説明

加湿器具

【課題】 戸外の冷気を室外機で取り込み、ヒーターで温めながら、室内機にエアホースで導くような大掛かりな機器を必要とせず、既存のファンヒーターやエアコンに装着することで電力を消費することなく加湿機能を持たせることができる加湿器具を提供する。
【解決手段】 加湿器具は、導水容器10内の水2に浸した木炭ボード8を、暖房装置9の吹き出し口9aに対向して配設させ、貫通孔8cを覆って、木炭ボード8の背面8bに間隙12を介して伝導部材11を配設する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、暖房機能があるエアコンやファンヒーターなどの暖房装置の吹き出し口に取り付ける加湿器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調機用簡易加湿器おいては、ヒートポンプ式暖房機の前にカーテンを張り、その下に水を蓄えた器を備え、その器に一定の水が蓄えられるように、使用済みのペットボトルに工夫を加えて自然給水し、暖房機の送風機を利用してカーテンの水分を蒸発させて部屋を加湿させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ルームエアコンの吹き出し口に2本のパイプを置き、その上に蒸発媒体を渡して張り、その蒸発媒体が、常時、水を蓄えられるように、使用済みのペットボトルで自然給水し、暖房機として運転中に蒸発媒体の水分を蒸発させて部屋を加湿させる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−243222号公報(第3頁、図3)
【特許文献2】登録実用新案第3088799号公報(第6頁−第8頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1及び特許文献2に記載された以外に、従来の加湿器は、戸外の冷気を室外機で取り込み、ヒーターで温めながら、室内機にエアホースで導く方式がある。
この方式は、加湿モードにした場合に、室内機の吹き出し口から強い冷気が吹き出されることがあり、そのうえ、必要以上の強制的な換気を行うために、温められた室内の空気が室外に排出されて、ヒーターの加熱に余分な電力を消費してしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、前述した特許文献1及び特許文献2に記載された以外の手段であり、電気回路を使用することなく既存のファンヒーターやエアコンに装着することで加湿機能を持たせることができる加湿器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る加湿器具においては、暖房装置の吹き出し口に対向して表面を配置し、表面に対向する背面及び表面間を貫通する貫通孔を有する調湿ボードと、貫通孔を少なくともを覆って、調湿ボードの背面に間隙を介して配設する伝導部材と、調湿ボードの一部を内部に配設する導水容器と、導水容器に対して上側であり、内部に水を溜めることができる給水槽と、導水容器内に一端を配置し給水槽内に他端を配置する内管、及び両端を除いて内管を内包する外管からなるノズルとを備えたものである。
【0007】
また、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、貫通孔は導水容器の長手方向と一致する方向に沿って形成しているものである。
また、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、伝導部材はメッシュ状の部材である。
さらに、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、メッシュ状の部材は金属部材である。
また、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、内管の外面に撥水性の高い合成樹脂を塗布しているものである。
【0008】
また、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、暖房装置の両側面に固定され、導水容器の両端をそれぞれ貫通し支持する固定板と、導水容器を支点として回動自在に固定板に取り付けられ、給水槽を支持金具によって固定する回転板とを備え、回転板は固定板に形成している対向部によって挟持され、支持金具は上端から反固定板側に突設した凸部を有し、対向部は上端に凸部に嵌合する凹部を有しているものである。
さらに、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、調湿ボードが木炭ボード、竹炭ボード又は素焼ボードである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、加湿器具が、暖房装置の吹き出し口に対向して表面を配置し、表面に対向する背面及び表面間を貫通する貫通孔を有する調湿ボードと、貫通孔を少なくともを覆って、調湿ボードの背面に間隙を介して配設する伝導部材と、調湿ボードの一部を内部に配設する導水容器と、導水容器に対して上側であり、内部に水を溜めることができる給水槽と、導水容器内に一端を配置し給水槽内に他端を配置する内管、及び両端を除いて内管を内包する外管からなるノズルとを備えたことにより、暖房装置の吹き出し口から吹き出された温風によって、調湿ボードが含んだ水分を調湿ボードの表面で気化させ、さらに、調湿ボードの表面に到達する温風のうち、一部の温風を貫通孔から調湿ボードの背面と伝導部材との間隙に送風させ、調湿ボードの背面と伝導部材との間隙を伝播させることで、調湿ボードが含んだ水分を調湿ボードの背面でも気化させることができるので、効率よく室内に対して加湿することができる。また、貫通孔は、暖房装置の吐き出し口から調湿ボードの背面に抜ける調和空気の貫通流量を増加させるうえに、調湿ボードの過多な水分の吸い上げを抑制することができる。また、伝導部材は、調湿ボードの強度を補強するうえに、調湿ボードからの水分の蒸発を促進することができる。
【0010】
また、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、伝導部材は、押え金具によって調湿ボードの上面で固定され、貫通孔は導水容器の長手方向と一致する方向に沿って形成していることにより、調湿ボードの上面側にある押え金具に到達する過多な水分の吸い上げを抑制することができ、押え金具を伝って、押え金具の端部の最下点、すなわち調湿ボードの背面側であり押え金具と伝導部材との境界から床に落下する水滴の発生を抑制することができる。
【0011】
また、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、伝導部材はメッシュ状の部材であることにより、調湿ボードの背面で気化した水蒸気を伝導部材の網目を通過して室内に拡散することができる。
また、この発明に係る加湿器具においては、必要に応じて、メッシュ状の部材は金属部材であることにより、熱伝導率がよい金属部材により、温風による熱を背面8bの全面に効率よく伝導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態
図1はこの発明を実施するための第1の実施形態における加湿器具を示す概略構成図、図2は図1に示す加湿器具の矢視II−II線の部分断面図、図3は図1に示すノズルの拡大図、図4(a)は木炭ボードを表面側からみた平面図、図4(b)は図4(a)に示す木炭ボードの矢視A−A線の部分断面図、図5はこの発明を実施するための第1の実施形態における加湿器具をエアコンに取り付けた例を示した斜視図、図6は図5に示す加湿器具をエアコンに取り付けるための取り付け用具を示す概略構成図、図7は図6に示す取り付け用具である回転板を回転させた状態を示した説明図である。以下、対象物に対して、床側を下側、下面、下部又は下端とし、反床側を上側、上面、上部又は上端として、第1の実施形態を説明する。
【0013】
図1〜7において、給水槽1は内部に水2を溜めることができる容器であり、この第1の実施形態においては、使用済みのペットボトルを再利用している。
ノズル3は、直線形状の内管4と、内管4の両端を除いて内管4を内包する外管5とからなり、内管4の外面には撥水性の高い合成樹脂を塗布している。
【0014】
掛止具6は、内管4と外管5とを同心円状に保持するように、外管5の両端を内管4にそれぞれ掛止している。なお、内管4の外面と外管5の内面と掛止具6とで挟まれた領域は密閉されておらず、掛止具6に細孔7を形成する、又は掛止具6もしくは外管5に切欠きを設けて掛止具6と内管4もしくは外管5とで隙間を形成している。また、加工しやすく錆びない真鍮製の掛止具6を用いている。
【0015】
木炭ボード8は、既存の木炭を主成分とする多孔質のボードを使用しており、例えば、木炭を天然繊維(セルロース、コラーゲン)をバインダー材として成形したボード、炭化温度の異なる炭を細粒化したものに、酸化カルシウムやアルギン酸などを混合し、デンプン糊で固めて成型加工したボードなどが挙げられる。
【0016】
また、木炭ボード8は、直方体形状であり、暖房機能があるエアコンやファンヒーターなどの暖房装置9の吹き出し口9aに対向して表面8aを配置し、表面8aに対向する背面8b及び表面8a間を貫通する貫通孔8cを有している。また、貫通孔8cは、木炭ボード8の長手方向に沿って複数の孔を形成しており、後述する導水容器10の長手方向と一致する方向に沿って複数の孔を形成している。なお、この第1の実施形態においては、暖房装置9としてエアコンに加湿器具を取り付けた例を示している。
【0017】
また、この第1の実施形態においては、貫通孔8cは、木炭ボード8の表面8a及び背面8bに対して垂直に貫通した円柱形状としているが、この形状に限られるものではなく、暖房装置9の吹き出し口9aからの温風を貫通孔8cによって背面8b側に導ければよい。また、貫通孔8cの形状、大きさ及び個数は任意に設定すればよく、貫通孔8cを通過する温風の流量を調節することも可能である。
【0018】
導水容器10は、暖房装置9の吹き出し口9aに対応する長さをもつ容器であり、暖房装置9の吹き出し口9aの延在方向にほぼ平行に配設されている。なお、この第1の実施形態においては、加工しやすいうえに、軽くて耐食性があるアルミニウム製の管を用いている。
導水容器10の上部には、導水容器10の長手方向に沿って木炭ボード8の下面8dを挿入するためのスリット10aと、ノズル3の一端を挿入するための導水口10bとを形成している。
【0019】
導水容器10のスリット10aに挿入した木炭ボード8は、暖房装置9の吹き出し口9aに表面8aが対向するように、木炭ボード8の下面8dが木炭ボード8の上面8eよりも暖房装置9側になるように傾けて導水容器10に固定されている。なお、この第1の実施形態においては、木炭ボード8の表面8aが、暖房装置9の吹き出し口9aから前方約20cmの距離となるように、木炭ボード8を配設しているが、この距離に限られるものではない。
【0020】
また、導水容器10のスリット10aの幅又は長さを利用して、暖房装置9の吹き出し口9aに対する木炭ボード8の表面8aの傾き又は位置を調節することで、暖房装置9の吹き出し口9aからの温風の気流を変えることもできる。
また、導水容器10は、給水槽1に対して下側に配設しており、導水容器10内にノズル3の一端を配置し、給水槽1内にノズル3の他端を配置することで、給水槽1に溜めた水2をノズル3によって導水容器10に給水する。
【0021】
導水容器10内には、ある程度の水位を有し、木炭ボード8の下面8dが導水容器10内の水2に浸されている。
伝導部材11は、木炭ボード8の貫通孔8cを少なくとも覆って、木炭ボード8の背面8bに間隙12を介して配設するように、押え金具13によって木炭ボード8の上面8e側で固定されている。
【0022】
なお、伝導部材11としては、暖房装置9の吹き出し口9aからの温風が、貫通孔8cを通過し、木炭ボード8の背面8bと伝導部材11との間隙12を伝播させる部材であればよいが、メッシュ状の部材を用いることで、木炭ボード8の背面8bで気化した水蒸気を伝導部材11の網目を通過して室内に拡散することができる。特に、メッシュ状の部材を熱伝導率がよい金属部材とすることで、温風による熱を背面8bの全面に効率よく伝導することができるので好ましい。
【0023】
また、木炭ボード8の背面8b側の伝導部材11における貫通孔8cに対応する位置に、温風を遮障する部材を配設することで、貫通孔8cを通過した温風が伝導部材11を通過することを遮り、木炭ボード8の背面8bに温風を分散し、加湿効果を高めることができる。特に、遮障部材を蓄光塗料で着色することで、暗色の木炭ボード8に対して視覚を通じて美感を起こさせる。
【0024】
また、木炭ボード8の表面8aには暖房装置9の吹き出し口9aからの温風が直接当たるために、表面8aに伝導部材11を配設する必要はないが、メッシュ状の金属部材を用いることで、網目を通過して表面8aに温風が直接当たることができるうえに、金属部材によって表面8aの全面に温風から得た熱を伝導することができる。また、側面8d、上面8e及び側面8fについても同様に、メッシュ状の金属部材を配設させてもよい。
【0025】
なお、この第1の実施形態においては、伝導部材11として、36番線を1インチ幅50目の網目をもつメッシュ状でステンレス製の部材を、木炭ボード8の表面8a及び背面8bに配設した。また、表面8a及び背面8bに配設した伝導部材11を架橋するように下面8dに伝導部材11を配設することで、木炭ボード8と背面8bとの間隙12を保持している。また、伝導部材11は木炭ボード8の強度を補強する効果もある。
【0026】
固定板14は、暖房装置9の前面を除いて少なくとも両側面にそれぞれ固定され、導水容器10の両端をそれぞれ貫通し、支持している。また、固定板14には後述する回転板16を挿脱自在に挟持するように対向部15を形成している。また、後述する支持金具17の上端から反固定板14側に突設した凸部17aと嵌脱自在に嵌合する凹部15aを対向部15の上端に凹設している。なお、この第1の実施形態においては、対向部15の上端から凹部15aの深さは、25mm程度としたが、この凹部15aの深さに限られるものではなく、導水容器10の導水口10bから導水容器10内の定位置にあるノズル3の下端(ここでは、導水容器10内の中心)までの長さと一致するように凹部15aの深さを設定することで、凹部15aとの嵌合を外すような上側への凸部1aのスライドに追従して、ノズル3の下端が導水容器10の導水口10bから現われることとなる。また、固定板14を暖房装置9に固定するには、例えば、螺子を使って強固に固定してもよいし、暖房装置9の側面と固定板14とを両面粘着テープで貼り付け、紐を使って暖房装置9の上面から固定板14又は回転板16を吊り下げてもよい。
【0027】
回転板16は、固定板14を貫通する導水容器10を支点として回動自在に固定板14に取り付けられており、回転板16の長手方向に摺動できる支持金具17によって給水槽1を着脱自在に支持している。
【0028】
なお、この第1の実施形態においては、固定板14及び回転板16を用いて、暖房装置9に加湿器具を取り付けているが、加湿器具の木炭ボード8を暖房装置9の吹き出し口9aに対向させ、給水槽1を導水容器10に対して上側に配設できるのであれば、これらの取り付け用具に限られるものではない。
【0029】
つぎに、この第1の実施形態における加湿器具の動作について説明する。
まず、給水槽1であるペットボトル内が満水になるように水2を注入し、ノズル3の内管4及び外管5を貫通する栓1aでペットペットボトルに蓋をする。
なお、図6及び図7に示すように、前述した取り付け用具で支持されたペットボトルに水2を注入する場合には、支持金具17を上側に25mm程度持ち上げることで、ノズル3の下端が導水容器10の導水口10bから現われると共に、ペットボトルの支持金具17の凸部17aが対向部15の凹部15aから外れる。これにより、回転板16をペットボトルと共に前方に160度回転させることができる。ペットボトルを片手で支えながら、支持金具17からペットボトルを外す。ペットボトルから栓1aを外しペットボトルに水2を注いで満水にする。
【0030】
ペットボトルを満水にしたら、栓1aで蓋をして、前方に160度回転させた支持金具17に挿入し、元の位置に戻すように上側に160度回転させるのであるが、回転板16を上側に回転すると、支持金具17の凸部17aが対向部15に接触する。ここで、支持金具17を上側に25mm程度持ち上げて更に回転板16を回転すると、支持金具17の凸部17aが対向部15の凹部15aに嵌合して安定する。この場合に、ペットボトルを回転板16の支点側にスライドさせてノズル3の下端を導水容器10の導水口10bに導き、ノズル3の下端を導水容器10の中心に位置させる。
【0031】
なお、栓1aを下側にしてペットボトルを逆にすると、ノズル3の下端から水2が落下し、ペットボトル内が真空になったところで、水2の排出が止まる。
さらに、ペットボトルを加圧すると、ペットボトルの水は内管4と外管5とを通り排出される。つぎに、ペットボトルに対する加圧状態から開放すると、ペットボトルの材質の反発力で、ペットボトル内が軽度の真空状態になり、外気が外管5と内管4との隙間を通って浸入する。これにより、外気による気泡がペットボトル内に間欠的に浸入してペットボトル内の真空状態を解消しつつ、水2は内管4の先端から継続的に排出される。
【0032】
ペットボトルの水2が内管4を通して落下すると、外管5の下端にある掛止具6の細孔7から浸入した空気は、内管4の外面と外管5の内面との間隙を通り、外管5の上端にある掛止具6の細孔7からペットボトル内に浸入し、ペットボトル内に気泡となって浮上する。ここで、外管5両端の掛止具6の細孔7は内管4の両端の開口部と比較して開口面積が狭く、内管4の外面に塗布した撥水性の高い合成樹脂により、空気で満たされた内管4の外面と外管5の内面との間隙は空気のみの通過路となる。すなわち、内管4にはすでに水が充満しているので、傍に抵抗の少ない空気の通過路ができた以上は水を押しのけて内管4に空気を通すことはない。
【0033】
やがて、導水容器10内の水位が規定値を越える、すなわち、外管5の下端が水2に浸されると、空気を吸入することができなくなり、ペットボトルからの給水が止まることとなる。また、導水容器10内の水2が、木炭ボード8に吸い上げられ、蒸発することにより、導水容器10内の水位が低くなる。これにより、外管5の下端が空気に曝され、内管4の外面と外管5の内面との間隙による空気路がすでに構成されているので、ペットボトルからの給水が再び行われる。なお、この第1の実施形態においては、導水容器10内の水位の規定値を、導水容器10の内径に対して三分の二程度の水位となるように、外管5の下端を配置している。
【0034】
多孔質の木炭ボード8は、毛細管現象が顕著であるために、導水容器10内の水2に浸されていることで、木炭ボード8の上面8eに向かって導水容器10内の水2を吸い上げる。
ここで、木炭ボード8には、木炭ボード8の長手方向に沿って複数の貫通孔8cを形成していることで、木炭ボード8の上面8e側にある押え金具13に到達する過多な水分の吸い上げを抑制することができる。これにより、押え金具13を伝って、押え金具13の端部の最下点、すなわち、木炭ボード8の背面8b側であり、押え金具13と伝導部材11との境界から床に落下する水滴の発生を抑制することができる。
【0035】
また、押え金具13の端部から水滴が床に落下しないように、押え金具13と伝導部材11との境界を滑らかな接合面とすることで、押え金具13に到達する水分を、押え金具13の端部から伝導部材11に伝え、伝導部材11を伝ってスリット10aを介して導水容器10内に還元することができる。なお、押え金具13と伝導部材11との境界を滑らかな接合面とするために、例えば、耐水性のある粘着テープで、押え金具13の端部を伝導部材11に貼り付けてもよい。
【0036】
また、押え金具13によって、木炭ボード8の上面8e側ではなく側面8f側で、伝導部材11を固定することで、押え金具13に到達する水分を、押え金具13を伝ってスリット10aを介して導水容器10内に還元することができるので、複数の貫通孔8cを木炭ボード8の長手方向に沿って形成する必要がない。
【0037】
暖房装置9の吹き出し口9aからの温風が、木炭ボード8の表面8aに当たると、一部の温風が木炭ボード8の下側に流れ、他の一部の温風が木炭ボード8の上側に流れることとなる。また、木炭ボード8には、複数の貫通孔8cを形成していることで、貫通孔8cを通過して木炭ボード8の背面側にも温風が流れることとなり、木炭ボード8の背面8bに抜ける調和空気の貫通流量を増加させることができる。特に、暖房装置9前方に位置する約2畳の面積の床面は、吹き出し口9aから出る強風のために、用途が制限されていたが、木炭ボードが強風を遮るので、風量設定の自由度が大幅に改善される。
【0038】
暖房装置9の吹き出し口9aからの温風は、木炭ボード8の表面8aに配設した伝導部材11の網目を通過し、木炭ボード8の表面8aに触れることで、木炭ボード8に含まれた水分の気化を促がす。また、木炭ボード8の貫通孔8cを通過した温風は、木炭ボード8の背面8bに配設した伝導部材11の網目に当たり、木炭ボード8の背面8bと伝導部材11との間隙12を伝播して、木炭ボード8の背面8b側から木炭ボード8に含まれた水分の気化を促がす。
【0039】
したがって、木炭ボード8の表面8aのみならず背面8bにも、温風を当たることができ、温風が当たる木炭ボード8の表面積を増加させることで、木炭ボード8に含まれた水分の蒸発を促進することができる。
【0040】
ところで、前述した説明では、温風による木炭ボード7の加湿の効果について説明したが、木炭ボード8は、化学物質の吸着性能、消臭性能及び調湿性能により、室内の空気質を高める働きがあり、シックハウス症候群を引き起こす、建材、塗料又は家具などから発生するホルムアルデヒドなどの揮発性有機化学物質を木炭ボード8が吸収する効果もある。したがって、この第1の実施形態における加湿器は、冬季の暖房時だけでなく、年間を通して、冷暖房機能を備えているエアコンに取り付けておいても構わない。
【0041】
以上のように、この発明の第1の実施形態にかかわる加湿器具によれば、導水容器10内の水2に浸した木炭ボード8を、暖房装置9の吹き出し口9aに対向して配設させ、貫通孔8cを覆って、木炭ボード8の背面8bに間隙12を介して伝導部材11を配設することで、暖房装置9の吹き出し口9aから吹き出された温風によって、木炭ボード8が含んだ水分を木炭ボード8の表面8aで気化させ、さらに、木炭ボード8の表面8aに到達する温風のうち、一部の温風を貫通孔8cから背面8bと伝導部材11との間隙12に送風させ、木炭ボード8が含んだ水分を木炭ボード8の背面8bでも気化させることができるので、効率よく室内に対して加湿することができる。また、気化した水蒸気を暖房装置9の送風によって室内に循環させ、体感温度を上げて、快適な室内環境にすることができる。
【0042】
なお、本発明の他の実施形態として、図8に示すように、押え金具13の端部から水滴が床に落下しないように、押え金具13と伝導部材11との間に耐水性の樹脂テープ18を木炭ボード8の上端部全周に亘って巻回することで、木炭ボード8の上端部における過多な水分の吸い上げを抑制できると共に、樹脂テープ18の端部から伝導部材11に伝え、伝導部材11を伝ってスリット10aを介して導水容器10内に還元することができる。図8(a)は本発明の他の実施形態における木炭ボードを表面側からみた平面図、図8(b)は図8(a)に示す木炭ボードの矢視B−B線の部分断面図である。
【0043】
なお、本発明のさらに他の実施形態として、図9及び図10に示すように、木炭ボード8の替わりに、素焼製の素焼ボード19や竹炭を主成分とする竹炭ボードなどの多孔質の調湿ボードを用いることで木炭ボード8と同様の作用効果を得ることができる。図9(a)は本発明の他の実施形態における素焼ボードを表面側からみた平面図、図9(b)は図9(a)に示す素焼ボードの矢視C−C線の部分断面図、図10(a)は本発明の他の実施形態における伝導部材を取り付けた素焼ボードを表面側からみた平面図、図10(b)は図10(a)に示す素焼ボードの矢視D−D線の部分断面図である。
【0044】
素焼ボード19は、表面19a、背面19b、下面20d、上面20eおよび側面20fからなる直方体形状であり、暖房機能があるエアコンやファンヒーターなどの暖房装置9の吹き出し口9aに対向して表面19aを配置し、表面19aに対向する背面19b及び表面19a間を貫通する貫通孔19cを有している。また、貫通孔19cは、素焼ボード19の長手方向に沿って複数の孔を形成しており、前述した導水容器10の長手方向と一致する方向に沿って複数の孔を形成している。
【0045】
なお、貫通孔19cは、素焼ボード19の表面19a及び背面19bに対して垂直に貫通した円柱形状としているが、この形状に限られるものではなく、暖房装置9の吹き出し口9aからの温風を貫通孔19cによって背面19b側に導ければよい。また、貫通孔19cの形状、大きさ及び個数は任意に設定すればよく、貫通孔19cを通過する温風の流量を調節することも可能である。
【0046】
また、素焼ボード19の表面19a、裏面19b及び上面8eには、伝導部材11を嵌合するために、凹部19gが形成されており、伝導部材11を素焼ボード19にボルト20及びワッシャー21とナット22とで締着している。これにより、押え金具13を用いることなく、伝導部材11を素焼ボード19に固定することができ、無くした押え金具13を伝って、押え金具13と伝導部材11との境界から床に落下する水滴の発生を防止することができる。
【0047】
また、視覚を通じて美感を起こさせるために、図形や絵などのイラストを付した布製又は紙製の調湿材を、素焼ボード19の背面19bに貼り付けることもできる。この場合に、過多な水分が布製又は紙製の調湿材の下端から水滴として落下することもありえるので、既存の結露水吸水テープを、素焼ボード19の背面19b側の凹部19gの下端部と背面19bの上端部との間に貼り付けることで、水滴の発生を抑え、結露水吸水テープで吸収した水分を蒸発させることができる。
【実施例】
【0048】
図11は第1の実施形態における加湿器具付きエアコンを運転させた場合の室内の温度及び湿度の変化を示した折れ線グラフである。図11において、実線の折れ線は湿度、破線の折れ線は温度をそれぞれ示している。また、横軸は30分間隔で目盛を示した時間軸であり、縦軸において、実線に対応する単位は湿度[%]、破線に対応する単位は温度[℃]、をそれぞれ示している。
鍼・灸・マッサージ診療室の室内に設置したエアコンに、第1の実施形態における加湿器具を取り付け、2006年2月11日午前11時49分から2006年2月14日11時49分までの室内の温度及び湿度を計測した。
【0049】
図11に示すように、2006年2月12日の室温は、午前7時頃が一番低く、13日は3℃まで下がっている。
例えば、12日の午前11時49分からの6時間と、13日の午前9時49分からの10時間とは、室温が上昇しておりピークは26℃に達している。この間に、2人以上の来客があり治療を行ったことを示す。
【0050】
待機中はエアコンの暖房運転は行っていないために、室温は下がり、湿度は約60%以上になっている。エアコンの暖房運転を始めると、室温の上昇と共に相対湿度も下がって最低で25%となっている。その後、第1の実施形態における加湿器具の効果で35%になっている。
【0051】
営業時間外は、エアコンの電源を切ってしまうので室温が徐々に下がって、それに反して湿度が上がり、最高で65%とになっている。
なお、11日から13日までは、異常乾燥警報が発令された晴の天気で、14日は朝から雨の天気であった。
また、第1の実施形態における加湿器具を取り付けない場合に設定温度を24℃にしていた室内は、第1の実施形態における加湿器具を取り付けることで16℃でも快適な室内環境であった。
また、しばらくの間、加湿暖房を続けると、室温は16℃近くになる。湿度は、一旦は30%以下になり、加湿効果で35%程度に上昇するが、過剰な加湿にはならない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明を実施するための第1の実施形態における加湿器具を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す加湿器具の矢視II−II線の部分断面図である。
【図3】図1に示すノズルの拡大図である。
【図4】木炭ボードを示した図であり、(a)は木炭ボードを表面側からみた平面図、(b)は図4(a)に示す木炭ボードの矢視A−A線の部分断面図である。
【図5】この発明を実施するための第1の実施形態における加湿器具をエアコンに取り付けた例を示した斜視図である。
【図6】図5に示す加湿器具をエアコンに取り付けるための取り付け用具を示す概略構成図である。
【図7】図6に示す取り付け用具である回転板を回転させた状態を示した説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態における木炭ボードを示した図であり、(a)は木炭ボードを表面側からみた平面図、(b)は図8(a)に示す木炭ボードの矢視B−B線の部分断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態における素焼ボードを示した図であり、図9(a)は素焼ボードを表面側からみた平面図、(b)は図9(a)に示す素焼ボードの矢視C−C線の部分断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態における伝導部材を取り付けた素焼ボードを示した図であり、(a)は素焼ボードを表面側からみた平面図、(b)は図10(a)に示す素焼ボードの矢視D−D線の部分断面図である。
【図11】第1の実施形態における加湿器具付きエアコンを運転させた場合の室内の温度及び湿度の変化を示した折れ線グラフである。
【符号の説明】
【0053】
1 給水槽
2 水
3 ノズル
4 内管
5 外管
6 掛止具
7 細孔
8 木炭ボード
8a 表面
8b 背面
8c 貫通孔
8d 下面
8e 上面
8f 側面
9 暖房装置
9a 吹き出し口
10 導水容器
10a スリット
10b 導水口
11 伝導部材
12 間隙
13 押え金具
14 固定板
15 対向部
15a 凹部
16 回転板
17 支持金具
17a 凸部
18 樹脂テープ
19 素焼ボード
19a 表面
19b 背面
19c 貫通孔
19d 下面
19e 上面
19f 側面
19g 凹部
20 ボルト
21 ワッシャー
22 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房装置の吹き出し口に対向して表面を配置し、当該表面に対向する背面及び当該表面間を貫通する貫通孔を有する調湿ボードと、
前記貫通孔を少なくとも覆って、前記調湿ボードの背面に間隙を介して配設する伝導部材と、
前記調湿ボードの一部を内部に配設する導水容器と、
前記導水容器に対して上側であり、内部に水を溜めることができる給水槽と、
前記導水容器内に一端を配置し前記給水槽内に他端を配置する内管、及び両端を除いて当該内管を内包する外管からなるノズルと
を備えたことを特徴する加湿器具。
【請求項2】
前記請求項1に記載の加湿器具において、
前記伝導部材は、押え金具によって前記調湿ボードの上面で固定され、
前記貫通孔は前記導水容器の長手方向と一致する方向に沿って形成していることを特徴とする加湿器具
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の加湿器具において、
前記伝導部材はメッシュ状の部材であることを特徴とする加湿器具。
【請求項4】
前記請求項3に記載の加湿器具において、
前記メッシュ状の部材は金属部材であることを特徴とする加湿器具。
【請求項5】
前記請求項1乃至4に記載の加湿器具において、
前記内管の外面に撥水性の高い合成樹脂を塗布していることを特徴とする加湿器具。
【請求項6】
前記請求項1乃至5に記載の加湿器具において、
前記暖房装置の両側面に固定され、前記導水容器の両端をそれぞれ貫通し支持する固定板と、
前記導水容器を支点として回動自在に当該固定板に取り付けられ、長手方向に摺動できる支持金具によって前記給水槽を支持する回転板とを備え、
前記回転板は前記固定板に形成している対向部によって挿脱自在に挟持され、
前記支持金具は上端から反固定板側に突設した凸部を有し、前記対向部は上端に前記凸部に嵌脱自在に嵌合する凹部を有していることを特徴する加湿器具。
【請求項7】
前記請求項1乃至6に記載の加湿器具において、
前記調湿ボードが木炭ボード、竹炭ボード又は素焼ボードであることを特徴する加湿器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−278576(P2007−278576A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104338(P2006−104338)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000105958)サガ電子工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】