説明

加熱時のぱさつきが抑制されたパン

【課題】加熱時のぱさつきのないパンを提供する。
【解決手段】穀物粉、トレハロースおよび油脂類、必要に応じてさらに澱粉類を配合し、穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースが12〜23重量%配合され、かつ、油脂類はトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9配合されることを特徴とする、パン、パン生地、殺菌包装パン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼成後の加熱によるぱさつきが抑制されたパン、パン生地およびその製造方法に関する。
【0002】
詳しくは、パンの焼成後に加熱殺菌を行うか、或いは電子レンジで処理した場合のぱさつきが抑えられたパン、パン生地およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パン生地を焼成してパンを製造する場合、焼成によりかび、酵母、細菌等の微生物はいったん死滅するが、焼成後のパンを充填包装する際に、微生物の二次汚染の可能性がある。
【0004】
特許文献1は、水分活性を0.8〜0.87とし、脱酸素剤を併用することで常温長期保存下でもかびの発生が抑えられることが記載されているが、嫌気性のカビと異なり、好気性の酵母の増殖は脱酸素剤を使用するだけでは抑制することはできない。
【0005】
焼成後のパンを充填包装する際に加熱殺菌すれば、微生物の増殖は抑えられるが、この場合、パンのぱさつきが生じることになる。また、パンのぱさつきは、電子レンジで加熱した際にも生じる。
【特許文献1】特許第3016929号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、焼成後のパンを、加熱殺菌や電子レンジにより加熱する場合のぱさつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のパン、パン生地およびパンの製造方法に関する。
1. 穀物粉、トレハロースおよび油脂類、必要に応じてさらに澱粉類を配合し、穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースが12〜23重量%配合され、かつ、油脂類はトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9配合されることを特徴とする、パン生地。
2. 穀物粉、トレハロースおよび油脂類、必要に応じてさらに澱粉類を配合し、穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースが12〜23重量%配合され、かつ、油脂類はトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9配合されたパン生地を焼成してなるパン。
3. 穀物粉、トレハロースおよび油脂類、必要に応じてさらに澱粉類を配合し、穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースが12〜23重量%配合され、かつ、油脂類はトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9配合されたパン生地を焼成し、加熱殺菌し、包装された、殺菌包装パン。
4. 項1に記載のパン生地を焼成し、冷却し、さらに加熱殺菌後に包装することを特徴とする包装パンの製造方法。
5. 穀物粉が小麦粉である項1〜4のいずれかに記載のパン生地、パン、包装殺菌パンまたは包装パンの製造方法。
6. パンがナンである項1〜4のいずれかに記載のパン生地、パン、包装殺菌パンまたは包装パンの製造方法。
7. 油脂類がショートニングである項1〜4のいずれかに記載のパン生地、パン、包装殺菌パンまたは包装パンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、パンにトレハロースと油脂類を特定の比率で配合することで、加熱後のぱさつきがなく、生地のまとまりもよいパン生地およびパンを提供することができる。
【0009】
本発明のパンは、電子レンジで加熱した場合のぱさつきも抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
パン生地の原料となる穀物粉としては、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉等が用いられるが、その種類や混合割合は、製造しようとするパンの種類に応じて選択される。穀物粉としては、小麦粉を主成分(穀物粉の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、例えば100重量%)とするのが好ましい。小麦粉としては、強力粉が使用できるが、強力粉と中力粉ないし薄力粉を混ぜて使用してもよい。
【0011】
澱粉類としては、澱粉、澱粉の部分分解物、加工澱粉を含むこれらの誘導体、グリコーゲン、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉等を用いることができる。
【0012】
穀物粉と澱粉類の比率は、穀物粉:澱粉類=50〜100:0〜50、好ましくは75〜100:0〜25、より好ましくは75〜85:15〜25 である。これらの比率は、パン生地作製の作業性、加熱後のパンの食感やぱさつきなどに影響する。穀物粉のみで良好な作業性を有する場合には、澱粉を必ずしも加える必要はない。
【0013】
パン/パン生地にはイーストが含まれる。イーストは穀物粉などに含まれてパン生地中に存在すれば、別途加えなくてもよい。
【0014】
本発明は、トレハロースを穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、12〜23重量%配合し、さらに油脂類をトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9程度配合することで、生地のまとまりがよく、かつ、加熱殺菌や電子レンジによる加熱時にパンのぱさつきが抑制できることを見出した点に特徴を有する。
【0015】
穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースは、12〜23重量%、好ましくは15〜22重量%、より好ましくは17〜21重量%配合される。例えば穀物粉と澱粉類の合計量を基準としてトレハロースを25重量%以上配合すると、生地のまとまりが悪くなり、生地がべとつき、成形してパンを得ることが困難になる。一方、トレハロースが12重量%未満、特に10重量%以下では、加熱殺菌、電子レンジなどの加熱処理の際のパンのぱさつきを十分に抑えることができない。
【0016】
油脂類は、パンの味を向上させ、トレハロースの配合による生地のまとまりの低下を抑制する。油脂類は、トレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9程度、好ましくは0.5〜0.8程度、より好ましくは0.6〜0.75程度である。油脂類の量が少なすぎると生地のまとまりが低下し、油脂類の量が多すぎると生地がべとつき、成形が困難になる。
【0017】
油脂類としては、ショートニング、マーガリン、バター、ラードなどが挙げられ、これらを単独或いは組み合わせて使用することができる。好ましい油脂類はショートニングであり、好ましくは油脂類はショートニングを油脂類の50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上使用する。
【0018】
本発明のパンないしパン生地は、上記の他に、通常配合される成分、例えば水、砂糖、多糖類、食塩、牛乳、脱脂粉乳、卵、全脂粉乳、ヨーグルト、膨張剤、酸化防止剤、乳化剤などを配合することができる。
【0019】
本発明のパンは、食パンやロール類(テーブルロール、バンズ、バターロール等)、菓子パン、クロワッサン、デニッシュペストリー、ピザクラフト、ナンなどが含まれ、好ましくはナンを例示することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例と比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例および比較例
以下の表1に示す基本配合に基づき、図1のスキームに従ってナン(パン)を作製した。
【0021】
得られたナンを電子レンジ処理(500Wで40秒(ラップなし)レンジにかけたものを10分間常温放置した)して、ぱさつきを評価した。結果を表2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

(評価基準)◎:非常によい、○:良い、△:やや悪い、×非常に悪い
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ナン(パン)を作製するためのスキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粉、トレハロースおよび油脂類、必要に応じてさらに澱粉類を配合し、穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースが12〜23重量%配合され、かつ、油脂類はトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9配合されることを特徴とする、パン生地。
【請求項2】
穀物粉、トレハロースおよび油脂類、必要に応じてさらに澱粉類を配合し、穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースが12〜23重量%配合され、かつ、油脂類はトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9配合されたパン生地を焼成してなるパン。
【請求項3】
穀物粉、トレハロースおよび油脂類、必要に応じてさらに澱粉類を配合し、穀物粉と澱粉類の合計量を基準として、トレハロースが12〜23重量%配合され、かつ、油脂類はトレハロース1に対し重量比で0.25〜0.9配合されたパン生地を焼成し、加熱殺菌し、包装された、殺菌包装パン。
【請求項4】
請求項1に記載のパン生地を焼成し、冷却し、さらに加熱殺菌後に包装することを特徴とする包装パンの製造方法。
【請求項5】
穀物粉が小麦粉である請求項1〜4のいずれかに記載のパン生地、パン、包装殺菌パンまたは包装パンの製造方法。
【請求項6】
パンがナンである請求項1〜4のいずれかに記載のパン生地、パン、包装殺菌パンまたは包装パンの製造方法。
【請求項7】
油脂類がショートニングである請求項1〜4のいずれかに記載のパン生地、パン、包装殺菌パンまたは包装パンの製造方法。

【図1】
image rotate