説明

加振試験装置

【課題】 エネルギ効率を向上した加振試験装置を提供する。
【解決手段】 モータ104によって駆動され、作動流体を吐出する双方向吐出ポンプ1と、供給される作動流体により、直線状に伸縮するアクチュエータ100と、前記双方向吐出ポンプとアクチュエータを結ぶ閉回路を構成する第1、第2通路21、22とを備え、前記モータ104の回転方向を切り換えることにより前記アクチュエータ100が被試験体を加振する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加振試験装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加振試験装置には、試験装置本体の他に試験装置を駆動する油圧源が別置され、一方向にのみ回転駆動する油圧源は、加振試験装置のシリンダと油圧ホースを介して接続される。さらに加振試験装置と駆動源の間の油圧ホースに高速応答性のサーボ弁を接続し、サーボ弁の切り換えにより、シリンダの移動速度や荷重を制御している(特許文献1参照のこと)。
【特許文献1】特開昭53−23682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の加振試験装置にあっては、駆動源が常に試験機の最大負荷に対応した圧力、流量を発生しているため、実際に要求される圧力や流量が低い場合にはエネルギ損失が大きくなる。損失が大きくなることで、発熱量が増大し、熱を放出するための冷却装置の容量が大きくなり、サイズが大型化する。
【0004】
また、設置される高速応答可能なサーボ弁が高価であるというコスト上の課題もある。
【0005】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、エネルギ効率を向上する加振試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、モータによって駆動され、作動流体を吐出する双方向吐出ポンプと、供給される作動流体により、直線状に伸縮するアクチュエータと、前記双方向吐出ポンプとアクチュエータを結ぶ閉回路を構成する第1、第2通路とを備え、前記モータの回転方向を切り換えることにより前記アクチュエータが被試験体を加振する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、モータの回転方向を切り換えることによりアクチュエータが被試験体を加振するため、目標加振条件を達成するために必要なだけのモータの消費電力を消費するだけでよく、従来技術の油圧源のような常に最大負荷に対応した運転条件とする必要がなく、エネルギ効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0009】
図1に示すように本発明の加振試験装置は、試験片等を固定して加振するシリンダ部100と、このシリンダ部100へ供給される作動油の流れを調整するバルブ部101と、バルブ部101を介してシリンダ部100に供給される油圧を加振試験条件に応じて発生するポンプ部102とに大別される。
【0010】
加振試験装置は、これらシリンダ部100、バルブ部101、ポンプ部102の順に積層状に一体的にユニット化して形成される。本試験装置では、ポンプ部102で送出された作動油がバルブ101で調圧されてシリンダ部100に供給され、シリンダ部100のピストンロッドが摺動して試験片を加振する。さらにこれら一体的に構成された加振試験装置を冷却するための電動ファン103がポンプ部102に設置され、ポンプ部102からシリンダ部100方向に向けて冷却風を供給し、加振装置全体の放熱を促進する。
【0011】
図2に示すように、ポンプ部102は、他の構成と接続するために平面部を備えたブロック状のポンプハウジング102aを備え、このハウジング102a内部に双方向吐出ポンプ1を設置し、また後述の作動油が流通する通路21p、22pを形成する。
【0012】
ポンプハウジング102aの一面(図2(a)の右面)に、双方向吐出ポンプ1を駆動回転するサーボモータ104が双方向吐出ポンプ1に直結して固定される。さらに前面および後面には冷却用の複数のフィン105が固定され、ポンプ部102の放熱効率を向上する。また上面には前述の電動ファン103が設置され、電動ファン103から送られる冷却風は、フィン105を通過することでポンプ部102の放熱効率を高めるとともに、図2において下部に位置するバルブ部101、シリンダ部100にも冷却風が送られ、これらの放熱も可能となる。
【0013】
ポンプ部102の下部に接続するバルブ部101は、後述するように2個の電磁シャットオフ弁28、29を内装するバルブハウジング101aを備え、そのバルブハウジング101aは、ポンプ部102及びシリンダ部100と接続するように上下に平面部を有するブロック状に形成される。この内部に2個の電磁シャットオフ弁28、29を内装するとともに、この電磁シャット弁28、29に供給される作動油の通路21v、22vを形成する。
【0014】
バルブ部101に接続するシリンダ部100は、バルブ部101と接続する平面部を有するにシリンダハウジング100aを備え、その内部にピストン13により区画された2つの油室間の作動油の油圧の差に応じて摺動する棒状のピストンロッド14を収装し、ピストンロッド14の一端に図示しない試験片等が接続し、ピストンロッド14の摺動により加振される。シリンダ部100の内部に作動油が油室11、12に流通するための通路21c、22cが形成される。
【0015】
このように本発明の加振試験装置は、シリンダ部100とバルブ部101とポンプ部102とが一体的にユニット化されて形成されることを特徴とし、各部内に構成された作動油の通路が、一体化により連通するように形成される。また、ポンプは直結されたサーボモータによりその回転を制御される。したがって、サーボモータ104により直結駆動されるポンプ1により吐出された作動油は、内部に形成された通路を通過し、シリンダ部100の一方の油室内に流入し、他方の油室の作動油が流出することで、油室間の圧力差が生じてピストンロッド14が摺動する。そして加振条件に応じてサーボモータ104の運転条件が設定され、サーボモータ104に直結したポンプ1は、細やかな作動油の流量及び圧力制御を可能としてピストンロッド摺動時の移動速度及び荷重を制御し、要求された加振条件を満足することができ、一方で従来技術のような無駄なエネルギの消費を抑制することができる。なお、本発明の加振試験装置を統合制御するための図示しないコントローラが設けられる。
【0016】
図2は、本発明の加振試験装置の断面図を示し、図3は加振試験装置の油圧回路の構成を示している。
【0017】
これらの図を用いて全体構成について説明すると、双方向吐出ポンプ1と両ロッド型のシリンダ部(アクチュエータ)100の各油室11、12を結ぶ第一、第二通路21、22によってリザーバタンク3との間で閉回路が構成され、正逆転回転可能なサーボモータ104で駆動されるポンプ1の回転方向(吐出方向)を切換えることによって油圧シリンダ2の摺動方向が切換わるようになっている。さらには、サーボモータ104を制御することで、双方向吐出ポンプ1から吐出される作動油流量、圧力が制御され、油圧シリンダの摺動速度や荷重を要求加振条件に応じて制御することができる。
【0018】
バルブ部101を構成するバルブハウジング101a内には、第一、第二通路21、22の一部を構成する通路21b、22bが形成され、通路途中には、オンオフ式の第一、第二電磁シャットオフ弁(電磁弁)28、29が介装され、これら電磁シャットオフ弁28、29にはオリフィス28a、29aが備えられる。したがって、電磁シャット弁28、29が開状態では、大流量の作動油が流通し、閉状態では、オリフィス28a、29aを通じて小流量の作動油が流通することができる。この第一、第二電磁シャットオフ弁28、29により、シリンダ部100の油室11、12に供給される作動流量が制御され、サーボモータ104によるポンプ1の流量制御と合わせてシリンダ部100の移動速度及び荷重が制御される。また電磁シャットオフ弁28、29にオリフィス28a、29aを備えることで、非常停止時に試験片に作用した荷重を徐々に減圧することができる。
【0019】
この閉回路はポンプ1および第一、第二電磁シャットオフ弁28、29のドレン側に連通するドレン通路25を備える。このドレン通路25にリザーバタンク3が接続される。ラダータイプのリザーバタンク3はこれに封入されたガスの圧力により作動油が加圧されるものである。
【0020】
ドレン通路25は第一、第二チェック弁23、24を介して第一、第二通路21、22に選択的に接続される。
【0021】
図2、図3に示すように、ポンプハウジング102a内には双方向吐出ポンプ1を構成する対のギア(ドライブギア1a、ドリブンギア1b)が介装され、双方向吐出ポンプ1から吐出する作動油の通路としての第一、第二通路21、22の一部としての通路21p、22pが形成される。ポンプハウジング102aにはリザーバタンク3に連通するドレン通孔31が形成され、さらにチェック弁23、24に連通するドレン通孔32が形成され、これらドレン通孔31、32によって前記ドレン通路25が構成される。リザーバタンク3はポンプハウジング102aに螺合して取り付けられ、ドレン通孔31に臨むようになっている。
【0022】
シリンダ部100は、前述の作動油が第一、第二電磁シャットオフ弁28、29からの作動油が流通する第一、第二通路21、22の一部としての通路21c、22cと、これら通路21c、22cが接続し、作動油が供給される油室11、12と、この油室を区画し、油圧が作用するピストン13をシリンダハウジング100a内に備える。さらにピストン13が固定され、油室間の油圧差に応じて所定の軸方向に移動するピストンロッド14と、このピストンロッド14を軸方向に摺動可能に内装し、一端から突出させる円筒状の外筒15とを収装する。
【0023】
シリンダ部100に形成された通路21c、22cとバルブ部101に形成された通路21b、22bとポンプ部102に形成された通路21p、22pとは、各部が一体的に結合された状態で各通路が連通し、第一、第二通路21、22を構成する。
【0024】
さらにポンプ部102に一体的に接続される電動ファン103が設置される。この電動ファン103は、ポンプ部102の放熱を司るとともに、シリンダ部100とバルブ部101の放熱にも寄与する。そのため、電動ファン103の冷却風は、ポンプ部102からシリンダ部100に向けて送風されるように電動ファン103が設置される。
【0025】
以上のように構成される本発明の実施の形態につき、次に作用を説明する。
【0026】
本発明の加振試験装置では、各部100、101、102がブロック状に形成されて、これらを一体的にユニット状に組み付けて結合することで、各部に形成された作動油の通路が連通し、第一、第二通路21、22が構成される.そして、サーボモータ104により回転制御されるポンプ1からの作動油がバルブ部101の磁気シャット弁28、29やチェック弁23、24に流通し、シリンダ部100の油室11、12内に供給される。
【0027】
そして、シリンダ部100のピストンロッド14を伸張させる場合、加振試験条件に応じた図示しないコントローラからの指令信号によりサーボモータ104が駆動し、このサーボモータ104に直結されたポンプ1が正回転される。そして、フロント側の油室11の作動油が第一通路21を通ってポンプ1に吸い込まれ、ポンプ1から吐出する作動油が第二通路22を通ってエンド側の油室12へと送られる。これによりフロント側の油室11内の圧力が低下し、一方、エンド側の油室12の圧力が上昇するため、ピストンロッド12は伸張する。
【0028】
なお、説明上、シリンダ部100の試験片取り付け側をフロント側、反対側をエンド側とする。このとき、第二チェック弁24が閉弁し、第一チェック23が開弁し、リザーバタンク3の圧力がドレン通路25から第一チェック23を介して第一通路21に導かれる。
【0029】
シリンダ部100を収縮させる場合、伸張の場合とサーボモータ104が逆方向に駆動してポンプ1が逆回転され、エンド側の油室12の作動油が第二通路22を通ってポンプ1に吸い込まれ、ポンプ1から吐出する作動油が第一通路21を通ってフロント側の油室11へと送られる。このとき、第一チェック23が閉弁し、第二チェック弁24が開弁し、リザーバタンク3の圧力はドレン通路25から第二チェック弁24を介して第二通路22に導かれる。このため、シリンダ部100のピストンロッド14は収縮する。
【0030】
このようなピストロッド14の伸張と収縮を繰り返し行うことで、ピストンロッド14の一端に設置された試験片を加振することができる。
【0031】
また、ポンプ部102に取り付けられた電動ファン103により、ポンプ部102に冷却風が吹き付けられ、ポンプ部102の放熱効率が向上するとともに、ポンプ部102を通過した冷却風が、下流のバルブ部101やシリンダ部100に接して流れる。
【0032】
このように本発明の加振試験装置では、双方向吐出ポンプの作動油の吐出流量と圧力の制御を、双方向吐出ポンプに直結したサーボモータを制御することで実施するようにしたので、ポンプ1の流量と吐出方向とを任意に制御する。このため、加振条件の要求に応じてポンプ1の流量と圧力とを制御し、エネルギ損失を低減することができる。
【0033】
また、シリンダ部100とバルブ部101とポンプ部102とをブロック状に形成して、一体的にユニット状に固定し、各ブロック内に構築した作動油の流通する通路を一体となった場合に連通するようにしたので、油圧ホースを用いることがなく、また作動油の通路の短縮が可能となる。このため、流路抵抗が低減され、ポンプの動力損失が低下し、小型のポンプモータを用いることができる。さらにポンプが小型化することで、発熱量も低下し、冷却用の電動ファンの小型化も可能となる。
【0034】
本発明においては、別置される油圧源を設ける必要がないため、油圧ホースの廃止と合わせて、低コスト、省スペース化を図ることができる。
【0035】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
試験片を所定の条件で加振する加振試験装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態を示す加振試験装置の概観図。
【図2】同じく加振試験装置の断面図。
【図3】同じく加振試験装置の回路図。
【符号の説明】
【0038】
1 ポンプ
2 油圧シリンダ(アクチュエータ)
3 リザーバタンク
11 油室
12 油室
13 ピストン
14 ピストンロッド
15 外筒
21 第一通路
21c 通路(シリンダ部)
21p 通路(ポンプ部)
21v 通路(バルブ部)
22 第二通路
22c 通路(シリンダ部)
22p 通路(ポンプ部)
22v 通路(バルブ部)
23 第一チェック弁
24 第二チェック弁
25 ドレン通路
100 シリンダ部
100a シリンダボディ
101 バルブ部
101a バルブボディ
102 ポンプ部
102a ポンプボディ
103 電動ファン
104 サーボモータ
105 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動され、作動流体を吐出する双方向吐出ポンプと、
供給される作動流体により、直線状に伸縮するアクチュエータと、
前記双方向吐出ポンプとアクチュエータを結ぶ閉回路を構成する第1、第2通路とを備え、
前記モータの回転方向を切り換えることにより前記アクチュエータが被試験体を加振することを特徴とする加振試験装置。
【請求項2】
前記第1、第2通路に作動流体の流量を調節する電磁弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の加振試験装置。
【請求項3】
前記双方向吐出ポンプのポンプハウジングと、前記アクチュエータのシリンダハウジングと、前記電磁弁のバルブハウジングとを積層状に固定して各ハウジングに形成された作動流体の通路を連通させ、前記第1、第2通路とすることを特徴とする請求項1に記載の加振試験装置。
【請求項4】
前記ポンプハウジングに冷却ファンを設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の加振試験装置。
【請求項5】
前記冷却ファンは、前記ポンプハウジング、前記バルブハウジング、前記シリンダハウジングの順に冷却風を流すことを特徴とする請求項4に記載の加振試験装置。
【請求項6】
前記ポンプハウジングに前記冷却風を受けるフィンを設けたことを特徴とする請求項5に記載の加振試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−138813(P2006−138813A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330914(P2004−330914)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)