説明

動力発生装置

【課題】従来の太陽光エネルギーを利用した動力発生装置は、エネルギーロスが大きくエネルギー変換効率が低い、あるいは、複雑で大掛かりな設備が必要であるなどの課題を有しており、十分満足できるものではなかった。本発明の目的は、簡易な装置で太陽光等の電磁波を効率よく運動エネルギーに変換できる動力発生装置を提供することである。
【解決手段】気体を吸着/脱着することができる吸着剤に電磁波を照射することにより、吸着していた気体が前記吸着剤から脱着されて該気体の体積が膨張するプロセスと、前記電磁波を遮断することにより、前記気体が前記吸着剤に吸着されて前記気体の体積が収縮するプロセスの繰り返しによる体積変化を動力源として取り出すことを特徴とする動力発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の吸脱着に基づく体積変化を利用した動力発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年環境問題の観点より、省資源、省エネルギーが注目されており、化石燃料に代わる多様なエネルギー資源の利用技術開発が進んでいる。なかでも代表的な自然エネルギーである太陽光を利用する方式が注目されている。例えば太陽光エネルギーを熱エネルギーに変換し、これを機械的エネルギーとして取り出す方式、あるいは電気的エネルギーに変換する方式などが提案されている。
【0003】
ただ、太陽光をエネルギーとして使用する場合、そのエネルギー変換効率が重要となるため、数多くのシステムが提案されているにもかかわらず実用的な面からは基本的な方式は限られているのが現状である。すなわち、太陽光を熱エネルギーとして使用する場合は、大規模な集光装置を備えた大掛かりな太陽熱プラントは別として、一般にその熱源はそれほど高温なものではなく、水の沸点からはかなり低いものとなっている。このため、このような低温の熱源から機械的なエネルギーを効率良く取り出すことのできる機関が必要である。
【0004】
太陽光を利用し、低温熱源でも駆動する機関として、例えば特許文献1では、太陽光を液体から気体への相変化を行わせるエネルギー源として用いた方式を提案しており、太陽光を液体に照射することにより気体を発生させ、気化によって生じた浮力を利用してローターを回転させる方法が記載されている。また、特許文献2では、太陽熱等の低温熱エネルギーをヒートポンプで集めて、高温側と低温側に備えた熱エネルギーによって駆動する外燃機関エンジンに供給することにより、外燃機関エンジンを駆動させて動力を得る方法が例示されている。
【0005】
低温熱源で効率的に駆動し動力を発生する方式として、例えば特許文献3では、熱効率の極めて高いスターリングエンジン方式において、ガス圧変動の誘起を促す基本原理をガスの熱膨張ではなく無機多孔質材等の吸着剤へのガスの温度変化によるガス吸着量の変化とした機関を提案しており、高温側の温度を従来のものよりも低くできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−46484号公報
【特許文献2】特開2003−184650号公報
【特許文献3】特開平7−217497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では、太陽光により液体を加熱し蒸気を発生させ、この蒸気の液体中での浮力を利用する方式が提案されているが、太陽光が液体中を通る必要があること、また液体を蒸気とする際蒸発する液体以外のまわりの液体の温度上昇にも熱が使われること、また液体中での回転となるため回転抵抗が大きいことなどから、エネルギーのロスが大きくエネルギー交換効率の高い機関は困難である。
【0008】
また特許文献2では、コンプレッサーによる圧縮ガスを集中光により加熱膨張させタービンを回転させる方式が提案されているが、コンプレッサー、タービン等、複雑で大掛かりな設備が必要なこと、また高圧ガスを作動媒体としているため高圧に耐えるだけの強度と密閉性が要求されるため大きな装置とならざるを得ないという問題がある。
【0009】
特許文献3では、シリンダーを外部から加熱しこの熱で吸着剤を加熱する方式であるが、熱が空気層を介して伝達するため伝熱効率が悪くエネルギーロスが大きい。このため、従来より低いとはいえ、200℃という高い加熱温度が必要となっており、太陽光からこのように高い温度を得ることは難しい。装置的にも、破砕し易い吸着剤部が可動する方式となっていることから、耐久性の点でも問題がある。
【0010】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な装置で太陽光等の電磁波を効率よく運動エネルギーに変換できる動力発生装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の第1の手段による動力発生装置は、気体を吸着/脱着することができる吸着材に電磁波を照射することにより、吸着していた気体が前記吸着材から脱着されて該気体の体積が膨張するプロセスと、前記電磁波を遮断することにより、前記気体が前記吸着材に吸着されて前記気体の体積が収縮するプロセスの繰り返しによる体積変化を動力源として取り出すことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の手段による動力発生装置は、気体を吸着/脱着することができる吸着材(1)を内蔵し、かつ電磁波を透過することができる電磁波透過窓(8)を備えた吸着材保持部(2)と、これに連結するシリンダー(3)と、該シリンダー内に嵌合され往復移動できるピストン(4)と、電磁波の照射と遮断の切り替えを行うことのできる電磁波遮断板(6)とを有し、シリンダー(3)内に吸着材(1)により吸着/脱着される気体が封入されているものであって、吸着材(1)に電磁波が照射されることにより、吸着していた気体が吸着材より脱着し体積が膨張してピストン(4)が押されるプロセスと、電磁波遮断板(6)で電磁波が遮断されることにより気体が吸着材に吸着され体積が収縮しピストン(4)が引かれるプロセスの繰り返しにより起きるピストン(4)の往復運動を動力源として取り出すことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の手段による動力発生装置は、第1または第2の手段において、電磁波が紫外線、可視光線、赤外線、太陽光、熱線、輻射熱から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第4の手段による動力発生装置は、第1から第3の手段のいずれかにおいて気体が水蒸気であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第5の手段によるの動力発生装置は、第1から第4の手段のいずれかにおいて、吸着材が、架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第6の手段による動力発生装置は、第1から第5の手段のいずれかにおいて、吸着材が、光熱変換材料を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第7の手段による動力発生装置は、第1から第6の手段のいずれかにおいて、吸着材を冷却する手段を有しており、電磁波を遮断するプロセスにおいて、吸着材を冷却することにより吸着を促進させるようにしたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第8の手段による動力発生装置は、第1から第7の手段のいずれかにおいて、自らの発生した動力により、電磁波の照射と遮断の切り替えを行うようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第9の手段による発電システムは、第1から第8の手段のいずれかにより発生した動力により発電することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第10の手段による空調システムは、第1から第8の手段のいずれかにより発生した動力で空調することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明は、電磁波の照射/遮断により、吸着材への気体の脱着/吸着を低温で効率的に行い、これに伴う気体の膨張/収縮の体積変化を利用することにより、簡単な装置で、効率良く電磁波のエネルギーを運動エネルギーに変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の動力発生装置の一例を示す概略図である。
【図2】吸着材を冷却する手段を設けた本発明の動力発生装置の一例を示す概略図である。
【図3】自らの発生した動力により電磁波の照射と遮断の切り替えを行うようにした本発明の動力発生装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の動力発生装置により発生した動力で発電を行うシステムの一例を示す概略図である。
【図5】本発明の動力発生装置により発生した動力で空調を行うシステムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の動力発生装置は、吸着材による気体の吸着/脱着に伴う該気体の体積の変化を動力として利用できるようにするものである。すなわち、気体を吸着/脱着することができる吸着材に吸着していた気体が該吸着材から脱着されて該気体の体積が膨張するプロセスと、該気体が該吸着材に吸着されて該気体の体積が収縮するプロセスの繰り返しによる体積変化を動力源として取り出すものである。そして、本発明の動力発生装置においては、吸着材から気体を脱着させるプロセスでは、吸着材への電磁波照射によりエネルギーを供給することで気体を脱着させ、次に、吸着材に気体を吸着させるプロセスでは電磁波を遮断して気体を吸着させるようにしている。
【0024】
以下、本発明の動力発生装置、ならびに発電システムおよび空調システムの実施形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一の符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。また、図及び説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。
【0025】
まず、図1を用いて、本発明の動力発生装置の基本原理を説明する。なお、図1は本発明の動力発生装置の一例を示す概略図であって、本発明は該図に示された構成に限られるものではない。また、図1〜3においては、本発明の理解を容易にするため、本発明の動力発生装置にクランク軸を接続した状態で図示している。
【0026】
図1に示す本発明の動力発生装置においては、吸着材(1)を内部に保持し、かつ電磁波(5)を透過することができる電磁波透過窓(8)を備えた吸着材保持部(2)とこれに連結するシリンダー(3)とシリンダー内を往復移動するピストン(4)とで密閉された空間を形成しており、該空間には吸着材(1)により吸着および脱着される気体が封入されている。
【0027】
電磁波透過窓(8)を通して吸着材(1)に電磁波(5)が照射されると、吸着していた気体が吸着材(1)から脱着されて気体(7)の体積が膨張する。次に、電磁波遮断板(6)で電磁波(5)を遮断すると、気体(7)が吸着材(1)に吸着されて気体(7)の体積が収縮する。この膨張と収縮の繰り返しによる体積変化に伴いピストン(4)が往復運動して動力が発生する。この発生した動力は、例えばピストン(4)をクランク軸(9)と連結することでを回転運動に変換することができる。
【0028】
ここで、電磁波(5)としては特に限定はなく、太陽光、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線、熱線、輻射熱、マイクロ波等のあらゆる電磁波を使用することができる。中でも太陽光、紫外線、可視光線、赤外線、熱線、輻射熱が効率よく使用することができ、さらには環境に影響の無い、自然エネルギーである太陽光が最も好ましい。
【0029】
また、気体(7)としては、吸着材に吸着し、該吸着材から電磁波によるエネルギーによって脱着できる気体であれば特に限定はなく、吸着材との組み合わせにおいて適宜選定することができる。例えば、水、アンモニア、メチルアルコール、エチルアルコール等を挙げることができ、中でも水、すなわち水蒸気はそのまま空気中へ放出しても問題がなく、環境にも影響がないことから最も好ましい。
【0030】
次に、吸着材(1)としては、吸着性物質や該吸着性物質と他の物質との複合体を含有するものが挙げられる。吸着性物質としては、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナなどの無機系多孔質材料、塩化リチウム、塩化カルシウムなどの無機塩類、あるいは、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリスルホン酸およびその塩、ポリリン酸およびその塩、ポリグルタミン酸およびその塩、ポリアクリルアミド等の親水性官能基を有する有機系高分子化合物を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用しても構わない。また、吸着性物質と他の物質との複合体としては、これらの吸着性物質を含有させた粒子、繊維、樹脂フィルム、ゴムなどが挙げられる。以下、吸着性物質および該吸着性物質と他の物質との複合体の両者をあわせて吸着性材料という。
【0031】
また、吸着材の形態としては、繊維状の吸着性材料を含有する場合であれば、これらの吸着性材料を紙、不織布、編織物等に加工したものなどが挙げられる。また、粒子状などの吸着性材料を含有する場合であれば、これらの吸着性材料を担持体に担持したものなどを用いることができる。ここで、担持体としては、紙、不織布、編織物、フィルム、金属板、多孔質物質、あるいは、紙やフィルムなどのシート状物を立体的に成型したハニカム構造体などを挙げることができる。
【0032】
中でも、ハニカム構造体に吸着性材料を担持したものを用いた場合、電磁波を受ける面積を広くすることができるので、本発明に用いる吸着材として望ましい。かかるハニカム構造体としては、例えば六角型、OX型、フレックス型、バイセクト型、フェザー型(以下コルゲート型という)等を挙げることができる。中でも、加工が容易で、加工速度が早く、コスト的にも有利なコルゲート型のものが好ましい。また、コルゲートセルの大きさや長さ等の特性については、気体の拡散速度等も考慮し、適宜選定することができる。
【0033】
また、上述した吸着性材料の中では、気体の吸着量が大きく、吸着速度が速く、小さいエネルギーでも効率的に気体を脱着でき、吸着と脱着を繰り返しても性能が低下しにくいものが、効率的な動力発生の観点から望ましい。気体として水蒸気を採用する場合、上記吸着性材料のうち、吸湿性を有するものを採用しうるが、特に、上記観点から、分子中に親水性極性基を有する有機高分子主鎖を架橋構造により三次元構造化した有機系高分子化合物が好適である。かかる有機系高分子化合物は収着現象に基づき水蒸気を多量に収着するものであり、本発明ではかかる材料を有機高分子系収着剤と呼ぶこととする。
【0034】
ここで、収着現象とは、気体と固体が接している系において両者の界面で固相中の気体濃度が気相中よりも高くなる現象は吸着と呼ばれ、一方、吸着した気体分子が固体表面層を通り固体内部へ入り込んでいく現象は吸収と呼ばれるが、この吸着と吸収とが同時に起こる現象である。即ち、気体状水分子である水蒸気が有機高分子系収着剤に作用した場合、該収着剤の有する高い親水性極性基により水分子は吸着され、さらに収着剤に入り込んで吸収されてゆく。
【0035】
かかる有機高分子系収着剤においては、架橋構造により三次元化した構造に適度の柔軟さがあるため、吸湿時には水分子が吸収されるに従い膨らんで多量の水分子を収着剤の中に取り込むことができ、また放湿時には水分子が放出されるに従い収縮し元の構造に戻ることができる。すなわち、有機高分子系収着剤は高い吸湿率と吸放湿の繰り返しに対する優れた耐久性を両立するものであり、本発明の動力発生装置に適した吸着性材料なのである。
【0036】
かかる有機高分子系収着剤の中でも、架橋構造を有するポリアクリル酸の塩は、高飽和吸湿率や低温すなわち低エネルギーでも放湿できるという望ましい特性を得られやすい点から本発明の動力発生装置に用いる吸着性材料として、特に好適に採用できるものである。なお、本発明においては、かかる架橋構造を有するポリアクリル酸の塩のことを架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物とも言う。
【0037】
架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物においては、親水性極性基であるカルボキシル基とカチオンが塩を構成している。かかる塩を構成するカチオンとしては、特に限定はなく、例えばLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等のその他の金属、NH4、アミン等の有機のカチオン等を挙げることかでき、これらのカチオンを2種以上同時に用いてもよい。中でも、カチオンとしてKを選択すれば吸放湿速度が大きくなり、動力発生の点で有利である。
【0038】
また、架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物において、カチオンと塩を構成しているカルボキシル基、すなわち塩型カルボキシル基は、吸湿性を発現させるために好適な親水性の高い極性基であり、高い吸放湿性能を得ようとする場合、できるだけ多くの塩型カルボキシル基を含有することが好ましい。しかし、吸湿量と同時に、耐久性あるいは吸湿速度の大きいものとするためには、架橋構造との割合において適当なバランスをとることが必要である。
【0039】
すなわち、架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物の塩型カルボキシル基量が10.0mmol/gを超える場合、導入できる架橋構造の割合が少なくなりすぎ、いわゆる高吸水性樹脂に近いものとなってしまい、吸湿性能が低くなる、形態安定性が劣ったものとなり十分な耐久性が得られないといった問題が生じる場合がある。以上のような観点からより好ましい結果を与える塩型カルボキシル基量は、9.5mmol/g以下である。
【0040】
一方、塩型カルボキシル基量が少ない場合、吸湿性能は低下してゆき、特に1.0mmol/gより低い場合では、十分な吸湿性能が得られないことがある。塩型カルボキシル基量が3.0mmol/g以上の場合、現存する他の吸湿性の素材に比べてその吸湿性能の優位性が顕著となり、より好ましい結果を与える。
【0041】
かかる架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物における塩型カルボキシル基の導入の方法としては、特に限定は無く、例えば、塩型カルボキシル基を有する単量体を単独重合又は共重合可能な他の単量体と共重合することによって重合体を得る方法(第1法)、カルボキシル基を有する重合体を得た後に塩型に変える方法(第2法)、カルボキシル基に誘導することが可能である官能基を有した単量体を重合し、得られた重合体の該官能基を化学変性によりカルボキシル基に変換しさらに塩型に変える方法(第3法)、あるいはグラフト重合により前記3法を実施する方法等が挙げられる。
【0042】
上記第1法の塩型カルボキシル基を有する単量体を重合する方法としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボキシル基を含有する単量体の対応する塩型単量体を単独で、又はこれらの単量体の2種以上を、あるいは同一種であるがカルボン酸型と対応する塩型との混合物を重合する、さらにはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを共重合する等の方法が挙げられる。
【0043】
また、第2法に言うカルボキシル基を有する重合体を得た後に塩型に変える方法とは、例えば、先に述べたようなカルボキシル基を含有する酸型単量体の単独重合体、あるいは該単量体の2種以上からなる共重合体、または、共重合可能な他の単量体との共重合体を重合により得た後、塩型に変える方法である。カルボキシル基を塩型に変換する方法としては特に限定はなく、得られた前記酸型重合体にLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属イオン、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属イオン、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等の他の金属イオン、NH4、アミン化合物等の有機の陽イオンを含む溶液を作用させてイオン交換を行う等の方法により変換することができる。
【0044】
第3法の化学変性法によりカルボキシル基を導入する方法としては、例えば化学変性処理によりカルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体の単独重合体、あるいは2種以上からなる共重合体、または、共重合可能な他の単量体との共重合体を重合し、得られた重合体を加水分解によってカルボキシル基に変性する方法があり、得られた状態が塩型でない場合は、変性されたカルボキシル基に上記の塩型にする方法が適用される。このような方法をとることのできる単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボン酸基を有する単量体の無水物やエステル誘導体、アミド誘導体、架橋性を有するエステル誘導体等を上げることができる。
【0045】
カルボン酸基を有する単量体の無水物としては、無水マレイン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロマレイミド等をあげることができる。
【0046】
カルボン酸基を有する単量体のエステル誘導体としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ラウリル、ペンタデシル、セチル、ステアリル、ベヘニル、2−エチルヘキシル、イソデシル、イソアミル等のアルキルエステル誘導体;メトキシエチレングリコール、エトキシエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、メトキシプロピレングリコール、プロピレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリテトラエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールーポリテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールーポリテトラエチレングリコール、ブトキシエチル等のアルキルエーテルエステル誘導体;シクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ベンジル、フェノキシエチル、フェノキシポリエチレングリコール、イソボニル、ネオペンチルグリコールペンゾエート等の環状化合物エステル誘導体;ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシフェノキシプロピル、ヒドロキシプロピルフタロイルエチル、クロローヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル誘導体;ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、トリメチルアミノエチル等のアミノアルキルエステル誘導体;(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸アルキルエステル誘導体;(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホフフェート等のリン酸基またはリン酸エステル基を含むアルキルエステル誘導体;
【0047】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシー3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリル、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の架橋性アルキルエステル類;トリフロロエチル、テトラフロロプロピル、ヘキサフロロブチル、パーフロロオクチルエチル等のフッ化アルキルエステル誘導体をあげることができる。
【0048】
カルボン酸基を有する単量体のアミド誘導体としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、モノエチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルーt一ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物等が例示できる。化学変性によりカルボキシル基を導入する他の方法として、アルケン、ハロゲン化アルキル、アルコール、アルデヒド等の酸化等も挙げることができる。
【0049】
上記第3法における重合体の加水分解反応により塩型カルボキシル基を導入する方法についても特に限定はなく、既知の加水分解条件を利用することができる。例えば、上記単量体を重合し架橋された重合体にアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムやアンモニア等の塩基性水溶液を用い塩型カルボキシル基を導入する方法、或いは硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸または、蟻酸、酢酸等の有機酸と反応させ、カルボン酸基とした後、アルカリ金属塩類と混合することにより、イオン交換により塩型カルボキシル基を導入する方法が挙げられる。なかでも吸湿速度に優れるカリウム塩型カルボキシル基が簡単に得られる水酸化カリウムによる加水分解法が好ましい。なお、1.0〜10.0mmol/gとなる条件については、反応の温度、濃度、時間等の反応因子と導入される塩型カルボキシル基量の関係を実験で明らかにすることにより、決定することができる。
【0050】
また、有機高分子系収着剤の架橋構造としては、、共有結合による架橋、イオン架橋、ポリマー分子間相互作用または結晶構造による架橋等いずれの構造のものでもよい。また、架橋を導入する方法については、使用する単量体の重合段階において架橋性単量体を共重合させることによる架橋導入方法、あるいは単量体をまず重合し、その後、化学的反応あるいは物理的なエネルギーによる架橋構造の導入といった後架橋法等を挙げることができる。中でも、単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法、あるいは重合体を得たあとの化学的な後架橋による方法では、共有結合による強固な架橋を導入することが可能であり、吸湿、放湿に伴う物理的、化学的変性を受け難いという点で好ましい。
【0051】
単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法では、特に上述した架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物の場合、既述のカルボキシル基を有する、あるいはカルボキシル基に変性できる単量体と共重合することのできる架橋性単量体を用い、共重合を行なうことにより共有結合に基づく架橋構造を有する架橋重合体を得ることができる。しかし、この場合、単量体であるアクリル酸などが示す酸性条件、あるいは重合体でのカルボキシル基への変性を行う際の化学的な影響(例えば加水分解など)を受けない、あるいは受けにくい架橋性単量体である必要がある。
【0052】
単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法に使用できる架橋性単量体としては特に限定はなく、例えばグリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物を挙げることができ、なかでもトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミドによる架橋構造は、それらを含有してなる架橋重合体に施すカルボキシル基を導入するための加水分解等の際にも化学的に安定であるので望ましい。
【0053】
また、後架橋による方法としても特に限定はなく、例えば、ニトリル基を有するビニルモノマーの含有量が50重量%以上よりなるニトリル系重合体の含有するニトリル基と、ヒドラジン系化合物またはホルムアルデヒドを反応させる後架橋法を挙げることができる。なかでもヒドラジン系化合物により導入された架橋構造は、酸、アルカリに対しても安定で、しかも形成される架橋構造自体が親水性であるので吸湿性の向上に寄与でき、また、重合体に付与した多孔質等の形態を保持することができる強固な架橋を導入できるといった点で極めて優れている。なお、該反応により得られる架橋構造に関しては、その詳細は同定されていないが、トリアゾール環あるいはテトラゾール環構造に基づくものと推定されている。
【0054】
ここでいうニトリル基を有するビニルモノマーとしては、ニトリル基を有する限りにおいては特に限定はなく、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。なかでも、コスト的に有利であり、また、単位重量あたりのニトリル基量が多いアクリロニトリルが最も好ましい。
【0055】
ヒドラジン系化合物との反応により架橋を導入する方法としては、目的とする架橋構造が得られる限りにおいては特に制限はなく、反応時のニトリル系重合体とヒドラジン系化合物の濃度、使用する溶媒、反応時間、反応温度など必要に応じて適宜選定することができる。このうち反応温度については、あまり低温である場合は反応速度が遅くなり反応時間が長くなりすぎること、また、あまり高温である場合はニトリル系重合体の可塑化などが起り、重合体に付与されていた形態が破壊されるという問題が生じる場合がある。従って、好ましい反応温度としては、50〜150℃、さらに好ましくは80℃〜120℃である。また、ヒドラジン系化合物と反応させるニトリル系重合体の部分についても特に限定はなく、その用途、該重合体の形態に応じて適宜選択することができる。具体的には、該重合体の表面のみに反応させる、または、全体にわたり芯部まで反応させる、特定の部分を限定して反応させる等適宜選択できる。なお、ここに使用するヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭化水素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネート等のヒドラジンの塩類、およびエチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のヒドラジン誘導体である。
【0056】
また、上述したように、本発明においては、電磁波のエネルギーよって効率良く吸着性材料から気体を脱着できることが望ましい。このためには、吸着材中に光熱変換材料が含まれていることが好ましい。このようにした場合、電磁波エネルギーは光熱変換材料により一度、熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーによって吸着性材料に吸着していた気体が脱着され、気体の体積が膨張する。一方、電磁波を遮断することにより、前記気体が前記吸着性材料に吸着されて前記気体の体積が収縮する。このとき、光熱変換材料での電磁波エネルギーから熱エネルギーへの変換は非常に速く、光熱変換材料およびその近傍の昇温が急速に起こる一方、電磁波を遮断すると、光熱変換作用がなくなり温度低下も速いことから効率よくエネルギー変換することが可能となる。
【0057】
この光熱変換材料としては、電磁波を吸収して熱に変換しうる材料である限り特に限定されず、例えば、無機系物質、顔料、染料、赤外線吸収剤などの光熱変換物質が挙げられる。無機系物質としては炭化物、酸化物、硫化物、炭素同素体などが挙げられる。炭化物としては、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタルなどが挙げられ、酸化物としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化銅、酸化銀、酸化クロム、酸化鉛などが挙げられる。また、硫化物としては、硫化チタン、硫化ケイ素、硫化クロム、硫化ジルコニウム、硫化鉄、硫化銅、硫化銀、硫化クロム、硫化鉛などが挙げられ、炭素同素体としては、黒鉛、カーボングラファイト、カーボンナノチューブ、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。この他に、雲母、方解石、黒化銀、鉄粉なども無機系物質として挙げられる。
【0058】
また、顔料としては、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料やアゾ系顔料、多環式系顔料などの有機顔料などが挙げられる。このうち、無機顔料としては、カーボンブラックやチタンブラックなどが挙げられる。また、アゾ系顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられ、多環式系顔料としては、フタロシアニン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料などが挙げられる。この他に、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料なども顔料として挙げられる。
【0059】
また、染料としては、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、ナフタロシアニン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、インドレニン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料などを挙げることができる。赤外線吸収剤としては、ピリリウム系化合物、アリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩系化合物、トリメチンチアピリリウム塩、ペンタメチンチオピリリウム塩、シアニン色素、スクワリリウム色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系顔料、ジチオールニッケル錯体、金属チオレート錯体、ニッケルチオレートなどを挙げることができる。
【0060】
さらに、上述の光熱変換物質を含有させた合成繊維や天然繊維、あるいは、樹脂フィルムやゴムなども本発明に採用する光熱変換材料として採用しうる。
【0061】
以上に説明した光熱変換材料のなかでも、可視光線から近赤外線の領域(波長380〜2500nm)の光に対する分光反射率の平均値が、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下であるものが望ましく、とりわけ、太陽光の全波長にわたって高い吸収率を有する黒色系材料であり、かつ耐光性に優れた炭素同素体または無機化合物が好ましく用いられる。具体的には、黒化銀、黒鉛、カーボンブラック、カーボングラファイト、カーボンナノチューブ、ファーネスブラック、アセチレンブラック、酸化鉄などが好ましい光熱変換材料として挙げられる。また、本発明に用いられる光熱変換材料の形態としては、微粒子状、繊維状、フィルム状のものなどが挙げられる。
【0062】
また、光熱変換材料の大きさとしては、より小さいほうが接触界面が増えて熱エネルギー伝導が向上し好ましいが、あまりに小さいと電磁波を吸収しにくくなり発熱量が小さくなる。微粒子状の光熱変換材料の場合であれば、粒子径として、好ましくは0.01μm〜20μm、より好ましくは0.05〜5μmであることが望ましい。
【0063】
上述したように光熱変換材料により電磁波エネルギーが熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーを吸着性材料から気体を脱着させるためのエネルギーとして利用する。従って、光熱変換材料から生じる熱エネルギーを吸着性材料に効率よく伝導できるようにすることが、脱着効率を上げる面から望ましい。
【0064】
このためには、吸着材中において、吸着性材料と光熱変換材料との距離が小さく、かつ空気層などの熱伝導率の低いものが介在しない状態、すなわち、これらの材料が少なくともその一部において直接接している状態あるいはバインダーを介して近接している状態にあることが好ましい。ここで、吸着性材料と光熱変換材料との距離について、これを直接測定することは容易でないが、吸着性材料と光熱変換材料の合計重量に対するバインダーの重量の割合が指標にできる。すなわち、かかる割合が小さいほどバインダー量が少なく、吸着性材料と光熱変換材料との間の距離が近いことになる。バインダーを介して近接している状態としては、吸着性材料と光熱変換材料の合計重量を100重量部とした場合、バインダーが好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である状態である。
【0065】
直接接している状態の具体的な例としては、吸着性材料そのものを連続相として光熱変換材料が分散している状態、吸着性材料そのものによる連続相上に光熱変換材料が分散あるいは被覆している状態、光熱変換材料そのものを連続相として吸着性材料が分散している状態、光熱変換材料そのものによる連続相上に吸着性材料が分散あるいは被覆している状態などを挙げることができる。
【0066】
また、繊維状の光熱変換材料やフィルム状の光熱変換材料などからなる基材に吸着性材料を含浸あるいは被覆させた状態、あるいは、これら2種類の状態について、吸着性材料と光熱変換材料を入れ換えた状態なども直接接している状態の例として挙げることができる。
【0067】
一方、バインダーを介して近接している状態の具体的な例としては、〔1〕バインダーを連続相として吸着性材料と光熱変換材料が分散している状態、〔2〕バインダーを連続相として吸着性材料が分散している層とバインダーを連続相として光熱変換材料が分散している層とが積層している状態、〔3〕バインダーを連続相として吸着性材料が分散しており、該連続相上に光熱変換材料が分散あるいは被覆している状態、あるいは、〔2〕、〔3〕の状態について、吸着性材料と光熱変換材料を入れ換えた状態などを挙げることができる。
【0068】
上記〔2〕あるいは〔3〕の状態においては、上側層あるいは被覆の厚みが厚すぎる場合、下側層あるいは被覆される側の材料の機能を阻害する、あるいは脱落し易くなる等の問題が発生する場合がある。具体的には上側層あるいは被覆の厚みとしては0.3mm以下である場合が良好な結果を得られる場合が多い。
【0069】
なお、バインダーとしては、特に限定はないが、有機系ではポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アラミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、尿素/メラミン樹脂等が、無機系ではコロイダルシリカ、水ガラス、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0070】
また、直接接している状態とバインダーを介して近接している状態が混在する状態も好ましい。具体的な例としては、吸着性材料とバインダーがともに連続相となっており、これらの連続相中に光熱変換材料が分散している状態が挙げられる。この例では、吸着性材料の連続相とバインダーの連続相が三次元的な広がりの中で絡んでいるような状態となっており、光熱変換材料はいずれの連続相中にも分散している。なお、かかる状態とするには、吸着材料として水分散体状の架橋ポリアクリル酸系高分子化合物を用いる例が挙げられる。この場合、該化合物、光熱変換材料、バインダー、およびその他の添加剤の合計重量を100重量部として、70重量部以上用いると吸着性材料が連続相となりやすい。
【0071】
吸着性材料と光熱変換材料の含有割合については、要求される機能が発現される限りにおいては特に限定はない。ただ、光熱変換材料の変換した熱エネルギーを吸着性材料からの気体の脱着に有効に利用しつつ、吸着量が少なくなりすぎないようにする観点から、それぞれの材料の好ましい含有量としては、吸着性材料と光熱変換材料の合計重量を100重量部とした場合、吸着性材料が50〜99.5重量部、一方の光熱変換材料が0.5〜50重量部であり、より好ましくは、吸着性材料が70〜99.5重量部、一方の光熱変換材料が0.5〜30重量部であり、さらに好ましくは吸着性材料が90〜99.5重量部、一方の光熱変換材料が0.5〜10重量部である。
【0072】
また、バインダーを用いる場合におけるバインダー量としては、吸着性材料がバインダーに覆われて吸着・脱着性能が低下することを避ける観点や吸着性材料と光熱変換材料とを近接させた状態とする観点からバインダー量を少なくすることが望ましく、上述のように吸着性材料と光熱変換材料の合計重量を100重量部とした場合、バインダーが好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、最も好ましくは10重量部以下とすることが望ましい。しかし、バインダー量が少なすぎると吸着性材料あるいは光熱変換材料を担持体等に十分に固定できず、これらの材料が脱落する問題等が生じる場合がある。このため、バインダーを用いる場合におけるバインダー量の下限としては、吸着性材料と光熱変換材料の合計重量100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上となるようにするのが望ましい。
【0073】
また、光熱変換材料によって太陽光などの電磁波から熱に変換されるエネルギーはそれほど大きなものではなく、集光等の特別な操作を行わない場合に得られるのは比較的低温で40℃〜70℃にすぎない。このため、本発明の吸着材に光熱変換材料を含有させる場合、吸着性材料としてはこのような低温でも脱着が容易な特性を有するものが好ましい。かかる吸着性材料としては、上述した有機高分子系収着剤が挙げられ、中でも架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物が好適である。
【0074】
次に、吸着材保持部(2)およびシリンダー(3)については、気体の体積膨張/収縮に耐える十分な強度を有していること、気体の漏れがないこと以外は特に限定はない。材質についてもガラス、樹脂および金属いずれも使用可能である。ただ、電磁波透過窓以外の部分についても電磁波が透過する材質であると、電磁波遮断板のみでは十分に電磁波を遮断できなくなる場合があるので、材質としては電磁波を遮断できる着色された樹脂あるいは金属を用いることが好ましい。また、吸着材保持部およびシリンダーの内部では、気体の脱着により気体の密度が上がるので、外気温との温度差により内壁面で気体の凝縮が起こりやすくなる。このため、外気温の影響を受けないように断熱材で周囲を覆うことが好ましい。
【0075】
かかる断熱材としては、セルロースファイバー、軽量軟質木質繊維ボード、炭化発泡コルク、セルロースウール、ココヤシ繊維、綿状木質繊維、フラックス繊維、ハンフ繊維、コットン、ウール等の自然系断熱材、硬質ウレタンフォーム、押出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、高発泡ポリエチレン、発泡炭化カルシウム、フェノールフォーム、発泡ガラス等のプラスチック系断熱材、グラスウール、ロックウール等の鉱物系断熱材などが挙げられる。
【0076】
また、吸着材保持部(2)にはおいては、吸着材まで電磁波を到達させる必要があるので、電磁波透過窓(8)が具備されている。この電磁波透過窓については、電磁波を透過することができ、膨張/収縮に耐えることができるものであれば、特に限定はなく、透明なガラスや樹脂等を適宜選択することができる。特に、耐光性、耐久性の面からガラスが好ましい。また、上述のように外気温の影響で、気体の凝縮が起きる可能性があるため、外気温の影響を小さくできる断熱性を有するものが特に好ましく、例えば、ペアガラス、真空二重ガラス等を挙げることができる。
【0077】
次に、電磁波遮断板(6)については、材質、形状等は電磁波を遮断できるものであれば特に限定はない。例えば、金属板、着色樹脂板等を用いることができる。また、電磁波遮断板は、電磁波の照射と遮断を交互に切り替えることができるようにする必要があるが、切り替えの方法としては、特に限定はなく、電磁波遮断板を回転させたり、横スイングさせたりするような機械的な方法だけでなく、電磁波遮断板に液晶を組み込み電気的に着色と透明の切り替えを行う方法等も採用することができる。
【0078】
本発明の動力発生装置は、上述してきたように気体の体積膨張および収縮を動力源として取り出すものである。この体積膨張および収縮を動力源として取り出す方法についても特に限定はなく、例えば、シリンダーとピストンにより体積変化をピストンの運動に置き換え、これをクランク軸と連動させることにより回転運動として取り出す方法が挙げられる。
【0079】
図2は吸着材保持部(2)を外側から冷却できるようにした本発明の実施形態の一例の概略図である。電磁波遮断板(6)が電磁波透過窓(8)への電磁波(5)を遮断すると同時に、ファン(10)が回転し、冷却風(11)が発生し、吸着材保持部(2)を冷却する。この冷却により、電磁波遮断により気体が吸着されるプロセスにある吸着材(1)が冷却され、より吸着の効率が向上し、その結果収縮の力も増し運動エネルギーが増大するという効果をもたらす。
【0080】
図3は自ら発生した動力により、電磁波の照射と遮断との切り替えを行えるようにした実施形態の一例の概略図である。ピストン(4)の往復運動を回転運動に変換しているクランク軸(9)に、交差軸型歯車(13)の一方を固定し、もう一方の交差軸型歯車をクランク軸(9)と交差する回転軸(12)に固定する。この回転軸(12)には、電磁波遮断板(6)が固定されており、回転軸(12)の回転と同時に回転を行う。クランク軸(9)の回転と回転軸(12)との回転および電磁波遮断板(6)の回転の周期は適宜調整することができる。該実施形態では、外部電力等を用いることなく、電磁波エネルギーだけで稼働することが可能である。電磁波として太陽光を用いた場合は、環境に全く負荷を与えない自然エネルギー利用システムとなる。
【0081】
図4は、本発明の動力発生装置により発生した動力で発電を行うシステムの一例を示す概略図である。本発明の動力発生装置により発生した動力を回転エネルギーに変換しているクランク軸(9)に、発電機(14)を接続し、回転エネルギーを電気エネルギーとして取り出すシステムである。電磁波として太陽光を用いた場合は、自然エネルギー利用の環境に優しい発電システムとなる。
【0082】
図5は、本発明の動力発生装置により発生した動力で空調を行うシステムの一例を示す概略図である。本発明の動力発生装置により発生した動力を回転エネルギーに変換しているクランク軸(9)に、空調用ファン(16)を取付け、外気交換のための動力として活用するシステムである。また、図示しないが、空調用ファン(16)の代わりに、クランク軸(9)にヒートポンプの回転軸を接続すれば、冷房・暖房の空調が可能となる。電磁波として太陽光を用いた場合は、自然エネルギー利用の環境に優しい空調システムとなる。
【符号の説明】
【0083】
1 吸着材
2 吸着材保持部
3 シリンダー
4 ピストン
5 電磁波
6 遮光板
7 気体
8 電磁波透過窓
9 クランク軸
10 ファン
11 冷却風
12 回転軸
13 交差軸型歯車
14 発電機
15 住宅
16 空調用ファン
17 換気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸着/脱着することができる吸着材に電磁波を照射することにより、吸着していた気体が前記吸着材から脱着されて該気体の体積が膨張するプロセスと、前記電磁波を遮断することにより、前記気体が前記吸着材に吸着されて前記気体の体積が収縮するプロセスの繰り返しによる体積変化を動力源として取り出すことを特徴とする動力発生装置。
【請求項2】
気体を吸着/脱着することができる吸着材(1)を内蔵し、かつ電磁波を透過することができる電磁波透過窓(8)を備えた吸着材保持部(2)と、これに連結するシリンダー(3)と、該シリンダー内に嵌合され往復移動できるピストン(4)と、電磁波の照射と遮断の切り替えを行うことのできる電磁波遮断板(6)とを有し、シリンダー(3)内に吸着材(1)により吸着/脱着される気体が封入されているものであって、吸着材(1)に電磁波が照射されることにより、吸着していた気体が吸着材より脱着し体積が膨張してピストン(4)が押されるプロセスと、電磁波遮断板(6)で電磁波が遮断されることにより気体が吸着材に吸着され体積が収縮しピストン(4)が引かれるプロセスの繰り返しにより起きるピストン(4)の往復運動を動力源として取り出すことを特徴とする動力発生装置。
【請求項3】
電磁波が紫外線、可視光線、赤外線、太陽光、熱線、輻射熱より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の動力発生装置。
【請求項4】
気体が水蒸気であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の動力発生装置。
【請求項5】
吸着材が、架橋ポリアクリル酸塩系高分子化合物を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の動力発生装置。
【請求項6】
吸着材が、光熱変換材料を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の動力発生装置。
【請求項7】
吸着材を冷却する手段を有しており、電磁波を遮断するプロセスにおいて、吸着材を冷却することにより吸着を促進させることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の動力発生装置。
【請求項8】
自らの発生した動力により、電磁波の照射と遮断の切り替えを行うことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の動力発生装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の動力発生装置により発生した動力で発電することを特徴とする発電システム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の動力発生装置により発生した動力で空調することを特徴とする空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92087(P2013−92087A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234008(P2011−234008)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000004053)日本エクスラン工業株式会社 (58)
【Fターム(参考)】