説明

加工装置

【課題】ファンに加工屑等の異物が付着する恐れを低減してファンの吸引力の低下を防止する。
【解決手段】加工室から排気路に流入した排気に含まれる加工屑を含む加工液を気体から分離する分離手段48を具備し、分離手段48は、漏斗状のチャンバー下部50の上端から立ち上がる円筒状のチャンバー上部52とで構成された分離チャンバーと、チャンバー上部52の側面に形成された加工室に連通する吸気口58と、チャンバー上部52の上端に形成されたファンに連通する気体排出口60と、チャンバー下部50の下端に形成された廃液排出口62とを有し、吸気口58から吸入された排気によって分離チャンバー内に渦巻き気流が発生することで、排気に含まれる加工屑を含む廃液が廃液排出口62を介して排出されるとともに、排気は気体排出口60を介して排出され、分離チャンバーのチャンバー上部52とチャンバー下部50は分離可能に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を加工する加工装置に関し、特に、加工室内の雰囲気を排気するファンと排気路とを備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスでは、シリコンやガリウム砒素等の半導体材料からなるウエーハの表面に格子状の分割予定ラインが設定され、分割予定ラインで区画された各領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。
【0003】
このようなウエーハは、裏面が研削されて所定の厚みに薄化された後、分割予定ラインに沿って切断することにより、多数のデバイスチップに分割される。このようにして得られたデバイスチップは、樹脂やセラミックスでパッケージングされ、各種電気機器に実装される。
【0004】
ウエーハを分割する装置としては、回転する切削ブレードを分割予定ラインに沿ってウエーハに切り込ませて切削する切削装置が一般的であり、ウエーハの裏面研削には、ウエーハの裏面に回転する砥石を押し付けて研削する研削装置が用いられる。
【0005】
この種の切削装置や研削装置といった加工装置においては、密閉された加工室内においてチャックテーブルで保持した被加工物を切削ブレードや研削砥石等の加工手段で加工する構成が一般的である。
【0006】
そして加工の際には、加工手段が被加工物に接する加工点に加工液を供給しながら加工が遂行される。加工液は、加工によって生じる加工屑を被加工物から除去したり加工点を冷却したりする目的で供給され、加工屑が混入した加工液は廃液として加工装置外に排出される。
【0007】
一方、加工室内の雰囲気はダクト(排気路)を通じて装置外に排気され、ダクトの途中には、加工室内の雰囲気をダクト内に吸入して排気口に送り込むファンが設けられている。加工装置の中には、ダクト及びファンが内蔵されているタイプのものもある(例えば、特開2000−124165号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−124165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このような構成の加工装置では、ファンによって加工室からダクト内に吸入される排気中に加工屑が混じった廃液が混入する場合があり、加工屑がファンに付着し易い。
【0010】
加工屑がファンに付着すると、ファンの回転速度が低下したりファンに振動が発生したりして、吸引力が低下する恐れがある。特に、セラミックスやガラス等の加工では、加工屑が多量に発生し加工室内に充満するため、この傾向が顕著である。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ファンに加工屑等の異物が付着する恐れを低減してファンの吸引力の低下を防止可能な加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段と被加工物とに加工液を供給する加工液供給手段と、該チャックテーブルと該加工手段と該加工液供給手段とを囲繞する加工室と、一端が該加工室に連通すると共に他端がファンに連通して該加工室内の雰囲気を排気する排気路とを備えた加工装置であって、該加工室と該ファンとの間の該排気路中に配設され、該加工室から該排気路に流入した排気に含まれる加工屑を含む加工液を気体から分離する分離手段を更に具備し、該分離手段は、漏斗状のチャンバー下部と該チャンバー下部の上端から立ち上がる円筒状のチャンバー上部とで構成された分離チャンバーと、該チャンバー上部の側面に形成された該加工室に連通する吸気口と、該チャンバー上部の上端に形成された該ファンに連通する気体排出口と、該チャンバー下部の下端に形成された廃液排出口とを有し、該吸気口から吸入された排気によって該分離チャンバー内に渦巻き気流が発生することで、該排気に含まれる加工屑を含む廃液が該廃液排出口を介して排出されるとともに、該排気は該気体排出口を介して排出され、該分離チャンバーの該チャンバー上部と該チャンバー下部は分離可能に連結されていることを特徴とする加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、分離チャンバー内に導入される排気中に加工屑等の異物が混じった廃液が混入していると、その廃液が渦巻き気流の作用で気体と分離させられ、気体のみが気体排出口から排出され、異物を含む廃液は廃液排出口から排出される。
【0014】
従って、廃液がファンを通過することがないため、廃液に含まれる加工屑等の異物がファンに付着する恐れが低減する。その結果、異物の付着によりファンの吸引力が低下することがない。
【0015】
廃液は分離チャンバー内に付着して水分のみ流れ落ち加工屑等が分離チャンバー内に堆積し易い。加工屑等の異物が分離チャンバー内に堆積すると、渦巻き気流のスムーズな発生を妨げるため分離機能が低下し、更には分離チャンバー内で分離された廃液が廃液排出口に流れ落ちるのが滞るが、分離チャンバーが上下に分離できる構造のため、容易に清掃可能であり、加工屑等の異物の付着を取り除き易く分離機能を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】切削装置の外観斜視図である。
【図2】切削装置の要部の縦断面図である。
【図3】分離手段の斜視図である。
【図4】図4(A)は分離手段の横断面図、図4(B)は分離手段の縦断面図である。
【図5】図5(A)はチャンバー下部とチャンバー上部が結合された状態の分離チャンバーの斜視図、図5(B)はチャンバー下部とチャンバー上部が分離された状態の分離チャンバーの分解斜視図である。
【図6】チャンバー下部と、チャンバー上部と、上蓋とから構成される本発明第2実施形態の分離手段の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、加工装置の一種である本発明実施形態に係る切削装置(ダイシング装置)2の外観斜視図が示されている。切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。
【0018】
切削対象のウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着される。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、ウエーハカセット6中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット6は上下動可能なカセットエレベータ8上に載置される。
【0019】
ウエーハカセット6の後方には、ウエーハカセット6から切削前のウエーハWを搬出するとともに、切削後のウエーハをウエーハカセット6に搬入する搬出入手段10が配設されている。ウエーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウエーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0020】
仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されており、仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、このチャックテーブル18に吸引されるとともに、複数のクランプ19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0021】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWの切削すべきストリートを検出するアライメントユニット20が配設されている。
【0022】
アライメントユニット20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像ユニット22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像ユニット22によって取得された画像は、図示を省略した表示モニタに表示される。
【0023】
アライメントユニット20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対して切削加工を施す切削ユニット24が配設されている。切削ユニット24はアライメントユニット20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0024】
切削ユニット24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像ユニット22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0025】
切削加工の終了したウエーハWは搬送手段25によりスピンナ洗浄装置27まで搬送され、スピンナ洗浄装置27で洗浄されるとともにスピン乾燥される。
【0026】
切削装置2の上述したような機構部分は筐体30内に収容されている。筐体30はフレーム32と、フレーム32に装着されたアクリル樹脂等から形成された透明プレート34から構成される。
【0027】
オペレータは、取っ手36を掴んでカバー37を開閉することによりチャックテーブル18にアクセスすることができ、取っ手38を掴んでカバー39を開閉することにより切削ユニット24にアクセスすることができる。
【0028】
更に、取っ手40を掴んでカバー41を開閉することによりカセットエレベータ8上にウエーハカセット6を載置したり、ウエーハカセット6をカセットエレベータ8上から取り出すことができる。
【0029】
図2を参照すると、本発明実施形態に係る切削装置2の要部断面図が示されている。切削装置2の筐体30内には加工室31が画成されている。加工室31内には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWと、切削ユニット24が収容されている。切削ユニット24の切削ブレード28の両側には切削液供給ノズル29が配設されている。
【0030】
加工室31の後側(図2で左側)には隔壁42が設けられており、この隔壁42には排気口43が形成されている。排気口43には排気路(ダクト)44の一端が連通されている。排気路44の他端は切削装置2内に設置されたファン45に連通しており、排気路44の他端側には切削装置2の外部まで伸びる排気管46が接続されている。
【0031】
排気路44の途中の加工室31とファン45との間には、排気を気体と液体とに分離する分離手段48が配設されている。ここで、排気路44を加工室31と分離手段48との間と、分離手段48とファン45との間の二つに分け、前者を上流側排気路44A、後者を下流側排気路44Bとする。排気管46は、下流側排気路44Bの末端に接続されている。
【0032】
図3及び図4(B)に示すように、分離手段48は、漏斗状のチャンバー下部50と、チャンバー下部50の上端から立ち上がった円筒状のチャンバー上部52とから構成された分離チャンバー54を含んでいる。チャンバー下部50と、チャンバー上部52は連結部56で連結されている。
【0033】
チャンバー上部52の側面には加工室31に連通する吸気口58が形成されており、チャンバー上部52の上部にはファン45に連通する気体排出口60が形成されている。一方、チャンバー下部50の下端には廃液排出口62が形成されており、廃液排出口62は図示しないドレーンに接続されている。
【0034】
図5(A)及び図5(B)に示すように、チャンバー下部50に固定された金具70をチャンバー上部52に固定された金具72に係合することにより、チャンバー下部50とチャンバー上部52とは連結されて分離チャンバー54を構成する。
【0035】
本実施形態の切削装置2では、ファン45を駆動すると、加工室31内の雰囲気が排気口43を介して上流側排気路44A内に吸入されて、分離手段48の吸気口58から分離チャンバー54内に導入される。そして、分離チャンバー54内を通って気体排出口60を介して下流側排気路44Bに排出され、排気管46を経て切削装置2の外部に排気される。
【0036】
このようにして、加工室31内の雰囲気が排気されることにより、加工室31内は清浄な雰囲気に維持される。排気が通過する分離手段48においては、分離チャンバー54内に渦巻き気流(渦流)64が発生する。即ち、分離チャンバー54内では、排気が渦巻状に回転してから上方の気体排出口60より下流側排気路44Bに排出されていく。
【0037】
ウエーハWの切削加工時には、切削液供給ノズル29から切削液を供給しながら切削ブレード28による切削加工が実施されており、切削液は回転する切削ブレード18により跳ね上げられてミスト状に飛散する。
【0038】
このミスト状となった切削液は廃液であって、その中には加工屑等の異物が混じっている場合が多く、排気に混入した状態で排気口43から上流側排気路44Aを経て分離手段48の吸気口58を介して分離チャンバー54内に導入される。
【0039】
分離チャンバー54内に導入された廃液55を含む排気は、分離チャンバー54内で渦巻き気流64となって回転し、遠心分離作用で気体と液体、即ち排気と廃液に分離される。そして、排気のみが気体排出口60から下流側排気路44Bに排出され、異物を含む廃液55は廃液排出口62から落下して排出される。
【0040】
このように、ミスト状の廃液を含む加工室31内の雰囲気を排気しても、その排気が分離手段48を通過することによって気体と液体とに分離され、気体のみが気体排出口60から排出され、異物を含む廃液は廃液排出口62から排出される。
【0041】
従って、ミスト状の廃液がファン45を通ることがなく、このため廃液に含まれる加工屑等の異物がファン45に付着する恐れが低減される。その結果、ファン45の吸引力の低下が防止される。
【0042】
廃液が分離チャンバー54内に付着して水分のみ流れ落ち、図4に示すように、加工屑等の粉塵66が分離チャンバー54内に堆積する。粉塵66が分離チャンバー54内に体積すると、渦巻き気流64のスムーズな発生を妨げるため分離機能が低下し、更には分離チャンバー54内で分離された廃液が廃液排出口62に流れ落ちるのが阻害される。
【0043】
本実施形態の分離手段48では、図5に示すように、金具70と金具72との係合を外すことにより、分離チャンバー54がチャンバー下部50とチャンバー上部52とに容易に分離される。よって、分離チャンバー54内に付着した加工屑等の粉塵66を容易に取り除くことができ、分離機能を低下させることがない。
【0044】
図6を参照すると、本実施形態第2実施形態の分離手段48Aの分解斜視図が示されている。本実施形態の分離手段48Aは、漏斗状のチャンバー下部50と、円筒状のチャンバー上部52Aと、上蓋74とから構成される。上蓋74に気体排出口60が形成されている。
【0045】
チャンバー上部52Aに固定した金具76を上蓋74に固定した金具78に係合することにより、上蓋74はチャンバー上部52Aに連結される。本実施形態の分離手段48Aでは、上蓋74をチャンバー上部52Aから取り外せるように構成したので、分離チャンバー54内に付着した加工屑等の粉塵の清掃がより容易である。
【0046】
尚、上述した実施形態は本発明を切削装置に適用した例について説明したが、本発明は切削装置に限らず、研削装置、研磨装置、バイト切削装置等の各種加工装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
2 切削装置
24 切削ユニット
28 切削ブレード
30 筐体
31 加工室
44 排気路
45 ファン
46 排気管
48 分離手段
50 チャンバー下部
52 チャンバー上部
54 分離チャンバー
66 粉塵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段と被加工物とに加工液を供給する加工液供給手段と、該チャックテーブルと該加工手段と該加工液供給手段とを囲繞する加工室と、一端が該加工室に連通すると共に他端がファンに連通して該加工室内の雰囲気を排気する排気路とを備えた加工装置であって、
該加工室と該ファンとの間の該排気路中に配設され、該加工室から該排気路に流入した排気に含まれる加工屑を含む加工液を気体から分離する分離手段を更に具備し、
該分離手段は、漏斗状のチャンバー下部と該チャンバー下部の上端から立ち上がる円筒状のチャンバー上部とで構成された分離チャンバーと、
該チャンバー上部の側面に形成された該加工室に連通する吸気口と、
該チャンバー上部の上端に形成された該ファンに連通する気体排出口と、該チャンバー下部の下端に形成された廃液排出口とを有し、
該吸気口から吸入された排気によって該分離チャンバー内に渦巻き気流が発生することで、該排気に含まれる加工屑を含む廃液が該廃液排出口を介して排出されるとともに、該排気は該気体排出口を介して排出され、
該分離チャンバーの該チャンバー上部と該チャンバー下部は分離可能に連結されていることを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22712(P2013−22712A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162125(P2011−162125)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】