場合は、レーザービームの単位面積当たりのエネルギー密度が高いことを考慮して、レーザービームの出力を下げればよい。同様に、レーザービームが比較的広い焦点を有する場合は、レーザービームの単位面積当たりのエネルギー密度が低いことを考慮して、レーザービームの出力を上げればよい。レーザービームの焦点および出力を考慮するには、レーザービームの速度の変更を利用できる。合成皮革、皮またはポリマー繊維などの材料に切込み27aおよび27bを形成するには、比較的小さな出力でよいが、高密度のポリマーのような他の材料に同じ深さで切込み27aおよび27bを形成するには、もっと大きな出力を要する可能性がある。そのため、切込み27aおよび27bを形成するためのレーザービームの適切な出力、焦点および/または速度を決定するには多くの要因が考慮される。
【0036】
レーザー装置には、外部層14に隣接して移動しながら外部層14内に切込み27aおよび27bを形成するレーザービームの照射装置を含むことができる。すなわち外部層14に対するレーザー装置の相対的な運動により、それぞれの切込み27aおよび27bの形状を制御することができる。あるいは、1つ以上の移動可能または軸回動可能な鏡でレーザービームを反射して、鏡の移動によって外部層14内の切込み27aおよび27bの形状を制御することもできる。
【0037】
外部層14内の選択された領域をレーザービームで加熱し、外部層14の選択された部分を焼く(灰化する)ことで切込み27aおよび27bを形成する。外部層14の他の領域が誤って焼かれるのを防ぐために、二酸化炭素や窒素のような非可燃性の流体の存在下で切込み27aおよび27bを形成してもよい。すなわち、レーザービームが切込み27aおよび27bを形成する際に非可燃性の流体を放出するようにレーザー装置を構成してもよい。
【0038】
一旦外部層14内に切込み27aおよび27bが形成されると、アッパー20内の空洞に足の一般的な形状を与える靴型の周囲でアッパー20の各要素が結び付けられる。すなわち、前方領域11から踵の領域13にかけて延設されたアッパー20の外側部21と内側部22とを形成する靴型の周囲で各要素が互いに結び付けられる。加えて、例えばベロ23と靴紐部26とを含むように甲部分が形成され、踵領域13内に足首の開口部25が形成される。永続的な内部ライニング24も外側部21および内側部22の下端に固定され、永続的な内部ライニング24は靴型の下に延びてアッパー20内の空洞の下側表面を形成する。次に靴底構造30の一部分が永続的な内部ライニング24を含むアッパー20の下側部分に恒久的に固定される。アッパー20と靴底構造30との結合には、接着剤、縫合または接着剤と縫合との組み合わせを利用できる。このようにして、概略従来の工程によってアッパー20が靴底構造30に固定される。
【0039】
靴底構造30はインソール31(以下で詳細に説明する)、ミッドソール32、およびアウトソール33を含む。インソール30はアッパー20の内部に位置し、足の裏側(下側)表面に接触するために永続的な内部ライニング24の上側表面に隣接して配置され、靴10の快適性を向上させる。ミッドソール32は永続的な内部ライニング24を含むアッパー20の下側部分に固定され、使用中は足の下に延びるように位置する。ミッドソール32は例えばウォーキングまたはランニング中の地面反力を減衰させてエネルギーを吸収する(クッション作用を与える)など様々な目的を果たす。ミッドソール32に適した材料は、エチルビニルアセテートまたはポリウレタン発泡体など、靴のミッドソールに使用される従来のポリマー発泡材料のいずれでもよい。ミッドソール32はまた、Bayer AG社によってBAYFLEXという商標名で製造されている比重約0.22の比較的軽量のポリウレタン発泡体で形成してもよい。アウトソール33はミッドソール32の下側表面に固定されて耐摩耗性を与えるが、アウトソール33はミッドソール32内に埋め込まれていてもよい。アウトソール33はミッドソール32の下側表面全体にわたって延設してもよいが、図に示された特定の実施形態においてはアウトソール33は踵領域13の中に位置する。アウトソール33に適した材料は、カーボンブラック・ゴム組成物など、靴のアウトソールに使用される従来のゴム系材料のいずれをも含む。
【0040】
通常の靴のミッドソールは足の長さにわたって延びる発泡ポリマー製の単一構造であり、足の自然な動きを阻害する剛性すなわち非柔軟性を有することがある。通常の靴のミッドソールとは異なり、ミッドソール32は比較的高い柔軟性と分節結合とを与える分節構造を有する。ミッドソール32の柔軟な構造は(アッパー20の構造と組み合わされて)、ランニングその他の運動の間の足の自然な動きを補完するように構成され、裸足で走っているような感覚を与えることができる。しかし裸足で走る場合と違い、ミッドソール32は地面反力を減衰させてエネルギーを吸収し、足に対するクッション作用を与えて足への全体的なストレスを軽減する。
【0041】
ミッドソール32は連結部分40とサイプ(溝)部50を含む。連結部分40は上側表面41およびその反対側の下側表面42を形成する。上側表面41はアッパー20に隣接して配置され、アッパー20に直接固定することができ、それによって足を支える。そのため上側表面41は、足の自然な解剖学的な形状に適合するように形成される。従って踵領域13内に配置された上側表面41の部分は、前方領域11内の上側表面41の部分よりも大きな高度を有することができる。更に上側表面41は中間領域12内にアーチ支持部を形成することができ、上側表面41の周辺領域は一般に高くして、足を受け入れて落ち着かせるためのくぼみを与える。別の実施形態では、上側表面41は輪郭を付けない形状を有することができる。
【0042】
上側表面41と下側表面42との間に延びる寸法として規定される連結部分40の厚みは、ミッドソール32の長手方向に沿って変化することができる。図9Aでは厚みは寸法43a〜43cとして図示されている。前方領域11内に規定される寸法43aは例えば約3mmであり、1mm〜5mmの範囲内であってもよい。中間領域12内に規定される寸法43bは例えば約8mmであり、1mm〜11mmの範囲内であってよい。同様に踵領域13内に規定される寸法43cは例えば約6mmであり、1mm〜10mmの範囲内であってよい。従って連結部分40の厚みは、前方領域11および踵領域13から中間領域12に向かう各方向に増加することができる。しかし当業者であれば、様々な厚み寸法および変形が連結部分40に対して適切であることを理解するであろう。
【0043】
比較的小さな厚みを示す連結部分40の部分は一般に、より大きな厚みを示す連結部40の部分よりも高い柔軟性を有する。従って連結部40の部分の厚みの変化を利用して、特定部分における靴底構造30の柔軟性を変化させることができる。例えば厚みの小さな連結部分40を形成することにより、前方領域11は比較的高い柔軟性を有するように構成できる。厚みの大きな連結部分40を形成することにより、中間領域12に比較的低い柔軟性を与えることができる。同様に、前方領域11と中間領域12との中間の厚みを有する連結部分40を形成することにより、踵領域13に中間の柔軟性を与えることができる。
【0044】
サイプ部50は複数のサイプ(溝)52a〜52lによって分離される複数の個別の分離した靴底要素51を形成する。靴底要素51は、連結部分40から下向きに延びるミッドソール30の不連続な部分である。更に靴底要素51は連結部分40に固定されており、また連結部分40と一体に形成することもできる。各靴底要素51の形状は、サイプ52a〜52lの位置によって決定される。図8に示すように、サイプ52aおよび52bは靴底構造30の長手方向に沿って延び、またサイプ52c〜52lは大略的に横方向に延びる。サイプ52a〜52lをこのように配置することで、大略的に正方形、長方形または台形をなす靴底要素51の大多数が形成される。最も後方の靴底要素51は、踵領域13内の靴底構造30の曲面形状のために、円周の4分の1の形状を有する。
【0045】
下側表面40とミッドソール32の下側表面との間に延びる寸法として規定されるサイプ部50の厚みは、ミッドソール32の長手方向に沿って変化させてもよい。この厚みは、図9Aにおいて寸法53aおよび53cとして図示されている。前方領域11内で規定される寸法53aは例えば約7mmで、3mm〜12mmの範囲内であってもよい。同様に踵領域13内で規定される寸法53cは例えば約12mmであり、8mm〜20mmの範囲内であってもよい。従ってサイプ部50の厚みは、前方領域11から踵領域13に延びる方向に増加することができる。しかし当業者であれば、様々な厚み寸法および変形がサイプ部50に対して適切であることを理解するであろう。
【0046】
寸法43aおよび53aの組み合わせにより、前方領域11内でのミッドソール32の全体の厚みが形成される。同様に、寸法43cおよび53cの組み合わせにより、踵領域13内でのミッドソール32の全体の厚みが形成される。靴10の構成は男性用および女性用の靴でほぼ同じであるが、実験によれば男性は一般に女性よりも全体としての厚みの違いが小さい方を好むことが分かった。従って、男性用に設計された靴10の前方領域11内での全体の厚みを10mmとし、踵領域13内での全体の厚みを18mmとして、8mmの差をつけることができる。しかし女性用に設計された靴10では、前方領域11内での全体の厚みは同じく10mmであるが、踵領域13内での全体の厚みを22mmとして、12mmの差をつけることができる。従って女性用に設計された靴10では、前方領域11と踵領域13との間の全体の厚みの差は男性用の厚みの差よりも大きくできる。靴10に大きな厚みの差を与えるには、例えば踵領域13内に位置される靴底要素51の厚みを大きくすればよい。
【0047】
上で述べたように、靴底要素51の各々の形状は、上に向かってミッドソール32内に延び、かつ各靴底要素51の間で延びる切れ目または空間であるサイプ52a〜52lの位置によって決定される。サイプ52a〜52lはまた、ミッドソール32内の分節構造を形成することにより、靴底構造30の柔軟性を高める。通常の靴のミッドソールは発泡ポリマーからなる一体の(まとまった)要素であるが、サイプ52a〜52lは靴底構造30内に屈曲線を形成し、したがってミッドソール32内の曲がりの方向に影響を与える。サイプ52a〜52lの影響で靴底構造30が曲がりまたは分節結合する仕方を、図7に図式的に示す。
【0048】
靴底構造30の横方向の柔軟性(すなわち外側部と内側部との間に延びる方向での柔軟性)は、サイプ52aおよび52bによって与えられる。サイプ52aは3つの領域11〜13の全てを通って長手方向に延びる。サイプ52aは直線つまり線形の形状を有することができるが、サイプ52aは一般にカーブした、またはs字形状を有するものとして図示されている。前方領域11と中間領域12とでは、サイプ52aは靴底構造30の外側部から内側に向かって間隔を開けて配置され、またサイプ52aは踵領域13内で中央に位置する。前方領域11内および中間領域12の一部にのみ位置されるサイプ52bは中央に位置され、かつ一般にサイプ52aと平行な方向に延びる。一般にサイプ52aおよび52bの深さは、サイプ52aおよび52bが前方領域11から踵領域13に向かって延びるに従って大きくなる。
【0049】
靴底構造30の長手方向の柔軟性(すなわち領域11と領域13との間に延びる方向における柔軟性)は、サイプ52c〜52lによって与えられる。サイプ52c〜52fは前方領域11内に位置しており、サイプ52gは大略的に前方領域11と中間領域12との間の界面に沿って延び、サイプ52hおよび52iは中間領域12内に位置し、サイプ52jは大略的に中間領域12と踵領域13との間の界面に沿って延び、そしてサイプ52kおよび52lは踵領域13内に位置する。図8を参照して、サイプ52i〜52lはほぼ平行であり、内側部から外側部に向かう方向に延びている。サイプ52c〜52hもほぼ平行であり、内側部から外側部に向かう方向に延びる形状を有するが、サイプ52c〜52hはサイプ52i〜52lに関して多少角度をなしている。
【0050】
サイプ52a〜52lの位置と向きとは、ランニングのサイクルの間の足の自然な動きを補完するように選択される。一般に、ランニング中の足の動きは次のように進行する。最初に踵が地面に当たり、それに続いて親指の付け根が地面に当たる。踵が地面を離れるときに足は前方に向かってローリング運動を行ってつま先が接地し、最後に足全体が地面を離れて次のサイクルを開始する。足が地面に接している間に、足は通常外側すなわち外側部から内側すなわち内側部に向かってローリングする、回内動作と呼ばれるプロセスが行なわれる。すなわち通常は、踵の外側が最初に当たり、足の内側のつま先が最後に地面から離れる。サイプ52c〜52lは、足が中立的な接地位置に止まることを保証すると同時に、足が地面に接した状態で中立的な前方へのローリングを行なう運動を補完する。サイプ52aおよび52bは、ランニングのサイクル中に足が自然に回内動作をすることができるように、横方向の柔軟性を与える。同様に、サイプ52c〜52hの角度をつけた構成が上で述べたように、足の自然な動きを更に強める柔軟性を更に加える。
【0051】
サイプ52eは、前方領域11内での逆方向の屈曲ができるように、他のサイプ52a〜52dおよびサイプ52f〜52lよりも大きな幅を有する。一般に、サイプ52a〜52lは図7に示すように靴底構造30の上向きの曲がりを可能にする。ランニングサイクルの終わりに(つまりつま先が地面を離れる前に)更に地面捕捉力を与えるために、人は足底の屈曲で足指を曲げるかその他の仕方でつま先を地面に押し付ける可能性がある。サイプ52eが広くなっていることにより足底の屈曲が容易になり、それによりランニング中の足の自然な動きが促進される。すなわち、サイプ52eはミッドソール32内に逆屈曲溝を形成している。実験の解析によれば、男性は前方領域内で足底の屈曲を起こす傾向が女性よりも低いことが分かっている。女性における足底の屈曲を起こす高い傾向を助けるために、女性用に設計された靴10には更に幅の広いサイプ52eを持たせるか、またはサイプ52dの幅も大きくすることができる。従って女性用に設計された靴10では、図10Aの断面図で示されるようにサイプ52dおよびサイプ52eの両方の幅を広くすることができる。
【0052】
アウトソール33は選択された靴底要素51の下側表面に固定された複数のアウトソール要素を含み、また選択された靴底要素51の下側表面にアウトソール要素を受けるためのくぼみが形成されている。図に示されているように、アウトソール33は踵領域13に制限されている。しかしある実施形態では、各靴底要素51を1つのアウトソール要素に関連付けるか、またはアウトソール33をミッドソール32の下側表面全体にわたって延設することもできる。
【0053】
ミッドソール32を形成するには複数の製造方法を好適に使用できる。例えばミッドソール32を一体の要素として形成し、その後サイプ52a〜52lを切込み工程によって形成してもよい。ミッドソール32を成型し、その成型過程でサイプ52a〜52lが形成されるようにしてもよい。ミッドソール32に対する適切な成型方法には例えば、射出成型、注入法、圧縮成型などがある。それぞれの成型方法において、ミッドソール32の一般的な形状を有する金型の中に発泡ポリマー樹脂が注入される。金型はサイプ52a〜52lの位置に対応する薄い刃を含む。ポリマー樹脂は金型内および各々の刃の周囲に配置される。材料が硬化するとミッドソール32は金型から取り出され、成型工程の間にサイプ52a〜52lが形成される。サイプ52a〜52lの幅は金型内の刃の厚みを調整することにより制御される。そのため、例えばサイプ52eの逆屈曲特性はサイプ52eを形成する刃の厚みによって調整でき、また他のサイプ52a〜52dおよびサイプ52f〜52lが逆方向に屈曲する程度は対応する刃の厚みにより制御できる。サイプ52a〜52dおよびサイプ52f〜52lを形成する刃に対する適切な厚みの範囲は0.2mm〜0.3mmであり、これにより比較的小さな逆屈曲が得られる。同様に、サイプ52eを形成する金型の部分に対する適切な幅の範囲は3mm〜5mmであり、これによりもっと大きな逆屈曲が得られる。
【0054】
アッパー20と靴底構造30とは互いに協調して屈曲し、伸び、またはその他の動きを行なって裸足で走るような自然な感覚を与えるような構造を有する。すなわちアッパー20と靴底構造30とは、ランニングその他の運動中の足の自然な動きを補完するように構成されている。上で述べたように、外部層14は複数の切込み27aおよび27bを含み、これらが特定の部分および特定の方向におけるアッパー20の伸縮特性を高める。切込み27aは例えばアッパー20の周囲長の伸びを許すような方向に向けられ、切込み27bは母指の動きと足裏の屈曲を容易にすることができる。切込み27aおよび27bはまた、一般により柔軟性が高い構造をアッパー20に与え、これが靴底構造30の柔軟性を補完する。上で述べたように、ミッドソール32は靴底構造30の屈曲特性を高める複数のサイプ52a〜52lを含む。サイプ52a〜52lの位置、向きおよび深さは、選択された部位および方向において特定の程度の柔軟性を与えるように選択される。すなわちサイプ52a〜52lは、使用者に裸足で走るような自然な感覚を与えるために利用できる。しかし裸足で走るのとは異なり、靴底構造30が地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収し、足に対するクッション作用を与えて足への全体的なストレスを軽減する。
【0055】
上で述べたように、通常の靴底構造は比較的剛性の高い、つまり曲がりにくい構造を有し、それが足の自然な動きを阻害する可能性がある。例えばランニングサイクル中に踵が地面から離れる段階で、足は屈曲しようとするかもしれない。曲がりにくいミッドソール構造と従来の踵カウンターとの組み合わせは、足の屈曲に抵抗するように働く。それに対して靴10は足と共に屈曲し、また従来の踵カウンターを組み込まない構成とすることができる。
【0056】
靴底構造30全体としての柔軟性は、インソール31の構造により向上させることができる。図11を参照して、インソール31の下側表面は一般にサイプ52a〜52lの位置および形状に対応する複数の屈曲線34a〜34lを有するとして図示されている。より具体的には、屈曲線34aはインソール31のほぼ全長にわたって長手方向に延びて、大略的にサイプ52aの位置に対応する。屈曲線34bはインソール31の長さの一部のみにわたって長手方向に延びて、ほぼサイプ52bの位置に対応する。同様に、屈曲線34c〜34lはインソール31の内側部から外側部へ横方向に延び、かつほぼサイプ52c〜52lの位置に対応する。この構成により、靴底構造30の柔軟性が高まり、またサイプ52a〜52lがもたらす分節構造が強められる。同様の構造を示す図12において、インソール31’は複数の屈曲線34a’〜34l’と、圧縮可能な発泡ポリマーで形成された2つのクッションパッド35a’および35b’を含む。
【0057】
図面に示された靴10の構造および形状について詳細に説明してきた。本発明の範囲から逸脱することなく、靴10に様々な変更を行なうことができる。例えば切込み27aおよび27bを、層14および15のいずれか、または層14および15の両方に形成することができる。切込み27aおよび27bはまた、異なる向きまたは位置に形成して異なる伸縮特性を与え、またはアッパー20内に従来の踵カウンターを組み込んでもよい。靴底構造30に関して、連結部分40の厚みまたはミッドソール32全体の厚みは大幅に変化させることができる。更にまたサイプ52a〜52lの深さ、向きおよび位置を変更してもよい。
【0058】
本発明の様々な実施形態を、上の説明と添付図面とで開示した。しかしこの開示の目的は、本発明の範囲を制限することではなく、本発明に関する様々な特徴および概念の例を示すことである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲から逸脱することなく、上で述べた実施形態に対して多くの変形や変更を行なえること認識するであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は履物の分野に関し、さらに詳しくは、サイプを有する履物底構造を有する履物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の運動用の履物は2つの主な要素、すなわちアッパーと履物底構造とを有する。アッパーは足を確実に収容し、履物底構造との相対的な足の位置に定めるための足の覆いをなす。アッパーはまた、足を保護しかつ換気を行なう構造を有し、それにより足を冷却して汗を除去することもできる。履物底構造はアッパーの下側表面に固定されており、一般に足と地面との間に位置する。地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収する(すなわちクッション作用を与える)ことに加えて、履物底構造は地面を捕捉し、かつ過剰な回内動作のような障害をもたらす可能性のある足の動きを抑制することもできる。これによりアッパーと履物底構造とは互いに協働して、ウォーキングやランニングのような広範囲の脚の運動に適した快適な構造を与える。以下、アッパーおよび履物底構造の一般的な特徴および構成を詳しく説明する。
【0003】
アッパーは履物の内部に足を収容する空洞を形成する。空洞は足の一般的な形状を有し、足首の開口部が空洞への入口となる。そのためアッパーは、足の内側部および外側部に沿い、また足の踵部分を回り、足の甲およびつま先の部分の上に延びる。足首の開口部の寸法を選択的に増加させ、かつ様々な寸法比を有する足を収容するために、アッパーのある種の寸法、特に周囲の長さを使用者が変更できるように、紐システムがアッパーに組み込まれることが多い。更にアッパーには、紐システムの下に延設されて履物の快適性を向上するためのベロを含むこともでき、またアッパーには踵の動きを規制する踵部カウンターが含まれることもある。
【0004】
アッパーの製造には様々な材料を使用できる。例えば運動用の履物のアッパーは、外部層、中間層および内部層を含む複数の材料の層で形成できる。アッパーの外部層を形成する材料は、例えば耐摩耗性、柔軟性および通気性などの特性に基づいて選択できる。外部層に関しては、つま先部分と踵の部分とは比較的高い耐磨耗性を持たせるために皮、合成皮革またはゴムなどの材料で形成することができる。皮、合成皮革およびゴムは、望ましいレベルの柔軟性および通気性を有しない場合がある。そのため、アッパーの外部層のその他の部分は合成繊維で形成されることもある。従ってアッパーの外部層は、それぞれアッパーの特定の部分に異なる特性を与える多くの材料要素から形成することもできる。
【0005】
アッパーの中間層は、クッション作用を与えると共に、アッパーに接触する可能性のある物体から足を保護する軽量なポリマー発泡材料から形成できる。同様にアッパーの内部層は、足を直接取り囲む部分から汗を除去する吸湿性のある織物で形成できる。ある種の運動用の履物では、接着剤を使って各層を結合し、また糸で縫うことで1つの層の内部の各要素を結合し、またはアッパーの特定の部位を強化することができる。
【0006】
履物底構造は一般にインソール、ミッドソール、およびアウトソールと通常称される複数の層を組み込んで構成される。インソールはアッパーの内部で足の裏側(下)面に隣接して位置する薄いクッション部材で、履物の快適性を向上させる。ミッドソールは、従来はアッパーの全長に沿ってアッパーに取り付けられており、履物底構造の中間層を形成し、足の動きを制御したりクッション作用を与えるなど様々な目的を果たす。アウトソールは履物の接地要素を形成し、通常は地面捕捉性能を高めるテクスチュアリングを含む耐久性と耐摩耗性とを有する材料から構成される。
【0007】
従来のミッドソールの主要な要素は、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテートのような弾力性のあるポリマー発泡材料で形成され、履物の全長にわたって延設されている。ミッドソール内のポリマー発泡材料の特性は、ミッドソールの寸法形状と、ポリマー発泡材料の密度などのポリマー発泡に対して選択された材料の特定の性質とを含む様々な要因に主に依存する。これらの要因をミッドソール全体にわたって変化させることにより、相対的な剛性、地面反力の減衰の程度およびエネルギー吸収特性を変化させ、履物の使用目的である運動の特定の要求を満たすことができる。
【0008】
ポリマー発泡材料のほかに、従来のミッドソールは例えば過剰な回内動作に抵抗する安定装置、および地面反力を分散させる緩和部を含むことがある。運動用の履物のミッドソール内にポリマー発泡材料を使用することは、地面反力に対する保護を与える一方で、過剰な回内動作を生じる傾向のある不安定性をもたらすことがある。回内動作は正常なものであるが、これは足および脚の障害をもたらす可能性があり、過剰な回内動作は特にそうである。安定装置は足に於ける回内動作の程度を制御するために、ミッドソールのポリマー発泡材料内に組み込まれることが多い。安定装置の例はBowermanに対する下記特許文献1、Nortonらに対する下記特許文献2、Nortonらに対する下記特許文献3、Frederick他に対する下記特許文献4、Turnerらに対する下記特許文献5、Batesに対する下記特許文献6、およびKilgoreらに対する下記特許文献7に見られる。安定装置の他に、従来のミッドソールはRudyに対する下記特許文献8および下記特許文献9に開示されているような流体を充てんした袋状部材を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,255,877号明細書
【特許文献2】米国特許第4,287,675号明細書
【特許文献3】米国特許第4,288,929号明細書
【特許文献4】米国特許第4,354,318号明細書
【特許文献5】米国特許第4,364,188号明細書
【特許文献6】米国特許第4,364,189号明細書
【特許文献7】米国特許第5,247,742号明細書
【特許文献8】米国特許第4,183,156号明細書
【特許文献9】米国特許第4,219,945号明細書
【特許文献10】米国特許第5,990,444号明細書
【特許文献11】米国特許第6,140,602号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分節された履物底構造を有する履物に関する。本発明の1つの局面においては、履物の履物底構造は、連結部分と、複数の不連続な履物底要素とを含む。連結部分は、履物底構造の長手に沿って長手方向に延びている。不連続な履物底要素は、連結部分から下に向かって延びているとともに、履物底構造内に上に向かって延びる複数のサイプによって分離されている。複数のサイプは、履物底構造に関して長手方向に延びる第一のサイプおよび第二のサイプを有している。履物底構造の前方領域は、第一および第二のサイプのカーブし大略的に平行な部分を含む。
【0011】
上記履物を製造するための方法は、履物底構造の大略的な形状を有する金型であって、複数の刃を含む金型を提供することと、金型内で刃の周囲にポリマー材料を配置して履物底構造を形成することと、履物底構造を金型から取り出すこととを含む。
履物は、伸縮可能なアッパーと、分節された履物底構造とを有してもよい。この場合、アッパーは外部層と内部層とを含んでもよい。外部層はアッパーの外側の少なくとも一部を形成し、また外部層は外部層を貫通して延びる複数の切込みを含んでもよい。内部層は外部層の内側表面の少なくとも一部に隣接して位置していてもよく、また内部層は前記切込みの少なくとも一部を通して露出していてもよい。
【0012】
前記切込みは第一のグループと第二のグループとを含むことができる。第一のグループはアッパーの内側部と外側部との間に延びる方向における伸縮を可能にするような向きとされ、また切込みの第二のグループは内側部に隣接してアッパーの前方領域内に位置することができる。
また、履物底構造は連結部分と複数の不連続な履物底要素とを含んでもよい。連結部分はアッパーに隣接して位置し、アッパーの長手方向に沿って延びていてもよい。履物底要素は連結部分から下に向かって延び、また履物底要素は上に向かってミッドソール内に延びる複数のサイプによって分離されていてもよい。
【0013】
連結部分は、厚みが異なるように構成してもよい。そのため連結部分は履物の前方領域では第一の厚みを示してもよく、履物の中間領域では第二の厚みを示してもよく、そして履物の踵部分では第三の厚みを示してもよく、ここで第一および第三の厚みは第二の厚みよりも小さくてもよい。更にサイプは第一のサイプ、第二のサイプおよび複数の第三のサイプを含んでもよい。第一のサイプは長手方向に向けられ、ミッドソールの全長にわたって延びていてもよい。第二のサイプは長手方向に延びてミッドソールの全長の一部分だけを通ってもよい。第三のサイプはミッドソールの内側部から外側部に向かって横向きに延びてもよい。
【0014】
本発明を特徴付ける新規性の利点および特徴を、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘する。しかし新規性の利点および特徴をよりよく理解するために、本発明に関する様々な実施形態および概念を説明し、示す下記の記述および添付図面を参照する。
本発明の上記の概要および以下の詳細な説明は、添付の図面を参照して読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】靴の外側部の立面図である。
【図2】靴の内側部の立面図である。
【図3】靴の上から見た平面図である。
【図4A】靴の図3における切断線4A−4Aに沿った第一の横断面図である。
【図4B】靴の図3における切断線4B−4Bに沿った第二の横断面図である。
【図5】靴の後部の立面図である。
【図6】足を収容したときの靴の状態を示す外側部の立面図である。
【図7】靴を曲げた状態を示す部分的な外側部の立面図である。
【図8】靴底構造の底から見た平面図である。
【図9A】靴底構造の図8における切断線9A−9Aに沿った第一の横断面図である。
【図9B】靴底構造の図8における切断線9B−9Bに沿った第二の横断面図である。
【図9C】靴底構造の図8における切断線9C−9Cに沿った第三の横断面図である。
【図9D】靴底構造の図8における切断線9D−9Dに沿った第四の横断面図である。
【図9E】靴底構造の図8における切断線9E−9Eに沿った第五の横断面図である。
【図9F】靴底構造の図8における切断線9F−9Fに沿った第六の横断面図である。
【図9G】靴底構造の図8における切断線9G−9Gに沿った第七の横断面図である。
【図10A】図8における切断線9A−9Aの位置に対応する別の実施形態の横断面図である。
【図11】靴のインソール部分の底から見た平面図である。
【図12】靴の別のインソール部分の底から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記の記述および添付図面により、本発明による靴(履物)10を開示する。図面および以下の説明において、靴10は運動、特にランニングに適した構成を有するものとして示される。ただし靴10に関して開示される概念は、例えばバスケットボール、野球、フットボール、サッカー、ウォーキングおよびハイキングを含む広範囲の運動のために特に設計された靴のスタイルに適用でき、また運動以外に使用される靴(履物)の様々なスタイルにも適用できる。従って当業者であれば、ここに開示される概念は広範囲の履物のスタイルに適用でき、また以下で説明し図面に示した特定の実施形態に限定されないことを理解するであろう。
【0017】
靴10は図1〜図7に図示するように、アッパー20と靴底構造30とを含む。アッパー20は互いに縫い合わせ、または接着剤で結合された様々な材料要素から形成され、足を快適に収容し、また靴底構造30に対する足の相対的な位置を固定する内部の空洞を形成する。靴底構造30はアッパー20の下側部分に固定され、靴10が地面に当たるときの地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収する(すなわちクッション作用を与える)ための耐久性と耐摩耗性とを有する部品を構成する。
【0018】
多くの通常の靴が、ランニングおよびその他の運動中の足の動きを制御する構成を有する。例えばある従来の靴底構造は比較的剛性が高い、すなわち曲がりにくい構造を有し、足の自然な動きを阻害する。アッパー20と靴底構造30とは、協働して分節結合し、たわみ、伸縮しまたはその他の動きにより使用者に自然で裸足で走っているような感覚を与えるような構造を有する。すなわち、アッパー20と靴底構造30とはランニングその他の運動の間の足の自然な動きを補完するように構成される。しかし裸足で走る場合と違い、靴底構造30は地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収して足にクッション作用を与え、足にかかる全体的なストレスを低減する。
【0019】
参考として、靴10は図1および図2に示すように前方領域11、中間領域12および踵領域13という3つの一般的な領域に分けられる。領域11〜13は、靴10の正確な領域を区分するものではない。そうではなく、領域11〜13は以下の説明のための参照の枠組みとして、靴10の一般的な各領域を表すものである。領域11〜13は靴10の全体に適用されるものであるが、領域11〜13を参照する場合は、アッパー20、靴底構造30、もしくはアッパー20または靴底構造30のいずれかの内部の個々の部品または部分に特に該当する場合もある。
【0020】
以下でより詳細に説明することになるアッパー20を形成する様々な材料要素が組み合わされて、アッパー20の内部に空洞を形成する外側部21、反対側の内側部22、ベロ23および永続的な(耐久力のある)内部ライニング(底敷き)24を有する構造を形成する。外側部21は領域11〜13の各々を通って延び、一般に足の外側面に接触してそれを覆うように構成されている。外側部21の一部は足の甲の上に延設され、ベロ23の外側部に重なる。内側部22は足の内側部表面に大略的に対応する同様の形状を有する。内側面22の一部もまた足の甲の上に延設され、ベロ23の反対側の内側面に重なる。更に外側部21、内側部22およびベロ23は協働して踵領域13内に足首の開口部25を形成して、足がアッパー20内の空洞に入れるようにする。
【0021】
ベロ23はアッパー20に沿って長手方向に延設され、足の甲部分に接触するように配置される。ベロ23の両脇部分は外側部21および内側部22の各々の内部表面に固定されている。靴紐26はベロ23の上に延び、外側部21および内側部22に形成された開口部を通っている。ベロ23は靴紐26の下に延設されて足の甲部分から靴紐26を分離する。靴紐26の張力を強めることにより、外側部21および内側部22内の張力を増加して、外側部21および内側部22を足に接触させることができる。同様に、靴紐26の張力を弱めることにより、外側部21および内側部22内の張力を低減して、アッパー20内に足のための追加の容積を与えることができる。従ってこの一般的な構成により、アッパー20のフィッティングを調節して様々な足の寸法を収容するメカニズムが提供される。
【0022】
アッパー20には、通常靴のアッパーに使用される材料を含む様々な材料が適している。従ってアッパー20は、皮、合成皮革、天然もしくは合成繊維、ポリマーシート、ポリマー発泡材料、メッシュ状織物、フェルト、ポリマー不織布またはゴムのような材料の組み合わせで形成できる。アッパー20の露出した部分は、互いに縫い合わせ、または接着剤で貼り合わせた、同じ範囲を占める2枚の材料層で形成されている。図4Aおよび図4Bに図示するように、これらの層は外部層14および隣接する内部層15を含む。外部層14はアッパー20の外部に位置し、かつ内部層15はアッパー20の内部に位置することで、アッパー20内の空洞の表面を構成する。永続的な内部ライニング24は、層14および15の下端に固定されて靴底構造30の上側表面に沿って延設されている。
【0023】
層14および15を形成する材料は、アッパー20の異なる部分で違っていてよく、アッパー20のある部分には層14および15の1つだけ、またはそれ以上が存在できる。前方領域11と中間領域12とを通って延びる外側部21および内側部22の各部分に関しては、外部層14に適した材料は様々な繊維の織布または不織布、皮、合成皮革または単一層のメッシュであり、内部層15も同様の材料で形成できる。ベロ23および足首の開口部26の周囲の部分を形成する材料は上記の材料とは異なっていてもよい。例えば外部層14は複数の結合繊維によって互いに結合された2つの間隔を開けた繊維層を含む材料から形成できる。繊維層の一方または両方をメッシュ状材料として、この部分におけるアッパー20の通気性を高くしてもよい。更に外部層14および内部層15の間に発泡材料を挟んでもよい。
【0024】
上で述べた各部分は層14および15の両方で構成されるが、アッパー20の一部は単一層を含むだけでよい。図4Bおよび図5を参照して、踵領域13内に位置されて踵領域13の後部の周囲に延びるアッパー20の部分は、内部層15のみから形成されている。すなわち、踵領域13のこの部分には外部層14は存在せず、内部層15がアッパー20の外部と内部との両方を形成する。しかし本発明のいくつかの実施形態では、踵領域13内のアッパー20の部分は、例えば半硬質ポリマー材料で形成された従来の踵部カウンターを組み込み、踵がアッパー20に関して適切な位置を保つことを保証するようにできる。踵部カウンターはアッパー20の外部の上、またはアッパー20を形成する様々な材料要素の中に位置することができる。しかし以下で説明するように、アッパー20と靴底構造30との構成は、踵部カウンターの存在を必要とするものではない。
【0025】
上の議論に基づき、アッパー20の様々な部分は層14および15を形成する各材料の異なる組み合わせを含む。例えばベロ23の領域と足首の開口部26の周囲とで外部層14と内部層15とを形成する材料は、前方領域11と中間領域12とを通って延びる外側部21および内側部22の部分内の外部層14と内部層15とを形成する材料とは異なっていてもよい。ただし図に示すように、内部層15を形成する材料はこれらの部分の両方を通じて同じであり、同一の材料が踵領域13の最も後ろの部分の周囲に延設される。そのため同一の材料でアッパー20の内部表面のかなりの部分を形成してもよい。しかし別の実施形態では、内部層15の異なる部分に異なる材料を使用してもよく、またアッパー20が2つよりも多くの材料層を含んでもよい。
【0026】
外部層14は内部層15の下部を露出させる複数の切込み27aおよび27bを含む。内部層15を露出させることにより、アッパー20の伸縮特性が選択的に調整される。切込み27aおよび27bが存在しない部分では、層14および15の各々がアッパー20の引き伸ばしに抵抗するように貢献する。しかし切込み27aおよび27bがある部分では、切込み27aおよび27bは外部層14がもっと大幅に延びることを可能にする。そのため切込み27aおよび27bは、アッパー20の特定の部分における伸縮度を選択的に変化させるようにアッパー20内に形成される。更に切込み27aおよび27bは、アッパー20の通気性、柔軟性および全体的な美観(色など)を変更するために利用することができる。
【0027】
図1〜図3において切込み27aおよび27bは、前方領域11と中間領域12とを通って延びる外側部21および内側部22の各部分にわたって分布しているものとして図示されている。一般に切込み27aは線状の形状を有し、靴10の長手方向に延びる方向に向けられている。つまり切込み27aは前方領域11と踵領域13との間に延びる方向に向けられている。ただし母指に対応する前方領域11の一部では、切込み27bは横方向に延設されている。
【0028】
切込み27aおよび27bの向きは、切込み27aおよび27bによってもたらされる伸縮の方向に影響を与える。一般に切込み27aおよび27bは、切込み27aおよび27bの長手方向に対応する方向における伸縮を増加させない。つまり、特定の切込み27aおよび27bは、その切込み27と平行な方向における伸びを増大させることはない。しかし切込み27aおよび27bは、切込み27aおよび27bの長手方向と垂直な方向におけるアッパー20の伸縮は増大させる。
【0029】
切込み27aは長手方向に延びるスリット列を形成するものとして図示されており、隣接する列の切込み27aは互いにずらされている。同様に、切込み27bは横方向に延びるスリット列を形成するものとして図示されており、隣接する列の切込み27bは互いにずらされている。ただし様々な切込み27aおよび27bをその他の配列でアッパー20に追加することもできる。例えば切込み27aおよび27bをずらして列を形成しないようにしてもよく、または切込み27aおよび27bをアッパー20に関してランダムに配置してもよい。
【0030】
切込み27aは上で説明したように、靴10に関して長手方向に向けられている。図6に示したように足をアッパー20の中に入れて、アッパー20、特に外部層14に対して伸ばす力を加えると、切込み27aはアッパー20の周囲長さを増加させるようにアッパー20が延びることを可能にする。すなわち切込み27aは、切込み27aの長手方向に垂直な方向に延びる。切込み27bも同様に延びる。しかし上で説明したように、切込み27bは横方向に向いている。そのため切込み27bは長手方向に延びる。
【0031】
切込み27aおよび27bは、外部層14内への線状の切込みとして図示されている。切込み27aおよび27bの1つまたはそれ以上に対して、大略的に垂直な方向に外部層14に対して伸ばす力が働くと、切込み27aおよび27bの縁が分離して、図6に示すようにとがった端部を有する大略的に楕円形を形成する。切込み27aおよび27bは比較的直線的で短い形態を有するものとして図示されている。しかし本発明の範囲内において、切込み27aおよび27bは直線的または曲線の形状を示すことができ、例えば個々の切込み27aおよび27bの長さを変更することができる。切込み27aおよび27bの形状および長さの違いを利用して、アッパー20の伸びの程度、アッパー20の通気性およびアッパー20の柔軟性と全体の美観とを調整することができる。切込み27aおよび27bの形状および長さを決めるときに考慮すべき要因には、例えばアッパー20内で使用される材料、各材料の固有の伸び率、および伸びが望まれる方向が含まれる。
【0032】
従来のアッパーを形成する材料は互いに縫い合わされることが多く、また接着により材料の同じ範囲の部分を互いに固定することもできる。従来のアッパーの場合と同様に、層14および15は同じ範囲を占める仕方で位置され、互いに接着することができる。しかしいくつかの実施形態では、層14および15は接着されずに分離していてもよい。すなわち層14および15は互いに隣接して位置されるが、縁または応力点以外では互いに固定されていなくてもよく、例えば切込み27aおよび27bの近傍部分では内部層15が外部層14に固定されないようにできる。この構成の利点は、外部層14が内部層15とは独立に伸びて移動できることである。すなわち切込み27aおよび27bは、層14および15の間の接着を通じて大幅には妨げられない外部層14の伸びを可能にする。一般に層14および15は、切込み27aおよび27bを含む部分では、互いに接着その他により固定しなくてもよい。
【0033】
切込み27aおよび27bは外部層14内に形成されるように図示されている。しかし本発明の範囲内で、切込み27aおよび27bはまた層14および15の一方または両方に形成してもよい。例えば切込み27aおよび27bは、外部層14のみ、または外部層14と内部層15との両方に、または内部層15のみに形成してもよい。層14および15の両方が切込み27aおよび27bを含む実施形態では、切込み27aおよび27bの位置を合わせてもまたずらしてもよい。従ってこれまでの説明に基づき、切込み27aおよび27bの形状は本発明の範囲内で大幅に変えることが出来る。
【0034】
切込み27aおよび27bは様々な方法で形成できる。例えばダイス(打ち抜き型)、ナイフまたはかみそりのような切断器具を用いて、切込み27aおよび27bを形成することができる。切断器具のほかに、レーザー装置を使って切込み27aおよび27bを形成し、かつ外部層14を大きな材料要素から除去することができる。従って切込み27aおよび27bは、レーザーを外部層14に照射して、切込み27aおよび27bに対応する部分を外部層14から除去することで形成できる。切込み27aおよび27bの幅はレーザーの幅とほぼ一致する。あるいはまた、レーザーを何度も通過させることでもっと幅の大きい切込み27aおよび27bを形成することもできる。レーザー装置は、出力を調整することにより可変強度のレーザービームを発生する能力を有することができる。出力を調整することに加えて、レーザービームの焦点と、外部層14に対するレーザービームの速度も変えることが出来る。適切なレーザー装置の例としては参照により本明細書に組み入れた、Costinに対する上記特許文献10および上記特許文献11に開示されているように、通常のCO2またはNd:YAGレーザー装置の任意のものである。
【0035】
靴のアッパーに組み込まれることの多い合成皮革、皮、ポリマーシートおよびポリマー繊維などの材料の場合、切込み27aおよび27bを形成するためのレーザービームの出力は一般に、例えば0.25から25ワットの範囲である。レーザービームが比較的狭い焦点を有する場合は、レーザービームの単位面積当たりのエネルギー密度が高いことを考慮して、レーザービームの出力を下げればよい。同様に、レーザービームが比較的広い焦点を有する場合は、レーザービームの単位面積当たりのエネルギー密度が低いことを考慮して、レーザービームの出力を上げればよい。レーザービームの焦点および出力を考慮するには、レーザービームの速度の変更を利用できる。合成皮革、皮またはポリマー繊維などの材料に切込み27aおよび27bを形成するには、比較的小さな出力でよいが、高密度のポリマーのような他の材料に同じ深さで切込み27aおよび27bを形成するには、もっと大きな出力を要する可能性がある。そのため、切込み27aおよび27bを形成するためのレーザービームの適切な出力、焦点および/または速度を決定するには多くの要因が考慮される。
【0036】
レーザー装置には、外部層14に隣接して移動しながら外部層14内に切込み27aおよび27bを形成するレーザービームの照射装置を含むことができる。すなわち外部層14に対するレーザー装置の相対的な運動により、それぞれの切込み27aおよび27bの形状を制御することができる。あるいは、1つ以上の移動可能または軸回動可能な鏡でレーザービームを反射して、鏡の移動によって外部層14内の切込み27aおよび27bの形状を制御することもできる。
【0037】
外部層14内の選択された領域をレーザービームで加熱し、外部層14の選択された部分を焼く(灰化する)ことで切込み27aおよび27bを形成する。外部層14の他の領域が誤って焼かれるのを防ぐために、二酸化炭素や窒素のような非可燃性の流体の存在下で切込み27aおよび27bを形成してもよい。すなわち、レーザービームが切込み27aおよび27bを形成する際に非可燃性の流体を放出するようにレーザー装置を構成してもよい。
【0038】
一旦外部層14内に切込み27aおよび27bが形成されると、アッパー20内の空洞に足の一般的な形状を与える靴型の周囲でアッパー20の各要素が結び付けられる。すなわち、前方領域11から踵の領域13にかけて延設されたアッパー20の外側部21と内側部22とを形成する靴型の周囲で各要素が互いに結び付けられる。加えて、例えばベロ23と靴紐部26とを含むように甲部分が形成され、踵領域13内に足首の開口部25が形成される。永続的な内部ライニング24も外側部21および内側部22の下端に固定され、永続的な内部ライニング24は靴型の下に延びてアッパー20内の空洞の下側表面を形成する。次に靴底構造30の一部分が永続的な内部ライニング24を含むアッパー20の下側部分に恒久的に固定される。アッパー20と靴底構造30との結合には、接着剤、縫合または接着剤と縫合との組み合わせを利用できる。このようにして、概略従来の工程によってアッパー20が靴底構造30に固定される。
【0039】
靴底構造30はインソール31(以下で詳細に説明する)、ミッドソール32、およびアウトソール33を含む。インソール30はアッパー20の内部に位置し、足の裏側(下側)表面に接触するために永続的な内部ライニング24の上側表面に隣接して配置され、靴10の快適性を向上させる。ミッドソール32は永続的な内部ライニング24を含むアッパー20の下側部分に固定され、使用中は足の下に延びるように位置する。ミッドソール32は例えばウォーキングまたはランニング中の地面反力を減衰させてエネルギーを吸収する(クッション作用を与える)など様々な目的を果たす。ミッドソール32に適した材料は、エチルビニルアセテートまたはポリウレタン発泡体など、靴のミッドソールに使用される従来のポリマー発泡材料のいずれでもよい。ミッドソール32はまた、Bayer AG社によってBAYFLEXという商標名で製造されている比重約0.22の比較的軽量のポリウレタン発泡体で形成してもよい。アウトソール33はミッドソール32の下側表面に固定されて耐摩耗性を与えるが、アウトソール33はミッドソール32内に埋め込まれていてもよい。アウトソール33はミッドソール32の下側表面全体にわたって延設してもよいが、図に示された特定の実施形態においてはアウトソール33は踵領域13の中に位置する。アウトソール33に適した材料は、カーボンブラック・ゴム組成物など、靴のアウトソールに使用される従来のゴム系材料のいずれをも含む。
【0040】
通常の靴のミッドソールは足の長さにわたって延びる発泡ポリマー製の単一構造であり、足の自然な動きを阻害する剛性すなわち非柔軟性を有することがある。通常の靴のミッドソールとは異なり、ミッドソール32は比較的高い柔軟性と分節結合とを与える分節構造を有する。ミッドソール32の柔軟な構造は(アッパー20の構造と組み合わされて)、ランニングその他の運動の間の足の自然な動きを補完するように構成され、裸足で走っているような感覚を与えることができる。しかし裸足で走る場合と違い、ミッドソール32は地面反力を減衰させてエネルギーを吸収し、足に対するクッション作用を与えて足への全体的なストレスを軽減する。
【0041】
ミッドソール32は連結部分40とサイプ(溝)部50を含む。連結部分40は上側表面41およびその反対側の下側表面42を形成する。上側表面41はアッパー20に隣接して配置され、アッパー20に直接固定することができ、それによって足を支える。そのため上側表面41は、足の自然な解剖学的な形状に適合するように形成される。従って踵領域13内に配置された上側表面41の部分は、前方領域11内の上側表面41の部分よりも大きな高度を有することができる。更に上側表面41は中間領域12内にアーチ支持部を形成することができ、上側表面41の周辺領域は一般に高くして、足を受け入れて落ち着かせるためのくぼみを与える。別の実施形態では、上側表面41は輪郭を付けない形状を有することができる。
【0042】
上側表面41と下側表面42との間に延びる寸法として規定される連結部分40の厚みは、ミッドソール32の長手方向に沿って変化することができる。図9Aでは厚みは寸法43a〜43cとして図示されている。前方領域11内に規定される寸法43aは例えば約3mmであり、1mm〜5mmの範囲内であってもよい。中間領域12内に規定される寸法43bは例えば約8mmであり、1mm〜11mmの範囲内であってよい。同様に踵領域13内に規定される寸法43cは例えば約6mmであり、1mm〜10mmの範囲内であってよい。従って連結部分40の厚みは、前方領域11および踵領域13から中間領域12に向かう各方向に増加することができる。しかし当業者であれば、様々な厚み寸法および変形が連結部分40に対して適切であることを理解するであろう。
【0043】
比較的小さな厚みを示す連結部分40の部分は一般に、より大きな厚みを示す連結部40の部分よりも高い柔軟性を有する。従って連結部40の部分の厚みの変化を利用して、特定部分における靴底構造30の柔軟性を変化させることができる。例えば厚みの小さな連結部分40を形成することにより、前方領域11は比較的高い柔軟性を有するように構成できる。厚みの大きな連結部分40を形成することにより、中間領域12に比較的低い柔軟性を与えることができる。同様に、前方領域11と中間領域12との中間の厚みを有する連結部分40を形成することにより、踵領域13に中間の柔軟性を与えることができる。
【0044】
サイプ部50は複数のサイプ(溝)52a〜52lによって分離される複数の個別の分離した靴底要素51を形成する。靴底要素51は、連結部分40から下向きに延びるミッドソール30の不連続な部分である。更に靴底要素51は連結部分40に固定されており、また連結部分40と一体に形成することもできる。各靴底要素51の形状は、サイプ52a〜52lの位置によって決定される。図8に示すように、サイプ52aおよび52bは靴底構造30の長手方向に沿って延び、またサイプ52c〜52lは大略的に横方向に延びる。サイプ52a〜52lをこのように配置することで、大略的に正方形、長方形または台形をなす靴底要素51の大多数が形成される。最も後方の靴底要素51は、踵領域13内の靴底構造30の曲面形状のために、円周の4分の1の形状を有する。
【0045】
下側表面40とミッドソール32の下側表面との間に延びる寸法として規定されるサイプ部50の厚みは、ミッドソール32の長手方向に沿って変化させてもよい。この厚みは、図9Aにおいて寸法53aおよび53cとして図示されている。前方領域11内で規定される寸法53aは例えば約7mmで、3mm〜12mmの範囲内であってもよい。同様に踵領域13内で規定される寸法53cは例えば約12mmであり、8mm〜20mmの範囲内であってもよい。従ってサイプ部50の厚みは、前方領域11から踵領域13に延びる方向に増加することができる。しかし当業者であれば、様々な厚み寸法および変形がサイプ部50に対して適切であることを理解するであろう。
【0046】
寸法43aおよび53aの組み合わせにより、前方領域11内でのミッドソール32の全体の厚みが形成される。同様に、寸法43cおよび53cの組み合わせにより、踵領域13内でのミッドソール32の全体の厚みが形成される。靴10の構成は男性用および女性用の靴でほぼ同じであるが、実験によれば男性は一般に女性よりも全体としての厚みの違いが小さい方を好むことが分かった。従って、男性用に設計された靴10の前方領域11内での全体の厚みを10mmとし、踵領域13内での全体の厚みを18mmとして、8mmの差をつけることができる。しかし女性用に設計された靴10では、前方領域11内での全体の厚みは同じく10mmであるが、踵領域13内での全体の厚みを22mmとして、12mmの差をつけることができる。従って女性用に設計された靴10では、前方領域11と踵領域13との間の全体の厚みの差は男性用の厚みの差よりも大きくできる。靴10に大きな厚みの差を与えるには、例えば踵領域13内に位置される靴底要素51の厚みを大きくすればよい。
【0047】
上で述べたように、靴底要素51の各々の形状は、上に向かってミッドソール32内に延び、かつ各靴底要素51の間で延びる切れ目または空間であるサイプ52a〜52lの位置によって決定される。サイプ52a〜52lはまた、ミッドソール32内の分節構造を形成することにより、靴底構造30の柔軟性を高める。通常の靴のミッドソールは発泡ポリマーからなる一体の(まとまった)要素であるが、サイプ52a〜52lは靴底構造30内に屈曲線を形成し、したがってミッドソール32内の曲がりの方向に影響を与える。サイプ52a〜52lの影響で靴底構造30が曲がりまたは分節結合する仕方を、図7に図式的に示す。
【0048】
靴底構造30の横方向の柔軟性(すなわち外側部と内側部との間に延びる方向での柔軟性)は、サイプ52aおよび52bによって与えられる。サイプ52aは3つの領域11〜13の全てを通って長手方向に延びる。サイプ52aは直線つまり線形の形状を有することができるが、サイプ52aは一般にカーブした、またはs字形状を有するものとして図示されている。前方領域11と中間領域12とでは、サイプ52aは靴底構造30の外側部から内側に向かって間隔を開けて配置され、またサイプ52aは踵領域13内で中央に位置する。前方領域11内および中間領域12の一部にのみ位置されるサイプ52bは中央に位置され、かつ一般にサイプ52aと平行な方向に延びる。一般にサイプ52aおよび52bの深さは、サイプ52aおよび52bが前方領域11から踵領域13に向かって延びるに従って大きくなる。
【0049】
靴底構造30の長手方向の柔軟性(すなわち領域11と領域13との間に延びる方向における柔軟性)は、サイプ52c〜52lによって与えられる。サイプ52c〜52fは前方領域11内に位置しており、サイプ52gは大略的に前方領域11と中間領域12との間の界面に沿って延び、サイプ52hおよび52iは中間領域12内に位置し、サイプ52jは大略的に中間領域12と踵領域13との間の界面に沿って延び、そしてサイプ52kおよび52lは踵領域13内に位置する。図8を参照して、サイプ52i〜52lはほぼ平行であり、内側部から外側部に向かう方向に延びている。サイプ52c〜52hもほぼ平行であり、内側部から外側部に向かう方向に延びる形状を有するが、サイプ52c〜52hはサイプ52i〜52lに関して多少角度をなしている。
【0050】
サイプ52a〜52lの位置と向きとは、ランニングのサイクルの間の足の自然な動きを補完するように選択される。一般に、ランニング中の足の動きは次のように進行する。最初に踵が地面に当たり、それに続いて親指の付け根が地面に当たる。踵が地面を離れるときに足は前方に向かってローリング運動を行ってつま先が接地し、最後に足全体が地面を離れて次のサイクルを開始する。足が地面に接している間に、足は通常外側すなわち外側部から内側すなわち内側部に向かってローリングする、回内動作と呼ばれるプロセスが行なわれる。すなわち通常は、踵の外側が最初に当たり、足の内側のつま先が最後に地面から離れる。サイプ52c〜52lは、足が中立的な接地位置に止まることを保証すると同時に、足が地面に接した状態で中立的な前方へのローリングを行なう運動を補完する。サイプ52aおよび52bは、ランニングのサイクル中に足が自然に回内動作をすることができるように、横方向の柔軟性を与える。同様に、サイプ52c〜52hの角度をつけた構成が上で述べたように、足の自然な動きを更に強める柔軟性を更に加える。
【0051】
サイプ52eは、前方領域11内での逆方向の屈曲ができるように、他のサイプ52a〜52dおよびサイプ52f〜52lよりも大きな幅を有する。一般に、サイプ52a〜52lは図7に示すように靴底構造30の上向きの曲がりを可能にする。ランニングサイクルの終わりに(つまりつま先が地面を離れる前に)更に地面捕捉力を与えるために、人は足底の屈曲で足指を曲げるかその他の仕方でつま先を地面に押し付ける可能性がある。サイプ52eが広くなっていることにより足底の屈曲が容易になり、それによりランニング中の足の自然な動きが促進される。すなわち、サイプ52eはミッドソール32内に逆屈曲溝を形成している。実験の解析によれば、男性は前方領域内で足底の屈曲を起こす傾向が女性よりも低いことが分かっている。女性における足底の屈曲を起こす高い傾向を助けるために、女性用に設計された靴10には更に幅の広いサイプ52eを持たせるか、またはサイプ52dの幅も大きくすることができる。従って女性用に設計された靴10では、図10Aの断面図で示されるようにサイプ52dおよびサイプ52eの両方の幅を広くすることができる。
【0052】
アウトソール33は選択された靴底要素51の下側表面に固定された複数のアウトソール要素を含み、また選択された靴底要素51の下側表面にアウトソール要素を受けるためのくぼみが形成されている。図に示されているように、アウトソール33は踵領域13に制限されている。しかしある実施形態では、各靴底要素51を1つのアウトソール要素に関連付けるか、またはアウトソール33をミッドソール32の下側表面全体にわたって延設することもできる。
【0053】
ミッドソール32を形成するには複数の製造方法を好適に使用できる。例えばミッドソール32を一体の要素として形成し、その後サイプ52a〜52lを切込み工程によって形成してもよい。ミッドソール32を成型し、その成型過程でサイプ52a〜52lが形成されるようにしてもよい。ミッドソール32に対する適切な成型方法には例えば、射出成型、注入法、圧縮成型などがある。それぞれの成型方法において、ミッドソール32の一般的な形状を有する金型の中に発泡ポリマー樹脂が注入される。金型はサイプ52a〜52lの位置に対応する薄い刃を含む。ポリマー樹脂は金型内および各々の刃の周囲に配置される。材料が硬化するとミッドソール32は金型から取り出され、成型工程の間にサイプ52a〜52lが形成される。サイプ52a〜52lの幅は金型内の刃の厚みを調整することにより制御される。そのため、例えばサイプ52eの逆屈曲特性はサイプ52eを形成する刃の厚みによって調整でき、また他のサイプ52a〜52dおよびサイプ52f〜52lが逆方向に屈曲する程度は対応する刃の厚みにより制御できる。サイプ52a〜52dおよびサイプ52f〜52lを形成する刃に対する適切な厚みの範囲は0.2mm〜0.3mmであり、これにより比較的小さな逆屈曲が得られる。同様に、サイプ52eを形成する金型の部分に対する適切な幅の範囲は3mm〜5mmであり、これによりもっと大きな逆屈曲が得られる。
【0054】
アッパー20と靴底構造30とは互いに協調して屈曲し、伸び、またはその他の動きを行なって裸足で走るような自然な感覚を与えるような構造を有する。すなわちアッパー20と靴底構造30とは、ランニングその他の運動中の足の自然な動きを補完するように構成されている。上で述べたように、外部層14は複数の切込み27aおよび27bを含み、これらが特定の部分および特定の方向におけるアッパー20の伸縮特性を高める。切込み27aは例えばアッパー20の周囲長の伸びを許すような方向に向けられ、切込み27bは母指の動きと足裏の屈曲を容易にすることができる。切込み27aおよび27bはまた、一般により柔軟性が高い構造をアッパー20に与え、これが靴底構造30の柔軟性を補完する。上で述べたように、ミッドソール32は靴底構造30の屈曲特性を高める複数のサイプ52a〜52lを含む。サイプ52a〜52lの位置、向きおよび深さは、選択された部位および方向において特定の程度の柔軟性を与えるように選択される。すなわちサイプ52a〜52lは、使用者に裸足で走るような自然な感覚を与えるために利用できる。しかし裸足で走るのとは異なり、靴底構造30が地面からの反力を減衰させてエネルギーを吸収し、足に対するクッション作用を与えて足への全体的なストレスを軽減する。
【0055】
上で述べたように、通常の靴底構造は比較的剛性の高い、つまり曲がりにくい構造を有し、それが足の自然な動きを阻害する可能性がある。例えばランニングサイクル中に踵が地面から離れる段階で、足は屈曲しようとするかもしれない。曲がりにくいミッドソール構造と従来の踵カウンターとの組み合わせは、足の屈曲に抵抗するように働く。それに対して靴10は足と共に屈曲し、また従来の踵カウンターを組み込まない構成とすることができる。
【0056】
靴底構造30全体としての柔軟性は、インソール31の構造により向上させることができる。図11を参照して、インソール31の下側表面は一般にサイプ52a〜52lの位置および形状に対応する複数の屈曲線34a〜34lを有するとして図示されている。より具体的には、屈曲線34aはインソール31のほぼ全長にわたって長手方向に延びて、大略的にサイプ52aの位置に対応する。屈曲線34bはインソール31の長さの一部のみにわたって長手方向に延びて、ほぼサイプ52bの位置に対応する。同様に、屈曲線34c〜34lはインソール31の内側部から外側部へ横方向に延び、かつほぼサイプ52c〜52lの位置に対応する。この構成により、靴底構造30の柔軟性が高まり、またサイプ52a〜52lがもたらす分節構造が強められる。同様の構造を示す図12において、インソール31’は複数の屈曲線34a’〜34l’と、圧縮可能な発泡ポリマーで形成された2つのクッションパッド35a’および35b’を含む。
【0057】
図面に示された靴10の構造および形状について詳細に説明してきた。本発明の範囲から逸脱することなく、靴10に様々な変更を行なうことができる。例えば切込み27aおよび27bを、層14および15のいずれか、または層14および15の両方に形成することができる。切込み27aおよび27bはまた、異なる向きまたは位置に形成して異なる伸縮特性を与え、またはアッパー20内に従来の踵カウンターを組み込んでもよい。靴底構造30に関して、連結部分40の厚みまたはミッドソール32全体の厚みは大幅に変化させることができる。更にまたサイプ52a〜52lの深さ、向きおよび位置を変更してもよい。
【0058】
本発明の様々な実施形態を、上の説明と添付図面とで開示した。しかしこの開示の目的は、本発明の範囲を制限することではなく、本発明に関する様々な特徴および概念の例を示すことである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲から逸脱することなく、上で述べた実施形態に対して多くの変形や変更を行なえること認識するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分節された履物底構造を有する履物であって、前記履物底構造が、
連結部分と、
複数の不連続な履物底要素とを含み、
前記連結部分が、前記履物底構造の長手に沿って長手方向に延びており、
前記不連続な履物底要素が、前記連結部分から下に向かって延びているとともに、前記履物底構造内に上に向かって延びる複数のサイプによって分離されており、
前記複数のサイプが、前記履物底構造に関して長手方向に延びる第一のサイプおよび第二のサイプを有しており、
前記履物底構造の前方領域が、前記第一および第二のサイプのカーブし大略的に平行な部分を含む履物。
【請求項2】
前記第一のサイプが、前記前方領域内において前記履物底構造の内側部よりも前記履物底構造の外側部の近くに位置しており、
前記第一のサイプが前記履物底構造の中間領域を通って延びており、
前記第二のサイプが前記第一のサイプと前記内側部との間に位置しており、
前記複数のサイプが、前記外側部から前記内側部に向かって延びる複数の第三のサイプを含み、前記第三のサイプの少なくとも1つが前記前方領域内で前記第一および第二のサイプと交差している、請求項1記載の履物。
【請求項3】
前記第三のサイプの第一の部分が前記前方領域内に位置し、前記第三のサイプの第二の部分が前記履物底構造の踵領域内に位置し、前記第三のサイプの前記第一の部分が前記第三のサイプの前記第二の部分に対して角度が付けられている、請求項2記載の履物。
【請求項4】
前記第三のサイプの少なくとも1つの幅が前記第三のサイプの他のものよりも大きい、請求項2または3に記載の履物。
【請求項5】
前記複数の第三のサイプが少なくとも10個のサイプである、請求項2ないし4のいずれか一項に記載の履物。
【請求項6】
前記第一のサイプがS字形状を示している、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の履物。
【請求項7】
前記第一のサイプが前記前方領域から前記履物底構造の踵領域に向かって延びるに従って前記第一のサイプの深さが増加する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の履物。
【請求項8】
前記第二のサイプが少なくとも前記前方領域内に位置し、かつ前記第二のサイプが前記履物底構造の外側部と前記履物底構造の内側部との間でほぼ中央に位置している、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の履物。
【請求項9】
前記履物底構造の踵領域内において、前記第一のサイプが前記履物底構造の外側部と前記履物底構造の内側部との間でほぼ中央に位置している、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の履物。
【請求項10】
前記履物底構造の下側表面に固定されたアウトソール要素を有する、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の履物。
【請求項11】
前記履物底構造の前記下側表面に固定された複数のアウトソール要素を有し、前記アウトソール要素の各々が不連続な履物底要素に固定されている、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の履物。
【請求項12】
前記複数のアウトソール要素のうち少なくとも2つのアウトソール要素が前記履物底構造の踵領域内で不連続な履物底要素に固定されている、請求項11記載の履物。
【請求項13】
前記サイプが前記履物底構造の前記下側表面に対して実質的に垂直である、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の履物。
【請求項14】
前記履物底構造に固定されたアッパーを更に有する、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の履物。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の履物を製造する方法であって、
前記履物底構造の大略的な形状を有する金型であって、複数の刃を含む金型を提供することと、
前記金型内で前記刃の周囲にポリマー材料を配置して前記履物底構造を形成することと、
前記履物底構造を前記金型から取り出すこととを含む方法。
【請求項1】
分節された履物底構造を有する履物であって、前記履物底構造が、
連結部分と、
複数の不連続な履物底要素とを含み、
前記連結部分が、前記履物底構造の長手に沿って長手方向に延びており、
前記不連続な履物底要素が、前記連結部分から下に向かって延びているとともに、前記履物底構造内に上に向かって延びる複数のサイプによって分離されており、
前記複数のサイプが、前記履物底構造に関して長手方向に延びる第一のサイプおよび第二のサイプを有しており、
前記履物底構造の前方領域が、前記第一および第二のサイプのカーブし大略的に平行な部分を含む履物。
【請求項2】
前記第一のサイプが、前記前方領域内において前記履物底構造の内側部よりも前記履物底構造の外側部の近くに位置しており、
前記第一のサイプが前記履物底構造の中間領域を通って延びており、
前記第二のサイプが前記第一のサイプと前記内側部との間に位置しており、
前記複数のサイプが、前記外側部から前記内側部に向かって延びる複数の第三のサイプを含み、前記第三のサイプの少なくとも1つが前記前方領域内で前記第一および第二のサイプと交差している、請求項1記載の履物。
【請求項3】
前記第三のサイプの第一の部分が前記前方領域内に位置し、前記第三のサイプの第二の部分が前記履物底構造の踵領域内に位置し、前記第三のサイプの前記第一の部分が前記第三のサイプの前記第二の部分に対して角度が付けられている、請求項2記載の履物。
【請求項4】
前記第三のサイプの少なくとも1つの幅が前記第三のサイプの他のものよりも大きい、請求項2または3に記載の履物。
【請求項5】
前記複数の第三のサイプが少なくとも10個のサイプである、請求項2ないし4のいずれか一項に記載の履物。
【請求項6】
前記第一のサイプがS字形状を示している、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の履物。
【請求項7】
前記第一のサイプが前記前方領域から前記履物底構造の踵領域に向かって延びるに従って前記第一のサイプの深さが増加する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の履物。
【請求項8】
前記第二のサイプが少なくとも前記前方領域内に位置し、かつ前記第二のサイプが前記履物底構造の外側部と前記履物底構造の内側部との間でほぼ中央に位置している、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の履物。
【請求項9】
前記履物底構造の踵領域内において、前記第一のサイプが前記履物底構造の外側部と前記履物底構造の内側部との間でほぼ中央に位置している、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の履物。
【請求項10】
前記履物底構造の下側表面に固定されたアウトソール要素を有する、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の履物。
【請求項11】
前記履物底構造の前記下側表面に固定された複数のアウトソール要素を有し、前記アウトソール要素の各々が不連続な履物底要素に固定されている、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の履物。
【請求項12】
前記複数のアウトソール要素のうち少なくとも2つのアウトソール要素が前記履物底構造の踵領域内で不連続な履物底要素に固定されている、請求項11記載の履物。
【請求項13】
前記サイプが前記履物底構造の前記下側表面に対して実質的に垂直である、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の履物。
【請求項14】
前記履物底構造に固定されたアッパーを更に有する、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の履物。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の履物を製造する方法であって、
前記履物底構造の大略的な形状を有する金型であって、複数の刃を含む金型を提供することと、
前記金型内で前記刃の周囲にポリマー材料を配置して前記履物底構造を形成することと、
前記履物底構造を前記金型から取り出すこととを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図10A】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図10A】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−136250(P2011−136250A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91419(P2011−91419)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【分割の表示】特願2009−176817(P2009−176817)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(592228398)ナイキ・インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Nike Inc
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【分割の表示】特願2009−176817(P2009−176817)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(592228398)ナイキ・インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Nike Inc
【Fターム(参考)】
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