説明

制御弁式鉛蓄電池

【課題】極板群を電槽内に圧縮(圧迫)状態で収納する構成で、電槽の変形を抑制してサイクル寿命を向上することができる制御弁式鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】セパレータ11を介して積層された正極板12と負極板13とからなる極板群15を電槽内に圧縮(圧迫)状態で収納する制御弁式鉛蓄電池10において、電槽21の隅部25Cには、隣接する側壁25にそれぞれ縦リブ32を設けて縦リブ32同士を横リブ33で連結するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータを介して積層された正極板と負極板とからなる極板群を電槽内に圧縮状態で収納する制御弁式鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池、特に鉛蓄電池は、その汎用性、経済性とともに安定した性能と信頼性の高さから、自動車用途に加えて産業用の各種電源、コンピュータ等の非常用電源に広く用いられている。最近は、使用時の充放電条件や環境条件が厳しくなり、メンテナンスの容易さ、排ガスが非常に少ないなどの利点が強く求められるため、密閉性の高い制御弁式鉛蓄電池の使用が増加している。
前記制御弁式鉛蓄電池では、正極板と負極板とを微細ガラス繊維を主体としたマット状セパレータを介して交互に積層して極板群を形成し、極板群を電槽内に、電槽内幅より大きい幅を有する極板群を電槽内に強挿して、20〜100kPa程度の圧縮(圧迫)状態で収納して蓋を溶着又は接着剤で電槽に取り付け、蓋に設けられた注液用の開口部から電解液を入れるようにしている。次に、電槽化成(極板を先に化成して、極板群を製作した後に電槽に挿入する場合もある)を行い、最後に極板群に含浸する程度の電解液を注液し排気用の開口部にゴム弁(制御弁)を覆い被せて製造される。このようにして製造された制御弁式鉛蓄電池は、メンテナンスフリーのため様々な分野で利用されている。
【0003】
最近注目されているスマートグリッド(次世代送電網)や再生可能エネルギー利用にあたり、供給電力を安定化させるために蓄電池を用いることが考えられている。その蓄電池として、制御弁式鉛蓄電池が挙げられるが、さらなるサイクル寿命向上が強く望まれており、サイクル寿命改善のために、基板の合金、活物質、添加剤等の研究開発が進められている。
また、極板群を強圧迫することにより、極板と電解液を含むセパレータとの密着性を良くし、電解液の移動を円滑にして寿命特性を向上させる方法がある。前記極板群を強圧迫するには、電槽の変形を防止する必要がある。そこで、従来、電槽の変形を防止するために、電槽の各側面に複数の凸部を設ける構造が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−92393号公報
【特許文献2】特開平9−306437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の鉛蓄電池は、電槽の4隅に縦リブを設けて側壁部を薄肉にした場合でも強度を確保するものであるが、極板群を圧縮(圧迫)状態で収納した場合に、側壁面の変形を防止しうるほど十分な強度を得ることが困難であった。また、特許文献2に記載の鉛蓄電池は、電槽の4側面に複数の縦向き突出部と横向き突出部とを交差して設け、横向き突出部を隣接する縦向き突出部間で切り離し隣接する縦向き突出部間に上下方向に連続する縦向き通路を設けることで電槽の膨れを防止すると共に放熱を良好にするものであるが、各突出部が外方向に大きく張り出し、電槽の外形寸法が大きくなってしまい、また、別途金属板を設けるため、コストが高くなる。
【0006】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、極板群を電槽内に圧縮状態で収納する構成で、電槽の変形を抑制してサイクル寿命を向上することができる蓄電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、セパレータを介して積層された正極板と負極板とからなる極板群を電槽内に圧縮状態で収納する制御弁式鉛蓄電池において、前記電槽の隅部には、隣接する側壁にそれぞれ縦リブを設けて縦リブ同士を横リブで連結したことを特徴とする。この構成によれば、電槽の変形を抑制してサイクル寿命を効率よく向上させることができる。
【0008】
上記構成において、前記電槽は、底板の各辺から側壁が立ち上がって上面が開口し、前記縦リブは、前記側壁の上縁から下縁に渡って延在し、前記横リブは、前記縦リブの延在方向に間隔を空けて前記縦リブ同士を連結しても良い。この構成によれば、上記縦横のリブによって隅部全体の強度を高めることができる。
【0009】
上記構成において、前記側壁に複数の縦リブを備え、前記複数の縦リブは、前記側壁の左右中央部では密に設けられ、前記隅部にいくほど疎に設けても良い。この構成によれば、縦リブを等間隔で配置する場合に比して、電槽の変形を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、セパレータを介して積層された正極板と負極板とからなる極板群を電槽内に圧縮状態で収納する制御弁式鉛蓄電池において、電槽の隅部には、隣接する側壁にそれぞれ縦リブを設けて縦リブ同士を横リブで連結したので、電槽の変形を抑制してサイクル寿命を効率よく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る蓄電池の分解斜視図である。
【図2】(A)〜(D)は蓄電池の正面図、側面図、上面図及び底面図である。
【図3】電槽の斜視図である。
【図4】(A)は本発明の実施例3を示し、(B)は実施例3の比較例3を示す図である。
【図5】(A)は本発明の実施例4を示し、(B)は実施例4の比較例4を示す図である。
【図6】(A)は本発明の実施例5を示し、(B)は実施例5の比較例5を示す図である。
【図7】(A)は本発明の実施例6を示し、(B)は実施例6の比較例6を示す図である。
【図8】(A)は本発明の実施例7を示し、(B)は実施例8を示し、(C)は実施例9を示す図である。
【図9】(A)は基準となる比較例1を示し、(B)は実施例1,2の比較例2を示す図である。
【図10】試験結果から得た変形割合とサイクル数との関係を示す特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る蓄電池の分解斜視図であり、図2(A)〜(D)はその正面図、側面図、上面図及び底面図を各々示している。
図1に示すように、この蓄電池10は、セパレータ11をガラス繊維を主体としたマット状セパレータとし、電解液をそのマット状セパレータに保持する制御弁式鉛蓄電池である。この蓄電池10においては、鉛を主成分とする基板に活物質ペーストを充填してなる正極板12と負極板13とをセパレータ11を介して交互に積層し、同極性同士の極板耳部をストラップ14A,14Bで各々接続することにより極板群15を形成し、極板群15を積層方向に50kPaで圧縮(圧迫)した状態で電槽(電池ケースとも称する)21内に収納し、蓋16を溶着又は接着剤で電槽21に取り付けている。
なお、極板群15の圧縮(圧迫)については、極板群15の最外部極板の両平面を平滑な板を用いて平行に挟み、その外側からプレス機を用いて極板群15を挟んだ板に対して垂直に圧をかけ、極板群15の厚さを挿入する電槽内寸と同じ幅となるように圧迫し、この状態で極板群15のみを電槽21内に挿入した。
【0014】
図2に示すように、蓋16を取り付けた後、蓋16に設けられた注液や排気用の開口部16Aから電解液を電槽21内に注液し、次に、電槽化成を行い、最後に、蓋16に設けられた注液や排気用の開口部16Aに制御弁17を覆い被せることによって、この蓄電池10が製造される。制御弁17は、通常は、蓄電池10内部の気密を保つために閉じており、充電時等に蓄電池10の内圧が上昇したときに開いて圧を逃がすものである。
なお、この制御弁式鉛蓄電池10は、端子部を構成する正極端子18Aおよび負極端子18Bを1個ずつ有しているが、端子数は容量に応じて変更されるものであり、例えば、より大容量の場合は各端子18A、18Bは2個ずつとされる。
【0015】
図3は電槽21の斜視図である。
電槽21は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の一体成形で形成されており、箱型の電槽本体23と、電槽本体23を補強する凸条リブ30とを一体に備えている。電槽本体23は、矩形(本実施形態では長方形)の底板24(図2(D)参照)の各辺から側壁25が立ち上がり、上面が開口する直方体形状の箱体に形成されている。但し、電槽21を成形金型から抜きやすくするために、電槽本体23には底板24に行くほど絞られるように抜きテーパーが形成されている。
側壁25は、隣接する側壁25の一方が幅広の長側壁25Aに形成され、他方が幅狭の短側壁25Bに形成され、長側壁25Aと短側壁25Bとが互いに直角に連結されることによって、対向する側壁25同士が平行で、かつ、同形状に形成される。図1に示すように、この電槽21内には、一対の短側壁25Bの間に、各極板12,13が短側壁25Bに平行に並ぶように配置され、且つ、各極板12,13は積層方向に圧縮(圧迫)されて収納されるから、電槽21内では一対の短側壁25Bを外側に撓ませるように押圧力が作用する。
【0016】
長側壁25Aと短側壁25Bとをつなぐ隅部25Cは、横断面視(底板24と平行な断面視)で外側に湾曲する円弧状隅部に形成されており、この隅部25Cを直角の隅部に形成する場合と比較して、上記押圧力による応力集中を抑え、その分、隅部25Cの剛性を高めることが可能である。
【0017】
凸条リブ30は、電槽本体の4つの隅部25Cに設けられる角リブ部31と、隅部25Cを除く領域(平面部(非隅部))に設けられるリブ部41とで構成されている。角リブ部31は、隅部25Cにおける隣接する側壁25に、側壁25の上下方向に延びる縦リブ32をそれぞれ設け、これら縦リブ32同士を連結する横リブ33を設けることによって形成されている。
より具体的には、隅部25Cにおける隣接する側壁25には、この隅部25Cを挟むように互いに平行かつ近接する複数(本構成では2本)の縦リブ32を設け、これら全て(4本)の縦リブ32同士を連結する複数(本構成では10本)の横リブ33を等間隔で配設している。
縦リブ32は、電槽21の開口部21A(図3)の中心を通る開口軸線C1(上下方向に延びる軸線)に沿って延びるリブであり、側壁25の上縁26から下縁27に渡って延在し、該軸線C1に沿った側壁25の撓み等の変形を抑えることができる。つまり、これら縦リブ32によって、隅部25Cを含む隅部25C近傍の該軸線C1方向に沿った変形を効果的に抑えることができる。なお、本発明における上縁とは、側壁の開口端から少し下がった開口周囲を取り巻く環状リブを有する部分であり、下縁とは電槽21の底板24部分である。
【0018】
また、横リブ33は、側面視で電槽21の開口軸線C1と直交する方向(水平方向)であって、隅部25Cに沿って延在し、隅部25Cを挟む左右の縦リブ32に直角につながり、縦リブ32同士を連結する。横リブ33は、縦リブ32の延在方向に沿って等間隔で設けられ、軸線C1と直交する方向に沿った撓み等の変形、特に、隅部25Cを基点とした側壁25A,25Bの開きを効果的に抑えることができる。
このようにして、上記縦リブ32及び横リブ33からなる角リブ部31によって、隅部25Cを補強することができ、極板群15を電槽21内に圧縮(圧迫)状態で収納した場合に、その圧縮(圧迫)状態が開放されることによって生じる押圧力(反発力)に対して、隅部25Cの上下方向及び左右方向の変形を抑えることができる。この結果、隅部25Cを基点とした隣接する側壁25同士の開きを効果的に抑えることができる。
また、上記縦リブ32と横リブ33とが連結し、且つ、交差するので、縦リブ32と横リブ33とが相互に補強し合い、縦リブ32と横リブ33とを切り離す構成と比べて、隅部25Cを基点とした側壁25の開きをより抑えることができる。
【0019】
角リブ部31以外のリブ部(平面部(非隅部)のリブ部)41は、側壁25毎に、側壁25の上下方向に延びる複数(本構成では11本)の縦リブ42と、側壁25の左右方向に延びる複数(本構成では5本)の横リブ43とを備えて構成される。縦リブ42は、側壁25の上縁26から下縁27に渡って延在しており、横リブ43は、側壁の左右に渡って延在している。
縦リブ42は、側壁25の左右中央部では密に設けられ、隅部25Cにいくほど疎に設けられており、より具体的には、側壁25の左右中央部に複数(本構成では3本)の縦リブ(中央縦リブと言う)42Aが近接して設けられ、左右中央部と隅部25Cの間には、中央縦リブ42Aの本数よりも少ない本数(本構成では2本)の縦リブ(非中央縦リブと言う)42Bが設けられている。なお、実施例1では、短側壁25Bには、中央縦リブ42Aのみ形成され、非中央縦リブ42Bは形成されていない。
なお、本実施例では中央縦リブ(左右中央部)を等間隔に3本、非中央縦リブを等間隔に2本設けたが、左右中央部から隅部に向かい縦リブの間隔を広く形成しても良い。
【0020】
横リブ43は、隣同士の角リブ部31における縦リブ42(42A,42B)を連結するように左右に延在し、上記中央縦リブ42A及び非中央縦リブ42Bに交差し、これら全ての縦リブ32を連結する。また、横リブ43は、側壁25の上縁26から下縁27の間にほぼ等間隔で複数(本構成では5本)設けられており、各横リブ43が、隅部25Cの横リブ33とも一体に連結する。
これにより、各側壁25の横リブ43と、各隅部25Cの横リブ33とによって、電槽21の周方向に延在する無端状の横リブが形成され、電槽21の撓み等の変形を効果的に抑制することができる。
なお、実施例1では、各側壁25の横リブ43の本数(5本)に対して各隅部25Cの横リブ33の本数(10本)は2倍に形成され、各側壁25の横リブ43が各隅部25Cの横リブ33を1本おきに連結するように形成されている。また、長側壁の中央縦リブ42Aの本数を3本、非中央縦リブ42Bの本数を2本ずつ(隅部25Cの縦リブ32は除かれる)とし、短側壁の中央縦リブ42Aの本数を3本とし夫々形成している。このため、隅部25Cの縦リブ32と合計すると、長側壁25Aには11本の縦リブを形成し、短側壁25Bには7本の縦リブを形成している。
【0021】
本実施形態では、この電槽21を、縦170mm、横300mm、高さ460mmとし、各側壁25(長側壁25A,短側壁25B)の厚さを4.0mmで形成している。また、この電槽21に設けられる凸条リブ30(角リブ部31、リブ部41の全て)は、電槽21に蓋16を取り付けた場合に、下面視で、この蓋16の外周縁に重なる位置まで突出する突出量に揃えられている(図2(D)参照)。このため、凸条リブ30を構成するいずれのリブ32,33,42,43も蓋16よりも外側に突出せず、凸条リブ30を設けても蓄電池10が大型化しないように構成されている。
【実施例2】
【0022】
(側壁の厚みを変化)
実施例2の電槽21は、極板群15の積層方向に位置する一対の短側壁25Bを、他の側壁である長側壁25Aよりも厚くしており、短側壁25Bの厚さを4.5mm、長側壁25Aの厚さを4.0mmとし、それ以外を実施例1と同じに構成している。
【実施例3】
【0023】
(縦リブを等間隔)
図4(A)は本発明の実施例3を示す。実施例3の電槽21は、実施例1と同様に角リブ部31と、側壁25の左右に渡って延在する横リブ43とを有しており、横リブ43は、等間隔で3本形成し、各隅部25Cの横リブ33を2個おきに連結するように形成している。この電槽21では、側壁25の上下に渡って延在する縦リブ42(隅部25Cの縦リブ32は除かれる)を等間隔で形成しており、長側壁25Aでは7本形成し、短側壁25Bでは3本形成している。このため、隅部25Cの縦リブ32と合計すると、長側壁25Aには11本の縦リブを形成し、短側壁25Bには7本の縦リブを形成している。それ以外は実施例1と同じに構成している。
【実施例4】
【0024】
(縦横リブの本数減)
図5(A)は、本発明の実施例4を示す。実施例4の電槽21は、縦リブ42(42A,42B)及び横リブ43を減らしており、それ以外は実施例1と同じに構成している。縦リブ42は、隅部25Cの縦リブ32を除き等間隔で形成され、隅部25Cの縦リブ32と合計すると、長側壁25Aは7本とし、短側壁25Bは5本としている。また、横リブ43は、等間隔で3本形成し、各隅部25Cの横リブ33を2個おきに連結するように形成している。
【実施例5】
【0025】
(縦リブのみ)
図6(A)は、本発明の実施例5を示す。実施例5の電槽21は、角リブ部31以外は、縦リブ42(42A,42B)のみとしており、それ以外は実施例1と同じである。縦リブ42は、隅部25Cの縦リブ32を除き等間隔で形成され、隅部25Cの縦リブ32と合計すると、長側壁25Aは11本とし、短側壁25Bは7本としている。
【実施例6】
【0026】
(横リブのみ)
図7(A)は、本発明の実施例6を示す。実施例6の電槽21は、角リブ部31以外は、横リブ43のみとしており、それ以外は実施例1と同じである。横リブ43は、実施例1と同様に等間隔で5本としている。
【実施例7】
【0027】
(角リブ部のみ)
図8(A)は、本発明の実施例7を示す。実施例7の電槽21は、角リブ部31のみとしており、それ以外は実施例1と同じである。
【実施例8】
【0028】
(角リブ部と縦リブのみ)
図8(B)は、本発明の実施例8を示す。実施例8の電槽21は、各側壁25の左右中央部に3本の縦リブ(中央縦リブと言う)42Aを設け、それ以外は実施例1と同じである。
【実施例9】
【0029】
(斜めのリブ)
図8(C)は、本発明の実施例9を示す。実施例9の電槽21は、各側壁25に交差リブ45を構成する斜めリブ45A,45Bを設けている。また、角リブ部31については、縦リブ32同士を連結する横リブ33が、隣接する側壁25の一方の縦リブ32から他方の縦リブ32に設けて上下に分岐する側面視でV状のリブに形成されている。このリブ形状にすることにより、縦リブ32同士の連結強度を向上できると共に、上記交差リブ45と直線状に延在させることができる。なお、これらV字状、逆V字状の横リブ33は、1個おきに上記斜めのリブ45A,45Bに連結されている。
【0030】
[比較例1]
図9(A)は、比較例1を示す。比較例1の電槽21は、実施例1の電槽21から凸条リブ30(角リブ部31、リブ部41)を全て除いており、それ以外は実施例1と同じである。
【0031】
[比較例2]
図9(B)は、実施例1及び2の比較対象となる比較例2を示す。比較例2の電槽21は、実施例3の電槽21から隅部25Cの横リブ33を全て除き、それ以外は実施例3と同じである。
【0032】
[比較例3]
図4(B)は、図4(A)に示す実施例3の比較対象となる比較例3を示す。比較例3の電槽21は、実施例3の電槽21から隅部25Cの横リブ33を全て除き、それ以外は実施例3と同じである。
【0033】
[比較例4]
図5(B)は、図5(A)に示す実施例4の比較対象となる比較例4を示す。比較例4の電槽21は、実施例4の電槽21から隅部25Cの横リブ33を全て除き、それ以外は実施例4と同じである。
【0034】
[比較例5]
図6(B)は、図6(A)に示す実施例5の比較対象となる比較例5を示す。比較例5の電槽21は、実施例5の電槽21から隅部25Cの横リブ33を全て除き、それ以外は実施例5と同じである。
【0035】
[比較例6]
図7(B)は、図7(A)に示す実施例6の比較対象となる比較例6を示す。比較例6の電槽21は、実施例6の電槽21から隅部25Cの横リブ33を全て除き、それ以外は実施例6と同じである。
【0036】
[試験]
上記電槽21の変形量を確認するため、作製した電槽21に蓋16(図1参照)を融着して密封し、該蓋16にパイプを気密に貫通し、このパイプ内を通して電槽内に空気を送り、0.2MPa(0.204kgf/cm)で加圧し、加圧による短側壁25Bの最大変形量を測定した。
次いで、各々作製した電槽21を用いて、図1に示すように、鉛を主成分とする基板に活物質ペーストを充填してなる正極板12と負極板13とをセパレータ11を介して交互に積層し、同極性同士の極板耳部をストラップ14A,14Bで各々接続することにより極板群15を形成し、極板群15を積層方向に50kPaで圧縮(圧迫)した状態で電槽21内に収納し、注液や排気用の開口部16Aを有する蓋16を接着し、この開口部16Aから極板群15が含浸する程度の電解液を注液した。次いで、電槽化成を行い、容量が10HRで1000Ahの制御弁式鉛蓄電池10を作製した。
なお、極板群15の圧縮(圧迫)については、極板群15の最外部極板の両平面を極板よりも表面積が大きく平滑な板を用いて平行に挟み、その外側からプレス機を用いて極板群15を挟んだ板に対して垂直に圧をかけ、極板群15の厚さを挿入する電槽内寸と同じ幅となるように圧迫した。
【0037】
続いて、各々作製した蓄電池10のサイクル寿命を確認するため、サイクル寿命試験を行った。サイクル寿命試験は、放電0.23CAで終止電圧1.7V、充電は放電容量の104%となるように0.23CA、上限電圧2.45Vで定電流定電圧充電を行い、100サイクル毎に10HR放電を実施した。
そして、10HR容量の70%を下回った時点で寿命と判断した。
表1は、長側壁の厚さ、短側壁の厚さ、最大変形量、変形割合、強度比、サイクル数を夫々示したものである。なお、変形割合は比較例1の最大変形量を100とした時の割合、強度比は、比較例1の強度を100としたときの比率である。また、表1中の上矢印は上記値と同一であることを示している。
【0038】
【表1】

【0039】
なお、実施例6〜9については、加圧による試験のみを行い、その試験結果を示している。
表1に示すように、実施例1(図3)は、リブのない比較例1(図9(A))と比べて40%強度が向上し、実施例1から隅部25Cの横リブ33を除いた比較例2(図9(B))と比べても9%(140%−131%)強度が向上し、電槽21の変形量を抑制することができた。特に比較例2との比較結果から、隅部25Cの横リブ33によって強度が向上していることは明らかである。
サイクル寿命についても、実施例1は1400回であり、比較例1及び2と比較して最もサイクル特性が向上していることが判った。
【0040】
また、実施例1よりも短側壁25Bを厚くした実施例2は、比較例1(図9(A))と比べて75%強度が向上し、比較例2及び実施例1と比べても強度が向上し、電槽21の変形量をより抑制することができた。サイクル寿命についても1600回に向上した。
また、実施例3(図4(A))は、縦リブ42(42A,42B)を等間隔にしており、実施例3から隅部25Cの横リブ33を除いた比較例3(図4(B))と比べて9%(130%−121%)強度が向上し、電槽21の変形量を抑制することができた。実施例3のサイクル寿命についても1300回であり、比較例3の1100回よりも向上した。
さらに、実施例4(図5(A))と隅部25Cの横リブ33を除いた比較例4(図5(B))とを比較しても、実施例4の方が9%(129%−120%)強度が向上し、サイクル寿命についても向上し、実施例5(図6(A))と隅部25Cの横リブ33を除いた比較例5(図6(B))とを比較しても、実施例5の方が12%(118%−106%)強度が向上し、サイクル寿命についても向上した。
【0041】
これらの比較結果は、電槽強度の向上がサイクル寿命の向上を果たすことを示している。これは電槽強度の向上により極板12,13と電解液を含むセパレータ11との密着性が向上し、電解液の移動を円滑にして寿命特性を向上させたと考えられる。
また、上記の比較結果(実施例1と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4の比較結果)は、隅部25Cの横リブ33の有る無しで9%〜12%の強度の違いがあることを示している。
ここで、この横リブ33がない場合、上記の比較結果によれば、縦リブ42(42A,42B)の有る無しでの比較(比較例1(図9(A))と比較例5(図6(B))の比較)によれば、縦リブ42(42A,42B)による強度向上は6%(106%−100%)である。つまり、隅部25Cの横リブ33は、比較例5のように、多数の縦リブ42(42A,42B)を設ける構成よりも強度向上に寄与している。
また、隅部25Cの横リブ33と縦リブ32からなる角リブ部31は、比較例5(図6(B))のように、隅部25C以外の領域に多数の縦リブ42(42A,42B)を設ける構成と比較して、電槽21の外形への影響が小さく、電槽21の大型化を回避できる。すなわち、角リブ部31を設けることによって、電槽21の大型化を抑制しつつ電槽強度を効率よく向上させることが可能である。
【0042】
図10は、上記試験結果から得た変形割合とサイクル数との関係を示す特性曲線図である。この図に示すように、変形割合とサイクル寿命とに相関関係があり、変形割合が小さいほどサイクル寿命が向上することが判る。
表1に示すように、実施例6〜9についても、比較例1に対して強度比で117%〜135%に向上している。このことから実施例6〜9についても、極板12,13と電解液を含むセパレータ11との密着性が向上していることは明らかであり、サイクル寿命が向上していることは明確である。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、セパレータ11を介して積層された正極板12と負極板13とからなる極板群15を電槽内に圧縮(圧迫)状態で収納する蓄電池10において、電槽21の隅部25Cには、隣接する側壁25にそれぞれ縦リブ32を設けて縦リブ32同士を横リブ33で連結することにより、電槽21の変形を抑制してサイクル寿命を効率よく向上させることができる。
また、隅部25Cにおいて、縦リブ32は、側壁25の上縁26から下縁27に渡って延在し、横リブ33は、その縦リブ32の延在方向に間隔を空けて縦リブ32同士を連結するので、上記縦横のリブ32,33によって隅部25C全体の強度を高めることができる。
さらに、隅部25Cを除く領域(平面部(非隅部))に設けられる縦リブ42(42A,42B)に関し、実施例1(図3)と実施例3,4(図4(A)、図5(A))との比較から、側壁25の左右中央部では密に設け、隅部25Cにいくほど疎に設ける実施例1の構成にすることにより、等間隔で配置する場合に比して電槽21の変形を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。
さらに、各側壁25の厚さに関し、実施例1(図3)と実施例2との比較から、極板群15の積層方向に位置する電槽21の2つの短側壁25Bを、他の側壁である長側壁25Aよりも厚くすることにより、電槽21の変形を抑制してサイクル寿命をより向上させることができる。
【0044】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。例えば、上記実施形態では、制御弁式鉛蓄電池に本発明を適用したが、本発明を、極板群を電槽内に圧縮(圧迫)状態で収納する各種の蓄電池に適用しても良い。また、縦リブ32,42,42A,42Bは、電槽側壁の上縁26から下縁27に渡って延在したものを適用したが、必ずしも上縁26又は/及び下縁27に渡って延在するものでなくても良い。
【符号の説明】
【0045】
10 蓄電池
11 セパレータ
12 正極板
13 負極板
15 極板群
16 蓋
21 電槽
21A 開口部
25A 長側壁
25B 短側壁
25C 隅部
25 側壁
26 上縁
27 下縁
30 凸条リブ
31 角リブ部
32,42,42A,42B 縦リブ
33,43 横リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して積層された正極板と負極板とからなる極板群を電槽内に圧縮状態で収納する制御弁式鉛蓄電池において、
前記電槽の隅部には、隣接する側壁にそれぞれ縦リブを設けて縦リブ同士を横リブで連結したことを特徴とする制御弁式鉛蓄電池。
【請求項2】
前記電槽は、底板の各辺から側壁が立ち上がって上面が開口し、
前記縦リブは、前記側壁の上縁から下縁に渡って延在し、前記横リブは、前記縦リブの延在方向に間隔を空けて前記縦リブ同士を連結することを特徴とする請求項1に記載の制御弁式鉛蓄電池。
【請求項3】
前記側壁に複数の縦リブを備え、前記複数の縦リブは、前記側壁の左右中央部では密に設けられ、前記隅部にいくほど疎に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御弁式鉛蓄電池。
【請求項4】
前記極板群の積層方向に位置する前記電槽の2つの側壁を、前記電槽の他の側壁よりも厚くしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御弁式鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−89369(P2013−89369A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227150(P2011−227150)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「蓄電複合システム化技術開発/要素技術開発/地域節電所を核とした地域エネルギーマネジメントシステムの開発及び住宅タウン用電力貯蔵システムとエネルギーマネジメントシステムの開発」に係わる共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】