説明

動力伝達用アタッチメント

【課題】電動歯ブラシの駆動装置を他の機器の駆動装置として共用でき、しかも電動歯ブラシの駆動装置と他の機器との同期を容易に調整可能な動力伝達用アタッチメントを提供する。
【解決手段】往復直線運動する駆動軸2を備えた電動歯ブラシの駆動装置3の動力を、該駆動装置3に着脱自在に取付けた被駆動装置4へ伝達する動力伝達用アタッチメント1であって、駆動装置3の駆動軸2に着脱自在に嵌合固定される嵌合部5を有し、駆動軸2の動力を被駆動装置4に伝達する動力伝達部材6と、駆動装置3と被駆動装置4とを駆動軸2の軸方向へ相対移動させて、駆動装置3の駆動軸2とともに移動する動力伝達部材6の被駆動装置4に対する往復直線運動の現在位置を、駆動装置3に対する駆動軸2の往復直線運動の現在位置に適合する位置に位置調整する位置調整手段7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシの駆動装置の動力を被駆動装置に伝達する動力伝達用アタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシとして、往復直線運動する駆動軸を備えた駆動装置と、前記駆動軸に着脱自在に取付けた替えブラシとを備え、前記駆動軸とともに替えブラシを往復直線運動させながら、歯をブラッシングできるように構成したものが広く実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、前記電動歯ブラシの駆動装置を有効活用するため、該駆動装置を歯ブラシ以外の機器の駆動装置として兼用する技術が提案されている。例えば、特許文献2には、電動歯ブラシの駆動装置を、口腔洗浄装置の駆動装置として兼用する技術が提案されている。具体的には、水流を吐出可能な洗浄ノズルと、洗浄ノズルに水を圧送するポンプとを備え、電動歯ブラシの駆動装置の駆動軸をポンプのプランジャに着脱自在に嵌合固定して、該駆動装置によりポンプを往復直線運動させることにより、洗浄ノズルから水を吐出させて、歯間や歯茎を清掃したりマッサージしたりできるように構成した口腔洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4306681号公報
【特許文献2】特開平5−161663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献2記載の口腔洗浄装置では、ポンプのプランジャの取付孔に下側から駆動軸を挿入して、プランジャに駆動軸を嵌合固定するときに、プランジャは動軸で上側へ押されて上死点まで移動してしまうが、駆動装置の駆動軸は必ずしも上死点に存在する訳ではないので、プランジャの往復直線運動の初期位置と駆動軸の往復直線運動の初期位置の位置関係がずれてしまい、作動不良が発生するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、電動歯ブラシの駆動装置を他の機器の駆動装置として共用でき、しかも電動歯ブラシの駆動装置と他の機器との同期を容易に調整可能な動力伝達用アタッチメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る動力伝達用アタッチメントは、往復直線運動する駆動軸を備えた電動歯ブラシの駆動装置の動力を、該駆動装置に着脱自在に取付けた被駆動装置へ伝達する動力伝達用アタッチメントであって、前記駆動装置の駆動軸に着脱自在に嵌合固定される嵌合部を有し、前記駆動軸の動力を被駆動装置に伝達する動力伝達部材と、前記駆動装置と被駆動装置とを駆動軸の軸方向へ相対移動させて、前記駆動装置の駆動軸とともに移動する動力伝達部材の前記被駆動装置に対する往復直線運動の現在位置を、前記駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動の現在位置に適合する位置に、位置調整する位置調整手段とを備えたものである。
【0008】
この動力伝達用アタッチメントでは、電動歯ブラシの駆動装置の駆動軸を、アタッチメントの動力伝達部材の嵌合部に嵌合固定させて、動力伝達部材を介して駆動軸の動力を被駆動装置に伝達することになるが、駆動軸を動力伝達部材の嵌合部に挿入嵌合するときに、動力伝達部材が押し操作されて、動力伝達部材が上死点側へ移動したとしても、位置調整手段により、駆動装置と被駆動装置とが駆動軸の軸方向へ相対移動して、駆動軸とともに移動する動力伝達部材の前記被駆動装置に対する往復直線運動の現在位置が、前記駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動の現在位置に適合する位置に位置調整されて、駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動と、被駆動装置に対する動力伝達部材の往復直線運動の同期がとられることになる。
【0009】
このように、この動力伝達用アタッチメントでは、電動歯ブラシの駆動装置をそれ以外の被駆動装置の駆動装置として兼用できるので、利用者の経済的な負担を軽減しつつ、電動歯ブラシを含む各種機器の利用が可能となる。しかも、位置調整手段により、駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動と、被駆動装置に対する動力伝達部材の往復直線運動の同期をワンタッチでとることができるので、同期調整のための作業を省略でき、駆動軸を動力伝達部材の嵌合部に嵌め込むだけで、被駆動装置を利用することができる。
【0010】
前記位置調整手段として、前記嵌合部に対する駆動軸の嵌合操作により圧縮されて、前記駆動装置を駆動軸の離脱方向へ付勢する第1付勢手段と、前記第1付勢手段による前記離脱方向への駆動装置の移動を係止して、前記被駆動装置に対する適正位置に前記駆動装置を位置決めする位置決め手段とを備えたものを用いることが好ましい実施の形態である。この場合には、第1付勢手段を圧縮しながら駆動軸を動力伝達部材の嵌合部に嵌合させることで、駆動軸を確実に嵌合部に嵌合固定することができる。また、駆動軸を嵌合させた後、第1付勢手段の付勢力により駆動装置が駆動軸及び動力伝達部材とともに駆動軸の離脱方向に移動し、位置決め手段により、駆動装置が被駆動装置に対する適正位置に位置決めされ、被駆動装置に対する動力伝達部材の往復直線運動の現在位置が、駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動の現在位置に適合する位置に調整されて、駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動と、被駆動装置に対する動力伝達部材の往復直線運動の同期がとられることになる。
【0011】
前記駆動軸とともに往復直線運動する動力伝達部材を、該動力伝達部材の往復直線運動の中心位置に付勢する第2付勢手段を設けることも好ましい実施の形態である。このような第2付勢手段を設けると、動力伝達部材の作動が安定するので好ましい。
【0012】
前記駆動装置を、前記嵌合部に対する駆動軸の嵌合方向にのみ移動自在に案内する案内部を設けることもできる。この場合には、案内部に沿って駆動装置を移動させることで、嵌合部に対して駆動軸を容易に抜き差しすることができる。
【0013】
前記被駆動装置が、口腔洗浄器、エアスプレー、ポリッシャー、バリカン、送風機構、照明器具のいずれかであることが好ましい実施の形態である。電動歯ブラシの駆動軸により、口腔洗浄器やエアスプレーのポンプを作動させたり、爪の表面を磨いて艶をだすためのポリッシャーの研磨チップやバリカンの刃物を作動させたり、動力伝達部材に伝達された往復直線運動を回転運動に変換して送風機構のプロペラを回転させたり、発電機を回転させて照明器具を作動させたりすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る動力伝達用アタッチメントによれば、電動歯ブラシの駆動装置をそれ以外の被駆動装置の駆動装置として兼用できるので、利用者の経済的な負担を軽減しつつ、電動歯ブラシを含む各種機器の利用が可能となる。しかも、位置調整手段により、駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動と、被駆動装置に対する動力伝達部材の往復直線運動の同期をワンタッチでとることができるので、同期調整のための作業を省略でき、駆動軸を動力伝達部材の嵌合部に嵌め込むだけで、被駆動装置を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】動力伝達用アタッチメントを備えた被駆動装置に対する駆動装置の(a)は組付前の説明図、(b)は組付時の説明図、(c)は組付後の説明図
【図2】水流式口腔内洗浄装置の(a)は斜視図、(b)は駆動装置を取り除いた状態での下端近傍部の正面図
【図3】水流式口腔内洗浄装置のノズルの配設位置での断面図
【図4】水流式口腔内洗浄装置の着脱可能な部分の説明図
【図5】水流式口腔内洗浄装置の歯車の配設位置での断面図
【図6】水流式口腔内洗浄装置の振動数調整装置及びポンプの作動説明図
【図7】図6の(a)はa−a線断面図、(b)はb−b線断面図
【図8】水流式口腔内洗浄装置の振動数調整装置及びポンプの作動説明図
【図9】(a)〜(c)はアタッチメントの作動説明図
【図10】連結筒の(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は底面図、(d)は斜視図
【図11】押圧筒の(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は底面図、(d)は前半部を切り欠いた状態での斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、アタッチメント1は、往復直線運動する駆動軸2を備えた電動歯ブラシの駆動装置3の動力を、駆動装置3に着脱自在に取付けた被駆動装置4へ伝達するアタッチメント1であって、駆動装置3の駆動軸2に着脱自在に嵌合固定される嵌合部5を有し、駆動軸2の動力を被駆動装置4に伝達する動力伝達部材6と、駆動装置3と被駆動装置4とを駆動軸2の軸方向(図1にでは上下方向)へ相対移動させて、駆動装置3の駆動軸2とともに移動する動力伝達部材6の被駆動装置4に対する往復直線運動の現在位置を、駆動装置3に対する駆動軸2の往復直線運動の現在位置に適合する位置に、位置調整する位置調整手段7とを備えている。
【0017】
被駆動装置4としては、口腔洗浄器、エアスプレー、ポリッシャー、バリカン、送風機構、照明器具など、動力伝達部材6により直接的或いは動力伝達部材6の往復直線運動を回転運動に変換したり、回転運動を更に電気に変換したりするなどして駆動される任意の構成の機器を採用することができる。例えば、動力伝達部材6の往復直線運動により、口腔洗浄器やエアスプレーのポンプや、爪の表面を磨いて艶をだすためのポリッシャーの研磨チップやバリカンの刃物を直接的に作動させたり、動力伝達部材6に伝達された往復直線運動を回転運動に変換して送風機構のプロペラを回転させたり、該回転運動により発電機を作動させ、発電した電気で照明器具を作動させたりすることができる。
【0018】
位置調整手段7は、嵌合部5に対する駆動軸2の嵌合操作により圧縮されて、駆動装置3を駆動軸2の離脱方向(図1では下方)へ付勢する第1付勢手段8と、第1付勢手段8による離脱方向への駆動装置3の移動を係止して、被駆動装置4に対する適正位置に前記駆動装置3を位置決めする位置決め手段9とを備えている。
【0019】
第1付勢手段8としては、図1(b)に示す圧縮状態と、図1(a)に示す復帰状態とに変形可能な、コイルバネなどからなるバネ部材や、ウレタンゴムなどの合成ゴムや、エアクッションなどからなる弾性部材或いはそれを主体として構成できる。本実施例では、第1付勢手段8により駆動装置3のケーシング10の上端部を下方へ付勢するように構成したが、ケーシング10の任意の位置を下方へ付勢するように構成したり、ケーシング10に固定した部材を下方へ付勢するように構成したりすることもできる。
【0020】
位置決め手段9は、被駆動装置4に組付けた駆動装置3が離脱方向へ移動することを規制して、被駆動装置4に対して駆動装置3を駆動軸2の軸方向の適正位置に位置決めするためのもので、被駆動装置4から下方へ延びる支持部材11と、支持部材11の下端部に設けた係止部材12とを備え、駆動装置3のケーシング10の下端部に係止部材12を係合させて、駆動装置3の下限位置を規制するように構成されている。ただし、ケーシング10の高さ方向の途中部や上端部に係止部材12を係合させて駆動装置3を位置決めするように構成することも可能である。また、支持部材11は、容易には変形しないような剛性を有する部材で構成することも可能であるが、板バネのような弾力性を有する部材で構成することも可能である。また、駆動装置3のケーシング10に外嵌して、駆動軸2の嵌合方向にのみ移動自在に駆動装置3を案内する案内部材を支持部材11の途中部に設けることもできる。更に、支持部材11に代えて、駆動装置3を駆動軸2の軸方向(上下方向)に案内するガイド手段を被駆動装置4に設け、このガイド手段に駆動装置3を下方へ付勢する第1付勢手段8や、駆動装置3を所望の位置にロックするロック手段を設けることも可能である。
【0021】
動力伝達部材6は、バネ部材や合成ゴムなどからなる第2付勢手段13により往復直線運動の中心位置に常時付勢され、動力伝達部材6を駆動軸2の軸方向に安定的に往復直線運動できるように構成されている。ただし、この第2付勢手段13は省略することも可能である。
【0022】
このアタッチメント1では、被駆動装置4に駆動装置3を組付けていない状態では、図1(a)に示すように、第1付勢手段8は下側へ突出した状態となり、動力伝達部材6は第2付勢手段13により、上下方向の往復直線運動の中央位置に保持されることになる。この状態から、図1(b)に示すように、駆動装置3の駆動軸2をアタッチメントの動力伝達部材6の嵌合部5に挿入し、第1付勢手段8を駆動装置3のケーシング10で圧縮しながら、動力伝達部材6を上側へ押し操作して、駆動軸2の環状溝2aに嵌合部5の環状突部5aを嵌合させて、駆動軸2を動力伝達部材6に嵌合固定することになる。このとき、駆動軸2は駆動装置3とは相対的に移動しないが、動力伝達部材6は被駆動装置4と相対的に移動して、上死点側へ移動することになる。そして、この状態から、駆動装置3を押し操作する手を緩めると、図1(c)に示すように、第1付勢手段8の付勢力で、駆動装置3のケーシング10が係止部材12で係止されるまで駆動装置3が下側へ移動するとともに、動力伝達部材6が下側へ移動し、駆動装置3のケーシング10が係止部材12で係止された状態で、動力伝達部材6の被駆動装置4に対する往復直線運動の現在位置が、駆動装置3に対する駆動軸2の往復直線運動の現在位置に適合する位置に位置調整されて、駆動装置3に対する駆動軸2の往復直線運動と、被駆動装置4に対する動力伝達部材6の往復直線運動の同期がとられることになる。
【0023】
このように、このアタッチメント1では、電動歯ブラシの駆動装置3をそれ以外の被駆動装置4の駆動装置として兼用できるので、利用者の経済的な負担を軽減しつつ、電動歯ブラシを含む各種機器の利用が可能となる。しかも、位置調整手段7により、駆動装置3に対する駆動軸2の往復直線運動と、被駆動装置4に対する動力伝達部材6の往復直線運動の同期をワンタッチで調整できるので、同期調整のための作業を省略でき、駆動軸2を動力伝達部材6の嵌合部5に嵌め込むだけで、被駆動装置4を利用することができる。
【0024】
次に、音波式電動歯ブラシの駆動装置を、被駆動装置としての水流式口腔洗浄装置の駆動装置として兼用するための動力伝達用アタッチメントについて説明する。
【0025】
図2〜図5に示すように、水流式口腔内洗浄装置21は、被駆動装置としての洗浄装置本体22と、洗浄装置本体22の前側に着脱自在に取付けた音波式電動歯ブラシの駆動装置23とを備え、音波式電動歯ブラシの駆動装置23を水流式口腔内洗浄装置21の駆動装置として共用したものである。なお、本実施例では、駆動装置23が取付けられる側を前側と定義して以下説明する。
【0026】
駆動装置23は、往復直線運動可能に支持された駆動軸30と、バッテリー31により駆動されるモータ32と、モータ32の回転軸32aの回転運動を駆動軸30の往復直線運動に変換するスコッチヨーク機構33とを備え、駆動軸30の上端部に替えブラシ(図示略)を着脱自在に取付可能となし、スコッチヨーク機構33により回転軸32aが1回転する毎に駆動軸30が1往復するようになしたもので、周知の音波式電動歯ブラシの駆動装置を用いて構成できる。ただし、駆動軸30を往復直線運動するように構成したものであれば、複数の歯車を組み合わせたり、永久磁石とコイルとを有するリニアアクチュエータを用いたりして、駆動軸30の振動数を高めてなる任意の構成の音波式電動歯ブラシと駆動装置を共用することができるし、駆動軸30の振動数が1500〜5000cpmの低振動数のモータ式電動歯ブラシと駆動装置23を共用させることも可能である。
【0027】
洗浄装置本体22は、図2〜図11に示すように、動力伝達部材81を介して駆動装置23の駆動軸30の動力を洗浄装置本体22に伝達する動力伝達用アタッチメント80と、ピストン40の往復直線運動により洗浄液を吐出可能なポンプ41と、動力伝達部材81の往復直線運動を、ポンプ41に適合する振動数及び振幅のピストン40の往復直線運動に切換える振動数調整手段42と、洗浄液を貯留する洗浄液タンク43と、洗浄液の吐出ノズル44とを備え、吐出ノズル44から間欠的に吐出される洗浄液により、歯間や歯面、歯周ポケットなどを洗浄できるように構成したものである。
【0028】
洗浄装置本体22のフレーム45の上部には平面視U字状の馬蹄形の洗浄液タンク43が着脱自在に外嵌するベース部46が形成され、フレーム45の下部には駆動装置23の後側に沿ってその下端まで延びるグリップ部47が形成され、駆動装置23をグリップ部47とともに手で把持することで、洗浄装置21の操作性を向上できるように構成されている。
【0029】
吐出ノズル44は、中空パイプ状の周知の口腔洗浄装置の清掃用の吐出ノズルで構成され、駆動軸30と同軸上に、ベース部46の上端部に液密状に着脱自在に取付けられている。
【0030】
ポンプ41は、ベース部46の下部内に上下方向に設けられた円筒状のシリンダ50と、シリンダ50に上下方向に移動自在に液密状に内嵌されたピストン40と、シリンダ50の下端部の入口部51を開閉可能の弁部材52とを備えている。ポンプ41には、洗浄液タンク43の下端部とシリンダ50の入口部51とを連通する供給管53と、シリンダ50の下部の出口部54と吐出ノズル44とを連通する吐出管55とが接続され、ピストン40が上側へ移動すると、弁部材52が開弁されて、洗浄液タンク43内の洗浄液が供給管53を通じてシリンダ50内へ供給され、ピストン40が下側へ移動すると弁部材52が閉弁されて、シリンダ50内の洗浄液が、吐出管55を経て吐出ノズル44から吐出されるように構成されている。
【0031】
振動数調整手段42は、駆動軸30とともに往復直線運動する動力伝達部材81の往復直線運動を出力側回転部材62の一方向への回転運動に変換する第1変換手段60と、出力側回転部材62の回転運動を第2軸部材63の往復直線運動に変換する第2変換手段70とを備えている。
【0032】
第1変換手段60は、図6〜図8に示すように、入力側回転部材61及び出力側回転部材62と、入力側回転部材61の一方向への回転運動のみを出力側回転部材62に伝達するワンウェイクラッチ64とを備えており、入力側回転部材61と出力側回転部材62とワンウェイクラッチ64とはベース部46の後側上部内に支軸65を介して回転自在に支持されている。
【0033】
第1変換手段60について説明すると、軸方向に延びる複数のローラ(図示外)を周方向に一定間隔おきに出没自在に内周部に設けた、リング状の周知の構成のワンウェイクラッチ64が設けられ、円板状の入力側回転部材61の中央部にはワンウェイクラッチ64が外嵌する入力側スリーブ61aが突出状に形成され、円板状の出力側回転部材62の外周近傍部にはワンウェイクラッチ64に外嵌する出力側スリーブ62aが突出状に形成されている。入力側回転部材61はワンウェイクラッチ64に矢印Aの方向に対しては相対回転不能で、矢印Aと反対方向に対しては相対回転可能に内嵌され、出力側回転部材62はその内周面に突出形成した突起62bを介してワンウェイクラッチ64に相対回転不能に外嵌されている。そして、矢印Aの方向への入力側回転部材61の回転時には、ワンウェイクラッチ64を介して入力側回転部材61と一体的に出力側回転部材62が回転して、入力側回転部材61の回転力が出力側回転部材62に伝達され、矢印Aとは反対側への入力側回転部材61の回転時には、入力側回転部材61のみが回転し、出力側回転部材62にはワンウェイクラッチ64を介して回転力が伝達されないように構成されている。
【0034】
ベース部46の上部内には左右方向の枢支軸66を中心に回動自在な前後方向に延びるレバー部材67が設けられ、レバー部材67の前端部は駆動軸30に一体的に外嵌可能な動力伝達部材81がピン部材68を介して回動自在に連結され、レバー部材67の途中部には第1変換手段60の支軸65を回避する枠部67aが形成され、レバー部材67の後端部には前後方向に細長い長孔67bが形成されている。入力側回転部材61の外周近傍部には長孔67bに嵌合する操作ピン69が立設固定され、駆動軸30の上下方向への往復直線運動により、レバー部材67が枢支軸66を中心に回動すると、枢支軸66と操作ピン69間の長さL1と、枢支軸66とピン部材68間の長さL2の比率に応じて、駆動軸30の振幅が増幅されてレバー部材67の後端部が上下に往復運動し、入力側回転部材61が矢印Bに示すようにレバー部材67の後端部の振幅に応じた角度だけ往復回動するし、出力側回転部材62がワンウェイクラッチ64を介して矢印Aの方向へ一定角度ずつ回転するように構成されている。だだし、入力側回転部材61に長孔67bを形成し、レバー部材67に操作ピン69を設けることもできる。
【0035】
第2変換手段70について説明すると、出力側回転部材62の外周部には第1歯車71が形成され、出力側回転部材62の下側には第1歯車71に噛合する第2歯車72がピン部材73を中心に回転自在に支持され、第2歯車72には円柱状の偏心カム74がピン部材73に対して一定距離L3だけ偏心させて設けられている。ポンプ41のピストン40を上下方向に駆動する第2軸部材63の上端部には偏心カム74に回転自在に外嵌する筒部75が形成され、第2歯車72がピン部材73を中心に回転することで、ピン部材73に対する偏心カム74の偏心距離L3の2倍の振幅で第2軸部材63及びピストン40が上下方向に往復直線運動するように構成されている。
【0036】
この口腔内洗浄装置21では、第1変換手段60のレバー部材67の長さL1、L2の比率と、操作ピン69と支軸65間の距離L4と、第1歯車71と第2歯車72との歯数比に応じて、第1軸部材の振動数と第2軸部材63の振動数の比率を設定でき、またピストン40の往復直線運動の振幅は、偏心カム74の偏心距離L3の2倍の距離になるので、駆動軸30の振動数が5000〜11000cpmで、振幅が0.2〜1.0mmの音波式電動歯ブラシであっても、その駆動装置を水流式口腔内洗浄装置21の駆動装置23として共用することができる。ただし、ポンプ41と振動数調整手段42と洗浄液タンク43と吐出ノズル44は、図2〜図8に示す以外の構成のものを採用することも可能である。
【0037】
動力伝達用アタッチメント80は、図1〜図6、図8〜図11に示すように、駆動装置23の駆動軸30に着脱自在に嵌合固定される嵌合部82を有し、駆動軸30の動力を洗浄装置本体22に伝達する動力伝達部材81と、駆動装置23と洗浄装置本体22とを駆動軸30の軸方向(上下方向)へ相対移動させて、駆動装置23の駆動軸30とともに移動する動力伝達部材81の洗浄装置本体22に対する往復直線運動の現在位置を、駆動装置23に対する駆動軸30の往復直線運動の現在位置に適合する位置に、位置調整する位置調整手段83とを備えている。
【0038】
位置調整手段83は、駆動装置23を上下方向にのみ移動自在に案内する左右1対の案内部84と、嵌合部82に対する駆動軸30の嵌合操作により圧縮されて、駆動装置23を駆動軸30の離脱方向(図6では下方)へ付勢する第1付勢手段85と、第1付勢手段85による離脱方向への駆動装置23の移動を係止して、洗浄装置本体22に対する適正位置に駆動装置23を位置決めする位置決め手段86とを備えている。
【0039】
案内部84は、洗浄装置本体22のグリップ部47の前側に配置される駆動装置23に沿ってグリップ部47の左右両側部から前側へ円弧状に突出形成され、駆動装置23は、左右の案内部84間に下側から挿入することで、上下方向にのみ移動自在に案内される。ただし、この案内部84は省略することも可能である。
【0040】
第1付勢手段85について説明すると、図6、図8〜図11に示すように、駆動装置23に対面するベース部46の前部46aの下面には下方へ突出する支持筒部87が一体的に形成され、支持筒部87の高さ方向の途中部にはフック部87aが周方向に間隔をあけて設けられ、支持筒部87には下方へ延びる連結筒88が嵌合凹部88aにフック部87aを係合させて上下方向に移動不能に外嵌固定されている。支持筒部87の基端部と連結筒88の上端部間にはOリング89が介装され、連結筒88は支持筒部87に対してOリング89を介して水密状に外嵌されている。
【0041】
支持筒部87及び連結筒88の中央部を上下方向に挿通するように動力伝達部材81が設けられ、連結筒88の下端部には内側へ突出する環状の保持部88bが一体的に形成され、保持部88bと支持筒部87の下端部間には円盤状のゴム部材からなる第2付勢手段90が設けられ、動力伝達部材81の途中部は第2付勢手段90の中央部に貫通固定されている。この第2付勢手段90により、動力伝達部材81が往復直線運動の中央位置に常時付勢されるとともに、支持筒部87及び連結筒88と動力伝達部材81間の隙間が水密状に閉鎖されている。
【0042】
連結筒88の外周面の高さ方向の途中部には環状溝88cが形成され、連結筒88の外周面には上下方向に延びる3本の案内溝88dが周方向に間隔をあけて形成されている。連結筒88には円筒状の押圧筒91が上下方向に移動自在に外嵌され、押圧筒91の内周面には環状溝88cに上下移動自在に係合する係合突起91aが形成されとともに、押圧筒91の内周面には案内溝88dに嵌合する突条91bとが周方向に間隔をあけて形成され、押圧筒91は連結筒88に対して周方向に相対移動不能で且つ環状溝88cの溝幅分だけ上下移動自在に外装されている。押圧筒91の下端部には内側へ延びる環状の受け部91cが形成され、連結筒88の保持部88bと押圧筒91の受け部91c間には押圧筒91を常時下方へ付勢するバネ部材92が設けられている。なお、バネ部材92に代えてウレタンゴムなどの合成ゴムや、エアクッションなどのクッション材などを設けることも可能である。
【0043】
位置決め手段86について説明すると、図2〜図5に示すように、グリップ部47の下部の前面には係止爪93が前方へ突出状に形成され、駆動装置23のケーシング34の後面には係止爪93が下側から係合可能な突起94が形成され、駆動装置23は、係止爪93が突起94に係合することで、洗浄装置本体22に駆動軸30の軸方向(高さ方向)の適正位置に対して位置決めされるように構成されている。
【0044】
この動力伝達用アタッチメント80では、洗浄装置本体22に駆動装置23を組付けていない状態では、図9(a)に示すように、第1付勢手段85により押圧筒91が下側へ突出した状態となり、動力伝達部材81は第2付勢手段90により、上下方向の往復直線運動の中央位置に保持されることになる。この状態から、図9(b)に示すように、電動歯ブラシの駆動装置23の駆動軸30の環状溝30aがアタッチメント80の動力伝達部材81の環状突起81aに嵌合するまで、駆動軸30を嵌合部82に挿入し、駆動装置23のケーシング34で押圧筒91を上側へ押し上げて第1付勢手段85を圧縮しながら、動力伝達部材81を上側へ押し操作して、駆動軸30を動力伝達部材81の嵌合部82に嵌合固定することになる。このとき、駆動軸30は駆動装置23とは相対的に移動しないが、動力伝達部材81は洗浄装置本体22と相対移動して、上死点側へ移動することになる。そして、この状態から、駆動装置23を押し操作する手を緩めると、図9(c)に示すように、第1付勢手段85の付勢力で、駆動装置23のケーシング34の突起94が係止爪93で係止されるまで駆動装置23が下側へ移動するとともに、動力伝達部材81が駆動装置23とともに下側へ移動し、駆動装置23のケーシング34が係止爪93で係止された状態で、動力伝達部材81の洗浄装置本体22に対する往復直線運動の現在位置が、駆動装置23に対する駆動軸30の往復直線運動の現在位置に適合する位置に位置調整されて、駆動装置23に対する駆動軸30の往復直線運動と、洗浄装置本体22に対する動力伝達部材81の往復直線運動の同期がとられることになる。
【0045】
このように、この動力伝達用アタッチメント80では、電動歯ブラシの駆動装置23を洗浄装置本体22の駆動装置として兼用できるので、利用者の経済的な負担を軽減しつつ、電動歯ブラシ及び水流式口腔内洗浄装置21の利用が可能となる。しかも、位置調整手段83により、駆動装置23に対する駆動軸30の往復直線運動と、洗浄装置本体22に対する動力伝達部材81の往復直線運動の同期をワンタッチでとることができるので、同期調整のための作業を省略でき、駆動軸30を動力伝達部材81の嵌合部82に嵌め込むだけで、洗浄装置本体22を利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 アタッチメント 2 駆動軸
2a 環状溝 3 駆動装置
4 被駆動装置 5 嵌合部
5a 環状突部 6 動力伝達部材
7 位置調整手段 8 第1付勢手段
9 位置決め手段
10 ケーシング 11 支持部材
12 係止部材 13 第2付勢手段
21 水流式口腔内洗浄装置 22 洗浄装置本体
23 駆動装置
30 駆動軸 30a 環状溝
31 バッテリー 32 モータ
32a 回転軸 33 スコッチヨーク機構
34 ケーシング
40 ピストン 41 ポンプ
42 振動数調整手段 43 洗浄液タンク
44 吐出ノズル 45 フレーム
46 ベース部 46a 前部
47 グリップ部
50 シリンダ 51 入口部
52 弁部材 53 供給管
54 出口部 55 吐出管
60 第1変換手段 61 入力側回転部材
61a 入力側スリーブ 62 出力側回転部材
62a 出力側スリーブ 62b 突起
63 軸部材 64 ワンウェイクラッチ
65 支軸 66 枢支軸
67 レバー部材 67a 枠部
67b 長孔 68 ピン部材
69 操作ピン
70 第2変換手段 71 第1歯車
72 第2歯車 73 ピン部材
74 偏心カム 75 筒部
80 動力伝達用アタッチメント
81 動力伝達部材 81a 環状突起
82 嵌合部 83 位置調整手段
84 案内部 85 第1付勢手段
86 位置決め手段 87 支持筒部
87a フック部 88 連結筒
88a 嵌合凹部 88b 保持部
88c 環状溝 88d 案内溝
89 Oリング 90 第2付勢手段
91 押圧筒 91a 係合突起
91b 突条 91c 受け部
92 バネ部材 93 係止爪
94 突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復直線運動する駆動軸を備えた電動歯ブラシの駆動装置の動力を、該駆動装置に着脱自在に取付けた被駆動装置へ伝達する動力伝達用アタッチメントであって、
前記駆動装置の駆動軸に着脱自在に嵌合固定される嵌合部を有し、前記駆動軸の動力を被駆動装置に伝達する動力伝達部材と、
前記駆動装置と被駆動装置とを駆動軸の軸方向へ相対移動させて、前記駆動装置の駆動軸とともに移動する動力伝達部材の前記被駆動装置に対する往復直線運動の現在位置を、前記駆動装置に対する駆動軸の往復直線運動の現在位置に適合する位置に、位置調整する位置調整手段と、
を備えたことを特徴とする動力伝達用アタッチメント。
【請求項2】
前記位置調整手段として、前記嵌合部に対する駆動軸の嵌合操作により圧縮されて、前記駆動装置を駆動軸の離脱方向へ付勢する第1付勢手段と、前記第1付勢手段による前記離脱方向への駆動装置の移動を係止して、前記被駆動装置に対する適正位置に前記駆動装置を位置決めする位置決め手段とを備えた請求項1記載の動力伝達用アタッチメント。
【請求項3】
前記駆動軸とともに往復直線運動する動力伝達部材を、該動力伝達部材の往復直線運動の中心位置に付勢する第2付勢手段を設けた請求項1又は2記載の動力伝達用アタッチメント。
【請求項4】
前記駆動装置を、前記嵌合部に対する駆動軸の嵌合方向にのみ移動自在に案内する案内部を設けた請求項1〜3のいずれか1項記載の動力伝達用アタッチメント。
【請求項5】
前記被駆動装置が、口腔洗浄器、エアスプレー、ポリッシャー、バリカン、送風機構、照明器具のいずれかである請求項1〜4のいずれか1項記載の動力伝達用アタッチメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−5880(P2012−5880A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206700(P2011−206700)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2010−143299(P2010−143299)の分割
【原出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】