説明

制御性T細胞増加剤

【課題】
腸管特異的に制御性T細胞を数的あるいは機能的に向上させる制御性T細胞増加剤および制御性T細胞増加剤を配合する飲食品、飼料などを提供すること。
【解決手段】
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を有効成分とする制御性T細胞増加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を有効成分とする、制御性T細胞増加剤、飲食品および飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫は、多くの動物に備わった生体防御機構であり、外部より侵入する細菌やウイルスなどの病原体や生体内で生じた腫瘍細胞を排除する役割を担う。すなわち、免疫系は「自己」に対しては免疫反応が始まらないように負に制御するが、病原微生物や腫瘍などの「非自己」に対しては正の応答によりこれらを排除する。さらに、正に応答した免疫系がそのまま続くことは個体にとって新たな障害を惹き起こす原因となりうるため、「非自己」の排除に引き続いて「正の応答」を終焉させるよう調節されている。このように、免疫の正の応答と負の応答のバランスが、免疫系のホメオスタシスの鍵となる。病原微生物に応答する際には正>負のバランスを、自己抗原や食物由来抗原、妊娠中の胎児由来抗原に対しては負>正のバランス(免疫寛容)を保つのが、正常の状態である。このバランスが崩れた「正の応答の過剰な亢進」や「負の応答の過剰な亢進」は、炎症性疾患、アレルギー、自己免疫疾患、習慣性流産、免疫不全(易感染・発癌)などの疾患につながる。
【0003】
このような免疫システムを正常に保つためには、CD4陽性ヘルパーT細胞(Th細胞)が主要な役割を担っている。正の応答の際には、Th細胞の中でもTh1、Th2、Th17細胞などのエフェクターTh細胞が、負の応答には制御性T細胞とよばれるTh細胞が機能することが知られている。ここで言う制御性T細胞とは、CD4陽性、CD25陽性、Foxp3陽性であることを特徴とするT細胞であり、あらゆる免疫応答において広範な免疫抑制活性を示すことが明らかにされている。一方、自己免疫疾患やアレルギー疾患では、この制御性T細胞の数的あるいは機能的な異常が指摘されている。自己免疫疾患の一つである炎症性腸疾患は、若年層を中心に急速に増加している慢性疾患であり、難病指定されている。炎症性腸疾患マウスに制御性T細胞を移入すると、疾患が治癒することから、制御性T細胞は炎症性腸疾患の抑制に重要な役割を担っていると考えられている(非特許文献1)。また、食物由来抗原などに対する過剰な免疫応答により引き起こされるアレルギー性腸炎において、制御性T細胞がその発症抑制に関与している。さらに、制御性T細胞を誘導することで、自己免疫疾患やアレルギー疾患を抑制・予防できる可能性が報告されており、制御性T細胞を誘導する因子の探索が精力的に行われてきた。
例えば、末梢ナイーブT細胞は、TGF-βの刺激によりFoxp3を発現し、制御性T細胞への分化を誘導することが開示されている(非特許文献2)。さらに、IL-2やレチノイン酸は、TGF-βの制御性T細胞分化誘導を促進することが知られている(非特許文献3、4)。
【0004】
近年、免疫システムを調節する食品成分として、乳酸菌、麹カビあるいは酵母などの食用微生物やそれらの細胞壁成分、また、シイタケやアガリクスに代表される担子菌類の多糖類などが知られている。これらの例として、乳酸菌菌体の細胞質画分を含有する免疫賦活組成物が開示されている(特許文献1)。ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)についても免疫調節機能が報告されており、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171はIFN-γの産生を促進し、IL-4の産生を抑制することが開示されている(特許文献2)。また、ラクトバチルス・プランタラムやラクトバチルス・ロイテリを摂取することでリンパ球における制御性T細胞の割合が増加することが報告されている(非特許文献5、6)。その一方で、ラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属のなかには、制御性T細胞を減少させるものも存在する(非特許文献7)。
制御性T細胞は様々な疾患の抑制に関与するが、基本的に負の応答を促進することから、その過剰な亢進が全身レベルで起きることにより免疫不全や腫瘍の発生、増殖にいたる危険性が危惧されている。実際、肺癌患者の腫瘍浸潤リンパ球および末梢血では制御性T細胞が増えており、腫瘍に対する免疫応答が抑制されていることが報告されている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-002959号公報
【特許文献2】特開2007-99628号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mottet, C.ら、J. Immunol., 170: 3939-3943, 2003
【非特許文献2】Kretschmer, K.ら、Nature Immunol., 6: 1219-1227, 2005
【非特許文献3】Laurence, A.ら、Immunity, 26: 371-381, 2007
【非特許文献4】Mucida,D.ら、Science, 317: 256-260, 2007
【非特許文献5】Karimi, K.ら、Am. J. Respir. Crit. Care. Med., 179: 183-193, 2009
【非特許文献6】Enomoto, M.ら、Biosci. Biotechnol. Biochem., 73: 457-460, 2009
【非特許文献7】Schmidt, E. G. W.ら、Inflamm. Bowel. Dis., 27, 2009
【非特許文献8】Woo, E. Y.ら、J. Immunol., 168: 4272-4276, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献2〜6に記載されるこれらの制御性T細胞誘導物質または制御性T細胞誘導乳酸菌は、脾臓、血液、またはリンパ節において制御性T細胞を誘導することが示されているが、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)についての記載や示唆はされていない。さらに、既知の制御性T細胞誘導物質または制御性T細胞誘導乳酸菌は、生体の部位には非特異的に全身レベルで制御性T細胞を誘導するため、生体の部位特異的に制御性T細胞を増加させる物質については、その必要性、課題や効果などについての記載や示唆もされていない。
非特許文献5および6に記載の乳酸菌も、腸間膜リンパ節やパイエル板のほか脾臓においても制御性T細胞が増加しており、全身で制御性T細胞が増加するものである。一方、全身レベルでの制御性T細胞の増加は、腫瘍に対する免疫応答を抑制することが報告されている(非特許文献8)また、マラリア原虫は、制御性T細胞を活性化することで原虫特異的な免疫応答を抑制し、個体を致死性感染に至らしめる。このように、制御性T細胞が全身レベルで亢進すると、ある種の疾病においてその発症リスクを上げる危険性が危惧されており、部位特異的に制御性T細胞を増加させる物質が求められている。
【0008】
したがって、炎症性腸疾患やアレルギー性腸炎の治療あるいは予防のためには、腸管特異的に制御性T細胞を数的あるいは機能的に向上させることが期待されている。本発明は、腸管特異的に制御性T細胞を誘導することで、炎症性腸疾患などに有効な医薬品や飲食品および飼料を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは、腸管特異的に制御性T細胞を誘導する因子を食品素材から鋭意探索した結果、乳酸菌のラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)をマウスに摂取させた後、パイエル板細胞および脾臓細胞のCD4陽性細胞における制御性T細胞(CD4陽性、CD25陽性、Foxp3陽性細胞)の割合を測定したところ、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)を摂取した群の方が、添加しない食餌を摂取した群よりもパイエル板細胞における制御性T細胞の割合が高かった。一方、脾臓細胞では両群に差は認められなかった。
【0011】
このように、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)が腸管特異的に制御性T細胞を誘導することを見出し、炎症性腸疾患やアレルギー性腸炎といった腸管の過剰な免疫応答を予防、改善することができる。さらに、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)はある種のナチュラルチーズの成熟過程で優勢になり、熟成チーズの風味形成に影響を及ぼす乳酸菌である。つまり、該乳酸菌を高含有するチーズを食することで制御性T細胞を増加させることも可能となる。
なお、特許文献2は、IFN-γの産生を促進し、IL-4の産生を抑制することが開示されているのみである。本発明は、制御性T細胞が増加することにより、炎症性腸疾患、アレルギー性腸炎の治療あるいは予防、リウマチなどに有効である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、下記のいずれかの構成からなる発明である。
(1)ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を有効成分とする制御性T細胞増加剤。
(2)上記乳酸菌が、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)であることを特徴とする上記(1)に記載の制御性T細胞増加剤。
(3)上記(1)または(2)に記載の制御性T細胞増加剤を配合した飲食品。
(4)上記(1)または(2)に記載の制御性T細胞増加剤を配合した飼料。
【発明の効果】
【0013】
本発明のラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を有効成分とする制御性T細胞増加剤は、腸管における制御性T細胞の誘導を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)の菌体を飼料に混合してマウスに投与した場合のパイエル板および脾臓におけるCD4陽性細胞中のCD25陽性、Foxp3陽性細胞の割合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
制御性T細胞とは、CD4陽性、CD25陽性、Foxp3陽性であることを特徴とするT細胞であり、あらゆる免疫応答において広範な免疫抑制活性を示すだけではなく、炎症性腸疾患、アレルギー性腸炎の治療あるいは予防、リウマチなどに有効である。
腸管の制御性T細胞を増加させるために、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)を用いることができるが、特に、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)が好ましい。
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)は、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離などの集菌手段によって分離されたものをそのまま本発明の有効成分として用いることができる。菌体として純粋に分離された菌体だけでなく、培養物、懸濁物、その他の菌体含有物や、菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
【0016】
さらに、製剤化に際しては製剤上許可されている賦型剤、安定剤、矯味剤などを適宜混合して濃縮、凍結乾燥するほか、加熱乾燥して死菌体にしてもよい。これらの乾燥物、濃縮物、ペースト状物も含有される。また、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)の制御性T細胞増加作用を妨げない範囲で、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、その他の任意の薬剤を混合して製剤化することもできる。剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤などが可能であり、これらを経口的に投与することが望ましい。
【0017】
経口的に投与することにより、制御性T細胞増加作用を達成し得るので、腸管制御性T細胞増加用飲食品、飼料としても使用することができる。制御性T細胞増加用飲食品の形態としては、制御性T細胞増加作用を妨げない範囲でどのようなものでもよく、上記乳酸菌の菌体自体、および上記乳酸菌の菌体を培養して得られた発酵乳、チーズ自体、さらに、これらの菌体、発酵乳、チーズなどを素材として使用し、パンやスナック菓子、ケーキ、プリンなどにしてもよく、飲料、発酵乳、麺類、ソーセージなどの飲食品、さらには、各種粉乳の他、乳幼児食品、栄養組成物、飼料などに配合することも可能である。
【0018】
また、本発明の乳酸菌を配合して、制御性T細胞増加剤あるいは、制御性T細胞増加用飲食品、飼料などの素材またはそれら素材の加工品に含有させて使用する場合、乳酸菌の含有割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量にあわせて適宜調節すればよい。例えば剤型が液体の場合には、1×105cells/ml〜1×1010cells/mlとすることが好ましく、固体の場合には、1×105cells/g〜1×1010cells/gとすることが好ましい。
【0019】
これらの制御性T細胞増加剤あるいは、制御性T細胞増加用飲食品は、腸管において制御性T細胞を増加させる作用を有するので、炎症性腸疾患などの腸管における炎症反応の予防、治療、改善、再発防止に非常に有益となりうる。
本発明の制御性T細胞増加剤を発揮させるためには、成人の場合、乳酸菌体重量で1〜1,000mg摂取することが望ましい。乳酸菌体は、古来、発酵乳やチーズの製造に用いられており、本発明の制御性T細胞増加剤は安全性に問題はないという特徴がある。
【実施例】
【0020】
以下に実施例および試験例を示し、本発明について詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
MRS培地(DIFCO社)1Lを滅菌し、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)の生菌10mgを摂取し、37℃で一晩培養した。次いで1,700×gで25分間遠心分離し、乳酸菌菌体の沈殿を得た。これに滅菌水を加えて懸濁し、菌体を洗浄するために遠心分離を3回繰り返した。得られた菌体を80℃で30分間加熱してから凍結乾燥して、本発明の制御性T細胞増加剤であるラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)菌体乾燥物1.0gを得た。
【0022】
[試験例1]
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)をマウスに摂取させて、制御性T細胞を測定した。ここでは、腸管免疫系において司令塔的な役割を担う小腸のパイエル板細胞と、全身の免疫系を反映する脾臓細胞において制御性T細胞を評価した。
(マウスでの経口摂取試験)
20匹のC57BL/6Jマウス(5週齢、雄性;日本チャールス・リバー社)をAIN-76標準飼料で1週間の予備飼育した後、2群(コントロール群、SBT2171摂取群の2群、各10匹)に分けた。コントロール群には引続きAIN-76標準飼料を与え、SBT2171摂取群には実施例1で示したラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株(FERM BP-5445)の菌体乾燥物をAIN76標準飼料に0.3%となるように添加した食餌を与えた。各実験飼料を5週間の摂取させた後に解剖し、脾臓と小腸パイエル板を摘出した。
(マウス脾臓細胞の調製)
摘出した脾臓を培養液中で磨砕した後Lympholayte-M(CEDARLANE社)で密度勾配遠心を行い、脾臓細胞浮遊液を得た。
(マウスパイエル板細胞の調製)
摘出したパイエル板を培養液中で磨砕することで組織懸濁液とした。組織懸濁液を70 μm-セルストレイナー(Falcon社)で濾した後、培養液で3回遠心洗浄し、パイエル板細胞浮遊液を得た。
【0023】
(制御性T細胞の測定)
調製したマウスの脾臓細胞およびパイエル板細胞を、細胞表面抗原を染色するため、FITC標識抗マウスCD4抗体(Becton Dickinson社)とPE-Cy5標識抗マウスCD25抗体(eBioscience社)で染色した。細胞表面抗原を染色した細胞について、PE標識抗マウスFoxp3抗体とFoxp3 Staining Buffer Set(eBioscience社)を用いて細胞内のFoxp3を染色した。染色した細胞は、フローサイトメーターEPICS XL(登録商標 BECKMAN COULTER社)で解析し、リンパ球画分におけるCD4陽性細胞中のCD25陽性、Foxp3陽性細胞の割合を測定した。
コントロール群およびSBT2171摂取群の脾臓およびパイエル板における制御性T細胞の割合を図1に示す。パイエル板におけるコントロール群の制御性T細胞は6.4%であるのに対し、SBT2171摂取群では7.1%であり、SBT2171摂取群ではコントロール群よりも制御性T細胞の割合が有意に高かった。一方、脾臓における制御性T細胞の割合は、コントロール群とSBT2171摂取群との間に差は認められなかった。したがって、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)を摂取することで、腸管特異的に制御性T細胞を増加させることができることが確認された。
【0024】
[実施例2]
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)を食用可能な合成培地(0.5%酵母エキス、0.1%トリプチケースペプトン添加)に5重量%接種し、38℃で15時間培養後、遠心分離で菌体を回収した。この菌体1gを乳糖5gと混合し、顆粒状に成形して本発明の制御性T細胞増加剤を得た。
【0025】
[実施例3]
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)JCM-1120株を食用可能な合成培地(0.5%酵母エキス、0.1%トリプチケースペプトン添加)に5重量%接種し、38℃で15時間培養後、遠心分離で菌体を回収した。この菌体1gを乳糖5gと混合し、顆粒状に成形して本発明の制御性T細胞増加剤を得た。
【0026】
[実施例4]
第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、上記実施例2で得られたラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)の凍結乾燥粉末10gに乳糖(日局)400g、バレイショデンプン(日局)600gを加えて均一に混合し、本発明の制御性T細胞増加剤を製造した。
【0027】
[実施例5]
第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、上記実施例3で得られたラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)JCM-1120株の凍結乾燥粉末10gに乳糖(日局)400g、バレイショデンプン(日局)600gを加えて均一に混合し、本発明の制御性T細胞増加剤を製造した。
【0028】
[実施例6]
ビタミンC40gまたはビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gに、上記実施例2で得られたラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)の凍結乾燥粉末40gを加えて混合した。混合物を袋につめ、本発明のスティック状栄養健康食品を150袋製造した。
【0029】
[実施例7]
大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、実施例2で得られたラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)10kgを配合して、飼料を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を有効成分とするので、腸管における制御性T細胞の誘導を促進することができ、制御性T細胞増加剤として、また飲食品および各種粉乳の他、乳幼児食品、栄養組成物、飼料などに配合することが可能である。
【受託番号】
【0031】
[寄託生物材料への言及]
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成6年6月22日(原寄託日)
平成8年3月6日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP-5445

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を有効成分とする制御性T細胞増加剤。
【請求項2】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)であることを特徴とする請求項1に記載の制御性T細胞増加剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御性T細胞増加剤を配合した飲食品。
【請求項4】
請求項1または2に記載の制御性T細胞増加剤を配合した飼料。

【図1】
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【公開番号】特開2011−121923(P2011−121923A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282711(P2009−282711)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】