説明

切削工具および刃先位置決め機構

【課題】煩雑な刃先位置合わせ作業の繰り返しを回避し、優れた作業効率および加工精度を得る。
【解決手段】複数のバイトを取り付けるためのくし形刃物台20に、該くし形刃物台20の前端面23から切れ刃8を有する先端部3を突出させた状態で着脱可能に取り付けられる工具本体2と、該工具本体2の先端部3に着脱可能に固定される、刃先9の位置を前記工具本体2の突出方向に位置決めするためのストッパー10とを備え、該ストッパー10を前記工具本体2に固定するための固定ねじ15が、前記くし形刃物台20に取り付けられるバイトの配列方向に対して垂直方向に設けられることを特徴とするスローアウェイバイト1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の工具を取り付けるための刃物台に取り付けられる切削工具および刃先位置決め機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動旋盤等に用いられるバイト等の工具を取り付ける刃物台として、2個以上の工具を主軸と平行にくし歯状に取り付けて直線割り出しを行う、くし形刃物台が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
このようなくし形刃物台20は、図7に示されるように、複数の並列に配設された工具取付溝21と、これら工具取付溝21に工具を取り付けるための取付部材22とから構成され、切り込み方向(X軸方向)と平行に配置されて、複数のバイト30が着脱可能に装着されて使用される。
これらのバイト30は、その先端部に設けられる切れ刃31を刃物台本体の前端面23から突出させた状態で、各工具取付溝21に取り付けられる。そのため、取り付けに際しては、各バイト30における刃物台本体の前端面23から切れ刃31の先端32までの突き出し長さ、すなわち、各バイト30のX軸方向における刃先32の位置を揃える刃先位置合わせ作業が必要となる。この刃先位置合わせ作業は、例えば、スケールを用いて突き出し長さを測ったり、バイト30の刃先32を工作物40の外径に突き当てたりすることにより行われている。
【非特許文献1】「CITIZEN Cincom 総合カタログ Catalog No.339」、シチズン時計株式会社、2002年、P.4−10」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなくし形刃物台20を小型部品の加工を行う小型自動旋盤のような極めて狭小なスペースに設置する場合、各工具取付溝間30,30の間隔を狭くしてくし形刃物台20自体を小さくすることが望ましい。
しかしながら、隣り合うバイト同士30,30が近接し、かつ、切れ刃31がバイト配列方向(Y軸方向)へ互いに重なり合うように配置されているので、切れ刃31の交換が可能なスローアウェイバイト30等を用いた場合に、作業スペースが小さくてくし形刃物台20にバイト30を取り付けたままでは切れ刃31を交換することができなかった。
したがって、従来の切れ刃31の交換が可能なスローアウェイバイト30等を装着したくし歯刃物台20では、切削に伴って磨耗、チッピング等により損傷した切れ刃31を加工途中に交換する際に、その都度、工具取付溝21からバイト本体を取り外さなければならず、再度、切れ刃31を交換した後に刃先位置合わせ作業を行って取り付ける必要があった。その結果、刃先位置合わせ作業は煩雑であるため切れ刃31の交換に長時間を要することとなり、作業効率が悪く、旋盤の稼働率が低下するという問題があった。また、刃先位置合わせ作業は作業者による手作業で行われるため、熟練度等のいかんによって、バイト30の脱着前後でその刃先32の位置がずれてしまい、加工精度が劣化してしまうという問題もあった。
【0004】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、煩雑な刃先位置合わせ作業を繰り返す必要がなく、作業効率および加工精度に優れた切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、複数の工具を取り付けるための刃物台に、該刃物台の前端面から切れ刃を有する先端部を突出させた状態で着脱可能に取り付けられる工具本体と、該工具本体の先端部に着脱可能に固定される、前記切れ刃の先端位置を前記工具本体の突出方向に位置決めするための位置決め部材とを備え、該位置決め部材を前記工具本体に固定するための固定手段が、前記刃物台に取り付けられる工具の配列方向に対して垂直方向に設けられることを特徴とする切削工具を提供する。
【0006】
本発明によれば、位置決め部材により、あらかじめ刃物台の前端面から切れ刃の先端までの工具本体の突き出し長さが所望の長さに固定されることになる。したがって、工具本体を刃物台から取り外す度に刃先位置合わせ作業を行う必要がある従来技術とは異なり、煩雑な刃先位置合わせ作業を繰り返す必要がなく、簡単に短時間で切れ刃の先端位置を工具本体の突出方向、すなわち、切り込み方向に位置決めすることができる。例えば、切削工具がスローアウェイ工具であって、工具本体を刃物台から脱着して切削に伴って損傷した切れ刃を交換したりスローアウェイチップを取替えたりする場合には、刃先位置合わせ作業が不要であるため切れ刃の交換等に要する時間を短縮化することができる。そのため、切削加工時の作業効率がよく、旋盤の稼働率が改善されて製造効率が向上する。また、刃先位置の再現性に優れるため、切削途中に工具の脱着を繰り返しても寸法精度、表面粗さ等を悪化させることがなく、高精度の加工精度を得ることができる。
また、固定手段は工具の配列方向に対して垂直方向に設けられるので、工具間の隙間が小さい場合であっても、固定手段が障害となって位置決め部材の取り付けに支障を来たすことがない。
【0007】
上記発明においては、前記位置決め部材が、前記工具本体の先端部に長手方向に移動可能に固着されることが好ましい。
このようにすることで、固定手段を操作して位置決め部材の位置を工具本体の長手方向にずらすことにより、刃物台の前端面から切れ刃の先端までの工具本体の突き出し長さの変更や刃先位置の微調整が可能となる。
また、調整時に操作される固定手段は工具の配列方向に対して垂直方向に設けられるので、隣り合う工具同士が近接する場合であっても、突き出し長さを調整するための作業スペースは確保される。
【0008】
また、上記発明においては、前記工具本体の先端部に、前記刃物台の前端面から前記切れ刃の先端までの前記工具本体の突き出し長さを計測するための計測手段を備えることにしてもよい。
このようにすることで、計測手段によりあらかじめ工具本体の突き出し長さを所望の長さに設定することができるので、煩雑な刃先位置合わせ作業が不要となり、作業効率が向上する。また、工具本体の突き出し長さの変更にも、容易に短時間で対応することができる。
【0009】
また、本発明は、複数の工具を取り付けるための刃物台に、該刃物台の前端面から切れ刃を有する先端部を突出させた状態で工具本体が着脱可能に取り付けられる切削工具の刃先位置決め機構であって、前記工具本体の先端部に、前記刃物台の前端面に当接する当接面を有する前記切れ刃の先端位置を位置決めするための位置決め部材を備え、該位置決め部材の当接面を前記刃物台の前端面に押し当てることにより、前記切れ刃の先端位置を前記工具本体の突出方向に位置決めすることを特徴とする刃先位置決め機構を提供する。
【0010】
本発明によれば、位置決め部材により、あらかじめ刃物台の前端面から切れ刃の先端までの工具本体の突き出し長さが所望の長さに固定されることになり、位置決め部材の当接面を刃物台の前端面に押し当てながら工具本体を刃物台に取り付けるだけで、簡単に短時間で切れ刃の先端位置を工具本体の突出方向に位置決めすることができる。したがって、工具本体を刃物台から取り外す度に刃先位置合わせ作業を行う必要がある従来技術とは異なり、煩雑な刃先位置合わせ作業を繰り返す必要がなくなるので、作業効率が向上する。また、切削途中に工具の脱着を繰り返す場合であっても、作業者の熟練度等のいかんによらず、位置決め部材を刃物台の前端面に押し当てるだけで安定して切れ刃の先端位置を元の位置に配置させることができるので、加工精度に優れる。
【0011】
また、上記発明においては、前記位置決め部材を前記工具本体の長手方向へ移動させるための移動手段を備え、該移動手段により、前記工具本体の先端部に備えられた前記位置決め部材を前記工具本体の長手方向に移動させることで、前記刃物台の前端面から前記切れ刃の先端までの前記工具本体の突き出し長さが調整されることにしてもよい。
このようにすることで、刃先位置の微調整が可能であり、工具本体の突き出し長さの変更にも迅速に対応することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、煩雑な刃先位置合わせ作業を繰り返す必要がなく、作業効率および加工精度に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る切削工具および刃先位置決め機構の一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態に係るスローアウェイバイト1は、図1に示されるように、工具本体2と、該工具本体2に切れ刃8として着脱可能に装着されるスローアウェイチップ7と、該スローアウェイチップ7の刃先9の位置を位置決めするための位置決め部材として長手方向に移動可能に装着されるストッパー10と、該ストッパー10を工具本体2に固定するための固定手段として用いられる固定ねじ15とから構成されている。
【0014】
工具本体2は、鋼材等から構成され、略直方体をなし、この先端部3の上面にはスローアウェイチップ7を着座させるためのチップ取付座4が形成され、先端部3の側面5にはストッパー10を固着するためのねじ穴6が穿設されている。
チップ取付座4は、平面視においてスローアウェイチップ7の形状と略同一形状の平坦面をなす底面とこれに交差する壁面とからなり、底面の中央部にはねじ穴(図示せず)が穿設されている。
【0015】
スローアウェイチップ7は、超硬合金、サーメット、セラミックス等から構成され、例えば略四角形等の多角形の平板状をなし、この上面に形成されたすくい面と、すくい面に交差する側面に形成された逃げ面と、各すくい面と逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃8とを備え、中央部には取付穴が貫通形成されている。
そして、工具本体2のチップ取付座4に載置させ、例えば、取付ねじ(図示せず)を取付穴を介してチップ取付座4のねじ穴(図示せず)に螺入することにより、切れ刃8として工具本体2に着脱可能に固着されるようになっている。この際に、スローアウェイチップ7の角部にあたるコーナが、切れ刃8の先端9となるように配されてスローアウェイバイト1の刃先9を構成するようになっている。
これにより、一つの切れ刃が損傷したときには、コーナ位置を変えて他の切れ刃に交換したり、チップ自体を取替えたりできるようになっている。
【0016】
ストッパー10は、鋼材等から構成され、図2に示されるように、略平板状の底部10aとこれに直交する略平板状の壁部10bとからなり、略L字形状をなす端面に、刃物台20の前端面23と当接する当接面13を備えている。
壁部10bは、工具本体2の側面5に接合する接合面11を備え、この接合面11に向かって貫通するように横長の長穴12が形成されている。
そして、図3および図4(a)(b)に示されるように、底部10aに工具本体2を着座させるようにして接合面11を工具本体2の側面5に接触させて、固定ねじ15を工具本体2の側方から長穴12を介して工具本体2のねじ穴6に螺入することにより、工具本体2の所定位置に位置決め部材として工具長手方向に移動可能に固着されるようになっている。
【0017】
このようなスローアウェイバイト1は、例えば、自動旋盤に設置されて用いられる複数の工具を取り付けるための刃物台に着脱可能に装着されて順次使用される。
刃物台は、例えば、2個以上の工具を主軸(X軸)と平行にくし歯状に取り付け、直線割り出しを行うくし形刃物台20であって、図3に示されるように、略長方形の平板状をなし、複数のY軸方向に向かって並列に配設された工具取付溝21と、これら工具取付溝21に工具を取り付けるための取付部材22とを備えている。
そして、工具取付溝21に工具本体2を嵌入した後、締付ボルトを締め付けることにより、工具本体2が取付部材22に押圧されて、くし形刃物台20に着脱可能に固着されるようになっている。この際に、スローアウェイバイト1の刃先9は、図3および図4(a)に示されるように、くし形刃物台20の前端面23からX軸方向に所定長さLだけ突出させて配置されるように構成されている。
【0018】
このように構成された本実施形態に係るスローアウェイバイト1および刃先位置決め機構の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るスローアウェイバイト1をくし形刃物台20に取り付けるには、まず、
工具取付溝21に遊嵌した工具本体2を、刃物台の前端面23から切れ刃8の先端9までの突き出し長さLをスケール等の測定器を用いて調整することによって、刃先9をX軸方向の所定位置に配置させる。あるいは、工具本体2を工具取付溝21に嵌入した上で、例えば、刃先9を工作物40の外径に突き当てる等して、刃物台の前端面23から切れ刃8の先端9までの突き出し長さLを所定の長さに設定し、刃先9をX軸方向の所定位置に配置させる。次いで、締付ボルトを締め付け、くし形刃物台20に固定させる。最後に、ストッパー10の当接面13を刃物台20の前端面23に当接させながら固定ねじ15を締め込み、ストッパー10を工具本体2へ固着させて、スローアウェイバイト1の最初の取り付けが完了する。
【0019】
この場合において、本実施形態に係るスローアウェイバイト1によれば、工具本体2を一旦くし形刃物台20から取り外して切れ刃8の交換やチップ7の取替え等を行った後、再度工具本体2をくし形刃物台20に取り付ける際には、ストッパー10の当接面13を刃物台の前端面23に押し当てるだけで、作業者の熟練度等のいかんによらず簡単に短時間で刃先9をX軸方向の所定の位置に配置させることができる。つまり、図4(a)に示されるように、あらかじめストッパー10により工具本体2の突き出し長さLが固定されているので、また始めから刃先9を工作物40の外径に突き当てる等して刃先位置合わせ作業を行う必要はなく、ストッパー10の当接面13を刃物台の前端面23に当接させながら工具本体2をくし形刃物台20に取り付けるだけで、安定して刃先9を前と同じ位置に配置させて取り付けることができる。
【0020】
したがって、切れ刃8の交換やチップの取替えをする度に長時間の刃先位置合わせ作業を要する従来技術とは異なり、切れ刃の交換、チップの取替えにかかる時間が短縮化されるため、切削加工時の作業効率がよく、旋盤の稼働率が改善されて製造効率が向上する。また、刃先位置の再現性に優れるため、切削途中に工具の脱着を繰り返しても刃先9が切り込み方向(X軸方向)にずれて寸法精度、表面粗さ等を悪化させることがなく、高精度の加工精度を得ることができる。
【0021】
さらに、ストッパー10は、長穴12を介して工具本体の長手方向に移動可能に固着されているので、固定ねじ15を操作してストッパー10の位置をずらすことにより、要求に応じて工具本体2の突き出し長さLを変えたり、切れ刃の交換等の際に刃先9の位置を微調整したりすることも可能である。
【0022】
また、ストッパー10の取り付け時および調整時に操作される固定ねじ15は、他のスローアウェイバイト1を向く対向面に交差する工具本体2の側面5に備えられるので、対向するスローアウェイバイト間1,1の隙間が小さい場合であっても、固定ねじ15を工具本体2の側方から操作してストッパー10の位置を調整することができる。また、固定ねじ15が障害となってストッパー10の取り付けに支障を来たすこともない。したがって、隣り合うスローアウェイバイト同士1,1が近接しても、ストッパー10の取り付けや調整のための作業スペースを確保することができるので、小型部品や精密部品を加工するような小型自動旋盤に用いる小さいくし形刃物台にも適用することができる。
【0023】
また、ストッパー10はシンプルな構造からなり、かつ、ねじ1個で着脱可能であるとともに、工具本体2および固定ねじ15としては汎用品を使用できるので、安価に短時間で本実施形態に係るスローアウェイバイト1を提供することができる。くし形刃物台20としても専用品を用意する必要はなく汎用品を使用できる。
【0024】
なお、本実施形態においては、スローアウェイバイト1をくし形刃物台20に取り付ける場合を例に挙げて説明したが、複数の工具を放射状に配置し、旋回割り出しを行うタレット等の種々の刃物台に適用することができる。また、切削工具としてもこれに限定されるものではなく、ろう付けバイト等に適用することができる。さらに、切削工具に代えて、被削材を自動供給するために用いられるプルホルダー(株式会社アルプスツール社製:PT−70)に転用することも考えられる。この場合、被削材の中心と該被削材を引っ張り出すためのプルホルダーの把握位置とを合わせる必要があるが、ストッパー10を備えることにより、かかる位置合わせ作業を短縮化することができる。また、被削材を基準の突き出し量にするために用いられるプッシャーに転用することも考えられる。この場合も同様に位置決め作業を短縮化することができるという効果を奏する。
【0025】
また、上記実施形態においては、ストッパー10を略四角形平板状の底部10aおよび壁部10bとからなる略L字形状とし、壁部10bに横に長い略楕円形状をなす長穴12を設けることとしたが、ストッパーの形状および長穴12の形状としてはこれに限定されるものではなく、他の任意の形状とすることができる。
【0026】
また、ストッパー10を工具本体2へ取り付けるための取り付け機構およびストッパー10を工具長手方向へ移動させるための移動手段としては、上記実施形態に限定されるものではなく、以下の構成を採用することができる。
すなわち、上記実施形態においては、工具本体2の先端部3側面5にねじ穴6を設け、ストッパー10の壁部10bに長穴12を設けることとしたが、これに代えて、例えば、図5(a)および図6に示されるように、工具本体2の先端部3側面5に先の広がった略鳩尾状の断面を有する凸部からなるアリ16を長手方向に延びるように設けるとともに、ストッパー10の接合面11にアリ16と嵌合するアリ16と略同一形状の凹部からなるアリ溝14を設けて、ストッパー10の壁部10bにアリ溝14に向かって貫通するようなねじ穴18を穿設することにしてもよい。そして、アリ溝14とアリ16とを嵌合させ、ストッパー10を工具本体2の所定位置までスライドさせた後、固定ねじ15をストッパー10に設けられたねじ穴18に螺入して、固定ねじ15の先端部をアリ16に押し当てることにより、ストッパー10を工具本体2に固着することにしてもよい。
【0027】
このように構成することで、アリ溝14をアリ16に嵌入させるだけでストッパー10の工具本体2への固定状態がある程度確保されることから、手を放してもストッパー10が落ちてしまったり、位置がずれてしまったりすることがない。したがって、アリ溝14をアリ16に嵌合させた状態のストッパー10を長手方向にスライドさせることで、がたつくことなく安定して工具本体2の所定位置に配置させることができ、ストッパー10の取り付け時、調整時における作業性に優れる。そして、ストッパー10を手で押さえながら固定ねじ15を操作する必要がなく、固定ねじ15の操作性に優れるため、作業者が固定ねじ15を落としたり、紛失したりすることもない。
【0028】
この場合において、アリ16に、工具本体2の突き出し長さLを計測するための計測手段を備えることが好ましい。例えば、図5(b)に示されるように、アリ16に突き出し長さL読み取り用の目盛を施した目盛付きアリ17とすることができる。
このように構成することで、あらかじめ工具本体2の突き出し長さLを所望の長さに設定することができるので、最初の取り付け時における刃先位置合わせ作業も不要となり、さらに作業効率が向上する。また、工具本体2の突き出し長さLを変更する場合においても、容易に短時間で対応することが可能となる。
【0029】
また、上記実施形態においては、固定ねじ1個でストッパー10を工具本体2に取り付けるスクリュークランプ方式を採用することとしたが、固定手段としてはこれに限定されるものではなく、これに代えて、くさび方式等を採用することにしてもよい。
この際、固定手段はスローアウェイバイト1の配列方向(Y軸方向)に対して垂直方向に設けられるので、隣り合うスローアウェイバイト同士1,1が近接する場合であっても、固定手段の選択にあたり設計上の制限を受けることはない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るスローアウェイバイト1を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すスローアウェイバイトに設けられたストッパーを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【図3】図1のスローアウェイバイトを備えたくし形刃物台を示す斜視図である。
【図4】図3のスローアウェイバイトの取り付け状態を示す部分拡大図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図5】図1のスローアウェイバイトの変形例を示す部分拡大図であり、(a)は斜視図、(b)は他の変形例を示す斜視図である。
【図6】図5(a)のスローアウェイバイトに設けられたストッパーを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は左側面図である。
【図7】従来のスローアウェイバイトを備えたくし形刃物台を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 スローアウェイバイト(切削工具)
2 工具本体
3 先端部
5 側面
8 切れ刃
9 刃先(切れ刃の先端)
10 ストッパー(位置決め部材)
13 当接面
15 固定ねじ(固定手段)
20 くし形刃物台(刃物台)
23 前端面
L 突き出し長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具を取り付けるための刃物台に、該刃物台の前端面から切れ刃を有する先端部を突出させた状態で着脱可能に取り付けられる工具本体と、
該工具本体の先端部に着脱可能に固定される、前記切れ刃の先端位置を前記工具本体の突出方向に位置決めするための位置決め部材とを備え、
該位置決め部材を前記工具本体に固定するための固定手段が、前記刃物台に取り付けられる工具の配列方向に対して垂直方向に設けられる
ことを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記位置決め部材が、前記工具本体の先端部に長手方向に移動可能に固着される
ことを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記工具本体の先端部に、前記刃物台の前端面から前記切れ刃の先端までの前記工具本体の突き出し長さを計測するための計測手段を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の切削工具。
【請求項4】
複数の工具を取り付けるための刃物台に、該刃物台の前端面から切れ刃を有する先端部を突出させた状態で工具本体が着脱可能に取り付けられる切削工具の刃先位置決め機構であって、
前記工具本体の先端部に、前記刃物台の前端面に当接する当接面を有する前記切れ刃の先端位置を位置決めするための位置決め部材を備え、
該位置決め部材の当接面を前記刃物台の前端面に押し当てることにより、前記切れ刃の先端位置を前記工具本体の突出方向に位置決めする
ことを特徴とする刃先位置決め機構。
【請求項5】
前記位置決め部材を前記工具本体の長手方向へ移動させるための移動手段を備え、
該移動手段により、前記工具本体の先端部に備えられた前記位置決め部材を前記工具本体の長手方向に移動させることで、前記刃物台の前端面から前記切れ刃の先端までの前記工具本体の突き出し長さが調整される
ことを特徴とする請求項4に記載の刃先位置決め機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−83073(P2009−83073A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258895(P2007−258895)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000221144)株式会社タンガロイ (185)
【Fターム(参考)】