説明

加工装置

【課題】ツールホルダを確実に支持してワークの複数の孔部に高精度な加工を効率的に行うとともに、汎用性に優れる加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置10は、刃具によりワークWの孔部26の内周面を加工するツールホルダ36と、前記ツールホルダ36に設けられ、加工済みの孔部26の内周面に挿入されて前記刃具による次段の前記孔部26の加工をサポートするサポート機構42とを備える。サポート機構42は、ツールホルダ36の外周面との間に第1流体軸受76を構成するとともに、前記ツールホルダ36の回転及び軸方向への移動を許容するリング部材78と、前記リング部材78の外周面との間に第2流体軸受80を構成し、前記ツールホルダ36の径方向外方に拡径又は突出して加工済みの孔部26の内周面に押圧される支持部材82とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに同軸的に設けられた複数の孔部を加工するための加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンを構成するシリンダブロックでは、クランクシャフトを挿入するために、複数の貫通孔が所定の間隔ずつ離間して設けられている。従って、ワークであるシリンダブロックのクランクボーリング加工は、ラインボーリングバー(所謂、両持式ボーリングバー)を使用して専用加工機で行われている。
【0003】
具体的には、ワークがリフトアップされた状態で、ラインボーリングバーが加工孔に挿入される。続いて、ワークの前方に配置されている治具サポートの孔に、ラインボーリングバーの先端が挿入されることにより、前記ボーリングバーの両端が支持される。そして、ワークが下降着座された後、両持方式のボーリングバーにより同時多刃式の加工が行われる。
【0004】
しかしながら、この方式では、ワークの長さよりも長尺なボーリングバーが必要となり、前記ボーリングバーの先端を確実にサポートするサポート機構が必要となる。この種のサポート方法には、様々な工夫がなされており、例えば、特許文献1に開示されている中ぐり加工装置が知られている。
【0005】
図11に示すように、中ぐり加工装置1は、ベッド2上に設けられて被加工物Wを載置したテーブル3と、長尺の工具Tの一端を保持し回転させる主軸4とを相対移動させることにより、前記被加工物Wに形成された貫通穴5の内周面が加工されている。
【0006】
ベッド2又はテーブル3上に設けられた支持ジグ6の筒状支持面7により、工具Tの他端又は中間部が支持されている。支持ジグ6を通して支持面7に流体が供給されることにより、前記支持面7と工具Tの外周面との間には、流体軸受が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−141982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1では、被加工物Wが載置されるテーブル3に、長尺の工具T(ボーリングバー)の先端をサポートする支持ジグ6が設けられている。このため、被加工物Wの貫通穴5の位置に対応して支持ジグ6を作製する必要があり、マシニングセンタが持つ加工の汎用性(flexibility)という高い機能が制約されてしまう。
【0009】
すなわち、被加工物Wの貫通穴5の高さが変わると、それに対応して支持ジグ6の高さを変える必要がある。さらに、被加工物Wの長さが変わると、それに対応して支持ジグ6の位置も変える必要があり、複数の被加工物Wに対応することが容易ではないという問題がある。しかも、流体軸受と貫通穴5までの距離は、前記貫通穴5毎に異なるため、加工条件も異なる。
【0010】
さらにまた、支持ジグ6と工具Tの間で流体軸受が構成されている。この流体軸受は、機械内の切削粉が飛散する所に設置され、クーラント噴流や切削水により切屑が巻き上がったり、はね返ったりして前記流体軸受にかかるおそれがある。これにより、流体軸受に切粉等が介在して、支持ジグ6と工具Tの間で食い付き等が惹起されるという問題がある。
【0011】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、ツールホルダを確実に支持してワークの複数の孔部に高精度な加工を効率的に行うとともに、汎用性に優れる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ワークに同軸的に設けられた複数の孔部を加工するための加工装置に関するものである。この加工装置は、スピンドルに連結されて回転し、工具により孔部の内周面を加工するツールホルダと、前記ツールホルダに設けられ、加工済みの孔部内周面に挿入されて前記工具による次段の前記孔部の加工をサポートするサポート機構とを備えている。
【0013】
そして、サポート機構は、ツールホルダの外周面との間に第1流体軸受を構成するとともに、前記ツールホルダの回転及び軸方向への移動を許容するリング部材と、前記リング部材の外周面との間に第2流体軸受を構成し、前記ツールホルダの径方向外方に拡径又は突出して加工済みの孔部内周面に押圧される支持部材とを備えている。
【0014】
また、この加工装置では、サポート機構は、ツールホルダの外周面に形成される第1ノズルと、前記第1ノズルから流体が噴射される第1チャンバと、前記第1チャンバから前記流体を流出させる第1リーク溝と、リング部材に径方向に貫通形成される第2ノズルと、前記第2ノズルから前記流体が噴射される第2チャンバと、前記第2チャンバから前記流体を流出させる第2リーク溝とを設け、第1流体軸受は、前記第1チャンバ及び前記第1リーク溝を備える一方、第2流体軸受は、前記第2チャンバ及び前記第2リーク溝を備えることが好ましい。
【0015】
さらに、この加工装置では、ツールホルダの内部には、流体であるクーラント液を流通させるクーラント流路が形成されるとともに、前記クーラント流路は、工具による加工部位に前記クーラント液を供給する第1分岐流路と、サポート機構に前記クーラント液を供給する第2分岐流路とを有することが好ましい。
【0016】
さらにまた、この加工装置では、ツールホルダには、流体の圧力により前記ツールホルダの径方向に工具の位置を調整可能な補正ヘッドが設けられることが好ましい。
【0017】
また、この加工装置では、支持部材は、一部が分離された断面C形状を有する弾性Cリング部材であり、前記弾性Cリング部材の内周面には、第2流体軸受を形成して拡縮自在な変形リング部材が配設されることが好ましい。
【0018】
さらに、この加工装置では、支持部材は、第2流体軸受を形成するカバーリング部材に、径方向に進退自在に設けられるシュー部材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る加工装置では、ツールホルダに設けられるサポート機構は、加工済みの孔部内周面に挿入されることにより、工具による次段の孔部の加工をサポートしている。このため、複数の孔加工において、サポート機構によるサポート位置から加工する孔部までの位置関係は、前記孔部毎に同じ条件となる。従って、ツールホルダを確実に支持することができ、ワークの複数の孔部に高精度な加工を効率的に行うとともに、汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係るボーリング加工装置の概略説明図である。
【図2】 前記ボーリング加工装置の要部断面図である。
【図3】 前記ボーリング加工装置の、図2中、III−III線断面図である。
【図4】 前記ボーリング加工装置を構成するサポート機構の、図3中、IV−IV線断面図である。
【図5】 短尺ツールでワークの孔部を加工する際の説明図である。
【図6】 前記短尺ツールに代えて本発明のツールホルダが取り付けられた状態の説明図である。
【図7】 前記サポート機構の動作説明図である。
【図8】 前記ツールホルダの動作説明図である。
【図9】 本発明の第2の実施形態に係るボーリング加工装置を構成するサポート機構の断面説明図である。
【図10】 前記サポート機構の、図9中、X−X線断面図である。
【図11】 特許文献1に開示されている中ぐり加工装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るボーリング加工装置10は、ベッド12を備える。ベッド12上には、一対のX軸ガイドレール14を介して装置本体16がX軸方向(一方の水平軸方向)に進退自在に載置されるとともに、一対のZ軸ガイドレール18を介してワークテーブル20がZ軸方向(X軸に交差する他方の水平軸方向)に進退自在に載置される。
【0022】
ワークテーブル20は、Z軸ガイドレール18上に配置される基台22を備え、前記基台22上に設けられるテーブル24には、ワークW、例えば、シリンダブロックが位置決め保持される。ワークWは、ボーリング加工される複数の孔部(ジャーナル孔)26、例えば、5つの孔部26a〜26e(以下、単に孔部26ともいう)を同軸的に設けている。
【0023】
装置本体16の正面には、鉛直方向(矢印Y方向)に延在して一対のY軸ガイドレール28が設けられる。Y軸ガイドレール28には、昇降部30が矢印Y方向に進退自在に支持されるとともに、前記昇降部30には、回転駆動源32に連結されてスピンドル34が回転軸を水平方向に延在して設けられる。スピンドル34には、ツールホルダ36が離脱自在に取り付けられる。
【0024】
ツールホルダ36には、流体の圧力により前記ツールホルダ36の径方向(矢印A方向)に刃具(工具)38の位置を調整可能な補正ヘッド40と、加工済みの孔部26の内周面に挿入されて前記刃具38による次段の孔部、例えば、孔部26c〜26eの加工をサポートするサポート機構42とが設けられる。
【0025】
図2に示すように、ツールホルダ36内には、補正ヘッド40を外部からの駆動用エアにより調整するための駆動力伝達部44が設けられる。駆動力伝達部44には、駆動用エア管路46を介して駆動用エアが供給される。駆動力伝達部44は、ブースタ構造を採用しており、駆動用エア管路46に連通する空圧シリンダ部48と、前記空圧シリンダ部48よりも少容量な第1油圧シリンダ部50とを直列的に備える。空圧シリンダ部48には、ピストン52が摺動自在に配置され、このピストン52から延在するロッド54は、第1油圧シリンダ部50内に摺動シール56を介装して突出する。
【0026】
第1油圧シリンダ部50は、油圧管路58を介してパワーユニット60に連通する。パワーユニット60は、ヘッドハウジング62内に収容され、油圧管路58に連通する第2油圧シリンダ部64と、ピストン66とを備える。ピストン66は、スピンドル34の径方向(矢印A方向)に進退可能である。ヘッドハウジング62には、S字状のスリット68が形成されるとともに、このヘッドハウジング62は、パワーユニット60に補正の油圧が作用する際に、径方向外方に押圧されて前記S字状のスリット68を介して矢印A1方向に変位する。
【0027】
ツールホルダ36内には、前記ツールホルダ36の軸方向に延在してクーラント液(流体)を流通させるクーラント流路70が形成される。クーラント流路70は、刃具38による加工部位にクーラント液を供給する第1分岐流路72と、サポート機構42に前記クーラント液を供給する4本の第2分岐流路74とを設ける。第2分岐流路74は、ツールホルダ36の径方向に90°間隔ずつ離間して放射状に延在する。
【0028】
図3に示すように、サポート機構42は、ツールホルダ36の外周面との間に第1流体軸受76を構成するとともに、前記ツールホルダ36の回転及び軸方向への移動を許容するリング部材78と、前記リング部材78の外周面との間に第2流体軸受80を構成し、前記ツールホルダ36の径方向外方に拡径して加工済みの孔部26(孔部26a〜26eの任意の1つ)の内周面に押圧される支持部材82とを備える。
【0029】
図3及び図4に示すように、サポート機構42は、ツールホルダ36の外周面に形成される第1ノズル84と、前記第1ノズル84からクーラント液が噴射される第1チャンバ86と、前記第1チャンバ86から前記クーラント液をツールホルダ36の外周面に沿って円周状に流出させる第1リーク溝88とを設ける。
【0030】
サポート機構42は、さらにリング部材78に径方向に貫通形成される第2ノズル90と、前記第2ノズル90からクーラント液が噴射される第2チャンバ92と、前記第2チャンバ92から前記クーラント液を流出させる第2リーク溝94とを設ける。第1流体軸受76は、第1チャンバ86及び第1リーク溝88を備える一方、第2流体軸受80は、第2チャンバ92及び第2リーク溝94を備える。
【0031】
支持部材82は、一部が分離された断面C形状を有する弾性Cリング部材であり、前記弾性Cリング部材の内周面には、第2流体軸受80を形成して拡縮自在な変形リング部材96が配設される。変形リング部材96は、例えば、樹脂材で形成されるとともに、前記変形リング部材96は、クランプリング97を介して保持される(図4参照)。変形リング部材96の内周面とリング部材78の外周面との間に、例えば、4本のゴム棒体98が介装されることにより、4つの第2チャンバ92が分割形成される(図3参照)。
【0032】
図2に示すように、ツールホルダ36の軸方向先端側には、段部100a、100bを介して小径部が設けられる。この段部100aには、スプリング102の一端が当接する一方、前記スプリング102の他端がリング部材78の一方の端面に当接する。リング部材78の他方の端面は、段部100bに当接することにより、刃具38とサポート機構42との間隔を一定に維持している。
【0033】
このように構成されるボーリング加工装置10の動作について、以下に説明する。
【0034】
図1に示すように、ワークテーブル20を構成するテーブル24には、ワークWが位置決め保持される。一方、装置本体16を構成するスピンドル34には、例えば、図5に示すように、短尺ツールであるツールホルダ36sが取り付けられる。
【0035】
ツールホルダ36sは、ツールホルダ36に比べて相当に短尺に構成されており、サポート構造を用いることなく、撓み等の変形が可及的に防止されている。ツールホルダ36sは、補正ヘッド40を備えるとともに、刃具38を設ける。なお、初期サポート機能が不要であれば、ツールホルダ36sを使用することなく、直接、ツールホルダ36を使用して加工を開始してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、以下に説明するように、ツールホルダ36sによりワークWの2つの孔部26a、26bを加工するものであるが、これに限定されるものではない。例えば、ツールホルダ36sによりワークWの孔部26aを加工した後、他の孔部26b〜26eを、全てツールホルダ36により加工してもよい。
【0037】
あるいは、ツールホルダ36sによりワークWの2つの孔部26a、26bを加工をした後、前記ワークWを反転して前記ツールホルダ36sにより該ワークWの孔部26e、26dを加工し、さらにツールホルダ36により前記ワークWの残りの孔部26cを加工することもできる。
【0038】
一方、ワークWは、同軸上に5つの孔部26a〜26eを備えているが、これに限定されるものではなく、6つ以上の孔部や4つ以下の孔部を有する種々のワークWにも適用可能である。
【0039】
そこで、ツールホルダ36sは、スピンドル34に装着された状態で、装置本体16がX軸方向に移動されるとともに、昇降部30が矢印Y方向に進退されて前記ツールホルダ36sは、ワークWに対して位置決めされる。この状態で、スピンドル34の回転作用下に、ツールホルダ36sが回転しながら、ワークWは、Z軸方向前方(装置本体16側)に移動する。従って、回転する刃具38により、ワークWには、1番目の孔部26aと2番目の孔部26bとの孔加工が、順次、行われる。
【0040】
次いで、ツールホルダ36sがスピンドル34から離脱された後、ツールホルダ36が前記スピンドル34に取り付けられる。そして、ツールホルダ36の先端がワークWの内部に相対的に挿入され、刃具38が孔部26cの直前に配置されると、クーラント流路70にクーラント液が供給される(図2参照)。
【0041】
クーラント流路70に供給されたクーラント液は、一部分が第1分岐流路72に導入されて刃具38による加工部位に噴射される。クーラント液の残余の部分は、4本の第2分岐流路74に導入され、図3に示すように、ツールホルダ36の径方向に90°間隔ずつ離間して放射状に流動する。
【0042】
第2分岐流路74に導入されたクーラント液は、先ず、ツールホルダ36の外周面に形成される第1ノズル84で流量が調整されて第1チャンバ86に流入される。この第1チャンバ86に貯留されるクーラント液は、第1リーク溝88の僅かな隙間から外部に流出することにより、第1流体軸受76が構成される。このため、リング部材78とツールホルダ36との間には、求心性が確保されるとともに、サポート剛性の向上を図ることができる。
【0043】
さらに、図4に示すように、第1チャンバ86に貯留されるクーラント液は、第2ノズル90で流量が調整されて第2チャンバ92に流入される。第2チャンバ92に貯留されるクーラント液の圧力は、変形リング部材96を拡張させることができる。この変形リング部材96が拡張することにより、支持部材82が拡張される。これにより、拡張された支持部材82は、加工済みの孔部26bの内周面に密着してサポート機能を発揮することが可能になる。
【0044】
第2チャンバ92に貯留されるクーラント液は、第2リーク溝94の僅かな隙間から外部に流出することにより、第2流体軸受80が構成される。従って、支持部材82とリング部材78との間には、求心性が確保されるとともに、サポート剛性の向上を図ることができる。
【0045】
一方、補正ヘッド40では、図2に示すように、駆動用エアが駆動用エア管路46を介して駆動力伝達部44を構成する空圧シリンダ部48に供給される。空圧シリンダ部48では、ピストン52が矢印B方向に押圧され、前記ピストン52が矢印B方向に移動する。このため、第1油圧シリンダ部50内が加圧され、加圧された油がこの第1油圧シリンダ部50から油圧管路58を介してパワーユニット60に供給される。
【0046】
これにより、パワーユニット60を構成する第2油圧シリンダ部64内の油圧が高くなり、ピストン66がスピンドル34の径方向外方(矢印A1方向)に移動する。従って、パワーユニット60に補正の油圧が作用し、ヘッドハウジング62が直径外方向に押圧され、S字状のスリット68を介して刃具38が矢印A1方向に変位する。このため、補正ヘッド40による刃具38の位置調整が行われる。なお、補正ヘッド40による調整作業は、必要に応じて行われる。
【0047】
上記の状態は、図7に概略的に示されており、サポート機構42がワークWの孔部26bの加工済み内周面に結合されることにより、回転するツールホルダ36を保持するとともに、前記ワークWが矢印C方向に移動する。従って、図8に示すように、サポート機構42は、スプリング102の弾性力に抗して孔部26bの加工済み内周面と一体に矢印C方向に移動する一方、ツールホルダ36は、軸方向に移動することなく、回転する。これにより、ワークWの3番目の孔部26cの孔加工が行われる。
【0048】
孔部26cの孔加工が終了すると、サポート機構42に付与されるクーラント液による液圧が解除される。このため、サポート機構42は、収縮して孔部26bの内周面から離脱し、スプリング102の弾性力により段部100bに当接する位置(原位置)に復帰する。一方、補正ヘッド40に供給されていた駆動用エアもリリースされる。以下、同様に、ワークWの第4番目の孔部26d及び第5番目の孔部26eの孔加工が行われる。
【0049】
この場合、第1の実施形態では、ツールホルダ36に設けられるサポート機構42は、ワークWの加工済みの孔部26の内周面に挿入されて刃具38による次段の孔部26の加工をサポートしている。このため、複数の孔加工において、サポート機構42によるサポート位置から加工する孔部26までの位置関係は、前記孔部26毎に同じ条件となる。
【0050】
これにより、ツールホルダ36を確実に支持することができ、ワークWの複数の孔部26に高精度な加工を効率的に行うとともに、汎用性に優れるという効果が得られる。
【0051】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るボーリング加工装置110を構成するサポート機構112の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係るボーリング加工装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0052】
サポート機構112は、図9及び図10に示すように、支持部材114を備えるとともに、前記支持部材114は、第2流体軸受80を形成するカバーリング部材116に径方向に進退自在に設けられるシュー部材である。カバーリング部材116は、等角度間隔ずつ離間して径方向に貫通する4つの段付き開口部118を設け、前記段付き開口部118には、それぞれ支持部材114が前記径方向に進退自在に配設される。
【0053】
このように構成される第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1チャンバ86に貯留されるクーラント液は、第2ノズル90で流量が調整されて第2チャンバ92に流入される。第2チャンバ92に貯留されるクーラント液の圧力は、支持部材114を直径外方向に移動させ、加工済みの孔部26bの内周面に密着してサポート機能を発揮することが可能になる。
【0054】
これにより、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、第1及び第2の実施形態では、第1チャンバ86と第2チャンバ92とがそれぞれ4つの独立したチャンバで構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、第1チャンバ86を1つの円周状の溝により構成してもよく、また、ゴム棒体98を用いずに1つの第2チャンバ92を採用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10、110…ボーリング加工装置 12…ベッド
16…装置本体 20…ワークテーブル
26、26a〜26e…孔部 30…昇降部
34…スピンドル 36…ツールホルダ
38…刃具 40…補正ヘッド
42、112…サポート機構 44…駆動力伝達部
48…空圧シリンダ部 50、64…油圧シリンダ部
60…パワーユニット 70…クーラント流路
72、74…分岐流路 76、80…流体軸受
78…リング部材 82、114…支持部材
84、90…ノズル 86、92…チャンバ
88、94…リーク溝 96…変形リング部材
98…ゴム棒体 102…スプリング
116…カバーリング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに同軸的に設けられた複数の孔部を加工するための加工装置であって、
スピンドルに連結されて回転し、工具により前記孔部の内周面を加工するツールホルダと、
前記ツールホルダに設けられ、加工済みの孔部内周面に挿入されて前記工具による次段の前記孔部の加工をサポートするサポート機構と、
を備え、
前記サポート機構は、前記ツールホルダの外周面との間に第1流体軸受を構成するとともに、前記ツールホルダの回転及び軸方向への移動を許容するリング部材と、
前記リング部材の外周面との間に第2流体軸受を構成し、前記ツールホルダの径方向外方に拡径又は突出して前記加工済みの孔部内周面に押圧される支持部材と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置において、前記サポート機構は、前記ツールホルダの外周面に形成される第1ノズルと、
前記第1ノズルから流体が噴射される第1チャンバと、
前記第1チャンバから前記流体を流出させる第1リーク溝と、
前記リング部材に径方向に貫通形成される第2ノズルと、
前記第2ノズルから前記流体が噴射される第2チャンバと、
前記第2チャンバから前記流体を流出させる第2リーク溝と、
を設け、
前記第1流体軸受は、前記第1チャンバ及び前記第1リーク溝を備える一方、前記第2流体軸受は、前記第2チャンバ及び前記第2リーク溝を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加工装置において、前記ツールホルダの内部には、前記流体であるクーラント液を流通させるクーラント流路が形成されるとともに、
前記クーラント流路は、前記工具による加工部位に前記クーラント液を供給する第1分岐流路と、
前記サポート機構に前記クーラント液を供給する第2分岐流路と、
を有することを特徴とする加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工装置において、前記ツールホルダには、流体の圧力により該ツールホルダの径方向に前記工具の位置を調整可能な補正ヘッドが設けられることを特徴とする加工装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加工装置において、前記支持部材は、一部が分離された断面C形状を有する弾性Cリング部材であり、
前記弾性Cリング部材の内周面には、前記第2流体軸受を形成して拡縮自在な変形リング部材が配設されることを特徴とする加工装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加工装置において、前記支持部材は、前記第2流体軸受を形成するカバーリング部材に、径方向に進退自在に設けられるシュー部材であることを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−30344(P2012−30344A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181937(P2010−181937)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000102865)エヌティーエンジニアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】