説明

分裂停止後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現している遺伝子

本発明により、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的、且つ一過性に発現する新規遺伝子65B13が得られた。細胞における該65B13の発現を指標とすることにより、安全面、生存率及びネットワーク形成能の面でもパーキンソン病を含む神経変性疾患に対する移植治療に適した細胞を選択することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、分裂停止後のドーパミン産生ニューロンにおいて発現している新規遺伝子65B13に関する。該遺伝子の発現を検出することにより、パーキンソン病(PD)等の神経変性疾患の移植治療において用いられるドーパミン産生ニューロン前駆細胞を効率的に分離することができる。
【背景技術】
ドーパミン系は、哺乳動物の脳において重要な運動調節、ホルモン分泌調節、情動調節等に関与する非常に重要な系である。従って、ドーパミン作動性神経伝達における異常は、様々な神経系の障害を引き起こす。例えば、パーキンソン病(PD)は、中脳黒質のドーパミン産生ニューロンの特異的な脱落が原因で起こる錐体外路系の神経変性疾患である(HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE第2巻第23版,Isselbacher et al.編,McGraw−Hill Inc.,NY(1994)pp.2275−7)。治療法としては、産生されるドーパミン量の低下を補うためにL−DOPA(3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)を経口投与する方法が主として行われているが、効果の持続性が良くないことが知られている。
最近では失われたドーパミン産生ニューロンを補うために、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含む6〜9週齢の中絶胎児の中脳腹側領域を移植する治療法も試みられている(米国特許第5690927号;Spencer et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1541−8;Freed et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1549−55;Widner et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1556−63;Kordower et al.(1995)N.Engl.J.Med.332:1118−24;Defer et al.(1996)Brain 119:41−50;Lopez−Lozano et al.(1997)Transp.Proc.29:977−80)。しかし、現在のところ、この方法では細胞の供給面、倫理面(Rosenstain(1995)Exp.Neurol.33:106;Turner et al.(1993)Neurosurg.33:1031−7)で問題があると共に、感染汚染の危険性、免疫学的な移植片拒絶(Lopez−Lozano et al.(1997)Transp.Proc.29:977−80;Widner and Brudin(1988)Brain Res.Rev.13:287−324)、胎児組織が糖分解よりも脂質代謝に主に依存しているための生存率の低さ(Rosenstein(1995)Exp.Neurol.33:106)等の様々な面で問題が指摘されている。
倫理面や供給不足の問題を解決するために、例えばブタ由来の皮質、線条、及び中脳細胞を用いる方法等も提案されている(例えば、特表平10−508487号公報;特表平10−508488号公報;特表平10−509034号公報参照)。この方法においては、細胞表面上の抗原(MHCクラスI抗原)を改変するという煩雑な操作が必要とされる。そこで、中絶胎児由来の細胞に代えて、胚性幹細胞(ES)細胞、骨髄間質細胞などの非神経系細胞からのin vitroにおけるドーパミン産生ニューロンの分化系の利用が有望視されている。将来的にはES細胞若しくは患者本人の持つ神経幹細胞からの再生治療の重要性が増してくるものと思われる。移植片拒絶を解消する方法としては、例えば、セルトーリ細胞を同時に移植することにより、局在的に免疫抑制する方法も提案されている(特表平11−509170号公報;特表平11−501818号公報;Selawry and Cameron(1993)Cell Transplant 2:123−9)。MHCがマッチする血縁者、他人の骨髄、骨髄バンク、及び臍帯血バンク等から移植細胞を得ることも可能であるが、患者自身の細胞を用いることができれば、余計な操作や手間なしに拒絶反応の問題も解決することができる。
その他、問題となるのは、ニューロン前駆細胞が不均一な細胞集団へと分化する可能性がある点である。パーキンソン病の治療においては、カテコールアミン含有ニューロンの中でもドーパミン産生ニューロンを選択的に移植することが必要である。これまで、パーキンソン病の治療に用いることが提案されている移植細胞としては、線条体(Lindvall et al.(1989)Arch.Neurol.46:615−31;Widner et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1556−63)、ヒト胎児神経由来の不死化セルライン(特表平8−509215号公報;特表平11−506930号公報;特表2002−522070号公報)、NT2Z細胞の有糸分裂後ヒトニューロン(特表平9−5050554号公報)、ニューロン始原細胞(特表平11−509729号公報)、ドーパミン等のカテコールアミンを産生するように外来遺伝子によりトランスフェクトされた細胞、骨髄ストロマ細胞(特表2002−504503号公報;特表2002−513545号公報)等が挙げられる。しかしながらいずれも、ドーパミン産生ニューロンまたはドーパミン産生ニューロンへと分化する細胞のみを含むものではない。
未分化な細胞集団からドーパミン産生ニューロンを選択的に濃縮・分離する方法としては、ドーパミン産生ニューロンで発現するチロシンヒドロキシラーゼ等の遺伝子のプロモーター/エンハンサーの制御下で蛍光蛋白質を発現するレポーター遺伝子を細胞集団の各細胞に導入し、蛍光を発する細胞を分離することにより、ドーパミン産生ニューロンを生きたまま可視化して濃縮・分離、または同定する方法(特開2002−51775号公報)が提案されている。この方法は、外来遺伝子の導入という工程を不可欠とするものであり、さらに、遺伝子治療に用いることを目的とする場合、レポーター遺伝子の存在は毒性、免疫原性の面からも問題である。
【発明の開示】
現時点でのPD移植治療における大きな問題の一つは、中絶胎児の中脳腹側領域あるいはin vitroで分化誘導したドーパミン産生ニューロン前駆細胞は、いずれも多種の細胞の混合物である点である。神経回路形成における安全性を考えると、目的の細胞種のみを分離してから用いるのが望ましく、また腫瘍形成の危険性を考慮すれば、分裂停止後の神経細胞を分離してから使用することが良いと考えられる。さらに、細胞の移植先の脳内での生存や、正しくネットワーク形成する能力を考えると、より早期の前駆細胞を分離することにより治療効果を増大させ得ると期待される。そこで、本発明者は、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子の単離を試みた。
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子を単離するために、E12.5マウス中脳腹側と背側のRNAを用いてサブトラクション法(N−RDA;representational difference analysis法;RDA法(Listsyn NA(1995)Trends Genet.11:303−7)を改良(「DNA断片の量の均一化方法及びサブストラクション法」特願2001−184757(出願日2001/6/19))により発現に差のある遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列解析を行った。その結果、新規遺伝子として65B13が得られた。該遺伝子の全長配列をRACE法により決定した結果、2つのアルタナティブアイソフォームが得られ、各々、65B13−a及び65B13−bと名付けた。夫々の塩基配列を配列番号:1及び2として、そして、各塩基配列によりコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:3及び4として記載する(図1〜4)。
そして、これらの遺伝子を用いたin situハイブリダイゼーションによる発現解析の結果と、脊髄における増殖マーカーであるKi67及び成熟マーカーであるNCAMと比較した結果得られた発現パターンから、65B13は分裂停止直後の神経前駆細胞で一過性に発現するものと考えられた。さらに、中脳での発現をドーパミン産生ニューロンのマーカー遺伝子であるチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase;TH)の発現と比較したところ背−腹軸方向での発現領域が完全に一致しており、65B13は、中脳では分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的、且つ一過性に発現すると考えられた(図10及び11)。
また、in situハイブリダイゼーションの結果は、抗65B13抗体を用いる免疫染色により裏付けられた(図13)。さらに、抗65B13抗体を用いたフローサイトメトリーにより65B13発現細胞の集団を効率的に分離することができた(図14)。
上述の結果から、抗65B13抗体を用いることにより、中脳腹側領域またはin vitroで分化誘導したドーパミン産生ニューロンを含む培養培地から、65B13発現細胞を分離することにより純粋な初期のドーパミンニューロン前駆細胞を得ることができるものと考えられる。そして、このようにして得られた細胞は、分裂停止後の前駆細胞のみが分離されたものであり、且つ目的の細胞種のみが分離されていることから、移植治療に用いた場合であっても安全性が高く、また、最も初期の前駆細胞が用いられることから生存率、ネットワーク形成能等の面でも高い治療効果が期待される。また、分裂直後の初期の前駆細胞で最高の治療効果が得られず、細胞を成熟した状態で利用することが求められる場合であっても、本方法により得られた初期の前駆細胞をin vitroで最適な分化段階へ培養により成熟させればよいことから、目的とする移植治療に適した分化段階の材料を容易に調製することが可能となる(図12)。
さらに、純粋なドーパミン産生ニューロン前駆細胞は、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞及び前駆細胞からニューロンまでの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離、PD治療のターゲット探索等にも有効である。また、本発明の方法により、最も初期の前駆細胞が得られることから、ドーパミン産生ニューロンの成熟過程の解明、成熟を指標としてスクリーニング系等へ利用することもできる。
より具体的には、本発明は
[1] 分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現する65B13ポリペプチド、またはその抗原性断片をコードする以下の(1)〜(4)のヌクレオチド配列から選択される配列を含むポリヌクレオチド。
(1)配列番号:1の177から2280番目の塩基、若しくは配列番号:2の127番目から2079番目の塩基を含む核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(2)配列番号:3若しくは4記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(3)配列番号:3若しくは4記載のアミノ酸配列においてシグナル配列部分を欠く配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(4)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、または付加されたアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(5)上記(1)の配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、
[2] [1]記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
[3] [1]記載のポリヌクレオチドまたは[2]記載のベクターを含む宿主細胞、
[4] [1]記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、
[5] [4]記載のポリペプチドの断片であり、少なくとも8アミノ酸残基を有するポリペプチド断片、
[6] [4]記載のポリペプチド、または[5]記載のポリペプチド断片に対する抗体、
[7] [5]記載のポリペプチド断片をコードするヌクレオチド鎖、
[8] ドーパミン産生ニューロンを選択する方法であり、[6]記載の抗体とドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法、
[9] ドーパミン産生ニューロンを選択する方法であり、[4]記載のポリペプチドの少なくとも細胞外領域部分を含むペプチドとドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法、
[10] [8]または[9]記載の方法により選択された分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞、
[11] ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子及び前駆細胞からドーパミン産生ニューロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離方法であって、[10]記載の前駆細胞または該前駆細胞から分化、誘導若しくは増殖された細胞を用い、該細胞において特異的に発現している遺伝子を検出、単離する工程を含む方法、並びに
[12] 成熟を指標としたスクリーニング方法であり、[10]記載の前駆細胞に対し、被験物質を接触させる工程、及び接触による前駆細胞の分化または増殖を検出する工程を含む方法、
に関する。
<ポリヌクレオチド>
本発明のポリヌクレオチドは、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択するのに用いることができる抗体を作成する際の抗原を遺伝子工学的手法により得る際に使用することができる。本発明のポリヌクレオチドは、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現する65B13ポリペプチドをコードする、配列番号:1(図1及び2)の177から2280番目の塩基、若しくは配列番号:2(図3及び4)の127番目から2079番目までの塩基を含む核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列を含むものである。
ここで、「ポリヌクレオチド」とは、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体を指し、DNA、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNA及びRNAを含む。また、天然以外の塩基、例えば、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルプソイドウリジン、β−D−ガラクトシルキュェオシン、2’−O−メチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、β−D−マンノシルキュェオシン、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウリジン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−β−D−リボフラノシル−2−メチルリオプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸−メチルエステル、ウリジン−5オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キュェオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン等を必要に応じて含むポリヌクレオチドも包含する。
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現する65B13ポリペプチドをコードする、配列番号3:若しくは4(各々図1、2若しくは図3、4、または図5参照)記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列を含む。このようなアミノ酸配列をコードする核酸配列は、配列番号:1及び2に記載された核酸配列に加えて、遺伝子暗号の縮重により配列番号:1及び2記載の配列とは異なる核酸配列を含むものである。本発明のポリヌクレオチドを遺伝子工学的な手法によりポリペプチドを発現させるのに用いる場合、使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、発現効率の高いヌクレオチド配列を選択し、設計することができる(Grantham et al.(1981)Nucleic Acids Res.9:43−74)。本発明のポリヌクレオチドはまた、配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において、シグナル配列部分を欠く配列をコードする核酸配列を含むものを包含する。配列番号:3及び4記載のアミノ酸配列では、最初の17アミノ酸残基がシグナル配列に該当する。
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現する65B13ポリペプチド、またはその抗原性断片をコードする、配列番号:3若しくは4のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列を含む。1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列からなる変異ポリペプチドで、元のポリペプチドと同じ生物学的活性が維持されることは公知である(Mark et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5662−6;Zoller and Smith(1982)Nucleic Acids Res.10:6487−500;Wang et al.(1984)Science 224:1431−3;Dalbadie−McFarland et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:6409−13)。
ここで、アミノ酸の置換とは、配列中のアミノ酸残基の一つ以上が、異なる種類のアミノ酸残基に変えられた変異を意味する。このような置換により本発明のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を改変する場合、蛋白質の機能を保持することが必要な場合には、保存的な置換を行うことが好ましい。保存的な置換とは、置換前のアミノ酸と似た性質のアミノ酸をコードするように配列を変化させることである。アミノ酸の性質は、例えば、非極性アミノ酸(Ala,Ile,Leu,Met,Phe,Pro,Trp,Val)、非荷電性アミノ酸(Asn,Cys,Gln,Gly,Ser,Thr,Tyr)、酸性アミノ酸(Asp,Glu)、塩基性アミノ酸(Arg,His,Lys)、中性アミノ酸(Ala,Asn,Cys,Gln,Gly,Ile,Leu,Met,Phe,Pro,Ser,Thr,Trp,Tyr,Val)、脂肪族アミノ酸(Ala,Gly)、分枝アミノ酸(Ile,Leu,Val)、ヒドロキシアミノ酸(Ser,Thr)、アミド型アミノ酸(Gln,Asn)、含硫アミノ酸(Cys,Met)、芳香族アミノ酸(His,Phe,Trp,Tyr)、複素環式アミノ酸(His,Trp)、イミノ酸(Pro,4Hyp)等に分類することができる。中でも、Ala、Val、Leu及びIleの間、Ser及びThrの間、Asp及びGluの間、Asn及びGlnの間、Lys及びArgの間、Phe及びTyrの間の置換は、蛋白質の性質を保持する置換として好ましい。変異されるアミノ酸の数及び部位は特に制限されず、該ポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸が65B13の抗原性を有していれば良い。
このような配列番号:3または4のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、『Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987−1997);特にSection8.1−8.5)、Hashimoto−Goto et al.(1995)Gene 152:271−5、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−92、Kramer and Fritz(1987)Method.Enzymol.154:350−67、Kunkel(1988)Method.Enzymol.85:2763−6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現する65B13ポリペプチド、またはその抗原性断片をコードする、配列番号:1の177から2280番目の塩基、若しくは配列番号:2の127番目から2079番目の塩基を含む核酸配列または該核酸配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、を含むポリヌクレオチドである。本発明の実施例では、配列番号:1及び2記載の2種類の配列を有する65B13のアイソフォームが得られているが、その他にもアルタナティブアイソフォーム、及びアレリック変異体が存在する可能性があり、そのようなアイソフォームやアレリック変異体も本発明のポリペプチドに含まれる。このようなポリヌクレオチドは、配列番号:1の177から2280番目の塩基、または配列番号:2の127番目から2079番目の塩基を含む核酸配列からなるポリヌクレオチドをプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。cDNAライブラリーの作成方法については、『Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989))を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いてもよい。
より具体的に、cDNAライブラリーの作製においては、まず、本発明のポリヌクレオチドを発現する細胞、臓器、組織等からグアニジン超遠心法(Chirwin et al.(1979)Biochemistry 18:5294−9)、AGPC法(Chomczynski and Sacchi(1987)Anal.Biochem.162:156−9)等の公知の手法により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia)等を用いてmRNAを精製する。QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia)のような、直接mRNAを調製するためのキットを利用してもよい。次に得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業)のようなcDNA合成のためのキットも市販されている。その他の方法として、cDNAはPCRを利用した5’−RACE法(Frohman et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8998−9002;Belyavsky et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:2919−32)により合成、及び増幅させてもよい。また、全長率の高いcDNAライブラリーを作製するために、オリゴキャップ法(Maruyama and Sugano(1994)Gene 138:171−4;Suzuki(1997)Gene 200:149−56)等の公知の手法を採用することもできる。上述のようにして得られたcDNAは、適当なベクター中に組み込む。
本発明におけるハイブリダイゼーション条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」等の条件を挙げることができる。より詳細には、Rapid−hyb buffer(Amersham Life Science)を用いた方法として、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を3回、最後に、1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分の洗浄を2回行うことも考えられる。その他、例えばExpresshyb Hybridization Solution(CLONTECH)中、55℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、37〜55℃で1時間以上インキュベートし、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションや2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、よりストリンジェントな条件とすることができる。例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの温度を60℃、さらにストリンジェントな条件としては68℃とすることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、本発明の実施例において得られたマウス65B13のアイソフォーム、アレリック変異体、及び対応する他種生物由来の遺伝子を得るための条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989);特にSection9.47−9.58)、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987−1997);特にSection6.3−6.4)、『DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University(1995);条件については特にSection2.10)等を参照することができる。ハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、配列番号:1の177から2280番目の塩基、または配列番号:2の127番目から2079番目の塩基を含む核酸配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。このような同一性は、BLASTアルゴリズム(Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−8;Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−7)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいたプログラムとして、アミノ酸配列についての同一性を決定するプログラムとしてはBLASTX、ヌクレオチド配列についてはBLASTN(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10)等が開発されており、本発明の配列に対して使用することができる。具体的な解析方法については、例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.等を参照することができる。
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987)Section 6.1−6.4)により、65B13のアイソフォームやアレリック変異体等、65B13と類似した構造及び機能を有する遺伝子を、配列番号:1及び2に記載のヌクレオチド配列を基にプライマーを設計し、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。
例えば、BLASTサーチの結果、本発明のマウス65B13のヌクレオチド配列に対して84%の同一性を有する3つの機能不明のヒト配列(GenBank Accession No.:XM_048304,AL136654,BC007312;各ヌクレオチド配列を配列番号:5、7、9、また該ヌクレオチド配列から予測されるアミノ酸配列を配列番号:6、8、10として記載する)は、マウス65B13に対するヒトホモログであると考えられる。このようなヒトホモログは、本発明の方法により、ヒトドーパミン産生ニューロン前駆細胞の選択に使用することができる。これらの配列は、記録されている情報から、全て第19染色体上の同じ遺伝子由来の配列と考えられる。そのうち、配列番号:7に示すAL136654と配列番号:9に示すBC007312の2つはcDNA断片であり、もう一つの配列番号:5に示すXM_048304は、ゲノム配列から予測されたmRNA配列と考えられた。これらの予測配列には、本発明の65B13とほぼ同じ大きさのORFがあり、予測されたアミノ酸配列の65B13との同一性は84%であった。
本発明のポリヌクレオチドの塩基配列の確認は、慣用の方法により配列決定することにより行うことができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)等により行うことができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
<ヌクレオチド鎖>
さらに、本発明により、本発明のポリヌクレオチドに相補的な、少なくとも15塩基からなるヌクレオチド鎖が提供される。ここで「相補的な配列」とは、ヌクレオチド配列中の少なくとも15個の連続した塩基が鋳型に対して完全に対になっている場合のみならず、そのうちの少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上(例えば、97%または99%)が対になっているものも含む。対になっているとは、鋳型となるポリヌクレオチドの塩基配列中のAに対しT(RNAの場合はU)、TまたはUに対しA、Cに対しG、そしてGに対しCが対応して鎖が形成されていることを意味する。そして相同性は、上述のハイブリダイズするポリヌクレオチドの場合と同様の方法で決定することができる。
このような本発明のヌクレオチド鎖は、本発明のポリヌクレオチドを検出または単離するためのプローブ、増幅するためのプライマーとして利用することができる。通常、プローブとして使用する場合には15〜100、好ましくは15〜35個の塩基より構成されていることが望ましく、プライマーとして使用する場合には、少なくとも15、好ましくは30個の塩基より構成されていることが望ましい。プライマーの場合には、3’末端側の領域を標的とする配列に対して相補的な配列に、5’末端側には制限酵素認識配列、タグ等を付加した形態に設計することができる。本発明のヌクレオチド鎖は、本発明のポリヌクレオチドに対してハイブリダイズすることができる。さらに、これらのプローブまたはプライマーを用いて、細胞内における本発明のポリヌクレオチドの変異を検出することができる。このような変異は、場合により本発明のポリペプチドの活性、または発現の異常を引き起こすものであることから、疾病の診断等に有用と考えられる。
また、本発明のヌクレオチド鎖には、本発明のポリヌクレオチドの細胞内における発現をmRNAまたはDNAに対して結合することにより抑制するアンチセンス核酸、及び、mRNAを特異的に開裂することにより阻止するリボザイムが含まれる。
アンチセンスが標的遺伝子の発現抑制作用の機構としては、(1)3重鎖形成による転写開始阻害、(2)RNAポリメラーゼにより形成される局所的開状ループ構造部位とのハイブリッド形成による転写抑制、(3)合成中のRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、(4)イントロン−エキソン接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(5)スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(6)mRNAとのハイブリッド形成による、mRNAの細胞質への移行抑制、(7)キャッピング部位またはポリA付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(8)翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、(9)リボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、(10)mRNA翻訳領域またはポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長抑制、並びに(11)核酸と蛋白質の相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制が挙げられる(平島及び井上『新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現』日本生化学会編、東京化学同人、pp.319−347(1993))。
本発明のヌクレオチド鎖に含まれるアンチセンス核酸は、上述の(1)〜(11)のどの機構により遺伝子発現を抑制する核酸であってもよく、即ち、発現を阻害する目的の遺伝子の翻訳領域のみならず、非翻訳領域の配列に対するアンチセンス配列を含むものであってもよい。アンチセンス核酸をコードするDNAは、その発現を可能とする適当な制御配列下に連結して使用され得る。アンチセンス核酸は、標的とする遺伝子の翻訳領域または非翻訳領域に対して完全に相補的である必要はなく、効果的に該遺伝子の発現を阻害するものであればよい。このようなアンチセンス核酸としては、少なくとも15bp以上、好ましくは100bp以上、さらに好ましくは500bp以上であり通常3000bp以内、好ましくは2000bp以内、より好ましくは1000bp以内の鎖長を有し、標的遺伝子の転写産物の相補鎖に対して好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上同一である。このようなアンチセンス核酸は、本発明のポリヌクレオチドを基に、ホスホロチオネート法(Stein(1988)Nucleic Acids Res.16:3209−21)等により調製することができる。
リボザイムとは、RNAを構成成分とする触媒の総称であり、大きくラージリボザイム(large ribozyme)及びスモールリボザイム(smll liboyme)に分類される。ラージリボザイムは、核酸のリン酸エステル結合を切断し、反応後に5’−リン酸と3’−ヒドロキシル基を反応部位に残す酵素である。ラージリボザイムは、さらに(1)グアノシンによる5’−スプライス部位でのトランスエステル化反応を行うグループIイントロンRNA、(2)自己スプライシングをラリアット構造を経る二段階反応で行うグループIIイントロンRNA、及び(3)加水分解反応によるtRNA前駆体を5’側で切断するリボヌクレアーゼPのRNA成分に分類される。それに対して、スモールリボザイムは、比較的小さな構造単位(40bp程度)であり、RNAを切断して、5’−ヒドロキシル基と2’−3’環状リン酸を生じさせる。スモールリボザイムには、ハンマーヘッド型(Koizumi et al.(1988)FEBS Lett.228:225)、ヘアピン型(Buzayan(1986)Nature 323:349;Kikuchi and Sasaki(1992)Nucleic Acids Res.19:6751;菊地洋(1992)化学と生物30:112)等のリボザイムが含まれる。リボザイムは、改変及び合成が容易になため多様な改良方法が公知であり、例えば、リボザイムの基質結合部を標的部位の近くのRNA配列と相補的となるように設計することにより、標的RNA中の塩基配列UC、UUまたはUAを認識して切断するハンマーヘッド型リボザイムを作ることができる(Koizumi et al.(1988)FEBS Lett.228:225;小泉誠及び大塚栄子(1990)蛋白質核酸酵素35:2191;Koizumi et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:7059)。ヘアピン型のリボザイムについても、公知の方法に従って設計、製造が可能である(Kikuchi and Sasaki(1992)Nucleic Acids Res.19:6751;菊地洋(1992)化学と生物30:112)。
本発明のヌクレオチド鎖に含まれるアンチセンス核酸及びリボザイムは、細胞内における遺伝子の発現を制御するために、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルス由来のベクター、リポソーム等を利用した非ウイルスベクター、またはnaked DNAとしてex vivo法またはin vivo法により遺伝子治療に用いることもできる。
本発明のヌクレオチド鎖の塩基配列の確認は、上述のポリヌクレオチドと同様の方法により行うことができる。
<ベクター>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。本発明のベクターは、本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞内に保持したり、該ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドを発現させたりするのに有用である。本ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、クローニング用ベクター、発現ベクター等の種々のベクターが含まれる(Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Press(1989);Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987))。好ましい態様においては、ベクターを導入した宿主細胞内で本発明のポリヌクレオチドが発現されるように制御配列下に結合する。ここで「制御配列」とは、宿主細胞が原核生物であればプロモーター、リボソーム結合部位、及びターミネーターを含み、真核生物の場合は、プロモーター及びターミネーターであり、場合によってトランスアクチベーター、転写因子、転写物を安定化するポリAシグナル、スプライシング及びポリアデニル化シグナル等が含まれる。このような制御配列は、それに連結されたポリヌクレオチドの発現に必要とされるすべての構成成分を含むものである。また、本発明のベクターは、好ましくは選択可能なマーカーを含む。さらに、細胞内で発現されたポリペプチドを小胞体内腔、グラム陰性菌を宿主とする場合ペリプラズム内、または細胞外へと移行させるために必要とされるシグナルペプチドを目的のポリペプチドに付加するようにして発現ベクターへ組み込むこともできる。このようなシグナルペプチドは、天然において65B13に付加している17アミノ酸残基からなる、または異種蛋白質由来のシグナルペプチドであってもよい。さらに、必要に応じリンカーの付加、開始コドン(ATG)、終止コドン(TAA、TAGまたはTGA)の挿入を行ってもよい。
本発明のベクターは、好ましくは発現ベクターである。「発現ベクター」とは、in vitroで、目的とする宿主細胞内で発現ベクター中にコードされるポリペプチドを発現することができる構築物を指す。クローニングベクター、バイナリーベクター、インテグレイティングベクター等が本発明の発現ベクターに含まれる。発現の過程には、発現ベクター中のコード配列の翻訳可能なmRNAへの転写、及びmRNAから本発明のポリペプチドへの翻訳、さらに場合によっては発現されたポリペプチドの小胞体内腔、ペリプラズムまたは細胞外への分泌が含まれる。
in vitroにおけるポリペプチドの発現を可能にするベクターとしては、pBEST(Promega)を例示することができる。また、E.coli等の原核細胞宿主における発現を可能にするプロモーターとしてはP、araB(Better et al.(1988)Science 240:1041−3)、lacZ(Ward et al.(1989)Nature 341:544−6;Ward et al.(1992)FASEB J.6:2422−7)、trp、tac、trc(lacとtrpの融合)等のプロモーターが挙げられる。また、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来ターミネーターが、利用可能である。さらに、大腸菌用のベクターは、好ましくはベクターを宿主内で増幅するための「ori」、及び形質転換された宿主を選抜するためのマーカー遺伝子を持つ。アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、及びクロラムフェニコール等の薬剤により宿主の判別を行うことを可能にする薬剤耐性遺伝子の使用が好ましい。特に、ポリペプチドをペリプラズムへ分泌させることを目的とする場合、pelBシグナル配列(Lei et al.(1987)J.Bacteriol.169:4379)を使用することができる。例えば、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pCR−Script、pGEX−5X−1(Pharmacia)、pEGFP、pBluescript(Stratagene)、pET(Invitrogen;この場合の宿主はT7ポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)等のベクターを挙げることができる。また、特にサブクローニングまたは切出し用のベクターとしては、pGEM−T、pDIRECT、pT7等を例示できる。
大腸菌以外の細菌宿主用としては、バチルス属のものが挙げられ、pUB110系、pc194系のベクターが例示される。より具体的に、枯草菌由来のpPL608、pKTH50等を挙げることができる。その他、Pseudomonas putida、Pseudomonas cepacia等のシュードモナス属、Brevibacterium lactofermentum等のブレビバクテリウム属(pAJ43(Gene 39:281(1985))等)、Corynebacterium glutamicum等のコリネバクテリウム属(pCS11(特開昭57−183799号公報;pCB101(Mol.Gen.Genet.196:175(1984))等)、ストレプトコッカス属(pHV1301(FEMS Microbiol.Lett.26:239(1985))、pGK1(Appl.Environ.Microbiol.50:94(1985))等)、ラクトバチルス属(pAMβ1(J.Bacteiol.137:614(1979))等)、Rhodococcus rhodochrous等のロドコッカス属(J.Gen.Microbiol.138:1003(1992))、Streptomyces lividans、Streptomyces virginiae等のストレプトマイセス属(Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual,Hopwood et al.,Cold Spring Harbor Laboratories(1985)参照;pIJ486(Mol.Gen.Genet.203:468−78(1986))、pKC1064(Gene 103:97−9(1991))、pUWL−KS(Gene 165:149−50(1995)))の細菌を宿主とするベクター系が開発されている。微生物を宿主として利用できるベクターについては、『微生物学基礎講座8遺伝子工学』(共立出版)等の文献を参照することができる。ベクターを細菌宿主へ導入するための手法としては、塩化カルシウム法(Mandel and Higa(1970)J.Mol.Biol.53:158−62;HAnahan(1983)J.Mol.Biol.166:557−80)、エレクトポレーション法等を採用することができる。
また、真核細胞宿主での発現を可能にする調節要素は、酵母を宿主とする場合には、AOX1及びGAL1プロモーターが例示される。酵母由来の発現ベクターとしては、Pichia Expression Kit(Invitrogen)、pNV11、SP−Q01等が例示できる。酵母で利用可能なベクターに関しては、Adv.Biochem.Eng.43:75−102(1990)、Yeast 8:423−88(1992)等に詳述されている。より具体的には、Saccharomyces cerevisiae等のサッカロマイセス属では、YRp系、YEp系、YCp系、及びYIp系ベクターが利用可能である。特に、多コピーの遺伝子導入が可能であり、安定に遺伝子を保持できるインテグレーションベクター(EP537456等)が有用である。その他、Kluyveromyces lactis等のクルイベロマイセス属では、S.cerevisiae由来2μm系ベクター、pKD1系ベクター(J.Bacteriol.145:382−90(1981))、pGK11由来ベクター、クライベロマイセス自律増殖遺伝子KARS系ベクター等、シゾサッカロマイセス属では、Mol.Cell.Biol.6:80(1986)に記載のベクター、pAUR224(宝酒造)、チゴサッカロマイセスではpSB3(Nucleic Acids Res.13:4267(1985))由来ベクター、Pichia angusta、Pichia pastoris等のピキア属ではYeast 7:431−43(1991)、Mol.Cell.Biol.5:3376(1985)、Nucleic Acids Res.15:3859(1987)等の文献記載のベクター、Candida maltosa、C.albicans、C.tropicalis、C.utilis等のキャンディダ属では、特開平8−173170号公報記載のベクター、またC.maltosa由来のARS(Agri.Biol.Chem.51:1587(1987))を利用したベクター、Aspergillus niger、A.oryzae等のアスペルギルス属では、Trends in Biotechnology 7:283−7(1989)記載のベクター、トリコデルマ属では菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーター(Bio/Technology 7:596−603(1989))を利用したベクターが利用できる。
哺乳動物及びその他の動物細胞を宿主とする場合には、アデノウイルスlateプロモーター(Kaufman et al.(1989)Mol.Cell.Biol.9:946)、CAGプロモーター(Niwa et al.(1991)Gene 108:193−200)、CMV immediate earlyプロモーター(Seed and Aruffo(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3365−9)、EF1αプロモーター(Mizushima et al.(1990)Nucleic Acids Res.18:5322;Kim et al.(1990)Gene 91:217−23)、HSV TKプロモーター、SRαプロモーター(Takebe et al.(1988)Mol.Cell.Biol.8:466)、SV40プロモーター(Mulligan et al.(1979)Nature 277:108)、SV40 earlyプロモーター(Genetic Engineering Vol.3,Williamson ed.,Academic Press(1982)pp.83−141)、SV40 lateプロモーター(Gheysen and Fiers(1982)J.Mol.Appl.Genet.1:385−94)、RSV(ラウス肉腫ウイルス)−LTRプロモーター(Cullen(1987)Methods Enzymol.152:684−704)、MMLV−LTRプロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、及びグロビンイントロン等を使用することができる。さらに、ネオマイシン、G418等の薬剤による判別を可能とする薬剤耐性遺伝子がベクターに含まれていることが好ましい。そして、細胞内で遺伝子のコピー数の増加を計る場合には、例えば核酸合成経路を欠損したCHOを宿主とし、その欠損を補うDHFR遺伝子を有するpCHOI等のベクターを採用し、メトトレキセート(MTX)によりコピー数を増幅させることができる。一方、遺伝子の一過性発現のためには、SV40のT抗原遺伝子を染色体上に有するCOS細胞を宿主とし、pcD等のSV40の複製起点、またはアデノウイルス、ウシパピーローマウイルス(BPV)、ポリオーマウイルス等の複製開始点を持つベクターを使用することができる。さらに、遺伝子コピー数の増幅のための選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)、チミジンキナーゼ(TK)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)等をコードする遺伝子を含んでもよい。適当なベクターとして、例えば、Okayama−Bergの発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8(Nature 329:840−2(1987))、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pSV2dhfr(Mol.Cell.Biol.1:854−64(1981))、pEF−BOS(Nucleic Acids Res.18:5322(1990))、pCEP4(Invitrogen)、pMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、pOP13、pME18S(Mol.Cell.Biol.8:466−72(1988))等が公知である。
特に動物の生体内において本発明のポリヌクレオチドを発現させるためには、pAdexlcw等のアデノウイルスベクター、pZIPneo等のレトロウイルスベクターが挙げられる。ベクターはアデノウイルス法、エレクトポレーション(電気穿孔)法(Cytotechnology 3:133(1990))、カチオニックリポソーム法(カチオニックリポソームDOTAP(Boehringer Mannheim)等)、正電荷ポリマーによる導入法、静電気型リポソーム(electrostatic type liposome)法、内包型リポソーム(internal type liposome)法、パーティクルガンを用いる方法、リポソーム法、リポフェクション(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413(1987))、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、レセプター介在遺伝子導入法、レトロウイルス法、DEAEデキストラン法、ウイルス−リポソーム法(別冊実験医学『遺伝子治療の基礎技術』羊土社(1997);別冊実験医学『遺伝子導入&発現解析実験法』羊土社(1997);J.Clin.Invest.93:1458−64(1994);Am.J.Physiol.271:R1212−20(1996);Molecular Medicine 30:1440−8(1993);実験医学12:1822−6(1994);蛋白質核酸酵素42:1806−13(1997);Circulation 92(Suppl.II):479−82(1995))、naked−DNAの直接導入法等により宿主に導入することができる。アデノウイルス及びレトロウイルス以外由来のウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、トガウイルス、パラミクソウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス等を元に作製されたベクターを利用することもできる。生体内への投与は、ex vivo法でもin vivo法で行ってもよい。
その他、昆虫発現システムも異種ポリペプチドを発現させる系として知られており、例えば、Autographa california核ポリヘドロシスウイルス(AcNPV)をベクターとし、Spodoptera frugiperda細胞、またはTrichoplusia larvae細胞中で外来遺伝子を発現させることができる。この際、目的とする外来遺伝子は、ウイルスの非必須領域にクローニングする。例えば、ポリヘドリンプロモーター制御下に連結してもよい。この場合、ポリヘドリン遺伝子は不活化され、コート蛋白質を欠く組換えウイルスが産生され、該ウイルスに感染したSpodoptera frugiperdaまたはTrichoplusia larvae等の細胞中で目的とするポリペプチドが発現される(Smith(1983)J.Virol.46:584;Engelhard(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3224−7)。その他、昆虫細胞由来の発現ベクターとして、Bac−to−BAC baculovirus expression system(Bigco BRL)、pBacPAK8等も公知である。
植物細胞を宿主とする場合には、例えばカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター等を利用したベクターが使用可能である。植物細胞へのベクターの導入法としては、PEG法、エレクトポーレション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法等が公知である。
ベクターへのDNAの挿入は、制限酵素サイトを利用したリガーゼ反応により行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987)Section 11.4−11.11;Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Press(1989)Section 5.61−5.63)。
<宿主>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主が提供される。本発明のポリペプチドの製造には、in vitro及びin vivoの産生系が考えられる。本発明の宿主には、古細菌、細菌、真菌類、植物、昆虫、魚類、両生類、ハ虫類、鳥類、哺乳類由来の原核及び真核細胞が含まれる。本発明の宿主は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に含むものである。該ポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノム上の天然に存在する位置になければよく、該ポリヌクレオチド自身のプロモーター支配下にあっても、ゲノム中に組み込まれていても、染色体外の構造として保持されていても良い。
細菌宿主としては、E.coli(JM109,DH5α,HB101,XL1Blue)、Serratia marcescens、Bacillus subtilis等、エシェリシア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、セラチア属、バシルス属等に属するのグラム陽性及びグラム陰性細菌を例示することができる。
真核宿主には、酵母等の真菌類、高等植物(Nicotiana tabacum由来細胞)、昆虫(ドロソフィラS2、スポロドプテラSf9、Sf21、Tn5)、魚類、両生類(アフリカツメガエル卵母細胞(Valle et al.(1981)Nature 291:358−40))、ハ虫類、鳥類、哺乳類(CHO(J.Exp.Med.108:945(1995);中でもDHFR遺伝子欠損dhfr−CHO(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−20(1980)及びCHO K−1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 60:1275(1968))が好適である)、COS、Hela、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowesメラノーマ細胞)、ミエローマ、Vero、Namalwa、Namalwa KJM−1、HBT5637(特開昭63−299号公報))、植物(ジャガイモ、タバコ、トウモロコシ、イネ、アブラナ、ダイズ、トマト、コムギ、オオムギ、ライ麦、アルファルファ、亜麻等)等の細胞が含まれる。真菌類としては、Saccharomyces属に属するSaccharomyces cerevisiae、Pichia属等の酵母に加えて、糸状菌のAspergillus属のAspergillus niger等の細胞を宿主とした発現系も公知である。
宿主細胞へのベクターの導入は、エレクトポレーション法(Chu et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:1311−26)、カチオニックリポソーム法、電気パルス穿孔法(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987)Section 9.1−9.9)、微小ガラス管を使用した直接注入法、マイクロインジェクション法、リポフェクション(Derijard(1994)Cell 7:1025−37;Lamb(1993)Nature Genetics 5:22−30;Rabindran et al.(1993)Science 259:230−4)、リポフェクタミン法(GIBCO−BRL)、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama(1987)Mol.Cell.Biol.7:2745−52)、DEAEデキストラン法(Lopata et al.(1984)Nucleic Acids Res.12:5707−17:Sussman and Milman(1985)Mol.Cell.Biol.4:1642−3)、FuGene6試薬(Boehringer−Mannheim)等により行い得る。
<ポリペプチド及びその断片>
本発明の「ポリペプチド」は、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるペプチド重合体である。配列番号:3または4記載のアミノ酸配列を有する蛋白質を好ましい例として挙げることができる。本発明のポリペプチドを構成するアミノ酸残基は天然に存在するものでも、また修飾されたものであっても良い。アミノ酸残基の修飾としては、アシル化、アセチル化、アミド化、アルギニル化、GPIアンカー形成、架橋、γ−カルボキシル化、環化、共有架橋の形成、グリコシル化、酸化、脂質または脂肪誘導体の共有結合化、シスチンの形成、ジスルフィド結合の形成、セレノイル化、脱メチル化、蛋白質の分解処理、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合化、ヒドロキシル化、ピログルタメートの形成、フラビンの共有結合化、プレニル化、ヘム部分の共有結合化、ホスファチジルイノシトールの共有結合化、ホルミル化、ミリストイル化、メチル化、ユビキチン化、ヨウ素化、ラセミ化、ADP−リボシル化、硫酸化、リン酸化等が例示される。さらに、本発明のポリペプチドにはシグナルペプチド部分がついた前駆体、シグナルペプチド部分を欠く成熟蛋白質、及びその他のペプチド配列により修飾された融合蛋白質を含む。本発明のポリペプチドに付加するペプチド配列としては、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、サブスタンスP、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、プロテインC断片、マルトース結合蛋白質(MBP)、免疫グロブリン定常領域、α−チューブリン断片、β−ガラクトシダーゼ、B−タグ、c−myc断片、E−タグ(モノクローナルファージ上のエピトープ)、FLAG(Hopp et al.(1988)Bio/Tehcnol.6:1204−10)、lckタグ、p18 HIV断片、HSV−タグ(ヒト単純ヘルペスウイルス糖蛋白質)、SV40T抗原断片、T7−タグ(T7 gene10蛋白質)、VSV−GP断片(Vesicular stomatitisウイルス糖蛋白質)等の蛋白質の精製を容易にする配列(例えば、pcDNA3.1/Myc−His(Invitrogen)のようなベクターを利用できる)、組換え技術により蛋白質を生産する際に安定性を付与する配列等を選択することができる。
さらに、本発明により本発明のポリペプチドの断片が提供される。本発明のポリペプチド断片は、本発明のポリペプチドの一部と同一であり、少なくとも8アミノ酸残基以上(例えば、8、10、12、または15アミノ酸残基以上)からなるポリペプチド断片である。特に好ましい断片としては、アミノ末端、カルボキシル末端、膜貫通ドメインを欠失したポリペプチド断片を挙げることができる。αヘリックス及びαヘリックス形成領域、α両親媒性領域、βシート及びβシート形成領域、β両親媒性領域、基質結合領域、高抗原指数領域、コイル及びコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、ターン及びターン形成領域、並びに表面形成領域を含む断片が本発明のポリペプチド断片に含まれる。本発明のポリペプチド断片は、本発明のポリペプチドの抗原性さえ有すればどのような断片であってもよい。ポリペプチドの抗原決定部位は、蛋白質のアミノ酸配列上の疎水性/親水性を解析する方法(Kyte−Doolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−22)、二次構造を解析する方法(Chou−Fasman(1978)Ann.Rev.Biochem 47:251−76)により推定し、さらにコンピュータープログラム(Anal.Biochem.151:540−6(1985))、または短いペプチドを合成しその抗原性を確認するPEPSCAN法(特表昭60−500684号公報)等により確認することができる。
本発明のポリペプチド、及びポリペプチド断片は公知の遺伝子組換え技術により、また化学的な合成法により製造することができる。遺伝子組換え技術により本発明のポリペプチドまたはポリペプチド断片を製造する場合、製造される蛋白質は、選択する宿主の種類によってグリコシル化を受ける場合と受けない場合、さらに分子量、等電点等が異なる場合がある。通常、大腸菌等の原核細胞を宿主としてポリペプチドを発現させた場合、得られるポリペプチドは本来ポリペプチドが有していたN−末端にメチオニン残基が付加された形で産生される。このような宿主の違いにより、構造の異なるポリペプチドも本発明のポリペプチドに含まれる。
<ポリペプチドの製造>
in vitroでポリペプチドを製造する場合、in vitroトランスレーション(Dasso and Jackson(1989)Nucleic Acids Res.17:3129−44)等の方法に従って、細胞を含まない試験管内の系でポリペブチドを製造することができる。それに対して、細胞を用いてポリペプチドを製造する場合、まず、上述の中から適当な宿主細胞を選択し、目的とするDNAによる形質転換を行う。続いて形質転換された細胞を培養することにより所望のポリペプチドを得ることができる。培養は、選択した細胞に適した公知の方法により行う。例えば、動物細胞を選択した場合には、DMEM(Virology 8:396(1959)、MEM(Science 122:501(1952))、RPMI1640(J.Am.Med.Assoc.199:519(1967))、199(Proc.Soc.Biol.Med.73:1(1950))、IMDM等の培地を用い、必要に応じウシ胎児血清(FCS)等の血清を添加し、pH約6〜8、30〜40℃において15〜200時間前後の培養を行うことができる。その他、必要に応じ途中で培地の交換を行ったり、通気及び攪拌を行ったりすることができる。
一方、in vivoにおけるポリペプチドの生産系を確立するためには、動物または植物へ目的とするDNAを導入し、生体内においてポリペプチドを産生させる。ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシ等の哺乳動物、カイコ等の昆虫(Susumu(1985)Nature 315:592−4)等の動物系が公知である(Lubon(1998)Biotechnol.Annu.Rev.4:1−54)。また、哺乳動物系においてトランスジェニック動物を用いることもできる。
例えば、所望のポリペプチドをヤギの乳汁中に分泌させることを目的とする場合、該ポリペプチドをコードするDNAをβカゼイン等の乳汁中に特異的分泌される蛋白質をコードするDNAと結合し、目的ポリペプチドを融合蛋白質として発現させるようにする。次に、融合蛋白質をコードするDNAをヤギの胚へ導入する。DNAを導入した胚を雌ヤギの子宮へ移植する。このヤギから生まれるトランスジェニックヤギ、またはその子孫は乳汁中に所望のポリペプチドを分泌する。必要に応じ、乳汁量を増やすため、ホルモンを投与することもできる(Ebert et al.(1994)Bio/Technology 12:699−702)。
タバコ等の植物を用いたトランスジェニック植物のポリペプチド産生系が公知である。まず、所望のポリペプチドコードDNAをpMON530等の植物発現に適したベクターに組み込み、Agrobacterium tumefaciens等の細菌に導入する。DNAの導入された細菌をNicotina tabacum等の植物に感染させ、植物を再生させることにより、所望のポリペプチドを得られたトランスジェニック植物の葉より単離することができる(Julian et al.(1994)Eur.J.Immunol.24:131−8)。その他の方法としては、PEGを用いプロトプラストへDNAを導入して植物体を再生する方法(Gene Transfer to Plants,Potrykus and Spangenberg ed.(1995)pp.66−74;インド型イネ品種に適する)、電気パルスによりプロトプラストへDNAを導入して植物体を再生する方法(Toki et al.(1992)Plant Physiol.100:1503−7;日本型イネに適する)、パーティクルガン法で植物細胞に直接DNAを導入し植物体を再生する方法(Christou et al.(1991)Bio/Technology 9:957−62)、アグロバクテリウムを介し細胞にDNAを導入し植物体を再生する方法(Hiei et al.(1994)Plant J.6:271−82)等が確立されている。植物を再生する方法については、Toki et al.(1995)Plant Physiol.100:1503−7を参照することができる。
トランスジェニック植物が一度得られた後は、さらに該植物の種子、果実、塊茎、塊根、株、切穂、カルス、プロトプラスト等を材料として同じように本発明のポリペプチドを産生する植物宿主を繁殖させ得ることができる。
通常、遺伝子組換え技術により製造された本発明のポリペプチドは、まず、ポリペプチドが細胞外に分泌される場合には培地を、特にトランスジェニック生物の場合には体液等を、細胞内に産生される場合には細胞を溶解して溶解物を回収する。そして、蛋白質の精製方法として公知の塩析、蒸留、各種クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、ゲル濾過、限外濾過、再結晶、酸抽出、透析、免疫沈降、溶媒沈澱、溶媒抽出、硫安またはエタノール沈澱等を適宜組合せることにより所望のポリペプチドを精製する。クロマトグラフィーとしては、アニオンまたはカチオン交換等のイオン交換、アフィニティー、逆相、吸着、ゲル濾過、疎水性、ヒドロキシアパタイト、ホスホセルロース、レクチンクロマトグラフィー等が公知である(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual,Marshak et al.ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996))。HPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
また、天然由来のポリペプチドを精製して取得してもよい。例えば、後述の本発明のポリペプチドに対する抗体、を利用して、アフィニティークロマトグラフィーにより精製することもできる(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987)Section 16.1−16.19)。また、GSTとの融合蛋白質とした場合にはグルタチオンカラムを、ヒスチジンタグを付加した融合蛋白質とした場合にはニッケルカラムを用いた精製法も利用できる。本発明のポリペプチドを融合蛋白質として製造した場合には、必要に応じて精製後にトロンビンまたはファクターXa等を使用して不要な部分を切断することもできる。さらに、必要に応じキモトリプシン、グルコシダーゼ、トリプシン、プロテインキナーゼ、リシルエンドペプチダーゼ等の酵素を用い得られたポリペプチドを修飾することも可能である。
本発明のポリペプチド断片は、上述の合成及び遺伝子工学的な手法に加えて、ペプチダーゼのような適当な酵素を用いて本発明のポリペプチドを切断して製造することもできる。
<抗体>
本発明により、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド断片に対する抗体が提供される。本発明の抗体にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(scFV)(Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83;The Pharmacology of Monoclonal Antibody,vol.113,Rosenburg and Moore ed.,Springer Verlag(1994)pp.269−315)、ヒト化抗体、多特異性抗体(LeDoussal et al.(1992)Int.J.Cancer Suppl.7:58−62;Paulus(1985)Behring Inst.Mitt.78:118−32;Millstein and Cuello(1983)Nature 305:537−9;Zimmermann(1986)Rev.Physiol.Biochem.Pharmacol.105:176−260;Van Dijk et al.(1989)Int.J.Cancer 43:944−9)、並びに、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fv等の抗体断片が含まれる。さらに、本発明の抗体は必要に応じ、PEG等により修飾されていてもよい。その他、本発明の抗体は、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合蛋白質、GST、緑色蛍光蛋白質(GFP)等との融合蛋白質として製造され得、二次抗体を用いずに検出できるようにしてもよい。また、ビオチン等により抗体を標識することによりアビジン、ストレプトアビジン等を用いて抗体の回収を行い得るように改変されていてもよい。
本発明の抗体は、本発明のポリペプチド若しくはその断片、またはそれらを発現する細胞を感作抗原として製造することができる。また、本発明のポリペプチド若しくはその断片のうち短いものは、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、卵白アルブミン等のキャリアに結合して免疫原として用いてもよい。また、本発明のポリペプチドまたはその断片と共に、アルミニウムアジュバント、完全(または不完全)フロイントアジュバント、百日咳菌アジュバント等の公知のアジュバントを抗原に対する免疫応答を強化するために用いてもよい。
ポリクローナル抗体は、例えば、本発明のポリペプチドまたはその断片を所望によりアジュバントと共に哺乳動物に免疫し、免疫した動物より血清を得る。ここで用いる哺乳動物は、特に限定されないが、ゲッ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が一般的である。マウス、ラット、ハムスター等のゲッ歯目、ウサギ等のウサギ目、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等のサル等の霊長目の動物が挙げられる。動物の免疫化は、感作抗原をPhosphate−Buffered Saline(PBS)または生理食塩水等で適宜希釈、懸濁し、必要に応じアジュバントを混合して乳化した後、動物の腹腔内または皮下に注射して行われる。その後、好ましくは、フロイント不完全アジュバントに混合した感作抗原を4〜21日毎に数回投与する。抗体の産生は、血清中の所望の抗体レベルを慣用の方法により測定することにより確認することができる。最終的に、血清そのものをポリクローナル抗体として用いても良いし、さらに精製して用いてもよい。具体的な方法として、例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987)Section 11.12−11.13)を参照することができる。
モノクローナル抗体を産生するためには、まず、上述のようにして免疫化した動物より脾臓を摘出し、該脾臓より免疫細胞を分離し、適当なミエローマ細胞とポリエチレングリコール(PEG)等を用いて融合してハイブリドーマを作成する。細胞の融合は、Milsteinの方法(Galfre and Milstein(1981)Methods Enzymol.73:3−46)に準じて行うことができる。ここで、適当なミエローマ細胞として特に、融合細胞を薬剤により選択することを可能にする細胞が挙げられる。このようなミエローマを用いた場合、融合されたハイブリドーマは、融合された細胞以外は死滅するヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液(HAT培養液)で培養して選択する。次に、作成されたハイブリドーマの中から、本発明のポリペプチドまたはその断片に対して結合する抗体を産生するクローンを選択する。その後、選択したクローンをマウス等の腹腔内に移植し、腹水を回収してモノクローナル抗体を得る。また、具体的な方法として、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987)Section 11.4−11.11)を参照することもできる。
ハイブリドーマは、その他、最初にEBウイルスに感染させたヒトリンパ球をin vitroで免疫原を用いて感作し、感作リンパ球をヒト由来のミエローマ細胞(U266等)と融合し、ヒト抗体を産生するハイブリドーマを得る方法(特開昭63−17688号公報)によっても得ることができる。また、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物を感作して製造した抗体産生細胞を用いても、ヒト抗体を得ることができる(WO92/03918;WO93−02227;WO94/02602;WO94/25585;WO96/33735;WO96/34096;Mendez et al.(1997)Nat.Genet.15:146−56等)。ハイブリドーマを用いない例としては、抗体を産生するリンパ球等の免疫細胞に癌遺伝子を導入して不死化する方法が挙げられる。
また、遺伝子組換え技術により抗体を製造することもできる(Borrebaeck and Larrick(1990)Therapeutic Monoclonal Antibodies,MacMillan Publishers LTD.,UK参照)。そのためには、まず、抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマまたは抗体産生細胞(感作リンパ球等)からクローニングする。得られた遺伝子を適当なベクターに組み込み、宿主に該ベクターを導入し、宿主を培養することにより抗体を産生させる。このような組換え型の抗体も本発明の抗体に含まれる。代表的な組換え型の抗体として、非ヒト抗体由来可変領域及びヒト抗体由来定常領域とからなるキメラ抗体、並びに非ヒト抗体由来相補性決定領域(CDR)、及び、ヒト抗体由来フレームワーク領域(FR)及び定常領域とからなるヒト化抗体が挙げられる(Jones et al.(1986)Nature 321:522−5;Reichmann et al.(1988)Nature 332:323−9;Presta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−6;Methods Enzymol.203:99−121(1991))。
本発明の抗体断片は、上述のポリクローナルまたはモノクローナル抗体をパパイン、ペプシン等の酵素で処理することにより製造し得る。または、抗体断片をコードする遺伝子を用いて遺伝子工学的に製造することも可能である(Co et al.,(1994)J.Immunol.152:2968−76;Better and Horwitz(1989)Methods Enzymol.178:476−96;Pluckthun and Skerra(1989)Methods Enzymol.178:497−515;Lamoyi(1986)Methods Enzymol.121:652−63;Rousseaux et al.(1986)121:663−9;Bird and Walker(1991)Trends Biotechnol.9:132−7参照)。
本発明の多特異性抗体には、二特異性抗体(BsAb)、ダイアボディ(Db)等が含まれる。多特異性抗体は、(1)異なる特異性の抗体を異種二機能性リンカーにより化学的にカップリングする方法(Paulus(1985)Behring Inst.Mill.78:118−32)、(2)異なるモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを融合する方法(Millstein and Cuello(1983)Nature 305:537−9)、(3)異なるモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子(4種のDNA)によりマウス骨髄腫細胞等の真核細胞発現系をトランスフェクションした後、二特異性の一価部分を単離する方法(Zimmermann(1986)Rev.Physio.Biochem.Pharmacol.105:176−260;Van Dijk et al.(1989)Int.J.Cancer 43:944−9)等により作製することができる。一方、Dbは遺伝子融合により構築され得る二価の2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーの抗体断片であり、公知の手法により作製することができる(Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−8;EP404097;WO93/11161参照)。
抗体及び抗体断片の回収及び精製は、プロテインA及びGを用いて行う他、<ポリペプチドの製造>の項で詳細に記載した蛋白質精製技術によっても行い得る(Antibodies:A Laboratory Manual,Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988))。例えば、本発明の抗体の精製にプロテインAを利用する場合、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia)等のプロテインAカラムが公知であり、使用可能である。得られた抗体の濃度は、その吸光度を測定することにより、または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等により決定することができる。
抗体の抗原結合活性は、吸光度測定、蛍光抗体法、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ELISA等により測定することができる。ELISA法による測定の場合、本発明の抗体をプレート等の担体に固相化し、次いで本発明のポリペプチドを添加した後、目的とする抗体を含む試料を添加する。ここで、抗体を含む試料としては、抗体産性細胞の培養上清、精製抗体等が考えられる。続いて、本発明の抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートのインキュベーションを行う。その後、プレートを洗浄し、二次抗体に付加された標識を検出する。即ち、二次抗体がアルカリフォスファターゼで標識されている場合には、p−ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を添加して吸光度を測定することで、抗原結合活性を測定することができる。また、抗体の活性評価に、BIAcore(Pharmacia)等の市販の系を使用することもできる。
本発明の抗体は、本発明のポリペプチド及びその断片の精製に使用することができる。また、パーキンソン病等に対する細胞移植治療に好適に使用され得るドーパミン産生ニューロン前駆細胞を得るために利用することもできる。
<ドーパミン産生ニューロンの選択方法>
本発明により分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択的に均一な集団として得る方法が提供された。より詳細には、本発明の65B13ポリペプチドに対する抗体とドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むことが予測される細胞試料とを接触させ、抗体に結合する細胞を選択することで本発明のポリペプチドを発現している細胞、即ち、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を獲得できる(図12から14参照)。細胞との接触前に、抗体を適当な担体に固定化して用いることも可能である。または、細胞と抗体とを接触させ、結合させた後、抗体のアフィニティーによる精製を行うことで、該抗体と結合した細胞を選択的に回収することもできる。例えば、本発明の抗体がビオチンと結合されている場合には、アビジンやストレプトアビジンを結合したプレートやカラムに対して添加することにより精製を行うことができる。
また、65B13はIgドメインを持つ接着分子様の構造を有し(図6参照)、培養細胞中で発現させた場合、65B13を発現させた細胞同士が接着することが判っている。65B13を発現させていない細胞とは接着しないため、65B13を介した接着はホモフィリックな結合であると考えられる。このような65B13ポリペプチドの性質から、65B13ポリペプチドの特に細胞外領域部分を利用し、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択することもできる。例えば、適当な担体上に、65B13ポリペプチドの細胞外領域部分を固定し、細胞と接触させることによりドーパミン産生ニューロン前駆細胞を取得することが可能である。従って、本発明により、本発明のポリペプチドの少なくとも細胞外領域部分を含むペプチドとドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含むドーパミン産生ニューロンを選択する方法が提供される。
本発明における分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞の分離は、抗65B13抗体を用いたフローサイトメトリーにより効率的に行なうことができる(実施例4、図14)。
その他、65B13に対するプロモーターを利用してドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択することもできる(例えば、特開2002−51775号公報参照)。例えば、後述する65B13の発現領域解析により得られたプロモーター部分に対し、GFP等の検出可能なマーカーをコードする遺伝子を連結した構築物を含むベクターを細胞に対してトランスフェクションすることができる。その他、65B13遺伝子座へマーカーをコードする遺伝子をノックインすることができる。どちらの場合にも、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的にマーカー遺伝子の発現が検出されることとなり、特異的な細胞の選択が可能となる。
ここで使用する細胞試料は好ましくは、中脳腹側領域の細胞、またはin vitroで分化誘導されたドーパミン産生ニューロンを含む培養培地である。in vitroにおけるドーパミン産生ニューロンの分化誘導は、公知のES細胞、骨髄間質細胞、神経由来の不死化セルライン(特表平8−509215号公報;特表平11−506930号公報;特表2002−522070号公報)、ニューロン始原細胞(特表平11−509729号公報)等の細胞を出発材料として、公知の方法により行うことができる。通常、ドーパミン産生ニューロンは、脳のドーパミン産生ニューロン領域から得た組織を神経組織由来の支持細胞層と共培養することにより分化させることができる。さらに、線条体及び皮質等の通常非ドーパミン産生神経組織からドーパミン産生細胞を誘導する方法も知られている(特表平10−509319号公報)。また、低酸素条件下での培養により、より多くドーパミン産生ニューロンを含む細胞が得られるとの報告も成されている(特表2002−530068号公報)。本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞の選択に用いる細胞試料は、如何なる方法により分離または培養された細胞群であってもよい。
また、本発明の抗体またはポリペプチドを固定する担体としては、細胞に対して無害なものである必要がある。例えば、合成または天然の有機高分子化合物、ガラスビーズ、シリカゲル、アルミナ、活性炭等の無機材料、及びこれらの表面に多糖類、合成高分子等をコーティングしたものが考えられる。担体の形状には特に制限はなく、膜状、繊維状、顆粒状、中空糸状、不識布状、多孔形状、ハニカム形状等が挙げられ、その厚さ、表面積、太さ、長さ、形状、大きさを種々変えることにより接触面積を制御することができる。
<ドーパミン産生ニューロン前駆細胞>
このようにして獲得された細胞は、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞であることから、従来の雑多な細胞集団または外来遺伝子を導入したドーパミン産生ニューロンと比べて、安全性、生存率、ネットワーク形成能の面でPD等の神経変性疾患の移植治療に好ましいものである。さらに、本方法により得られた本発明の細胞(群)は、分裂直後の前駆細胞であることから、in vitroにおいて培地等の条件を選択することにより適当な段階まで分化させることも可能であり、種々の神経移植治療の材料としても好ましいものである。本発明の方法により得られたニューロン前駆細胞の移植では、1×10〜1×10個、さらに好ましくは5〜6×10個のニューロンを移植する。第1の方法としては、細胞の懸濁液を脳に移植する定位脳固定術(stereotaxic surgery)が挙げられる。また、ミクロ手術(microsurgery)により細胞を移植しても良い。ニューロン組織の移植方法については、Backlund等(Backlund et al.(1985)J.Neurosurg.62:169−73)、Lindvall等(Lindvall et al.(1987)Ann.Neurol.22:457−68)、Madrazo等(Madrazo et al.(1987)New Engl.J.Med.316:831−4)の方法を参照することができる。
さらに、本発明の細胞は、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子及び前駆細胞からドーパミン産生ニューロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離、PD治療のターゲット探索、ドーパミン産生ニューロンの成熟過程の解明、並びに成熟を指標としたスクリーニング等にも利用することができる。
<遺伝子発現レベルの比較>
本発明の抗体を用いて得られた分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞は、該細胞において特異的に発現している遺伝子を単離する材料として使用することができる。さらに、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を分化、誘導、または増殖させた細胞に特異的に発現している遺伝子を調べ、単離することもできる。また、分化/誘導/増殖させた細胞と元の前駆細胞とにおいて発現レベルに差違のある遺伝子を調べることによりドーパミン産生ニューロンの生体内における分化に必要とされる遺伝子を調べることもできる。このような遺伝子はドーパミン産生ニューロンにおける何等かの欠陥が病因となっている疾病の治療対象候補となり得るので、当該遺伝子を決定し、単離することは非常に有用である。
本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞と該細胞から分化/誘導/増殖された細胞若しくはその他の細胞、または該分化/誘導/増殖された細胞とその他の細胞との間での遺伝子の発現レベルの比較は、慣用の細胞in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、RNAドットブロットハイブリダイゼーション、逆転写PCR、RNase保護アッセイ、DNAマイクロアレイハイブリダイゼーション、遺伝子発現の連続解析(SAGE;serial analysis of gene expression)(Velculescu et al.(1995)Science 270:484−7)、差し引きハイブリダイゼーション(subtractive hvbridization)、代表差違分析(representation difference analysis;RDA)(Lisitsyn(1995)Trends Genet.11:303−7)等により行うことができる。
細胞in situハイブリダイゼーションでは、特定のRNA配列に特異的な標識プローブを用い細胞から調製した総RNAまたはpolyARNAに対してハイブリダイゼーションを行うことにより、個々の細胞におけるRNAのプロセッシング、輸送、細胞質への局在化が起こる場所等を調べることができる。また、RNAの大きさをゲル電気泳動等によりサイズ分画して決定することもできる。また、定量的な蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)及びデジタル画像顕微鏡を用いれば、RNA転写産物をin situで視覚的に捉えることも可能であり(Femino et al.(1998)Science 280:585−90)、本発明において利用することができる。
遺伝子発現の解析で逆転写PCRを用いた場合、特定遺伝子の発現を大まかに定量することができる。本方法では、1つのRNA転写産物の種々のアイソフォームを検出及び解析することも可能である。逆転写PCRにおいてはまず、エキソン特異性プライマーを用いた逆転写PCRを行い、予想された産物以外の増幅産物が検出された場合、それらを解析することにより選択的スプライシングにより生じるmRNAアイソフォームを同定することが可能である。例えば、Pykett et al.(1994)Hum.Mol.Genet.3:559−64等に記載の方法を参照することができる。特に大まかな発現パターンを迅速に解析することが求められる場合、本発明のPCRを利用した本方法は、その速さ、感度の高さ、簡便さの点からも望ましいものである。
DNAチップを使用することにより、遺伝子発現スクリーニングの能率を向上させることができる。ここで、DNAチップとは、ガラス等の担体表面上にオリゴヌクレオチドまたはDNAクローン等を高密度に固定した小型のアレイである。例えば、多重発現スクリーニングを行うためには、各目的遺伝子に対するcDNAクローンまたは該遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドをチップに対して固定化し、マイクロアレイを作製する。次に本発明のドーパミン特異的ニューロン前駆細胞、または該細胞より分化/誘導/増殖された細胞よりRNAを調製し、逆転写酵素処理を行い、cDNAを得る。次に、得られたcDNA試料を蛍光タグ等のタグにより標識し、マイクロアレイに対するハイブリダイゼーションを行う。その結果、総標識cDNA中、細胞内で活発に発現している遺伝子の割合が高くなり、あまり発現されていない遺伝子の割合は低くなる。即ち、標識cDNAとチップ上のcDNAクローンまたはオリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成を意味する蛍光シグナルの強度は、標識cDNA内での各配列の発現の度合いを示すことなり、遺伝子発現の定量を可能成らしめる。
また、縮重PCRプライマーを用いた逆転写PCRを行うmRNAディファレンシャルディスプレイにより、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞、または該細胞から分化/誘導/増殖された細胞について多数の遺伝子の発現を同時に解析することもできる。まず、特定のmRNAのpolyA尾部に3’末端の1または2つの塩基を変更した修飾オリゴdTプライマーを準備し、本発明の前駆細胞または該細胞から分化/増殖された細胞、及び、発現を比較する対照細胞から単離した総RNAに対して逆転写酵素反応を行う(Liang et al.(1993)Nucleic Acids Res.21:3269−75)。変更した塩基が「G」であれば、polyA尾部の直前にCを持つmRNAを選択的に増幅することができ、また「CA」であれば、TGを直前に持つmRNAを増幅することができる。次に、第2のプライマーとして、10塩基程度の長さの任意の配列を有するものを用意し、修飾オリゴdTプライマー及び第2のプライマーを使用してPCR増幅反応を行う。増幅産物を泳動距離の長いポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、サイズ分画する。このような方法により、本発明の細胞と対照細胞とで各細胞に特異的に発現しているmRNA由来のcDNAは、一方の試料を泳動した場合にのみ検出されるバンドとして検出することができる。この方法では、同定されていない遺伝子の発現についても解析することができる。
SAGE分析は、多数の転写産物の発現を同時に検出することができ、また検出に特殊な装置を必要としない点で好ましい分析方法の一つである。まず、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞または該細胞から分化/誘導/増殖された細胞よりpolyARNAを慣用の方法により抽出する。次に、ビオチン化オリゴdTプライマーを用い、前記RNAをcDNAに変換し、4塩基認識制限酵素(アンカー用酵素;AE)で処理する。ここで、AE処理断片は、その3’末端にビオチン基を含んだ形となる。次に、AE処理断片をストレプトアビジンに結合させ、結合されたcDNAを2画分に分け、それぞれの画分を別々の2本鎖オリゴヌクレオチドアダプター(リンカー)A及びBに連結する。このリンカーは、(1)アンカー用酵素の作用で生じる突出部の配列と相補的な配列を有する1本鎖突出部、(2)タグ用酵素(tagging enzyme;TE)となるIIS型制限酵素(認識部位より20bp以下の離れた定位置の切断を行う)の5’塩基認識配列、及び(3)PCR用特異的プライマーを構成するのに十分な追加配列より構成される。ここで、リンカーを連結したcDNAをタグ用酵素で切断することにより、リンカー結合型の状態でcDNA配列部分のみが短鎖配列タグとなる。次に、リンカーの異なる2種類のプールを互いに連結し、リンカーA及びBに特異的プライマーを使用してPCR増幅する。その結果、増幅産物はリンカーA及びBに結合した2つの隣接配列タグ(ダイタグ;ditag)を含む多様な配列の混在物として得られる。そこで、増幅産物をアンカー用酵素により処理し、遊離したダイタグ部分を通常の連結反応により鎖状に連結し、クローニングを行う。クローニングにより得られたクローンの塩基配列を決定することにより、一定長の連続ダイタグの読み出しを得ることができる。このようにしてクローンの塩基配列を決定し、配列タグの情報が得られれば、それぞれのタグに該当するmRNAの存在を同定することができる。
差し引きハイブリダイゼーションは、種々の組織または細胞間で発現の差違のある遺伝子のクローニングによく用いられる方法であるが、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞、またはそれから分化/誘導/増殖された細胞において特異的に発現している遺伝子をクローニングするのにも使用することができる。まず、本発明の前記細胞のうちの試験する細胞のDNA試料を調製する(以下、テストDNAと呼ぶ)。次に、比較する細胞のDNA(以下、ドライバーDNAと呼ぶ)を調製する。テストDNAとドライバーDNAとを逆に用いることもできる。いずれにせよ、テストDNAに存在し、ドライバーDNAに存在しない遺伝子の存在が検出される。次に、調製したテストDNA及び大過剰量のドライバーDNAを混合し、変性させ一本鎖DNAとした後にアニーリングさせる。アニーリング条件を調節することにより、ドライバーDNA中には存在しない特異的な配列をテストDNA由来のDNAのみからなる二本鎖DNAとして単離することができる。より詳細な方法については、Swaroop et al.(1991)Nucleic Acids Res.19:1954及びYasunaga et al.(1999)Nature Genet.21:363−9等を参照することもできる。
RDA法は、PCRを利用した、ドライバーDNAに存在しないテストDNA中の配列を選択的に増幅することを可能とする方法であり、上述のその他の方法と同様に本発明において用いることができる。より詳細な手順については、Lisitsyn(1995)Trends Genet.11:303−7及びSchutte et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:5950−4を参照することができる。
以上のようにして検出、単離されたドーパミン産生ニューロン前駆細胞、または該細胞を分化、誘導、または増殖させた細胞に特異的な遺伝子を上述の各種公知の方法によりベクター等に挿入し、配列決定、発現解析を行うこともできる。
<前駆細胞の成熟を指標としたスクリーニング>
本発明により、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に対し、被験物質を接触させる工程、及び接触による前駆細胞の分化または増殖を検出する工程を含む、スクリーニング方法が提供される。本方法によりスクリーニングされる化合物は、ドーパミン産生ニューロンの分化、増殖等を調節する機能を示すことから、ドーパミン産生ニューロンにおける何等かの欠陥が病因となっている疾病の治療対象候補となり得、有用と考えられる。
ここで、「被験物質」とはどのような化合物であってもよいが、例えば、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物ライブラリー、合成ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)抽出液、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)培養上清、精製または部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物または動物等由来の抽出物、土壌、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーが挙げられる。
細胞の分化や増殖は、被験物質と接触させない場合における細胞の状態と比較することにより検出することができる。細胞の分化や増殖は、顕微鏡下において形態学的な観察を行うこと、または、細胞で産生されるドーパミン等の物質を検出、定量して検出してもよい。
<65B13の発現領域解析>
本発明により65B13遺伝子の発現制御領域が提供される。本発明の発現制御領域は、本発明のポリヌクレオチドを利用してゲノムDNAから公知の方法によってクローニングすることができる。例えば、S1マッピング法のような転写開始点の特定方法(細胞工学 別冊8 新細胞工学実験プロトコール,東京大学医科学研究所制癌研究部編,秀潤社(1993)pp.362−374)が公知であり、本発明において利用できる。一般に、遺伝子の発現制御領域は、遺伝子の5’末端の15〜100bp、好ましくは30〜50bpをプローブDNAとして利用して、ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることによりクローニングすることができる(本発明においては、配列番号:1の1〜176番目または配列番号:2の1〜126番目の塩基全部またはその1部)。このようにして得られるクローンは、10kbp以上の5’非翻訳領域を含むものであるので、次にエキソヌクレアーゼ等により処理し短縮化または断片化する。最後に、短縮された発現制御領域の候補を含む配列部分をレポーター遺伝子を利用して、その発現の有無、強さ、制御等について評価し、本発明の65B13の発現制御領域の活性維持のための最小必要単位を決定することができる。
遺伝子の発現制御領域は、Neural Network等のプログラム(http://www.fruitfly.org./seq_tools/promoter.html;Reese et al.,Biocomputing:Proceedings of the 1996 Pacific Symposium,Hunter and Klein ed.,World Scientific Publishing Co.,Singapore,(1996))を用いて予測することもできる。さらに、発現制御領域の活性最小単位を予測するプログラム(http://biosci.cbs.umn.edu./software/proscan/promoterscan.htm;Prestridge(1995)J.Mol.Biol.249:923−32)も公知であり、本発明において用いることができる。
このようにして単離された、65B13遺伝子の発現領域は、in vivoで分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的に所望の蛋白質を産生するのに利用することもできる。
<リガンドの同定>
本発明により、本発明のポリペプチドに対するリガンドが提供された。本発明のポリペプチドは膜貫通ドメインを有することから、天然において細胞膜中に埋め込まれた状態で存在すると考えられる。分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞で一過性に発現されていることから、ニューロンの成熟に関与していることが考えられる。従って、本発明のポリペプチドに対するアゴニストやアンタゴニスト等の機能を示す可能性があるリガンドは、ドーパミン産生ニューロンのin vivo、ex vivo及びin vitroにおける分化を制御するのに利用できる可能性がある。本発明のポリペプチドに対するリガンドの同定においては、まず、本発明のポリペプチドと候補化合物とを接触させ、結合の有無を検定する。この際、本発明のポリペプチドを担体に固定したり、細胞膜に埋めこまれた状態に発現させて用いることもできる。候補化合物としては特に制限はなく、遺伝子ライブラリーの発現産物、海洋生物由来の天然成分、各種細胞の抽出物、公知化合物及びペプチド、植物由来の天然成分、生体組織抽出物、微生物の培養上清、並びにファージディスプレイ法等によりランダムに製造されたペプチド群(J.Mol.Biol.222:301−10(1991))等が含まれる。また、結合の検出を容易にするために、候補化合物は標識しても良い。
【図面の簡単な説明】
図1は、65B13−aのcDNA配列及びアミノ酸配列を示す図である。シグナル配列及び膜貫通領域が下線で示される。
図2は、65B13−aのcDNA配列及びアミノ酸配列を示す図である。シグナル配列及び膜貫通領域が下線で示される。図1の続きを示している。
図3は、65B13−bのcDNA配列及びアミノ酸配列を示す図である。シグナル配列及び膜貫通領域が下線で示される。
図4は、65B13−bのcDNA配列及びアミノ酸配列を示す図である。シグナル配列及び膜貫通領域が下線で示される。図3の続きを示している。
図5は、65B13−a及び65B13−bのアミノ酸配列の比較した図である。
図6は、65B13の構造の模式図である。黒く塗りつぶされた部分は膜貫通領域を、またIgは、Igドメインを示す。
図7は、E12.5マウス脳における65B13mRNAの発現をin situハイブリダイゼーションにより解析した結果を示す写真である。A:矢状断面、B:傍矢状断面。HB:後脳、MB:中脳、SC:脊髄、CB:小脳原基。
図8は、E12.5マウス脊髄における65B13mRNAの発現をin situハイブリダイゼーションにより解析した結果を示す写真である。A:65B13、B:NCAM、C:65B13、Ki67、及びNCAMの発現領域の比較(各々、A及びBの枠内部分を拡大して示す)。
図9は、E12.5マウス中脳腹側における65B13mRNA、及びチロシンヒドロキシラーゼ(TH)mRNAの発現をin situハイブリダイゼーションにより解析した結果を示す写真である。A:65B13、B:TH。
図10は、65B13の中脳における発現パターンを示す模式図である。
図11は、65B13の発現時期を示す模式図である。
図12は、抗65B13抗体を用いたドーパミン産生ニューロン前駆細胞の分離及び活用法を示す模式図である。
図13は、65B13(Cy3)、Nurr1(FITC)、TH(Cy5)タンパク質の発現を、それぞれに対する抗体を用いて免疫蛍光染色法にて解析した結果を示す写真である。
図14は、65B13モノクローナル抗体を用いて、マウス12.5日胚中脳腹側(A)、またはin vitroでES細胞からドーパミン産生ニューロンを分化誘導した細胞群(B)を染色し、フローサイトメトリーを用いて65B13発現細胞を検出した結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例により本発明についてより詳細に検討するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。
[実施例1]ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子の単離及び配列解析
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子を単離するために、E12.5マウス中脳腹側と背側のRNAを用いてサブトラクション(N−RDA)法により発現の差のある遺伝子を増幅し、得られた遺伝子の配列を解析した。
1.N−RDA法
1−1.アダプターの調製
下記のオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、100μMに調製した。

1−2.cDNA合成
マウス12.5日胚(日本SLC)中脳腹側及び背側領域よりRNeasy mini kit(Qiagen)を用い全RNAを調製し、cDNA synthesis kit(TAKARA)を用いて二本鎖cDNAを合成した。制限酵素RsaIで消化したのち、ad2を付加し、ad2Sをプライマーとして72℃で5分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を15サイクルのPCRを行い、最後に72℃で2分インキュベートし、cDNAを増幅した。N−RDAのPCRはすべて以下の反応液組成で行った。
10×ExTaq 5μl
2.5mM dNTP 4μl
ExTaq 0.25μl
100μM primer 0.5μl
cDNA 2μl
蒸留水 38.25μl
1−3.Driverの作製
ad2Sで増幅したcDNAをさらに、94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を5サイクルのPCRを行い、最後に72℃で2分インキュベートした。Qiaquick PCR purification kit(Qiagen)を用いてcDNAを精製し、RsaI消化した。1回のサブトラクションに3μgずつ使用した。
1−4.Testerの作製
ad2Sで増幅したcDNAをさらに94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を5サイクルのPCRを行い、最後に72℃で2分インキュベートした。Qiaquick PCR purification kit(Qiagen)を用いてcDNAを精製し、RsaI消化した。60ngのRsaI消化cDNAにad3を付加した。
1−5.サブトラクション1回目
上記3及び4で作製したTesterおよびDriverを混合し、エタノール沈殿した後に、1xPCR buffer 1μlに溶解した。98℃5分の後、1xPCR buffer+1M NaCl 1μlを加えた。さらに98℃5分の後、68℃で16時間ハイブリダイズさせた。
ハイブリダイズさせたcDNAをad3Sをプライマーとして72℃で5分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を10サイクル行った。続いて、Mung Bean Nuclease(TAKARA)で消化し、Qiaquick PCR purification kitで精製した。さらに94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を13サイクルのPCRを行い、最後に72℃で2分インキュベートした。
1−6.均一化
サブトラクション1回目で増幅したcDNA 8ngに2xPCR buffer 1μlを加えた。98℃5分の後、1xPCR buffer+1M NaCl 2μlを加えた。さらに98℃5分の後、68℃で16時間ハイブリダイズさせた。
ハイブリダイズさせたcDNAをRsaIで消化し、Qiaquick PCR purification kitで精製した。これをad3Sをプライマーとして94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を11サイクルのPCRを行い、最後に72℃で2分インキュベートした。RsaIで消化し、ad4を付加した。
1−7.サブトラクション2回目
上記6でad4を付加したcDNA 20ngをTesterとして、上記3のDriverと混合し、さらに、上記5と同様の方法でサブトラクションを行った。最終的にRsaI消化したcDNAにad5を付加した。
1−8.サブトラクション3回目
上記7でad5を付加したcDNA 2ngをTesterとして、上記3のDriverと混合し、さらに、上記5と同様の方法でサブトラクションを行った。最終的にRsaI消化したcDNAにad13を付加した。
1−9.サブトラクション4回目
上記8でad13を付加したcDNA 2ngをTesterとして、上記3のDriverと混合し、以下、上記5と同様の方法でサブトラクションを行った。増幅したcDNAをpCRII(Invitrogen)にクローニングし、ABI3100シーケンスアナライザーを用いて塩基配列を解析した。
次に、N−RDA法により得られた65B13断片の配列を用い、以下の方法でRACEを行った。
2.RACE法
マウス12.5日胚脳よりRNeasy mini kit(Qiagen)により全RNAを調製し、μMACS mRNA isdolation kit(Miltenyi Biotec)を用いてmRNAを調製した。調製したmRNAより、Superscript choice system(Invitrogen)およびpCRIIベクター(Invitrogen)を用いてcDNAライブラリーを調製した。これよりプラスミドDNAを調製し、以下のプライマーを用いてPCRを行った。

PCRの条件は次の通りであった。
1st PCR
10×ExTaq 2μl
2.5mM dNTP 1.6μl
ExTaq 0.1μl
100μM TAU2またはTAD3 0.04μl
100μM 65B13 F1またはR1 0.2μl
cDNA(10ng/μl)1μl
蒸留水15.06μl
94℃で5分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で5分の反応を25サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした。続いて、1回目のPCRにより得られた産物を100倍希釈して2nd PCRを行った。2nd PCRの条件は次の通りであった。
2nd PCR
10×ExTaq 5μl
2.5mM dNTP 4μl
ExTaq 0.25μl
100μM TAU4またはTAD4 0.1μl
100μM 65B13 F2またはR2 0.5μl
1/100 1st PCR産物 1μl
蒸留水 15.06μl
94℃で5分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で5分の反応を25サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした。増幅されたcDNA断片をpCRIIにクローニングし、ABI3100シーケンスアナライザーを用いてシーケンスの解析を行った。
得られた2つの遺伝子、65B13−a及び65B13−bのヌクレオチド配列を配列番号:1(図1及び2)、及び配列番号:2(図3及び4)として示す。65B13−aのコード領域は、配列番号:1の177番目のAから始まり、2278〜2280番目の終止コドンまで続き、700アミノ酸からなる蛋白質をコードする。そして、そのうち177番目から228番目までの配列にコードされる17アミノ酸残基はシグナル配列、1717番目から1767番目までの配列にコードされる17アミノ酸残基は膜貫通領域であった。それに対し、65B13−bのコード領域は、配列番号:2の127番目のAから始まり、2277〜2079番目の終止コドンまで続き、650アミノ酸からなる蛋白質をコードする。そして、そのうち127番目から177番目までの配列にコードされる17アミノ酸残基はシグナル配列、1516番目から1566番目までの配列にコードされる17アミノ酸残基は膜貫通領域であった。65B13−a及び65B13−b遺伝子にコードされるアミノ酸配列を配列番号:3及び4として示す。図5において示すように、両遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を比較したところ、65B13−aと65B13−bとはアルタナティブスプライシングによるアイソフォームであり、65B13−bは65B13−aに対しN末端側の50アミノ酸が欠失いることが判明した。65B13遺伝子によりコードされる蛋白質はホモロジーサーチにより、図6に示すような5つのIgドメインを持つ、一回膜貫通型蛋白質であると考えられた。
[実施例2]65B13遺伝子の発現解析
次に、これらの遺伝子を用いて以下のプロトコールによりin situハイブリダイゼーションによる発現解析を行った。
まず、マウス12.5日胚をOCTで包埋し、厚さ16μmの新鮮凍結切片を作製した。スライドガラス上で乾燥させた後に4%PFAで室温30分間固定した。PBSで洗浄した後、ハイブリダイゼーション(1μg/mlDIG化RNAプローブ、50%ホルムアミド、5xSSC,1%SDS,50μg/ml yeast RNA,50μg/ml Heparin)を65度で40時間行った。その後、洗浄(50%ホルムアミド、5xSSC,1%SDS)を65度で行い、RNase処理(5μg/ml RNase)を室温5分間行った。0.2xSSCで65度の洗浄、1xTBSTで室温で洗浄の後、ブロッキング(Blocking reagent:Roche)を行った。アルカリフォスファターゼ標識抗DIG抗体(DAKO)を反応させ、洗浄(1xTBST、2mM Levamisole)の後、NBT/BCIP(DAKO)を基質として発色させた。
そして、これらの遺伝子を用いたin situハイブリダイゼーションによる発現解析の結果、ドーパミン産生ニューロンの発生する時期であるE12.5で、65B13が中脳腹側、小脳原基、後脳、及び脊髄で発現していることが判った(図7)。脊髄における発現をさらに増殖マーカーであるKi67及び成熟マーカーであるNCAMと比較したところ、Ki67陽性の神経前駆細胞(neural progenitor)の増殖する領域である脳室領域(ventricular zone;VZ)内の一部の細胞に65B13が発現しているのに対し、分裂停止後のより成熟したNCAM陽性の前駆細胞の存在する外套層(mantle layer;ML)内には発現が認められなかった(図8)。脊髄以外の領域でも同様に、VZ内の一部の細胞で発現が認められた。これらの発現パターンから、65B13は分裂停止直後の神経前駆細胞で一過性に発現するものと考えられた。
中脳では、最も腹側にあたる領域のVZ内のみで発現が認められた。ドーパミン産生ニューロンのマーカー遺伝子であるチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase;TH)の発現と比較すると、THはMLにのみ発現しているため同一の細胞で両者の発現が認められることはないものの、背−腹軸方向で発現領域が完全に一致していることが判明した(図9)。一般に神経管内の神経細胞は、まずVZ内で増殖し、分化開始と共に分裂を停止し、その後、すぐ外側のMLに移動してから成熟することが知られている。従って、ドーパミン産生ニューロンの前駆体は、TH発現領域のすぐ内側のVZ内で増殖し、分裂停止後に外側に移動してからTHを発現するものと考えられている。この前駆体の増殖するVZ領域が65B13の発現領域と一致することから、65B13は、中脳では分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的、且つ一過性に発現すると考えられた(図10及び11)。
[実施例3]65B13タンパク質の発現解析
次に、65B13遺伝子のうち、細胞外領域をコードする遺伝子配列を用いて、以下のプロトコールにより抗65B13抗体を作製し、免疫組織染色による発現解析を行った。
まず、65B13遺伝子のうち、細胞外領域をコードする遺伝子配列を293E細胞に遺伝子導入して、65B13タンパク質の細胞外領域を発現させて回収した。回収したタンパク質をハムスターに免疫したのち、リンパ球細胞を取り出してミエローマ細胞とフュージョンさせた。フュージョンさせた細胞をマウスの腹腔内に移植し、腹水を得て、抗65B13モノクローナル抗体を精製した。次にマウス12.5日胚を4%PFA/PBS(−)で4℃、2時間固定したのち、20%ショ糖/PBS(−)で4℃、一晩置換し、OCTで包埋した。厚さ12umの切片を作製し、スライドガラスに貼り付けた後、室温で30分乾燥させ、PBS(−)で再び湿潤させた。その後、ブロッキング(ブロックエース)を室温、20分間行い、作製した抗65B13モノクローナル抗体(10ug/ml、2.5%ブロックエース/PBS)、抗TH抗体(Chemicon、0.7ug/ml、2.5%ブロックエース/PBS)、抗Nurr1抗体(Santa Cruz、4ug/ml、2.5%ブロックエース/PBS)を室温、1時間反応させた後、さらに4℃、一晩反応させた。0.1%Triton X−100/PBS(−)で、室温、10分間の洗浄を4回行った。Cy3標識抗ハムスターIgG抗体、FITC標識抗ウサギIgG抗体、Cy5標識抗マウスIgG抗体(Jackson、10ug/ml、2.5%ブロックエース)を室温、1時間反応させ、同様に洗浄を行った後、PBS(−)によって室温、10分間洗浄し、包埋した。
そして、作製した抗65B13モノクローナル抗体を用いた免疫組織染色による発現解析の結果、in situハイブリダイゼーションによる発現解析の結果と同様に、ドーパミン産生ニューロンの発生する時期であるE12.5で、中脳腹側に発現が認められた(図13)。ドーパミン産生ニューロンのマーカーであるTH、Nurr1タンパク質の発現と比較すると、65B13タンパク質はTH、Nurr1タンパク質が発現する中脳最腹側のVZ側に発現していることから、65B13タンパク質はドーパミン産生ニューロン前駆細胞に発現していると考えられた。
[実施例4]フローサイトメトリーによる65B13発現細胞の検出
次に、抗65B13モノクローナル抗体を用いて、フローサイトメトリーによる65B13発現細胞の検出を行った。
まず、マウス12.5日胚より中脳腹側部分を切り出したもの、または、in vitroにおいてES細胞より分化誘導させたドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含む細胞群を、細胞分散バッファー(Invitrogen)を用いて分散させた後、固定・透過処理せずに、抗65B13モノクローナル抗体(10ug/ml、1%ウシ胎児血清、1mM EDTA/PBS)で4℃、20分間染色した。その後、1%ウシ胎児血清、1mM EDTA/PBS(−)で4℃、3分間の洗浄を3回行い、PE標識抗ハムスターIgG抗体(Pharmingen、4ug/ml、1%ウシ胎児血清、1mM EDTA/PBS)で4℃、20分間染色し、同様に洗浄して、フローサイトメーターにて65B13発現細胞を検出した。
そして、作製した抗65B13モノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーによる65B13発現細胞の検出の結果、65B13タンパク質を発現する集団を検出した(図14)。固定・透過処理することなく、65B13発現細胞を検出できることから、セルソーターを付属したフローサイトメーターを用いることにより、65B13発現細胞を生細胞の状態で分離することが可能であると考えられた。65B13タンパク質はドーパミン産生ニューロン前駆細胞に発現していると考えられることから、65B13はドーパミン産生ニューロン前駆細胞の分離に有用であると考えられた。
【産業上の利用の可能性】
本発明により、分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的、且つ一過性に発現する新規遺伝子65B13が得られた。細胞における該65B13の発現を指標とすることにより、安全面、生存率及びネットワーク形成能の面でもパーキンソン病を含む神経変性疾患に対する移植治療に適した細胞を選択することが可能となった。また、分裂停止直後のニューロン前駆細胞を選択的に得られるため、成熟した細胞の求められる治療等において使用する場合であっても、in vitroで最適な状態へと容易に分化させることができる。さらに、本発明の遺伝子を用いて得られるドーパミン産生ニューロン前駆細胞により、該細胞に特異的に発現している遺伝子を単離することが可能となった。該細胞は、パーキンソン病等の神経変性疾患に対する医薬を開発する上でも有用と考えられる。分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞という、ニューロン形成における初期の前駆細胞は、さらに、ニューロンの成熟過程、即ち、成熟過程に関与する種々の因子を明らかにするのに役立つ。このような因子の解明は、神経変性疾患の治療に大きく貢献することが予期される。さらに、該細胞の成熟を指標として、その過程を調節(阻害または促進)するような物質のスクリーニングに用いることもできる。
【配列表】







































【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現する65B13ポリペプチド、またはその抗原性断片をコードする以下の(1)〜(4)のヌクレオチド配列から選択される配列を含むポリヌクレオチド。
(1)配列番号:1の177から2280番目の塩基、若しくは配列番号:2の127番目から2079番目の塩基を含む核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(2)配列番号:3若しくは4記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(3)配列番号:3若しくは4記載のアミノ酸配列においてシグナル配列部分を欠く配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(4)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、または付加されたアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列
(5)上記(1)の配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列
【請求項2】
請求項1記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項3】
請求項1記載のポリヌクレオチドまたは請求項2記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項4】
請求項1記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
【請求項5】
請求項4記載のポリペプチドの断片であり、少なくとも8アミノ酸残基を有するポリペプチド断片。
【請求項6】
請求項4記載のポリペプチド、または請求項5記載のポリペプチド断片に対する抗体。
【請求項7】
請求項5記載のポリペプチド断片をコードするヌクレオチド鎖。
【請求項8】
ドーパミン産生ニューロンを選択する方法であり、請求項6記載の抗体とドーパミン産生ニューロン前駆細胞sを含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。
【請求項9】
ドーパミン産生ニューロンを選択する方法であり、請求項4記載のポリペプチドの少なくとも細胞外領域部分を含むペプチドとドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の方法により選択された分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞。
【請求項11】
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子及び前駆細胞からドーパミン産生ニューロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離方法であって、請求項10記載の前駆細胞または該前駆細胞から分化、誘導若しくは増殖された細胞を用い、該細胞において特異的に発現している遺伝子を検出、単離する工程を含む方法。
【請求項12】
成熟を指標としたスクリーニング方法であり、請求項10記載の前駆細胞に対し、被験物質を接触させる工程、及び接触による前駆細胞の分化または増殖を検出する工程を含む方法。

【国際公開番号】WO2004/038018
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546430(P2004−546430)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013420
【国際出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】