説明

加振装置および加振方法

【課題】 軸線方向に長さを有する被試験体の一端部に対する他端部における横方向の振動を容易にする。
【解決手段】 軸線方向に長さを有する被試験体Wの一端部に対する他端部に連結されてこの他端部を被試験体Wの軸線方向を横切る方向に加振する加振機を有し、この加振機が被試験体Wの軸線方向を横切るX軸方向に被試験体Wを加振する一の加振機20と、上記X軸方向を横切るY軸方向に被試験体Wを加振する他の加振機30とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加振装置および加振方法に関し、特に、耐久試験などで被試験体を加振する際に利用する加振装置および加振方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
耐久試験などで被試験体を加振する際に利用する加振装置としては、従来から種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1には、被試験体を複数の方向から加振する提案が開示されている。
【0003】
すなわち、この特許文献1に開示の提案にあっては、被試験体をその軸線方向となる上下方向、つまり、Z軸方向に加振する一の加振機を有すると共に、被試験体をその軸線方向を横切る方向となる横方向に加振する他の加振機とを有してなる。
【0004】
そして、この加振装置にあっては、一の加振機を第一の加振機とするとき、他の加振機は、被試験体を横方向たるX軸方向に加振する第二の加振機と、被試験体を同じく横方向たるY軸方向に加振する第三の加振機とからなる。
【0005】
そして、第一,第二および第三となる各加振機は、それぞれ油圧アクチュエータからなり、被試験体を収容する容器に軸受を介して接続し、いわゆる静止時に各加振機の中心軸が容器内の一点で交差する。
【0006】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案によれば、容器内に収容の被試験体に対して、複数となるX軸,Y軸およびZ軸の三軸方向からの加振機による加振が可能とされて、被試験体についての所望の振動結果を得ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−47572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した加振装置にあっては、被試験体に対してX軸,Y軸およびZ軸となる三軸方向からの加振機による加振が可能とされる点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些かの不具合が懸念される。
【0009】
すなわち、たとえば、上下方向に長さを有する被試験体の下端部たる一端部を加振機で加振して、被試験体の上端部たる他端部を横方向に加振した状態にするについては、たとえば、リンク機構を利用することで可能になる。
【0010】
しかし、被試験体が上端側部材と下端側部材とを有して伸縮可能とされる、たとえば、テレスコピック型に形成されてなる場合には、リンク機構を利用しても、被試験体の一端部における振動で被試験体の他端部を横方向に振動させるのは容易でない。
【0011】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたもので、軸線方向に長さを有する被試験体の一端部に対する他端部における横方向の振動を容易にするのに最適となる加振装置および加振方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明による加振装置の構成を、軸線方向に長さを有する被試験体の一端部に対する他端部に連結される連結部材と、この連結部材に連結されて上記被試験体の他端部を上記被試験体の軸線方向を横切る方向に加振する加振機を有し、この加振機が上記被試験体の軸線方向を横切るX軸方向に上記被試験体を加振する一の加振機と、上記X軸方向を横切るY軸方向に上記被試験体を加振する他の加振機とからなるとする。
【0013】
そして、この発明による加振方法の構成を、軸線方向に長さを有する被試験体の一端部に対する他端部に連結部材を連結し、この連結部材に上記被試験体の軸線方向を横切るX軸方向に上記被試験体を加振する一の加振機を連結し、上記連結部材に上記X軸方向を横切るY軸方向に上記被試験体を加振する他の加振機を連結し、上記一の加振機と上記他の加振機とで上記被試験体の他端部を加振するとしてなるとする。
【0014】
それゆえ、この発明による加振装置および加振方法にあっては、軸線方向に長さを有する被試験体における一端部に対する他端部に加振機を連結することで、被試験体の他端部をこの被試験体の軸線方向を横切るX軸方向およびこのX軸方向を横切るY軸方向に加振することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
その結果、この発明によれば、軸線方向に長さを有する被試験体の一端部に対する他端部における横方向の振動を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態による加振装置を示す概略正面図である。
【図2】図1中のA−A線位置で示す加振装置の部分概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による加振装置について説明することで、この加振装置を利用する加振方法についても併せて説明する。
【0018】
図1に示すように、この発明による加振装置は、被試験体Wを保持する保持部10と、加振機たる一の加振機20および他の加振機30と、連結部材40とを備え、被試験体Wに対する横方向からの加振を可能にする。
【0019】
すなわち、この発明による加振装置は、被試験体Wを図中で下端部となる一端部を保持してこの被試験体Wを起立させる保持部10と、被試験体Wの図中で上端部となる他端部あるいは他端部側をこの被試験体Wの軸線方向を横切る方向に加振する加振機とを有してなる。
【0020】
そして、この加振装置にあって、被試験体Wの他端部に連結される加振機は、図2中にX線で示す横方向、つまり、被試験体Wの軸線方向を横切るX軸方向に被試験体Wを加振する一の加振機20と、図2中にY線で示す横方向、つまり、図2中のX線を横切るY軸方向に加振する他の加振機30とを有してなる。
【0021】
この図1に示す加振装置にあって、保持部10は、基台部Bに設けられ、被試験体Wの下端部たる一端部を分離可能に保持する。
【0022】
すなわち、保持部10は、被試験体Wを起立状態に保持し得る限りには任意に構成されて良いが、図示するところでは、基台部Bに載置されて連結される本体部11に連結部12を有してなり、この連結部12が被試験体Wの一端部を、たとえば、チャック構造下に保持する。
【0023】
そして、この加振装置にあって、一の加振機20および他の加振機30は、連結部Jに、つまり、基台部Bと、この基台部Bに対向する天蓋部Rとを連結する壁や柱からなる連結部Jに連結されて保持される。
【0024】
そしてまた、この加振装置にあっては、一の加振機20および他の加振機30に連結部材40を介して被試験体Wの他端部たる上端部が分離可能に連結される。
【0025】
ちなみに、一の加振機20および他の加振機30が被試験体Wの他端部たる上端部を横方向から加振することからすると、この一の加振機20および他の加振機30が上記の連結部Jに連結されて保持されることは必須でない。
【0026】
つまり、図示しないが、たとえば、一の加振機20および他の加振機30は、適宜の支持手段に支持されると共に、上記の連結部Jたる壁を貫通したり、あるいは、上記の連結部Jたる柱間を挿通したりして、被試験体Wの上端部に遠近できるように構成されても良い。
【0027】
なお、上記の天蓋部Rについては、その配設が省略されても良いが、図1中に一点鎖線図で示すように、被試験体Wに作用する荷重を検出する手段としてのロードセルS1やセンサ(図示せず)を被試験体Wに連結する場合に、このロードセルS1やセンサが保持部R1を介して天蓋部Rに保持されるとしても良い。
【0028】
ところで、この発明による加振装置にあって、一の加振機20および他の加振機30は、この発明が意図するところからすると、所定の加振を実現できる限りには、任意に構成されて良い。
【0029】
その意味からは、一の加振機20および他の加振機30は、電磁加振機からなるとしても良いが、図示するところでは、直動型の流体圧アクチュエータ、たとえば、流体圧シリンダを有してなる。
【0030】
そして、一の加振機20および他の加振機30が電磁加振機からなる場合には、被試験体Wを高速で振幅の小さい周波数の振動に加振でき、一の加振機20および他の加振機30が流体圧シリンダからなる場合には、被試験体Wを低速で振幅の大きい周波数の振動に加振できる。
【0031】
ところで、一の加振機20および他の加振機30は、流体圧シリンダ(図示せず)を有し、この流体圧シリンダは、たとえば、ロッド体からなる出力軸21,31を有し、この出力軸21,31が後述する連結部材40を介して被試験体Wにおける他端部たる上端部に連結される。
【0032】
ちなみに、一の加振機20および他の加振機30が有する流体圧シリンダは、この種の流体圧シリンダと同様に構成されるのはもちろんであり、また、この流体圧シリンダを伸縮作動させる制御部は、図示などしないが、流体圧源を有する他に流体圧源と流体圧シリンダとの間における作動流体の往復を可能にする通路や作動流体の往復を制御する方向切換弁など有してなる。
【0033】
それゆえ、この一の加振機20および他の加振機30は、流体圧シリンダに接続される制御部(図示せず)の制御で、連結部材40を介して、被試験体Wの上端部を横方向から、すなわち、被試験体Wにおける上下方向となる軸線方向を水平方向に横切る方向から加振する。
【0034】
そして、この一の加振機20および他の加振機30にあっては、流体圧シリンダの作動時の特性から、その作動時には、被試験体Wにおける上端部を低速で振幅の大きい周波数の振動で加振する。
【0035】
ちなみに、図示しないが、一の加振機20および他の加振機30がモータを搭載する場合には、この一の加振機20および他の加振機30は、モータと、モータの回転運動を上下方向の直線運動に変換する運動変換機構と、モータの回転を減速して運動変換機構に伝達する減速装置とを備えて構成されれば良く、運動変換機構としては、クランク機構、ラックアンドピニオン等を用いれば良い。
【0036】
また、この一の加振機20および他の加振機30における制御部(図示せず)には別途装備される制御装置からの信号が入力され、この制御装置からの信号が入力された制御部は、この一の加振機20および他の加振機30に相応の作動をさせると共に、この一の加振機20および他の加振機30の作動状況を上記の制御装置に入力する。
【0037】
一方、被試験体Wについてだが、この発明が意図するところでは、基本的には、任意に構成されていて良いが、具体的には、軸線方向に長さを有する、たとえば、棒状体あるいはこの棒状体より太径となる柱状体とされる。
【0038】
また、被試験体Wとしては、たとえば、上端側部材と下端側部材とで伸縮可能とされる、たとえば、テレスコピック型に形成されてなるのが良く、その中で、流体圧を利用して伸縮作動する流体圧シリンダ、すなわち、シリンダが好適となる。
【0039】
そこで、図示するところでは、被試験体Wがシリンダからなるとし、このシリンダは、一端側部材たるシリンダ体1と、このシリンダ体1内に入出可能に挿入される他端側部材たるロッド体2とを備えてなり、シリンダ体1内の圧力室(図示せず)への作動油で代表される作動流体による流体圧の給排で伸縮可能とされている。
【0040】
なお、この発明による加振装置にあっては、前記したように、シリンダにおける軸線方向に作用する荷重を検出するロードセルS1が装備され、さらには、図示しないが、シリンダにおける伸縮ストロークを検出するストロークセンサなどが装備される。上記のロードセルS1については、センサに変えられても良い。
【0041】
また、図示するところでは、被試験体Wたるシリンダがシリンダ体1を下端側部材にすると共にロッド体2を上端側部材にする正立型とされるが、これに代えて、図示しないが、シリンダ体1を上端側部材にすると共にロッド体2を下端側部材にする倒立型とされても良い。
【0042】
ところで、連結部材40は、図2に示すように、被試験体W(図1参照)たるシリンダの他端部たるロッド体2に分離可能に連結されると共に加振機の出力軸、すなわち、一の加振機20の出力軸21および他の加振機30の出力軸31を連結させる本体部41を有する。
【0043】
このとき、ロッド体2に連結される加振機が一基とされる場合には、その加振機における出力軸が連結部材40の本体部41に直接連結されて良いが、図示するところでは、ロッド体2に連結される加振機が一の加振機20および他の加振機30からなり、この一の加振機20および他の加振機30の出力軸21,31の延在方向が直交するから、各加振機20,30の出力軸21,31は、リニアガイド50,60の配在下に連結部材40における本体部41に連結される。
【0044】
ちなみに、連結部材40における本体部41は、図示するところでは、分割体41a,41bからなり、この分割体41a,41bがロッド体2を水平方向から把持した状態下に一方の分割体41bを挿通して他方の分割体41aに螺合するボルト(図示せず)の締め付けで一体化される。
【0045】
なお、連結部材40における本体部41がロッド体2に対して連結されるところは、図示するところでは、ロッド体2の上端部とされているが、このロッド体2が上端部に取付ブラケットを有する場合には、この取付ブラケットに連結部材40における本体部41が連結されても良い。
【0046】
また、この連結部材40と加振機との間、すなわち、本体部41と一の加振機20との間には、ロードセルS2が配設され、本体部41と他の加振機30との間には、ロードセルS3が配設され、各ロードセルS2,S3は、被試験体Wたるシリンダのロッド体2に作用する荷重を検出する。
【0047】
そして、各ロードセルS2,S3が検出した検出値たる信号については、前記した図示しない制御装置に入力され、この制御装置は、この入力された信号に基づいて、一の加振機20および他の加振機30における各制御部にそれぞれの作動を制御する信号を出力する。
【0048】
なお、一の加振機20および他の加振機30における振動の振幅については、制御装置が一の加振機20および他の加振機30を駆動する駆動指令から把握できるようになっている。
【0049】
一方、図示しないが、別途、一の加振機20および他の加振機30における振動の振幅を検出するストロークセンサを設けて、このストロークセンサが出力する信号を制御装置に入力して一の加振機20および他の加振機30における振幅を検知するようにしても良い。
【0050】
ところで、上記のリニアガイド50,60についてだが、図示するところでは、連結部材40における本体部41に連結される直状の軌条51,61と、この軌条51,61に連結されてこの軌条51,61に副って移動する移動体52,62を有してなる。
【0051】
このとき、移動体52は、他の加振機30における出力軸31に連結部53を介して連結され、移動体62は、一の加振体20における出力軸21に連結部63を介して連結される。
【0052】
なお、軌条51は、一の加振機20における出力軸21の進退方向たるX軸方向に配設され、軌条61は、他の加振機30における出力軸31の進退方向たるY軸方向に配設されるのはもちろんである。
【0053】
ちなみに、上記の連結部53は、ロードセルS2を有し、連結部63は、ロードセルS3を有し、各ロードセルS2,S3は、シリンダにおけるロッド体2に作用する荷重を検出する。
【0054】
それゆえ、上記のリニアガイド50,60にあっては、つまり、一方のリニアガイド50にあっては、他の加振機30からの振動を被試験体Wたるシリンダに伝えると共に、一の加振機20からの振動で他の加振機30が振動することを阻止する。
【0055】
そして、他方のリニアガイド60にあっては、一の加振機20からの振動を被試験体Wたるシリンダに伝えると共に、他の加振機30からの振動で一の加振機20が振動することを阻止する。
【0056】
そして、図示しないが、この加振装置は、上記のロードセルやストロークセンサなどからの信号を入力する制御装置を有し、この制御装置は、ロードセルやストロークセンサから入力される信号を所定の処理をした信号にして、この信号を一の加振機における制御部および他の加振機における制御部に出力する。
【0057】
ちなみに、一の加振機20の制御部および他の加振機30における制御部は、制御装置からの信号を受けて一の加振機20および他の加振機30を駆動させると共に、その駆動の状況を信号にして制御装置に出力する。
【0058】
以上のように構成されたこの発明による加振装置にあっては、以下のようにして、被試験体Wたるシリンダに振動を与える。
【0059】
先ず、被試験体Wたるシリンダにおけるロッド体2に連結部材40を介して一の加振機20および他の加振機30が連結される。
【0060】
ちなみに、被試験体Wたるシリンダをこの加振装置に設ける際は、シリンダにおけるシリンダ体1の下端部を保持部10における連結部材12に挿し込むことで、また、シリンダにおけるロッド体2に連結部材40における分割体41a,41bを連結することで、加振機、つまり、一の加振機20および他の加振機30への連結が可能になる。
【0061】
このとき、保持部10が床などの固定部に一体的に設けられる基台部Bに連結されると共に、加振機、つまり、一の加振機20および他の加振機30が連結部Jに連結されるから、被試験体Wたるシリンダが転倒することはない。
【0062】
次に、被試験体Wたるシリンダに振動を与える試験方法について説明すると、制御装置は、一の加振機20および他の加振機30でシリンダにおけるロッド体2にこのロッド体2の軸線方向を横切る方向の振動を与えるように制御する。
【0063】
すなわち、一の加振機20で被試験体Wたるシリンダにおけるロッド体2にX軸方向の振動を与え、他の加振機30で被試験体Wたるシリンダにおけるロッド体2にY軸方向の振動を与える。
【0064】
これによって、被試験体Wたるシリンダにおけるロッド体2は、一の加振機20および他の加振機30の振動特性に基づいた横方向の特定の振動に加振される。
【0065】
なお、一の加振機20および他の加振機30側では、横方向の質量が実際に作用して振動している状況を実現する、すなわち、シリンダにおけるロッド体2を目標とする荷重条件に合わせて横方向に振動させるべく制御部の方向切換弁が切換制御されるのはもちろんである。
【0066】
そして、方向切換弁の具体的な切換制御にあっては、シリンダにおける圧力室内の圧力を圧力センサ等で検出し、この検出された圧力室内の圧力の値をフィードバックとして制御装置で方向切換弁のソレノイドをフィードバック制御してやるようにすれば良い。
【0067】
この場合、この試験装置および試験方法では、シリンダにおけるロッド体2に実際と同様の状況の振動を与えることができ、また、その振動の調節は、上記方向切換弁の制御によって容易に行える。
【0068】
シリンダにおけるロッド体2は、自由端となり、ロッド体2自体も振動可能になっているから、一の加振機20および他の加振機30が与える振動を荷重による振動に見立てることができ、シリンダに目標とする荷重振動を加えることができる。
【0069】
そして、この試験装置に取付けられたシリンダにおける振動を計測するには、一の加振機20および他の加振機30を駆動してシリンダにおけるロッド体2に振動を与え、ロードセルS1およびストロークセンサS2がそれぞれ検出したシリンダにおける振幅とシリンダに作用している荷重とを得る。
【0070】
ここで、制御装置は、ストロークセンサS2で検出したストロークと、上記シリンダに作用している荷重を演算処理してシリンダの変位/荷重特性を得る。
【0071】
また、制御装置は、ストロークセンサS2で検出したストロークを微分してストローク速度を得ることができるように設定されており、これにより、この試験装置にあっては、シリンダの変位/荷重特性を計測するだけでなく、速度/荷重特性の試験をも行える。
【0072】
したがって、この発明による試験装置およびこの試験装置を利用する試験方法にあっては、被試験体Wたる、たとえば、シリンダの荷重耐久試験を実施することが可能になる。
【0073】
つまり、従来であれば、被試験体Wの一端部を加振機で加振することで、被試験体Wにおける他端部の横方向に振動については、たとえば、リンク機構を利用して振動を与えるとしていた。
【0074】
そのため、従来では、加振装置および加振方法の構成および制御装置における演算処理を複雑する危惧があったが、この発明にあっては、被試験体Wの他端部を直接加振するので、加振装置および加振方法の構成および制御装置における演算処理を複雑する危惧がなく、振動の検知が容易になる。
【0075】
特に、被試験体Wが一端側部材と他端側部材とで伸縮するテレスコピック型に形成されるシリンダからなる場合には、一端側部材たるシリンダ体1と分離した状態で他端側部材たるロッド体2を振動することが可能になり、任意の荷重振動による振動試験を実施できることになる。
【0076】
ちなみに、この発明による加振装置および加振方法にあっては、一の加振機20および他の加振機30のいずれか一方の加振機の駆動を停止する場合には、X軸方向あるいはY軸方向の選択された一方向からのみ被試験体Wを加振できる。
【0077】
なお、前記したところでは、一の加振機20および他の加振機30が流体圧アクチュエータたる流体圧シリンダを有してなるとしたが、被試験体Wたるシリンダにおけるロッド体2に振動を与えるのみであれば、流体圧以外のアクチュエータを有するとしても良い。
【0078】
以上のように、この発明の加振装置および加振方法にあっては、被試験体Wの他端部に連結される一の加振機20に対して他の加振機30が直交配置される。
【0079】
それゆえ、一の加振機20の加振方向に対して他の加振機30の加振方向が直交することになり、このことから、一の加振機20による被試験体Wにおける振動と他の加振機30による被試験体Wにおける振動とを分離することが容易に可能になる。
【0080】
そして、この発明の加振装置および加振方法にあっては、加振機が被試験体Wの一端部に対する他端部に連結されるから、被試験体Wの一端部における状況に拘りなく、被試験体Wの他端部における振動の分離測定が容易に可能になる。
【0081】
すなわち、この発明にあっては、被試験体Wの一端部における振動に基づいてリンク機構の利用などで被試験体Wの他端部を振動させる必要がなく、被試験体Wの他端部を直接振動できる。
【0082】
その結果、この発明にあっては、被試験体Wにおける他端部を振動させるのにあって、リンク機構などを利用しなくて済むから、加振装置における構成を複雑にすることなく、被試験体Wの一端部および他端部の振動を直接に、また、容易にできることになる。
【0083】
そしてまた、この発明にあって、一の加振機20が電磁加振機からなり、他の加振機30が直動型のアクチュエータからなるとき、一の加振機20によって、被試験体Wを高速で振幅の小さい周波数の振動に加振でき、他の加振機30によって、被試験体Wを低速で振幅の大きい周波数の振動に加振できる。
【0084】
前記した実施形態では、この発明による加振装置および加振方法が一の加振機20および他の加振機30を備えるとしたが、この発明の意図するところからすると、加振機が一の加振機20あるいは他の加振機30のいずれか一方とされて良く、この場合にも、所望の効果を得られることはもちろんである。
【0085】
また、前記した実施形態では、被試験体Wがいわゆる縦置きされるとしたが、この発明による加振装置および加振方法が意図するところからすると、被試験体Wがいわゆる横置きされても良く、その場合にも所望の効果が得られることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
テレスコピック型の棒状体を被試験体にして、この棒状体についての性能耐久試験を行うのに向く。
【符号の説明】
【0087】
1 シリンダ体
2 ロッド体
10,R1 保持部
11 本体部
12,53,63,J 連結部
20 一の加振機
21,31 出力軸
30 他の加振機
40 連結部材
41 本体部
41a,41b 分割体
50,60 リニアガイド
51,61 軌条
52,62 移動体
B 基台部
R 天蓋部
S1,S2,S3 ロードセル
W 被試験体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に長さを有する被試験体の一端部に対する他端部に連結される連結部材と、
この連結部材に連結されて上記被試験体の他端部を上記被試験体の軸線方向を横切る方向に加振する加振機を有し、
この加振機が上記被試験体の軸線方向を横切るX軸方向に上記被試験体を加振する一の加振機と、上記X軸方向を横切るY軸方向に上記被試験体を加振する他の加振機とからなることを特徴とする加振装置。
【請求項2】
上記連結部材にリニアガイドが設けられ、このリニアガイドを介して上記一の加振機および上記他の加振機が上記連結部材に連結されてなる請求項1に記載の加振装置。
【請求項3】
上記一の加振機および上記他の加振機が電磁加振機からなり、あるいは、流体圧アクチュエータを有してなる請求項1または請求項2に記載の加振装置。
【請求項4】
上記被試験体の一端部が基台部に設けた保持部に保持され、この保持部を設ける上記基台部から起立する連結部に上記被試験体の他端部に連結される上記一の加振機および上記他の加振機が設けられてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載の加振装置。
【請求項5】
軸線方向に長さを有する被試験体の一端部に対する他端部に連結部材を連結し、
この連結部材に上記被試験体の軸線方向を横切るX軸方向に上記被試験体を加振する一の加振機を連結し、
上記連結部材に上記X軸方向を横切るY軸方向に上記被試験体を加振する他の加振機を連結し、
上記一の加振機と上記他の加振機とで上記被試験体の他端部を加振するとしてなることを特徴とする加振方法。
【請求項6】
上記連結部材にリニアガイドが設けられ、このリニアガイドを介して上記一の加振機および上記他の加振機が上記連結部材に連結されてなる請求項5に記載の加振方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−202725(P2012−202725A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65125(P2011−65125)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)