説明

動力伝動用チェーン及びチェーン伝動装置及び沈殿物掻寄装置

【課題】本発明は動力伝道用チェーンに関し、局部磨耗の軽減を図ることを目的とする。
【解決手段】チェーン8は内側リンク16と外側リンク18とを交互に連結ピン24及びバレル22により無端連結して構成される。内側リンク16及び外側リンク18の各々は一対のリンク板20より構成され、各リンク板は少なくとも駆動ホイールに対向する側が開放の空間を形成していて、前記空間を介し駆動ホイールの駆動ピンと係合するノッチ32を備える。駆動ホイールの歯部(スプロケット部)はリンク板20間の隙間より延出しバレル22に係合する。駆動ホイールの駆動ピンはリンク板20のノッチ32と係合する。各リンクを構成するリンク板20はステンレス板材等により形成され、その間の間隔はチェーン8の長手方向において変化しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は動力伝動用チェーン及びチェーン伝動装置及びそのようなチェーン伝動装置を備えた沈殿物掻寄装置に関し、沈殿物としての汚泥等の掻寄に使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
沈殿池等の下水処理設備において汚泥の掻寄装置として一対の平行配置の無端状チェーン間に掻寄板を所定間隔にて張渡し、チェーンを駆動することにより処理槽の下面に沿って位置する掻寄板(フライトともいう)が処理槽底面に沿って汚泥ピットに向け移動せしめられ、処理槽の底面に堆積した汚泥の汚泥ピットへの掻寄を行うことができる掻寄装置がある。チェーンとしては通常のスプロケット係合タイプもあるが(特許文献1)、公共の下水設備における設置例からすると所謂ノッチチェーンとしたものが最近は多い(特許文献2)。ノッチチェーンは一連のリンクを連結ピンにより無端連結した構造は、通常のスプロケット用チェーンと同様であるが、リンクの底面(腹面)にノッチを形成し、駆動用ホイールとしてはスプロケットホイールの代わりに、一対のディスク間に円周方向に等間隔に離間した駆動ピンを備えたものが使用される。ノッチチェーンは駆動部においては駆動ピンをノッチと係合させることで動力伝達するが、従動部においてはリンクの内周腹面を従動ホイール(シーブ)の表面に当接させる構造であり、係合部が分散されるため通常のスプロケットホイールを使用した場合と比較してチェーンの寿命が延びる利点があると言われている。
【特許文献1】特開平11−290846号公報
【特許文献2】特開2006−326483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スプロケット係合タイプでは駆動ホイールの歯部(スプロケット部)がチェーンのバレルに係合することにより動力伝達が行われ、ノッチチェーンでは駆動ホイールの駆動ピンをノッチに係合させることで動力伝達が行われる。そのため、スプロケット係合タイプではバレルの部位に荷重が集中し、ノッチチェーンではノッチの部位に荷重が集中する。従って、スプロケット係合タイプでもノッチチェーンでも動力伝達時の荷重はチェーンの局部に集中し、チェーンの磨耗を促進せしめ、そのため、チェーンの寿命が短縮されてしまう問題点があった。本発明は、動力伝達時においてチェーンにかかる荷重を分散させ、磨耗を抑え、ひいては寿命を延ばすようにすることを目的とする。又、そのような動力伝動用チェーンを用いたチェーン伝動装置及び沈殿物掻寄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明によれば、駆動ホイールに係合することで動力伝達を行うチェーンであって、前記チェーンは各々が一対のリンク板より成る多数のリンクを連結ピンによって連結して構成され、リンクの各々はそれを構成する一対のリンク板が長手方向においてその間の間隔が実質的に変化しないようにされると共にリンク板間は少なくとも駆動ホイールに対向する側が開放の空間を形成していて、前記空間を介し駆動ホイールの歯部がリンクに係合し得るようにされ、かつ前記リンク板の各々は少なくとも駆動ホイールに対向する側にノッチを形成していて、駆動ホイールの駆動ピンがノッチに係合し得るようにされている動力伝動用チェーンが提供される。
【0005】
この発明によれば、チェーンと該チェーンに係合する駆動ホイールとからなり、前記駆動ホイールは駆動ピンと歯部、又は駆動ピンを備え、前記駆動ピンは各々が軸線方向に延び、円周方向にチェーンにおけるリンクのピッチに応じた等間隔で離間して設けられ、回転中に各リンクのノッチと係合し、前記歯部は円周方向にチェーンにおけるリンクのピッチに応じた等間隔で離間して設けられ、前記歯部は各々が一対のリンク間の前記空間を介して半径方向に延出されて、回転中に各リンクと係合するチェーン伝動装置が提供される。
【0006】
この発明のチェーン伝動装置を備えた沈殿物掻寄装置にあっては、沈殿槽において前記チェーンは駆動ホイールと従動ホイールとの間に無端に巻き掛けられ、駆動ホイールは回転駆動手段に連結されて駆動ホイールの回転によりチェーンが駆動され、チェーンにおける長さ方向に間隔をおいたリンクに取り付けられた掻寄板が沈殿槽内を一方向に循環移動することにより沈殿物の掻寄を行う。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、この発明のチェーンはリンクにおける連結ピンとの連結部に駆動ホイールにおける歯部(スプロケット部)が係合しうるように構成されると共に、ノッチに駆動ホイールにおける駆動ピンが係合しうるように構成されている。そのため、動力伝達時にチェーンにかかる荷重が分散されるため、局部的な磨耗の進行を抑え、チェーンの寿命を延ばすことができる。
また、各リンクを構成する一対のリンク板はストレート型であり、従来の曲折部があるリンク板の場合、曲折部への応力集中により寿命の短縮の懸念があったが、このような懸念を排除し、寿命を延ばすことができる。また、リンク板の曲折部の存在はその部位においてリンク板に曲げ荷重を発生させ得るが、ストレート型のリンク板においてはこのような曲げ荷重の発生の恐れがないため、リンク板の強度に余裕ができ、ノッチをその分深く又は長くすることができる。ノッチを深くできることにより駆動ピンからノッチが外れ難くなり、ノッチを長くできることにより、チェーンのピッチの使用中における伸びや製造上若しくは組立上生ずることがある駆動ピン間のピッチの設定値からの誤差に対して、駆動ピンとノッチとの所期の係合状態を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は沈殿池に設置されたこの発明の掻寄装置の側面図である。
【図2】図2は同じく沈殿池に設置されたこの発明の掻寄装置の正面図(図1のII−II線に沿った矢視図)である。
【図3】図3はこの発明のチェーンの構成を示す図である。
【図4】図4は図3のチェーンの構成部品であり、下面にノッチ及びシーブホイールと対向する湾曲面を形成したリンク板の側面図である。
【図5】図5はこの発明のチェーンと噛合状態にあるこの発明の駆動ホイールの正面図である。
【図6】図6は図5の駆動ホイールの断面図であり、図5のVI−VI線に沿った矢視図である。
【図7】図7はこの発明のホイールの、チェーンにおける駆動ピン及び歯部との係合状態を表す図であり、図5のVII方向より見た図である。
【図8】図8は歯部(スプロケット部)を備えないノッチに係合する駆動ピンのみの駆動ホイールの正面図であり、この発明のチェーンとの噛合状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下この発明を下水処理場において沈殿物としての汚泥の掻寄を行う汚泥掻寄装置に使用した実施形態について説明するが、この発明は上水処理場においても使用可能であり、沈殿槽における沈殿物の掻寄一般に使用することが可能である。
【0010】
図1及び図2は汚泥掻寄装置を概略的に示す。図1において、1は汚水処理における沈殿池(この発明の沈殿槽)であり、沈殿池1の底部に汚泥ピット2が設けられ、沈殿池1の底面1Aに堆積した汚泥(この発明の沈殿物)は汚泥掻寄装置3によって汚泥ピット2に掻き寄せられる。汚泥掻寄装置3は駆動ホイール4、従動ホイール5, 6, 7、駆動ホイール4及び従動ホイール5, 6, 7に無端に巻き掛けられるチェーン8、並びに駆動ホイール4に回転駆動力を付与する回転駆動手段9から成るチェーン伝動装置と、チェーン8に間隔をおいて連結され、一方向に循環移動することにより汚泥の掻寄を行う掻寄板(フライトとも言う)10とから構成される。駆動ホイール4及び従動ホイール7が沈殿池1における上部に設けられ、従動ホイール5,6が沈殿池1の底面近くに設けられる。チェーン8は沈殿池1の幅方向に平行に離間して一対設けられる(図2参照)。チェーン8の詳細構造は後述するが、一連のリンクを連結ピンにより連結すると共に、リンク下面(腹面)にノッチを形成したものである。掻寄板10は図2に略示するように沈殿池1の幅方向に延びる板状に形成され、後述のように、幅方向に離間した一対のチェーンにおける対向したリンクの上面における連結部に固定される。そして、チェーン8の駆動時にチェーン8における沈殿池の底面1A(図1)に対向した部位及びそれに連結した掻寄板10は沈殿池の底面1Aの上に固定された樹脂製レール11に沿って矢印aのように摺動案内され、沈殿池の底面1Aに堆積された汚泥は汚泥ピット2に掻寄される。他方、沈殿池の上部には型鋼製レール12が設けられ、チェーン8における液面Lに沿った部位において掻寄板10は型鋼製レール12上を矢印bのように摺動案内される。また、回転駆動手段9は回転駆動モータ9-1と回転駆動モータ9-1の出力軸の回転運動を駆動ホイール4に伝達するチェーン−スプロケットホイールやベルト−プーリ等の動力伝達機構9-2とからなる。
【0011】
次に汚泥掻寄装置3のチェーン8の詳細構造について説明すると、図3はチェーン8の隣接したリンクをその上面より示す。チェーンは交互の内側リンク16と外側リンク18とを隣接端部同士を連結して構成される。内側リンク16及び外側リンク18は、各々、一対の平行に離間したリンク板20により構成される。内側リンク16を構成するリンク板20間は対向端部同士がバレル22により連結され組立体を構成する。即ち、バレル22は両端に縮径部22-1を形成し、両端の縮径部22-1がリンク板20の端部における開口に嵌着されることにより、一対のリンク板20と両端のバレル22とから成る組立体としての内側リンク16が構成される。他方、外側リンク18を構成する一対のリンク板20は隣接する内側リンク16を挟むようにその外側に位置し、隣接する内側リンク16を連結ピン24により回動可能に連結している。即ち、連結ピン24は一端に拡径部24-1を備えており、外側リンク18を構成する一対のリンク板20の一端は隣接する内側リンク16の一端を外から挟むように位置され、連結ピン24は外側リンク18における一方のリンク板20、内側リンク16の一方のリンク板20、バレル22、内側リンク16の他方のリンク板20及び外側リンク18の他方のリンク板20に順次挿通され、連結ピン24の拡径部24-1は外側リンク18における一方のリンク板20に当接するに至るも、他端24-2は外側リンク18の他方のリンク板20より突出する。連結ピン24のこの他端24-2は一面幅形状をなしており、また、この一面幅形状の部位が挿入されるリンク板20の開口は相補的な内面形状をなし、周り止め防止機能を達成している。そして、連結ピン24の他端24-2は係止用の直径孔24-3を備えており係止ピン26が直径孔24-3に挿入され、先端がJ字上に曲折されることにより抜け止めされ、これにより隣接する内側リンク16と外側リンク18との対向端部同士の回動可能連結が行われる。Jピンの代わりに割りピンを使用することも勿論可能である。
【0012】
内側及び外側のリンク16, 18における一対のリンク板20の空間Sは後述のように回転する駆動ホイールの歯部(スプロケット部)が入り込み、各バレル22に係合することにより駆動ホイールの駆動力が歯部からバレル22、即ち、リンクに伝達されるようになっている。
【0013】
内側リンク16及び外側リンク18を構成するリンク板20は肉厚4〜6mmといったステンレス鋼板にて形成することができる。この場合、バレル22及び連結ピン24もステンレス素材とする。また、リンク板20をプラスチック成形品とすることができる。この場合、内側リンク16を構成するリンク板20とバレルとは一体に型成形することが可能である。
【0014】
図1に示すようにチェーン8を無端状態に組み立てた状態において、所定の個数毎に図1で説明した掻寄板10の連結部を有した内側リンク16が使用される。図4はそのような掻寄板10の連結部30を有した内側リンク16を示しており、連結部30はリンク板20と一体に成形され、リンク板20より上方に突出形成される。連結部30を有した内側リンク16は図5にも示され、連結部30を有した内側リンク16は沈殿池の幅方向に離間した一対のチェーン8間で対向して設置され、この対向した内側リンク16間に図1の掻寄板10が固定される(図5にチェーン8の長手方向に適宜の数毎の内側リンク16の連結部30に対する掻寄板10の取り付け状態が模式的に示される)。その結果、図1で説明されたチェーン8のループに沿って間隔をおいて掻寄板10が位置した構造が実現される。
【0015】
図4に示す一つの内側リンク16の側面図において、リンク板20の底面はノッチ32を備え、ノッチ32はこの発明のチェーン駆動ホイールの駆動ピンの係合部である。ノッチ32は前面が比較的急峻で後面が緩くなった実質的に逆Vの溝形状をなし、ノッチ32の前後のリンク板20の底面(又は腹面)32Aは幾分の凹面をなし、この凹面形状は、チェーン伝動系における従動ホイールをシーブホイールとした場合において、チェーンをシーブホイールの周面に巻きかけたとき、隣接するリンクのリンク板20の底面32Aがシーブホイールの周面形状をスムースに倣うような凹面形状を呈する(図5参照)。そして、駆動ホイールの駆動ピンがノッチ32と係合することにより駆動ホイールの駆動力がノッチからリンク16, 18に伝達されるようになっている。
【0016】
次に、図1の掻寄装置3における駆動ホイール4の詳細構造について図5〜図7を参照して説明すると、駆動ホイール4は従来のスプロケットホイール−チェーン伝動装置における歯部(スプロケット部)による伝動とノッチチェーン伝動装置における駆動ピンによる伝動とを併用的に行うものである。即ち、駆動ホイール4は、図6に示すように、円板状の支持本体54を備え、その中心ハブ部54-1に回転軸56が挿入され、支持本体54と回転軸56はキー等の適宜の手段により固定されている。回転軸56は図1の動力伝達機構9-2におけるスプロケットホイールやプーリ等が連結され、回転駆動モータ9-1からの回転駆動力が駆動ホイール4に伝達されるようになっている。図6において、支持本体54の両側には環状の駆動ピン支持板57, 58が回転軸56と同心に配置される。支持本体54と隣接して環状のスプロケット円板60が位置され、スプロケット円板60は外周にチェーンのリンクのピッチと等しいピッチで円周方向に等間隔に配置した歯部(スプロケット部)60Aを備える(図5も参照)。駆動ピン62は歯部60Aより内側においてチェーンのリンクのピッチと等しいピッチで円周方向に等間隔に配置されており、駆動ピン62は中間部はスプロケット円板60を挿通され、その両端に外径が縮小したねじ部62-1を備え、ねじ部62-1は駆動ピン支持板57, 58に形成された開口より両側に軸の外方に突出している。そして、ボルト66は、駆動ピン支持板58とスプロケット円板60との間にはスペーサ64を、支持本体54と駆動ピン支持板57との間にはスペーサ63を夫々介在させて駆動ピン支持板58、スプロケット円板60、支持本体54及び駆動ピン支持板57の順に挿通され、駆動ピン支持板57から突出するボルト66の端部にナット68が螺合される。また、駆動ピン支持板57, 58から突出したねじ部62-1にナット70が螺合締結され、図3のチェーン8のための駆動ホイールとして組み立てられる。
【0017】
以上の説明のように、この発明においては、チェーン8は通常のノッチチェーンと同様なノッチ32をリンクの底面に備え、他方、駆動ホイールはチェーン8のバレル22に係合する歯部60A(スプロケット部)と、チェーン8のノッチ32に係合する駆動ピン62とを備える。図1の概略図においても駆動ホイール4における歯部60A及び駆動ピン62が模式的に図示され、これらがチェーン8のバレル及びノッチに係合することで、駆動モータ9-1の回転が駆動ホイール4に伝達され、駆動ホイール4の回転(図1の矢印c方向)がチェーン8へ伝達される。この動力伝達方式を図5を参照して更に詳細に説明すると、矢印c方向における駆動ホイール4の回転により、駆動ホイール4のスプロケット円板60の歯部60Aはチェーンを構成する内側リンク16における一対のリンク板20間の空間Sに入り込み、歯部60Aはその回転方向前縁60A-1がバレル22に係合する(図5及び図7参照)。そして、バレル22に対する歯部60Aの係合に加え駆動ピン62はチェーンを構成する内側リンク16における一対のリンク板20の底面のノッチ32に係合する(図5及び図7参照)。即ち、駆動ホイール4の回りを巡る際に、歯部60Aとバレル22との係合及び駆動ピン62とノッチ32との係合が並列的(順次若しくは同時的の双方を含む)に起こり、駆動ホイール4からチェーン8への動力伝達が行われる。
【0018】
この発明のチェーン8は駆動ホイール4との係合がバレル22及びノッチ32の双方において行うことができ、動力伝達時にかかる力がバレルとの係合部とノッチとの係合部とに分散され、従来のようにバレルとの係合部のみ又はノッチとの係合部のみに集中しないため、チェーン8の局部磨耗が軽減され、また、延びが少なくなるため、寿命を延ばすことができる。また、内側リンク16及び外側リンク18を構成するリンク板20はこれが曲がった構造のものであると動力伝達時の応力が曲部に集中し、力学的に弱い部分となる懸念があるが、この発明ではリンク板20は図3に示すようにストレートであるため、応力集中の懸念を解消している点で有利である。また、リンク板の曲折部の存在はその部位においてリンク板に曲げ荷重を発生させ得るが、この発明のストレート型のリンク板20においてはこのような曲げ荷重の発生の恐れがないため、リンク板20の強度に余裕ができ、ノッチ32をその分深く又は長くすることができる。ノッチ32を深くできることにより駆動ピン62からノッチ32が外れ難くなり、ノッチ32を長くできることにより、チェーンのピッチの使用中における伸びや製造上若しくは組立上生ずることがある駆動ピン62間のピッチの設定値からの誤差に対して、駆動ピン62とノッチ32との所期の係合状態を確保することができる。
【0019】
チェーン伝動系における従動側については、通常のスプロケットホイールでもシーブホイールでもよい。通常のスプロケットホイールの場合はスプロケットホイール外周の歯部がチェーンを構成する内側リンク16における一対のリンク板20間の開口部に入り込み、バレル22に係合することになる。また、シーブホイールの場合は、チェーンがシーブホイールを巡るとき、チェーンのリンクを構成する一対のリンク板20の底面32Aがシーブホイールの外周とこれを倣うように面接触するため、チェーンの円滑な移動が得られる。図1のように二個の従動ホイール5,6を沈殿池1の底面に沿って設け、沈殿池の液面側(上部側)に一個の従動ホイール7を設け、駆動側も含めると都合4個のホイールを設置した4ホイール式の場合は、底面の従動ホイール5,6をシーブホイールとし、液面側の従動ホイール7をスプロケットホイールとするのが好ましい。即ち、従動ホイールにかかる荷重は駆動ホイール4からチェーンの駆動方向(矢印)と反対方向に見たときの最近接の従動ホイール5>中間の従動ホイール6>従動ホイール7となる。シーブホイールは面接触であるため磨耗が少ないという利点があるが、全ての従動ホイールをシーブホイールとすると磨耗の進行が早くなる恐れがある。そこで、高荷重側の従動ホイール5,6をシーブホイールとし、低荷重の従動ホイール7だけはスプロケットホイールとすることによりシーブホイールでの荷重負担を軽減し、3個の従動ホイール5, 6, 7間で荷重の均衡化を図ることができ、ひいてはチェーン及び駆動ホイールも含めたホイールの磨耗を縮減し、長寿命化が可能となる。尚、図1において、従動ホイール7を省略した3ホイールの配置も可能であり、この場合は2個の従動ホイールはどちらもシーブホイールとする。
【0020】
以上の説明は駆動ホイール4に駆動ピン62に加えて歯部60Aを設け、チェーン8のノッチ62及びバレル22に夫々係合させることで、ノッチ式及びスプロケット式の併用で駆動ホイールの駆動力をチェーンに伝達しているが、この発明のチェーンは図8に示す如き歯部(スプロケット部)を備えないノッチ式にもそのまま使用可能である。すなわち、図8の実施形態においては駆動ホイール4は歯部(図5の60A)は有さず、駆動ピン62のみ備え、駆動ピン62は多数がリンクのピッチと同一ピッチで設けられ、各駆動ピン62は駆動ピン支持板57, 58間に軸線方向に沿って延設される。駆動ピン62はチェーン8のノッチとの係合のみで駆動ホイール4の動力の伝達を受ける。そして、この発明の本旨である、各々が一対のリンク板20より成る多数のリンク((内側リンク16及び外側リンク18)をバレル22と連結ピン24によって連結して構成され、内側、外側のリンク16, 18の各々はそれを構成する一対のリンク板20が図3で示すように長手方向においてその間の間隔が実質的に変化しないようにされると共に、その駆動ホイールに対向する側に駆動ピン62との係合のためのノッチ32を形成し、また、チェーン8の長手方向に適当な間隔をおいて掻寄板10への連結部30を備えたチェーンの構造においては図3に示したものと相違はない
【符号の説明】
【0021】
1…沈殿槽(沈殿池)
2…汚泥ピット
3…汚泥掻寄装置
4…駆動ホイール
5, 6, 7…従動ホイール
8…チェーン
9…回転駆動手段
10…掻寄板
16…内側リンク
18…外側リンク
20…リンク板
22…バレル
24…連結ピン
30…連結部
32…ノッチ
54…支持本体
56…回転軸
57, 58…駆動ピン支持板
60…スプロケット円板
60A…歯部
62…駆動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ホイールに係合することで動力伝達を行うチェーンであって、前記チェーンは各々が一対のリンク板より成る多数のリンクを連結ピンによって連結して構成され、リンクの各々はそれを構成する一対のリンク板が長手方向においてその間の間隔が実質的に変化しないようにされると共にリンク板間は少なくとも駆動ホイールに対向する側が開放の空間を形成していて、前記空間を介し駆動ホイールの歯部がリンクに係合し得るようにされ、かつ前記リンク板の各々は少なくとも駆動ホイールに対向する側にノッチを形成していて、駆動ホイールの駆動ピンがノッチに係合し得るようにされている動力伝動用チェーン。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝動用チェーンと該チェーンに係合する駆動ホイールとからなり、前記駆動ホイールは駆動ピンと歯部、又は駆動ピンを備え、前記駆動ピンは各々が軸線方向に延び、円周方向にチェーンにおけるリンクのピッチに応じた等間隔で離間して設けられ、回転中に各リンクのノッチと係合し、前記歯部は円周方向にチェーンにおけるリンクのピッチに応じた等間隔で離間して設けられ、前記歯部は各々が一対のリンク間の前記空間を介して半径方向に延出されて、回転中に各リンクと係合するチェーン伝動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のチェーン伝動装置を備えた沈殿物掻寄装置であって、沈殿槽において前記チェーンは駆動ホイールと従動ホイールとの間に無端に巻き掛けられ、駆動ホイールは回転駆動手段に連結されて駆動ホイールの回転によりチェーンが駆動され、チェーンにおける長さ方向に間隔をおいたリンクに取り付けられた掻寄板が沈殿槽内を一方向に循環移動することにより沈殿物の掻寄を行う沈殿物掻寄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−190413(P2010−190413A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38539(P2009−38539)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(301003702)アサヒ機装株式会社 (8)
【Fターム(参考)】